(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155016
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
B61B 10/00 20060101AFI20221005BHJP
B61B 13/06 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
B61B10/00 A
B61B13/06 D
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058331
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】515006434
【氏名又は名称】株式会社テクノシンセイ
(74)【代理人】
【識別番号】100082083
【弁理士】
【氏名又は名称】玉田 修三
(72)【発明者】
【氏名】木村 健一
(57)【要約】
【課題】タイミングベルトや歯付きプーリーを用いることなくプーリーの空転を防ぐことが可能になり、しかも、アイドラーのようなテンションプーリーを用いる必要を無くすることのできる搬送装置を提供する。
【解決手段】正逆方向に択一的に回転駆動される駆動側プーリー10と、従動側プーリー20と、紐状線材30と、ランナー50を有するガイドレール40と、紐状線材30に連結された被搬送物保持体60と、を備える。紐状線材30一端32と他端36とを駆動側プーリー10に固定する。駆動側プーリー10が正逆方向に択一的に回転駆動することによって、紐状線材30の一端側部分31及び他端側部分35のうちの一方が駆動側プーリー10から繰り出され、他方が駆動側プーリー10に巻き取られるように構成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送物を搬送するための搬送装置であって、
動力源により正方向又は逆方向に択一的に回転駆動される駆動側プーリーと、この駆動側プーリーに間隔を隔てて対設された従動側プーリーと、この従動側プーリーに長手方向中間部が折返し状に巻き掛けられ、かつ、一端側部分と他端側部分とが上記駆動側プーリーに互いに逆向きに巻き付けられた紐状線材と、この紐状線材に連結されて追従移動する被搬送物保持体と、を備え、
上記駆動側プーリーが正方向又は逆方向に択一的に回転駆動されることによって、上記紐状線材の一端側部分及び他端側部分のうちの一方が上記駆動側プーリーから繰り出され、かつ、他方が上記駆動側プーリーに巻き取られるように構成されている、ことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
上記紐状線材の一端と他端とが上記駆動側プーリーに固定されている請求項1に記載した搬送装置。
【請求項3】
上記駆動側プーリーと上記従動側プーリーとが横方向で対峙し、それらのプーリーの相互間に、ランナーを有するガイドレールが敷設され、上記被搬送物保持体が、上記ランナーを介して上記紐状線材に連結されている請求項1又は請求項2に記載した搬送装置。
【請求項4】
上記駆動側プーリーの軸方向中間部にフランジを設けることによって、そのフランジを挟む両側に、上記紐状線材の一端側部分が巻き付けられた第1区画と他端側部分が巻き付けられた第2区画とが振り分けて形成されている請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載した搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークと称される被搬送物を搬送するための搬送装置、特に、プーリーに巻き掛けられた紐状線材に被搬送物保持体を追従移動させることによって被搬送物を搬送するように構成されている搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板などの部品やその他のワークを一定数集めて工場内で移動させる場合に、作業者がワークを入れた収納容器を携行して数メートル先の目的場所まで歩いて持ち運ぶ、という方法を採用すると、作業者にとっての労力負担が多大になるだけでなく、転倒したり怪我をしたりするといった歩行中の危険を払拭することができない。そこで、上記したような搬送装置、具体的には、プーリーに巻き掛けられた紐状線材に被搬送物保持体を追従移動させることによって被搬送物を搬送するように構成されている搬送装置を用いることによって、作業者にとっての労力負担を軽減し、併せて、転倒したり怪我をしたりするといった歩行中の危険を払拭することが考えられた。
【0003】
