IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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2022-154924センサ装置、電動パワーステアリング装置、センサ装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154924
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】センサ装置、電動パワーステアリング装置、センサ装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 3/10 20060101AFI20221005BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20221005BHJP
   B62D 1/16 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
G01L3/10 305
B62D5/04
B62D1/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058196
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】小島 直希
(72)【発明者】
【氏名】久保 好隆
【テーマコード(参考)】
3D030
3D333
【Fターム(参考)】
3D030DC27
3D030DC29
3D333CB02
3D333CB15
3D333CC13
3D333CC30
3D333CC33
3D333CC44
3D333CC45
3D333CD10
3D333CD23
3D333CD31
3D333CD37
3D333CD38
3D333CD45
3D333CE06
(57)【要約】
【課題】組み立て易いセンサ装置等を提供する。
【解決手段】センサ装置は、ピニオンシャフトに一体的に回転可能に設けられている主動歯車35と、主動歯車35に噛み合う第1従動歯車51と、主動歯車35に噛み合うとともに第1従動歯車51と歯数が異なる第2従動歯車52と、第1従動歯車51に対応して設けられた第1センサ55と、第2従動歯車52に対応して設けられた第2センサ56と、第1センサ55及び第2センサ56が実装された基板58と、第1従動歯車51、第2従動歯車52及び基板58を同じ側に保持する保持部材70と、第1従動歯車51、第2従動歯車52及び基板58を保持した状態の保持部材70が嵌め込まれるとともに、少なくとも第1センサ55及び第2センサ56に電力を供給するコネクタが接続されるハウジング90と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に一体的に回転可能に設けられている主動歯車と、
前記主動歯車に噛み合う第1従動歯車と、
前記主動歯車に噛み合うとともに前記第1従動歯車と歯数が異なる第2従動歯車と、
前記第1従動歯車に対応して設けられた第1回転角センサと、
前記第2従動歯車に対応して設けられた第2回転角センサと、
前記第1回転角センサ及び前記第2回転角センサが実装された基板と、
前記第1従動歯車、前記第2従動歯車及び前記基板を同じ側に保持する保持部材と、
前記第1従動歯車、前記第2従動歯車及び前記基板を保持した状態の前記保持部材が嵌め込まれるとともに、少なくとも前記第1回転角センサ及び前記第2回転角センサに電力を供給するコネクタが接続されるハウジングと、
を備えるセンサ装置。
【請求項2】
前記保持部材は、前記第1従動歯車及び前記第2従動歯車を内部に挿入した状態で保持する、
請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記保持部材は、前記基板を内部に挿入した状態で保持する、
請求項1又は2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記基板に接続された端子と、前記端子によって貫通されるとともに貫通している前記端子を固定する板状部と、を有する端子部材をさらに備え、
前記板状部は、前記保持部材と前記ハウジングによって挟み込まれている、
請求項1~3のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記基板は、さらに、前記回転軸を回転させるために加えられたトルクを検出する第1トルクセンサ及び第2トルクセンサを実装し、
前記第1トルクセンサは、前記基板の第1面に実装され、
前記第2トルクセンサは、前記基板における、前記第1面の裏面であって、前記第1回転角センサ及び前記第2回転角センサが実装されている面である第2面に実装されるとともに、前記第1回転角センサと前記第2回転角センサとの間に配置されている、
請求項1~4のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項6】
前記保持部材は、磁束を集めるコレクタを保持するとともに、前記コレクタの移動を制限する制限部を有する、
請求項1~5のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項7】
ステアリングホイールと、
前記ステアリングホイールの回転角度を検出する、請求項1~5のいずれか1項に記載のセンサ装置と、
を備える電動パワーステアリング装置。
【請求項8】
回転軸に一体的に回転可能に設けられている主動歯車に噛み合う第1従動歯車を保持部材に対して第1方向に挿入する工程と、
前記主動歯車に噛み合うとともに前記第1従動歯車と歯数が異なる第2従動歯車を前記保持部材に対して前記第1方向に挿入する工程と、
前記第1従動歯車に対応して設けられる第1回転角センサと、前記第2従動歯車に対応して設けられる第2回転角センサとが実装された基板を前記保持部材に対して前記第1方向に挿入する工程と、
前記第1従動歯車、前記第2従動歯車及び前記基板を保持した状態の前記保持部材を、少なくとも前記第1回転角センサ及び前記第2回転角センサに電力を供給するコネクタが接続されるハウジングに嵌め込む工程と、
を備えるセンサ装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ装置、電動パワーステアリング装置、及び、センサ装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のステアリング装置には、ステアリングホイールの操舵角を検出するセンサ装置が設けられている。
例えば、特許文献1に記載されたセンサ装置は、以下のように構成されている。すなわち、センサ装置は、シャフトと共に回転する外歯歯車と、外歯歯車に噛み合って回転する従動歯車と、従動歯車と共に回転する永久磁石と、永久磁石の磁界を検出する磁気センサと、磁気センサがプリント基板に実装された実装基板と、外歯歯車を収容する筒状の第1ハウジング部材と、従動歯車を支持すると共に実装基板を収容する第2ハウジング部材とを備える。第1ハウジング部材には、シャフトの回転軸線に平行な軸方向に対して垂直な径方向に開口する嵌合孔が形成されている。第2ハウジング部材は、第1ハウジング部材の嵌合孔の開口端面に突き当てられるフランジ部を有し、フランジ部から突出した従動歯車の一部が第1ハウジング部材内で外歯歯車に噛み合う。
