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特開2022-154988舗装補修用材料及び舗装補修用材料の製造方法
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  • 特開-舗装補修用材料及び舗装補修用材料の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154988
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】舗装補修用材料及び舗装補修用材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E01C 7/26 20060101AFI20221005BHJP
   E01C 7/30 20060101ALI20221005BHJP
   E01C 7/35 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
E01C7/26
E01C7/30
E01C7/35
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058282
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000194516
【氏名又は名称】世紀東急工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】源藤 勉
(72)【発明者】
【氏名】村井 宏美
【テーマコード(参考)】
2D051
【Fターム(参考)】
2D051AC02
2D051AC09
2D051AF01
2D051AF02
2D051AG01
2D051AG11
2D051AH02
2D051AH03
2D051EA06
(57)【要約】
【課題】石膏を使用せずとも舗装補修用材料の硬化時間の調整を容易に行うことができ、また、安価、入手容易な乳剤を使用しつつも混合不良を生じさせずに舗装補修用材料の可使時間の確保を図ることができる舗装補修用材料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】セメントと、カチオン系のアスファルト乳剤と、アスファルト乳剤がセメントによって分解されることを抑える混合調整材料と、含有し、セメントは、普通ポルトランドセメント及び超速硬セメントからなり、普通ポルトランドセメント及び超速硬セメントの比率は、20~80:80~20である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントと、
カチオン系のアスファルト乳剤と、
前記アスファルト乳剤が前記セメントによって分解されることを抑える混合調整材料と、含有し、
前記セメントは、普通ポルトランドセメント及び超速硬セメントからなり、前記普通ポルトランドセメント及び前記超速硬セメントの比率は、20~80:80~20であることを特徴とする舗装補修用材料。
【請求項2】
前記アスファルト乳剤及び前記混合調整材料の比率は、60~40:40~60であることを特徴とする請求項1に記載の舗装補修用材料。
【請求項3】
前記舗装補修用材料は、骨材を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の舗装補修用材料。
【請求項4】
前記骨材の含有割合は、前記骨材、前記セメント、前記アスファルト乳剤及び前記混合調整材料の合計重量に対して、50~85重量%であることを特徴とする請求項3に記載の舗装補修用材料。
【請求項5】
カチオン系のアスファルト乳剤と、前記アスファルト乳剤がセメントによって分解されることを抑える混合調整材料とを混合する工程と、
前記アスファルト乳剤と前記混合調整材料との混合材に前記セメントを混合する工程と、
を備えることを特徴とする舗装補修用材料の製造方法。
【請求項6】
前記舗装補修用材料に骨材を混合する場合に、前記骨材として使用される材料を混合した後に、前記混合材と混ぜ合わせることを特徴とする請求項5に記載の舗装補修用材料の製造方法。
【請求項7】
前記舗装補修用材料に骨材を混合する場合に、前記混合材と前記セメントとを混合した後に、これらに前記骨材として使用される材料を混ぜ合わせることを特徴とする請求項5に記載の舗装補修用材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、舗装補修用材料及び舗装補修用材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
