(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154952
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 5/16 20060101AFI20221005BHJP
E06B 7/16 20060101ALI20221005BHJP
E05B 65/08 20060101ALI20221005BHJP
E05C 3/04 20060101ALI20221005BHJP
E06B 3/46 20060101ALN20221005BHJP
E06B 3/34 20060101ALN20221005BHJP
【FI】
E06B5/16
E06B7/16 C
E05B65/08 P
E05C3/04 J
E06B3/46
E06B3/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058229
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西塔 都志雄
(72)【発明者】
【氏名】石原 史彬
【テーマコード(参考)】
2E014
2E036
2E239
【Fターム(参考)】
2E014AA03
2E014CA01
2E014CA07
2E036AA01
2E036AA05
2E036BA01
2E036HC03
2E036HC06
2E239CA02
2E239CA22
2E239CA32
2E239CA58
2E239CA62
(57)【要約】
【課題】外観品質を損なう事態や作業が煩雑となる事態を招来することなく防火性を向上させること。
【解決手段】クレセント41及びクレセント受け42を施解錠操作することにより枠体10に対する障子30の開き移動を制限するようにした建具であって、障子30の框33には、周囲が壁部によって囲まれた中空部33aが構成されるとともに、壁部の一部に中空部33aと外部とを連通するように通気孔33bが設けられ、框33の中空部33aには、クレセント41及びクレセント受け42の施解錠操作に伴って連動する連動部材52,53が設けられ、連動部材52,53には、クレセント41及びクレセント受け42が施錠状態となった場合に通気孔33bに対応する位置に熱膨張性部材60が部分的に配設されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施錠部材を施解錠操作することにより枠体に対する障子の開き移動を制限するようにした建具であって、
前記障子には、前記施錠部材の施解錠操作に伴って連動する連動部材が設けられ、
前記連動部材には、前記施錠部材が施錠状態となっている場合に前記障子に設けられた切り欠き部分に対応して位置するように熱膨張性部材が配設されていることを特徴とする建具。
【請求項2】
前記障子の框には、周囲が壁部によって囲まれた中空部が構成されるとともに、前記壁部の一部に前記中空部と外部とを連通するように前記切り欠き部分が貫通孔状に設けられ、
前記連動部材は、前記框の中空部に長手に沿って移動可能に配設され、
前記連動部材には、前記施錠部材が施錠状態となった場合に前記切り欠き部分に対応する位置に前記熱膨張性部材が部分的に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記連動部材は、前記施錠部材が施錠状態となった場合に前記框の両端部から前記枠体に当接するように進出移動するものであり、樹脂によって形成される樹脂部分と金属によって形成される金属部分とを有し、前記金属部分に前記熱膨張性部材が配設されていることを特徴とする請求項2に記載の建具。
【請求項4】
前記障子の框には、周囲が壁部によって囲まれた中空部が構成されるとともに、前記壁部の一部に前記中空部と外部とを連通するように前記切り欠き部分が貫通孔状に設けられ、
前記連動部材は、前記框の外表面において前記枠体に対向する位置に長手に沿って移動可能に配設され、
前記連動部材には、施錠状態となった場合に前記切り欠き部分に対応する位置に前記熱膨張性部材が部分的に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防火性を考慮した建具に関する。
