(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154956
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】米飯様食品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/10 20160101AFI20221005BHJP
A23L 19/00 20160101ALI20221005BHJP
【FI】
A23L7/10 E
A23L19/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058233
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000125912
【氏名又は名称】株式会社あじかん
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 崇幸
(72)【発明者】
【氏名】天野 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】平尾 凌
(72)【発明者】
【氏名】小林 沙織
(72)【発明者】
【氏名】高梨 雅彦
【テーマコード(参考)】
4B016
4B023
【Fターム(参考)】
4B016LG05
4B016LK01
4B016LK07
4B016LK08
4B016LK10
4B016LP03
4B016LP05
4B016LP06
4B016LP10
4B016LP13
4B023LE05
4B023LK01
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4B023LK07
4B023LK09
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4B023LP05
4B023LP07
4B023LP08
4B023LP17
4B023LP20
4B023LQ03
(57)【要約】
【課題】代替米としての質が高い米飯様食品およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る米飯様食品1は、最大寸法が0.5mm以上12mm以下である干瓢の裁断物2を用いている。米飯様食品1は、糖質を含んでいることが好ましい。糖質は、マルチトール、ラクチトール、イソマルツロース、イソマルツロース還元物、ソルビトール、キシリトール、エリスリトールおよびトレハロースの群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
最大寸法が0.5mm以上12mm以下である干瓢の裁断物を用いた米飯様食品。
【請求項2】
糖質を含む請求項1に記載の米飯様食品。
【請求項3】
前記糖質が、マルチトール、ラクチトール、イソマルツロース、イソマルツロース還元物、ソルビトール、キシリトール、エリスリトールおよびトレハロースの群から選択される少なくとも1種である請求項2に記載の米飯様食品。
【請求項4】
前記糖質の添加量が3.0質量%以上50.0質量%以下である請求項2または請求項3に記載の米飯様食品。
【請求項5】
前記裁断物の含有量が5.0質量%以上95.0質量%以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の米飯様食品。
【請求項6】
乾燥干瓢を水戻し処理する水浸漬処理工程と、
前記水戻し処理した干瓢を最大寸法が0.5mm以上12mm以下の裁断物にする裁断工程と、
前記裁断物をボイル処理するボイル処理工程および前記裁断物をスチーム処理するスチーム処理工程のうち少なくとも一方を行う加熱処理工程と、
前記加熱処理した裁断物に味付け調味する味付け調味工程と、
前記味付け調味した裁断物を真空包装する真空包装工程と、
前記真空包装された裁断物をボイル殺菌処理するボイル殺菌処理工程および前記真空包装された裁断物をスチーム殺菌処理するスチーム殺菌処理工程のうち少なくとも一方を行う加熱殺菌処理工程と、
