(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155013
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】コイル部品、回路基板、及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H01F 17/04 20060101AFI20221005BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
H01F17/04 A
H01F27/28 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058323
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】後村 建二
(72)【発明者】
【氏名】柏 智男
【テーマコード(参考)】
5E043
5E070
【Fターム(参考)】
5E043AB03
5E070AA01
5E070AB01
5E070BB03
5E070CA03
5E070CA13
5E070CA15
5E070CA16
5E070EA06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】周回部を構成する各ターンが巻回面上の整列位置からずれにくいコイル部を有するコイル部品、そのコイル部品を備える回路基板及び電子機器を提供する。
【解決手段】コイル部品1は、磁性基体10と、磁性基体に設けられたコイル部と、を備える。コイル部は、軸方向に延びるコイル軸の周りに延びる第1ターン部a1と、軸方向に直交しコイル軸を中心とする径方向において第1ターン部よりも外側に配置された第2ターン部a2と、を有する。コイル部は、その表面を覆う絶縁被膜27を有する。第1ターン部は、第1内周面と、第1内周面と対向しコイル軸を通る平面で切断した断面において径方向の内側に向かって凹む第1外周面と、を有する。第2ターン部は、第1外周面と対向し、断面において径方向の内側に向かって突出する第2内周面と、第2内周面に対向する第2外周面と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性基体と、
前記磁性基体に設けられ、軸方向に延びるコイル軸の周りに延びる第1ターン部と、前記軸方向に直交し前記コイル軸を中心とする径方向において前記第1ターン部よりも外側に配置された第2ターン部と、その表面を覆う絶縁被膜と、を有するコイル部と、
を備え、
前記第1ターン部は、第1内周面と、前記第1内周面と対向し前記コイル軸を通る平面で切断した断面において前記径方向の内側に向かって凹む第1外周面と、を有し、
前記第2ターン部は、前記第1外周面と対向し前記断面において前記径方向の内側に向かって突出する第2内周面と、前記第2内周面に対向する第2外周面と、を有する、
コイル部品。
【請求項2】
前記第1内周面は、前記径方向の内側に向かって突出している、
請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記第2外周面は、前記径方向の内側に向かって凹んでいる、
請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記断面において前記第1外周面のうち前記コイル軸に最も近い第1外周面最近部と前記第1外周面のうち前記コイル軸から最も遠い第1外周面最遠部との間の前記径方向における距離を示す第1外周面深さは、前記絶縁被膜の厚さよりも大きい、
請求項1から3のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記第2内周面のうち前記コイル軸に最も近い第2内周面最近部は、前記径方向において、前記第1外周面最遠部よりも前記コイル軸の近くに配置されている、
請求項4に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記第2外周面のうち前記コイル軸に最も近い第2外周面最近部と前記第2外周面のうち前記コイル軸から最も遠い第2外周面最遠部との間の前記径方向における距離を示す第2外周面深さは、前記絶縁被膜の厚さよりも大きい、
請求項4又は5に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記コイル部の一端に接続される第1外部電極と、
前記コイル部の他端に接続される第2外部電極と、
を備える請求項1から6のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記コイル部は、前記第1ターン部及び前記第2ターン部を含む第1周回部と、前記第1周回部とは前記軸方向において異なる位置に配置されている第2周回部と、前記第1周回部と前記第2周回部とを接続する接続部と、を有する、
請求項1から7のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項9】
前記第2周回部は、第3ターン部と、前記径方向において前記第3ターン部よりも外側に配置された及び第4ターン部を有し、
前記第3ターン部は、第3内周面と、前記第3内周面に対向し前記断面において前記径方向の内側に向かって凹む第3外周面と、を有し、
前記第4ターン部は、前記第3外周面と対向し前記断面において前記径方向の内側に向かって突出する第4内周面と、前記第4内周面と対向する第4外周面と、を有する、
請求項8に記載のコイル部品。
【請求項10】
前記第3内周面は、前記径方向の内側に向かって突出している、
請求項9に記載のコイル部品。
【請求項11】
前記第4外周面は、前記径方向の内側に向かって凹んでいる、
請求項9又は10に記載のコイル部品。
【請求項12】
前記第3外周面のうち前記コイル軸に最も近い第3外周面最近部と前記第3外周面のうち前記コイル軸から最も遠い第3外周面最遠部との間の前記径方向における距離を示す第3外周面深さは、前記絶縁被膜の厚さよりも大きい、
請求項9から11のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項13】
前記第1ターン部は、前記第1内周面と前記第1外周面とを接続する角を有しない第1接続面を有し、
前記第2ターン部は、前記第2内周面と前記第2外周面とを接続する角を有しない第2接続面を有し、
前記第3ターン部は、前記第1接続面と対向し、前記第3内周面と前記第3外周面とを接続する角を有しない第3接続面を有し、
前記第4ターン部は、前記第2接続面と対向し、前記第4内周面と前記第4外周面とを接続する角を有しない第4接続面を有する、
請求項9から12のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項14】
前記断面において、前記第1内周面の前記軸方向での中央における法線及び前記第3内周面の前記軸方向での中央における法線はいずれも前記コイル軸と平行である、
請求項9から13のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項15】
前記断面において、前記第1内周面の前記軸方向での中央における法線に沿って前記第1内周面から前記コイル軸まで延びる線分と前記コイル軸との間の第1角度は、前記第3内周面の前記軸方向での中央における法線に沿って前記第3内周面から前記コイル軸まで延びる線分と前記コイル軸との間の第2角度と異なる、
請求項9から13のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項16】
前記断面において、前記第1内周面の前記軸方向での中央における法線に沿って前記第1内周面から前記コイル軸まで延びる線分と前記コイル軸との間の第1角度は、前記第3内周面の前記軸方向での中央における法線に沿って前記第3内周面から前記コイル軸まで延びる線分と前記コイル軸との間の第2角度と等しい、
請求項9から13のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項17】
前記断面において、前記第1ターン部の前記径方向における寸法に対する前記軸方向における寸法の比である第1アスペクト比は、0.5~2.0であり、
前記断面において、前記第2ターン部の前記径方向における寸法に対する前記軸方向における寸法の比である第2アスペクト比は、0.5~2.0であり、
前記断面において、前記第3ターン部の前記径方向における寸法に対する前記軸方向における寸法の比である第2アスペクト比は、0.5~2.0であり、
前記断面において、前記第4ターン部の前記径方向における寸法に対する前記軸方向における寸法の比である第2アスペクト比は、0.5~2.0である、
請求項9から13のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか1項に記載のコイル部品を備える回路基板。
【請求項19】
請求項18の回路基板を備える電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、コイル部品、回路基板、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁被膜で被覆された導電性の帯体を巻回して形成されたコイル部を有するコイル部品が知られている。例えば、特開2014-175437号公報に記載されているコイル部は、矩形の断面形状を有する長尺の導電性帯体をコイル軸の周りに複数ターンにわたって巻回することで形成された周回部を有するコイル部を備えている。巻き緩みの発生を抑制するために、コイル部の各ターンは、コイル軸に直交する平面(以下、「巻回面」という。)に整列していることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コイル部の素材としては、断面が方形の平角線が広く用いられている。平角線を巻回することにより形成されたコイル部の周回部においては、平角線の平坦な面同士が対向しているため、周回部を構成する複数のターンの一部が巻回面上の整列位置からコイル軸に沿う軸方向にずれやすい。例えば、コイル部品の製造工程においては、コイル部にかけられた応力を除荷した後に発生するスプリングバックによりコイル部の構成部位が巻回面上の整列位置からずれやすい。また、コイル部に残留応力が存在している場合や完成品のコイル部品においてコイル部に応力が作用する場合には、製造後のコイル部品において周回部を構成する複数のターンの一部が巻回面上の整列位置から軸方向にずれるおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、上述した問題の少なくとも一部を解決又は緩和することである。より具体的な本発明の目的の一つは、周回部を構成する各ターンが巻回面上の整列位置からずれにくいコイル部を有するコイル部品を提供することである。