舗装補修用材料は、例えば、道路用の表面刷新材料、段差修正材料、穴埋め補修材料等として使用される。この舗装補修用材料は、通常、骨材やセメント、樹脂、アスファルト乳剤、水等が混合されて製造される。アスファルト乳剤としては、例えば、セメントと混合されても分解され難く安定しているノニオン系のアスファルト乳剤が用いられる。
【0003】
これらの舗装材はセメントの水和反応によって硬化するが、その硬化速度は遅く、舗装補修用材料が所望強度(交通再開のために必要な強度)まで硬化する硬化時間は長くなるため、交通再開までに時間を要する。この交通再開を早期に行うため、舗装補修用材料が所望強度まで硬化する硬化時間の短縮が求められている。
【0004】
一方で、その舗装補修用材料の硬化時間が短くなり過ぎると、舗装補修用材料の可使時間が短くなり、舗装作業を行う作業時間を確保することが困難になる。このため、舗装補修用材料の可使時間を確保しつつ、舗装補修用材料が所望強度まで硬化する硬化時間を短縮することが求められている。
【0005】
ここで以下に示す特許文献1においては、上記硬化時間の調整に当たって舗装補修用材料を構成するバインダとしてセメント及び石膏を用いている。すなわち、セメントは硬化まで長い時間が掛かる一方、石膏は硬化までの時間が短いというそれぞれの性質を利用して硬化時間の調整を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6813935号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記バインダとして石膏を使用した場合、場合によっては硬化した後にひび割れが生じてしまう、或いは、変色してしまう、といった弊害が生じ得ることが考えられる。
【0008】
本発明においては、石膏を使用せずとも舗装補修用材料の硬化時間の調整を容易に行うことができ、また、安価、入手容易な乳剤を使用しつつも混合不良を生じさせずに舗装補修用材料の可使時間の確保を図ることができる舗装補修用材料及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施の形態における舗装補修用材料は、セメントと、カチオン系のアスファルト乳剤と、アスファルト乳剤がセメントによって分解されることを抑える混合調整材料と、含有し、セメントは、普通ポルトランドセメント及び超速硬セメントからなり、普通ポルトランドセメント及び超速硬セメントの比率は、20~80:80~20であることを特徴とする。
【0010】
また、アスファルト乳剤及び混合調整材料の比率は、60~40:40~60であることを特徴とする。
【0011】
さらに舗装補修用材料は、骨材を含んでいても良い。
【0012】
舗装補修用材料が骨材を含む場合、骨材の含有割合は、骨材、セメント、アスファルト乳剤及び混合調整材料の合計重量に対して、50~85重量%であっても良い。
【0013】
本発明の実施の形態における舗装補修用材料の製造方法は、カチオン系のアスファルト乳剤と、アスファルト乳剤がセメントによって分解されることを抑える混合調整材料とを混合する工程と、アスファルト乳剤と混合調整材料との混合材にセメントを混合する工程と、を備えることを特徴とする。
【0014】
舗装補修用材料の製造方法においては、舗装補修用材料に骨材を混合する場合に、骨材として使用される材料を混合した後に、混合材と混ぜ合わせることとしても良い。
【0015】
また、舗装補修用材料に骨材を混合する場合に、混合材とセメントとを混合した後に、これらに骨材として使用される材料を混ぜ合わせることとしても良い。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明の実施の形態における舗装補修用材料であれば、石膏を使用せずとも舗装補修用材料の硬化時間の調整を容易に行うことができ、また、安価、入手容易な乳剤を使用しつつも混合不良を生じさせずに舗装補修用材料の可使時間の確保を図ることができる。
【0017】
また、本発明の実施の形態における舗装補修用材料の製造方法であれば、安価、入手容易な乳剤を使用しつつも混合不良を生じさせることがなく、容易に舗装補修用材料の硬化時間の調整を行うことができるとともに、舗装補修用材料の可使時間の確保を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態に係る舗装補修用材料の配合の一例を説明するための図である。