この種の搬送装置については、従来より様々なものが使用され提案されているけれども、それらの多くは、無端状のタイミングベルトと歯付きプーリーとを組み合わせてプーリーの空転を防いでいたり、プーリーに巻き掛けられた無端ベルトにアイドラーのようなテンションプーリーを組み合わせて無端ベルトの弛みをできるだけ吸収できるようにしていたりするものであった。この状況の下で、先行例1(特許文献1)には、無端状のタイミングベルトと歯付きプーリーとを組み合わせた搬送装置が記載されている。また先行例2には(特許文献2)には、プーリーに巻き掛けられた無端ベルトにアイドラーのようなテンションプーリーを組み合わせたベルト駆動システムが記載されている。そのほか、先行例3(特許文献3)には、プーリーに巻き掛けられた無端ベルトを駆動モーターにより駆動することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-193084号公報
【特許文献2】特開2020-094672号公報
【特許文献3】特開2019-198969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ベルトとプーリーとを組み合わせて構成される搬送装置において、ベルトにタイミングベルトを用いたり、プーリーに歯付きプーリーを用いたりすると、それだけコスト高になり、また、アイドラーのようなテンションプーリーを用いると必要な部品点数が増加して構成が複雑になったりコスト高になったりする。
【0006】
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、タイミングベルトや歯付きプーリーを用いることなくプーリーの空転を防ぐことが可能になり、しかも、アイドラーのようなテンションプーリーを用いる必要を無くすることのできる搬送装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る搬送装置は、被搬送物を搬送するための搬送装置であって、動力源により正方向又は逆方向に択一的に回転駆動される駆動側プーリーと、この駆動側プーリーに間隔を隔てて対設された従動側プーリーと、この従動側プーリーに長手方向中間部が折返し状に巻き掛けられ、かつ、一端側部分と他端側部分とが上記駆動側プーリーに互いに逆向きに巻き付けられた紐状線材と、この紐状線材に連結されて追従移動する被搬送物保持体と、を備え、上記駆動側プーリーが正方向又は逆方向に択一的に回転駆動されることによって、上記紐状線材の一端側部分及び他端側部分のうちの一方が上記駆動側プーリーから繰り出され、かつ、他方が上記駆動側プーリーに巻き取られるように構成されている、というものである。ここで、「紐状線材の一端側部分」とは、紐状線材の一端に連続していて駆動側プーリーに巻き付けられた任意長さの範囲を意味し、同様に、「紐状線材の他端側部分」とは、紐状線材の他端に連続していて駆動側プーリーに巻き付けられた任意長さの範囲を意味している。
【0008】
この発明に係る搬送装置によると、駆動側プーリーが動力源により正方向又は逆方向に択一的に回転駆動されると、紐状線材が駆動側プーリーの回転方向に見合う方向に往動又は復動する。しかも、紐状線材は、その一端側部分と他端側部分とが駆動側プーリーに互いに逆向きに巻き付けられていることにより、紐状線材を往動又は復動させるのに必要な動力源が1つで済むだけでなく、紐状線材に弛みが存在していても紐状線材が確実に往動又は復動する。このため、アイドラーのようなテンションプーリーを特別に必要とすることなく、紐状線材に連結された被搬送物保持体が確実に紐状線材に追従移動するようになる。
【0009】
本発明では、上記紐状線材の一端と他端とが上記駆動側プーリーに固定されていることが望ましい。これによると、駆動側プーリーが紐状線材に対して空転することがなくなるため、駆動側プーリーの回転量と紐状線材の移動距離とが正確に同調するようになり、このことが被搬送物保持体による搬送距離を正確に制御することに役立つ。
【0010】
本発明では、上記駆動側プーリーと上記従動側プーリーとが横方向で対峙し、それらのプーリーの相互間に、ランナーを有するガイドレールが敷設され、上記被搬送物保持体が、上記ランナーを介して上記紐状線材に連結されている、という構成を採用することが望ましい。これによれば、紐状線材に追従移動する被搬送物保持体の移動経路がガイドレールによって規制されるために、被搬送物保持体をスムーズに移動させることが可能になる。
【0011】