【背景技術】
【0002】
建具には、框に設けられた切り欠き部分に対応して熱膨張性部材を配設することにより防火性を高めるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、框の外表面に直接熱膨張性部材を配設した場合には、建具の外観品質が損なわれる懸念がある。中空部を有する框の場合には、熱膨張性部材を中空部に配設することで上述の問題を解決することができる。しかしながら、框の中空部に熱膨張性部材を配設するには、框の小口端部から実施する必要があるため、作業が煩雑となるばかりでなく、熱膨張性部材を所望の位置に配設すること自体が困難となる場合もある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、外観品質を損なう事態や作業が煩雑となる事態を招来することなく防火性を向上させることのできる建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る建具は、施錠部材を施解錠操作することにより枠体に対する障子の開き移動を制限するようにした建具であって、前記障子には、前記施錠部材の施解錠操作に伴って連動する連動部材が設けられ、前記連動部材には、前記施錠部材が施錠状態となっている場合に前記障子に設けられた切り欠き部分に対応して位置するように熱膨張性部材が配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、障子に設けられた連動部材に熱膨張性部材を配設するようにしている。このため、框の中空部に対しても容易に所望の位置に熱膨張性部材を配設することができ、框の外表面に対しても外部から視認し難い位置に熱膨張性部材を配設することができる。従って、外観品質を損なう事態や作業が煩雑となる事態を招来することなく建具の防火性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態1である建具の縦断面図である。
【
図3】
図1に示した建具の障子に適用する框を示したもので、(a)は横断面図、(b)は室外側から見た図である。
【
図4】
図1に示した建具の障子に適用する框を示したもので、(a)は外観斜視図、(b)は(a)に示した框の内部に配設される連動部材が解錠状態にある場合の斜視図、(c)は(a)示した框の内部に配設される連動部材が施錠状態にある場合の斜視図である。
【
図5】
図1に示した建具の障子に適用する框の切り欠き部分と連動部材との関係を室外側から示すもので、(a)は解錠状態の図、(b)は施錠状態の図である。
【
図6】本発明の実施の形態2である建具の縦断面図である。
【
図8】
図6に示した建具の障子を戸先側から見た図である。
【
図9】
図6に示した建具の障子に適用する框の切り欠き部分と連動部材との関係を戸先側から示すもので、(a)は解錠状態の図、(b)は施錠状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る建具の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下においては便宜上、見込み方向及び見付け方向という用語を用いる。見込み方向とは、図中の矢印Aで示すように、建具の奥行きに沿った方向である。見込み方向に沿った面については見込み面と称する場合がある。見付け方向とは、下枠等のように水平方向に沿って延在するものの場合、見込み方向に直交した上下に沿う方向である。縦枠等のように上下方向に沿って延在するものの場合には、見込み方向に直交した水平に沿う方向を見付け方向という。見付け方向に沿った面については、見付け面と称する場合がある。
【0010】
(実施の形態1)
図1、