【0003】
また、特許文献1に記載されたセンサ装置においては、第2ハウジング部材は、第1ハウジング部材に突き当てられるフランジ部と、フランジ部に対して第1ハウジング部材側とは反対側に設けられた有底枠体部と、フランジ部に対して第1ハウジング部材側に突出する突板部とを一体に有している。有底枠体部は、軸方向視において略台形状の枠部と、軸方向における枠部の一側を閉塞する底部とを有している。枠部における底部とは反対側の端部には、有底枠体部内に実装基板を導入するための基板導入口が形成されている。突板部は、第1の従動歯車の突部が遊嵌される支持孔、及び第2の従動歯車の突部が遊嵌される支持孔を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-074364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたセンサ装置を組み立てる際には、フランジ部に対して第1ハウジング部材側に突出する突板部の支持孔に、予め従動歯車を支持しておき、フランジ部に対して第1ハウジング部材側とは反対側に設けられた有底枠体部に形成された基板導入口から、実装基板を導入する必要がある。また、実装基板を有底枠体部に導入する際には、実装基板を、ピニオンシャフトの軸方向に移動させた後に、軸方向に直交する方向に移動させて、実装基板の一部をフランジ部の内側に挿通させる必要がある。このように、特許文献1に記載されたセンサ装置においては、第2ハウジング部材に従動歯車を支持する位置と第2ハウジング部材に対して実装基板を導入する位置とが異なるとともに、実装基板をピニオンシャフトの軸方向に移動させた後に軸方向に直交する方向に移動させなければならないので、組み立て難い。
本発明は、組み立て易いセンサ装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、本開示について説明する。
本開示の1つの態様は、回転軸に一体的に回転可能に設けられている主動歯車と、前記主動歯車に噛み合う第1従動歯車と、前記主動歯車に噛み合うとともに前記第1従動歯車と歯数が異なる第2従動歯車と、前記第1従動歯車に対応して設けられた第1回転角センサと、前記第2従動歯車に対応して設けられた第2回転角センサと、前記第1回転角センサ及び前記第2回転角センサが実装された基板と、前記第1従動歯車、前記第2従動歯車及び前記基板を同じ側に保持する保持部材と、前記第1従動歯車、前記第2従動歯車及び前記基板を保持した状態の前記保持部材が嵌め込まれるとともに、少なくとも前記第1回転角センサ及び前記第2回転角センサに電力を供給するコネクタが接続されるハウジングと、を備えるセンサ装置である。
ここで、前記保持部材は、前記第1従動歯車及び前記第2従動歯車を内部に挿入した状態で保持していても良い。
また、前記保持部材は、前記基板を内部に挿入した状態で保持していても良い。
また、前記基板に接続された端子と、前記端子によって貫通されるとともに貫通している前記端子を固定する板状部と、を有する端子部材をさらに備え、前記板状部は、前記保持部材と前記ハウジングによって挟み込まれていても良い。
また、前記基板は、さらに、前記回転軸を回転させるために加えられたトルクを検出する第1トルクセンサ及び第2トルクセンサを実装し、前記第1トルクセンサは、前記基板の第1面に実装され、前記第2トルクセンサは、前記基板における、前記第1面の裏面であって、前記第1回転角センサ及び前記第2回転角センサが実装されている面である第2面に実装されるとともに、前記第1回転角センサと前記第2回転角センサとの間に配置されていても良い。
また、前記保持部材は、磁束を集めるコレクタを保持するとともに、前記コレクタの移動を制限する制限部を有していても良い。
本開示の他の態様は、ステアリングホイールと、前記ステアリングホイールの回転角度を検出する、上記した態様に係るセンサ装置と、を備える電動パワーステアリング装置である。
本開示の他の態様は、回転軸に一体的に回転可能に設けられている主動歯車に噛み合う第1従動歯車を保持部材に対して第1方向に挿入する工程と、前記主動歯車に噛み合うとともに前記第1従動歯車と歯数が異なる第2従動歯車を前記保持部材に対して前記第1方向に挿入する工程と、前記第1従動歯車に対応して設けられる第1回転角センサと、前記第2従動歯車に対応して設けられる第2回転角センサとが実装された基板を前記保持部材に対して前記第1方向に挿入する工程と、前記第1従動歯車、前記第2従動歯車及び前記基板を保持した状態の前記保持部材を、少なくとも前記第1回転角センサ及び前記第2回転角センサに電力を供給するコネクタが接続されるハウジングに嵌め込む工程と、を備えるセンサ装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、組み立て易いセンサ装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係る電動パワーステアリング装置100の概略構成の一例を示す図である。
図2】センサ装置1を構成する部品の一部を分解した斜視図の一例である。
図3】センサ装置1の断面の一例を示す図である。
図4】組み付けられる前のサブユニット50とハウジング90とを、半径方向外側の第2側から斜め方向に見た図の一例である。
図5】組み付けられる前のセンサユニット40を、半径方向内側の第2側から斜め方向に見た図の一例である。
図6】第1コレクタ41、第2コレクタ42、磁性体45、第1従動歯車51、第2従動歯車52、基板58の概略構成を、半径方向内側から半径方向に見た図の一例である。
図7】サブユニット50を、半径方向外側の第2側から回転中心Cに向かう方向に見た図の一例である。
図8】端子部材59の概略構成を、示す断面の一例を示す図である。
図9】第1従動歯車51、第2従動歯車52及び弾性体60を、第1側から軸方向に見た図の一例である。
図10】保持部材70の概略構成を、半径方向内側の第2側から斜め方向に見た図の一例である。
図11】ハウジング90を、半径方向内側の第2側から斜め方向に見た図の一例である。
図12】第2の実施形態に係るセンサ装置2のセンサユニット240の第1センサ243及び第2センサ244の概略構成を、半径方向内側から半径方向に見た図の一例である。
図13】第3の実施形態に係るセンサ装置3のセンサユニット340の保持部材370の概略構成の一例を示す図である。
図14】第3の実施形態に係るセンサ装置3のセンサユニット340のハウジング390の概略構成の一例を示す図である。
図15】第4の実施形態に係るセンサ装置4のセンサユニット440の保持部材470の概略構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に示す形態は本発明の実施の形態の一例であり、本発明は、以下に示す形態に限定されない。
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る電動パワーステアリング装置100の概略構成の一例を示す図である。
