(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155083
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】燃料電池電力システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04858 20160101AFI20221005BHJP
H01M 8/249 20160101ALI20221005BHJP
H01M 8/04313 20160101ALI20221005BHJP
H01M 8/04955 20160101ALI20221005BHJP
H01M 8/04664 20160101ALI20221005BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20221005BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20221005BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20221005BHJP
B60L 50/70 20190101ALN20221005BHJP
B60L 1/00 20060101ALN20221005BHJP
B60L 58/30 20190101ALN20221005BHJP
【FI】
H01M8/04858
H01M8/249
H01M8/04313
H01M8/04955
H01M8/04664
H01M8/04537
H01M8/00 Z
H01M8/04 Z
B60L50/70
B60L1/00 L
B60L58/30
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058419
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樽家 憲司
(72)【発明者】
【氏名】河瀬 暁
(72)【発明者】
【氏名】神馬 亮
(72)【発明者】
【氏名】北本 良太
(72)【発明者】
【氏名】平田 宜央
【テーマコード(参考)】
5H125
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC07
5H125AC12
5H125BD02
5H125BD14
5H125EE32
5H125EE40
5H125EE41
5H126AA21
5H127AB04
5H127AB14
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA59
5H127BA60
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127DB49
5H127DB69
5H127DB83
5H127DB91
5H127DC42
5H127DC81
5H127DC90
5H127FF06
5H127FF07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】航続距離を増加させた燃料電池自動車を提供する。
【解決手段】駆動電源は、燃料電池スタックと燃料ガスを貯蔵し燃料電池スタックに燃料ガスを供給する燃料タンクとを有する燃料電池システムを複数備え、複数の燃料電池システムの内のいずれか一つの燃料電池システムの出力に電気的に切り替え可能に接続され、燃料電池システムから出力される電力を消費する補機を備える。制御器は複数の燃料電池システムの状態(例えば、燃料タンク内の燃料残量)に基づいて、補機が接続される一つの燃料電池システムを選択し切り替える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックと、燃料ガスを貯蔵し前記燃料電池スタックに前記燃料ガスを供給する燃料タンクと、を有する複数の燃料電池システムと、
前記複数の燃料電池システムのいずれかに電気的に切り替え可能に接続され、前記複数の燃料電池システムから出力される電力を消費する補機と、
前記複数の燃料電池システムの状態に基づいて、前記補機が接続される前記燃料電池システムを切り替える制御装置と、を有する燃料電池電力システム。
【請求項2】
前記複数の燃料電池システムの状態は、前記複数の燃料電池システム間における、前記燃料タンク内の前記燃料ガスの残量の差を含む、請求項1に記載の燃料電池電力システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記複数の燃料電池システム間における、前記燃料タンク内の前記燃料ガスの残量の差が予め定められた値以上であり、前記燃料タンク内の前記燃料ガスの残量が少ない方の前記燃料電池システムの前記補機が接続されている場合に、前記補機の接続を前記燃料タンク内の前記燃料ガスの残量が多い方の前記燃料電池システムに切り替える、請求項1に記載の燃料電池電力システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記補機の接続を切り替えた後に、前記複数の燃料電池システム間における、前記燃料タンク内の前記燃料ガスの残量の差が予め定められた値未満となった場合に、前記補機の接続先を、元の接続先の前記燃料電池システムに切り替える、請求項3に記載の燃料電池電力システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記燃料タンク内の前記燃料ガスの残量が予め定められた値未満である燃料電池システムに接続されている前記補機の接続先を、前記燃料タンク内の前記燃料ガスの残量が予め定められた値以上の燃料電池システムに切り替え、
前記燃料タンク内の前記燃料ガスの残量が予め定められた値未満である燃料電池システムによる発電を停止させる、請求項2から4のいずれか1項に記載の燃料電池電力システム。
【請求項6】