【0006】
本明細書に開示される発明の前記以外の目的は、本明細書全体を参照することにより明らかになる。本明細書に開示される発明は、前記の課題に代えて又は前記の課題に加えて、本明細書の記載から把握される課題を解決するものであってもよい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によるコイル部品は、磁性基体と、前記磁性基体に設けられたコイル部と、を備える。当該コイル部は、軸方向に延びるコイル軸の周りに延びる第1ターン部と、前記軸方向に直交し前記コイル軸を中心とする径方向において前記第1ターン部よりも外側に配置された第2ターン部と、を有していてもよい。コイル部は、その表面を覆う絶縁被膜を有していてもよい。第1ターン部は、第1内周面と、前記第1内周面と対向し前記コイル軸を通る平面で切断した断面において前記径方向の内側に向かって凹む第1外周面と、を有し、前記第2ターン部は、前記第1外周面と対向し前記断面において前記径方向の内側に向かって突出する第2内周面と、前記第2内周面に対向する第2外周面と、を有していてもよい。
【0008】
本発明の一態様において、第1内周面は、前記径方向の内側に向かって突出していてもよい。
【0009】
本発明の一態様において、第2外周面は、前記径方向の内側に向かって凹んでいてもよい。
【0010】
本発明の一態様において、前記第1外周面のうち前記コイル軸に最も近い第1外周面最近部と前記第1外周面のうち前記コイル軸から最も遠い第1外周面最遠部との間の前記径方向における距離を示す第1外周面深さは、前記絶縁被膜の厚さよりも大きくてもよい。
【0011】
本発明の一態様において、第2内周面のうち前記コイル軸に最も近い第2内周面最近部は、前記径方向において、前記第1外周面最遠部よりも前記コイル軸の近くに配置されていてもよい。
【0012】
本発明の一態様において、第2外周面のうち前記コイル軸に最も近い第2外周面最近部と前記第2外周面のうち前記コイル軸から最も遠い第2外周面最遠部との間の前記径方向における距離を示す第2外周面深さは、前記絶縁被膜の厚さよりも大きくてもよい。
【0013】
本発明の一態様によるコイル部品は、前記コイル部の一端に接続される第1外部電極と、前記コイル部の他端に接続される第2外部電極と、を備えてもよい。
【0014】
本発明の一態様において、前記コイル部は、前記第1ターン部及び前記第2ターン部を含む第1周回部と、前記第1周回部とは前記軸方向において異なる位置に配置されている第2周回部と、前記第1周回部と前記第2周回部とを接続する接続部と、を有していてもよい。
【0015】
本発明の一態様において、前記第2周回部は、第3ターン部と、前記径方向において前記第3ターン部よりも外側に配置された及び第4ターン部を有していてもよい。本発明の一態様において、前記第3ターン部は、第3内周面と、前記第3内周面に対向し前記断面において前記径方向の内側に向かって凹む第3外周面と、を有していてもよい。本発明の一態様において、前記第4ターン部は、前記第3外周面と対向し前記断面において前記径方向の内側に向かって突出する第4内周面と、前記第4内周面と対向する第4外周面と、を有していてもよい。
【0016】
本発明の一態様において、前記第3内周面は、前記径方向の内側に向かって突出していてもよい。
【0017】
本発明の一態様において、前記第4外周面は、前記径方向の内側に向かって凹んでいてもよい。
【0018】
本発明の一態様において、前記第3外周面のうち前記コイル軸に最も近い第3外周面最近部と前記第3外周面のうち前記コイル軸から最も遠い第3外周面最遠部との間の前記径方向における距離を示す第3外周面深さは、前記絶縁被膜の厚さよりも大きくてもよい。
【0019】
本発明の一態様において、前記第1ターン部は、前記第1内周面と前記第1外周面とを接続する角を有しない第1接続面を有し、前記第2ターン部は、前記第2内周面と前記第2外周面とを接続する角を有しない第2接続面を有し、前記第3ターン部は、前記第1接続面と対向し、前記第3内周面と前記第3外周面とを接続する角を有しない第3接続面を有し、前記第4ターン部は、前記第2接続面と対向し、前記第4内周面と前記第4外周面とを接続する角を有しない第4接続面を有していてもよい。
【0020】
本発明の一態様において、記第1内周面の前記軸方向での中央における法線及び前記第3内周面の前記軸方向での中央における法線はいずれも前記コイル軸と平行であってもよい。
【0021】
本発明の一態様において、前記第1内周面の前記軸方向での中央における法線に沿って前記第1内周面から前記コイル軸まで延びる線分と前記コイル軸との間の第1角度は、前記第3内周面の前記軸方向での中央における法線に沿って前記第3内周面から前記コイル軸まで延びる線分と前記コイル軸との間の第2角度と異なっていてもよい。
【0022】
本発明の一態様において、前記第1内周面の前記軸方向での中央における法線に沿って前記第1内周面から前記コイル軸まで延びる線分と前記コイル軸との間の第1角度は、前記第3内周面の前記軸方向での中央における法線に沿って前記第3内周面から前記コイル軸まで延びる線分と前記コイル軸との間の第2角度と等しくてもよい。
【0023】
本発明の一態様において、前記第1ターン部の前記径方向における寸法に対する前記軸方向における寸法の比である第1アスペクト比は、0.5~2.0であり、前記断面において、前記第2ターン部の前記径方向における寸法に対する前記軸方向における寸法の比である第2アスペクト比は、0.5~2.0であり、前記断面において、前記第3ターン部の前記径方向における寸法に対する前記軸方向における寸法の比である第2アスペクト比は、0.5~2.0であり、前記断面において、前記第4ターン部の前記径方向における寸法に対する前記軸方向における寸法の比である第2アスペクト比は、0.5~2.0であってもよい。
【0024】
本発明の一態様による回路基板は、上記のいずれかのコイル部品を備える。
【0025】
本発明の一態様による電子機器は、上記の回路基板を備える。
【発明の効果】
【0026】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、周回部を構成する各ターンが巻回面上の整列位置からずれにくいコイル部を有するコイル部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態によるコイル部品を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1のコイル部品のI-I線断面を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図2に示されているコイル部の一部を拡大して模式的に示す拡大断面図である。
【
図5】
図4に示されているコイル部の一部をさらに拡大して模式的に示す拡大断面図である。
【
図6】
図1のコイル部品が備えるコイル部の引出部の断面を示す模式的な断面図である。
【
図7a】コイル部品1の製造工程の一部を模試的に示す模式図である。
【
図7b】
図7aに示されている軸芯の回転軸に沿う平面に沿って切断した帯体(変形前)の断面を模式的に示す図である。
【
図7c】
図7aに示されている軸芯の回転軸に沿う平面に沿って切断した帯体(変形後)の断面を模式的に示す図である。
【
図8】コイル軸を通る平面で切断した本発明の別の実施形態によるコイル部品のコイル部の一部を模式的に示す断面図である。
【
図9】コイル軸を通る平面で切断した本発明の別の実施形態によるコイル部品のコイル部の一部を模式的に示す断面図である。
【
図10】コイル軸を通る平面で切断した本発明の別の実施形態によるコイル部品のコイル部の一部を模式的に示す断面図である。
【
図11】コイル軸を通る平面で切断した本発明の別の実施形態によるコイル部品のコイル部の一部を模式的に示す断面図である。
【
図12】本発明の別の実施形態によるコイル部品の模式的な平面図である。
【
図13】本発明の別の実施形態によるコイル部品の模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、適宜図面を参照し、本発明の様々な実施形態を説明する。なお、複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。以下で説明される本発明の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。以下の実施形態で説明されている諸要素が発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0029】
図1を参照して、本発明の一実施形態に係るコイル部品1の概要を説明する。
図1は、コイル部品1を模式的に示す斜視図である。
図1に示されるように、コイル部品1は、絶縁性を有する基体10と、基体10に設けられたコイル部25と、基体10の表面に設けられた外部電極21と、基体10の表面において外部電極21から離間した位置に設けられた外部電極22と、を備える。図示の実施形態においては、コイル部25は、基体10の内部に設けられている。コイル部10は、基体10の表面に設けられてもよい。説明の便宜のため、
図1においては、基体10、外部電極21、及び外部電極22を透過してコイル部25が描かれている。
【0030】
本明細書においては、各図に示されている「L軸」、「W軸」、及び「T軸」を基準として各部材の配置、寸法、形状、及びその他の側面を説明することがある。本明細書においては、コイル部品1の「長さ」方向、「幅」方向及び「厚さ」方向はそれぞれ、
図1の「L軸」方向、「W軸」方向及び「T軸」方向とすることがある。「厚さ」方向を「高さ」方向と呼ぶこともある。L軸、W軸、及びT軸は、互いに直交している。
【0031】
コイル部品1は、実装基板2aに実装され得る。実装基板2aには、ランド部3a、3bが設けられている。コイル部品1は、外部電極21とランド部3aとを接合し、また、外部電極22とランド部3bとを接続することで実装基板2aに実装される。本発明の一実施形態による回路基板2は、コイル部品1と、このコイル部品1が実装される実装基板2aと、を備える。回路基板2は、様々な電子機器に搭載され得る。回路基板2が搭載され得る電子機器には、スマートフォン、タブレット、ゲームコンソール、自動車の電装品、サーバ及びこれら以外の様々な電子機器が含まれる。図示の明瞭さのために、
図1以外では、実装基板2a、ランド部3a、3bの図示を省略している。
【0032】
コイル部品1は、基体10の表面に外部電極21,22を有するインダクタ、トランス、フィルタ、リアクトル、及びこれら以外の様々なコイル部品に適用され得る。コイル部品1は、カップルドインダクタ、チョークコイル、及びこれら以外の様々な磁気結合型コイル部品にも適用することができる。コイル部品1の用途は、本明細書で明示されるものに限定されない。