を有する米飯様食品の製造方法。
【請求項7】
水戻し処理した後の最大寸法が0.5mm以上12mm以下となるように裁断された乾燥干瓢の裁断物を水戻し処理する水浸漬処理工程と、
前記水戻し処理した裁断物をボイル処理するボイル処理工程および前記裁断物をスチーム処理するスチーム処理工程のうち少なくとも一方を行う加熱処理工程と、
前記加熱処理した裁断物に味付け調味する味付け調味工程と、
前記味付け調味した裁断物を真空包装する真空包装工程と、
前記真空包装された裁断物をボイル殺菌処理するボイル殺菌処理工程および前記真空包装された裁断物をスチーム殺菌処理するスチーム殺菌処理工程のうち少なくとも一方を行う加熱殺菌処理工程と、
を有する米飯様食品の製造方法。
【請求項8】
前記味付け調味工程で糖質を添加する請求項6または請求項7に記載の米飯様食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米飯様食品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低カロリー化、糖質の低減化、種々の栄養分の摂取などのさまざまな目的で、米飯の一部をコメ以外の食材で製造した代替米(米飯様食品)に置き換えることが行われている。米飯様食品として、例えば、キビ・アワ・ヒエなどの雑穀や大麦などが広く知られている。また、近年では、こんにゃく、ブロッコリー、カリフラワーなどを米粒程度の大きさに成形したものも知られている。また、米飯様食品として、例えば、特許文献1に記載されたものがある。
【0003】
特許文献1に記載の米飯様食品は、キャベツの裁断物を用いた容器詰め米飯様食品であって、前記裁断物の50質量%以上が茎および中肋の裁断物であり、前記裁断物の70質量%以上が0.5mm以上12mm以下の大きさであることを特徴としている。特許文献1によれば、この米飯様食品は、食事の糖質を低減することができる旨記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記した雑穀や大麦は、食感が米飯と異なっている。また、ブロッコリーやカリフラワーなどを米粒程度の大きさに成形したものや特許文献1に記載されているキャベツの裁断物を用いた米飯様食品には、原材料に由来する香り、食感、色合いが残っており、米飯と異なっている。また、ブロッコリーやカリフラワー、キャベツなど野菜原料由来の代替米は弾力に乏しい。こんにゃくを米粒程度の大きさに成形したものは、こんにゃく由来の独特の香りや食感があるため、米飯とは異なる香り、食感に変化する印象がある。更に、ブロッコリー、カリフラワー、キャベツ、こんにゃくのいずれも、酢飯などに加工すると、より違和感が強くなる。つまり、従来のいずれの代替米(米飯様食品)も何らかの点で質が米飯と異なっている。
【0006】
本発明は前記状況に鑑みて成されたものであり、代替米としての質が高い米飯様食品およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決した本発明に係る米飯様食品は、最大寸法が0.5mm以上12mm以下である干瓢の裁断物を用いている。
また、本発明に係る米飯様食品の製造方法は、乾燥干瓢を水戻し処理する水浸漬処理工程と、前記水戻し処理した干瓢を最大寸法が0.5mm以上12mm以下の裁断物にする裁断工程と、前記裁断物をボイル処理するボイル処理工程および前記裁断物をスチーム処理するスチーム処理工程のうち少なくとも一方を行う加熱処理工程と、前記加熱処理した裁断物に味付け調味する味付け調味工程と、前記味付け調味した裁断物を真空包装する真空包装工程と、前記真空包装された裁断物をボイル殺菌処理するボイル殺菌処理工程および前記真空包装された裁断物をスチーム殺菌処理するスチーム殺菌処理工程のうち少なくとも一方を行う加熱殺菌処理工程と、を有する。
