(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155023
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】回転電機用ステータの製造方法及び回転電機用ステータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/50 20060101AFI20221005BHJP
H02K 15/12 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
H02K3/50 A
H02K15/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058339
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 嘉章
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真吾
【テーマコード(参考)】
5H604
5H615
【Fターム(参考)】
5H604AA05
5H604AA08
5H604BB08
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC13
5H604QA08
5H604QB15
5H615AA01
5H615BB05
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP15
5H615PP18
5H615QQ03
5H615SS15
(57)【要約】
【課題】端子部と接合材料部との間の固定強度を効率的に高める。
【解決手段】ステータコアと、ステータコアに装着され、軸方向両端にコイルエンドを有するステータコイルと、軸方向一端側のコイルエンドに軸方向に対向し、導体部と樹脂部とが一体化された形態であり、導体部の端部が樹脂部から露出する端子部と、端子部の導体部の端部と、ステータコイルの端部とを接合する接合部と、軸方向で端子部とコイルエンドとの間に、端子部及びコイルエンドに接合する接合材料部とを備え、接合材料部は、軸方向の引っ掛かりを有する態様で、端子部又はコイルエンドに係合する、回転電機用ステータが開示される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアと、
前記ステータコアに装着され、軸方向両端にコイルエンドを有するステータコイルと、
軸方向一端側の前記コイルエンドに軸方向に対向し、導体部と樹脂部とが一体化された形態であり、前記導体部の端部が前記樹脂部から露出する端子部と、
前記端子部の前記導体部の端部と、前記ステータコイルの端部とを接合する接合部と、
軸方向で前記端子部と前記コイルエンドとの間に、前記端子部及び前記コイルエンドに接合する接合材料部とを備え、
前記接合材料部は、軸方向の引っ掛かりを有する態様で、前記端子部又は前記コイルエンドに係合する、回転電機用ステータ。
【請求項2】
前記接合材料部は、液状の接着剤を保持可能な保持部材と、前記保持部材に保持された硬化後の前記液状の接着剤とを含む、請求項1に記載の回転電機用ステータ。
【請求項3】
前記保持部材は、軸方向に視て、前記端子部よりも径方向外側又は内側まで延在する、請求項2に記載の回転電機用ステータ。
【請求項4】
前記端子部は、前記樹脂部に、前記接合材料部が係合する被係合部を有し、
前記接合材料部は、前記被係合部が嵌合する溝部を有し、
前記溝部は、周方向に視て径方向の寸法が軸方向の異なる位置で異なる態様で、軸方向かつ径方向に延在する、請求項1~3のうちのいずれか1項に記載の回転電機用ステータ。
【請求項5】
前記端子部は、前記導体部に、前記接合材料部が係合する被係合部を有し、
前記接合材料部は、前記被係合部が通る貫通孔を有する、請求項1~3のうちのいずれか1項に記載の回転電機用ステータ。
【請求項6】
導体部と樹脂部とが一体化された形態の端子部を準備する準備工程と、
ステータコアにステータコイルを装着し、軸方向両端にコイルエンドを有する組立体を形成する装着工程と、
前記準備工程で準備した前記端子部と、前記装着工程で形成した前記組立体と、接合材料部を形成するための材料又は部材とを用いて、前記材料又は前記部材が、前記端子部又は前記コイルエンドに軸方向の引っ掛かりを有する態様で係合し、かつ、軸方向で前記端子部と前記コイルエンドとの間に位置する状態を形成する配置工程と、
前記配置工程の後に、前記材料又は前記部材に対して処理を行うことで、前記端子部及び前記コイルエンドに接合する前記接合材料部を完成させる完成工程とを含む、回転電機用ステータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転電機用ステータの製造方法及び回転電機用ステータに関する。
【背景技術】
【0002】
導体部(バスバー)と樹脂部とが一体化された形態の端子部(バスバー部材)とコイルエンドとの間の固定強度を確保するために、端子部とコイルエンドとの間に、接着剤を保持できる保持部材を設ける技術が知られている。この場合、製造工程で保持部材に保持させた接着剤を硬化させることで、保持部材が接合材料部として端子部とコイルエンドとに接合し、両者の固定強度を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術は、接着剤が寄与する部分は端子部と保持部材との間の面接触部分に限定されるので、端子部と保持部材との間の固定強度を効率的に高めることが難しい。