【0033】
基体10は、磁性材料で構成され、概ね直方体形状を有する。本発明の一実施形態において、基体10は、L軸方向における寸法(長さ寸法)がW軸方向における寸法(幅寸法)及びT軸方向における寸法(高さ寸法)よりも大きくなるように構成されている。例えば、長さ寸法は、1.0mm~6.0mmの範囲にあり、幅寸法は0.5mm~4.5mmの範囲にあり、高さ寸法は0.5mm~4.5mmの範囲にある。基体10の寸法は、本明細書で具体的に説明される寸法には限定されない。本明細書において「直方体」又は「直方体形状」という場合には、数学的に厳密な意味での「直方体」のみを意味するものではない。基体10の寸法及び形状は、本明細書で明示されるものには限定されない。
【0034】
基体10は、第1主面10a、第2主面10b、第1端面10c、第2端面10d、第1側面10e、及び第2側面10fを有する。基体10は、これらの6つの面によってその外表面が画定されている。第1主面10aと第2主面10bとはそれぞれ基体10の高さ方向両端の面を成し、第1端面10cと第2端面10dとはそれぞれ基体10の幅方向両端の面を成し、第1側面10eと第2側面10fとはそれぞれ基体10の長さ方向両端の面を成している。上面10aと下面10bとの間は基体10の高さ寸法だけ離間しており、第1端面10cと第2端面10dとの間は基体10の幅寸法だけ離間しており、第1側面10eと第2側面10fとの間は基体10の長さ寸法だけ離間している。
図1に示されているように、第1主面10aは基体10の上側にあるため、第1主面10aを「上面」と呼ぶことがある。同様に、第2主面10bを「下面」と呼ぶことがある。コイル部品1は、第2主面10bが基板2と対向するように配置されるので、第2主面10bを「実装面」と呼ぶこともある。
【0035】
図示の実施形態において基体10の各面10a~10fは平面として図示されているが、各面10a~10fは湾曲した面であってもよい。また、各面10a~10fは、隣接する面と直交するように図示されているが、各面10a~10fは隣接する面と直交していなくともよい。基体10の各頂点は丸みを帯びていてもよく、基体10の稜線(各面10a~10fのうち隣接する面の境界を示す線)は直線ではなく各面10a~10fの形状及び配置に応じて湾曲していてもよい。
【0036】
本発明の一実施形態において、基体10は、磁性材料から構成される。基体10用の磁性材料としては、例えば、フェライト、軟磁性合金材料、及びこれらを混合した混合時性材料を用いることができる。基体10用のフェライトとして、Ni-Cu-Zn系フェライト、Ni-Cu-Zn-Mg系フェライト、Cu-Zn系フェライト、Ni-Cu系フェライト、又はこれら以外の公知のフェライトを用いることができる。基体10用の軟磁性金属材料として、例えば、(1)金属系のFeもしくはNi、(2)合金系のFe-Si-Cr、Fe-Si-AlもしくはFe-Ni、(3)非晶質のFe―Si-Cr-B-CもしくはFe-Si-B-Cr、(4)またはこれらの混合材料を用いることができる。基体10は、軟磁性金属材料から成る複数の金属磁性粒子から構成されてもよい。一実施形態において、基体10用の磁性材料の比透磁率は、100以下である。例えば、基体10用の磁性材料として比透磁率が100以下の軟磁性金属材料を用いることができる。基体10に含まれる複数の金属磁性粒子の各々は、隣接する金属磁性粒子と絶縁膜を介して結合してもよい。絶縁膜は、金属磁性粒子の構成元素の酸化物を含んでもよいし、金属磁性粒子の構成元素以外の絶縁性の材料から形成されてもよい。基体10は、樹脂を含んでもよい。例えば、基体10は、軟磁性金属材料から成る金属磁性粒子同士を結合する樹脂製の結着材を含んでいてもよい。結着材は、例えば、絶縁性に優れた熱硬化性樹脂からなる。結着材の材料として用いられる樹脂材料は、第1磁性材料よりも小さな透磁率を有する。結着材用の樹脂材料として、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂、ポリオキシメチレン(POM)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリフッ化ビニルデン(PVDF)樹脂、フェノール(Phenolic)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂又はポリベンゾオキサゾール(PBO)樹脂が用いられ得る。
【0037】
次に、
図2及び
図3をさらに参照して、コイル部25についてさらに説明する。
図2は、
図1に示されているI-I線でコイル部品1を切断した断面を模式的に示す断面図であり、
図3は、コイル部品1の平面図である。説明の便宜のため、
図2及び
図3においては、外部電極21及び外部電極22の図示を省略している。
【0038】
本発明の少なくとも一つの実施形態において、コイル導体25の少なくとも一部は、コイル軸Axと交わる(例えば直交する)平面上に、渦巻き状に巻回されている。コイル導体25のうちコイル軸Axと交わる平面上に延びる部分は、コイル軸Axを中心とする径方向において内側から外側に向かって渦巻き状に延伸する。図示の実施形態において、コイル部25は、コイル軸Axの周りに螺旋状に延びており、基体10の内部に配置されている。このコイル軸Axは、上面10a及び下面10bと交わるように配置されている。コイル軸Axは、例えば、コイル部品1をT軸方向から見たときの上面10aの幾何学的な重心と、同様にコイル部品1をT軸方向から見たときの下面10bの幾何学的な重心と、を通る直線に沿って延びる軸線とすることができる。本明細書においては、コイル軸Axに沿う方向を「軸方向」と呼び、コイル軸Axを中心とし軸方向と直交する方向を「径方向」と呼ぶことがある。
【0039】
図示の実施形態において、コイル部25は、上側コイル部25Aを上層として有し、下側コイル部25Bを下層として有する2層構造をとっている。上側コイル部25Aは、コイル軸Axの周りに複数ターン巻回された第1周回部25A1と、第1周回部25A1の一端に接続されておりT軸に沿って基体10の上面10aまで延びる引出部25A2と、を有する。下側コイル部25Bは、コイル軸Axの周りに複数ターン巻回された第2周回部25B1と、第2周回部25B1の一端に接続されておりT軸に沿って基体10の上面10aまで延びる引出部25B2と、を有する。第1周回部25A1の引出部25A2と接続された端部と反対側の端部は、接続部25Cを介して、第2周回部25B1の引出部25B2と接続された端部と反対側の端部と接続されている。つまり、接続部25Cは、第1周回部25A1の一端と第2周回部25B1の一端とを接続する。
図2に示されているように、接続部25Cは、コイル軸Axに対して傾いた方向に沿って、第1周回部25A1の内側の端から第2周回部25B1の内側の端まで延伸する。
【0040】
引出部25A2の上端及び引出部25B2の上端はそれぞれ、上面10aから基体10の外部に露出している。引出部25A2は、この上面10aから露出する端面において外部電極22と接続され、引出部25B2は、この上面10aから露出する端面において外部電極21と接続される。
【0041】
コイル部25は、Cu、Ag、Auなどの導電性に優れた材料から帯状に形成される導体部26と、導体部26の表面を覆う絶縁被膜27と、を有する。導体部26の表面のうち引出部25A2の上面10aから露出する端面及び引出部25B2の上面10aから露出する端面以外の領域が絶縁被膜27によって覆われている。絶縁被膜27は、例えば、絶縁性に優れた熱硬化性樹脂から構成される。より具体的には、絶縁被膜27は、ポリウレタン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエステル-イミド等の絶縁性に優れた樹脂から構成されてもよい。
【0042】
コイル部25は、単層構造であってもよい。コイル部25が単層構造である場合には、コイル部25は、下側コイル部25Bを有しなくてもよい。コイル部25が単層構造である場合には、コイル部25は、上側コイル部25Aのみを有し、この上側コイル部25Aの第1周回部25A1の一方の端部が引出部25A2を介して外部電極22に接続され、他方の端部が引出部25A2とは別の引出部を介して外部電極21に接続される。単層構造を有するように構成されたコイル部を有するコイル導体については、後述する。
【0043】
図2及び
図3に示されているように、第1周回部25A1及び第2周回部25B1は、それぞれ概ね3ターンだけコイル軸Axの周りに巻回されている。このため、
図2に示されている断面において、第1周回部25A1及び第2周回部25B1はそれぞれ、約3ターン分の周回要素を有する。具体的には、第1周回部25A1は、第1ターン部a1、第2ターン部a2、及び第3ターン部a3を有しており、第2周回部25B1は、第1ターン部b1、第2ターン部b2、及び第3ターン部b3を有している。第1ターン部a1、第2ターン部a2、及び第3ターン部a3は、この順に、径方向の内側から外側に向かって並んでいる。同様に、第1ターン部b1、第2ターン部b2、及び第3ターン部b3は、この順に、径方向の内側から外側に向かって並んでいる。軸方向において、第1周回部25A1の第1ターン部a1は、第2周回部25B1の第1ターン部b1と対向している。同様に、第1周回部25A1の第2ターン部a2は、軸方向において第2周回部25B1の第2ターン部b2と対向しており、第1周回部25A1の第3ターン部a3は、軸方向において第2周回部25B1の第3ターン部b3と対向している。第1ターン部a1~第3ターン部a3の各々は、径方向において隣接するターン部と絶縁被膜27において接しており、第1ターン部b1~第3ターン部b3の各々は、径方向において隣接するターン部と絶縁被膜27において接している。第1ターン部a1よりも径方向内側に第1ターン部a1~第3ターン部a3以外の第1周回部25A1を構成するターン部が存在してもよいし、第3ターン部a3よりも径方向外側に第1ターン部a1~第3ターン部a3以外の第1周回部25A1を構成する別のターン部が存在してもよい。第1ターン部b1よりも径方向内側に第1ターン部b1~第3ターン部b3以外の第2周回部25B1を構成するターン部が存在してもよいし、第3ターン部b3よりも径方向外側に第1ターン部b1~第3ターン部b3以外の第2周回部25B1を構成する別のターン部が存在してもよい。
【0044】