前記複数の燃料電池システムの状態は、前記燃料電池システム間における、前記燃料電池スタックの劣化度の差を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の燃料電池電力システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記複数の燃料電池システム間における、前記燃料電池スタックの劣化度の差が予め定められた値以上である場合に、前記燃料電池スタックの劣化度が高い前記燃料電池システムに接続された前記補機の接続先を、前記燃料電池スタックの劣化度が低い前記燃料電池システムに切り替える、請求項6に記載の燃料電池電力システム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記複数の燃料電池システム間における、前記燃料電池スタックの劣化度の差が予め定められた値未満である場合、接続先の前記燃料電池システムを切り替えた前記補機の接続先を、元の接続先の前記燃料電池システムに切り替える、請求項7に記載の燃料電池電力システム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記複数の燃料電池システム間における、前記燃料タンク内の前記燃料ガスの残量の差が予め定められた値未満である場合において、前記複数の燃料電池システム間における、前記燃料電池スタックの劣化度の差が予め定められた値以上である場合に、前記補機の接続先を、前記燃料電池スタックの劣化度が低い前記燃料電池システムに切り替える、請求項6から8のいずれか1項に記載の燃料電池電力システム。
【請求項10】
前記制御装置は、前記補機の要求出力に基づいて、前記補機が接続される前記複数の燃料電池システムを切り替える、請求項1から9のいずれか1項に記載の燃料電池電力システム。
【請求項11】
前記制御装置は、前記補機の接続先を切り替える前に前記補機の稼働を停止させ、前記補機の接続先を切り替えた後に前記補機の稼働を再開させる、請求項1から10のいずれか1項に記載の燃料電池電力システム。
【請求項12】
前記制御装置は、前記燃料電池システムの前記燃料タンク内の前記燃料ガスの残量に基づいて、前記補機の電力消費量を調整する、請求項1から11のいずれか1項に記載の燃料電池電力システム。
【請求項13】
前記補機は、前記燃料電池電力システムを有する車両に備え付けられる電気機器である、請求項1から12のいずれか1項に記載の燃料電池電力システム。
【請求項14】
前記電気機器は、前記車両の走行、停止又は操舵に使用されない電気機器を含む、請求項13に記載の燃料電池電力システム。
【請求項15】
前記電気機器は、現在稼働していない電気機器を含む、請求項13または14に記載の燃料電池電力システム。
【請求項16】
前記電気機器は、ユーザによって電源がONまたはOFFされる、請求項13から15のいずれか1項に記載の燃料電池電力システム。
【請求項17】
前記制御装置は、前記補機の電力消費量を含む、前記補機に関する情報が記憶されたテーブルを予め保有する、請求項1から16のいずれか1項に記載の燃料電池電力システム。
【請求項18】
前記補機は、電力消費量が少ない第1の補機と、前記第1の補機よりも電力消費量が多い第2の補機を有し、
前記制御装置は、前記複数の燃料電池システム間における、前記燃料タンク内の前記燃料ガスの残量の差が予め定められた値以上である場合において、前記燃料タンク内の前記燃料ガスの残量が多い方の前記燃料電池システムに前記第1の補機が接続され、前記燃料タンク内の前記燃料ガスの残量が少ない方の前記燃料電池システムに前記第2の補機が接続されている場合に、前記燃料タンク内の前記燃料ガスの残量が少ない方の前記燃料電池システムに前記第1の補機が接続され、前記燃料タンク内の前記燃料ガスの残量が多い方の前記燃料電池システムに前記第2の補機が接続されるように、前記補機の接続を切り替える、請求項1から17のいずれか1項に記載の燃料電池電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「コンバータの異常時に、バッテリの過剰な放電を防止すると共にエアポンプの無駄な駆動を防止することができる燃料電池システム」が記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2017-152279号公報
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様においては、燃料電池電力システムが提供される。燃料電池電力システムは、燃料電池スタックと、燃料ガスを貯蔵し燃料電池スタックに燃料ガスを供給する燃料タンクと、を有する複数の燃料電池システムを備える。燃料電池電力システムは、複数の燃料電池システムのいずれかに電気的に切り替え可能に接続され、複数の燃料電池システムから出力される電力を消費する補機を備える。燃料電池電力システムは、複数の燃料電池システムの状態に基づいて、補機が接続される燃料電池システムを切り替える制御装置を備える。
【0004】
複数の燃料電池システムの状態は、複数の燃料電池システム間における、燃料タンク内の燃料ガスの残量の差を含んでよい。
【0005】
制御装置は、複数の燃料電池システム間における、燃料タンク内の燃料ガスの残量の差が予め定められた値以上であり、燃料タンク内の燃料ガスの残量が少ない方の燃料電池システムの補機が接続されている場合に、補機の接続を燃料タンク内の燃料ガスの残量が多い方の燃料電池システムに切り替えてよい。
【0006】
制御装置は、補機の接続を切り替えた後に、複数の燃料電池システム間における、燃料タンク内の燃料ガスの残量の差が予め定められた値未満となった場合に、補機の接続先を、元の接続先の燃料電池システムに切り替えてよい。
【0007】
制御装置は、燃料タンク内の燃料ガスの残量が予め定められた値未満である燃料電池システムに接続されている補機の接続先を、燃料タンク内の燃料ガスの残量が予め定められた値以上の燃料電池システムに切り替え、燃料タンク内の燃料ガスの残量が予め定められた値未満である燃料電池システムによる発電を停止させてよい。
【0008】
複数の燃料電池システムの状態は、燃料電池システム間における、燃料電池スタックの劣化度の差を含んでよい。
【0009】
制御装置は、複数の燃料電池システム間における、燃料電池スタックの劣化度の差が予め定められた値以上である場合に、燃料電池スタックの劣化度が高い燃料電池システムに接続された補機の接続先を、燃料電池スタックの劣化度が低い燃料電池システムに切り替えてよい。
【0010】
制御装置は、複数の燃料電池システム間における、燃料電池スタックの劣化度の差が予め定められた値未満である場合、接続先の燃料電池システムを切り替えた補機の接続先を、元の接続先の燃料電池システムに切り替えてよい。
【0011】