さらに、本発明に係る米飯様食品の製造方法は、水戻し処理した後の最大寸法が0.5mm以上12mm以下となるように裁断された乾燥干瓢の裁断物を水戻し処理する水浸漬処理工程と、前記水戻し処理した裁断物をボイル処理するボイル処理工程および前記裁断物をスチーム処理するスチーム処理工程のうち少なくとも一方を行う加熱処理工程と、前記加熱処理した裁断物に味付け調味する味付け調味工程と、前記味付け調味した裁断物を真空包装する真空包装工程と、前記真空包装された裁断物をボイル殺菌処理するボイル殺菌処理工程および前記真空包装された裁断物をスチーム殺菌処理するスチーム殺菌処理工程のうち少なくとも一方を行う加熱殺菌処理工程と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、代替米としての質が高い米飯様食品およびその製造方法を提供できる。
前述した以外の課題、構成および効果は以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る米飯様食品に用いられる干瓢の裁断物を撮影した写真である。
【
図2】米飯と干瓢の裁断物とを混ぜて酢飯にした本実施形態に係る米飯様食品を撮影した写真である。
【
図3】本実施形態に係る米飯様食品の製造方法の内容を説明するフローチャートである。
【
図4】クリープメーターによる測定結果を示すグラフである。図中、縦軸はかたさ(荷重)[N]を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、適宜図面を参照して本発明に係る米飯様食品1およびその製造方法の一実施形態について詳細に説明する。参照する図面において、
図1は、本実施形態に係る米飯様食品1に用いられる干瓢の裁断物2を撮影した写真である。
図2は、炊いた米(炊飯米)3と干瓢の裁断物2とを混ぜて酢飯にした本実施形態に係る米飯様食品1を撮影した写真である。
図3は、本実施形態に係る米飯様食品の製造方法の内容を説明するフローチャートである。
【0011】
[米飯様食品]
図1に示すように、本実施形態に係る米飯様食品1は、最大寸法が0.5mm以上12mm以下である干瓢の裁断物2を用いている。干瓢は、ユウガオの果実を紐状に剥いて乾燥させた乾物である。本実施形態における干瓢の裁断物2は、乾燥干瓢を水戻し処理した後、前記最大寸法に裁断したもの、または、水戻し処理後の最大寸法が前記した範囲になるように裁断された乾燥干瓢の裁断物を水戻し処理したものである。干瓢は、漂白している場合は白色を呈し、無漂白の場合は乳白色から薄い黄褐色を呈する。多くの場合、干瓢は、水で戻して煮て、巻き寿司の具材や、煮物、和え物などとして使われる。また、多くの場合、干瓢は、出汁や醤油などによって着色され、薄茶色から濃い茶色を呈する。本実施形態では、白米の代替米とする場合は白色から乳白色であるものが好ましい。また、玄米の代替米や炊き込みご飯における代替米とする場合は乳白色から薄い黄褐色であるものが好ましい。また、炊き込みご飯における代替米とする場合は、出汁や醤油や着色料などで着色することもできる。本実施形態に係る米飯様食品1の色は任意に設定できる。
【0012】
前記したように、本実施形態に係る米飯様食品1は、干瓢の裁断物2の最大寸法を0.5mm以上12mm以下としているので、
図2に示すように、炊飯米3とほぼ同じ寸法となり、見た目および食感などが炊飯米3に似たものとなる。そのため、本実施形態に係る米飯様食品1は、代替米として質の高いものとなる。この効果は、前記最大寸法の範囲に属する裁断物2が、裁断物2全体に対して好ましくは85質量%以上、より好ましくは95質量%以上である場合に、より好適に奏することができる。
【0013】
干瓢の裁断物2の最大寸法が0.5mm未満であると長さが短すぎるため炊飯米3との相違が大きくなってしてしまい、代替米としての質が低下する。また、干瓢の裁断物2の最大寸法が0.5mm未満であると長さが短すぎるため、裁断物2が炊飯米3と炊飯米3との間に入り込んで粘りを生じさせ、ご飯全体の食味が低下する。一方、干瓢の裁断物2の最大寸法が12mmを超える場合も長さが長すぎるため炊飯米3との相違が大きくなってしてしまい、代替米としての質が低下したり、代替米としての役割を果たすことができなかったりする。
