(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154972
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】電力システム及び電力制御装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20221005BHJP
H01M 8/249 20160101ALI20221005BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20221005BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20221005BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20221005BHJP
H01M 8/04225 20160101ALI20221005BHJP
H01M 8/04228 20160101ALI20221005BHJP
H01M 8/04955 20160101ALI20221005BHJP
H01M 8/04313 20160101ALI20221005BHJP
H01M 8/04664 20160101ALI20221005BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/249
H01M8/04537
H01M8/04858
H01M8/00 A
H01M8/04225
H01M8/04228
H01M8/04955
H01M8/04313
H01M8/04664
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058256
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】中島 伸高
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126AA21
5H127AB04
5H127AB14
5H127AB29
5H127AC15
5H127DB49
5H127DB69
5H127DB99
5H127DC42
5H127DC50
(57)【要約】
【課題】従来よりも燃費を向上させることができる電力システム及び電力制御装置を提供すること。
【解決手段】実施形態の電力システムは、n(nは、2以上の整数。)基の燃料電池及び制御部を備える。燃料電池は、電気化学反応により発電する。制御部は、負荷で消費される電力に応じて要求される要求出力に基づき、前記燃料電池それぞれの動作モードを、発電の開始と停止を繰り返す第1の発電モード、発電を継続する第2の発電モード及び発電を停止する停止モードを含む複数のモードから決定したいずれかにする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学反応により発電するn(nは、2以上の整数。)基の燃料電池と、
負荷で消費される電力に応じて要求される要求出力に基づき、前記燃料電池それぞれの動作モードを、発電の開始と停止を繰り返す第1の発電モード、発電を継続する第2の発電モード及び発電を停止する停止モードを含む複数のモードから決定したいずれかにする制御部と、を備える電力システム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記要求出力が閾値A以上である場合、m基の前記燃料電池の動作モードを前記第2の発電モードにし、
前記要求出力が閾値B以上である場合、m基の前記燃料電池の動作モードを前記第2の発電モードにし、1基の前記燃料電池の動作モードを前記第1の発電モードにし、
前記閾値Aは、m基の前記燃料電池のそれぞれを最も効率よく動作させた場合の当該燃料電池の合計出力よりも所定の値小さく、
前記閾値Bは、m基の前記燃料電池のそれぞれを最も効率よく動作させた場合の当該燃料電池の合計出力よりも所定の値大きく、
mは、1以上(n-1)以下の整数である、請求項1に記載の電力システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記要求出力が閾値C以上である場合、n基の前記燃料電池の動作モードを前記第2の発電モードにし、
前記閾値Cは、n基の前記燃料電池のそれぞれを最も効率よく動作させた場合の当該燃料電池の出力値の合計出力よりも所定の値小さい、請求項1又は請求項2に記載の電力システム。
【請求項4】
前記制御部は、
前記要求出力が第1の閾値未満である場合、1基の前記燃料電池の動作モードを前記第1の発電モードにし、
前記要求出力が前記第1の閾値以上第2の閾値未満である場合、1基の前記燃料電池の動作モードを前記第2の発電モードにし、
前記要求出力が前記第2の閾値以上第3の閾値未満である場合、1基の前記燃料電池の動作モードを前記第2の発電モードにし、1基の前記燃料電池の動作モードを前記第1の発電モードにし、