図2には、コイル軸Axと直交し第1ターン部a1の下端と接する巻回面B1及びコイル軸Axと直交し第1ターン部b1の下端と接する巻回面B2が図示されている。巻回面B1は、第1ターン部a1、第2ターン部a2、第3ターン部a3の整列位置を示す仮想的な平面であり、巻回面B2は、第1ターン部b1、第2ターン部b2、第3ターン部b3の整列位置を示す仮想的な平面である。コイル部25は、第1ターン部a1、第2ターン部a2、及び第3ターン部a3が巻回面B1上に整列するように構成される。すなわち、第1ターン部a1、第2ターン部a2、及び第3ターン部a3の下端はそれぞれ、巻回面B1に接するように第1周回部25A1が構成される。また、コイル部25は、第1ターン部b1、第2ターン部b2、及び第3ターン部b3が巻回面B2上に整列するように構成される。すなわち、第1ターン部a1、第2ターン部a2、及び第3ターン部a3の下端はそれぞれ、巻回面B1に接するように第2周回部25B1が構成される。
【0045】
第1ターン部a1、第2ターン部a2、及び第3ターン部a3はそれぞれ、コイル軸Axの周の周方向に1ターン分(360°)延伸している。より具体的には、第1ターン部a1は、その一端が接続部25Cと接続されており、その接続部25Cとの接続位置から周方向に360°だけ延伸している。第1ターン部a1の他端には第2ターン部a2の一端が接続されており、第2ターン部a2は、第1ターン部a1との接続位置から周方向に360°だけ延伸している。第2ターン部a2の他端には第3ターン部a3の一端が接続されており、第3ターン部a3は、第2ターン部a2との接続位置から周方向に360°だけ延伸している。第3ターン部a3の他端には、引出部25A2の一端が接続されている。引出部25A2の位置を調整するために、第3ターン部a3は、1ターン(360°)より少ないターン数(例えば、0.8ターン程度に相当する長さ)だけ周方向に延伸していてもよいし、1ターン(360°)より多いターン数(例えば、1.2ターン程度に相当する長さ)だけ周方向に延伸していてもよい。
【0046】
第1ターン部a1、第2ターン部a2、及び第3ターン部a3に関する説明は、第1ターン部b1、第2ターン部b2、及び第3ターン部b3にも同様に当てはまる。すなわち、第1ターン部b1、第2ターン部b2、及び第3ターン部b3はそれぞれ、コイル軸Axの周の周方向に1周分(360°)延伸している。より具体的には、第1ターン部b1は、その一端が接続部25Cと接続されており、その接続部25Cとの接続位置から周方向に360°だけ延伸している。周方向において、第1ターン部b1は、接続部25Cとの接続位置から第1ターン部a1の延伸方向とは逆方向に延伸している。例えば、第1ターン部a1が周方向において時計回りに接続部25Cとの接続位置から1ターン分延伸している場合、第1ターン部b1は、接続部25Cとの接続位置から反時計回りに1ターン分延伸する。第1ターン部b1の他端には第2ターン部b2の一端が接続されており、第2ターン部b2は、第1ターン部b1との接続位置から周方向に360°だけ延伸している。第2ターン部b2の他端には第3ターン部b3の一端が接続されており、第3ターン部b3は、第2ターン部b2との接続位置から周方向に360°だけ延伸している。第3ターン部b3の他端には、引出部25B2の一端が接続されている。引出部25B2の位置を調整するために、第3ターン部b3は、1ターン(360°)より少ないターン数又は1ターン(360°)より多いターン数だけ周方向に延伸していてもよい。
【0047】
図3に示されているように、第1周回部25A1は、平面視において、直線状に延びる部位と円弧状に延びる部位とを有する長円形状を呈していてもよい。図示の実施形態においては、第1周回部25A1は、平面視において、L軸方向に沿って長さL1だけ直線状に延びる第1直線部25L1と、第1直線部25L1に平行に長さL2だけ延びており第1直線部25L1よりもW軸方向の負側にある第2直線部25L2と、第1直線部25L1のL軸方向における負側の端部と第2直線部25L2のL軸方向における負側の端部とを接続し中心C1の周りに180°だけ延びる第1半円周部25H1と、第1直線部25L1のL軸方向における正側の端部と第2直線部25L2のL軸方向における正側の端部とを接続し中心C2の周りに180°だけ延びる第2半円周部25H2と、を有する。
図3に示されているように、第1周回部25A1は、第1ターン部a1の径方向における厚さがT1となり、第2ターン部a2の径方向における厚さがT2となり、第3ターン部a3の径方向における厚さがT3となるように構成されてもよい。厚さT1~T3は互いに等しくともよい。後述するように、コイル部25は、一定の厚さを有する帯体を巻芯又はコアの周囲に巻回することで作製されるため、厚さT1~T3は概ね等しくともよい。第1ターン部a1の厚さT1は、コイル部品1において基体10からコイル部25を露出させて当該コイル部25をT軸方向から見た場合の第1ターン部a1の径方向における寸法を意味する。厚さT2及び厚さT3も同様に定義することができる。第1半円周部25H1の内周面は、中心C1を中心とする半径r1の円周に沿って延びており、第2半円周部25H2の内周面は、中心C2を中心とする半径r2の円周に沿って延びている。長さL1は、長さL2と等しくてもよい。半径r1と半径r2とは互いに等しくともよい。
【0048】
本発明の一実施形態において、半径r1の厚さT1に対する比(すなわち、r1/T1。以下、「半径-厚さ比」という。)は、1以上3以下とされる。半径-厚さ比が1より小さいと、コイル部25の表面に設けられている絶縁被膜27が剥離しやすくなるため、半径-厚さ比の下限は1とされる。他方、後述するように、第1ターン部a1の内周面a11及び他のターン部の内周面を径方向内側に突出させ、第1ターン部a1の外周面a12及び他のターン部の外周面を径方向内側に凹ませるためには、半径-厚さ比は、3以下であることが望ましい。このため、本発明の一実施形態においては、半径-厚さ比を1から3の範囲とする。
【0049】
本発明の一実施形態において、第1周回部25A1は、第1半円周部25H1の内周面の中心C1周りの長さ(すなわち、π・r1)と第2半円周部25H2の内周面の中心C2周りの長さ(すなわち、π・r2)との合計が、第1直線部25L1のL軸方向における長さL1及び第2直線部25L2のL軸方向における長さの合計(すなわち、L1+L2)の1.5倍以上となるように構成される。すなわち、π・r1+π・r2≧1.5・(L1+L2)の関係が成り立つ。本発明の一実施形態において、第1周回部25A1は、第1半円周部25H1の内周面の中心C1周りの長さ(すなわち、π・r1)と第2半円周部25H2の内周面の中心C2周りの長さ(すなわち、π・r2)との合計が、第1直線部25L1のL軸方向における長さL1及び第2直線部25L2のL軸方向における長さの合計(すなわち、L1+L2)の2.0倍以上となるように構成される。すなわち、π・r1+π・r2≧2.0・(L1+L2)の関係が成り立つ。後述するコイル部品1の製造方法では、帯体を軸芯の周りに巻回することで第1周回部25A1及び第2周回部25B1を形成している。この第1周回部25A1及び第2周回部25B1の形成プロセスにおいて、第1直線部25L1や第2直線部25L2に相当する部位を形成する場合よりも、第1半円周部25H1や第2半円周部25H2に相当する部位を形成する際に、巻線機から帯体に対して軸芯方向に向かうより大きな力が作用する。帯体に軸芯に向かうより大きな力が作用することにより、内周面a11~a31のうち第1半円周部25H1や第2半円周部25H2に対応する領域は、内周面a11~a31のうち第1直線部25L1や第2直線部25L2に対応する領域よりもコイル軸Axに向かう突出量が大きくなる。同様に、外周面a12~a32のうち第1半円周部25H1や第2半円周部25H2に対応する領域は、外周面a12~a32のうち第1直線部25L1や第2直線部25L2に対応する領域よりもコイル軸Axに向かう凹み量が大きくなる。このため、第2ターン部a2の内周面a21は、第1半円周部25H1や第2半円周部25H2において第1ターン部a1の外周面a12と噛み合いやすく、第3ターン部a3の内周面a31は、第1半円周部25H1や第2半円周部25H2において第2ターン部a2の外周面a22と噛み合いやすい。このため、第1直線部25L1や第2直線部25L2の長さよりも第1半円周部25H1や第2半円周部25H2の長さを大きくすることにより、第1周回部25A1を構成する各ターンの軸方向への移動をより確実に規制することができる。第2周回部25B1についても同様に、第1直線部25L1や第2直線部25L2の長さよりも第1半円周部25H1や第2半円周部25H2の長さを大きくすることにより、第2周回部25B1を構成する各ターンの軸方向への移動をより確実に規制することができる。
【0050】
一実施形態において、第1ターン部a1の厚さT1は0.45mm、半径r1、r2はともに0.785mm、長さL1、L2はともに1.60mmとされる。
【0051】
上記の第1周回部25A1に関する説明は、可能な限り第2周回部25B1にも当てはまる。例えば、第2周回部25B1も、第1直線部25L1、第2直線部25L2、第1半円周部25H1、及び第2半円周部25H2に相当する部位を有することができる。
【0052】
続いて、
図4及び
図5をさらに参照して、第1周回部25A1及び第2周回部25B1についてさらに説明する。
図4は、
図2に示されているコイル部25の一部を拡大して模式的に示す拡大断面図であり、
図5は、
図4に示されているコイル部25の一部をさらに拡大して模式的に示す拡大断面図である。
図4においては、説明の簡潔さのために、第1周回部25A1及び第2周回部25B1のうちコイル軸Axよりも紙面右側(L軸方向の負側)に配置されている部分のみが示されている。
図4に示されているように、第1ターン部a1は、コイル軸Axを通る平面で切断した断面において、径方向内側にある内周面a11と、内周面a11と対向する外周面a12と、内周面a11と外周面a12とを接続する上部接続面a13と、上部接続面a13と対向する下部接続面a14と、を有する。下部接続面a14は、内周面a11と外周面a12とを接続し、上部接続面a13よりも下方に配置されている。
【0053】
第1ターン部a1以外の第1周回部25A1を構成する各ターン部も、第1ターン部a1と同様に内周面、外周面、上側接続面、及び下側接続面の4つの面を有する。具体的には、第2ターン部a2は、径方向内側にある内周面a21と、内周面a21と対向する外周面a22と、内周面a21と外周面a22とを接続する上部接続面a23と、上部接続面a23と対向する下部接続面a24と、を有する。同様に、第3ターン部a3は、径方向内側にある内周面a31と、内周面a31と対向する外周面a32と、内周面a31と外周面a32とを接続する上部接続面a33と、上部接続面a33と対向する下部接続面a34と、を有する。
【0054】