電動パワーステアリング装置100(以下、単に「ステアリング装置100」と称する場合もある。)は、乗り物の進行方向を任意に変えるためのかじ取り装置であり、本実施形態においては自動車に適用した構成を例示している。
【0010】
ステアリング装置100は、ドライバが操作するステアリングホイール101と、ステアリングホイール101に一体的に設けられたステアリングシャフト102とを備える。ステアリングシャフト102と上部シャフト103とが自在継手103aを介して連結されており、上部シャフト103と下部シャフト108とが自在継手103bを介して連結されている。
【0011】
また、ステアリング装置100は、転動輪としての左右の前輪150のそれぞれに連結されたタイロッド104と、タイロッド104に連結されたラック軸105とを備える。また、ステアリング装置100は、ラック軸105に形成されたラック歯105aとともにラック・ピニオン機構を構成するピニオン106aを備える。ピニオン106aは、ピニオンシャフト106の下端部に形成されている。
【0012】
また、ステアリング装置100は、ピニオンシャフト106を収納するステアリングギアボックス107を有する。ピニオンシャフト106は、ステアリングギアボックス107にてトーションバー112を介して下部シャフト108と同軸に連結されていて、トーションバー112のねじれに応じて、ピニオンシャフト106と下部シャフト108とは相対的に回転する。トーションバー112のねじれは、ステアリングホイール101に加えられた操舵トルクに対応する。
【0013】
ステアリングギアボックス107の内部には、下部シャフト108とピニオンシャフト106との相対的な回転角度に基づいて、ステアリングホイール101に加えられた操舵トルクを検出する、センサ装置1が設けられている。センサ装置1は、ステアリングホイール101の回転角度(以下、「操舵角」と称する場合がある。)をも検出する。
【0014】
また、ステアリング装置100は、ステアリングギアボックス107に支持された電動モータ110と、電動モータ110の駆動力を減速してピニオンシャフト106に伝達する減速機構111とを有する。さらに、ステアリング装置100は、電動モータ110の作動を制御する制御装置120を備える。制御装置120には、上述したセンサ装置1の出力値が入力される。
【0015】
<センサ装置1の構成>
図2は、センサ装置1を構成する部品の一部を分解した斜視図の一例である。
図3は、センサ装置1の断面の一例を示す図である。
図4は、組み付けられる前のサブユニット50とハウジング90とを、半径方向外側の第2側から斜め方向に見た図の一例である。
図5は、組み付けられる前のセンサユニット40を、半径方向内側の第2側から斜め方向に見た図の一例である。
図6は、第1コレクタ41、第2コレクタ42、磁性体45、第1従動歯車51、第2従動歯車52、基板58の概略構成を、半径方向内側から半径方向に見た図の一例である。
図7は、サブユニット50を、半径方向外側の第2側から回転中心Cに向かう方向に見た図の一例である。
図8は、端子部材59の概略構成を、示す断面の一例を示す図である。
図9は、第1従動歯車51、第2従動歯車52及び弾性体60を、第1側から軸方向に見た図の一例である。
図10は、保持部材70の概略構成を、半径方向内側の第2側から斜め方向に見た図の一例である。
図11は、ハウジング90を、半径方向内側の第2側から斜め方向に見た図の一例である。
【0016】
センサ装置1は、下部シャフト108に固定されるマグネットカラー21及び永久磁石22と、ピニオンシャフト106に固定される第1ステータ31、第2ステータ32、ステータホルダ33、カラー34及び主動歯車35とを備える。また、センサ装置1は、第1ステータ31及び第2ステータ32で導かれた磁束を集めて、下部シャフト108とピニオンシャフト106との間の相対回転角度に応じた電気信号を出力するセンサユニット40を備える。センサユニット40は、操舵角に応じた電気信号をも出力する。
【0017】
以下の説明において、同心で配置されている下部シャフト108及びピニオンシャフト106の軸方向を、単に「軸方向」と称する場合がある。また、軸方向において、下部シャフト108が配置されている側(図2おいては上側)を「第1側」、ピニオンシャフト106が配置されている側(図2おいては下側)を「第2側」と称する場合がある。また、軸方向に直交する方向(図2の左右方向)を、「半径方向」と称する場合がある。そして、半径方向において、下部シャフト108及びピニオンシャフト106の回転中心C側は、「半径方向内側」と称し、回転中心Cから離れる側は、「半径方向外側」と称する場合がある。
【0018】
永久磁石22は、N極とS極とが周方向に交互に並んでリング状に形成され、周方向に着磁されている。永久磁石22は、8個ずつのN極、S極が等角度間隔で配置されていることを例示することができる。
マグネットカラー21は、鉄材によって円筒状に形成されていて、外周面21aに永久磁石22が嵌め合わされ、例えば接着によって永久磁石22はマグネットカラー21に固定される。また、マグネットカラー21の内周面21bに下部シャフト108が挿入されて、圧入、溶接、カシメ等により、マグネットカラー21は下部シャフト108に固定される。これにより、永久磁石22は、下部シャフト108とともに回転する。
【0019】
第1ステータ31及び第2ステータ32は、例えばパーマロイ等の軟磁性材料で形成されている。第1ステータ31は、円環状に形成された円環部31bを有する。また、第1ステータ31は、円環部31bの内周縁から下部シャフト108の軸方向に突出して延び、周方向に並んで形成された複数(例えば8個)のステータ爪31aを有する。これら複数のステータ爪31aは、周方向に等角度間隔(例えば45[度]間隔)で形成されている。
【0020】
また、第1ステータ31は、円環部31bの外周縁から軸方向に突出して延びた複数(例えば3個)の突片31cを有する。これら複数の突片31cは周方向に等角度間隔(例えば120[度]間隔)で形成されている。各突片31cは、工具等によって半径方向内方に押されて塑性変形し、ステータホルダ33の位置決め部33jにカシメられ、第1ステータ31はステータホルダ33に結合される。
【0021】
第2ステータ32は、第1ステータ31を図示の上下を逆にして配置したものと同じであり、円環部32b、ステータ爪32a及び突片32cは、それぞれ第1ステータ31の円環部31b、ステータ爪31a及び突片31cに相当する。
第2ステータ32も第1ステータ31と同様に、ステータホルダ33の位置決め部33jに位置決めされてカシメられ、第2ステータ32はステータホルダ33に結合される。
【0022】
ステータホルダ33は、非磁性材料(例えば樹脂)によって円筒状に形成されている。
カラー34は、例えば鉄材によって円筒状に形成されている。カラー34は、インサート成形により、ステータホルダ33と一体化されている。
主動歯車35は、平歯車であり、インサート成形により、ステータホルダ33と一体化されている。
【0023】