前記第1の閾値は、1基の前記燃料電池を最も効率よく動作させた場合の当該1基の前記燃料電池の出力よりも所定の値小さく、
前記第2の閾値は、1基の前記燃料電池を最も効率よく動作させた場合の当該1基の前記燃料電池の出力よりも所定の値大きく、
前記第3の閾値は、前記第2の閾値よりも大きく、2基の前記燃料電池を最も効率よく動作させた場合の当該2基の前記燃料電池の合計出力よりも所定の値小さい、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の電力システム。
【請求項5】
前記燃料電池が発電する電力によって充電される二次電池をさらに備え、
前記制御部は、前記二次電池の充電状態に応じて前記第1の発電モードにおける発電の開始と停止のタイミングを制御する、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の電力システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1の発電モード又は前記第2の発電モードで動作させる前記燃料電池を劣化度に基づいて決定する、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の電力システム。
【請求項7】
負荷で消費される電力に応じて要求される要求出力に基づき、電気化学反応により発電するn(nは、2以上の整数。)基の燃料電池の動作モードを、発電の開始と停止を繰り返す第1の発電モード、発電を継続する第2の発電モード及び発電を停止する停止モードを含む複数のモードから決定したいずれかにする制御部を備える電力制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力システム及び電力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の燃料電池を搭載した車両がある。このような車両では、複数の燃料電池を同時に稼働させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数の燃料電池を同時に稼働させた場合、低負荷の出力領域においては燃費が悪い。これは、燃料電池を低負荷で稼働させると補機の負荷の影響で効率が悪くなるためである。
【0005】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、従来よりも燃費を向上させることができる電力システム及び電力制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の電力システムは、n(nは、2以上の整数。)基の燃料電池及び制御部を備える。燃料電池は、電気化学反応により発電する。制御部は、負荷で消費される電力に応じて要求される要求出力に基づき、前記燃料電池それぞれの動作モードを、発電の開始と停止を繰り返す第1の発電モード、発電を継続する第2の発電モード及び発電を停止する停止モードを含む複数のモードから決定したいずれかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、従来よりも燃費を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る車両の要部構成の一例を示すブロック図。
【
図2】
図1中の制御部による処理の一例を示すフローチャート。
【
図3】
図1中のFCSの出力と効率の関係を示すグラフ。
【
図5】
図1中のFCSの出力と効率の関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態に係る車両について図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態の説明に用いる各図面は、各部の縮尺を適宜変更している場合がある。また、以下の実施形態の説明に用いる各図面は、説明のため、構成を省略して示している場合がある。また、各図面及び本明細書中において、同一の符号は同様の要素を示す。
図1は、実施形態に係る車両1の要部構成の一例を示すブロック図である。
【0010】
車両1は、FCV(fuel cell vehicle)などの、燃料電池を動力として推進(走行)する車両である。車両1は、一例として、制御部11、FCS(fuel cell system)12、バッテリー13、モーター14及び負荷15を含む。車両1は、電力システムの一例である。
【0011】
制御部11は、例えば、車両1の動作に必要な演算及び制御などの処理を行うコンピューターである。制御部11は、主記憶装置又は補助記憶装置などに記憶されたファームウェア、システムソフトウェア及びアプリケーションソフトウェアなどのプログラムに基づいて、車両1の各種の機能を実現するべく各部を制御する。また、制御部11は、当該プログラムに基づいて後述する処理を実行する。なお、当該プログラムの一部又は全部は、制御部11の回路内に組み込まれていても良い。制御部11は、FCS12で発電された電力を消費する負荷の一例である。制御部11は、電力制御装置の一例である。