制御装置は、複数の燃料電池システム間における、燃料タンク内の燃料ガスの残量の差が予め定められた値未満である場合において、複数の燃料電池システム間における、燃料電池スタックの劣化度の差が予め定められた値以上である場合に、補機の接続先を、燃料電池スタックの劣化度が低い燃料電池システムに切り替えてよい。
【0012】
制御装置は、補機の要求出力に基づいて、補機が接続される複数の燃料電池システムを切り替えてよい。
【0013】
制御装置は、補機の接続先を切り替える前に補機の稼働を停止させ、補機の接続先を切り替えた後に補機の稼働を再開させてよい。
【0014】
制御装置は、燃料電池システムの燃料タンク内の燃料ガスの残量に基づいて、補機の電力消費量を調整してよい。
【0015】
補機は、燃料電池電力システムを有する車両に備え付けられる電気機器であってよい。
【0016】
電気機器は、前記車両の走行、停止又は操舵に使用されない電気機器を含んでよい。
【0017】
電気機器は、現在稼働していない電気機器を含んでよい。
【0018】
電気機器は、ユーザによって電源がONまたはOFFされてよい。
【0019】
制御装置は、電力消費量を含む、補機に関する情報が記憶されたテーブルを保有してよい。
【0020】
補機は、電力消費量が少ない第1の補機と、第1の補機よりも電力消費量が多い第2の補機を有し、制御装置は、複数の燃料電池システム間における、燃料タンク内の燃料ガスの残量の差が予め定められた値以上である場合において、燃料タンク内の燃料ガスの残量が多い方の燃料電池システムに第1の補機が接続され、燃料タンク内の燃料ガスの残量が少ない方の燃料電池システムに第2の補機が接続されている場合に、燃料タンク内の燃料ガスの残量が少ない方の燃料電池システムに第1の補機が接続され、燃料タンク内の燃料ガスの残量が多い方の燃料電池システムに第2の補機が接続されるように、補機の接続を切り替えてよい。
【0021】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1の実施形態における車両100の概略的な構成を示す図である。
【
図2】第1の実施形態における第1のFCユニット10aおよび第2のFCユニット10bの概略的な構成を示す図である。
【
図3】第1の実施形態における高電圧補機17の接続の切り替えの第1の例について示すフローチャートである。
【
図4】第1の例における高電圧補機17の接続状態のイメージ図である。
【
図5】第1の実施形態における高電圧補機17の接続の切り替えの第2の例について示すフローチャートである。
【
図6】第2の例における高電圧補機17の接続状態のイメージ図である。
【
図7】第1の実施形態における高電圧補機17の接続の切り替えの第3の例について示すフローチャートである。
【
図8】第3の例における高電圧補機17の接続状態のイメージ図である。
【
図9】第1の実施形態における高電圧補機17の接続の切り替えの第4の例について示すフローチャートである。
【
図10】第4の例における高電圧補機17の接続状態のイメージ図である。
【
図11】第1の実施形態における高電圧補機17の接続の切り替えの第5の例について示すフローチャートである。
【
図12】第5の例における高電圧補機17の接続状態のイメージ図である。
【
図13】第2の実施形態における第1のFCユニット10cおよび第2のFCユニット10dの概略的な構成を示す図である。
【
図14】第2の実施形態における高電圧補機17の接続の切り替えの第1の例について示すフローチャートである。
【
図15】第1の例における高電圧補機17の接続状態のイメージ図である。
【
図16】第2の実施形態における高電圧補機17の接続の切り替えの第2の例について示すフローチャートである。
【
図17】第2の例における高電圧補機17の接続状態のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。以下では、燃料電池電力システムが、(電動)車両に搭載されている例について説明する。車両は、例えば、燃料電池において発電された電力を走行用の電力または車載機器の動作用の電力として用いる燃料電池車両である。車両は、移動体の一例であり、二輪や三輪、四輪等の自動車である。また、車両は、例えば、燃料電池システムを複数搭載することが可能なバスやトラック等の大型車両であってもよい。燃料電池電力システムは、車両以外の移動体(例えば、船舶、飛行体、ロボット)に搭載されてもよく、また、定置型の燃料電池システムに搭載されてもよい。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0024】
図1は、第1の実施形態における車両100の概略的な構成を示す図である。
図1に示すように、車両100は、第1の燃料電池システム100aと、第2の燃料電池システム100bと、高電圧補機17と、を有する。車両100は、例えば、大型トラックなどの大型車両であり、複数の燃料電池システムにより駆動される。大型トラックなどの大型車両は、複数の燃料電池システムの駆動力を有することにより円滑に駆動される。なお、車両100は、小型車両であってもよい。
【0025】
第1の燃料電池システム(FCS1ともいう)100aは、第1のFC(Fuel Cell)ユニット10aと、FCVCU(Fuel Cell Voltage Control Unit)11aと、BATTVCU(BATTERY Voltage Control Unit)12aと、PDU(Power Drive Unit)13aと、MOT(MOTER)14aと、高電圧補機15aと、IPU(Intelligent Power Unit)16aと、を有する。
【0026】
第2の燃料電池システム(FCS2ともいう)100bは、第2のFCユニット10bと、FCVCU11bと、BATTVCU12bと、PDU13bと、MOT14bと、高電圧補機15bと、IPU16bと、を有する。第1の燃料電池システム100aの第1のFCユニット10aと、第2の燃料電池システム100bの第2のFCユニット10bは、制御装置としてのFCECUマスタ32に接続されている。
【0027】
図2は、第1の実施形態における第1のFCユニット10aおよび第2のFCユニット10bの概略的な構成を示す図である。
図2に示すように、第1のFCユニット10aは、水素供給システム21aと、FCECU(Fuel Cell Electronic Control Unit)30aと、FC(Fuel Cell)31aとを有する。