代替米としての質をより高め、炊飯米3と遜色ないものとする観点から、干瓢の裁断物2の最大寸法は1.0mm以上が好ましい。また、同様の観点から、干瓢の裁断物2の最大寸法は10.0mm以下が好ましい。
【0014】
本実施形態に係る米飯様食品1は、干瓢の裁断物2の幅が0.5mm以上5.0mm以下であることが好ましい。なお、前記した幅とは、裁断物2の最大寸法に対して垂直な断面における最大の寸法をいう。干瓢の裁断物2の幅をこのようにすると、干瓢の裁断物2の最大寸法および幅が炊飯米3とほぼ同じとなるので見た目が向上し、代替米としての質が高まる。なお、本実施形態に係る米飯様食品1においては、干瓢の裁断物2の横断面形状を円形、楕円形または多角形とすることができる。ここで、干瓢の裁断物2の横断面形状が円形の場合における前記幅は直径であり、楕円形の場合における前記幅は長径であり、多角形の場合における前記幅は横断面形状のうちで最も離れた2点間の長さである。代替米としての質をより高める観点から、裁断物2の幅は1.0mm以上4.0mm以下が好ましい。
【0015】
本実施形態における干瓢の裁断物2は、最大寸法の長さ方向に長い円柱状、楕円柱状または角柱状であることが好ましい。このようにすると、裁断物2の外観が炊飯米3により近いものとなるので、代替米としての質がより高まる。また、本実施形態に係る米飯様食品1は、長手方向の両端が窄まった形状とすることがより好ましい。このようにすると、外観がさらに炊飯米3に近いものとなるので、代替米としての質がさらに高まる。
【0016】
なお、前記した干瓢の裁断物2の最大寸法および幅は、水戻し処理した干瓢を後述する裁断工程S2で裁断する際に制御することができる。また、前記した干瓢の裁断物2は、後述する水戻し処理工程S1で水戻し処理を行った後の最大寸法や幅がそれぞれ前記数値範囲となるように予め裁断されたものであってもよい。これらについては後述する。
【0017】
また、本実施形態に係る米飯様食品1は、糖質を含んでいてもよい。糖質とは、炭水化物から食物繊維を除いたものをいい、砂糖やブドウ糖などの糖類のほか、でんぷん、糖アルコール、オリゴ糖などが含まれる。糖質を含んでいることによって、本実施形態に係る米飯様食品1は、味および香りが炊飯米3に近づき、代替米としての質がより高まる。
【0018】
本実施形態においては、糖質として、例えば、マルチトール、ラクチトール、イソマルツロース、イソマルツロース還元物、ソルビトール、キシリトール、エリスリトールおよびトレハロースの群から選択される少なくとも1種を用いることができる。これらの選択肢から選択される糖質は低カロリーかつ非う蝕性である。そのため、これらを選択した場合、これらの効果が得られる米飯様食品1とすることができる。
【0019】
本実施形態における糖質の添加量は、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。このようにすると、本実施形態に係る米飯様食品1は、ご飯を咀嚼したときに得られる程度の甘さを有するようになり、味がより確実に炊飯米3に近づくため、代替米としての質がより高まる。代替米としての質をさらに高める観点から、糖質の添加量は5.0質量%以上または10.0質量%以上であることが好ましい。同様の観点から、糖質の添加量は40.0質量%以下または20.0質量%以下であることが好ましい。
【0020】
本実施形態に係る米飯様食品1は裁断物2を単独で用いたものでもよいし、通常の炊飯米3と混ぜた状態で用いたものでもよい。なお、裁断物2と炊飯米3とを混ぜた米飯様食品1は、酢を混合して攪拌し、酢飯にすることができる。なお、この酢飯にした状態を撮影したものが、
図2に示す写真である。本実施形態に係る米飯様食品1は代替米としての質が高いので、酢飯にした場合も
図2に示すように裁断物2と炊飯米3との見分けがつき難く(違和感がなく)、一般的な酢飯と同じように扱い、喫食することができる。
【0021】