【0012】
車両1は、複数のFCS12を備える。FCS12は、例えば、燃料電池スタック及び燃料電池スタックの稼働に用いられる各種装置などを備える。燃料電池スタックは、複数の燃料電池が積層したものである。燃料電池スタックは、例えば、燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により発電して電力を出力する。当該電力は、車両1の各部に供給され、バッテリー13の充電及びモーター14の駆動などの車両1の各部の動作に用いられる。
また、FCS12は、燃料電池スタックの稼働に用いられる装置として、燃料電池スタックに燃料ガス及び酸化剤ガスを供給する補機など備えていても良い。
【0013】
車両1は、1又は複数のバッテリー13を備える。バッテリー13は、モーター14などの車両1の各部に電力を供給する二次電池である。すなわち、車両1は、FCS12から出力される電力及びバッテリー13から出力される電力によって動作する。バッテリー13は、例えば、FCS12によって発電された電力によって充電される。
【0014】
車両1は、1又は複数のモーター14を備える。モーター14は、例えば、入力される電力を回転力に変換して出力する電動機である。モーター14は、FCS12が出力する電力及びバッテリー13が出力する電力によって動作する。モーター14が出力する回転力は、例えば、ギヤ及びシャフトなど介してホイールなどを回転させる。モーター14は、FCS12で発電された電力を消費する負荷の一例である。
【0015】
負荷15は、制御部11及びモーター14以外の、FCS12で発電され電力を消費する部分である。負荷15は、例えば、照明、エア・コンディショナー、車載器、モニター、ディスプレイ及びスピーカーなどである。
【0016】
以下、実施形態に係る車両1の動作を
図2などに基づいて説明する。なお、以下の動作説明における処理の内容は一例であって、同様な結果を得ることが可能な様々な処理を適宜に利用できる。
図2は、車両1の制御部11による処理の一例を示すフローチャートである。制御部11は、例えば、主記憶装置又は補助記憶装置などに記憶されたプログラムに基づいて
図2の処理を実行する。なお、
図2に示す処理は、車両1が備えるFCS12の数が3基である場合の処理である。
【0017】
図2のステップST11において制御部11は、要求出力が変化するのを待ち受ける。制御部11は、車両1が備えるFCS12の出力電圧の合計の出力が要求出力以上となるように制御する。要求出力は、車両1の状態などによって変化する。制御部11は、要求出力が変化したならば、ステップST11においてYesと判定してステップST12へと進む。
【0018】
ステップST12において制御部11は、要求出力が閾値P1未満であるか否かを判定する。制御部11は、要求出力が閾値P1以上であるならば、ステップST12においてNoと判定してステップST12へと進む。対して、制御部11は、要求出力が閾値P1未満であるならば、ステップST12においてYesと判定してステップST17へと進む。
【0019】
ステップST13において制御部11は、要求出力が閾値P2未満であるか否かを判定する。制御部11は、要求出力が閾値P2以上であるならば、ステップST13においてNoと判定してステップST14へと進む。対して、制御部11は、要求出力が閾値P2未満であるならば、すなわち要求出力がP1以上P2未満であるならば、ステップST13においてYesと判定してステップST19へと進む。
【0020】
ステップST14において制御部11は、要求出力が閾値P3未満であるか否かを判定する。制御部11は、要求出力が閾値P3以上であるならば、ステップST14においてNoと判定してステップST15へと進む。対して、制御部11は、要求出力が閾値P3未満であるならば、すなわち要求出力がP2以上P3未満であるならば、ステップST14においてYesと判定してステップST21へと進む。
【0021】
ステップST15において制御部11は、要求出力が閾値P4未満であるか否かを判定する。制御部11は、要求出力が閾値P4以上であるならば、ステップST15においてNoと判定してステップST16へと進む。対して、制御部11は、要求出力が閾値P4未満であるならば、すなわち要求出力がP3以上P4未満であるならば、ステップST15においてYesと判定してステップST24へと進む。
【0022】
ステップST16において制御部11は、要求出力が閾値P5未満であるか否かを判定する。制御部11は、要求出力が閾値P5未満であるならば、すなわち要求出力がP4以上P5未満であるならば、ステップST16においてYesと判定してステップST26へと進む。対して、制御部11は、要求出力が閾値P5以上であるならば、ステップST16においてNoと判定してステップST28へと進む。
【0023】
各閾値について
図3を用いて説明する。
図3は、FCS12の出力と効率の関係を示すグラフである。