図2】本発明の実施の形態に係る舗装補修用材料におけるセメントの配合について説明する図である。
図3】本発明の実施の形態に係る舗装補修用材料におけるアスファルト乳剤と混合調整材料との配合について説明する図である。
図4】本発明の実施の形態に係る舗装補修用材料の製造方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明の一例を示したものである。また、本実施の形態には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0020】
本発明の実施の形態に係る舗装補修用材料の配合について、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る舗装補修用材料の配合の一例を説明するための図である。
【0021】
図1に示す本発明の実施の形態における舗装補修用材料は、少なくとも「セメント」、「アスファルト乳剤」及び「混合調整材料」が混合されて生成される。図1に示すように、縦に舗装補修用材料を構成する各材料の名称が記載されている。一方、横には数字が1から4まで振られており、それぞれ舗装補修用材料が使用される場面に応じた配合が示されている。なお以下においては、これらの各数字に合わせて、左から順に「配合例1」、「配合例2」、「配合例3」、「配合例4」と表す。
【0022】
ここで舗装補修用材料は、道路等における舗装の供用状態を維持するために使用される補修用材料である。当該舗装補修用材料が使用される場合として、概略以下の4つの場合を挙げることができる。
【0023】
1つ目は、老化した舗装表面を滑らかにする等、舗装表面のリフレッシュに用いる場合である。この場合には、配合例1が用いられる(表面刷新材料1)。2つ目は、1つ目と同じく舗装表面のリフレッシュのために用いられる場合であるが、この場合は1つ目の場合よりも舗装表面が荒れている場合を想定している。この場合には、配合例2が用いられる(表面刷新材料2)。
【0024】
3つ目は、凹みを埋めて段差を小さくするといった、段差等の擦り付けであって軽微な場合に用いられるものであり、この場合には、配合例3が用いられる(段差修正材料)。4つ目は、舗装に空いた穴を埋めるために用いる場合である。この場合は配合例4が用いられる(穴埋め補修材料)。
【0025】
図1には、各配合例1ないし配合例4をそれぞれ構成する全材料の配合割合(含有割合)が示されており、あくまでも配合の一例を示すものである。この配合割合は、ある合計重量(100重量%)に対してどの程度の重量で含まれているか、すなわち重量割合を示す重量%(wt%)で示されている。
【0026】
本発明の実施の形態における舗装補修用材料で使用されるセメントは、普通ポルトランドセメント及び超速硬セメントを混合したものである。舗装補修用材料は、使用される状況、環境等によって、適宜硬化時間を調整できることが好ましい。ここで、一般的なセメントは硬化時間が長い性質を有しているが、硬化時間を調整するために石膏を使用すると上述したような弊害を招来しかねない。
【0027】
そこで、本発明の実施の形態における舗装補修用材料では、セメントとして普通ポルトランドセメントを使用しつつ、当該普通ポルトランドセメントに超速硬セメントを一定程度混ぜ合わせることで必要に応じて硬化時間の調整ができるように構成している。
【0028】
図1に示す配合例1を例に挙げると、例えば普通ポルトランドセメントと超速硬セメントの配合割合は、普通ポルトランドセメントが7.0重量%であるのに対して、超速硬セメントは28.0重量%となる。すなわち、普通ポルトランドセメントと超速硬セメントの配合割合は、20:80である。なお、図1における各配合例においては、普通ポルトランドセメントと超速硬セメントの配合割合は、いずれもこの配合割合とされている。
【0029】
但し、普通ポルトランドセメントと超速硬セメントの配合割合は、上記割合に限定されるものではない。図2は、本発明の実施の形態に係る舗装補修用材料におけるセメントの配合について説明する図である。
【0030】
図2においては、左端に縦に「普通ポルトランドセメント」と「超速硬セメント」の名称が記載されるとともに、一番下に「混合物性状」の項目が設けられている。これは、配合例1における配合割合を前提に、普通ポルトランドセメントと超速硬セメントとの割合を変えて混合してできた舗装補修用材料の硬化時間を示すものである。
【0031】