また、本実施形態に係る米飯様食品1は、通常の炊飯米3や他の食材と混ぜたものであってもよい。他の食材は、公知の炊き込みご飯や混ぜご飯に用いられているものであればどのようなものも用いることができる。他の食材としては、例えば、牛蒡、人参、こんにゃく、干し椎茸、油揚げ、しめじ、椎茸、松茸、きのこ、栗、さつまいも、鶏肉、豚肉、牛肉、魚肉、ひじきなどが挙げられる。通常の炊飯米3や他の食材と混ぜた場合、本実施形態に係る米飯様食品1は、干瓢の裁断物2の含有量を5.0質量%以上95.0質量%以下とするとよい。本実施形態における干瓢の裁断物2の含有量は任意に設定し得るものであるが、裁断物2の含有量を25.0質量%以上33.0質量%以下とすると、通常の炊飯米3との見分けがつき難く、かつ、味、香り、食感などが通常の炊飯米3とほとんど変わらない、質の高い米飯様食品1とすることができる。
【0022】
[米飯様食品の製造方法]
次に、
図3を参照して本実施形態に係る米飯様食品1の製造方法(以下、本製造方法)について説明する。
図3に示すように、本製造方法は、水浸漬処理工程S1と、裁断工程S2と、加熱処理工程S3と、味付け調味工程S4と、真空包装工程S5と、加熱殺菌処理工程S6とを有する。
【0023】
水浸漬処理工程S1は、乾物である乾燥干瓢を水戻し処理する工程である。水浸漬処理工程S1は、例えば、水温0~40℃の水に干瓢を1~48時間浸すことで行うことができる。
【0024】
裁断工程S2は、水戻し処理した干瓢を最大寸法が0.5mm以上12mm以下の裁断物2にする工程である。裁断工程S2は、例えば、ミンチ機、裁断機、押し出し機、みじん切り機などで行うことができる。裁断工程S2では、裁断後に必要に応じて篩分けを行い、最大寸法が前記数値範囲にある裁断物2を選別するようにしてもよい。
裁断物2の最大寸法は、例えば、ミンチ機を使用した場合、ミンチ機の出口プレートに設けられた回転ブレードの回転数と、押し出し圧力または押し出し速度とを調節することで制御することができる。
また、裁断物2の幅は、例えば、ミンチ機を使用した場合、ミンチ機の出口プレートに設けられた多数の穴の穴径により制御可能であり、0.5mm以上5.0mm以下とすることができる。
【0025】
なお、前述したように、前記した干瓢の裁断物2が、水戻し処理工程S1で水戻し処理を行うことによって、最大寸法および任意により幅がそれぞれ前記数値範囲となるように予め裁断されたものである場合は、この裁断工程S2は行わなくてもよい。
つまり、この場合、図示はしないが、本製造方法は、水浸漬処理工程S1と、加熱処理工程S3と、味付け調味工程S4と、真空包装工程S5と、加熱殺菌処理工程S6とを有する態様とすることができる。なお、この態様においては、水浸漬処理工程S1では、水戻し処理した後の最大寸法が0.5mm以上12mm以下となるように裁断された乾燥干瓢の裁断物を水戻し処理する。また、この態様においても、乾燥干瓢の裁断物に対して必要に応じて篩分けを行い、最大寸法が前記数値範囲にある裁断物2を選別するようにしてもよい。
【0026】
加熱処理工程S3は、裁断した裁断物2をボイル処理するボイル処理工程および裁断した裁断物2をスチーム処理するスチーム処理工程のうち少なくとも一方を行う工程である。ボイル処理は、裁断物2を沸騰水中に投下することで行うことができる。また、スチーム処理は、例えば、裁断物2を蒸気釜や高圧蒸気釜で蒸気にさらすことにより行うことができる。
【0027】
味付け調味工程S3は、加熱処理を行った裁断物2に味付け調味する工程である。味付け調味は、湯切りし、計量した後、例えば、蒸気攪拌釜などを用いて行うことができる。この味付け調味工程S3で糖質を添加することができる。
【0028】
真空包装工程S5は、味付け調味した裁断物2を真空包装する工程である。裁断物2の真空包装は、公知の真空包装機で行うことができる。
そして、加熱殺菌処理工程S6は、真空包装された裁断物2をボイル殺菌処理するボイル殺菌処理工程および真空包装された裁断物2をスチーム殺菌処理するスチーム殺菌処理工程のうち少なくとも一方を行う工程である。ボイル殺菌処理は、ボイル殺菌機で行うことができ、スチーム殺菌処理は、蒸気殺菌機や高圧蒸気殺菌機、レトルト殺菌機で行うことができる。
【0029】