【0005】
そこで、1つの側面では、本開示は、端子部と接合材料部との間の固定強度を効率的に高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、ステータコアと、
前記ステータコアに装着され、軸方向両端にコイルエンドを有するステータコイルと、
軸方向一端側の前記コイルエンドに軸方向に対向し、導体部と樹脂部とが一体化された形態であり、前記導体部の端部が前記樹脂部から露出する端子部と、
前記端子部の前記導体部の端部と、前記ステータコイルの端部とを接合する接合部と、
軸方向で前記端子部と前記コイルエンドとの間に、前記端子部及び前記コイルエンドに接合する接合材料部とを備え、
前記接合材料部は、軸方向の引っ掛かりを有する態様で、前記端子部又は前記コイルエンドに係合する、回転電機用ステータが提供される。
【発明の効果】
【0007】
1つの側面では、本開示によれば、端子部と接合材料部との間の固定強度を効率的に高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1B】端子台を取り外した状態のステータの一部を示す斜視図である。
【
図2】組み付け状態の4つの同芯巻きコイルだけを取り出した斜視図である。
【
図3】同芯巻きコイルの単品状態を示す斜視図である。
【
図6】端子台とコイルエンドとの固定構造の一例を説明するための概略的な断面図である。
【
図7】成形部の内部を透視図により模式的に示す側面図である。
【
図9A】本実施例による接着剤保持部材を2ピースで形成した場合の、第1ピースを概略的に示す2面図である。
【
図9B】本実施例による接着剤保持部材を2ピースで形成した場合の、第2ピースを概略的に示す2面図である。
【
図10】ステータの製造方法の流れを概略的に示すフローチャートである。
【
図11】
図10の製造方法の一工程を説明する概略的な断面図である。
【
図12】
図10の製造方法の他の一工程を説明する概略的な断面図である。
【
図13】
図10の製造方法の他の一工程を説明する概略的な断面図である。
【
図14】
図10の製造方法の他の一工程を説明する概略的な断面図である。
【
図15】
図10の製造方法の他の一工程を説明する概略的な断面図である。
【
図16】
図10の製造方法の他の一工程を説明する概略的な断面図である。
【
図17】
図10の製造方法の他の一工程を説明する概略的な断面図である。
【
図18】端子台とコイルエンドとの固定構造の他の一例を説明するための概略的な断面図である。
【
図19】変形例による接着剤保持部材を概略的に示す2面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率はあくまでも一例であり、これに限定されるものではなく、また、図面内の形状等は、説明の都合上、部分的に誇張している場合がある。なお、
図1A等では、見易さのために、複数存在する同一属性の部位には、一部のみしか参照符号が付されていない場合がある。
【0010】
図1Aは、ステータ21の一部を示す斜視図である。
図1Bは、端子台70を取り外した状態のステータ21の一部を示す斜視図である。
図2は、組み付け状態の4つの同芯巻きコイル20だけを取り出した斜視図である。
図3は、同芯巻きコイル20の単品状態を示す斜視図である。なお、
図1Aにおいて、Y方向は、径方向に対応し、Y1側が径方向外側に対応し、Y2側が径方向内側(ステータ21の中心軸Iに近い側)を表す。なお、
図1A及び
図1Bでは、バスバー80及びバスバー81に係る後述の成形部60の図示が省略されている。
【0011】
以下の説明において、軸方向とは、ステータ21の中心軸I(
図6等参照)が延在する方向を指し、径方向とは、中心軸Iを中心とした径方向を指す。従って、径方向外側とは、その位置よりも、中心軸Iから離れる側を指し、径方向内側とは、その位置よりも、中心軸Iに向かう側を指す。また、軸方向外側とは、その位置よりも、ステータ21の軸方向の中心から離れる側を指し、軸方向内側とは、その位置よりも、ステータ21の軸方向の中心に近づく側を指す。また、周方向とは、中心軸Iまわりの回転方向に対応する。
【0012】
ステータ21は、例えば円環状の磁性体の積層鋼板からなるステータコア211を備え、ステータコア211の径方向内側には、ステータコイル22が巻回される複数のスロット2111が形成される。スロット2111は、周方向に等間隔に複数形成される。なお、スロット2111の数や形状等は任意である。
【0013】
ステータコイル22は、例えば、
図2及び
図3に示すような、いわゆる同芯巻きコイル20の形態であり、それぞれ、所定巻回数で巻回された平角線が曲げ加工されることにより成形されるカセットコイルである。ステータコイル22は、断面が矩形状(具体的には、長方形)に形成された平角線を含む。この平角線は、導電性の高い例えば銅やアルミニウム等の金属により構成されてよい。ステータコイル22は、平角線が絶縁性の被覆により覆われてよい。
【0014】
図2に示す例では、周方向に90度ずつ離れた4つの同芯巻きコイル20が、一の同芯巻きコイル20の第2渡り線240が、当該一の同芯巻きコイル20に隣接する他の一の同芯巻きコイル20の第3渡り線250に接合する関係で、互いに接続されている。