「普通ポルトランドセメント」の項目を右に見ていくと、順に「80以上」、「80」、「20」及び「20未満」との4つの配合割合が設けられており、一方「超速硬セメント」については、上記「普通ポルトランドセメント」の割合に応じて順に、「20未満」、「20」、「80」及び「80以上」とされている。
【0032】
これら4つの配合割合に基づいて普通ポルトランドセメントと超速硬セメントとを混合してできた混合物の性状を見ると、「〇」と「×」とで示されている。ここで「〇」は舗装補修用材料として使用する場合の硬化時間として適切な場合を示し、「×」は不適切な場合を示している。
【0033】
図2に示されているように、普通ポルトランドセメントと超速硬セメントの配合割合(比率)は、それぞれ20~80:80~20であることが好ましい。従って混合物の性状としては「〇」である。
【0034】
一方、普通ポルトランドセメントと超速硬セメントの配合割合が80以上:20未満の場合は、硬化に掛かる時間が長すぎることになる。反対に、普通ポルトランドセメントと超速硬セメントの配合割合が20未満:80以上の場合は、硬化時間が短すぎ、いずれにしろ不適切(「×」)であると言える。
【0035】
なお、好適な普通ポルトランドセメントと超速硬セメントの配合割合は、上述したように、20~80:80~20の範囲である。但し、硬化時間として適切とされる範囲の中でも普通ポルトランドセメントの割合が80に近い(超速硬セメントの割合が20に近い)場合には、硬化時間は長めとなる。一方、普通ポルトランドセメントの割合が20に近い(超速硬セメントの割合が80に近い)場合には、硬化時間は短めとなる。
【0036】
アスファルト乳剤は、乳化剤を含む水中にアスファルトを微粒子状に分散させ、見かけの粘性を低下させること(乳化)によって生成される。ここで、アスファルト乳剤には、アスファルト粒子の電化の状態により、アニオン系、カチオン系、ノニオン系の3種類がある。
【0037】
このうち舗装用としては、従来よりノニオン系とカチオン系が使用されている。特にノニオン系乳剤は、電荷を持たず、中性に近いため、イオンの影響を受けにくく、セメント等を混合しても分解され難く安定しており、改質乳剤として使用される。またアルカリであるセメント等とも容易に混合できるため、路上路盤再生工法やセメント乳剤モルタル用の乳剤などにも使用される。
【0038】
一方、カチオン系乳剤は、安定性に優れ、使用後は速やかに分解されて骨材の表面にアスファルト皮膜を形成し、水が蒸発しなくても分解されて硬化するので舗装材料に適している。また、カチオン系のアスファルト乳剤は、価格(安い)、製造数量(多い)、入手し易さ(プラントで販売:容易)、使用期限(長い)という市場環境がある。
【0039】
なお、カチオン系のアスファルト乳剤は、酸性であるため、アルカリ性のセメント等と混合すると反応して分解されるため、後述する混合調整材料である樹脂を添加しない場合、混合不良が生じる。しかしながら、換言すれば、この分解は樹脂の添加により抑えることができるものである。
【0040】
そこで本発明の実施の形態においては、上述した様々な条件に鑑み、カチオン系のアスファルト乳剤を使用する。本発明の実施の形態におけるカチオン系アスファルト乳剤としては、例えば、PK-3やPK-4といった乳剤を好適に使用することができる。
【0041】
また、本発明の実施の形態における舗装補修用材料は、アスファルト乳剤や後述する混合調整材料に含まれる水分のみを用いて生成され、特段材料に水を加えないで生成される。そのため、例えば、上述したカチオン系のアスファルト乳剤と水からなる添加液を使用することはない。
【0042】
混合調整材料は、材料混合時にカチオン系のアスファルト乳剤がセメントによって分解されることを抑えるものである。すなわち、当該カチオン系のアスファルト乳剤は舗装補修用材料を構成する他の材料と混ざりにくく混合不良を生じさせる可能性があるところ、この混合調整材料を併せて混合することによって混合不良の発生を防止する。
【0043】
混合調整材料としては、例えば樹脂が挙げられる。そして本発明の実施の形態における舗装補修用材料では、例えば、液体状の樹脂であるエマルジョン樹脂が使用される。このような樹脂を用いることによって、より他の材料との混合を円滑に行うことができる。
【0044】
また、アスファルト乳剤と樹脂との混合割合については、以下に示す割合で混合すると舗装補修用材料として好適に使用することができる。図3は、本発明の実施の形態に係る舗装補修用材料におけるアスファルト乳剤と混合調整材料との配合について説明する図である。