【0028】
水素供給システム21aは、水素ガスを貯蔵する複数(例えば、3つ)の水素タンク22a,23a,24aと、減圧バルブユニット28aと、を有する。減圧バルブユニット28aは、水素タンク22a,23a,24aへの水素ガスの充填や、水素タンク22a,23a,24aからの水素ガスの放出などを制御する高圧ユニットである。水素タンク22a,23a,24aと減圧バルブユニット28aとは、配管29aで接続されている。
【0029】
水素供給システム21aは、各水素タンク22a,23a,24a内の温度を検出する図示しない温度センサや、水素タンク22a,23a,24a内の圧力を検出する図示しない圧力センサを備えている。本実施形態において、圧力センサによって検出された水素タンク22a,23a,24a内の水素残量の平均値を、水素残量Aとする。他の例では、水素タンク22a,23a,24a内の水素残量の合計値または、最小値を水素残量Aとしてもよい。
【0030】
水素タンク22a,23a,24aには、それぞれ弁25a,26a,27aが設けられている。例えば車両100の走行中である場合には、減圧バルブユニット28aを介してFC31aに水素タンク22a,23a,24a内に貯蔵された水素ガスを供給するため、これら弁25a,26a,27aは同時に開かれる。またこれら弁25a,26a,27aは、それぞれ独立に、車両100のメンテナンス時を考慮して、作業者が手動で開閉できるようになっている。
【0031】
FCECU30aは、マイクロコンピュータを含む計算機であり、CPU、ROM、RAM、その他、A/D変換器、D/A変換器等の入出力装置、計時部としてのタイマ等を有する。FCECU30aは、CPUがROMに記録されているプログラムを読み出し実行する。
【0032】
FCECU30aは、第1のFCユニット10aのエネルギーマネージメントを行うように構成される。FCECU30aは、CPUがROMに記録されているプログラムを読み出し実行することにより、例えば、流量/圧力演算部、回転数演算部、電力推定部、ポンプ電力演算部、ガス制御部、電力システム制御部として機能する。
【0033】
FCECU30aは、信号線を介して水素供給システム21a、減圧バルブユニット28a、FC31aと通信可能に接続される。
図2において、信号線は一点鎖線で示される。FCECU30aは、ROMに格納されたプログラムを実行し、例えば、図示しない開度センサ、圧力センサ、流量センサ、温度センサ、エアポンプの回転数センサ等のセンサ検出値、FC31aの電圧、電流、エアポンプの電圧、電流、回転数、モータの電圧、電流、回転数等を検出して、各機器を制御する。
【0034】
FC31aは、燃料電池スタックであり、固体高分子電解質膜をアノード電極とカソード電極とで挟み込んで形成された燃料電池セルを積層した構造を有する。アノード電極側にはアノード流路を介して燃料ガスとしての水素ガスが供給され、カソード電極側にはカソード流路を介して酸化剤ガスとしてのエアが供給される。水素ガスとエア中の酸素が反応して水が生成されると共に電力が発生する。
【0035】
FC31aは、昇圧コンバータであるFCVCU11aとインバータであるPDU13aを介して、モータ14aに接続される。
【0036】
第2のFCユニット10bは、水素供給システム21bと、FCECU30bと、FC31bとを有する。水素供給システム21bは、水素ガスを貯蔵する複数(例えば、3つ)の水素タンク22b,23b,24bと、減圧バルブユニット28bと、を有する。水素タンク22b,23b,24bには、それぞれ弁25b,26b,27bが設けられている。本実施形態において、圧力センサによって検出された水素タンク22b,23b,24b内の水素残量の平均値を、水素残量Bとする。他の例では、水素タンク22b,23b,24b内の水素残量の合計値または、最小値を水素残量Bとしてもよい他の第2のFCユニット10bの構成は、第1のFCユニット10aの構成と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0037】
第1のFCユニット10aのFCECU30aと、第2のFCユニット10bのFCECU30bとは、制御装置としてのFCECUマスタ32に信号線により接続されている。FCECUマスタ32は、第1のFCユニット10aのFCECU30aと、第2のFCユニット10bのFCECU30bとをまとめて管理する。
【0038】
図1に戻り、FCVCU11aはチョッパ回路を備える電圧調整装置であり、FCECU30aの制御信号に応じて1次側の電圧を昇圧して2次側に印加する。同様に、FCVCU11bはチョッパ回路を備える電圧調整装置であり、FCECU30bの制御信号に応じて1次側の電圧を昇圧して2次側に印加する。
【0039】
PDU13aは3相ブリッジ型の構成を有しており、2次側の直流電圧を交流電圧に変換し、FCECU30aから出力される目標回転数の制御信号に応じてMOT14aを制御する。なお、回生時にPDU13aはコンバータとして機能し、MOT14aで発生する交流電圧を直流電圧に変換する。同様に、PDU13bは3相ブリッジ型の構成を有しており、2次側の直流電圧を交流電圧に変換し、FCECU30bから出力される目標回転数の制御信号に応じてMOT14bを制御する。なお、回生時にPDU13bはコンバータとして機能し、MOT14bで発生する交流電圧を直流電圧に変換する。
【0040】
BATTVCU12aはチョッパ回路を備える電圧調整装置であり、FCECU30aから出力される制御信号に応じて、力行時には1次側の電圧を昇圧して2次側に印加し、回生時には2次側の電圧を降圧して1次側に印加する。FCVCU11aとBATTVCU12aは、MOT14aに対して2次側で並列に接続される。BATTVCU12aの1次側には各種の高電圧補機15a、17が並列に接続される。
【0041】
同様に、BATTVCU12bはチョッパ回路を備える電圧調整装置であり、FCECU30bから出力される制御信号に応じて、力行時には1次側の電圧を昇圧して2次側に印加し、回生時には2次側の電圧を降圧して1次側に印加する。FCVCU11bとBATTVCU12bは、MOT14bに対して2次側で並列に接続される。BATTVCU12bの1次側には各種の高電圧補機15b、17が並列に接続される。