【0015】
各同芯巻きコイル20はそれぞれ、所定巻回数で巻回された形態のカセットコイルである。なお、所定巻回数は任意であり、
図1A及び
図1Bに示すような、より多い巻回数であってもよい。
【0016】
各同芯巻きコイル20はそれぞれ、
図3に示すように、スロット収容部230、232と、第1渡り線234、236と、第2渡り線240と、第3渡り線250とを有している。なお、スロット収容部230、232及び第1渡り線234、236は、同芯巻きコイル20の本体部(略六角形状の閉ループ部)を形成する。第1渡り線236は、第2渡り線240及び第3渡り線250とともに、軸方向一方側(リード側)のコイルエンドを形成し、第1渡り線234は、軸方向一方側(反リード側)のコイルエンドを形成する。なお、
図3に示す例では、一の同芯巻きコイル20は、スロット収容部230、232、第1渡り線234、236をそれぞれ複数含むのに対して、第2渡り線240及び第3渡り線250はそれぞれ1つだけ含む。
【0017】
スロット収容部230、232はそれぞれ、ステータコア211のスロット2111内に挿入(収容)される、そのスロット2111を軸方向に貫くように略直線状に延びる部位である。同一の同芯巻きコイル20において、スロット収容部230とスロット収容部232とは、ステータコア211の周方向に所定距離離れた互いに異なるスロット2111に収容される。
【0018】
第1渡り線234、236はそれぞれ、スロット収容部230、232に接続するとともに、ステータコア211の軸方向端面から軸方向外側に向けて突出した、周方向に離れた2つのスロット収容部230、232同士を繋ぐ部位である。第1渡り線236は、頂部2361と、斜行部2362、2363とを含む。なお、第1渡り線234についても同様であるが、ここでは符合を付していない。
【0019】
第2渡り線240及び第3渡り線250は、周方向に離れた2つの同芯巻きコイル20のスロット収容部230、232同士を繋ぐ。
【0020】
第2渡り線240は、
図3に示すように、複数の曲げ加工を介して成形されてよい。具体的には、第2渡り線240は、第1斜行部2402と、第1エッジワイズ曲げ部2404と、第1直線部2406と、第1フラットワイズ曲げ部2408と、第2直線部2410と、第2エッジワイズ曲げ部2412と、第3直線部2414と、第3エッジワイズ曲げ部2416と、第4直線部2418とを含む。なお、第1斜行部2402は、スロット収容部230の端部2302から形成される。スロット収容部230の端部2302は、スロット収容部230の軸方向外側に延在する部位を周方向外側(周方向でスロット収容部230、232間の中心から離れる側)に向けてエッジワイズ曲げして形成される。
図3に示す例では、第1斜行部2402は、直線的に延在する直線部であるが、エッジワイズ曲げ部を含む階段状の形態で全体として斜め方向に延在してもよい。なお、スロット収容部230の端部2302は、第2渡り線240の一部とみなすこともできる。
【0021】
第3渡り線250は、
図3に示すように、複数の曲げ加工を介して成形されてよい。具体的には、第3渡り線250は、第2斜行部2502と、第4エッジワイズ曲げ部2504と、第5直線部2506と、第2フラットワイズ曲げ部2508と、第6直線部2510とを含む。なお、第2斜行部2502は、スロット収容部232の端部2322から形成される。スロット収容部232の端部2322は、スロット収容部232の軸方向外側に延在する部位を周方向外側(周方向でスロット収容部230、232間の中心から離れる側)に向けてエッジワイズ曲げして形成される。
図3に示す例では、第2斜行部2502は、直線的に延在する直線部であるが、エッジワイズ曲げ部を含む階段状の形態で全体として斜め方向に延在してもよい。なお、スロット収容部232の端部2322は、第3渡り線250の一部とみなすこともできる。
【0022】
このようにして、第2渡り線240及び第3渡り線250は、各種の曲げ部(第1エッジワイズ曲げ部2404等)を有する。なお、ここでは、同芯巻きコイル20の特定の構成について説明したが、同芯巻きコイル20の詳細な構成については、任意である。例えば、第2渡り線240及び第3渡り線250の形状等は任意である。
【0023】
また、各同芯巻きコイル20のうち、後述する端子台70と接合する同芯巻きコイル20は、
図3(
図2)に示した形態と若干異なる形態を有してよい。例えば、第2渡り線240は、第1フラットワイズ曲げ部2408から第3エッジワイズ曲げ部2416までの部分が曲げ成形されない形態であってもよい。
【0024】
以下では、ステータコイル22は、平角線が絶縁性の被覆により覆われた構成であるとし、「一のコイル導線22a」とは、特に言及しない限り、ステータコイル22を形成する複数のコイル導線のうちの、任意の一のコイル導線を指す。
【0025】
複数のコイル導線22aは、上述したように(
図1Aも参照)、ステータコア211のスロット2111に収容され、かつ、スロット2111よりも軸方向外側に延在する端部同士が接合される。
図2及び
図3に示す同芯巻きコイル20では、スロット収容部230、232がステータコア211のスロット2111に収容され、かつ、スロット2111よりも軸方向外側に延在する第2渡り線240と第3渡り線250の端部同士(第4直線部2418の端部と第6直線部2510の端部)が接合される。コイル導線22aの端部同士の接合は、溶接等により実現されてよい。この場合、コイル導線22aの端部は、少なくとも一部の被覆が除去された状態(すなわち端部の導体部22A(