【0045】
図3においては、左端に縦に「アスファルト乳剤」と「樹脂」の名称が記載されるとともに、一番下に「混合物性状」の項目が設けられている。この「混合物性状」は、配合例1における配合割合を前提に、樹脂とアスファルト乳剤とを混合させた場合の舗装補修用材料の性状を示すものである。
【0046】
「アスファルト乳剤」の項目を右に見ていくと、順に「40未満」、「40」、「60」及び「60以上」との4つの配合割合が設けられており、一方「樹脂」については、上記「アスファルト乳剤」の割合に応じて順に、「60以上」、「60」、「40」及び「40未満」とされている。
【0047】
これら4つの配合割合に基づいてアスファルト乳剤と樹脂とを混合してできた混合物の性状を見ると、「〇」と「×」とで示されている。ここで「〇」は舗装補修用材料として使用する場合の状態として適切な場合を示し、「×」は不適切な場合を示している。
【0048】
アスファルト乳剤と樹脂との配合割合が40未満:60以上の場合は、混合物の性状がウェット気味になる。反対に、アスファルト乳剤と樹脂との配合割合が60以上:40未満の場合は、混合物の性状がパサパサとしたドライ気味となり、不適切(「×」)であると言える。
【0049】
一方、図3に示されているように、アスファルト乳剤と樹脂との配合割合(比率)は、それぞれ40~60:60~40であることが好ましい。従って混合物の性状としては「〇」であり、ウェット気味でもドライ気味でもなく、適度な状態で混合されていることになる。
【0050】
なお、好適なアスファルト乳剤と樹脂との配合割合は、上述したように、40~60:60~40の範囲である。但し、適度な状態に混合される範囲の中でもアスファルト乳剤の割合が40未満(樹脂の割合が60以上に近い)場合には、ウェットな状態に近くなる。一方、アスファルト乳剤の割合が60以上(樹脂の割合が40未満に近い)場合には、ドライな状態に近くなる。いずれの状態にするかは、使用状況に応じて適宜アスファルト乳剤と樹脂との割合を設定することによって選択される。
【0051】
図1に示すように、舗装表面のリフレッシュに用いる表面刷新材料1である配合例1では、舗装補修用材料を構成するのは、普通ポルトランドセメントと超速硬セメントとを配合したセメントとカチオン系のアスファルト乳剤及び混合調整材料である樹脂の3種類のみである。図1に示す配合割合はあくまでも一例であるが、セメントが35重量%(普通ポルトランドセメント7.0重量%、超速硬セメント28.0重量%)、アスファルト乳剤が26重量%、樹脂が39重量%である。
【0052】
一方、同じく舗装表面のリフレッシュに用いる表面刷新材料2である配合例2の場合には、骨材が追加される。ここで本発明の実施の形態においては、乾燥した骨材が使用される。そのため骨材は、濡れていない砕石や砂を含む。また、骨材の材料としては、他の材料が用いられてもよく、例えば、アスファルト再生骨材、砕石及び砂が用いられてもよく、さらに、砂だけが用いられてもよい。
【0053】
図1に示すように、この場合の骨材としては「Rc2.5-0」が用いられ、60重量%の割合で舗装補修用材料内に含まれる。その他、セメント、アスファルト乳剤及び樹脂の割合は、それぞれ14重量%(普通ポルトランドセメント2.8重量%、超速硬セメント11.2重量%)、10.4重量%、15.6重量%である。
【0054】
段差の擦り付けに用いる段差修正材料である配合例3の場合には、骨材等の各配合割合は配合例2と同じものの、骨材として「Rc2.5-0」及び「Rc5-2.5」の2種類の材料を混合する。そしてそれぞれの混合割合は、前者が42.0重量%、後者が18.0重量%である。
【0055】
配合例4は、舗装補修用材料が穴埋め補修材料と使用される場合の配合割合を示すものであり、様々な材料が混合される。すなわち、配合例2及び配合例3と同様、セメント、樹脂、アスファルト乳剤及び骨材を含み、この他に、さらに合成ゴムラテックス及び繊維が含まれる。
【0056】
骨材については、配合例2や配合例3では、「Rc2.5-0」や「Rc5-2.5」を使用したが、配合例4ではこれらを使用せず、「粗骨材」、「細骨材」及び「フィラー」を使用する。配合例4における骨材全体の配合比率は77.7重量%であり、この内訳は、「粗骨材」が38.1重量%、「細骨材」が22.4重量%、「フィラー」が17.2重量%である。
【0057】