図2は、本発明の実施の形態1である建具を示したものである。ここで例示する建具は、枠体10と、枠体10の室外側となる部分に配設した外障子20と、枠体10の室内側となる部分に配設した内障子30とを備えた引き違い窓と称されるものである。枠体10は、左右の縦枠11,12の上下両端部の間にそれぞれ上枠13及び下枠14を設けることによって四角形状に構成したものである。外障子20は、四角形状を成す複層ガラス21の左右両縁部に縦框22,23を設けるとともに、複層ガラス21の上下両縁部において縦框22,23の相互間となる部分に上框24及び下框25を装着することによって構成したものである。内障子30も同様に、四角形状を成す複層ガラス31の左右両縁部に縦框32,33を設けるとともに、複層ガラス31の上下両縁部において縦框32,33の相互間となる部分に上框34及び下框35を装着することによって構成したものである。本実施の形態1では、外障子20及び内障子30が枠体10に対して上枠13及び下枠14の長手に沿って移動可能に配設してあり、室内側から見て枠体10の左側に外障子20を配置し、かつ右側に内障子30を配置した場合に、枠体10の開口を閉じることが可能である。枠体10の開口を閉じた状態においては、室内側から見て外障子20の右側に配置される縦框23と、内障子30の左側に配置される縦框33とが召し合わせとなって互いに見込み方向に並設された状態となる。枠体10を構成する縦枠11,12、上枠13、下枠14及び障子20,30を構成する縦框22,23,32,33、上框24,34、下框25,35は、アルミニウム合金等の金属によって成形した押し出し形材であり、それぞれ長手に沿った全長にわたってほぼ一様となる断面形状を有するように構成してある。なお以下においては便宜上、外障子20の構成要素に「外方」という用語を付与し、内障子30の構成要素に「内方」という用語を付与して両者を区別する場合がある。また
図2に従って室内側から見た状態で枠体10の構成要素、外障子20の構成要素及び内障子30の構成要素それぞれの左右を特定することとする。
【0011】
枠体10の上枠13には、外方上框24及び内方上框34に対応する部分にそれぞれ上枠レール部13aが設けてあり、下枠14には、外方下框25及び内方下框35に対応する部分にそれぞれ下枠レール部14aが設けてある。上枠レール部13a及び下枠レール部14aは、それぞれ見付け方向に延在した薄板状を成すもので、上枠13及び下枠14の長手に沿ってほぼ全長となる部分に形成してある。
【0012】
左右の縦枠11,12には、見込み方向に沿って延在する薄板状の縦枠基部11a,12aにおいて互いに対向する内周側の見込み面に縦枠レール部11b,12bが設けてあるとともに、縦枠レール部11b,12bよりも室内側となる部分にそれぞれ当接壁部11c,12cが設けてある。室内側から見て左側に位置する縦枠11には、縦枠基部11aにおいて外方縦框22に対応する部分にのみ縦枠レール部11b及び当接壁部11cが設けてある。室内側から見て右側に位置する縦枠12には、縦枠基部12aにおいて内方縦框32に対応する部分にのみ縦枠レール部12b及び当接壁部12cが設けてある。これらの縦枠レール部11b,12b及び当接壁部11c,12cは、それぞれ見付け方向に延在した薄板状を成すもので、縦枠11,12の長手に沿ってほぼ全長となる部分に形成してある。当接壁部11c,12cの延在縁部には、室外側となる部分にそれぞれシール部材11d,12dが配設してある。
【0013】
外障子20の外方縦框22,23、外方上框24及び外方下框25は、それぞれの内周側となる部分に複層ガラス21の縁部を収容するガラス収容溝21aを有したものである。戸先となる左側の外方縦框(以下、区別する場合に外方戸先框22という)及び外方上框24には、それぞれ2つのガイド壁部22a,24aが設けてあるとともに、外方下框25に戸車26が配設してある。外方戸先框22のガイド壁部22aは、異形筒状を成す外方縦框基部22bの左側端部において室外側に位置する縁部及び室内側に位置する部分からそれぞれ左側に向けて互いにほぼ平行となるように延在したものである。ガイド壁部22aの相互間には、縦枠レール部11bに係合することにより、枠体10に対して外障子20を室内側に引き寄せるように機能する引き寄せ部材27が配設してある。外方上框24のガイド壁部24aは、角筒状を成す外方上框基部24bの室外側に位置する縁部及び室内側に位置する縁部からそれぞれ上方に向けて互いにほぼ平行となるように延在したものである。ガイド壁部24aの上縁部には、それぞれシール部材24cが配設してある。戸車26は、図には明示していないが、見込み方向に沿って延在する車軸を介して外方下框25の内部に回転可能に配設したもので、下方周面が外部に露出した状態で外方下框25の長手方向に沿った複数箇所に設けてある。
