(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022015505
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020118388
(22)【出願日】2020-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】512051550
【氏名又は名称】株式会社 山一ハガネ
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東 奈美
(72)【発明者】
【氏名】マトロジャ ルシク プラディプシン
(57)【要約】
【課題】高いデザイン性と通気性を両立できるマスクを提供する。
【解決手段】マスク100は、使用時に装着者の鼻、及び口を含む顔面下部を覆うフィルター部材110と、使用時にフィルター部材110を覆い、フィルター部材110の表面を部分的に露出させた状態で装着者の顔面に固定する固定部材120からなるマスク100であって、フィルター部材110の表面に、平均長さ6~90mmのセルロースが不規則に膠着し、平均2~10g/m
2となる厚さのシート状の成型物111が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用時に装着者の鼻、及び口を含む顔面下部を覆うフィルター部材と、
使用時に上記フィルター部材を覆い、上記フィルター部材の表面を部分的に露出させた状態で装着者の顔面に固定する固定部材からなるマスクであって、
上記フィルター部材の表面に、平均長さ6~90mmのセルロースが不規則に膠着し、平均2~10g/m2となる厚さのシート状の成型物が設けられていることを特徴とするマスク。
【請求項2】
上記フィルター部材が、平均長さ6~90mmのセルロースが不規則に膠着し、平均4g/m2以下となる厚さとなる上記シート状の成型物と、平均厚さ1~3mmのウレタンからなり、
上記シート状の成型物の合計枚数が5~8枚であり、
上記ウレタンが上記シート状の成型物の間に積層されていることを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
上記固定部材が、弾性樹脂からなる開口領域が50%以上ある網状成型物であって、
装着時の天地方向となる方向の弾性率1と、
装着時の水平方向となる方向の弾性率2が異なり、
弾性率1に対する弾性率2の比率が0.5~0.8であることを特徴とする請求項1又は2に記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用者の顔に装着されるマスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インフルエンザやコロナウイルス等の呼吸系感染症が流行し、それによる被害が世界的に広がっている。特に、新型コロナウイルスは、人類が抗体を持っていなかったため、急速に感染が伝播し、パンデミック状態となり、大きな問題となっている。このような大流行を予防すべく、うがい、手洗いに加えてマスクの着用が勧められている。
【0003】
しかしながら、感染症に対処するためのマスクについては、外科手術用マスク(サージカルマスク)について行われているような基礎検討及び規格化が行われていない。
【0004】
よって、特許文献1に開示されているような使い捨ての花粉用、粉塵用の不織布を用いたマスクや、流行時の不織布マスク不足を補うガーゼ、コットン生地、デニム生地等の布を用いた特許文献2に開示されているような布マスクを転用しているのが現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-149945号公報
【特許文献2】実用新案登録第3093178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、不織布を用いるため、ウイルスが含まれた飛沫を十分に捕捉できるものの、通気性に乏しいという問題があった。更に、不織布を使うがゆえに使い捨てであるため、コストの点から装飾性を持たせることが困難となりデザイン性に乏しいという問題もあった。
【0007】
一方、特許文献2に記載の技術では、コットン生地、デニム生地等が使えるため、洗浄することにより繰り返し使用できるため、コストに余裕ができやすく、コストをかけて優れたデザイン性を持たせることができる。更に、不織布に比べて通気性にも優れるという長所がある。
【0008】