上述したようにして、第1ステータ31、第2ステータ32、ステータホルダ33、カラー34及び主動歯車35は、一体化されて、ステータユニット36を構成する。
図3に示すように、カラー34の内周面34bに、ピニオンシャフト106が挿入されて、圧入、溶接、カシメ等により、ステータユニット36はピニオンシャフト106に固定される。
【0024】
ここで、トーションバー112に操舵トルクが作用していない状態で、ピニオンシャフト106に固定されたステータユニット36の各ステータ爪31a、32aの周方向の中心線が、下部シャフト108に固定された永久磁石22の、N極とS極との境界線に一致するように、ステータユニット36はピニオンシャフト106に固定される。
なお、入力軸側のマグネットカラー21及び永久磁石22と、出力軸側のステータユニット36とは、図3に示すように、ステアリングギアボックス107によって覆われている。
【0025】
(センサユニット40の構成)
以下に、主に図3図8を用いてセンサユニット40について詳述する。
センサユニット40は、第1ステータ31で導かれた磁束を集める第1コレクタ41と、第2ステータ32で導かれた磁束を集める第2コレクタ42と、トルク検出用の第1センサ43及び第2センサ44とを備える。また、センサユニット40は、第1センサ43と第2センサ44との間に配置された磁性体45を備える。
【0026】
また、センサユニット40は、主動歯車35に噛み合う第1従動歯車51と、主動歯車35に噛み合うとともに第1従動歯車51と歯数が異なる第2従動歯車52とを備える。また、センサユニット40は、第1従動歯車51とともに回転する第1永久磁石53と、第2従動歯車52と共に回転する第2永久磁石54とを備える。また、センサユニット40は、操舵角に応じた回転角度検出用の第1センサ55及び第2センサ56を備える。
【0027】
また、センサユニット40は、第1センサ43、第2センサ44、第1センサ55及び第2センサ56が実装された基板58と、基板58に接続された端子部材59とを備える。基板58は、直方体状であり、軸方向に直交するように配置されている。以下の説明において、基板58の長手方向を、「幅方向」と称する場合がある。また、幅方向において、第1従動歯車51が配置されている側(図7おいては左側)を「第3側」、第2従動歯車52が配置されている側(図7おいては右側)を「第4側」と称する場合がある。
【0028】
また、センサユニット40は、第1従動歯車51及び第2従動歯車52に対し、主動歯車35に近づく向きの力を付与する弾性体60を備える。
また、センサユニット40は、第1コレクタ41、第2コレクタ42、磁性体45、第1従動歯車51、第2従動歯車52、基板58、弾性体60等を保持する保持部材70を備える。
これら第1コレクタ41、第2コレクタ42、磁性体45、第1従動歯車51、第2従動歯車52、基板58、弾性体60、及び、保持部材70でサブユニット50を構成する。
【0029】
また、センサユニット40は、サブユニット50が嵌め込まれるとともに、第1センサ43、第2センサ44、第1センサ55及び第2センサ56に電力を供給するコネクタ130が接続されるハウジング90を備える。
以下、各部品について詳述する。
【0030】
{第1コレクタ41、第2コレクタ42、磁性体45}
第1コレクタ41は、図5に示すように、平板の円弧状に形成された円弧部410と、円弧部410における周方向の中央部から半径方向及び軸方向に突出した第1突出部411と、第1突出部411の周方向の両側に設けられて半径方向に突出した第2突出部412とを備える。
第1突出部411は、直方体状の先端部415を有する。先端部415は、円弧部410と平行な平板状である。
【0031】
第2コレクタ42は、図5に示すように、平板の円弧状に形成された円弧部420と、円弧部420における周方向の中央部から半径方向及び軸方向に突出した第1突出部421と、第1突出部421の周方向の両側に設けられて半径方向に突出した第2突出部422とを備える。
第1突出部421は、直方体状の先端部425を有する。先端部425は、円弧部420と平行な平板状である。
【0032】
第1コレクタ41の先端部415と、第2コレクタ42の先端部425とは、軸方向に対向するように配置されており、先端部415と先端部425との間に、直方体状の磁性体45が設けられている。磁性体45は、例えばパーマロイ等の軟磁性材料で成形されている。
【0033】
{第1センサ43、第2センサ44、基板58}
第1センサ43及び第2センサ44は、磁界によって抵抗値が変化することを利用した磁気センサであることを例示することができる。第1センサ43及び第2センサ44は、第1コレクタ41で導かれた磁束と第2コレクタ42で導かれた磁束との量に応じた電気信号、すなわち下部シャフト108とピニオンシャフト106との間の相対的な回転角度に対応した電気信号を出力する。
【0034】
第1センサ43は、基板58における第1側の面である第1面581に実装されている。第1センサ43は、第1コレクタ41の先端部415と、磁性体45との間に配置されている。
第2センサ44は、基板58における第2側の面である第2面582に実装されている。第2センサ44は、第2コレクタ42の先端部425と、磁性体45との間に配置されている。
【0035】
{第1従動歯車51、第2従動歯車52}
第1従動歯車51は、外周部に主動歯車35の歯と噛み合う複数の歯が形成された円盤状の第1歯部511と、第1歯部511における軸方向の両側に設けられた一対の第1軸部512とを有する。
第2従動歯車52は、外周部に主動歯車35の歯と噛み合う複数の歯が形成された円盤状の第2歯部521と、第2歯部521における軸方向の両側に設けられた一対の第2軸部522とを有する。
【0036】
第1歯部511と第2歯部521とは、歯の形状は同じであるが、歯数が異なる。例えば、第1歯部511の歯数は28、第2歯部521の歯数は26であることを例示することができる。また、歯の形状が同じで、歯数が異なることに起因して、第1歯部511のピッチ円直径は、第2歯部521のピッチ円直径よりも大きい。それゆえ、ピニオンシャフト106の回転中心Cから第1従動歯車51の回転中心C1(図9参照)までの距離は、ピニオンシャフト106の回転中心Cから第2従動歯車52の回転中心C2(図9参照)までの距離よりも大きい。言い換えれば、第1従動歯車51の回転中心C1は、第2従動歯車52の回転中心C2よりも半径方向外側にある。
一対の第1軸部512と、一対の第2軸部522の外径は全て同一である。
【0037】
第1従動歯車51は、幅方向の第3側に設けられ、第2従動歯車52は、幅方向の第4側に設けられている。
第1従動歯車51及び第2従動歯車52は、樹脂にて成形されていることを例示することができる。
【0038】
{第1永久磁石53、第2永久磁石54、第1センサ55、第2センサ56}
第1永久磁石53及び第2永久磁石54は、それぞれ、N極及びS極を有する円盤状の永久磁石である。