【0014】
上記のように構成した外障子20は、外方上框24の2つのガイド壁部24aの間に上枠レール部13aを配置し、かつ戸車26を下枠レール部14aの上縁部に転動可能に載置させることにより、上枠13及び下枠14の延在方向に沿って移動することが可能である。外障子20を閉じた位置に配置した場合には、外方戸先框22に設けた2つのガイド壁部22aの間に左側の縦枠11に設けた縦枠レール部11bが進入することになる。
【0015】
内障子30の内方縦框32,33、内方上框34及び内方下框35は、それぞれの内周側となる部分に複層ガラス31の縁部を収容するガラス収容溝31aを有したものである。戸先となる右側の内方縦框(以下、区別する場合に内方戸先框32という)及び内方上框34にそれぞれ2つのガイド壁部32a,34aを有するとともに、内方下框35に戸車36を備えている。内方戸先框32のガイド壁部32aは、異形筒状を成す内方縦框基部32bの右側端部において室外側に位置する縁部及び室内側に位置する部分からそれぞれ右側に向けて互いにほぼ平行となるように延在したものである。ガイド壁部32aの相互間には、縦枠レール部12bに係合することにより、枠体10に対して内障子30を室内側に引き寄せるように機能する引き寄せ部材37が配設してある。内方上框34のガイド壁部34aは、角筒状を成す内方上框基部34bの室外側に位置する縁部及び室内側に位置する縁部からそれぞれ上方に向けて互いにほぼ平行となるように延在したものである。ガイド壁部34aの上縁部には、それぞれシール部材が34c配設してある。戸車36は、図には明示していないが、見込み方向に沿って延在する車軸を介して内方下框35の内部に回転可能に配設したもので、下方周面が外部に露出した状態で内方下框35の長手方向に沿った複数箇所に設けてある。
【0016】
また、内障子30の召し合わせとなる内方縦框(以下、区別する場合に内方召し合わせ框33という)には、中空部33a及び通気孔(切り欠き部分)33bが設けてある。中空部33aは、
図3に示すように、室外側の外方壁部33c、室内側の内方壁部33d及び左右の側壁部33e,33fの間に構成されたもので、内方召し合わせ框33の長手に沿って延在した空所である。本実施の形態1の内方召し合わせ框33には、中空部33aの内部を室内外に分割するように仕切り壁部33gが設けてある。通気孔33bは、中空部33aの内部と外部とを連通するもので、外方壁部33cにおいて上方に位置する部分及び下方に位置する部分の2カ所に形成してある。図示の例では、内方召し合わせ框33の長手に沿った長孔状の切り欠きによって通気孔33bが構成してある。図には明示していないが、内方召し合わせ框33において内周側に位置する側壁部33fには、中空部33aの内部とガラス収容溝31aとの間を連通する連通孔(図示せず)が適所に設けてある。
【0017】
上記のように構成した内障子30は、内方上框34の2つのガイド壁部34aの間に上枠レール部13aを配置し、かつ戸車36を下枠レール部14aの上縁部に転動可能に載置させることにより、外障子20よりも室内側において上枠13及び下枠14の延在方向に沿って移動することが可能である。内障子30を閉じた位置に配置した場合には、内方戸先框32に設けた2つのガイド壁部32aの間に右側の縦枠12に設けた縦枠レール部12bが進入することになる。
【0018】
本実施の形態1の建具では、外障子20の召し合わせとなる外方縦框(以下、区別する場合に外方召し合わせ框23という)と内方召し合わせ框33との間に、煙返し23h,33hが設けてあるとともに、クレセント(施錠部材)41及びクレセント受け(施錠部材)42が設けてある。
【0019】
外方召し合わせ框23に設けた煙返し23hは、外周側に位置する縁部から室内に向けて突出した後、戸先側に向けてほぼ直角に屈曲したものである。内方召し合わせ框33に設けた煙返し33hは、室外に臨む見付け面から室外に向けて突出した後、戸先側に向けてほぼ直角に屈曲したものである。これらの煙返し23h,33hは、枠体10の開口を閉じた場合に互いに縦框23,33との間に相手側の煙返し23h,33hが挿入された状態となり、見込み方向に沿った互いの離隔する方向への移動を制限するように機能する。なお、この状態においても、外障子20及び内障子30を開く方向へ移動させることは可能である。