第2周回部25B1を構成する各ターン部も、第1周回部25A1を構成する各ターン部と同様の断面形状を有する。具体的には、第1ターン部b1は、コイル軸Axを通る平面で切断した断面において、径方向内側にある内周面b11と、内周面b11と対向する外周面b12と、内周面b11と外周面b12とを接続する上部接続面b13と、上部接続面b13と対向する下部接続面b14と、を有する。第2ターン部b2は、径方向内側にある内周面b21と、内周面b21と対向する外周面b22と、内周面b21と外周面b22とを接続する上部接続面b23と、上部接続面b23と対向する下部接続面b24と、を有する。第3ターン部b3は、径方向内側にある内周面b31と、内周面b31と対向する外周面b32と、内周面b31と外周面b32とを接続する上部接続面b33と、上部接続面b33と対向する下部接続面b34と、を有する。
【0055】
本発明の一実施形態において、第2ターン部a2の内周面a21は、
図4に示されているように径方向の内側に向かって突出するように構成される。第1周回部25A1の第2ターン部a2以外のターン部の内周面も第2ターン部a2の内周面a21と同様に径方向の内側に向かって突出するように構成されてもよい。具体的には、第1ターン部a1の内周面a11及び第3ターン部a3の内周面a31の少なくとも一方は、径方向の内側に向かって突出するように構成されてもよい。第2周回部25B1の各ターン部の内周面も径方向の内側に向かって突出するように構成されてもよい。具体的には、第2周回部25B1の第1ターン部b1の内周面b11、第2ターン部b2の内周面b21、及び第3ターン部b3の内周面b31の少なくとも一つは、径方向の内側に向かって突出するように構成されてもよい。
【0056】
本発明の一実施形態において、外周面a12は、
図4に示されているように径方向の内側に向かって凹むように構成される。第1周回部25A1の第1ターン部a1以外のターン部の外周面も第1ターン部a1の外周面a12と同様に径方向の内側に向かって凹むように構成されてもよい。具体的には、第2ターン部a2の外周面a22及び第3ターン部a3の外周面a32の少なくとも一方は、径方向の内側に向かって凹むように構成されてもよい。第2周回部25B1の各ターン部の外周面も径方向の内側に向かって凹むように構成されてもよい。具体的には、第2周回部25B1の第1ターン部b1の外周面b12、第2ターン部b2の外周面b22、及び第3ターン部b3の外周面b32の少なくとも一つは、径方向の内側に向かって凹むように構成されてもよい。
【0057】
図4に示されているように、本発明の一実施形態において、第1周回部25A1は、第1ターン部a1の内周面a11の軸方向中央における法線NLaがコイル軸Axと平行になるように構成される。同様に、第2周回部25B1は、第1ターン部b1の内周面b11の軸方向中央における法線NLbがコイル軸Axと平行になるように構成される。
【0058】
引出部25A2は、第1周回部25A1の第1ターン部a1~第3ターン部a3及び第2周回部25B1の第1ターン部b1~第3ターン部b3とは異なり、径方向に突出する面や径方向に凹む面を有しなくてもよい。
図6にコイル部25の引出部25A2の断面を模式的に示す。この図に示されているように、引出部25A2を画定する4つの面は、平坦な面であってもよい。後述するように、コイル部25は、断面が矩形の帯状の帯体を軸芯の周りに巻回することで形成することができる。帯体が巻かれる軸芯は、芯金であってもよいし、基体10のうちコア(第1周回部25A1及び第2周回部25B1の径方向内側の領域)であってもよい。引出部25A2の断面形状は、コイル部25の形状に成形する前の帯体の断面の形状を維持していてもよい。引出部25B2の断面は、図示を省略しているが、引出部25A2の断面形状と同様の形状を呈してもよい。
【0059】
上記のとおり、第1ターン部a1の外周面a12は、径方向の内側に向かって凹んでおり、第2ターン部a2の内周面a21は、径方向の内側に向かって突出している。本明細書においては、
図5に示されている寸法d1を外周面a12の凹みの深さとする。すなわち、本明細書においては、径方向の内側に向かって凹む外周面a12のうちコイル軸Axに最も近い外周面最近部a12P1とコイル軸Axから最も遠い外周面最遠部a12P2との間の径方向における距離d1を、外周面a12の凹みの深さとする。外周面の深さの定義は、各ターン部の外周面において共通であってもよい。例えば、第2ターン部a2については、外周面a22のうちコイル軸Axに最も近い外周面最近部a22P1とコイル軸Axから最も遠い外周面最遠部a22P2との間の径方向における距離d2を、外周面a22の凹みの深さとする。外周面a22の深さd2は、外周面a12の深さd1と同じであってもよく、外周面a12の深さd1よりも浅くてもよい(すなわち、d2<d1であってもよい。)。外周面a12の深さ寸法d1が大きい場合に、当該外周面a12の湾曲が大きくなる。同様に、外周面a22の深さ寸法d2が大きい場合に、当該外周面a22の湾曲が大きくなる。コイル部品1の製造条件によっては、第1ターン部a1の外周面a12に形成されている絶縁被膜27が第2ターン部a2の内周面a21に形成されている絶縁被膜27と溶融し、外周面a12に形成されている絶縁被膜27と内周面a21に形成されている絶縁被膜27との間の境界が観察しにくくなる可能性がある。外周面a12に形成されている絶縁被膜27と内周面a21に形成されている絶縁被膜27との間の境界が観察しにくい場合には、外周面a12の凹みの深さは、第1ターン部a1の導体部26の外周面a12に沿って延びる面のうちコイル軸Axに最も近い部位と、第1ターン部a1の導体部26の外周面a12に沿って延びる面のうちコイル軸Axから最も遠い部位との間の径方向における距離とすることができる。
【0060】
本発明の一実施形態において、第1ターン部a1は、その外周面a12の深さd1が、絶縁被膜27のうち第1ターン部a1を覆っている部位の厚さt1よりも深くなるように(すなわち、d1>t1となるように)構成される。このように、第1ターン部a1の凹んだ外周面a12に第1ターン部a1よりも径方向の外側にある第2ターン部a2の内周面a21に形成されている絶縁被覆27が入り込むことによって、第2ターン部a2の軸方向への移動を規制することができる。同様に、本発明の一実施形態において、第2ターン部a2は、その外周面a22の深さd2が、絶縁被膜27のうち第2ターン部a2を覆っている部位の厚さt2よりも深くなるように(すなわち、d2>t2となるように)構成される。絶縁被膜27の厚さt1と外周面a12の深さd1とを比較する場合には、絶縁被膜27の厚さは、
図6に示されているように、外周面最近部a12P1と接する位置における絶縁被膜27の径方向の寸法とすることができる。同様に、絶縁被膜27の厚さt2と外周面a22の深さd2とを比較する場合には、絶縁被膜27の厚さは、
図5に示されているように、外周面最近部a22P1と接する位置における絶縁被膜27の径方向の寸法とすることができる。本発明の一実施形態において、第1ターン部a1は、その外周面a12の深さd1が、絶縁被膜27のうち第1ターン部a1を覆っている部位の厚さt1と第2ターン部a2を覆っている部位の厚さt2の合計値よりも深くなるように(すなわち、d1>(t1+t2)となるように)構成される。一実施形態において、第1ターン部a1は、その外周面a12の深さd1が、絶縁被膜27のうち第1ターン部a1を覆っている部位の厚さt1の2倍の値よりも深くなるように(すなわち、d1>(2×t1)となるように)構成されてもよい。このように、第1ターン部a1の凹んだ外周面a12に第1ターン部a1よりも径方向の外側にある第2ターン部a2の内周面a21に形成されている絶縁被覆27が入り込むことによって、第2ターン部a2の内周面a21に形成されている絶縁被覆27がより深くまで入り込むことで、第2ターン部a2の軸方向への移動をさらに規制することができる。第1ターン部a1及び第2ターン部a2以外のターン部の各々も、第1ターン部a1及び第2ターン部a2と同様に、各ターン部の外周面の深さが絶縁被膜27のうち当該ターン部を覆う部位の厚さよりも深くなるように構成され得る。例えば、第2周回部25B1の第1ターン部b1は、その外周面b12の深さが、絶縁被膜27のうち第1ターン部b1を覆っている部位の厚さよりも深くなるように構成されてもよい。
【0061】
既述のとおり、第2ターン部a2の内周面a21は、径方向の内側に向かって突出している。一実施形態において、第2ターン部a2の内周面a21は、第1ターン部a1の外周面a12と相補的な形状を有する。第2ターン部a2の内周面a21が第1ターン部a1の外周面a12と相補的な形状を有する場合には、第1ターン部a1の外周面a12と第2ターン部a2の内周面a21とを面接触させることができる。これにより、第1ターン部a1と第2ターン部a2との間に作用する摩擦力が大きくなり、第2ターン部a2が第1ターン部a1に対して軸方向へ移動することを抑制できる。
【0062】
本発明の一実施形態において、第2ターン部a2の内周面a12のうちコイル軸Axに最も近い内周面最近部a21P1は、径方向において第1ターン部a1の外周面a12の外周面最遠部a12P2よりもコイル軸Axの近くに配置される。これにより、第1ターン部a1の外周面最遠部a12P2によって第2ターン部a2の内周面最近部a21P1を軸方向において支持することができるので、第2ターン部a2の軸方向への移動をより確実に規制することができる。
【0063】
上記の第1ターン部a1と第2ターン部a2に関する説明は、矛盾を生じさせない限り、他のターン部にも当てはまる。例えば、第3ターン部a3の内周面a31のうちコイル軸Axに最も近い内周面最近部は、径方向において第2ターン部a2の外周面a22の外周面最遠部a22P2よりもコイル軸Axの近くに配置されてもよい。また、第2周回部25B1の第2ターン部b2の内周面b21のうちコイル軸Axに最も近い内周面最近部は、径方向において第1ターン部b1の外周面b12のうちコイル軸Axから最も遠い外周面最遠部よりもコイル軸Axの近くに配置されてもよい。
【0064】
本発明の一実施形態において、第1周回部25A1の第1ターン部a1は、その径方向における寸法La1に対する軸方向における寸法Ta1の比であるアスペクト比(すなわち、Ta1/La1)が0.5~2.0の範囲となるように構成される。第1ターン部a1の径方向における寸法は、第1ターン部a1の内周面a11のうちコイル軸Axに最も近い内周面最近部a11P1と外周面a12のうちコイル軸Axから最も遠い外周面最遠部a12P2との間の径方向(L軸方向)に沿った距離を意味する。また、第1ターン部a1の軸方向における寸法は、第1ターン部a1のうち軸方向の最も上側(T軸方向における正側)にある部位と軸方向の最も下側(T軸方向における正側)にある部位との軸方向に沿った距離を意味する。図示の実施形態では、第1ターン部a1の内周面11aの上端と下端との距離が第1ターン部a1の軸方向の寸法となっている。コイル部25は、第1周回部25A1の第1ターン部a1以外のターン部及び第2周回部25B1のターン部についても、第1ターン部a1のアスペクト比と同様にアスペクト比を定めることができる。第1周回部25A1の第1ターン部a1以外のターン部及び第2周回部25B1のターン部はそれぞれ、0.5~2.0の範囲にあるように構成されてもよい。また、本発明の一実施形態において、