図9に示すように、第1永久磁石53は、第1従動歯車51の一対の第1軸部512における第1側の第1軸部512の端部に、N極及びS極の少なくとも一部が露出するように嵌め込まれている。また、第2永久磁石54は、第2従動歯車52の一対の第2軸部522における第1側の第2軸部522の端部に、N極及びS極の少なくとも一部が露出するように嵌め込まれている。
【0039】
第1センサ55及び第2センサ56は、磁界によって抵抗値が変化することを利用した磁気センサであることを例示することができる。
第1センサ55及び第2センサ56は、基板58の第2面582に実装されている。
そして、第1センサ55は、第1従動歯車51の第1軸部512に嵌め込まれた第1永久磁石53に対向するように設けられている。第2センサ56は、第2従動歯車52の第2軸部522に嵌め込まれた第2永久磁石54に対向するように設けられている。
【0040】
上述したように、第1永久磁石53及び第2永久磁石54は、それぞれ一対の磁極(N極及びS極)を有し、第1センサ55、第2センサ56は、第1従動歯車51、第2従動歯車52の回転角度に応じた正弦波状の信号を出力する。そして、第1従動歯車51と第2従動歯車52の歯数の違いにより、ステアリングホイール101が左右方向への最大舵角まで操舵されてピニオンシャフト106が複数回回転しても、第1センサ55、第2センサ56の出力信号の位相が同期することがない。これにより、制御装置120は、第1センサ55、第2センサ56の出力信号に基づいて、ピニオンシャフト106の回転角を検出することが可能である。
【0041】
{基板58}
基板58には、図5に示すように、半径方向内側の端部に、ステータユニット36の外周部に沿うように切り欠かれた第1部583が形成されている。また、基板58には、第1部583における周方向の中央部から半径方向外側に直方体状に切り欠かれた第2部584が形成されている。また、基板58には、幅方向における第3側の端部に、半径方向内側の端部から半径方向外側に直方体状に切り欠かれた第3部585が形成されている。また、基板58には、幅方向における第4側の端部に、半径方向内側の端部から半径方向外側に直方体状に切り欠かれた第4部586が形成されている。第3部585、第4部586により、基板58における幅方向の両端部には、それぞれ突起587が形成されている。
【0042】
基板58は、図5に示すように、第1面581における半径方向内側の端部であって幅方向の中央部に、第1センサ43を実装し、第2面582における半径方向内側の端部であって幅方向の中央部に、第2センサ44を実装している。また、基板58は、図6に示すように、第1センサ43を、第2部584の第1側に実装し、第2センサ44を、第2部584の第2側に実装する。そして、第2部584に、磁性体45が配置されている。
基板58は、処理回路によって、第1センサ43及び第2センサ44から出力された電気信号を操舵トルクに対応する電気信号に変換処理し、後述する端子591から電線を通じて制御装置120(図1参照)に出力する。
【0043】
また、基板58には、図5に示すように、第2面582における、第2部584と第3部585との間に、第1センサ55が実装され、第2部584と第4部586との間に、第2センサ56が実装されている。
基板58は、処理回路によって、第1センサ55及び第2センサ56から出力された電気信号を操舵角に対応する電気信号に変換処理し、後述する端子591から電線を通じて制御装置120に出力する。
【0044】
{端子部材59}
端子部材59は、図4に示すように、複数の端子591と、複数の端子591によって貫通されるとともに貫通している複数の端子591を固定する板状部592とを有する。
端子591は、図8に示すように、L字状であり、一方の端部が基板58に接続され(図4参照)、他方の端部が半径方向外側に配置されて、ハウジング90の後述する外側周壁93の内部に配置される。そして、端子591の他方の端部に、半径方向外側から電線のコネクタ130(図4参照)が嵌め込まれる。端子591は、基板58に実装された、第1センサ43、第2センサ44、第1センサ55及び第2センサ56に電力を供給するとともに、これらセンサの検出値に応じた電気信号を制御装置120に出力する。
【0045】
板状部592は、平板状であり、複数の端子591によって厚さ方向に貫通されている。また、板状部592は、厚さ方向(半径方向)の両端部がそれぞれ保持部材70とハウジング90とに接触し、保持部材70とハウジング90とによって挟持されている。
【0046】
{弾性体60}
弾性体60は、図5に示すように、板が折り曲げられることにより成形された、所謂板ばねであることを例示することができる。弾性体60は、幅方向の中央部に設けられた胴部61と、幅方向の第3側に設けられて第1従動歯車51に対して力を付与する第1腕部62と、幅方向の第4側に設けられて第2従動歯車52に対して力を付与する第2腕部63とを有する。また、弾性体60は、胴部61と第1腕部62とを連結する第1連結部64と、胴部61と第2腕部63とを連結する第2連結部65とを有する。
【0047】
胴部61は、図9に示すように、保持部材70の後述する直方体状の第5保持部75に嵌め込まれている。胴部61は、長方形の板が、長手方向の中央部にて曲げられて成形されている。軸方向に見た場合には、胴部61は、第5保持部75に嵌め込まれる前の形状がV字状であり、第5保持部75に嵌め込まれて、U字状となる。
【0048】
第1腕部62は、図5に示すように、第1従動歯車51の一対の第1軸部512それぞれに接触するように一対設けられている。つまり、第1腕部62は、第1従動歯車51の第1歯部511をその厚さ方向に挟むように配置される。軸方向に見た場合には、図9に示すように、第1腕部62は、第1軸部512の外周面の曲率と同じ曲率の円弧状部を有する。なお、第1腕部62は、第1軸部512の外周面の曲率よりも大きくても良い。
【0049】
第2腕部63は、図5に示すように、第2従動歯車52の一対の第2軸部522それぞれに接触するように一対設けられている。つまり、第2腕部63は、第2従動歯車52の第2歯部521をその厚さ方向に挟むように配置される。軸方向に見た場合には、図9に示すように、第2腕部63は、第2軸部522の外周面の曲率と同じ曲率の円弧状部を有する。つまり、第2腕部63は、第1腕部62と同様の形状である。なお、第2腕部63は、第2軸部522の外周面の曲率よりも大きくても良い。
【0050】
第1連結部64は、図5に示すように、一対の第1腕部62それぞれに連結するように一対設けられている。第1連結部64は、図9に示すように、胴部61から第3側に幅方向に延びる幅方向部641と、幅方向部641と第1腕部62とを幅方向に傾斜する方向に直線的に連結する傾斜部642とを有する。
【0051】
第2連結部65は、図5に示すように、一対の第2腕部63それぞれに連結するように一対設けられている。第2連結部65は、図9に示すように、第1連結部64の幅方向部641に相当する部位を有しておらず、胴部61と第2腕部63とを幅方向に傾斜する方向に直線的に連結する傾斜部652を有する。
【0052】