【0020】
クレセント41及びクレセント受け42は、互いに係合した場合に施錠状態となり、外障子20及び内障子30の開く方向への移動を阻止するように機能するものである。クレセント41は、クレセント軸41aを中心として回転する状態でクレセント本体41bに支持してあり、クレセント本体41bを介して内方召し合わせ框33の見込み面に取り付けてある。枠体10の開口を閉じた状態でクレセント41を施錠方向に回転操作すると、クレセント41がクレセント受け42に係合することになる。クレセント41を解錠方向に回転操作すれば、クレセント41とクレセント受け42との係合状態が解除され、外障子20及び内障子30をそれぞれ開く方向に移動させることが可能である。
【0021】
図4に示すように、クレセント41には、中間作動部材51を介して上方連動部材52及び下方連動部材53が連係してある。中間作動部材51は、クレセント41の施解錠操作に伴うクレセント軸41aの回転を内方召し合わせ框33の長手に沿った上下の直線移動に変換するもので、内方召し合わせ框33の中空部33aに配設してある。上方連動部材52は、中間作動部材51の上端部から上方に延在し、下方連動部材53は、中間作動部材51の下端部から下方に延在するものである。これらの連動部材52,53は、クレセント41が解錠状態にある場合、中間作動部材51に近接した位置に配置される一方、クレセント41が施錠方向に回転操作されると、それぞれが内方召し合わせ框33の端部に向けて進出移動するように中間作動部材51に連係してある。これら上方連動部材52及び下方連動部材53は、進出移動した場合に上枠13の上枠レール部13aに当接するとともに、下枠14の下枠レール部14aに当接することによって枠体10に対して内障子30を室内側に移動させ、内障子30と枠体10との間を互いに押圧した状態に維持することが可能である。
【0022】
連動部材52,53としては、中間作動部材51に連結される金属製の金属部分52a,53aと、枠体10に当接される樹脂製の樹脂部分52b,53bとを備えて構成したものを適用している。連動部材52,53の金属部分52a,53aは、クレセント41が施錠状態及び解錠状態のいずれにある場合にも、上述した内方召し合わせ框33の通気孔33bに対応する高さ位置を含むようにその長さが設定してあり、かつ外周側に位置する表面が通気孔33bの開口縁に沿うように配設してある。この金属部分52a,53aの外周側に位置する表面には、一部に熱膨張性部材60が配設してある。熱膨張性部材60は、熱により膨張する不燃性または難燃性の耐火部材であり、例えば熱膨張性を有した黒鉛含有の発泡材を適用することができる。本実施の形態1では、
図5(a)に示すように、クレセント41が解錠状態にある場合、通気孔33bよりも中間作動部材51に近接した位置に配置される一方、
図5(b)に示すように、クレセント41が施錠状態となった場合に、通気孔33bの全長にわたる部分に対応した位置に配置されるように、金属部分52a,53aに熱膨張性部材60が配設してある。
【0023】
上記のように構成した建具では、外障子20及び内障子30をそれぞれ閉じた位置に配置した状態でクレセント41を施錠すると、外障子20及び内障子30の移動が制限されるとともに、連動部材52,53によって内障子30が枠体10に押圧された状態となる。従って、この状態においては、枠体10と内障子30との密着性が高まることになり、水密性及び防音性の向上を図ることが可能となる。このとき、連動部材52,53の樹脂部分52b,53bを介して枠体10に当接するため、枠体10に損傷を来すおそれがない。また、内障子30のガラス収容溝31aは、内方召し合わせ框33の通気孔33b、中空部33a及び連通孔(図示せず)を通じて外部に連通した状態となる。これにより、室外とガラス収容溝31aとの間の圧力差に起因した水の浸入を防止することができるようになる。
【0024】