しかしながら、十分な通気性とは言えず、繰り返し洗浄することで生地の目が縮小することから、使用できる回数に限りがあるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、高いデザイン性と通気性を両立することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明のマスクは、使用時に装着者の鼻、及び口を含む顔面下部を覆うフィルター部材と、使用時に上記フィルター部材を覆い、上記フィルター部材の表面を部分的に露出させた状態で装着者の顔面に固定する固定部材からなるマスクであって、上記フィルター部材の表面に平均長さ6~90mmのセルロースが不規則に膠着し、平均2~10g/m2となる厚さのシート状の成型物が設けられている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高いデザイン性と通気性を両立できる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態1に係るマスクの装着状態を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係るマスクのフィルター部材の構成を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態1に係るマスクのフィルター部材の別構成を示す図である。
【
図4】本発明の効果を確認するための測定器を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態1の効果を示すフィルター部材の拡大図である。
【
図6】本発明の実施形態2に係るマスクの装着状態を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態2に係るマスクのフィルター部材の構成を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態2の効果を示す不織布ワイパーの比較図である。
【
図9】本発明の実施形態3に係るマスクの装着状態を示す図である。
【
図10】本発明の実施形態3に係る固定部材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔実施形態1〕
以下に、本発明の実施形態について、
図1~
図3に基づいて説明する。
【0014】
<マスクの構成>
図1は、本発明の実施形態1に係るマスク100の装着状態を示す図である。マスク100は、フィルター部材110、固定部材120からなる。
【0015】
<部材の構成>
図2、及び
図3は、フィルター部材110の構成を示す図である。
図2に示すように、フィルター部材110は、例えば主に平均長さ6~90mmのセルロースが不規則に膠着し、平均2~10g/m
2となる厚さのシート状の成型物111が複数枚積層されてなる。成型物111は、通気性と飛沫等の補足のため、総厚で同じ厚さになる場合においては、できるだけ薄いものを数多く重ねることが好ましい。なお、積層されるシート状の成型物は、同一材料である必要はなく、例えば
図3のように、フィルター部材110は、主に平均長さ6~90mmのセルロースが不規則に膠着し、平均2~10g/m
2となる厚さのシート状の成型物111が、他のガーゼマスクよりも通気性が良い第2のシート状の成型物112の上に積層されていてもよい。
【0016】
上記成型物111は、通気性を有する非常に薄い和紙からなり、典具帖紙や薄い美濃紙等が通気性、強度、及びコストの点から好ましい。和紙は独特の風合いと装飾性を併せ持たせることができるため、
図1に示す様に固定部材120の開口部から部分的に露出することで、高いデザイン性を持たせることができる。成型物111の厚さや種類は特に定められるものでなく、使用目的に応じて適宜決定される。成型物111は、セルロース以外の成分を含んでいてもよいが、セルロースを主成分とすることが好ましい。セルロースは、繊維状であることが好ましい。セルロースの平均長さは、JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.52に基づいて測定される。
【0017】
また、和紙であるがゆえに使い捨てに耐えうる十分なコストパフォーマンスがある。成型物の厚さや大きさや種類は特に定められるものでなく、使用目的に応じて適宜決定される。
【0018】
第2のシート状の成型物112は、上記成型物111と異なるものであって、別の種類或いは異なる厚さの和紙や、ウレタン等が好ましく、上記成型物111を第2のシート状の成型物112の表面に設けてフィルター部材110を形成した場合に、適切な通気性があればよい。厚さや大きさ、種類や積層数は特に定められるものでなく、使用目的に応じて適宜決定される。
【0019】
固定部材120は、
図1に示すようにフィルター部材110を装着者の顔面に固定するとともにフィルター表面を開口部から外部に露出させる網状成型物である。厚さや大きさは特に定められるものでなく、使用目的に応じて適宜決定される。