図9に示したように、第1連結部64の形状と、第2連結部65の形状とは異なっており、胴部61を境に非対称な形状をしている。例えば、図9に示した形態では、幅方向に対する傾斜部642の傾斜角が、幅方向に対する傾斜部652の傾斜角よりも小さいことにより、胴部61を境に第1連結部64及び第2連結部65は非対称な形状をしている。言い換えれば、第5保持部75に嵌め込まれた状態の胴部61と傾斜部642とのなす角である第1角α1は、第5保持部75に嵌め込まれた状態の胴部61と傾斜部652とのなす角である第2角α2よりも大きいことにより、胴部61を境に第1連結部64及び第2連結部65は非対称な形状をしている。
【0053】
{保持部材70}
保持部材70は、図4及び図10に示すように、第1コレクタ41、第2コレクタ42、磁性体45、第1従動歯車51、第2従動歯車52、基板58、弾性体60等を保持した状態で、ハウジング90内部に挿入される。図4に示すように、センサユニット40は、基板58に実装された端子部材59が半径方向外側、第1コレクタ41及び第2コレクタ42が半径方向内側となる状態で、端子部材59側から、ハウジング90における半径方向内側に形成された後述する内側周壁92に挿入される。
【0054】
保持部材70は、図5に示すように、第1コレクタ41を保持する第1保持部71と、第2コレクタ42を保持する第2保持部72とを有する。
第1保持部71は、第1コレクタ41の第2突出部412が嵌め込まれる、半径方向内側が開口した凹部を有し、図10に示すように、第1突出部411を露出した状態で第1コレクタ41を保持する。
第2保持部72は、第2コレクタ42の第2突出部422が嵌め込まれる、半径方向内側が開口した凹部を有し、図10に示すように、第1突出部421を露出した状態で第2コレクタ42を保持する。
第1コレクタ41及び第2コレクタ42は、半径方向内側から、それぞれ、第1保持部71、第2保持部72に嵌め込まれる。
【0055】
また、保持部材70は、図10に示すように、磁性体45を保持する第3保持部73を有する。第3保持部73は、半径方向外側が開口した凹部を有する。磁性体45は、半径方向外側から、第3保持部73に嵌め込まれる。
また、保持部材70は、図10に示すように、基板58を保持する第4保持部74を有する。第4保持部74は、幅方向の両端部それぞれに、基板58における幅方向の両端部それぞれを保持する凹部を有する。基板58は、半径方向外側から、第4保持部74に嵌め込まれる。
【0056】
また、保持部材70は、図10に示すように、第1従動歯車51の第1軸部512の軸受けとなる第1軸受け81を有する。第1軸受け81は、第1軸部512の外周面の曲率と同じ曲率の曲面811を有し、第1軸受け81における軸方向の中央部には切り欠き812が形成されている。第1従動歯車51は、半径方向外側から、第1歯部511が切り欠き812に挿入され、一対の第1軸部512が曲面811に接触するように装着される。
【0057】
また、保持部材70は、図10に示すように、第2従動歯車52の第2軸部522の軸受けとなる第2軸受け82を有する。第2軸受け82は、第2軸部522の外周面の曲率と同じ曲率の曲面821を有し、第2軸受け82における軸方向の中央部には切り欠き822が形成されている。第2従動歯車52は、半径方向外側から、第2歯部521が切り欠き822に挿入され、第2軸部522が曲面821に接触するように装着される。
【0058】
また、保持部材70は、弾性体60を保持する第5保持部75を有する。第5保持部75は、軸方向が長手方向、幅方向が短手方向となる直方体状であって、半径方向外側が開口した凹部である。弾性体60は、胴部61が、半径方向外側から第5保持部75に嵌め込まれることで、保持部材70に保持される。
【0059】
保持部材70は、半径方向に見た場合の四隅それぞれに、ハウジング90と連結される連結部76が設けられている。
保持部材70は、第1コレクタ41の移動を制限する制限部77を有する。制限部77は、第1コレクタ41の第1突出部411を露出させる部位に対して、幅方向の両側にそれぞれ設けられた壁を有する。
また、保持部材70は、第2コレクタ42の移動を制限する制限部78を有する。制限部78は、第2コレクタ42の第1突出部421を露出させる部位に対して、幅方向の両側にそれぞれ設けられた壁を有する。
【0060】
{ハウジング90}
ハウジング90は、平板状の基部91と、基部91から半径方向内側に突出した長円筒状の内側周壁92と、基部91から半径方向外側に突出した長円筒状の外側周壁93とを有する。
内側周壁92の内部に、サブユニット50が半径方向内側から嵌め込まれる。
外側周壁93の内部に、端子部材59の複数の端子591の端部が配置される。そして、外側周壁93の内部に、半径方向外側から電線のコネクタ130(図4参照)が嵌め込まれる。
【0061】
図8及び図11に示すように、ハウジング90における、内側周壁92及び外側周壁93の内部に対応する部位は、複数の端子591それぞれを通す複数の貫通孔94が形成されている。複数の貫通孔94の周囲であって、内側周壁92の内部に対応する部位には、端子部材59の板状部592の周りを囲む壁95が形成されている。壁95は、板状部592が軸方向や幅方向に移動するのを抑制する。
【0062】
また、ハウジング90は、内側周壁92の内部に、図9に示すように、基部91から半径方向内側に直方体状に突出し、弾性体60を支持可能な支持部96を有する。支持部96は、軸方向においては、弾性体60の全域を支持する。また、支持部96は、幅方向においては、中央部に設けられ、弾性体60の第1連結部64の幅方向部641、及び、胴部61と第2連結部65との接続部とを支持する。弾性体60は、支持部96により、半径方向外側に移動することが抑制される。
【0063】
また、ハウジング90は、図5に示すように、幅方向における両端部それぞれに、ボルトを通す貫通孔971が形成された締め付け部97を有する。締め付け部97は、軸方向に平行な板状の部位であり、ハウジング90は、貫通孔971を通されたボルトにてステアリングギアボックス107に締め付けられる。
【0064】
また、ハウジング90は、図5に示すように、半径方向内側から見た場合の四隅それぞれに、軸方向に平行な面の台座98と、台座98から半径方向内側に突出した円柱状の突起99とを有する。
ハウジング90と保持部材70とは、突起99が保持部材70の連結部76の貫通孔に通されて、連結部76が台座98に突き当てられた状態で、突起99の先端が溶かされることによりカシメられる。つまり、ハウジング90と保持部材70とは、熱カシメが施されることにより一体化される。
【0065】
{製造方法}
作業者は、以上のように構成されたセンサ装置1のセンサユニット40を、以下のようにして製造することができる。
つまり、作業者は、第1コレクタ41及び第2コレクタ42を、それぞれ、保持部材70の第1保持部71、第2保持部72に嵌め込む。また、作業者は、磁性体45を、保持部材70の第3保持部73に嵌め込む。その際、作業者は、磁性体45を、保持部材70に対して、第1コレクタ41及び第2コレクタ42が嵌め込まれる側とは反対側から、第1コレクタ41及び第2コレクタ42が嵌め込まれる側の方向(以下、「第1方向」と称する場合がある。)(図5参照)に挿入する。なお、第1コレクタ41、第2コレクタ42及び磁性体45の少なくともいずれかはインサート成形により樹脂製の保持部材70と一体化されていても良い。