図7参照)が露出した状態)で重ね合わされ、被覆が除去された部分同士が溶接により接合されてよい。この場合、溶接は、レーザ溶接やTIG溶接のような任意の方法で実現されてよい。以下、このようにして端部同士が重ね合わされて接合されたコイル導線22aの2つの端部を、「接合部」とも称する。
【0026】
複数のコイル導線22aは、接合部に成形材料の成形部60を有する。成形部60は、複数のコイル導線22aの接合部全体を覆う。成形部60は、複数のコイル導線22aの接合部に係る電気的な絶縁性を確保する機能を有する。すなわち、複数のコイル導線22aの接合部は、上述したように接合の際に被覆が除去されるので、成形部60は、当該被覆が除去された部分全体を覆うことで、被覆と同様の機能を果たす。この機能を実現するために、成形材料は、導電性のない材料である。例えば、成形材料は、樹脂材料(PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)を含む樹脂材料)であり、成形部60は、樹脂材料の成形部である。成形部60は、樹脂材料の射出成形により形成されてよい。
【0027】
図4は、成形部60の説明図である。なお、
図4において、X方向は、周方向に沿った方向に対応する。
図5は、他の態様の成形部60Aの説明図である。
【0028】
成形部60は、周方向に隣り合う2組の接合部に対して1つずつ設けられる。なお、
図4では、成形部60は、周方向に隣り合う2組の接合部ごとに1つずつ設けられるが、1組の接合部ごとに1つずつ設けられてもよいし、周方向に隣り合う3組以上の接合部ごとに1つずつ設けられてもよい。なお、
図4では、成形部60は、上下方向に型締めされて成形されるが、
図5に示す成形部60Aのように、径方向に型締めされて形成される形態であってもよい。
【0029】
ここで、
図1Aを再度参照するに、リード側コイルエンドには、端子台70が配置される。
【0030】
端子台70は、バスバー80、81と樹脂部90とが一体化された形態であり、バスバー80、81が樹脂部90から径方向に延在する。
【0031】
バスバー80は、樹脂部90から露出した部分が径方向内側に延在する。バスバー80は、樹脂部90から露出した部分が周方向に並ぶ態様で、複数設けられる。バスバー80のそれぞれは、その端部801がコイル導線22aの端部(導体部22A)に接合される。なお、バスバー80の端部801とコイル導線22aの端部との間の接合についても、上述したコイル導線22aの端部同士の接合方法と同様の方法で実現されてよい。また、バスバー80の端部801とコイル導線22aの端部との間の接合部には、
図5に示す成形部60Aと同様の成形部が形成されてよい。
【0032】
バスバー81は、樹脂部90から露出した部分が径方向外側に延在する。バスバー81は、樹脂部90から露出した部分が周方向に並ぶ態様で、複数設けられる。バスバー81のそれぞれは、その端部811がコイル導線22aの端部(導体部22A)に接合される(
図7参照)。なお、バスバー81の端部811とコイル導線22aの端部との間の接合についても、上述したコイル導線22aの端部同士の接合方法と同様の方法で実現されてよい。また、バスバー81の端部811とコイル導線22aの端部との間の接合部には、
図4に示す成形部60と同様の成形部60(
図6や
図7参照)が形成されてよい。
【0033】
なお、端子台70に保持されるバスバー80、81は、樹脂部90から露出する端部が動力線接続端子又は中性線接続端子を形成してよい。複数のバスバー80、81のうちの、動力線接続端子を形成するバスバー80、81は、端子台70内において3相の外部端子71に電気的に接続される。また、複数のバスバー80、81のうちの、中性線接続端子を形成する対のバスバー80、81は、端子台70内において互いに電気的に接続される。なお、中性線接続端子を形成する各対のバスバー80、81は、それぞれ一ピースのバスバー(板金部材)により形成されてもよい。
【0034】
次に、
図6以降を参照して、本実施例の端子台70とコイルエンドとの固定構造について詳説する。
【0035】
図6は、端子台70とコイルエンドとの固定構造の一例を説明するための概略的な断面図であり、中心軸Iを通る平面による断面図である。
図7は、成形部60の内部を透視図で模式的に示す側面図である。
図8は、
図6のQ1部の拡大図である。
【0036】
なお、本実施例では、
図2及び
図3を参照して上述したように、ステータコイル22のコイルエンドは、リード側において、ステータコア211の軸方向一方側で周方向に延在する第1渡り線236と、第2渡り線240と、第3渡り線250とを含む。端子台70が設けられる周方向範囲では、
図6に概略的に示すように、第2渡り線240は、第1渡り線236の径方向内側で軸方向に延在し、軸方向外側の端部がバスバー80の端部801と接合する。また、端子台70が設けられる周方向範囲では、
図6及び
図7に概略的に示すように、第3渡り線250は、第1渡り線236の径方向外側で、径方向外側に延在し、径方向外側の端部がバスバー81の端部811と接合する。
図7には、第3渡り線250の第6直線部2510の導体部22Aとバスバー81の端部811との間の接合部402が透視図により模式的に示されている。なお、バスバー80と第2渡り線240との間の接合部についても、図示しないが、基本的に同様である。