以上に説明した本実施形態に係る米飯様食品1およびその製造方法によれば、所定の最大寸法の干瓢の裁断物2を用いており、炊飯米3とほぼ同じ長さ(寸法)であるため、見た目および食感などが炊飯米3に似たものとなる。そのため、本実施形態に係る米飯様食品1は、代替米として質の高いものとなる。
【0030】
また、本実施形態に係る米飯様食品1は、干瓢の破砕物2を用いているので瑞々しく、表面はなめらかであるため容易に嚥下できる。従って、本実施形態に係る米飯様食品1は、高齢者などの嚥下が難しい人でも喫食可能である。また、本実施形態に係る米飯様食品1は、干瓢の破砕物2を用いているので、冷凍・解凍の前後で食感がほとんど変わらない。本実施形態に係る米飯様食品1は、干瓢の破砕物2を用いているので自然解凍のほか、冷凍品を電子レンジで加熱しても食味を損なうことがない。さらに、本実施形態に係る米飯様食品1は、干瓢の破砕物2を用いているので、でんぷんがβ化する温度帯(例えば、チルド温度帯)でもα化でんぷん並みの食感を維持できる。そのため、本実施形態に係る米飯様食品1は、コンビニエンスストア向けのおにぎりなどに好適に用いることができる。また、弾力も炊飯米3とそん色なく、粉末から形成するなどの煩雑な加工方法を取らずとも米様の食感、弾力を再現できる。
【0031】
本実施形態に係る米飯様食品1は、ボイルやスチームで加熱処理しているので水溶性成分がほとんど含まれていないことから、栄養成分などの配合を調整するだけで容易に成分調整できる。例えば、本実施形態に係る米飯様食品1は、水溶性成分がほとんど含まれていない低糖質なものだけではなく、虚弱(フレイル)対策として、アミノ酸や脂肪酸などを配合して高栄養食品とすることもできる。
【0032】
さらに、米飯様食品1は、70kcal/100g程度に調整可能である。仮に、白米に対し、本実施形態における干瓢の裁断物2を質量で半分(50%)置き換えた場合、カロリーは約110kcal/100gとなる。これは白米比で約37%のカロリー低減となり、米粒程度の大きさに成形したこんにゃくを代替米として使用した場合と同等である。
【実施例0033】
次に、実施例により、本発明に係る米飯様食品およびその製造方法についてより詳細に説明する。
【0034】
<炊飯米での評価>
(実施例1および実施例2)
以下のようにして実施例1および実施例2に係る米飯様食品1を製造した。
まず、原料である乾燥干瓢を10℃の水で18時間水戻し処理した後、ミンチ機((株)なんつね社製ミートチョッパーM-22E)にプレート目φ3.2mmを装着しカットした。カットした干瓢を沸騰水で10分間ボイルした後、脱水率がおよそ30%となるよう脱水した。
【0035】
そして、前記脱水した干瓢の裁断物(干瓢裁断物)を、目開き12.0mmの篩を通過し、かつ目開き0.5mmの篩を通過しなかった裁断物となるように篩分けした。その結果、前記脱水した干瓢裁断物は、大きさ(最大寸法)が0.5mm以上12mm以下であるものの割合が全体に対して95質量%を占めていた。
【0036】
また、前記脱水した干瓢裁断物を、目開き10.0mmの篩を通過し、かつ目開き1.0mmの篩を通過しなかった裁断物となるように篩分けした。その結果、前記脱水した干瓢裁断物は、大きさ(最大寸法)が1.0mm以上10.0mm以下であるものの割合が全体に対して85質量%を占めていた。
【0037】
そして、以下の表1に示す混合割合(質量割合)で実施例1、2に係る干瓢裁断物をそれぞれ計量した後、表1に示す味付け調味液をそれぞれ添加し、真空包装した。その後、95℃の熱湯で60分間ボイル殺菌処理した。このようにして製造した実施例1、2に係る米飯様食品1を用いて試験を行った。配合内容を表1に示す。
【0038】
【0039】
製造したもののうち、実施例1に係る米飯様食品1を炊飯米に混ぜ込んだ混合品(言うまでもなく、このようにした混合品も米飯様食品である)の風味、食感、見た目(色調等)を評価した。これらの評価基準は下記のとおりである。表2に、炊飯米に対する実施例1に係る米飯様食品1の混合割合(質量割合で25%、33%、50%、67%)と、それらの官能評価結果を示す。
【0040】
<風味、食感、見た目(色調等)に関する評価基準>