【0020】
固定部材120は、弾性樹脂からなり、シリコーン樹脂等が好ましい。シリコーン樹脂は、弾性における耐久性が高く、複数回の洗浄に耐えるため、使い捨てのフィルター部材110と異なり繰り返し使用することができる。
【0021】
以下に、
図1及び2に基づき実施形態1に係る実施例を説明する。実施例におけるマスク100は、
図2に示すように平均3.4g/m
2となる厚さで100mm×170mmの装飾を施した超極薄典具帖紙を8枚積層したフィルター部材110と、厚さ3mmで120mm×180mmの
図1に示すような網状の本体部121と耳掛け部122で構成された固定部材120からなるマスクである。
【0022】
<実証試験>
実施例のマスクの通気性を確認するため、
図4に示す測定器500を用いて確認した。測定器500は、パイプ510とパイプ520とDCファン530からなる。
DCファン530を一定の出力で稼働させ、パイプ510とパイプ520の接続部511にフィルター部材110を挟んだ場合と一般的なガーゼマスクを挟んだ場合と何も挟まない場合で、出口521における風速を比較した。結果、フィルター部材110を挟んだ場合が4.2m/s、ガーゼマスクを挟んだ場合が、1.9m/s、何も挟まない場合が9.8m/sとなり、フィルター部材110がフィルター(マスク)としての機能が見込まれ(空気の流れを阻害=ダスト等の捕集が見込まれる)、一般的なガーゼマスクより、通気性が良いことを確認した。
【0023】
次に、フィルター部材110を挟んだ測定器500のパイプ510内に疑似的な飛沫として標準粉体(SAP試験用粉体3の3種(STP3-3))を0.5g入れた状態でファンを3分間稼働させ、フィルター部材110の補足性を確認した。
【0024】
試験後のフィルター部材110は、
図5に示すように粉体を補足していることが確認できる。つまり、飛沫がフィルター部材110に捕捉されていることわかる。
【0025】
また、実施例のマスクは人の顔面に問題なく固定できることを確認している。
【0026】
このように、本発明の実施形態1に係るマスクは、マスクとしての機能を有しており、和紙の風合いと装飾性を備えた通気性が良いという効果を奏する。
【0027】
〔実施形態2〕
以下に、本発明の実施形態について、
図6及び
図7に基づいて説明する。
【0028】
<マスクの構成>
図6は、本発明の実施形態2に係るマスク200の装着状態を示す図である。マスク200は、フィルター部材210、固定部材220からなる。
【0029】
<部材の構成>
図7は、フィルター部材210の構成を示す図である。
図7に示すように、フィルター部材210は、例えば主に平均長さ6~90mmのセルロースが不規則に膠着し、平均4g/m
2以下となる厚さのシート状の成型物211と、平均厚さ1~3mmのウレタン212からなる。
【0030】
また、フィルター部材210は、成型物211が5~8枚が積層された積層体の間に平均厚さ1~3mmのウレタンが挟み込まれてなる。
【0031】
上記成型物211は、通気性を有する非常に薄い和紙からなり、典具帖紙や薄い美濃紙等が通気性、強度、及びコストの点から好ましい。和紙は独特の風合いと装飾性を併せ持たせることができるため、
図6に示す様に固定部材220の開口部から部分的に露出することで、高いデザイン性を持たせることができる。成型物及びウレタンの大きさや種類は特に定められるものでなく、使用目的に応じて適宜決定される。
【0032】
また、和紙であるがゆえに使い捨てに耐えうる十分なコストパフォーマンスがある。更に、本実施形態2にすることで、後述で示すように一般的なガーゼマスクよりも通気性が良く、捕集性も高いというマスクに求められる基本特性も向上する。
【0033】
固定部材220は、
図6に示すようにフィルター部材210を装着者の顔面に固定するとともにフィルター表面を開口部から外部に露出させる網状成型物である。厚さや大きさは特に定められるものでなく、使用目的に応じて適宜決定される。
【0034】
固定部材220は、弾性樹脂からなり、シリコーン樹脂等が好ましい。シリコーン樹脂は、弾性における耐久性が高く、複数回の洗浄に耐えるため、使い捨てのフィルター部材210と異なり繰り返し使用することができる。
【0035】
以下に、
図6及び7に基づき実施形態2に係る実施例を説明する。実施例におけるマスク200は、
図6に示すように、フィルター部材210と固定部材220からなる。フィルター部材210は、
図7に示すように平均3.4g/m
2となる厚さで100mm×170mmの装飾を施した超極薄典具帖紙を3枚と100mm×170mm×2.3mmのウレタンと前記超極薄典具帖紙を2枚積層した積層体である。固定部材220は、厚さ3mmで120mm×180mmの
図6に示すような網状の本体部221と耳掛け部222で構成される。
【0036】