【0037】
本実施例では、
図6に模式的に示すように、軸方向で第1渡り線236と端子台70との間に、接合材料の部位50(以下、「接合材料部50」と称する)が設けられる。接合材料部50は、軸方向で第1渡り線236と端子台70との間に設けられ、第1渡り線236と端子台70とに接合する。
【0038】
接合材料は、粘度の高い(例えばワニスよりも粘度が有意に高い)任意の接合材料であってよく、エポキシ樹脂を主成分としたシート形態の接合材料であってよい。シート形態の接合材料としては、例えば、ここでの参照により本願明細書に組み込まれる特開2019-103314号公報や特開2019-115170号公報に開示されるような熱硬化性樹脂組成物シート等を好適に用いることができる。
【0039】
あるいは、接合材料部50は、接着剤保持部材と、接着剤保持部材に浸透された液状の接着剤(例えばワニス)の硬化物との組み合わせにより実現されてもよい。この場合、接着剤保持部材は、液状の接着剤が浸透された状態で当該接着剤を保持可能に構成される。すなわち、接着剤保持部材は、液状の接着剤が浸透可能な網目状構造を有する。このような接着剤保持部材としては、ここでの参照により本願明細書に組み込まれる特開2019-115178号公報に開示されるような接着剤保持部材を好適に用いることができる。
【0040】
本実施例では、一例として、接合材料部50は、接着剤保持部材51と、接着剤保持部材に浸透されたワニスの硬化物との組み合わせにより実現されるものとする。
【0041】
接着剤保持部材51は、軸方向で第1渡り線236と端子台70との間に延在し、かつ、第1渡り線236と端子台70とに接合することで、第1渡り線236と端子台70との間で生じうる振動を無くす又は低減する機能(以下、「振動低減機能」と称する)を有する。
【0042】
接着剤保持部材51は、好ましくは、端子台70の周方向全長にわたって振動低減機能を発現できるように、端子台70の周方向全長にわたって周方向に延在してよい。同様に、接着剤保持部材51は、好ましくは、端子台70の径方向全長にわたって振動低減機能を発現できるように、端子台70の径方向全長にわたって径方向に延在してよい。
【0043】
本実施例では、接着剤保持部材51は、軸方向に視て、端子台70よりも径方向内側に延在する。これにより、
図17を参照して後述するように、軸方向に視て、端子台70よりも径方向内側の位置からワニスを滴下して、ワニスを接着剤保持部材51に浸透させることができる。ただし、変形例では、接着剤保持部材51は、軸方向に視て、端子台70よりも径方向内側に延在することに代えて又は加えて、端子台70よりも径方向外側に延在してもよい。この場合も、軸方向に視て、端子台70よりも径方向外側の位置からワニスを滴下して、ワニスを接着剤保持部材51に浸透させることができる。
【0044】
ところで、特に、車両環境においては、路面からの入力や、内燃機関を搭載する車両では内燃機関からの入力等に起因して、ステータ21を含む回転電機が加振されやすい。また、特に、端子台70は、第2渡り線240等に比べて有意に大きい質量を有し、振動しやすい。端子台70が振動すると、端子台70のバスバー80、81とコイル導線22aの端部との間の接合部(
図7の接合部402参照)の信頼性が低下するおそれがある。
【0045】
この点、本願発明者は、回転電機を用いて加振試験を実施した結果、端子台70のバスバー80、81とコイル導線22aの端部との間の接合部で顕著な応力集中を確認した。顕著な応力集中は、接合部402の際(きわ)で生じる傾向があった。このような接合部402の際に生じる応力集中は、第1渡り線236と端子台70との間で生じうる振動を無くす又は低減することで、低減できる。
【0046】
この点、本実施例によれば、上述したように、軸方向で第1渡り線236と端子台70との間に接合材料部50が設けられるので、接合材料部50の振動低減機能によって、接合部402の際(きわ)やその近傍での応力集中を低減でき、端子台70のバスバー80、81とコイル導線22aの端部との間の接合部の信頼性を高めることができる。
【0047】
特に、本実施例では、接合材料部50の振動低減機能を更に高めるために、接合材料部50は、軸方向の引っ掛かりを有する態様で、端子台70に係合する。この場合、接合材料部50と樹脂部90との間の軸方向の固定強度を効果的に高めることができ、この結果、接合材料部50の振動低減機能を効果的に高めることができる。このような、軸方向の引っ掛かりを有する態様の係合は、多様な係合態様で実現できる。
【0048】
例えば、
図6に示す例では、端子台70は、樹脂部90に、接合材料部50が係合する被係合部92を有する。この場合、接合材料部50は、被係合部92が嵌合する溝部52を周方向に沿って有する。溝部52の断面形状(周方向に視た断面形状)は一定であってよい(すなわち等断面であってよい)。溝部52は、周方向に視て径方向の寸法が軸方向の異なる位置で異なる態様で、軸方向かつ径方向に延在してよい。具体的には、溝部52は、周方向に視て、軸方向内側に向かうほど周方向の寸法が大きくなるT字状の形態である。この場合、樹脂部90は、溝部52を埋めるような断面形態の被係合部92を有してよい。すなわち、被係合部92は、樹脂部90の軸方向内側の表面から突出した部分が、径方向の寸法が比較的小さい第1部位921と、径方向の寸法が比較的大きい第2部位922とを含み、第1部位921の軸方向内側に第2部位922が連続する形態である。被係合部92は、溝部52の周方向の延在範囲の全体にわたって周方向に延在してよい。