また、骨材の配合比率が上述した通りであるため、舗装補修用材料におけるセメント等の配合比率は、配合例1ないし配合例3に比べて低くなる。例えば、セメントは普通ポルトランドセメント、超速硬セメント、及び、膨張剤を含み、全体として5.1重量%、各材料の配合比率は、順に0.9重量%、3.7重量%、及び、0.5重量%である。
【0058】
なお、この配合例4においても、普通ポルトランドセメントと超速硬セメントの配合割合が、概ね上述した20:80となるように混合されている。また、セメントに含まれる膨張剤は、コンクリート等に特別の性質を与えるために必要に応じて加えられる、いわゆる混和材料である。
【0059】
アスファルト乳剤と樹脂の配合割合は6.0重量%、9.0重量%であり、この両者における配合割合は、他の配合例と同様、40:60とされている。この他配合例4には、合成ゴムラテックスが2.1重量%、繊維が0.1重量%含まれている。
【0060】
従って、配合例1ないし配合例4のいずれの場合も含んで、骨材は、骨材、セメント、アスファルト乳剤及び混合調整材料等、舗装補修用材料を構成する合計重量に対して、50~85重量%の範囲で含まれる。
【0061】
次に、本発明の実施の形態における舗装補修用材料の製造方法について、図4を用いて説明する。図4は、本発明の実施の形態に係る舗装補修用材料の製造方法の流れを示すフローチャートである。
【0062】
まず、「セメント」、「樹脂」、及び「アスファルト乳剤」のみが配合される配合例1の場合について説明する。舗装補修用材料を製造するに当たって、順序に関係なく全ての材料を混ぜる、という方法も考えられるが、本発明の実施の形態における舗装補修用材料の場合は、セメントを混合する前に、先にアスファルト乳剤と樹脂とを混合する(ST1)。
【0063】
すなわち、本発明の実施の形態における舗装補修用材料では、アスファルト乳剤として上述したようなカチオン系のアスファルト乳剤を使用する。このカチオン系のアスファルト乳剤はプラスに帯電していることから、マイナスに帯電しているセメントと混合すると速やかに反応して固化が始まってしまう。そのため、アスファルト乳剤をセメントと混合する前に、まず樹脂とアスファルト乳剤とを混合する(以下、このように混合されて生成された物を、適宜「混合材」と表す。)。
【0064】
樹脂とアスファルト乳剤との混合が完了した後に、これらの混合材とセメントとを混合する(ST2)。なお、本発明の実施の形態においてはセメントとして普通ポルトランドセメントと超速硬セメントとを混合したセメントを用いる。従って、これら2種を事前に混合の上、混合材と混合しても良く、或いは、普通ポルトランドセメント、超速硬セメント及び混合材を一度に混合することとしても良い。
【0065】
なお、この混合順序は、骨材や合成ゴムラテックス、或いは、繊維等を混合して舗装補修用材料を製造する場合も同様である。図4では、樹脂とアスファルト乳剤を混合する前に骨材等を混合する場合を符号10Aで示している。一方、樹脂とアスファルト乳剤の混合、さらにこの混合材にセメントを混合した後に、骨材等を混合する場合を符号10Bで示している。
【0066】
すなわち、舗装補修用材料の製造に当たっては、骨材等の混合を行うか否かを問わず、樹脂とアスファルト乳剤の混合材にセメントを混合する順序を基本とする。そして、骨材等を混合する場合には、樹脂とアスファルト乳剤との混合前(符号10A)、或いは、セメントを混合した後(符号10B)のいずれかの順番で混合される。
【0067】
以上説明した通り、本発明の実施の形態における舗装補修用材料は、セメントと、カチオン系のアスファルト乳剤及び樹脂を含有し、セメントは、普通ポルトランドセメント及び超速硬セメントからなり、普通ポルトランドセメント及び超速硬セメントの比率は、20~80:80~20の構成を備えている。
【0068】
このような構成を採用することから、石膏を使用せずとも舗装補修用材料の硬化時間の調整を容易に行うことができ、また、安価、入手容易な乳剤を使用しつつも混合不良を生じさせずに舗装補修用材料の可使時間の確保を図ることができる舗装補修用材料及びその製造方法を提供することができる。
【0069】
すなわち、上述したように、舗装補修用材料を構成するセメントとして、普通ポルトランドセメントのみならず、併せて超速硬セメントを混合したものを使用することによって、石膏を用いずとも舗装補修用材料の硬化時間の調整を容易に行うことができる。
【0070】
また上述したいずれの舗装補修用材料においても、カチオン系のアスファルト乳剤の分解は、舗装補修用材料に含まれる樹脂によって抑えられる。これにより、安価で容易に入手可能なカチオン系のアスファルト乳剤を使用することを可能にするとともに、舗装補修用材料が所望強度まで硬化する硬化時間を短縮する(硬化速度を向上させる)ことができる。