<実証試験>
実施例のマスクの通気性を確認するため、
図4に示す測定器500を用いて確認した。測定器500は、パイプ510とパイプ520とDCファン530からなる。
DCファン530を一定の出力で稼働させ、パイプ510とパイプ520の接続部511にフィルター部材210を挟んだ場合と、一般的なガーゼマスクを挟んだ場合と出口521における風速を比較した。結果、フィルター部材210を挟んだ場合が2.2m/s、ガーゼマスクを挟んだ場合が、1.9m/sとなり、フィルター部材210が、一般的なガーゼマスクより、通気性が良いことを確認した。
【0037】
次に、パイプ520の出口521を、不織布ワイパー(ベンコット)で覆った測定器500のパイプ510内に疑似的な飛沫として標準粉体(SAP試験用粉体3の3種(STP3-3))を0.5g入れた状態でファンを3分間稼働させ、接続部511を通過した粉体を確認する試験を、接続部511にフィルター部材210を挟んだ場合と、一般的なガーゼマスクを挟んだ場合で行うことで、各々の補足性を確認した。
【0038】
図8は、試験後の各不織布ワイパーの拡大写真の比較図である。
図8に示すように、フィルター部材210を挟んだ方が、一般的なガーゼマスクを挟むよりも不織布ワイパーに付着した標準粉体が少ない。よって、フィルター部材210、すなわち本実施形態2のマスクの方が、一般的なガーゼマスクより、粉体の捕捉性が高いことがわかる。
【0039】
また、実施例のマスクは人の顔面に問題なく固定できることを確認している。
【0040】
このように、本発明の実施形態2に係るマスクは、一般的なガーゼマスクより、飛沫等に対する捕捉性と通気性が良く、和紙の風合いのある装飾性(高いデザイン性)を備えるという効果を奏する。
【0041】
〔実施形態3〕
以下に、本発明の実施形態について、
図9及び
図10に基づいて説明する。
【0042】
<マスクの構成>
図9は、本発明の実施形態3に係るマスク300の装着状態を示す図である。
図9に示すようにマスク300は、フィルター部材310、固定部材320からなる。
【0043】
<部材の構成>
フィルター部材310は、フィルター部材110又は210と同様の構成であり、大きさや種類は特に定められるものでなく、使用目的に応じて適宜決定される。
【0044】
固定部材320は、
図10に示すように本体部321と耳掛け部322からなる。固定部材320は、弾性樹脂からなる開口領域が50%以上ある網状成型物である。
【0045】
本体部321は、シリコンゴム等の弾性樹脂からなり、
図10に示すように開口のある網状の計形状をしており、
図10のB方向の弾性率(本体部321をB方向に引張った場合に伸びる割合の逆数)に対するA方向の弾性率(本体部321をA方向に引張った場合に伸びる割合の逆数)の比率が0.5~0.8になる網目が設けられている。厚さや大きさは特に定められるものでなく、使用目的に応じて適宜決定される。
【0046】
耳掛け部322は、シリコンゴム等の弾性樹脂からなり、装着者の顔面に固定できる形状であればよく、厚さや大きさは特に定められるものでなく、使用目的に応じて適宜決定される。更にいえば、耳に掛かる必要もなく、後頭部に回しかける等、本体部321と合わせてフィルター部材310を顔面に固定できれば良い。
【0047】
以下に、
図9及び
図10に基づき実施形態3に係る実施例を説明する。実施例におけるマスク300は、
図9に示すように、フィルター部材310と固定部材320からなる。フィルター部材310は、実施例2のフィルター部材210と同じく平均3.4g/m
2となる厚さで100mm×170mmの装飾を施した超極薄典具帖紙を3枚と100mm×170mm×2.3mmのウレタンと前記超極薄典具帖紙を2枚積層した積層体である。固定部材320は、厚さ3mmで120mm×180mmの
図10に示すような網状の本体部321と耳掛け部322で構成される。
【0048】
<実証試験>
実施形態3に係らない形状の本体部を持つ固定部を有する実施形態2のマスクを顔面に装着した場合と実施形態3のマスクを顔面に装着した場合を比較する試験を実施した。結果、
図9のCの部分の密着性が異なり、実施形態3のマスクの方が密着性が高いことが確認された。
【0049】
このように、本発明の実施形態3に係るマスクは、顔面の頬に対する密着性が良いため、より花粉等の粉塵が侵入しがたいという効果を奏する。
【0050】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、感染症対策、花粉対策、粉塵対策等に使用可能なマスクに利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
100…実施形態1に係るマスク
110…フィルター部材
120…固定部材
121…本体部
122…耳掛け部