【0042】
高電圧補機15aには、第1のFCユニット10aにおけるエアポンプが含まれる。高電圧補機15bには、第2のFCユニット10bにおけるエアポンプが含まれる。高電圧補機17には、第1の燃料電池システム100aと、第2の燃料電池システム100bのどちらの燃料電池システムに属してもよい高電圧補機が含まれる。高電圧補機17には、例えば、12V電源と、24V電源と、DC/DCコンバータと、A/Cコンバータと、荷室用冷凍機と、パワーステアリング(パワステともいう)と、エアコンディショナ(エアコンともいう)と、ウォーターポンプと、が含まれる。
【0043】
高電圧補機15a、15b、17は、燃料電池電力システムを有する車両100に備え付けられる電気機器である。高電圧補機15a、15b、17は、車両100の走行、停止又は操舵に使用される電気機器であってもよく、車両100の走行、停止又は操舵に使用されない電気機器であってもよい。高電圧補機15a、15b、17は、現在稼働していない電気機器であってもよい。高電圧補機15a、15b、17は、ユーザによって電源がONまたはOFFされてよい。FCECUマスタ32は、高電圧補機15a、15b、17の当該高電圧補機に関する情報が記憶されたテーブルを予め保有してもよい。当該テーブルには、高電圧補機17のそれぞれの電力消費量が記載されていてもよい。
【0044】
高電圧補機17は、第1の燃料電池システム100aと、第2の燃料電池システム100bのいずれかの燃料電池システムに電気的に切り替え可能に接続される。高電圧補機17は、第1の燃料電池システム100aにスイッチ171により接続され、第2の燃料電池システム100bにスイッチ172により接続される。高電圧補機17は、第1の燃料電池システム100aと、第2の燃料電池システム100bのいずれかの燃料電池システムから出力される電力を消費する。制御装置としてのFCECUマスタ32は、第1の燃料電池システム100aと、第2の燃料電池システム100bの状態に基づいて、高電圧補機17の接続先を切り替える。第1の実施形態において、第1の燃料電池システム100aと、第2の燃料電池システム100bの状態は、第1の燃料電池システム100aの水素残量の平均である水素残量Aと、第2の燃料電池システム100bの水素残量の平均である水素残量Bとの差を含む。
【0045】
IPU16aおよび16bは、インテリジェント・パワー・ユニットである。IPU16aは、図示しないバッテリーコンタクタと昇降圧コンバータであるBATTVCU12aを介して、MOT14aに接続される。IPU16bは、図示しないバッテリーコンタクタと昇降圧コンバータであるBATTVCU12bを介して、MOT14bに接続される。IPU16aおよび16bは、バッテリー、DC-DCコンバータ、バッテリー制御用ECUなどで構成されている。
【0046】
図3は、第1の実施形態における高電圧補機17の接続の切り替えの第1の例について示す図である。
図3には、第1の例における高電圧補機17の接続の切り替えのフローチャートが示される。
図4は、第1の例における高電圧補機17の接続状態のイメージ図である。
図4(a)に示すイメージ図は、フローチャートにおけるS02の段階における接続状態のイメージ図を示しており、
図4(b)に示すイメージ図は、フローチャートにおけるS04の段階における接続状態のイメージ図を示している。
【0047】
図4の高電圧補機17の接続状態のイメージ図に示すように、第1の例では、高電圧補機17である荷室用冷凍機17aが、第1の燃料電池システム100aと、第2の燃料電池システム100bのいずれかに接続可能となっている。なお、
図4に示すイメージ図では、便宜的に、第1の燃料電池システム100aおよび第2の燃料電池システム100b内の水素タンクを、第1の燃料電池システム100aおよび第2の燃料電池システム100bの外部に描いている。
【0048】
図3のフローチャートにおいて、第1の燃料電池システム100aの水素残量の平均である水素残量Aから、第2の燃料電池システム100bの水素残量の平均である水素残量Bを減算した値が、予め定められた値以上である場合(S01:YES)であって、荷室用冷凍機17aが第2の燃料電池システム100bに接続されている場合に、荷室用冷凍機17aの接続先を、第1の燃料電池システム100aの接続に切り替える(S02)。
図4(a)のイメージ図に示す例では、水素残量Aが65%で水素残量Bが25%であり、水素残量A-水素残量B=40%である。なお、荷室用冷凍機17aが元々第1の燃料電池システム100aに接続されている場合には、荷室用冷凍機17aの接続先の切り替えは行わない。
【0049】
第1の燃料電池システム100aの水素残量の平均である水素残量Aから、第2の燃料電池システム100bの水素残量の平均である水素残量Bを減算した値が、予め定められた値以上でない場合(S01:NO)であって、第2の燃料電池システム100bの水素残量の平均である水素残量Bから、第1の燃料電池システム100aの水素残量の平均である水素残量Aを減算した値が、予め定められた値以上である場合(S03:YES)であって、荷室用冷凍機17aが第1の燃料電池システム100aに接続されている場合に、荷室用冷凍機17aの接続先を、第2の燃料電池システム100bの接続に切り替える(S04)。
図4(b)のイメージ図に示す例では、水素残量Bが65%で水素残量Aが25%であり、水素残量B-水素残量A=40%である。なお、荷室用冷凍機17aが元々第2の燃料電池システム100bに接続されている場合には、荷室用冷凍機17aの接続先の切り替えは行わない。
【0050】
第2の燃料電池システム100bの水素残量の平均である水素残量Bから、第1の燃料電池システム100aの水素残量の平均である水素残量Aを減算した値が、予め定められた値以上でない場合(S03:NO)には、荷室用冷凍機17aの接続先を切り替えない(S05)。
【0051】
図5は、第1の実施形態における高電圧補機17の接続の切り替えの第2の例について示す図である。
図5には、第2の例における高電圧補機17の接続の切り替えのフローチャートが示される。
図6は、第2の例における高電圧補機17の接続状態のイメージ図である。
図6(a)に示すイメージ図は、フローチャートにおけるS12の段階における接続状態のイメージ図を示しており、
図6(b)に示すイメージ図は、フローチャートにおけるS14の段階における接続状態のイメージ図を示している。