【0049】
この場合、接合材料部50と樹脂部90との間には、軸方向の引っ掛かりが周方向の寸法変化部分で生じる。具体的には、
図8に模式的に示すように、樹脂部90及び接合材料部50のうちの、樹脂部90だけに軸方向外側に向かう外力F1が作用すると、樹脂部90は、接合材料部50との引っ掛かり部から軸方向内側に向かう反力F2を受ける。これにより、外力F1に起因した樹脂部90の、接合材料部50(及びそれに伴いステータコア211)に対する軸方向の変位を低減できる。従って、加振により外力F1のような外力(慣性力等を含む)が作用した場合でも、樹脂部90(及びそれに伴う端子台70)の振動の振幅が低減される。すなわち、接合材料部50の振動低減機能を効果的に高めることができる。
【0050】
本実施例では、接合材料部50を接着剤保持部材51により形成するので、接合材料部50の形状自由度を高めることができる。接着剤保持部材51は、一ピースの部材により形成されてもよいし、複数のピースの部材により形成されてもよい。例えば、接着剤保持部材51は、
図9A及び
図9Bにそれぞれ模式的に2面図で示す2つのピースにより形成されてもよい。この場合、
図9Aは、接着剤保持部材51のうちの軸方向外側の部分を形成する第1ピース51-1を示し、
図9Bは、接着剤保持部材51のうちの軸方向内側の部分を形成する第2ピース51-2を示す。
【0051】
第1ピース51-1は、被係合部92の第1部位921を径方向両側から挟む態様で設けられ、被係合部92の第1部位921が収容される切り欠き部511を有する。切り欠き部511は、溝部52の一部を形成する。この場合、切り欠き部511を利用して第1ピース51-1を被係合部92に対して周方向に相対的にスライドさせることで、第1ピース51-1と被係合部92の第1部位921とを嵌合させることが容易となる。
【0052】
第2ピース51-2は、被係合部92の第2部位922を収容する凹条部512を有する。凹条部512は、溝部52の他の部分を形成する。凹条部512は、周方向両側が開口しているが、一方だけが開口してもよいし、双方が閉塞されてもよい。この場合、凹条部512を利用して第2ピース51-2を被係合部92に対して周方向に相対的にスライドさせることで、第2ピース51-2と被係合部92の第2部位922とを嵌合させることが容易となる。
【0053】
このような第1ピース51-1及び第2ピース51-2を用いることで、比較的容易な組み付け性で接着剤保持部材51を端子台70に係合させることができる。なお、接着剤保持部材51に代えて、上述した熱硬化性樹脂組成物シートが利用される場合、第1ピース51-1及び第2ピース51-2が熱硬化性樹脂組成物シートにより形成されてよい。また、第1ピース51-1及び/又は第2ピース51-2は、更に複数のピースで構成されてもよい。
【0054】
次に、
図10以降を参照して、上述したステータ21の製造に好適な製造方法について説明する。
【0055】
以下の説明において、特に言及しない限り、第1渡り線236とは、ステータコア211の軸方向外側で周方向に延在する上述したリード側の複数の第1渡り線236の全体(集合)を指す。従って、第1渡り線236の表面(軸方向外側表面)とは、複数の第1渡り線236の全体の表面(軸方向外側表面)であり、第1渡り線236のそれぞれの表面(軸方向外側表面)の集合を表す。
【0056】
図10は、ステータ21の製造方法の流れを概略的に示すフローチャートである。
図11から
図17は、
図10を参照して説明する各工程のいくつかの説明図であり、
図11、及び
図13から
図17は、製造途中のワーク(組立体)を中心軸Iを通る平面で切断した際の概略的な断面図であり、端子台70が配置される部分に関連した一部だけを概略的に示している。
図11、及び
図13から
図17は、周方向全周のうちの、端子台70が配置される周方向範囲の断面図である。
図12は、端子台70に接着剤保持部材51を組み付けた状態を、中心軸Iを通る平面で切断した際の概略的な断面図である。なお、
図10のフローチャートは、ステータ21の製造方法の流れの一例を示しているにすぎず、各ステップの処理順序は適宜、前後されてもよいし、並行的に又は同時に実現されてもよい。
【0057】
本製造方法は、まず、
図11に示すように、ステップS111において、複数の同芯巻きコイル20が円環状に配置されたコイル組立体2を形成する工程を含む。
【0058】
次に、本製造方法は、
図12に示すように、ステップS112において、接合材料部50を形成するための接着剤保持部材51を、端子台70に組み付ける工程(セット工程)を含む。
【0059】
次に、本製造方法は、
図13に示すように、ステップS113において、コイル組立体2をステータコア211に組み付ける工程を含む。本工程は、例えば、インサータ等の治具により、コイル組立体2を形成する各スロット収容部230、232をスロット2111に挿入することで実現されてよい。これにより、ステータコイル22がステータコア211に巻装される。
【0060】
次に、本製造方法は、