本発明では、上記駆動側プーリーの軸方向中間部にフランジを設けることによって、そのフランジを挟む両側に、上記紐状線材の一端側部分が巻き付けられた第1区画と他端側部分が巻き付けられた第2区画とが振り分けて形成されている、という構成を採用することが可能である。これによれば、紐状線材の一端側部分及び他端側部分の配備箇所がフランジによって第一区画と第2区画とに分離されるために、紐状線材の一端側部分及び他端側部分とが絡まって動作が不安定になるという事態が起こらない。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によると、タイミングベルトや歯付きプーリーを用いることなく駆動側プーリーの空転を防ぐことが可能になり、しかも、アイドラーのようなテンションプーリーを用いる必要もなくなるので、構成が簡単で低コストの搬送装置を提供することができるだけでなく、基板などの部品やその他のワークを一定数集めて工場内で数メートルの範囲内で移動させるような場合に、作業者にとっての労力負担を軽減し、併せて、転倒したり怪我をしたりするといった歩行中の危険を払拭することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る搬送装置の概略側面図である。
【
図2】紐状線材が巻き付けられた駆動側プーリー及び動力源を示した側面図である。
【
図3A】
図2のIIIA-IIIA線で示した部分の正面図である。
【
図3B】
図2のIIIB-IIIB線で示した部分の正面図である。
【
図4】紐状線材が巻き掛けられた従動側プーリーやガイドレールなどを示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明の実施形態に係る搬送装置の概略側面図である。同図のように、この搬送装置は、駆動側プーリー10と、駆動側プーリー10に横方向に間隔を隔てて対設された従動側プーリー20と、紐状線材30と、駆動側プーリー10と従動側プーリー20との相互間に敷設されたランナー50を有するガイドレール40と、紐状線材30に連結されている被搬送物保持体60と、図示していない駆動側プーリー10の動力源70、とを備えている。
【0015】
図2は紐状線材30が巻き付けられた駆動側プーリー10及び動力源70を示した側面図、
図3Aは
図2のIIIA-IIIA線で示した部分の正面図、
図3Bは
図2のIIIB-IIIB線で示した部分の正面図、
図4は紐状線材30が巻き掛けられた従動側プーリー20やガイドレール40などを示した正面図である。
【0016】
図2のように、駆動側プーリー10には動力源70が連結されていて、この動力源70によって駆動側プーリー10が回転量の制御を伴って正方向又は逆方向に択一的に回転駆動されるようになっている。動力源70には、切り替えスイッチによって回転方向が正逆方向に切り替えられる回転量制御回路を備えたインダクションモータのほか、回転方向及び回転量の制御回路を備えたサーボモータなどの各種のモーターを好適に採用することができる。また、駆動側プーリー10は軸方向中間部に中央フランジ11を有していて、この中央フランジ11を挟む両側に第1区画S1と第2区画S2とが振り分けて形成されている。なお、図例の駆動側プーリー10には、軸方向両端部にもそれぞれ端部フランジ12,13が設けられていて、上記した第1区画S1が中央フランジ11と片側の端部フランジ12とによって挟まれ、上記した第2区画S2が中央フランジ11と他側の端部フランジ13とによって挟まれている。
【0017】
図1に示した紐状線材30には、金属製のワイヤーや魚釣り用に多用されているナイロンなどの合成繊維製のテグスなどを用いることができる。このような紐状線材30は、
図1によって判るように、その長手方向中間部が従動側プーリー20に折返し状に巻き掛けられていると共に、その一端側部分31と他端側部分35とが駆動側プーリーに互いに逆向きに巻き付けられている。このことを、
図2、
図3A及び
図3Bを参照して具体的に説明する。
【0018】
すなわち、紐状線材30の一端側部分31が、上記した第1区画S1内で、
図3Aのように駆動側プーリー10に時計方向R1に巻き付けられて、その一端32が片側の端部フランジ12に固定されているのに対して、同紐状線材30の他端側部分35が、上記した第2区画S2内で、
図3Bのように駆動側プーリー10に反時計方向R2に巻き付けられて、その他端36が中央フランジ11に固定されている。図例では、紐状線材30の一端32を端部フランジ12に固定し、他端36を中央フランジ11に固定しているけれども、紐状線材の一端32及び他端36を固定するための相手側部位は、端部フランジ12や中央フランジ11に限定されることはなく、たとえば駆動側プーリー10の胴体部位であってもよい。さらに、図例では、紐状線材の一端32や他端36を端部フランジ12や中央フランジ11に固定する手段として所定の固定具(たとえばビスやフックなど)33,37を用いているけれども、この点は、端部フランジ12や中央フランジ11に孔空き箇所が存在する場合には、その孔空き箇所を利用して紐状線材の一端32や他端36を端部フランジ12や中央フランジ11に結束しておいてもよい。