【0071】
また、上述の説明においては、樹脂及び水を含むエマルジョンを各材料に添加することを例示したが、これに限るものではなく、例えば、樹脂の粉末を添加するようにしてもよい。例えば、舗装補修用材料の製造に当たって骨材を混合する場合、当該骨材が濡れた状態にあっても、使用する樹脂としてエマルジョン樹脂ではなく粉末の樹脂を選択することで混合の際の水分量を調整することができる。すなわち、使用する骨材の状態に応じた樹脂を選択することができる。
【0072】
また、上述の説明においては、樹脂を混合調整材料として用いることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、合成高分子化合物を混合調整材料として用いるようにしてもよい。つまり、混合調整材料としては、例えば、樹脂や合成高分子化合物等が用いられる。
【符号の説明】
【0073】
1・・・配合例1(表面刷新材料1)
2・・・配合例2(表面刷新材料2)
3・・・配合例3(段差修正材料)
4・・・配合例4(穴埋め補修材料)
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2022-07-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントと、
カチオン系のアスファルト乳剤と、
前記アスファルト乳剤が前記セメントによって分解されることを抑える混合調整材料と、含有し、
前記セメントは、普通ポルトランドセメント及び超速硬セメントからなり、前記普通ポルトランドセメント及び前記超速硬セメントの比率は、20~80:80~20であり、前記アスファルト乳剤及び前記混合調整材料の比率は、60~40:40~60であることを特徴とする舗装補修用材料。
【請求項2】
前記舗装補修用材料は、骨材を含むことを特徴とする請求項1に記載の舗装補修用材料。
【請求項3】
前記骨材の含有割合は、前記骨材、前記セメント、前記アスファルト乳剤及び前記混合調整材料の合計重量に対して、50~85重量%であることを特徴とする請求項2に記載の舗装補修用材料。
【請求項4】
カチオン系のアスファルト乳剤と、前記アスファルト乳剤がセメントによって分解されることを抑える混合調整材料とを混合する工程と、
前記アスファルト乳剤と前記混合調整材料との混合材に前記セメントを混合する工程と、を備え
前記セメントは、普通ポルトランドセメント及び超速硬セメントからなり、前記普通ポルトランドセメント及び前記超速硬セメントの比率は、20~80:80~20であり、前記アスファルト乳剤及び前記混合調整材料の比率は、60~40:40~60であることを特徴とする舗装補修用材料の製造方法。
【請求項5】
前記舗装補修用材料に骨材を混合する場合に、前記骨材として使用される材料を混合した後に、前記混合材と混ぜ合わせることを特徴とする請求項4に記載の舗装補修用材料の製造方法。
【請求項6】
前記舗装補修用材料に骨材を混合する場合に、前記混合材と前記セメントとを混合した後に、これらに前記骨材として使用される材料を混ぜ合わせることを特徴とする請求項4に記載の舗装補修用材料の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明の実施の形態における舗装補修用材料は、セメントと、カチオン系のアスファルト乳剤と、アスファルト乳剤がセメントによって分解されることを抑える混合調整材料と、含有し、セメントは、普通ポルトランドセメント及び超速硬セメントからなり、普通ポルトランドセメント及び超速硬セメントの比率は、20~80:80~20であり、アスファルト乳剤及び混合調整材料の比率は、60~40:40~60であることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
本発明の実施の形態における舗装補修用材料の製造方法は、カチオン系のアスファルト乳剤と、アスファルト乳剤がセメントによって分解されることを抑える混合調整材料とを混合する工程と、アスファルト乳剤と混合調整材料との混合材にセメントを混合する工程と、を備え、セメントは、普通ポルトランドセメント及び超速硬セメントからなり、普通ポルトランドセメント及び超速硬セメントの比率は、20~80:80~20であり、アスファルト乳剤及び混合調整材料の比率は、60~40:40~60であることを特徴とする。