【0052】
図6の高電圧補機17の接続状態のイメージ図に示すように、第2の例では、高電圧補機17である荷室用冷凍機17a、パワーステアリング17b、エアコン17c、24V電源17dがまとめて、第1の燃料電池システム100aと、第2の燃料電池システム100bのいずれかに接続可能となっている。
【0053】
図5のフローチャートにおいて、第1の燃料電池システム100aの水素残量の平均である水素残量Aから、第2の燃料電池システム100bの水素残量の平均である水素残量Bを減算した値が、予め定められた値以上である場合(S11:YES)、荷室用冷凍機17a、パワーステアリング17b、エアコン17c、24V電源17dの接続先を、まとめて第1の燃料電池システム100aの接続に切り替える(S12)。
図6(a)のイメージ図に示す例では、水素残量Aが65%で水素残量Bが25%であり、水素残量A-水素残量B=40%である。
【0054】
第1の燃料電池システム100aの水素残量の平均である水素残量Aから、第2の燃料電池システム100bの水素残量の平均である水素残量Bを減算した値が、予め定められた値以上でない場合(S11:NO)であって、第2の燃料電池システム100bの水素残量の平均である水素残量Bから、第1の燃料電池システム100aの水素残量の平均である水素残量Aを減算した値が、予め定められた値以上である場合(S13:YES)、荷室用冷凍機17a、パワーステアリング17b、エアコン17c、24V電源17dの接続先を、まとめて第2の燃料電池システム100bの接続に切り替える(S14)。
図6(b)のイメージ図に示す例では、水素残量Bが65%で水素残量Aが25%であり、水素残量B-水素残量A=40%である。
【0055】
第2の燃料電池システム100bの水素残量の平均である水素残量Bから、第1の燃料電池システム100aの水素残量の平均である水素残量Aを減算した値が、予め定められた値以上でない場合(S13:NO)には、荷室用冷凍機17a、パワーステアリング17b、エアコン17c、24V電源17dの接続先を切り替えない(S15)。
【0056】
図7は、第1の実施形態における高電圧補機17の接続の切り替えの第3の例について示す図である。
図7には、第3の例における高電圧補機17の接続の切り替えのフローチャートが示される。
図8は、第3の例における高電圧補機17の接続状態のイメージ図である。
図8(a)に示すイメージ図は、フローチャートにおけるS22の段階における接続状態のイメージ図を示しており、
図8(b)に示すイメージ図は、フローチャートにおけるS24の段階における接続状態のイメージ図を示している。
【0057】
図8の高電圧補機17の接続状態のイメージ図に示すように、第3の例では、高電圧補機17である荷室用冷凍機17a、パワーステアリング17b、エアコン17c、24V電源17dがそれぞれ個別に、第1の燃料電池システム100aと、第2の燃料電池システム100bのいずれかに接続可能となっている。
【0058】
図7のフローチャートにおいて、第1の燃料電池システム100aの水素残量の平均である水素残量Aから、第2の燃料電池システム100bの水素残量の平均である水素残量Bを減算した値が、予め定められた値以上である場合(S21:YES)、パワーステアリング17bの接続先を、第1の燃料電池システム100aの接続に切り替える(S22)。
図8(a)のイメージ図に示す例では、水素残量Aが65%で水素残量Bが25%であり、水素残量A-水素残量B=40%である。なお、荷室用冷凍機17a、エアコン17c、24V電源17dの接続先の切り替えは行わない。
【0059】
第1の燃料電池システム100aの水素残量の平均である水素残量Aから、第2の燃料電池システム100bの水素残量の平均である水素残量Bを減算した値が、予め定められた値以上でない場合(S21:NO)であって、第2の燃料電池システム100bの水素残量の平均である水素残量Bから、第1の燃料電池システム100aの水素残量の平均である水素残量Aを減算した値が、予め定められた値以上である場合(S23:YES)、パワーステアリング17bの接続先を、第2の燃料電池システム100bの接続に切り替える(S24)。
図8(b)のイメージ図に示す例では、水素残量Bが65%で水素残量Aが25%であり、水素残量B-水素残量A=40%である。なお、荷室用冷凍機17a、エアコン17c、24V電源17dの接続先の切り替えは行わない。
【0060】
第2の燃料電池システム100bの水素残量の平均である水素残量Bから、第1の燃料電池システム100aの水素残量の平均である水素残量Aを減算した値が、予め定められた値以上でない場合(S23:NO)には、高電圧補機17の接続先を切り替えない(S25)。
【0061】
図9は、第1の実施形態における高電圧補機17の接続の切り替えの第4の例について示す図である。
図9には、第4の例における高電圧補機17の接続の切り替えのフローチャートが示される。
図10は、第4の例における高電圧補機17の接続状態のイメージ図である。
図10(a)に示すイメージ図は、フローチャートにおけるS32の段階における接続状態のイメージ図を示しており、
図10(b)に示すイメージ図は、フローチャートにおけるS34の段階における接続状態のイメージ図を示している。
【0062】
図10の高電圧補機17の接続状態のイメージ図に示すように、第4の例では、高電圧補機17である荷室用冷凍機17aが第1の燃料電池システム100aに接続され、エアコン17c、24V電源17dが第2の燃料電池システム100bに接続され、パワーステアリング17bが、第1の燃料電池システム100aと、第2の燃料電池システム100bのいずれかに切り替え可能に接続されている。
【0063】
図9のフローチャートにおいて、第1の燃料電池システム100aの水素残量の平均である水素残量Aから、第2の燃料電池システム100bの水素残量の平均である水素残量Bを減算した値が、予め定められた値以上である場合(S31:YES)、パワーステアリング17bの接続先を、第1の燃料電池システム100aの接続に切り替える(S32)。
図10(a)のイメージ図に示す例では、水素残量Aが65%で水素残量Bが25%であり、水素残量A-水素残量B=40%である。なお、荷室用冷凍機17a、エアコン17c、24V電源17dの接続先の切り替えは行わない。
【0064】