【0019】
ガイドレール40は、駆動側プーリー10と従動側プーリー20との相互間に敷設されていて、このガイドレール40に沿って紐状線材30が往動又は復動するようになっている。
図4のように、ガイドレール40はランナー50を有していて、このランナー50がガイドレール40に案内されて往復方向に移動可能である。また、ランナー50が連結具51によって紐状線材30の1箇所に連結されている。そして、この実施形態では、ランナー50に設けられた吊り具53に被搬送物保持体の一例であるかご形のキャリー60が吊り下げられている。したがって、キャリー60は、ランナー50を介して紐状線材30に連結されていることになる。被搬送物保持体は図例のキャリー60に限定されることはなく、被搬送物であるワークの形状やサイズ、特性などに応じて、最適な構成を有するものが採用されるべきである。
【0020】
以上説明した構成を有する搬送装置において、動力源70によって駆動側プーリー10が正方向(
図3Aの時計方向R1)に回転駆動されたときには、紐状線材30の一端側部分31が駆動側プーリー10から
図3Aの矢印a1方向に繰り出され、これに同調して、紐状線材の他端側部分35が駆動側プーリー10に巻き取られる(
図3Aに現れていない)。このときの巻き取り長さは、繰り出し長さに見合う長さになるため紐状線材30に弛みを生じることはない。これとは逆に、動力源70によって駆動側プーリー10が逆方向(
図3Bの反時計方向R2)に回転駆動されたときには、紐状線材30の他端側部分35が駆動側プーリー10から
図3Bの矢印a2方向に繰り出され、これと同調して、紐状線材の他端側部分35(
図3Bに現れていない)が駆動側プーリー10に同図の矢印b2方向に巻き取られる。このときの巻き取り長さも、繰り出し長さに見合う長さになるため紐状線材30に弛みを生じることはない。また、紐状線材30の一端32や他端36が駆動側プーリー10に固定されていることにより、駆動側プーリー10が紐状線材30紐状線材に対して空転するという事態も起こらない。
【0021】
したがって、図例では、駆動側プーリー10が
図3Aのように正方向(時計方向R1)に回転駆動されると、
図1及び
図4に示した初期位置に配備されていたランナー50が、ワークを収容したキャリー60と共に、ガイドレール40に案内されながら紐状線材30に追従して
図1及び
図4の往動方向(矢印X1)に移動する。キャリー60の停止位置は駆動側プーリー10の回転が停止するタイミングによって定まる。この後、駆動側プーリー10が
図3Bのように逆方向(反時計方向R2)に回転駆動されると、ランナー50が、キャリー60と共に、ガイドレール40に案内されながら紐状線材30に追従して
図1の復動方向(矢印X2)に移動して初期位置まで戻される。キャリー60の停止位置は駆動側プーリー10の回転が停止するタイミングによって定まる。したがって、ランナー50が初期位置に位置しているときに作業者がキャリー60にワークを収容し、その後に紐状線材30を往動させると、キャリー60が初期位置から一定距離だけ離れた場所まで搬送されるようになる。これにより、作業者が定位置に留まったままワークを搬送することができるようになり、作業者にとっての労力負担が軽減されるだけでなく、転倒したり怪我をしたりするといった歩行中の危険も回避することができる。
【0022】
この実施形態では、ガイドレール40に備わっているランナー50を介して被搬送物保持体であるキャリー60が紐状線材30に連結されている事例を説明したけれども、ランナー50を備えるガイドレール40を省略し、被搬送物保持体であるキャリー60を直接に紐状線材30に吊り下げておくことも可能である。この点に関し、図例のように、ガイドレール40に備わっているランナー50を介して被搬送物保持体であるキャリー60を紐状線材30に連結しておくと、キャリー60の移動がスムーズになって搬送動作が安定するという利点がある。
【0023】
また、この実施形態では、紐状線材30の一端側部分31を駆動側プーリー10の中央フランジ11の片側の第1区画S1内に位置させ、他端側部分35を中央フランジ11の他側の第2区画S2内に位置させることによって、一端側部分31及び他端側部分35のそれぞれの巻き取り繰り出し位置を駆動側プーリー10の軸方向で分離させているけれども、中央フランジ11を省略することも可能である。しかしながら、図例のように、紐状線材30の一端側部分31及び他端側部分35のそれぞれの巻き取り繰り出し位置を図例のように駆動側プーリー10の軸方向で分離させておくと、紐状線材の繰り出し部分と巻き取り部分とが絡まりにくくなり、それだけ、紐状線材30の走行動作が安定するという利点がある。