図3には、FCS12を1基~3基運転した場合のそれぞれの出力-効率特性を示すグラフを示している。また、
図3には、FCS12を1基で運転した場合に最も効率がよくなる点を点Q1、FCS12を2基で運転した場合に最も効率が良くなる点を点Q2、FCS12を3基で運転した場合に最も効率が良くなる点を点Q3として示している。閾値P1~閾値P5及び点Q1~点Q3の出力の大小関係は、P1<Q1<P2<P3<Q2<P4<P5<Q3である。
【0024】
なお、点Qxの出力は、x基のFCS12を最も効率よく動作させた場合の当該x基のFCS12の合計出力である。例えば、x=1である場合、Qxは、Q1である。また、点Q1の出力は、1基のFCS12を最も効率よく動作させた場合の当該1基のFCS12の出力である。なお、xは、1以上n以下の整数である。nは、後述する。
【0025】
また、点P(2x-1)の出力は点Qxの出力よりも所定の値小さい値であり、点P(2x)の出力は点Qxの出力よりも所定の値大きい値である。すなわち、点P1の出力は点Q1の出力よりも所定の値小さい値であり、点P2の出力は点Q1の出力よりも所定の値大きい値である。そして、点P3の出力は点Q2の出力よりも所定の値小さい値であり、点P4の出力は点Q2の出力よりも所定の値大きい値である。そして、点P5の出力は点Q3の出力よりも所定の値小さい値である。なお、それぞれの所定の値は、それぞれ異なっていても良いし同じであっても良い。
【0026】
図3に示すように、要求出力がP1~P2である場合、1基のFCS12で発電すると効率が良いと考えられる。また、要求出力がP3~P4である場合、2基のFCS12で発電すると効率が良いと考えらえる。また、要求出力がP5以上である場合、3基のFCS12で発電すると効率が良いと考えられる。また、要求出力がP1未満である場合、1基のFCS12で出力を抑えて発電すると効率が良いと考えられる。また、要求出力がP2~P3である場合、2基のFCS12で出力を抑えて発電すると効率が良いと考えられる。また、要求出力がP4~P5である場合3基のFCS12で出力を抑えて発電すると効率が良いと考えられる。
【0027】
図2の説明に戻る。
ステップST17において制御部11は、1基のFCS12を繰り返し運転で動作させる。繰り返し運転は発電のオンとオフを繰り返すことで出力を抑える運転である。換言すると、繰り返し運転は発電の開始と停止を繰り返すことで出力を抑える運転である。なお、
図4の波形W2は、繰り返し運転の状態での波形の一例を示している。
図4は、FCS12の波形の一例を示す図である。なお、繰り返し運転は、第1の発電モードの一例である。
【0028】
図2のステップST18において制御部11は、残りの2基のFCS12の発電を停止させる。なお、
図4の波形W3は、発電停止の状態での波形の一例を示す。制御部11は、ステップST18の処理の後ステップST11へと戻る。なお、発電停止の状態は、停止モードの一例である。
図2のステップST17及びステップST18の処理により、3基のFCS12は、1基が繰り返し運転、2基が発電停止の状態となる。
【0029】
ステップST19において制御部11は、1基のFCS12を効率点運転で動作させる。効率点運転は、発電効率が高い領域で所定の大きさより大きい出力の発電を継続させる運転である。なお、発電効率が高い領域とは、例えば、効率が所定の効率以上である領域、又はFCS12の出力が所定の範囲内である領域などである。また、繰り返し運転における発電がオンであるときの出力は、例えば、効率点運転の出力と同じ又は同程度である。
図4の波形W1は、効率点運転の状態での波形の一例を示している。なお、効率点運転は、第2の発電モードの一例である。また、第1の発電モード、第2の発電モード及び停止モードはそれぞれ動作モードの例である。
【0030】
ステップST20において制御部11は、残りの2基のFCS12の発電を停止させる。制御部11は、ステップST20の処理の後、ステップST11へと戻る。
ステップST19及びステップST20の処理により、3基のFCS12は、1基が効率点運転、2基が発電停止の状態となる。
【0031】
ステップST21において制御部11は、1基のFCS12を効率点運転で動作させる。
【0032】
ステップST22において制御部11は、残りの2基のうちの1基のFCS12を繰り返し運転で動作させる。
【0033】
ステップST23において制御部11は、残りの1基のFCS12の発電を停止させる。制御部11は、ステップST23の処理の後、ステップST11へと戻る。
ステップST21~ステップST23の処理により、3基のFCS12は、1基が効率点運転、1基が繰り返し運転、1基が発電停止の状態となる。
【0034】
ステップST24において制御部11は、2基のFCS12を効率点運転で動作させる。
【0035】
ステップST25において制御部11は、残りの1基のFCS12の発電を停止させる。制御部11は、ステップST25の処理の後、ステップST11へと戻る。