◎ : 干瓢裁断物が入っているとは全く思わず、米飯様食品として大変好ましい。
○ : 干瓢裁断物が入っているとはほとんど思わず、米飯様食品として好ましい。
△ : 干瓢裁断物が入っていることには気付くが、米飯様食品として問題がない程度。
× : 米飯様食品として好ましくない。
【0041】
【0042】
表2に示すように、実施例1に係る米飯様食品1を炊飯米に混ぜ込んだ混合品は、いずれの混合割合であっても風味、食感、見た目(色調等)について良好な評価を得ることができた。風味、食感、見た目(色調等)については、特に、実施例1の混合割合が25%、33%である場合に良好な評価を得ることができた。
【0043】
また、炊飯米に対する実施例1に係る米飯様食品1の混合割合が、質量割合で、炊飯米:75%+実施例1:25%の場合と、炊飯米:67%+実施例1:33%の場合と、炊飯米:50%+実施例1:50%の場合と、炊飯米33%+実施例1:67%の場合と、炊飯米のみの場合と、実施例1のみの場合とを含めた6パターンのサンプルについて、クリープメーターを用いて評価した。当該評価は、測定試料を11g正確に測りとり直径40mmのサンプルカップに入れた後、クリープメーター(RE2-33005B(株)山電)を用い、プランジャー直径30mm円筒形、測定速度10mm/秒の条件で測定することにより行った。その際の荷重は1.24~10.0Nであった。その結果を
図4に示す。
図4は、クリープメーターによる測定結果を示すグラフである。
図4に示すように、分析結果から、炊飯米に対する実施例1に係る米飯様食品1の混合割合が25%、33%であると、炊飯米に近いかたさを示すことが分かった。
【0044】
次に、炊飯米に対する実施例1に係る米飯様食品1の混合割合が、炊飯米:実施例1=2:1(質量割合で炊飯米:67%+実施例1:33%)の場合であって、干瓢裁断物の最大寸法の範囲による風味、食感、見た目(色調等)への影響について評価した。これらの評価基準は下記のとおりである。表3に、干瓢裁断物の最大寸法の範囲と、それらの官能評価結果を示す。
【0045】
<風味、食感、見た目(色調等)に関する評価基準>
◎ : 干瓢裁断物が入っているとは全く思わず、米飯様食品として大変好ましい。
○ : 干瓢裁断物が入っているとはほとんど思わず、米飯様食品として好ましい。
△ : 干瓢裁断物が入っていることには気付くが、米飯様食品として問題がない程度。
× : 干瓢裁断物が入っていることに気付き、米飯様食品として好ましくない。
【0046】
【0047】
表3に示すように、干瓢裁断物の最大寸法が1.0~10.0mmの範囲に収まるように調整すると、風味、食感、見た目の評価がより高くなり、米飯様食品としてより優れたものになることが確認できた。また、最大寸法0.5~12.0mmの範囲に含まれている干瓢裁断物が95質量%を占める実施例1に係る米飯様食品1は、残部にこの範囲に含まれない(0.5~12.0mmを逸脱した)最大寸法を有する干瓢裁断物が含まれていたとしても、代替米として十分質の高いものになる。なお、この結果から、実施例2に係る米飯様食品1の場合も同様になると推察された。
【0048】
<酢飯での評価>
実施例1および実施例2に係る米飯様食品1について、予め調整した酢飯を混ぜ込んで使用した場合の風味、食感、見た目(色調等)、シャリ玉にしたときの保形性を評価した。これらの評価基準は下記のとおりである。表4に、酢飯に対する実施例1または実施例2の混合割合(質量割合で25%、33%、50%、67%)と、それらの評価結果を示す。
【0049】
<風味、食感、見た目(色調等)に関する評価基準>
◎ : 干瓢裁断物が入っているとは全く思わず、米飯様食品として大変好ましい。
○ : 干瓢裁断物が入っているとはほとんど思わず、米飯様食品として好ましい。
△ : 干瓢裁断物が入っていることには気付くが、米飯様食品として問題がない程度。
× : 米飯様食品として好ましくない。
【0050】
<シャリ玉にしたときの保形性の評価基準>
◎ : 酢飯のみのシャリ玉とそん色ない、大変好ましい保形性を示す。
○ : 酢飯のみのシャリ玉と認識できる好ましい保形性を示す。