【符号の説明】
【0024】
10 駆動側プーリー
11 中央フランジ(フランジ)
20 従動側プーリー
30 紐状線材
31 紐状線材の一端側部分
32 紐状線材の一端
35 紐状線材の他端側部分
36 紐状線材の他端
40 ガイドレール
50 ランナー
60 キャリー(被搬送物保持体)
70 動力源
S1 第1区画
S2 第2区画
【手続補正書】
【提出日】2022-07-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送物を搬送するための搬送装置であって、
動力源により正方向又は逆方向に択一的に回転駆動される駆動側プーリーと、この駆動側プーリーに間隔を隔てて対設された従動側プーリーと、この従動側プーリーに長手方向中間部が折返し状に巻き掛けられ、かつ、一端側部分と他端側部分とが上記駆動側プーリーに互いに逆向きに巻き付けられた紐状線材と、この紐状線材に連結されて追従移動する被搬送物保持体と、を備え、
上記駆動側プーリーが、上記紐状線材を螺旋状の横並び状態に巻き付け可能に構成されていると共に、上記紐状線材の一端と他端とが上記駆動側プーリーに固定され、上記駆動側プーリーの軸方向中間部にフランジを設けることによって、そのフランジを挟む両側に、上記紐状線材の一端側部分が巻き付けられた第1区画と他端側部分が巻き付けられた第2区画とが振り分けて形成されており、上記駆動側プーリーと上記従動側プーリーの相互間に、ランナーを有するガイドレールが敷設され、このランナーがガイドレールに案内されて往復方向に移動可能であり、上記被搬送物保持体が、上記ランナーを介して上記紐状線材に吊り下げ状に連結され、上記駆動側プーリーが正方向又は逆方向に択一的に回転駆動されることによって、上記紐状線材の一端側部分及び他端側部分のうちの一方が上記駆動側プーリーから繰り出され、かつ、他方が上記駆動側プーリーに巻き取られるように構成されている、ことを特徴とする搬送装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークと称される被搬送物を搬送するための搬送装置、特に、プーリーに巻き掛けられた紐状線材に被搬送物保持体を追従移動させることによって被搬送物を搬送するように構成されている搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板などの部品やその他のワークを一定数集めて工場内で移動させる場合に、作業者がワークを入れた収納容器を携行して数メートル先の目的場所まで歩いて持ち運ぶ、という方法を採用すると、作業者にとっての労力負担が多大になるだけでなく、転倒したり怪我をしたりするといった歩行中の危険を払拭することができない。そこで、上記したような搬送装置、具体的には、プーリーに巻き掛けられた紐状線材に被搬送物保持体を追従移動させることによって被搬送物を搬送するように構成されている搬送装置を用いることによって、作業者にとっての労力負担を軽減し、併せて、転倒したり怪我をしたりするといった歩行中の危険を払拭することが考えられた。
【0003】
この種の搬送装置については、従来より様々なものが使用され提案されているけれども、それらの多くは、無端状のタイミングベルトと歯付きプーリーとを組み合わせてプーリーの空転を防いでいたり、プーリーに巻き掛けられた無端ベルトにアイドラーのようなテンションプーリーを組み合わせて無端ベルトの弛みをできるだけ吸収できるようにしていたりするものであった。この状況の下で、先行例1(特許文献1)には、無端状のタイミングベルトと歯付きプーリーとを組み合わせた搬送装置が記載されている。また先行例2には(特許文献2)には、プーリーに巻き掛けられた無端ベルトにアイドラーのようなテンションプーリーを組み合わせたベルト駆動システムが記載されている。そのほか、先行例3(特許文献3)には、プーリーに巻き掛けられた無端ベルトを駆動モーターにより駆動することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-193084号公報
【特許文献2】特開2020-094672号公報