第1の燃料電池システム100aの水素残量の平均である水素残量Aから、第2の燃料電池システム100bの水素残量の平均である水素残量Bを減算した値が、予め定められた値以上でない場合(S31:NO)であって、第2の燃料電池システム100bの水素残量の平均である水素残量Bから、第1の燃料電池システム100aの水素残量の平均である水素残量Aを減算した値が、予め定められた値以上である場合(S33:YES)、パワーステアリング17bの接続先を、第2の燃料電池システム100bの接続に切り替える(S34)。
図10(b)のイメージ図に示す例では、水素残量Bが65%で水素残量Aが25%であり、水素残量B-水素残量A=40%である。なお、荷室用冷凍機17a、エアコン17c、24V電源17dの接続先の切り替えは行わない。
【0065】
第2の燃料電池システム100bの水素残量の平均である水素残量Bから、第1の燃料電池システム100aの水素残量の平均である水素残量Aを減算した値が、予め定められた値以上でない場合(S33:NO)には、パワーステアリング17bの接続先を切り替えない(S35)。
【0066】
図11は、第1の実施形態における高電圧補機17の接続の切り替えの第5の例について示す図である。
図11には、第5の例における高電圧補機17の接続の切り替えのフローチャートが示される。
図12は、第5の例における高電圧補機17の接続状態のイメージ図である。
図12(a)に示すイメージ図は、フローチャートにおけるS42の段階における接続状態のイメージ図を示しており、
図12(b)に示すイメージ図は、フローチャートにおけるS44の段階における接続状態のイメージ図を示している。
【0067】
図12の高電圧補機17の接続状態のイメージ図に示すように、第5の例では、高電圧補機17である荷室用冷凍機17aが第1の燃料電池システム100aに接続され、エアコン17c、24V電源17dが第2の燃料電池システム100bに接続され、パワーステアリング17bが、第1の燃料電池システム100aと、第2の燃料電池システム100bのいずれかに切り替え可能に接続されている。
【0068】
図11のフローチャートにおいて、第1の燃料電池システム100aの水素残量の平均である水素残量Aから、第2の燃料電池システム100bの水素残量の平均である水素残量Bを減算した値が、予め定められた値以上である場合(S41:YES)、パワーステアリング17bの接続先を第1の燃料電池システム100aに切り換えて、第2の燃料電池システム100bの発電を停止する(S42)。なお、第1の燃料電池システム100aの発電は継続する。
図12(a)のイメージ図に示す例では、水素残量Aが65%で水素残量Bが25%であり、水素残量A-水素残量B=40%である。
【0069】
第1の燃料電池システム100aの水素残量の平均である水素残量Aから、第2の燃料電池システム100bの水素残量の平均である水素残量Bを減算した値が、予め定められた値以上でない場合(S41:NO)であって、第2の燃料電池システム100bの水素残量の平均である水素残量Bから、第1の燃料電池システム100aの水素残量の平均である水素残量Aを減算した値が、予め定められた値以上である場合(S43:YES)、パワーステアリング17bの接続先を第2の燃料電池システム100bに切り換えて、第1の燃料電池システム100aの発電を停止する(S44)。
図12(b)のイメージ図に示す例では、水素残量Bが65%で水素残量Aが25%であり、水素残量B-水素残量A=40%である。なお、第2の燃料電池システム100bの発電は継続する。
【0070】
第2の燃料電池システム100bの水素残量の平均である水素残量Bから、第1の燃料電池システム100aの水素残量の平均である水素残量Aを減算した値が、予め定められた値以上でない場合(S43:NO)には、第1の燃料電池システム100aおよび第2の燃料電池システム100bのいずれの発電も停止しない(S45)。
【0071】
以上、第1の実施形態における車両100によれば、第1の燃料電池システム100aの水素残量Aおよび第2の燃料電池システム100bの水素残量Bを考慮して、高電圧補機17の接続先を切り替える。これにより、第1の燃料電池システム100aおよび第2の燃料電池システム100bの水素残量が均等になるように調整することができ、車両100の航続距離を増加させることができる。
【0072】
上記第1の実施形態において、高電圧補機17の接続を切り替えることと並行して、第1の燃料電池システム100aの高電圧補機15aまたは第2の燃料電池システム100bの高電圧補機15bの消費電力を調整してもよい。例えば、
図3に示す第1の例のS02において、水素残量Aが多い第1の燃料電池システム100aの高電圧補機15aの消費電力を増加させ(例えば、エアポンプの回転数を調整して)、水素残量Bが多い第2の燃料電池システム100bの高電圧補機15bの消費電力を減少させてもよい。
【0073】
上記第1の実施形態において、高電圧補機17の定格の電力消費量を考慮して切り替えを行ってもよい。例えば、水素残量が多い方の燃料電池システムに電力消費量が少ない高電圧補機17が接続され、水素残量が少ない方の燃料電池システムに電力消費量が多い高電圧補機17が接続されている場合に、水素残量が少ない方の燃料電池システムに電力消費量が少ない高電圧補機17が接続され、水素残量が多い方の燃料電池システムに電力消費量が多い高電圧補機17が接続されるように、高電圧補機17の接続を切り替えてもよい。
【0074】
上記第1の実施形態において、高電圧補機17の接続を切り替えた後に、第1の燃料電池システム100aの水素残量Aと第2の燃料電池システム100bの水素残量Bとの差が予め定められた値未満となった場合に、高電圧補機17の接続先を、元の接続先の燃料電池システムに切り替えてもよい。
【0075】
上記第1の実施形態において、高電圧補機17の要求出力に基づいて、高電圧補機17が接続される燃料電池システムを切り替えてもよい。また、高電圧補機17の接続先を切り替える前に高電圧補機17の稼働を停止させ、高電圧補機17の接続先を切り替えた後に高電圧補機17の稼働を再開させてもよい。
【0076】
図13は、第2の実施形態における第1のFCユニット10cおよび第2のFCユニット10dの概略的な構成を示す図である。