図14に示すように、ステップS114において、接着剤保持部材51を組み付けた端子台70を、ステータコア211に組み付けたコイル組立体2に、載置する工程を含む。すなわち、接着剤保持部材51を組み付けた端子台70を、リード側のコイルエンド上にセットする。この場合、接着剤保持部材51を組み付けた端子台70は、第1渡り線236の表面に接着剤保持部材51が軸方向に当接する態様で、載置されてよい。
【0061】
なお、接着剤保持部材51に代えて、上述した熱硬化性樹脂組成物シートである場合、熱硬化性樹脂組成物シートは、ワニスとは異なり、第1渡り線236の表面(軸方向外側表面)に留まることができる。
【0062】
次に、本製造方法は、ステップS115において、ステータコア211に巻装された複数の同芯巻きコイル20において、端子台70が配置されない周方向範囲において、軸方向に重なる対の渡り線である第2渡り線240と第3渡り線250の端部同士を溶接により接合する工程を含む。また、本製造方法は、ステップS115において、端子台70が配置される周方向範囲において、第2渡り線240及び第3渡り線250の各端部と端子台70のバスバー80及びバスバー81の各端部801、811とを溶接により接合する工程を含む。これにより、
図15に模式的に示すように、第2渡り線240及び第3渡り線250の各端部と端子台70のバスバー80及びバスバー81の各端部801、811との間の接合部402がそれぞれ形成される。
【0063】
次に、本製造方法は、ステップS116において、端子台70が配置されない周方向範囲において、第2渡り線240と第3渡り線250の間の接合部(図示せず)に成形部60(
図4参照)を形成する工程を含む。また、本製造方法は、ステップS116において、端子台70が配置される周方向範囲において、
図16に示すように、第2渡り線240及び第3渡り線250の各端部と端子台70のバスバー80及びバスバー81の各端部801、811との間の各接合部402に成形部60を形成する工程を含む。
【0064】
次に、本製造方法は、ステップS117において、ステータコア211及び同芯巻きコイル20を予備加熱する工程を含む。これにより、後述するステップS118においてワニスをスムーズに同芯巻きコイル20を構成するコイル導線22a同士の間等に浸透させることが可能になる。
【0065】
次に、本製造方法は、ステップS118において、同芯巻きコイル20にワニス(図示せず)を滴下する。具体的には、ステータコア211に配置された同芯巻きコイル20に対して、ノズル1700(
図17参照)からワニスを滴下する。例えば、ステータコア211の軸方向が上下方向に沿うようにステータコア211が配置されている場合(平置きの場合)、ワニスは、好ましくは、第1渡り線236の表面(軸方向外側表面)に直接滴下されてよい(矢印R17参照)。例えば、ノズル1700からのワニスの滴下領域は、上下方向に視て、端子台70よりも径方向内側、かつ、第2渡り線240及びバスバー80を覆う成形部60よりも径方向外側である。また、ノズル1700からのワニスの滴下領域は、上下方向に視て、接着剤保持部材51に重なるように設定される。これにより、ワニスの比較的高い流動性と毛細管現象とによって、スロット収容部230、232や反リード側の第1渡り線236のみならず、接着剤保持部材51にもワニスを行き渡せることができる。
【0066】
本実施例によれば、接着剤保持部材51は、上述したように、軸方向に視て、端子台70よりも径方向内側まで延在するので、ノズル1700の位置(及びそれに伴いノズル1700からのワニスの滴下領域)を、上下方向に視て接着剤保持部材51に重なるように設定できる。これにより、接着剤保持部材51にワニスを効率的に行き渡せることができ、接着剤保持部材51全体にワニスを保持させることが容易となる。例えば、接着剤保持部材51は、樹脂部90の被係合部92の第1部位921と第2部位922との間に配置される部分を有するが、かかる部分にもワニスを保持させることが容易となる。
【0067】
なお、本実施例では、上下方向に視て、端子台70よりも径方向内側にワニスの滴下領域を設定しているが、これに代えて又は加えて、上下方向に視て、端子台70よりも径方向外側にワニスの滴下領域を設定してもよい(
図17の矢印R18参照)。この場合も、接着剤保持部材51を、軸方向に視て、端子台70よりも径外側まで延在するように構成することで、接着剤保持部材51にワニスを効率的に行き渡せることができ、接着剤保持部材51全体にワニスを保持させることが容易となる。
【0068】
なお、接着剤保持部材51に代えて、上述した熱硬化性樹脂組成物シートが用いられる場合、ワニスは、第1渡り線236の表面(軸方向外側表面)おける熱硬化性樹脂組成物シートが配置されていない箇所に滴下されてもよい。あるいは、ワニスは、反リード側を上にして(すなわち、ステータコア211を上下反転した状態で)滴下されてもよい。
【0069】
なお、ワニスの滴下は、リード側を上にして実行した上で、更に、反リード側を上にして(すなわち、ステータコア211を上下反転した状態で)実行されてもよい。この場合、順序を逆にしてもよい。すなわち、ワニスの滴下は、反リード側を上にして実行してから、リード側を上にして実行してもよい。
【0070】