【0066】
また、作業者は、第1従動歯車51及び第2従動歯車52を、それぞれ、保持部材70の第1軸受け81、第2軸受け82に接触するように、保持部材70に対して第1方向に挿入するとともに、弾性体60の胴部61を、保持部材70の第5保持部75に嵌め込む。
また、作業者は、第1センサ43、第2センサ44、第1センサ55、第2センサ56及び端子部材59が実装された基板58を、保持部材70の第4保持部74に嵌め込む。その際、作業者は、基板58を、保持部材70に対して第1方向に挿入する。
以上のようにして、サブユニット50が組み立てられる。
【0067】
その後、作業者は、サブユニット50を、ハウジング90の内側周壁92の内部に嵌め込む。その際、作業者は、ハウジング90の突起99を保持部材70の連結部76の貫通孔に通して、連結部76を台座98に突き当てた状態で、突起99の先端を溶かすように熱カシメを施し、ハウジング90と保持部材70とを一体化する。
【0068】
以上、説明したように、センサ装置1の製造方法は、回転軸の一例としてのピニオンシャフト106に一体的に回転可能に設けられている主動歯車35に噛み合う第1従動歯車51を保持部材70に対して第1方向に挿入する工程と、第2従動歯車52を保持部材70に対して第1方向に挿入する工程とを備える。また、センサ装置1の製造方法は、第1従動歯車51に対応して設けられる第1回転角センサの一例としての第1センサ55と、第2従動歯車52に対応して設けられる第2回転角センサの一例としての第2センサ56とが実装された基板58を保持部材70に対して第1方向に挿入する工程を備える。また、センサ装置1の製造方法は、第1従動歯車51、第2従動歯車52及び基板58を保持した状態の保持部材70を、少なくとも第1センサ55及び第2センサ56に電力を供給するコネクタ130が接続されるハウジング90に嵌め込む工程を備える。
【0069】
上記製造方法によれば、第1従動歯車51、第2従動歯車52及び基板58を、保持部材70に対して第1方向に挿入することで、これら第1従動歯車51、第2従動歯車52及び基板58を保持部材70に組み付けることができる。そして、その後、第1従動歯車51、第2従動歯車52及び基板58を保持した状態の保持部材70、言い換えれば、サブユニット50を、ハウジング90に嵌め込めば良い。それゆえ、上記製造方法によれば、例えば、第1従動歯車51及び第2従動歯車52と、基板58とを、別々の方向から保持部材70に挿入する場合と比べて、組み立て易い。
【0070】
{センサ装置1}
センサ装置1は、ピニオンシャフト106に一体的に回転可能に設けられている主動歯車35と、主動歯車35に噛み合う第1従動歯車51と、主動歯車35に噛み合うとともに第1従動歯車51と歯数が異なる第2従動歯車52とを備える。また、センサ装置1は、第1従動歯車51に対応して設けられた第1センサ55と、第2従動歯車52に対応して設けられた第2センサ56と、第1センサ55及び第2センサ56が実装された基板58とを備える。また、センサ装置1は、第1従動歯車51、第2従動歯車52及び基板58を同じ側の一例としての半径方向外側に保持する保持部材70と、第1従動歯車51、第2従動歯車52及び基板58を保持した状態の保持部材70が嵌め込まれるとともに、少なくとも第1センサ55及び第2センサ56に電力を供給するコネクタ130が接続されるハウジング90とを備える。
【0071】
以上のように構成されたセンサ装置1においては、第1従動歯車51、第2従動歯車52及び基板58が保持部材70において同じ側に保持されるので、これらの部品を保持部材70に対して容易に組み付けることが可能となる。また、第1従動歯車51、第2従動歯車52及び基板58を保持した状態の保持部材70、言い換えれば、サブユニット50がハウジング90に嵌め込まれる構成であるので、第1従動歯車51、第2従動歯車52及び基板58をハウジング90に対して容易に組み付けることが可能となる。また、サブユニット50とハウジング90とを別体にすることで、例えばコネクタ130のカプラ部分の形状に変更が生じたとしても、ハウジング90におけるコネクタ130が接続される部分の形状を変更することで対応することができ、サブユニット50の変更には至らないようにすることができる。
【0072】
また、保持部材70は、第1従動歯車51及び第2従動歯車52を内部に挿入した状態で保持する。これにより、第1従動歯車51及び第2従動歯車52を保持部材70の内部に挿入するだけで組み付けることが可能となる。
また、保持部材70は、基板58を内部に挿入した状態で保持する。これにより、基板58を保持部材70の内部に挿入するだけで組み付けることが可能となる。
【0073】
また、基板58に接続された端子591と、端子591によって貫通されるとともに貫通している端子591を固定する板状部592と、を有する端子部材59をさらに備え、図8に示すように、板状部592は、保持部材70とハウジング90によって挟み込まれている。これにより、端子591にコネクタ130が接続されること等に起因して端子591に力が作用したとしても、板状部592を挟み込んでいる保持部材70とハウジング90とで応力を受けるので、基板58における端子591が接続された部位(例えばはんだ)に応力が集中することが抑制される。
【0074】
また、基板58は、さらに、ピニオンシャフト106を回転させるために加えられたトルクを検出する第1トルクセンサの一例としての第1センサ43及び第2トルクセンサの一例としての第2センサ44を実装している。そして、第1センサ43は、基板58の第1面581に実装され、第2センサ44は、基板58における、第1面581の裏面であって、第1センサ55及び第2センサ56が実装されている面である第2面582に実装されるとともに、第1センサ55と第2センサ56との間に配置されている。このように、第1センサ55及び第2センサ56に加えて、第1センサ43及び第2センサ44を実装している基板58を保持部材70に挿入するだけで、トルクをも検出することが可能なセンサ装置1を容易に組み立てることが可能となる。
【0075】
また、保持部材70は、磁束を集めるコレクタの一例としての第1コレクタ41を保持するとともに、第1コレクタ41の移動を制限する制限部77を有する。また、保持部材70は、磁束を集めるコレクタの一例としての第2コレクタ42を保持するとともに、第2コレクタ42の移動を制限する制限部78を有する。これにより、第1従動歯車51、第2従動歯車52及び基板58に加えて、第1コレクタ41及び第2コレクタ42の少なくともいずれかを保持した状態の保持部材70がハウジング90に嵌め込まれる構成であるので、センサ装置1を容易に組み立てることが可能となる。また、第1コレクタ41及び第2コレクタ42がインサート成形により樹脂製の保持部材70と一体化される場合には、成形時又は成形後に第1コレクタ41又は第2コレクタ42の位置が動いてしまうことや、第1コレクタ41又は第2コレクタ42に生じる応力を抑えることが可能となる。
【0076】