ステップST24及びステップST25の処理により、3基のFCS12は、2基が効率点運転、1基が発電停止の状態となる。
【0036】
ステップST26において制御部11は、2基のFCS12を効率点運転で動作させる。
【0037】
ステップST27において制御部11は、残りの1基のFCS12を繰り返し運転で動作させる。制御部11は、ステップST27の処理の後、ステップST11へと戻る。
ステップST26及びステップST27の処理により、3基のFCS12は、2基が効率点運転、1基が繰り返し運転の状態となる。
【0038】
ステップST28において制御部11は、3基のFCS12を効率点運転で動作させる。制御部11は、ステップST28の処理の後、ステップST11へと戻る。
なお、制御部11は、ステップS17~ステップS27において、効率点運転させるFCS12、繰り返し運転させるFCS12、及び発電を停止させるFCS12をどれにするかは様々な方法を用いることができる。例えば、制御部11は、予め定められたFCS12、ランダムに決定したFCS12、稼働時間の多寡若しくは劣化度の多寡などによって決定したFCS12、又はその他の方法によって決定したFCS12に効率点運転、繰り返し運転又は発電の停止をさせる。例えば、制御部11は、劣化度が低いFCS12を優先して効率点運転又は繰り返し運転させる。
【0039】
また、FCS12が4基である場合の例を
図5に示す。
図5は、FCS12の出力と効率の関係を示すグラフである。
図5には、FCS12を1基~4基運転した場合のそれぞれの出力-効率特性を示すグラフを示している。制御部11は、FCS12が4基ある場合、閾値P1~閾値P5に加えて閾値P6及び閾値P7を用いてFCS12の制御を行う。また、
図5には、点Q1~点Q3に加えてFCS12を4基で運転した場合に最も効率がよくなる点として点Q4を示している。閾値P1~閾値P7及び点Q1~点Q4の出力の大小関係は、P1<Q1<P2<P3<Q2<P4<P5<Q3<P6<P7<Q4である。
【0040】
制御部11は、FCS12が4基である場合、要求出力がP5未満の場合にはFCS12が3基である場合と同様にFCS12を制御する。ただし、FCS12が4基である場合、FCS12が3基である場合に比べて、発電停止の状態のFCS12の数が1基多い。また、制御部11は、要求出力がP5以上P6未満の場合には、3基を効率点運転、1基を運転停止の状態にする。また、制御部11は、要求出力がP6以上P7未満の場合には、3基を効率点運転、1基を繰り返し運転で動作させる。また、制御部11は、要求出力がP7以上の場合には、4基を効率点運転させる。
【0041】
また、制御部11は、FCS12がn基である場合、要求出力がP(k-1)以上Pk未満であるならば、(floor(k/2))基のFCS12を効率点運転、(k mod 2)基のFCS12を繰り返し運転、(n-ceil(k/2))基のFCS12を発電停止の状態にする。また、要求出力がP1未満である場合、1基のFCS12を繰り返し運転、(n-1)基のFCS12を発電停止の状態にする。また、制御部11は、要求出力がP(k+1)以上である場合、n基のFCS12を効率点運転の状態にする。ただし、kは、2≦k≦(2n-1)を満たす整数である。また、floorは天井関数、ceilは床関数、modは剰余演算子を示す。また、P(k-1)は(k-1)番目の閾値Pを示し、Pkは、k番目の閾値Pを示す。例えばk=3であるならば、Pkは、3番目の閾値P、すなわち閾値P3を示す。
なお、kが偶数である場合、P(k-1)<Q(k/2)<Pkであり、kが奇数である場合、Q((k-1)/2)<P(k-1)<Pk<Q((k+1)/2)である。
【0042】
また、mを1以上n以下の任意の整数とする。この場合、制御部11は、要求出力がP(2m-2)以上P(2m-1)未満であるならば、(m-1)基のFCS12を効率点運転、1基のFCS12を繰り返し運転にし、(n-m)基のFCS12の発電を停止させる。また、制御部11は、要求出力がP(2m-1)以上P(2m)未満であるならば、m基のFCS12を効率点運転にし、(n-m)基のFCS12の発電を停止させる。ただし、m=1である場合、制御部11は、要求出力が0以上P(2m-1)未満であるならば、1基のFCS12を繰り返し運転にし、(n-m)基のFCS12の発電を停止させる。また、m=nである場合、制御部11は、要求出力がP(2m-1)以上であるならば、m基のFCS12を効率点運転にする。
なお、点P(2m-1)の出力は点Qmの出力よりも所定の値小さい値であり、点P(2m)の出力は点Qmの出力よりも所定の値大きい値である。当該所定の値は、点Pごとに異なる値であっても良い。
【0043】
1≦m≦(n-1)における閾値P(2m-1)は閾値Aの一例、閾値P(2m)は閾値Bの一例である。一例として、m=3では、閾値P5が閾値A、閾値P6が閾値Bである。
また、閾値P(2n-1)は、閾値Cの一例である。一例として、n=4では、閾値P7が閾値Cである。