△ : 酢飯のみのシャリ玉と比べるとやや劣るが、問題がない程度の保形性を示す。
× : シャリ玉として好ましくない。
【0051】
【0052】
表4に示すように、いずれの混合割合であっても風味、食感、見た目(色調等)、シャリ玉にしたときの保形性について良好な評価を得ることができた。中でも、実施例2に係る米飯様食品1の混合割合が25%、33%のものはシャリ玉にしたときの保形性が優れていた。そのため、これらは寿司の用途に特に好適であることが確認できた。
【0053】
<冷蔵時の評価>
炊飯米の場合は、冷蔵するとデンプンがβ化して食味が劣化する。そこで、炊飯米のみの場合と、炊飯米と実施例1に係る米飯様食品1とを混合した混合品について、40℃程度の温度の時にそれぞれを混合してから10℃まで冷却し、1時間経過した場合の食感(かたさ)を比較した。食感(かたさ)の評価基準は下記のとおりであり、その評価結果を表5に示す。
【0054】
<食感(かたさ)に関する評価基準>
◎ : 炊飯米と比較して同程度のレベル
○ : 炊飯米よりやや劣るが、問題ないレベル
△ : 炊飯米よりは劣るが、許容できるレベル
× : 炊飯米(冷や飯)と同等レベル
【0055】
【0056】
表5に示すように、実施例1に係る米飯様食品1を混合すると冷蔵の影響を受けにくくなり、冷たくなっても炊飯米だけの場合よりも美味しく食べられることが確認された。特に、実施例1に係る米飯様食品1の混合割合が33%以上になると冷たくなっても、何ら問題なく美味しく食べられることが確認された。
【0057】
<糖質添加の評価>
糖質を配合している実施例1に係る米飯様食品1と、糖質を配合しない実施例3に係る米飯様食品1とにおける食感(かたさ)について評価した。なお、実施例3に係る米飯様食品1も実施例1、2に係る米飯様食品1と同様にして水戻し処理、裁断、ボイル、脱水を行った。実施例1、2に係る米飯様食品1と同様に篩分けを行ったところ、実施例3に係る米飯様食品1は、干瓢裁断物の最大寸法が0.5mm以上12mm以下であるものの割合が全体に対して95質量%を占めており、1.0mm以上10.0mm以下であるものの割合が全体に対して85質量%を占めていた。評価基準は下記のとおりである。表6に配合内容を示し、評価結果を表7に示す。なお、表6において「-」は配合していないことを示している。
【0058】
【0059】
<食感(かたさ)に関する評価基準>
◎ : 炊飯米と比較してもそん色ないレベル。
○ : 炊飯米として問題ないレベル。
△ : 炊飯米よりは劣るが、許容できるレベル。
× : 炊飯米よりも劣る。
【0060】
【0061】
表7に示すように、糖質を配合していない実施例3に係る米飯様食品1と炊飯米とを混合した混合品はいずれも、風味、表面のみずみずしさ、喫食時のなめらかさは炊飯米よりは劣るが、許容できるレベルであった。実施例3に係る米飯様食品1を代替米としてみた場合、質が高く問題ないことが確認された。
一方、糖質を配合した実施例1に係る米飯様食品1と炊飯米とを混合した混合品はいずれも実施例3より良好な結果が得られた。このことから、糖質を配合すると、代替米としてより好適なものになることが確認された。
【0062】
<冷凍・解凍した場合の評価>
次に、冷凍・解凍した場合の食味(ぼそぼそ感)について評価した。評価基準は下記のとおりである。表8に、炊飯米と実施例1に係る米飯様食品1との配合内容および下記評価結果を示す。
【0063】
<食味(ぼそぼそ感)に関する評価基準>
○ : 炊飯米よりも優れている。
△ : 炊飯米よりもやや優れている。
× : 炊飯米と同等レベル。
【0064】
【0065】
表8に示すように、炊飯米のみの場合は冷解凍すると脱水し、ぼそぼそになるなど、食味の低下を引き起こしていた。その一方で、実施例1に係る米飯様食品1を混合した混合品は、冷解凍後もそのような不具合を感じ難いことが確認された。
前記糖質が、マルチトール、ラクチトール、イソマルツロース、イソマルツロース還元物、ソルビトール、キシリトール、エリスリトールおよびトレハロースの群から選択される少なくとも1種である請求項2に記載の米飯様食品。