図6に示されている引出部25A2の断面において、その長辺の短辺に対する比は、1.0より大きく2.0以下の範囲とされる。アスペクト比を算出する場合に、各ターン部の寸法はコイル軸Axを通る平面でコイル導体1を切断した断面において測定され、この断面において測定された寸法に基づいてアスペクト比が算出される。
【0065】
次に、本発明の一実施形態に係るコイル部品1の製造方法について説明する。まず、コイル部25の作成方法について説明する。コイル部25は、市販されているスピンドル式巻線機、市販されているフライヤー式巻線機、又はこれら以外の公知の巻線機を用いて作成することができる。コイル部25を作成するためには、表面が絶縁被膜27で覆われた導電性材料からなる帯体が巻回されたボビンを巻線機にセットする。帯体は、例えば、矩形の断面を有している。
【0066】
巻線機は、搬送ローラを用いて帯体をボビンからノズルまで運搬し、このノズルにより帯体を軸芯である芯金の近傍へ供給することができる。
図7aに、芯金30の例を示す。
図7aには、芯金30の回転軸(芯金30が固定されておりノズルが回転するときにはノズルの公転軸を意味する。以下、同じ。)Cxに直交する断面が示されている。芯金30の外周面は、コイル部25の内周面に対応する形状を有する。例えば、
図7aに示されている芯金30の断面は長円形であり、T軸方向から見たコイル部25の内周面(第1ターン部a1の内周面a11)の形状と対応している。芯金30の形状は、
図7aに示されたものには限られない。
【0067】
スピンドル式巻線機が用いられる場合には、芯金30は、回転軸Bxの周りで自転可能にスピンドルに支持される。不図示のノズルは、芯金30の回転に同期して又は芯金30の回転とは独立に3軸方向に移動できるように構成される。帯体31を芯金30に巻回する場合には、芯金30に対するノズルの位置を調整した上で、ノズルから帯体31にテンションを加えながら芯金30をノズルに対して相対回転させる。スピンドル式巻線機が使用される場合には芯金30が自転し、フライヤー式巻線機が使用される場合にはノズルが芯金30の周りを回転する。帯体31にかけられるテンションは、帯体31が芯金に緩み無く巻かれるように調整される。コイル部品1が
図1に示されているように、第1周回部25A1、第2周回部25B1、及び接続部25Cを有する場合には、帯体31は、フライヤー式巻線機により芯金30の周囲に巻かれる。フライヤー式巻線機が用いられる場合には、まず接続部25Cに相当する部位を形成するために、帯体31を軸Bxに対して傾けて芯金30に押しつけ、この接続部25Cに相当する帯体31の部位を芯金31に押しつけたまま、芯金30の外周面に帯体31の内周面31Aが接するように第1周回部25A1及び第2周回部25B1の1ターン目に相当する部位が巻回される。この1ターン目の巻回操作に続いて、帯体31の2ターン目の部位の内周面が帯体31の1ターン目の部位の外周面31Bに沿って巻回される。3ターン目以降の部位も同様に、前ターンで巻回されている帯体31の部位の外周面に順次巻回される。このような巻回プロセスにより、帯体31の各ターンの部位が芯金30の回転軸Bxを中心とし回転軸Bxと直交する径方向において重なるように配置される。
【0068】
巻回プロセスにおいては、帯体31がノズルからのテンションを受けながら芯金30の周りに巻回されるので、各ターンの巻回時に、当該ターンの芯金30の回転軸Bxに近い内周面側領域R1には帯体31を回転軸Bx周りの周方向に圧縮する圧縮力が作用し、芯金30の回転軸Bxから遠位にある外周面側領域R2には帯体31を回転軸Bx周りの周方向に引っ張る引張力が作用する。
図7aには、帯体31の1ターン目を芯金30に巻回するときに帯体31に作用する圧縮力f1及び引張力f2が図示されている。具体的には、
図7aに示されている実施形態では、帯体31の1ターン目の内周面側領域R1に回転軸Bx周りの周方向に圧縮する圧縮力f1が作用し、芯金30の回転軸Bxから遠位にある外周面側領域R2に周方向に引っ張る引張力f2が作用している。このとき、
図7bに示されている回転軸Bxを通る平面で帯体31を切断した断面で見ると、周方向に作用する圧縮力f1により帯体31の導体部31aのうち内周面側領域R1にある部位が上下方向に押し出されるように延び、また、周方向に作用する引張力f2により導体部31aのうち外周面側領域R2にある導体部31aが上下方向の中心に向かって収縮する。導体部31aを覆う絶縁被膜31bも導体部31aの変形に追従して変形する。この結果、帯体31は、芯金30の周囲に巻回される際に、その内周面31Aが芯金30の回転軸Bxに向かって突出し、その外周面31Bが回転軸Bxに向かって突出するように変形する(
図7c参照)。
図7cには、帯体31のうち第1ターン目の断面が示されているが、第2ターン目及びそれ以後のターンにおいても同様の変形が生じる。
【0069】
以上のようにして、帯体31を芯金30の周りに所定ターン数(例えば、3ターン)だけ巻回することにより、コイル部25の第1周回部25A1及び第2周回部25B1が作成される。次に、帯体31のうち第1周回部25A1及び第2周回部25B1の各々の端部を回転軸Bxに沿う方向に折り曲げることで、引出部25A2及び引出部25B2を形成する。次に、帯体31をこの引出部25A2及び引出部25B2の端部に相当する位置で切断することにより、ボビンに設置された帯体31からコイル部25を切り離すことができる。このようにして作成されたコイル部25は、芯金30から取り外され、芯金30から取り外されたコイル部25が成型金型内に設置される。
【0070】
次に、複数の金属磁性粒子と樹脂材料とを混練して生成されたスラリーをコイル部25が設置された成型金型に流し込み、この成型金型内のスラリーに成形圧力を加えることにより成形体が作製される。一実施形態において、成形圧力は、成型金型内に設置されているコイル部25のコイル軸Axに沿う方向にかけられる。スラリーに含まれる磁性材料及び樹脂材料には特に制約はなく、公知の磁性材料及び樹脂材料を用いることができる。次に、この成形体を加熱することで、内部にコイル部25を含む磁性基体が作製される。基体10は、成形体への加熱処理により成形体に含まれる金属磁性粒子が焼結することで得られる緻密な焼結体であてもよいし、成型体中の樹脂材料が硬化することで金属磁性粒子同士を結着させて得られる構造体であってもよい。
【0071】
次に、基体10の表面に導体ペーストを塗布することにより、外部電極21及び外部電極22を形成する。外部電極21は、磁性基体10内に設けられているコイル部25の一方の端部と電気的に接続され、外部電極22は、磁性基体10内に設けられているコイル部25の他方の端部と電気的に接続されるように設けられる。外部電極21、22は、めっき層を含んでもよい。このめっき層は2層以上であってもよい。2層のめっき層は、Niめっき層と、当該Niめっき層の外側に設けられるSnめっき層と、を含んでもよい。
【0072】
以上のようにして、コイル部品1が作製される。コイル部品1の製造方法は、上記の方法には限られない。コイル部品1は、例えば、磁性材料から成るコアを作製し、このコアの巻芯部に帯体31を巻回することによって作製されてもよい。帯体31のコアへの巻回は、帯体31の芯金30への巻回プロセスと同様の手法で行われ得る。帯体31をコアへ巻回することで作製されたコイル部品1においては、コイル部25は、磁性基体10の表面に設けられる。コアの形状は、適宜定められ得る。例えば、コアの形状は、棒状(I形)、鋲状(T形)、ボビン状(ドラム形)、E型のいずれであってもよい。
【0073】
コイル部25の素材としては、
図7bに示されているように矩形の断面を有する帯体31が用いられる。帯体31は、その断面の頂点が湾曲するように形成されていてもよい。本発明の一実施形態において、帯体31は、
図7bに示されている断面において、回転軸Bxを中心とし回転軸Bxに直交する径方向における寸法に対する回転軸Bxに沿う軸方向における寸法の比である帯体アスペクト比が0.5から2.0の範囲にあるように構成される。本発明者が行った検証によれば、帯体アスペクト比が2.0よりも大きい帯体を芯金の周りに巻回しても、巻回時に帯体の内周面側の領域(帯体31の内周面側領域R1に相当する領域)で周方向に作用する圧縮力及び外周面側の領域(帯体31の外周面側領域R2に相当する領域)での周方向における引張力が弱くなり、帯体アスペクト比が2.0よりも大きい帯体から形成されたコイル部においては、本発明の実施形態によるコイル部25の第1ターン部a1~第3ターン部a3及び第1ターン部b1~第3ターン部b3の内周面及び外周面に生じるような湾曲は生じない。これとは逆に、帯体アスペクト比が0.5よりも小さい帯体を芯金の周りに巻回すると、帯体の内周面側の領域には周方向に大きな圧縮力が作用し、外周面側の領域には大きな引張力が作用するが、帯体アスペクト比が0.5よりも小さい場合には帯体の芯金の回転軸に沿う方向の上面及び下面の面積が大きいため、帯体の内周面側の領域の上下方向におけるわずかな延び及び外周面側の領域の上下方向におけるわずかな収縮により、周方向における圧縮及び引張力による帯体の変形を吸収することができる。このため、帯体アスペクト比が0.5より小さい帯体から形成されたコイル部においては、本発明の実施形態によるコイル部25の第1ターン部a1~第3ターン部a3及び第1ターン部b1~第3ターン部b3の内周面及び外周面に生じるような湾曲は生じない。帯体アスペクト比は、帯体31の内周面及び外周面に湾曲が生じた後のコイル部25のアスペクト比と概ね一致する。
【0074】
帯体31を芯金30の周囲に巻回する際に、帯体31の内周面側領域R1に作用する圧縮力f1及び外周面側領域R2に作用する引張力f2を強くすることにより、コイル部25の第1ターン部a1~第3ターン部a3及び第1ターン部b1~第3ターン部b3の内周面及び外周面に湾曲を形成することができる。コイル部25の第1ターン部a1~第3ターン部a3及び第1ターン部b1~第3ターン部b3の湾曲した内周面及び外周面を形成するために十分な圧縮力f1及び引張力f2を作用させるために、芯金30の回転軸Bxの方向から見たときに(