【特許文献3】特開2019-198969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ベルトとプーリーとを組み合わせて構成される搬送装置において、ベルトにタイミングベルトを用いたり、プーリーに歯付きプーリーを用いたりすると、それだけコスト高になり、また、アイドラーのようなテンションプーリーを用いると必要な部品点数が増加して構成が複雑になったりコスト高になったりする。
【0006】
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、タイミングベルトや歯付きプーリーを用いることなくプーリーの空転を防ぐことが可能になり、しかも、アイドラーのようなテンションプーリーを用いる必要を無くすることのできる搬送装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る搬送装置は、被搬送物を搬送するための搬送装置であって、
動力源により正方向又は逆方向に択一的に回転駆動される駆動側プーリーと、この駆動側プーリーに間隔を隔てて対設された従動側プーリーと、この従動側プーリーに長手方向中間部が折返し状に巻き掛けられ、かつ、一端側部分と他端側部分とが上記駆動側プーリーに互いに逆向きに巻き付けられた紐状線材と、この紐状線材に連結されて追従移動する被搬送物保持体と、を備え、
上記駆動側プーリーが、上記紐状線材を螺旋状の横並び状態に巻き付け可能に構成されていると共に、上記紐状線材の一端と他端とが上記駆動側プーリーに固定され、上記駆動側プーリーの軸方向中間部にフランジを設けることによって、そのフランジを挟む両側に、上記紐状線材の一端側部分が巻き付けられた第1区画と他端側部分が巻き付けられた第2区画とが振り分けて形成されており、上記駆動側プーリーと上記従動側プーリーの相互間に、ランナーを有するガイドレールが敷設され、このランナーがガイドレールに案内されて往復方向に移動可能であり、上記被搬送物保持体が、上記ランナーを介して上記紐状線材に吊り下げ状に連結され、上記駆動側プーリーが正方向又は逆方向に択一的に回転駆動されることによって、上記紐状線材の一端側部分及び他端側部分のうちの一方が上記駆動側プーリーから繰り出され、かつ、他方が上記駆動側プーリーに巻き取られるように構成されている、というものである。ここで、「紐状線材の一端側部分」とは、紐状線材の一端に連続していて駆動側プーリーに巻き付けられた任意長さの範囲を意味し、同様に、「紐状線材の他端側部分」とは、紐状線材の他端に連続していて駆動側プーリーに巻き付けられた任意長さの範囲を意味している。
【0008】
この発明に係る搬送装置によると、駆動側プーリーが動力源により正方向又は逆方向に択一的に回転駆動されると、紐状線材が駆動側プーリーの回転方向に見合う方向に往動又は復動する。しかも、紐状線材は、その一端側部分と他端側部分とが駆動側プーリーに互いに逆向きに巻き付けられていることにより、紐状線材を往動又は復動させるのに必要な動力源が1つで済むだけでなく、紐状線材に弛みが存在していても紐状線材が確実に往動又は復動する。このため、アイドラーのようなテンションプーリーを特別に必要とすることなく、紐状線材に連結された被搬送物保持体が確実に紐状線材に追従移動するようになる。
【0009】
また、本発明では、上記紐状線材の一端と他端とが上記駆動側プーリーに固定されているので、駆動側プーリーが紐状線材に対して空転することがなくなるため、駆動側プーリーの回転量と紐状線材の移動距離とが正確に同調するようになり、このことが被搬送物保持体による搬送距離を正確に制御することに役立つ。
【0010】
また、本発明では、上記駆動側プーリーと上記従動側プーリーの相互間に、ランナーを有するガイドレールが敷設され、上記被搬送物保持体が、上記ランナーを介して上記紐状線材に連結されているので、紐状線材に追従移動する被搬送物保持体の移動経路がガイドレールによって規制されるために、被搬送物保持体をスムーズに移動させることが可能になる。
【0011】
また、本発明では、上記駆動側プーリーの軸方向中間部にフランジを設けることによって、そのフランジを挟む両側に、上記紐状線材の一端側部分が巻き付けられた第1区画と他端側部分が巻き付けられた第2区画とが振り分けて形成されているので、紐状線材の一端側部分及び他端側部分の配備箇所がフランジによって第一区画と第2区画とに分離されるために、紐状線材の一端側部分及び他端側部分とが絡まって動作が不安定になるという事態が起こらない。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によると、タイミングベルトや歯付きプーリーを用いることなく駆動側プーリーの空転を防ぐことが可能になり、しかも、アイドラーのようなテンションプーリーを用いる必要もなくなるので、構成が簡単で低コストの搬送装置を提供することができるだけでなく、基板などの部品やその他のワークを一定数集めて工場内で数メートルの範囲内で移動させるような場合に、作業者にとっての労力負担を軽減し、併せて、転倒したり怪我をしたりするといった歩行中の危険を払拭することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る搬送装置の概略側面図である。