さらに、この状態においては、上述したように、連動部材52,53の金属部分52a,53aに配設した熱膨張性部材60が内方召し合わせ框33に形成した通気孔33bに対応して配置される。従って、火災等の発生によって建具が高温に晒され、樹脂部分52b,53bが溶融、もしくは焼失した場合にも、熱膨張性部材60の膨張によって通気孔33bが確実に塞がれることになる。すなわち、熱膨張性部材60が膨張した場合には、上述した内方召し合わせ框33の通気孔33b、中空部33a及び連通孔(図示せず)を通じたガラス収容溝31aまでの経路が火炎の伝搬経路となるおそれがない。これにより、樹脂部分52b,53bが溶融、もしくは焼失することによって中空部33aに可燃性のガスが発生したとしても、非加熱面側等の外部に延焼する事態を招来するおそれはない。
【0025】
なお、上述した実施の形態1では、クレセント41の施解錠操作に伴って連動する連動部材52,53を框33の中空部33aに配設したものを例示しているが、本発明は必ずしもこれに限定されず、以下に説明する実施の形態2のように、連動部材が框の外部に配設されたものであっても同様に作用効果を奏することが可能である。
【0026】
(実施の形態2)
図6、
図7は、本発明の実施の形態2である建具を示したものである。ここで例示する建具は、枠体110及び障子120を備え、枠体110に対して障子120が上下方向の軸心を中心として回転することにより室外側に突出するように開く縦すべり出し窓と称されるものである。枠体110は、左右の縦枠111,112の上下両端部の間にそれぞれ上枠113及び下枠114を設けることによって四角形状に構成したものである。障子120は、四角形状を成すガラス121の左右両縁部に縦框122,123を設けるとともに、ガラス121の上下両縁部において縦框122,123の相互間となる部分に上框124及び下框125を装着することによって構成したものである。枠体110を構成する縦枠111,112、上枠113、下枠114及び障子120を構成する縦框122,123、上框124、下框125は、アルミニウム合金等の金属によって成形した押し出し形材であり、それぞれ長手に沿った全長にわたってほぼ一様となる断面形状を有するように構成してある。なお以下においては便宜上、
図7に従って室内側から見た状態で障子120の構成要素及び障子120の構成要素の左右をそれぞれ特定することとする。
【0027】
枠体110を構成する左右の縦枠111,112、上枠113及び下枠114は、それぞれ見込み方向に延在する枠基部111a,112a,113a,114aの室内側となる縁部に当接壁部111b,112b,113b,114bを有して構成してある。当接壁部111b,112b,113b,114bは、内周側に向けて延在した薄板状を成すもので、延在縁部において室外に臨む部分にそれぞれシール部材111c,112c,113c,114cが配設してある。
【0028】
障子120の縦框122,123、上框124及び下框125は、それぞれ中空の角筒状を成す框基部122a,123a,124a,125aと、框基部122a,123a,124a,125aの室外側となる部分にガラス収容溝121aとを備えて構成したものである。図には明示していないが、本実施の形態2では、上框124の框基部124aと上枠113との間及び下框125の框基部と下枠114との間にそれぞれ開閉機構130が設けてあり、これら上下の開閉機構130の動作により、枠体110に対して障子120が上下方向の軸心を中心として開閉移動することになる。
【0029】
障子120のガラス収容溝121aは、框基部122a,123a,124a,125aの室外側に位置する縁部から外周側に向けて延在した内方見付け壁部122b,123b,124b,125bと、内方見付け壁部122b,123b,124b,125bから室外に向けて見込み方向に延在した見込み壁部122c,123c,124c,125cと、見込み壁部122c,123c,124c,125cから内周側に向けて延在した外方見付け壁部122d,123d,124d,125dとを有したものである。上框124では、内方見付け壁部124b、見込み壁部124c及び外方見付け壁部124dのいずれもが框基部124aと一体に成形してある。縦框122,123及び下框125では、内方見付け壁部122b,123b,125b及び見込み壁部122c,123c,125cが框基部122a,123a,125aと一体に成形してある一方、外方見付け壁部122d,123d,125dが押縁として框基部122a,123a,125aとは別体に成形してある。