図7aの視点)、帯体31の曲率半径は小さいことが望ましい。このため、上述したように、完成品のコイル部25において、コイル部25の内周面(第1ターン部a1の内周面a11及び第1ターン部b1の内周面b11)のうちコイル軸から視た視点で湾曲している部位(例えば、第1半円周部25H1及び第2半円周部25H2)の半径r1の各ターン部の厚さT1に対する比である半径-厚さ比が1以上3以下となるように芯金30の湾曲している部位の曲率が定められる。また、複数ターン巻回されている帯体31のうち径方向の外側にあるターンは、内側にあるターンに比べて芯金30の回転軸Bxの方向から見たときの曲率半径が大きくなる。このため、ターン数が増えすぎると、帯体31の巻回時に十分な圧縮力及び引張力を作用させることが難しくなる可能性がある。そこで、帯体31のターン数(したがって、完成品であるコイル部25の第1周回部25A1のターン数及び第2周回部25B1のターン数)は、2ターン以上5ターン以下とされる。
【0075】
コイル部25の第1ターン部a1~第3ターン部a3及び第1ターン部b1~第3ターン部b3の湾曲した内周面及び外周面を形成するために十分な圧縮力f1及び引張力f2を作用させるためには、帯体31を芯金30に巻回する際に、帯体31に対して十分に大きなテンションを作用させる必要がある。断面積が大きな帯体31に対しては、巻回時により大きなテンションがかけられる。
【0076】
帯体31を芯金30の周りに複数ターンにわたって巻回する場合に、内側のターンを巻回する場合に帯体31にかけられるテンションを外側のターンを巻回する場合に帯体31にかけられるテンションよりも大きくすることができる。例えば、芯金30の周りに帯体31を3ターンだけ巻回する場合には、第1ターンの巻回時に帯体にかけるテンションが最大となり第3ターンの巻回時に帯体にかけるテンションが最小となるように帯体31にかけられるテンションを調整することができる。このようなテンション調整を行って形成されたコイル部25においては、コイル軸を通る断面で見たときに、コイル軸Axから見て1ターン目のターン部(例えば、第1ターン部a1)の内周面及び外周面が第2ターン目及び第3ターン目のターン部(例えば、第2ターン部a2及び第3ターン部a3)の内周面及び外周面よりも大きく湾曲させることができる。これにより、帯体31を芯金30の周りに巻回する際に、帯体31の第2ターン目の回転軸Bxに沿う方向への移動が帯体31の第1ターン目によって規制されるので、第2ターン目の整列位置からのずれを抑制できる。
【0077】
帯体31を芯金30の周囲に巻回する際に、帯体31及び芯金を120℃程度まで加熱してもよい。帯体31が加熱される場合には、絶縁被膜31bは耐熱性に優れた熱硬化樹脂であることが望ましい。絶縁被膜31bは、例えば、150℃以上の耐熱温度を有するポリアミドイミドとすることができる。絶縁被膜31bの表面には接着剤の層が形成されていてもよい。この接着剤の層は、熱可塑性樹脂から成る接着剤の層であってもよい。
【0078】
続いて、
図8を参照して、本発明の別の実施形態によるコイル部品101について説明する。
図8は、コイル部品101が備えるコイル部25の一部の概略的な断面図を示す。コイル部品101はコイル部25の形状においてコイル部品1と異なっているため、以下では、コイル部品101のコイル部25がコイル部品1のコイル部25と異なる点を中心に説明する。
【0079】
コイル部品101のコイル部25は、各ターン部の上部接続面及び下部接続面が、角を有しない湾曲面から成る。具体的には、
図8に示されているように、第1ターン部a1は、コイル軸Axを通る平面で切断した断面において、内周面a11と外周面a12とを接続する上部接続面a113と、上部接続面a113と対向する下部接続面a114と、を有する。この上部接続面a113は、軸方向の上側に向かって突出しており、下部接続面a114は、軸方向の下側に向かって突出している。上部接続面a113及び下部接続面a114はいずれも角がない湾曲面である。
【0080】
第2ターン部a2及び第3ターン部a3を構成する上部接続面及び下部接続面も上部接続面a113及び下部接続面a114と同様に構成される。具体的には、第2ターン部a2は、内周面a21と外周面a22とを接続する上部接続面a123及び上部接続面a123と対向する下部接続面a124を有しており、第3ターン部a3は、内周面a31と外周面a32とを接続する上部接続面a133及び上部接続面a133と対向する下部接続面a134を有している。上部接続面a123及び上部接続面a133は、軸方向の上側に向かって突出しており、下部接続面a124及び下部接続面a134はいずれも軸方向の下側に向かって突出している。上部接続面a123、上部接続面a133、下部接続面a124、及び下部接続面a134はいずれも角がない湾曲面である。
【0081】
第2周回部25B1に含まれる第1ターン部b1、第2ターン部b2、及び第3ターン部b3はそれぞれ第1ターン部a1、第2ターン部a2、及び第3ターン部a3と同様に構成される。具体的には、これらの各ターン部が有する上部接続面b113、b123、b133はいずれも軸方向の上側に向かって突出する角がない湾曲面であり、下部接続面b114、b124、b134はいずれも軸方向の下方に向かって突出する角がない湾曲面である。
【0082】
コイル部品101によれば、第1周回部25A1を構成する各ターン部と、この第1周回部25A1を構成するターン部のいずれかと対向する第2周回部25B1のターン部とが角のない湾曲面で対向しているため、対向するターン部同士が接触してもその接触位置において絶縁破壊が起こりにくい。例えば、第1周回部25A1の第1ターン部a1の下部接続面a114は、第2周回部25B1の第1ターン部b1の上部接続面b113と対向している。第1ターン部a1の下部接続面a114及び第1ターン部b1の上部接続面b113はいずれも角がない湾曲面であるから、両者が接触しても面接触となるため、絶縁被膜27に対して局所的な力が作用しにくく、このため絶縁被膜27の破れに起因する絶縁破壊が起こりにくい。
【0083】
続いて、
図9を参照して、本発明の別の実施形態によるコイル部品101について説明する。
図9は、コイル部品201が備えるコイル部25の一部の概略的な断面図を示す。コイル部品201はコイル部25の形状においてコイル部品1と異なっているため、以下では、コイル部品201のコイル部25がコイル部品1のコイル部25と異なる点を中心に説明する。
【0084】
コイル部品201のコイル部25は、第1周回部25A1を構成する第1ターン部a1、第2ターン部a2、及び第3ターン部a3がコイル軸Axに向かって傾倒した姿勢を取っている。このため、第1ターン部a1の内周面a11の軸方向中央における法線NLaがコイル軸Axと平行ではなくコイル軸Axに対して所定の角度だけ傾斜している。具体的には、法線NLaに沿って第1ターン部a1の内周面a11からコイル軸Axまで延びる線分は、コイル軸Axに対して90°より小さい角度θ1だけ傾斜している。図示の簡潔さのために、
図9では、コイル軸Axと平行な軸線Ax1を第1ターン部a1の近くに示し、この軸線Ax1と法線NLaとの間の角度をθ1として示している。
図9の実施形態においては、言うまでもなく、法線NLaからコイル軸Axまで延ばした線分とコイル軸Axとの間の角度もθ1となる。他方、第1ターン部b1の内周面b11の軸方向中央における法線NLbは、コイル軸Axと平行に延びている。このため、コイル部品201において、第1周回部25A1は、第2周回部25B1と非対称に構成されている。
【0085】
コイル部品201においては、第1周回部25A1と第2周回部25B1とが非対称に構成されているが、第1周回部25A1に含まれる各ターン部(第1ターン部a1~第3ターン部a3)は、整列位置を表す巻回面B1上に整列して配置されており、また、第2周回部25B1に含まれる各ターン部(第1ターン部b1~第3ターン部b3)は、整列位置を表す巻回面B2上に整列して配置されている。
【0086】
続いて、
図10を参照して、本発明の別の実施形態によるコイル部品301について説明する。
図10は、コイル部品301が備えるコイル部25の一部の概略的な断面図を示す。コイル部品201はコイル部25の形状においてコイル部品1と異なっているため、以下では、コイル部品301のコイル部25がコイル部品1のコイル部25と異なる点を中心に説明する。
【0087】
コイル部品301のコイル部25は、第1周回部25A1を構成する第1ターン部a1、第2ターン部a2、及び第3ターン部a3がコイル軸Axから離れる向き傾倒した姿勢を取っている。このため、第1ターン部a1の内周面a11の軸方向中央における法線NLaに沿って第1ターン部a1の内周面a11からコイル軸Axまで延びる線分は、コイル軸Axに対して90°より小さい角度θ2だけ傾斜している。他方、第1ターン部b1の内周面b11の軸方向中央における法線NLbは、コイル軸Axと平行に延びている。このため、コイル部品301において、第1周回部25A1は、第2周回部25B1と非対称に構成されている。
【0088】
コイル部品301においては、第1周回部25A1と第2周回部25B1とが非対称に構成されているが、第1周回部25A1に含まれる各ターン部(第1ターン部a1~第3ターン部a3)は、整列位置を表す巻回面B1上に整列して配置されており、また、第2周回部25B1に含まれる各ターン部(第1ターン部b1~第3ターン部b3)は、整列位置を表す巻回面B2上に整列して配置されている。
【0089】
コイル部品201及び301においては、第1周回部25A1と第2周回部25B1とが非対称に構成されている。具体的には、第1周回部25A1の各ターンのコイル軸Axに対する傾斜角度(例えば、θ1、θ2)が第2周回部25B1の各ターンのコイル軸に対する傾斜よりも大きくなるように、第1周回部25A1及び第2周回部25B1が配置されているので、コイル部を成形金型に入れて基体10を圧縮成形する際に、第1周回部25A1の方が第2周回部25B1よりも成形圧力により変形しやすい。このため、成形圧力がコイル部25に作用する際に、第1周回部25A1が変形することで第2周回部25B1の変形を抑制することができる。このため、第2周回部25B1の成型金型に対する配置を決めることで、基体10に対するコイル部25の位置を精度良く定めることができる。
【0090】
続いて、
図11を参照して、本発明の別の実施形態によるコイル部品401について説明する。
図11は、コイル部品401が備えるコイル部25の一部の概略的な断面図を示す。コイル部品401はコイル部25の形状においてコイル部品1と異なっているため、以下では、コイル部品401のコイル部25がコイル部品1のコイル部25と異なる点を中心に説明する。
【0091】
コイル部品401のコイル部25は、第1周回部25A1を構成する第1ターン部a1、第2ターン部a2、及び第3ターン部a3がコイル軸Axから離れる向き傾倒した姿勢を取っており、また、第2周回部25B1を構成する第1ターン部b1、第2ターン部b2、及び第3ターン部b3がコイル軸Axに向かって傾倒する姿勢を取っている。つまり、第2周回部25B1の第1ターン部b1、第2ターン部b2、及び第3ターン部b3は、第1周回部25A1の第1ターン部a1、第2ターン部a2、及び第3ターン部a3と反対側に傾倒している。