【
図2】紐状線材が巻き付けられた駆動側プーリー及び動力源を示した側面図である。
【
図3A】
図2のIIIA-IIIA線で示した部分の正面図である。
【
図3B】
図2のIIIB-IIIB線で示した部分の正面図である。
【
図4】紐状線材が巻き掛けられた従動側プーリーやガイドレールなどを示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明の実施形態に係る搬送装置の概略側面図である。同図のように、この搬送装置は、駆動側プーリー10と、駆動側プーリー10に横方向に間隔を隔てて対設された従動側プーリー20と、紐状線材30と、駆動側プーリー10と従動側プーリー20との相互間に敷設されたランナー50を有するガイドレール40と、紐状線材30に連結されている被搬送物保持体60と、図示していない駆動側プーリー10の動力源70、とを備えている。
【0015】
図2は紐状線材30が巻き付けられた駆動側プーリー10及び動力源70を示した側面図、
図3Aは
図2のIIIA-IIIA線で示した部分の正面図、
図3Bは
図2のIIIB-IIIB線で示した部分の正面図、
図4は紐状線材30が巻き掛けられた従動側プーリー20やガイドレール40などを示した正面図である。
【0016】
図2のように、駆動側プーリー10には動力源70が連結されていて、この動力源70によって駆動側プーリー10が回転量の制御を伴って正方向又は逆方向に択一的に回転駆動されるようになっている。動力源70には、切り替えスイッチによって回転方向が正逆方向に切り替えられる回転量制御回路を備えたインダクションモータのほか、回転方向及び回転量の制御回路を備えたサーボモータなどの各種のモーターを好適に採用することができる。また、駆動側プーリー10は軸方向中間部に中央フランジ11を有していて、この中央フランジ11を挟む両側に第1区画S1と第2区画S2とが振り分けて形成されている。なお、図例の駆動側プーリー10には、軸方向両端部にもそれぞれ端部フランジ12,13が設けられていて、上記した第1区画S1が中央フランジ11と片側の端部フランジ12とによって挟まれ、上記した第2区画S2が中央フランジ11と他側の端部フランジ13とによって挟まれている。
【0017】
図1に示した紐状線材30には、金属製のワイヤーや魚釣り用に多用されているナイロンなどの合成繊維製のテグスなどを用いることができる。このような紐状線材30は、
図1によって判るように、その長手方向中間部が従動側プーリー20に折返し状に巻き掛けられていると共に、その一端側部分31と他端側部分35とが駆動側プーリーに互いに逆向きに巻き付けられている。このことを、
図2、
図3A及び
図3Bを参照して具体的に説明する。
【0018】
すなわち、紐状線材30の一端側部分31が、上記した第1区画S1内で、
図3Aのように駆動側プーリー10に時計方向R1に巻き付けられて、その一端32が片側の端部フランジ12に固定されているのに対して、同紐状線材30の他端側部分35が、上記した第2区画S2内で、
図3Bのように駆動側プーリー10に反時計方向R2に巻き付けられて、その他端36が中央フランジ11に固定されている。図例では、紐状線材30の一端32を端部フランジ12に固定し、他端36を中央フランジ11に固定しているけれども、紐状線材の一端32及び他端36を固定するための相手側部位は、端部フランジ12や中央フランジ11に限定されることはなく、たとえば駆動側プーリー10の胴体部位であってもよい。さらに、図例では、紐状線材の一端32や他端36を端部フランジ12や中央フランジ11に固定する手段として所定の固定具(たとえばビスやフックなど)33,37を用いているけれども、この点は、端部フランジ12や中央フランジ11に孔空き箇所が存在する場合には、その孔空き箇所を利用して紐状線材の一端32や他端36を端部フランジ12や中央フランジ11に結束しておいてもよい。
【0019】
ガイドレール40は、駆動側プーリー10と従動側プーリー20との相互間に敷設されていて、このガイドレール40に沿って紐状線材30が往動又は復動するようになっている。