また、センサ装置1においては、第1従動歯車51及び第2従動歯車52が、基板58よりも軸方向における第2側に設けられている。第2側は、ピニオンシャフト106が配置される側である。それゆえ、第1従動歯車51及び第2従動歯車52と、主動歯車35との噛み合いに起因する摩耗粉が重力で落ちたとしても基板58に付着し難くすることが可能となる。
【0077】
<第2の実施形態>
図12は、第2の実施形態に係るセンサ装置2のセンサユニット240の第1センサ243及び第2センサ244の概略構成を、半径方向内側から半径方向に見た図の一例である。
第2の実施形態に係るセンサユニット240は、第1の実施形態に係るセンサユニット40に対して、第1センサ43に相当する第1センサ243と第2センサ44に相当する第2センサ244との間に磁性体45が設けられていない点が異なる。以下、第1の実施形態と異なる点について説明する。第1の実施形態と第2の実施形態とで、同じものについては同じ符号を用い、その詳細な説明は省略する。
【0078】
第1センサ243は、第1センサ43と同様に、基板58の第1面581に実装されているが、第1面581に対して、第1センサ43と対称に実装されている。
第2センサ244は、第2センサ44と同様に、基板58の第2面582に実装されているが、第2面582に対して、第2センサ44と対称に実装されている。
そして、第1センサ243及び第2センサ244は、一部が基板58の第2部584内に収まるように実装されている。
【0079】
なお、第1センサ243における軸方向の第1側の面は、第1面581と同じ面上にあるか、又は、第1面581よりも第2側にあると良い。また、第2センサ244における軸方向の第2側の面は、第2面582と同じ面上にあるか、又は、第2面582よりも第1側にあると良い。そして、基板58に、第2部584を形成する代わりに、直方体状の貫通孔を形成し、当該貫通孔に第1センサ243及び第2センサ244を収容すると良い。これにより、第1センサ243及び第2センサ244を実装した基板58を保持部材70に嵌め込む際に、第1センサ243と第1コレクタ41の第1突出部411とが接触し難くなるとともに、第2センサ244と第2コレクタ42の第1突出部421とが接触し難くなる。
【0080】
<第3の実施形態>
図13は、第3の実施形態に係るセンサ装置3のセンサユニット340の保持部材370の概略構成の一例を示す図である。
図14は、第3の実施形態に係るセンサ装置3のセンサユニット340のハウジング390の概略構成の一例を示す図である。
第3の実施形態に係るセンサユニット340は、第1の実施形態に係るセンサユニット40に対して、保持部材70の連結部76とハウジング90の台座98の形状が異なる。以下、第1の実施形態と異なる点について説明する。第1の実施形態と第3の実施形態とで、同じものについては同じ符号を用い、その詳細な説明は省略する。
【0081】
第3の実施形態に係る保持部材370の連結部376は、円環状である。
第3の実施形態に係るハウジング390の台座398における内側周壁92側の部位には、台座398から半径方向内側に突出した壁399が設けられている。壁399は、半径方向内側の端面が、内側周壁92における半径方向内側の端面と同一平面となるように設けられている。
【0082】
そして、保持部材370の連結部376が、ハウジング390の突起99と壁399との間に嵌め込まれた状態で、突起99の先端が溶かされることによりカシメられる。壁399は、保持部材370とハウジング390とを熱カシメする際に、溶けた樹脂が流れ出るのを抑制する壁として機能する。例えば連結部376の貫通孔の周囲に、溶けた樹脂が流れ出るのを抑制する壁を形成する場合には、この壁の肉厚が薄くなってしまうか、壁の肉厚を確保するために貫通孔を幅方向の中央部側に形成する必要がある。しかしながら、第3の実施形態に係る連結部376及び台座398によれば、保持部材370の肉厚が薄くなることを抑制できるとともに、熱カシメを施す部位を幅方向の外側に設けることが可能となる。また、これにより、4つの熱カシメを施す部位における第1側の2つの部位と、第2側の2つの部位との幅方向の大きさを同じにすることが可能になるので、熱カシメを施す治具に対して、保持部材370とハウジング390とを軸方向に移動させることで、4つの部位に対して容易に熱カシメを施すことが可能となる。また、壁399の内面の曲率を小さくすることができるので、防水性を向上させることができる。
【0083】
<第4の実施形態>
図15は、第4の実施形態に係るセンサ装置4のセンサユニット440の保持部材470の概略構成の一例を示す図である。
第4の実施形態に係るセンサユニット440は、第1の実施形態に係るセンサユニット40に対して、基板58と保持部材70とを固定する点が異なる。以下、第1の実施形態と異なる点について説明する。第1の実施形態と第4の実施形態とで、同じものについては同じ符号を用い、その詳細な説明は省略する。
【0084】
第4の実施形態に係る、保持部材70に相当する保持部材470における幅方向の両端部それぞれに、軸方向に延びる棒状部471を設ける。そして、幅方向における第3側の端部における棒状部471を、基板58に形成された第3部585に嵌め込むとともに、幅方向における第4側の端部における棒状部471を、基板58に形成された第4部586に嵌め込む。その際、基板58に形成された突起587が棒状部471の周囲の一部を囲むように嵌め込む。そして、棒状部471における軸方向の端部を、軸方向に移動する一対の治具400にて加圧及び加熱することで熱カシメを施す。これにより、基板58が保持部材470に対して移動することを抑制することが可能となる。
【0085】
なお、保持部材470と基板58とを熱カシメにて固定する代わりに、スナップフィットにて固定しても良い。例えば、保持部材470の棒状部471の先端部に切り欠きを形成しておき、ハウジング90に設けた、半径方向内側に延びる突起を、当該切り欠きに差し込むことで棒状部471の先端部を押し広げて、基板58の第3部585及び第4部586の幅よりも大きくしても良い。これにより、基板58が保持部材470に対して移動することを抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0086】
1,2,3,4…センサ装置、35…主動歯車、40,240,340,440…センサユニット、41…第1コレクタ(コレクタ)、42…第2コレクタ(コレクタ)、43…第1センサ(第1トルクセンサ)、44…第2センサ(第2トルクセンサ)、50…サブユニット、51…第1従動歯車、52…第2従動歯車、53…第1永久磁石、54…第2永久磁石、55…第1センサ(第1回転角センサ)、56…第2センサ(第2回転角センサ)、58…基板、59…端子部材、60…弾性体、70,370,470…保持部材、77,78…制限部、81…第1軸受け、82…第2軸受け、90…ハウジング、96…支持部、100…電動パワーステアリング装置、106…ピニオンシャフト(回転軸)、130…コネクタ、581…第1面、582…第2面、591…端子、592…板状部
図1
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