【0030】
縦框122,123及び下框125には、框基部122a,123a,125aの外周側に位置する部分にガイド部122e,123e,125eが一体に設けてある。ガイド部122e,123e,125eは、框基部122a,123a,125aの両側縁部からそれぞれ外周に向けて延在した後、互いに近接する方向に屈曲したものである。室内側から見て左側に位置する縦框(以下、区別する場合に戸先框122という)から下框125にわたる部分には、ガイド部122e,125eに金属製の連動部材140が配設してある。連動部材140は、ガイド部122e,125eをガイドとして戸先框122及び下框125の長手に沿って移動可能に配設したもので、
図8に示すように、互いの間が可撓性を有したコーナドライブ141によって連結してある。
【0031】
図6、
図7に示すように、戸先框122に配設した連動部材140には、連係ピン142及びロックピン(施錠部材)143が設けてある。連係ピン142は、戸先框122の框基部122aに設けたピン挿通孔(切り欠き部分)142aを介して框基部122aを貫通し、框基部122aの内周側となる見込み面に設けた操作ハンドル(施錠部材)150に連結してある。操作ハンドル150は、ハンドル本体151を介して戸先框122に取り付けたもので、ハンドル本体151に対して左右に沿ったハンドル軸150aを中心に回転操作することが可能である。上述の連係ピン142は、
図8、
図9(a)に示すように、操作ハンドル150が室内に向けてほぼ水平の状態となった場合に戸先框122のピン挿通孔142aの上端部に位置する一方、この状態から下方に向けてほぼ90°回転操作した場合に、
図9(b)に示すように、ピン挿通孔142aの下端部に位置するように操作ハンドル150に連係してある。すなわち、この建具では、操作ハンドル150が室内に向けてほぼ水平の状態となった場合に戸先框122に対して連動部材140が上方に位置し、この状態から操作ハンドル150を下方に回転させることにより戸先框122に対して連動部材140が下方に移動することになる。
【0032】
ロックピン143は、
図7に示すように、連動部材140において縦枠111に対向する表面から縦枠111に向けて突出するように設けたものである。図には明示していないが、このロックピン143は、操作ハンドル150が室内に向けてほぼ水平の状態となった場合に縦枠111に設けたピン受部材(施錠部材)160よりも上方に位置する一方、操作ハンドル150を90°回転操作した場合に下方に移動してピン受部材160に係合するものである。ロックピン143がピン受部材160に係合した状態においては、枠体110に対する障子120の室外側への移動が阻止されることになる。ロックピン143がピン受部材160よりも上方に位置した状態においては、枠体110に対して戸先框122を室外側に移動させることが可能となる。
【0033】
また、連動部材140において戸先框122に対向する表面には、一部に熱膨張性部材170が配設してある。本実施の形態2では、
図9(a)に示すように、操作ハンドル150が室内に向けてほぼ水平の状態となった場合、ピン挿通孔142aよりも上方に配置される一方、
図9(b)に示すように、操作ハンドル150が下方に向けてほぼ90°回転操作された場合に、ピン挿通孔142aの全長にわたる部分に対応した位置に配置されるように、連動部材140に熱膨張性部材170が配設してある。
【0034】
上記のように構成した建具では、障子120を閉じた位置に配置した状態で操作ハンドル150を下方に向けた状態に配置すると、ロックピン143がピン受部材160に係合することにより障子120の移動が制限された状態(施錠状態)となる。この状態においては、上述したように、連動部材140に配設した熱膨張性部材170が戸先框122に形成したピン挿通孔142aに対応して配置される。従って、火災等の発生によって建具が高温に晒された場合には、熱膨張性部材170の膨張によってピン挿通孔142aが塞がれることになり、ピン挿通孔142aが火炎の伝搬経路となるおそれがなくなるため、防火性の点で有利となる。