図11の実施形態において、第1ターン部a1の内周面a11の軸方向中央における法線NLaに沿って第1ターン部a1の内周面a11からコイル軸Axまで延びる線分は、コイル軸Axに対して90°より小さい角度θ3だけ傾斜しており、第1ターン部b1の内周面b11の軸方向中央における法線NLbに沿って第1ターン部b1の内周面b11からコイル軸Axまで延びる線分は、コイル軸Axに対して90°より小さい角度θ4だけ傾斜している。角度θ4は角度θ3と同じであってもよい。
【0092】
コイル部品401においては、第1周回部25A1に含まれる各ターン部(第1ターン部a1~第3ターン部a3)は、整列位置を表す巻回面B1上に整列して配置されており、また、第2周回部25B1に含まれる各ターン部(第1ターン部b1~第3ターン部b3)は、整列位置を表す巻回面B2上に整列して配置されている。
【0093】
コイル部品401においては、第1周回部25A1に含まれる第1ターン部a1、第2ターン部a2、及び第3ターン部a3並びに第2周回部25B1に含まれる第1ターン部b1、第2ターン部b2、及び第3ターン部b3が互いに近づく方向に傾斜している。例えば、第1周回部25A1の第1ターン部a1は、第2周回部25B1の第1ターン部a1に近づく方向に傾斜している。このため、基体10の成形時に成形圧力をコイル軸Axに沿う方向にかけることにより、第1周回部25A1に含まれる第1ターン部a1、第2ターン部a2、及び第3ターン部a3と第2周回部25B1に含まれる第1ターン部b1、第2ターン部b2、及び第3ターン部b3とが互いを支持するため、成形時における成形圧力により第1ターン部a1、第2ターン部a2、及び第3ターン部a3並びに第1ターン部b1、第2ターン部b2、及び第3ターン部b3が整列位置から軸方向に移動することを抑制できる。具体的には、軸方向に成形圧力がかけられたときに、第1ターン部a1には下向きの応力が作用するが、第1ターン部a1と軸方向において対向している第1ターン部b1には上向きの応力が作用しているので、この第1ターン部b1に作用している上向きの応力により、下向きに応力を受けている第1ターン部a1を支持することができるので、第1ターン部a1の軸方向への移動を抑制することができる。第1ターン部b1の軸方向への移動も同様のメカニズムで抑制される。軸方向において対向する他のターン部の組(例えば、第2ターン部a2と第2ターン部b2との組、及び、第3ターン部a3と第3ターン部b3との組)においても同様のメカニズムにより、互いに軸方向への移動を規制し合う。このため、コイル部品401においては、第1ターン部a1~第3ターン部a3及び第1ターン部b1~第3ターン部b3の整列位置からの軸方向におけるずれが抑制される。
【0094】
続いて、
図12を参照して、本発明の別の実施形態によるコイル部品501について説明する。
図12は、コイル部品501の概略的な平面図を示す。コイル部品501は、基体10の形状及びコイル部25の形状においてコイル部品1と異なっているため、以下では、コイル部品501の基体10及び導体25がコイル部25の基体10と異なる点、及び、コイル部品1の基体10及びコイル部25と異なる点を中心に説明する。
【0095】
コイル部品501におけるコイル部25は、コイル部品1におけるコイル部25と平面視における形状が異なっている。コイル部品501の第1周回部25A1は、平面視において、L軸方向に沿って長さL1だけ直線状に延びる第1直線部25L1と、第1直線部25L1に平行に長さL2だけ延びており第1直線部25L1よりもW軸方向の負側にある第2直線部25L2と、W軸方向に沿って長さW1だけ直線状に延びる第3直線部25L3と、第3直線部25L3に平行に長さW2だけ延びており第3直線部25L3よりもL軸方向の正側にある第4直線部25WL4と、第1直線部25L1のL軸方向における負側の端部と第3直線部25L3のW軸方向における正側の端部とを接続し中心C1の周りに90°だけ延びる第1四半円周部25Q1と、第3直線部25L3のW軸方向における負側の端部と第2直線部25L2のL軸方向における負側の端部とを接続し中心C2の周りに90°だけ延びる第2四半円周部25Q2と、第2直線部25L2のL軸方向における正側の端部と第4直線部25L4のW軸方向における負側の端部とを接続し中心C3の周りに90°だけ延びる第3四半円周部25Q3と、第4直線部25L4のW軸方向における正側の端部と第1直線部25L1のL軸方向における正側の端部とを接続し中心C4の周りに90°だけ延びる第4四半円周部25Q4と、を有する。
【0096】
第1四半円周部25Q1の内周面は、中心C1を中心とする半径r1の円周に沿って延びており、第2四半円周部25Q2の内周面は、中心C2を中心とする半径r2の円周に沿って延びており、第3四半円周部25Q3の内周面は、中心C3を中心とする半径r3の円周に沿って延びており、第4四半円周部25Q4の内周面は、中心C4を中心とする半径r4の円周に沿って延びている。長さL1は、長さL2と等しくてもよい。長さW1は、長さW2と等しくてもよい。長さL1、長さL2、長さW1、及び長さW2は全て等しくてもよい。半径r1、半径r2、半径r3、及び半径r4は、互いに等しくともよい。
【0097】
本発明の一実施形態において、半径r1の厚さT1に対する比(すなわち、r1/T1。以下、「半径-厚さ比」という。)は、1以上3以下とされる。半径-厚さ比が1より小さいと、コイル部25の表面に設けられている絶縁被膜27が剥離しやすくなるため、半径-厚さ比の下限は1とされる。他方、後述するように、第1ターン部a1の内周面a11及び他のターン部の内周面を径方向内側に突出させ、第1ターン部a1の外周面a12及び他のターン部の外周面を径方向内側に凹ませるためには、半径-厚さ比は、3以下であることが望ましい。このため、本発明の一実施形態においては、半径-厚さ比を1から3の範囲とする。
【0098】
本発明の一実施形態において、第1周回部25A1は、第1四半円周部25Q1の内周面の中心C1周りの長さと、第2四半円周部25Q2の内周面の中心C2周りの長さと、第3四半円周部25Q3の内周面の中心C3周りの長さと、第4四半円周部25Q4の内周面の中心C4周りの長さとの合計(すなわち、(π・r1+π・r2+π・r3+π・r4)/2)が第1直線部25L1~第4直線部25L4の長さ合計(すなわち、L1+L2+W1+W4)と同じかそれ以上となるように構成される。
【0099】
一実施形態において、第1ターン部a1の厚さT1は0.5mm、半径r1~r4はいずれも0.5mm、長さL1、L2はともに0.8mm、長さW1、W2はともに0.7mmとされる。
【0100】
続いて、
図13を参照して、本発明の別の実施形態によるコイル部品601について説明する。
図13は、コイル部品601の概略的な斜視図を示す。コイル部品601は、コイル部25に代えてコイル部625を有する点でコイル部品1と異なっているため、以下では、主にコイル部625について説明する。コイル部625は、コイル軸Axの周りに複数ターン巻回されている周回部625aと、周回部625aの一端に接続されておりT軸に沿って基体10の上面10aまで延びる引出部625bと、周回部625aの他端に接続されておりT軸に沿って基体10の上面10aまで延びる引出部625cと、を有する。図示の実施形態において、周回部625aは、概ね3ターンだけコイル軸Axの周りに巻回されている。周回部625aの各ターンを構成する部位は、コイル部品1の第1ターン部a1~第3ターン部a3と同様に、径方向の内側から外側に向かって、コイル軸Axと直交する巻回面上に整列して並んでいる。コイル部品601は、例えばスピンドル式巻線機によって、公知の手法によって製造することができる。
【0101】
続いて、上記の実施形態による作用効果について説明する。本発明の一又は複数の実施形態によるコイル部品によれば、第1ターン部a1の第1外周面a12がコイル軸Axに向かって凹んでおり、第2ターン部a2の内周面a21がコイル軸Axに向かって突出しているため、第1ターン部a1の第1外周面a12に第2ターン部a2の内周面a21が噛み合うことで、第1ターン部a1及び第2ターン部a2が互いの軸方向における移動を規制できる。これにより、第1ターン部a1及び第2ターン部a2が例えば巻回面B1上にある所定の整列位置から軸方向にずれることを抑制できる。他のターン部についても同様のメカニズムで、巻回面B1又は巻回面B2上にある所定の整列位置からの軸方向へのずれが抑制され得る。
【0102】
本発明の一又は複数の実施形態によれば、第1ターン部1aの外周面最近部a12P1と外周面最遠部a12P2との間の径方向における距離d1がコイル部25の表面の絶縁被膜27の厚さt1よりも大きいので、第1ターン部1aの第1外周面最遠部a12P2によって第2ターン部2aを支持することで、第2ターン部2aの軸方向への移動を規制することができる。これにより、第2ターン部a2が整列位置からの軸方向へずれることを抑制できる。他のターン部についても同様のメカニズムで整列位置からの軸方向へのずれを抑制することができる。
【0103】
本発明の一又は複数の実施形態によれば、第2ターン部1bの内周面最近部a21P1が、径方向において、第1ターン部a1の外周面最遠部a12P2よりもコイル軸Axの近くに配置されているので、第1ターン部1aの外周面最遠部a12P2によって第2ターン部1bの内周面最近部a21P1を支持することで、第2ターン部2aの軸方向への移動をより確実に規制することができる。
【0104】
前述の様々な実施形態で説明された各構成要素の寸法、材料及び配置は、それぞれ、各実施形態で明示的に説明されたものに限定されず、当該各構成要素は、本発明の範囲に含まれ得る任意の寸法、材料及び配置を有するように変形することができる。
【0105】
本明細書において明示的に説明していない構成要素を、上述の各実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【0106】
本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの表記は、構成要素を識別するために付するものであり、必ずしも、数、順序、もしくはその内容を限定するものではない。また、構成要素の識別のための番号は文脈毎に用いられ、一つの文脈で用いた番号が、他の文脈で必ずしも同一の構成を示すとは限らない。また、ある番号で識別された構成要素が、他の番号で識別された構成要素の機能を兼ねることを妨げるものではない。
【符号の説明】
【0107】
1、101、201、301、401、501、601 コイル部品
10 基体
21、22 外部電極
25、625 コイル部
26 導体部
27 絶縁被膜
30 軸芯(芯金)
31 帯体
Ax コイル軸