次に、本製造方法は、ステップS119において、同芯巻きコイル20を構成するコイル導線22a同士の間に滴下されるワニスとともに、接着剤保持部材51に保持されるワニスを硬化する工程を含む。接着剤保持部材51に保持されるワニスを硬化することで、接着剤保持部材51を上述した接合材料部50に変化させることができる。すなわち、接合材料部50が完成する。具体的には、ステータコア211及び同芯巻きコイル20を加熱することにより、接着剤保持部材51に保持されるワニスと、コイル導線22aの間及び同芯巻きコイル20とスロット2111との間に浸透しているワニスとを同時に硬化させる。
【0071】
なお、接着剤保持部材51に代えて、上述した熱硬化性樹脂組成物シートが用いられる場合、同芯巻きコイル20を構成するコイル導線22a同士を固定するワニスが硬化する硬化温度範囲内に含まれる硬化温度により熱硬化性樹脂組成物シートを硬化させることができる。このようにして、接着剤保持部材51に代えて、上述した熱硬化性樹脂組成物シートが用いられる場合でも、熱硬化性樹脂組成物シートは、ワニスとともに硬化させることができる。ただし、接着剤保持部材51に代えて、上述した熱硬化性樹脂組成物シートが用いられる場合、熱硬化性樹脂組成物シートの硬化とはワニスの硬化とは別々の工程で実現することも可能である。
【0072】
このようにして、本製造方法によれば、軸方向で端子台70と第1渡り線236の表面の間に、端子台70に係合しかつ第1渡り線236の表面に接合する接合材料部50を形成できる。これにより、接合材料部50を介して端子台70とコイルエンドとを強固に接合でき、端子台70のバスバー80、81とコイル導線22aの端部との間の接合部の信頼性を高めることができる。この結果、加振されるような環境下でも耐久性の高いステータ21を得ることができる。
【0073】
また、本製造方法によれば、接着剤保持部材51に保持されるワニスと、コイル導線22aの間等のワニスとを同時に硬化させることで、端子台70と係合する接合材料部50を効率的に形成できる。これにより、端子台70と接合材料部50との間の固定強度を効率的に高めることができる。
【0074】
なお、本製造方法において、セット工程(ステップS112)の一部又は全部は、端子台70を、ステータコア211に組み付けたコイル組立体2に載置する工程(ステップS113)の後又はそれと同時に、実行されてもよい。
【0075】
また、上述した熱硬化性樹脂組成物シートのような、熱を加えることで硬化する接合材料に代えて、他の材料と混合されることで硬化する(状態が変化する)接合材料が利用されてもよい。
【0076】
次に、
図18及び
図19を参照して、上述した接着剤保持部材51に代えて、同様に好適に利用できる他の例(変形例)による接着剤保持部材51Aについて説明する。
【0077】
図18は、接着剤保持部材51Aを利用した場合の、ステータ21Aの端子台70とコイルエンドとの固定構造を説明するための概略的な断面図である。
図19は、接着剤保持部材51Aを概略的に示す2面図である。
【0078】
本変形例による接合材料部50Aは、上述した実施例に対して、接着剤保持部材51が接着剤保持部材51Aで置換された点が異なる。
【0079】
接着剤保持部材51Aは、上述した実施例による接着剤保持部材51に対して、形状が異なるが、端子台70に軸方向に引っ掛かりを有する態様で係合する点で同様である。
【0080】
具体的には、本実施例では、接着剤保持部材51Aは、端子台70Aのバスバー80を被係合部として、バスバー80に係合する。接着剤保持部材51Aは、
図19に示すように、被係合部が通る貫通孔54を有する。貫通孔54は、バスバー80の断面形状に対応した孔形状を有してよい。
【0081】
なお、この場合、接着剤保持部材51Aは、端子台70Aのバスバー80の成形前(軸方向外側への曲げ成形前)に端子台70Aに組み付けられてもよい。
【0082】
このような変形例によっても、軸方向の引っ掛かりにより
図8を参照して上述したような反力F2が生じるので、上述した接着剤保持部材51と同様の効果が奏される。このように、本実施例においては、端子台70、70Aのような端子台に軸方向に引っ掛かりを有する態様で係合できる多様な接着剤保持部材が、接着剤保持部材51に代わって利用できる。例えば、上述した実施例においても、接着剤保持部材51の溝部52(及びそれに伴い被係合部92)の形状は、多様に変更可能である。例えば、溝部52は、周方向に視た断面形状がT字状の形態に代えて、楔状の形態であってよい。すなわち、被係合部92の第1部位921と第2部位922は、段差を介して連続する形態ではなく、傾斜面で連続する形態であってもよい。
【0083】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。また、各実施例の効果のうちの、従属項に係る効果は、上位概念(独立項)とは区別した付加的効果である。
【0084】
例えば、上述した実施例では、接合材料部50(接合材料部50Aも同様)は端子台70に係合するが、これに代えて又は加えて、第1渡り線236の表面に係合してもよい。第1渡り線236の表面には凹凸が形成されるので(
図1B参照)、かかる凹凸に係合するような接合材料部50が実現されてもよい。
【符号の説明】
【0085】
21、21A・・・ステータ(回転電機用ステータ)、211・・・ステータコア、22・・・ステータコイル、236・・・第1渡り線(コイルエンド)、50、50A・・・接合材料部、51、51A・・・接着剤保持部材(保持部材)、52・・・溝部、54・・・貫通孔、70・・・端子台(端子部)、80、81・・・バスバー(導体部)、90・・・樹脂部、92・・・被係合部