図4のように、ガイドレール40はランナー50を有していて、このランナー50がガイドレール40に案内されて往復方向に移動可能である。また、ランナー50が連結具51によって紐状線材30の1箇所に連結されている。そして、この実施形態では、ランナー50に設けられた吊り具53に被搬送物保持体の一例であるかご形のキャリー60が吊り下げられている。したがって、キャリー60は、ランナー50を介して紐状線材30に連結されていることになる。被搬送物保持体は図例のキャリー60に限定されることはなく、被搬送物であるワークの形状やサイズ、特性などに応じて、最適な構成を有するものが採用されるべきである。
【0020】
以上説明した構成を有する搬送装置において、動力源70によって駆動側プーリー10が正方向(
図3Aの時計方向R1)に回転駆動されたときには、紐状線材30の一端側部分31が駆動側プーリー10から
図3Aの矢印a1方向に繰り出され、これに同調して、紐状線材の他端側部分35が駆動側プーリー10に巻き取られる(
図3Aに現れていない)。このときの巻き取り長さは、繰り出し長さに見合う長さになるため紐状線材30に弛みを生じることはない。これとは逆に、動力源70によって駆動側プーリー10が逆方向(
図3Bの反時計方向R2)に回転駆動されたときには、紐状線材30の他端側部分35が駆動側プーリー10から
図3Bの矢印a2方向に繰り出され、これと同調して、紐状線材の
一端側部分31(
図3Bに現れていない)が駆動側プーリー10に同図の矢印b2方向に巻き取られる。このときの巻き取り長さも、繰り出し長さに見合う長さになるため紐状線材30に弛みを生じることはない。また、紐状線材30の一端32や他端36が駆動側プーリー10に固定されていることにより、駆動側プーリー10が紐状線材30紐状線材に対して空転するという事態も起こらない。
【0021】
したがって、図例では、駆動側プーリー10が
図3Aのように正方向(時計方向R1)に回転駆動されると、
図1及び
図4に示した初期位置に配備されていたランナー50が、ワークを収容したキャリー60と共に、ガイドレール40に案内されながら紐状線材30に追従して
図1及び
図4の往動方向(矢印X1)に移動する。キャリー60の停止位置は駆動側プーリー10の回転が停止するタイミングによって定まる。この後、駆動側プーリー10が
図3Bのように逆方向(反時計方向R2)に回転駆動されると、ランナー50が、キャリー60と共に、ガイドレール40に案内されながら紐状線材30に追従して
図1の復動方向(矢印X2)に移動して初期位置まで戻される。キャリー60の停止位置は駆動側プーリー10の回転が停止するタイミングによって定まる。したがって、ランナー50が初期位置に位置しているときに作業者がキャリー60にワークを収容し、その後に紐状線材30を往動させると、キャリー60が初期位置から一定距離だけ離れた場所まで搬送されるようになる。これにより、作業者が定位置に留まったままワークを搬送することができるようになり、作業者にとっての労力負担が軽減されるだけでなく、転倒したり怪我をしたりするといった歩行中の危険も回避することができる。
【0022】
この実施形態では、ガイドレール40に備わっているランナー50を介して被搬送物保持体であるキャリー60が紐状線材30に連結されている事例を説明したけれども、ランナー50を備えるガイドレール40を省略し、被搬送物保持体であるキャリー60を直接に紐状線材30に吊り下げておくことも可能である。この点に関し、図例のように、ガイドレール40に備わっているランナー50を介して被搬送物保持体であるキャリー60を紐状線材30に連結しておくと、キャリー60の移動がスムーズになって搬送動作が安定するという利点がある。
【0023】
また、この実施形態では、紐状線材30の一端側部分31を駆動側プーリー10の中央フランジ11の片側の第1区画S1内に位置させ、他端側部分35を中央フランジ11の他側の第2区画S2内に位置させることによって、一端側部分31及び他端側部分35のそれぞれの巻き取り繰り出し位置を駆動側プーリー10の軸方向で分離させているけれども、中央フランジ11を省略することも可能である。しかしながら、図例のように、紐状線材30の一端側部分31及び他端側部分35のそれぞれの巻き取り繰り出し位置を図例のように駆動側プーリー10の軸方向で分離させておくと、紐状線材の繰り出し部分と巻き取り部分とが絡まりにくくなり、それだけ、紐状線材30の走行動作が安定するという利点がある。
【符号の説明】
【0024】
10 駆動側プーリー
11 中央フランジ(フランジ)
20 従動側プーリー
30 紐状線材
31 紐状線材の一端側部分
32 紐状線材の一端
35 紐状線材の他端側部分
36 紐状線材の他端
40 ガイドレール
50 ランナー
60 キャリー(被搬送物保持体)
70 動力源
S1 第1区画
S2 第2区画