【0035】
なお、上述した実施の形態では、施錠部材が施錠状態となっている場合に障子に設けた孔33b,142aに対応した高さ位置に熱膨張性部材60,170を配設するようにしているが、必ずしも切り欠き部分は孔である必要はなく、薄肉部等のように比較的防火性の弱い部分に対応して位置するように熱膨張性部材を配設すれば良い。
【0036】
以上のように、本発明に係る建具は、施錠部材を施解錠操作することにより枠体に対する障子の開き移動を制限するようにした建具であって、前記障子には、前記施錠部材の施解錠操作に伴って連動する連動部材が設けられ、前記連動部材には、前記施錠部材が施錠状態となっている場合に前記障子に設けられた切り欠き部分に対応して位置するように熱膨張性部材が配設されていることを特徴としている。
この発明によれば、障子に設けられた連動部材に熱膨張性部材を配設するようにしている。このため、框の中空部に対しても容易に所望の位置に熱膨張性部材を配設することができ、框の外表面に対しても外部から視認し難い位置に熱膨張性部材を配設することができる。従って、外観品質を損なう事態や作業が煩雑となる事態を招来することなく建具の防火性を向上させることが可能となる。熱膨張性部材としては必ずしも切り欠き部分に対応した位置に部分的に設ける必要はなく、框の長手に沿った全長にわたって配設しても良い。
【0037】
また本発明は、上述した建具において、前記障子の框には、周囲が壁部によって囲まれた中空部が構成されるとともに、前記壁部の一部に前記中空部と外部とを連通するように前記切り欠き部分が貫通孔状に設けられ、前記連動部材は、前記框の中空部に長手に沿って移動可能に配設され、前記連動部材には、前記施錠部材が施錠状態となった場合に前記切り欠き部分に対応する位置に前記熱膨張性部材が部分的に配設されていることを特徴としている。
この発明によれば、施錠部材が施錠状態となっている場合にのみ熱膨張性部材が切り欠き部分に対応した位置に配設されることになり、施錠部材が解錠されて障子が開放位置に配置されている場合であっても切り欠き部分を通じて熱膨張性部材が外部から視認されるおそれがない。しかも、切り欠き部分に対応して配設した熱膨張性部材が部分的であるため、防火性を確保した上でコストの低減を図ることが可能となる。
【0038】
また本発明は、上述した建具において、前記連動部材は、前記施錠部材が施錠状態となった場合に前記框の両端部から前記枠体に当接するように進出移動するものであり、樹脂によって形成される樹脂部分と金属によって形成される金属部分とを有し、前記金属部分に前記熱膨張性部材が配設されていることを特徴としている。
この発明によれば、連動部材の金属部分に熱膨張性部材を配設しているため、建具が高温に晒された場合にも熱膨張性部材が膨張することで切り欠き部分が確実に塞がれるため、外部へ延焼する事態を招来するおそれはない。
【0039】
また本発明は、上述した建具において、前記障子の框には、周囲が壁部によって囲まれた中空部が構成されるとともに、前記壁部の一部に前記中空部と外部とを連通するように前記切り欠き部分が貫通孔状に設けられ、前記連動部材は、前記框の外表面において前記枠体に対向する位置に長手に沿って移動可能に配設され、前記連動部材には、施錠状態となった場合に前記切り欠き部分に対応する位置に前記熱膨張性部材が部分的に配設されていることを特徴としている。
この発明によれば、切り欠き部分に対応して配設した熱膨張性部材が部分的であるため、防火性を確保した上でコストの低減を図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0040】
10,110 枠体、30 内障子、33 内方召し合わせ框、33a 中空部、33c 外方壁部、33d 内方壁部33d、33e,33f 側壁部33e、41 クレセント、42 クレセント受け、52 上方連動部材、53 下方連動部材、52a,53a 金属部分、52b,53b 樹脂部分、60,170 熱膨張性部材、120 障子、140 連動部材、143 ロックピン、150 操作ハンドル、160 ピン受部材