また、閾値P1は第1の閾値の一例、閾値P2は第2の閾値の一例、閾値P3は第3の閾値の一例である。
【0044】
実施形態の車両1は、要求出力に応じてFCS12の動作モードを決定する。これにより、実施形態の車両1は、n基のFCS12を出力を抑えて動作させる場合に比べて高い効率で発電が可能である。また、実施形態の車両1は、効率が高くなることで燃費も向上する。
【0045】
また、実施形態の車両1は、要求出力がP1未満である場合において1基のFCS1を繰り返し運転で動作させる。これにより、実施形態の車両1は、n基のFCS12を出力を抑えて動作させる場合に比べて高い効率で発電が可能である。
【0046】
また、実施形態の車両1は、要求出力がP1~P2である場合において1基のFCS1を効率点運転で動作させる。これにより、実施形態の車両1は、n基のFCS12を出力を抑えて動作させる場合に比べて高い効率で発電が可能である。
【0047】
また、実施形態の車両1は、要求出力がP(2m-2)~P(2m-1)である場合において、(m-1)基のFCS12を効率点運転、1基のFCS12を繰り返し運転させる。これにより、実施形態の車両1は、n基のFCS12を出力を抑えて動作させる場合に比べて高い効率で発電が可能である。
【0048】
また、実施形態の車両1は、要求出力がP(2m-1)~P(2m)である場合において、m基のFCS12を効率点運転させる。これにより、実施形態の車両1は、n基のFCS12を出力を抑えて動作させる場合に比べて高い効率で発電が可能である。
【0049】
また、実施形態の車両1は、要求出力がP(2n-1)以上である場合において、n基のFCS12を効率点運転させる。これにより、実施形態の車両1は、高出力の発電が必要な場合でも従来と比べて効率が落ちることはない。
【0050】
また、実施形態の車両1は、効率点運転又は繰り返し運転させるFCS12以外は発電を停止させる。このように、実施形態の車両1は、要求出力に対して不要なFCS12の発電を停止することで、従来と比べて高い効率で発電が可能である。
【0051】
また、実施形態の車両1は、劣化度に基づき効率点運転させるFCS12及び繰り返し運転させるFCS12を決定する。これにより、実施形態の車両1は、車両1の起動に係る時間を早くすることなどが可能となる。
【0052】
上記の実施形態は、以下のような変形も可能である。
制御部11は、バッテリー13の充電状態に応じてFCS12の出力を決定しても良い。例えば、制御部11は、バッテリー13の充電残量が少ない場合、発電の開始と停止のタイミングを制御することで、繰り返し運転における発電の停止時間の長さの比率を短くする。そして、制御部11は、FCS12が発電した余剰電力を用いてバッテリー13を充電する。
【0053】
FCSは、複数の燃料電池スタックを備えていても良い。
制御部11は、複数のFCS12からなる組を1つのFCSとみなして制御を行っても良い。例えば、車両1がFCS12-1~FCS12-6の6つのFCS12を備えるとする。この場合、制御部11は、一例として、FCS12-1及びFCS12-2からなる組、FCS12-3及びFCS12-4からなる組、並びにFCS12-5及びFCS12-6からなる組の3つに分けて制御する。制御部11は、同じ組のFCS12について、同じ動作モードで動作させる。
【0054】
FCS12の動作モードは、繰り返し運転、効率点運転、及び発電の停止以外のモードがあっても良い。
【0055】
上記の実施形態では、車両を例に説明した。しかしながら、実施形態の電力システムは、車両以外の、燃料電池を動力とする乗り物又は無人機に適用することも可能である。例えば、実施形態の電力システムは、燃料電池を動力とする航空機、船舶、潜水艦、又は鉄道車両などに適用可能である。
また、実施形態の電力システムは、発電施設若しくはコージェネレーションシステムなどの定置型システム又はロボットなどの、乗り物及び無人機以外の機械に適用することも可能である。
【0056】
制御部11は、上記実施形態においてプログラムによって実現する処理の一部又は全部を、回路のハードウェア構成によって実現するものであっても良い。
【0057】
実施形態の処理を実現するプログラムは、例えば装置に記憶された状態で譲渡される。しかしながら、当該装置は、当該プログラムが記憶されない状態で譲渡されても良い。そして、当該プログラムが別途に譲渡され、当該装置へと書き込まれても良い。このときのプログラムの譲渡は、例えば、リムーバブルな記憶媒体に記録して、あるいはインターネット又はLAN(local area network)などのネットワークを介したダウンロードにより実現できる。
【0058】
以上、本発明の実施形態を説明したが、例として示したものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の実施形態は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 車両
11 制御部
12 FCS
13 バッテリー
14 モーター
15 負荷