図13に示すように、第1のFCユニット10cは、水素供給システム21aと、FCECU30aと、FC31aとを有する。第2のFCユニット10dは、水素供給システム21bと、FCECU30bと、FC31bとを有する。以下、第2の実施形態について第1の実施形態の構成と異なる構成について説明し、第1の実施形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0077】
第2の実施形態では、FC31aには、FC31aの燃料電池スタックの劣化度を測定するために、燃料電池スタックの使用回数をカウントするカウンタ310aが設けられている。カウンタ310aにより取得された使用回数によりFC31aの劣化度Aが算出され、劣化度AはFCECU30aに送信される。同様に、FC31bには、FC31bの燃料電池スタックの劣化度を測定するためのカウンタ310bが設けられている。カウンタ310bによりFC31bの劣化度Bが取得され、劣化度BはFCECU30bに送信される。FCECUマスタ32は、劣化度Aおよび劣化度BをFCECU30aおよびFCECU30bから取得し、FC31aの劣化度AとFC31bの劣化度Bの差を演算する。制御装置としてのFCECUマスタ32は、第1の燃料電池システム100aと、第2の燃料電池システム100bの状態に基づいて、高電圧補機17の接続先を切り替える。第2の実施形態において、第1の燃料電池システム100aと、第2の燃料電池システム100bの状態は、第1の燃料電池システム100aの劣化度Aと、第2の燃料電池システム100bの劣化度Bとの差を含む。
【0078】
図14は、第2の実施形態における高電圧補機17の接続の切り替えの第1の例について示す図である。
図14には、第1の例における高電圧補機17の接続の切り替えのフローチャートが示される。
図15は、第2の実施形態における高電圧補機17の接続状態のイメージ図である。
図15(a)に示すイメージ図は、フローチャートにおけるS52の段階における接続状態のイメージ図を示しており、
図15(b)に示すイメージ図は、フローチャートにおけるS54の段階における接続状態のイメージ図を示している。
【0079】
図15の高電圧補機17の接続状態のイメージ図に示すように、第1の例では、高電圧補機17である荷室用冷凍機17aが、第1の燃料電池システム100aと、第2の燃料電池システム100bのいずれかに接続可能となっている。
図15に示すイメージ図において、第1の燃料電池システム100aのFC31aと、第2の燃料電池システム100bのFC31bの劣化度が示される。本実施形態において、劣化度の数値が大きいことはより劣化が進んでいることを示す。
【0080】
図14のフローチャートにおいて、FC31bの劣化度BからFC31aの劣化度Aを減算した値が、予め定められた値以上である場合(S51:YES)、荷室用冷凍機17aの接続先を、第1の燃料電池システム100aの接続に切り替える(S52)。
【0081】
FC31bの劣化度BからFC31aの劣化度Aを減算した値が、予め定められた値以上でない場合(S51:NO)であって、FC31aの劣化度AからFC31bの劣化度Bを減算した値が、予め定められた値以上である場合(S53:YES)、荷室用冷凍機17aの接続先を、第2の燃料電池システム100bの接続に切り替える(S54)。
【0082】
FC31aの劣化度AからFC31bの劣化度Bを減算した値が、予め定められた値以上でない場合(S53:NO)には、荷室用冷凍機17aの接続先を切り替えない(S55)。
【0083】
図16は、第2の実施形態における高電圧補機17の接続の切り替えの第2の例について示す図である。
図16には、第1の例における高電圧補機17の接続の切り替えのフローチャートが示される。
図17は、第2の実施形態における高電圧補機17の接続状態のイメージ図である。
図17(a)は、
図16のフローチャートにおけるS64の段階における接続状態のイメージ図を示しており、
図17(b)は、
図16のフローチャートにおけるS68の段階における接続状態のイメージ図を示している。
【0084】
図17の高電圧補機17の接続状態のイメージ図に示すように、第2の例では、高電圧補機17である荷室用冷凍機17aが、第1の燃料電池システム100aと、第2の燃料電池システム100bのいずれかに接続可能となっている。
図17に示すイメージ図において、第1の燃料電池システム100aの水素タンクの水素残量および第2の燃料電池システム100bの水素タンクの水素残量が示される。また、第1の燃料電池システム100aのFC31aと、第2の燃料電池システム100bのFC31bの劣化度が示される。本実施形態において、劣化度の数値が大きいことはより劣化が進んでいることを示す。
【0085】
図16のフローチャートにおいて、第1の燃料電池システム100aの水素残量の平均である水素残量Aから、第2の燃料電池システム100bの水素残量の平均である水素残量Bを減算した値が、予め定められた値以上である場合(S61:YES)、荷室用冷凍機17aの接続先を、第1の燃料電池システム100aの接続に切り替える(S62)。第1の燃料電池システム100aの水素残量の平均である水素残量Aから、第2の燃料電池システム100bの水素残量の平均である水素残量Bを減算した値が、予め定められた値以上でない場合(S61:NO)であって、第2の燃料電池システム100bの水素残量の平均である水素残量Bから、第1の燃料電池システム100aの水素残量の平均である水素残量Aを減算した値が、予め定められた値以上である場合(S63:YES)、荷室用冷凍機17aの接続先を、第2の燃料電池システム100bの接続に切り替える(S64)。
【0086】
S61およびS63のいずれもNOである場合であって、FC31bの劣化度BからFC31aの劣化度Aを減算した値が、予め定められた値以上である場合(S65:YES)、燃料電池スタックの劣化度を優先して考慮し、荷室用冷凍機17aの接続先を、第1の燃料電池システム100aの接続に切り替える(S66)。
【0087】
FC31aの劣化度AからFC31bの劣化度Bを減算した値が、予め定められた値以上である場合(S67:YES)、燃料電池スタックの劣化度を優先して考慮し、荷室用冷凍機17aの接続先を、第2の燃料電池システム100bの接続に切り替える(S68)。
【0088】
FC31bの劣化度BからFC31aの劣化度Aを減算した値が、予め定められた値以上でない場合(S65:NO)であって、FC31aの劣化度AからFC31bの劣化度Bを減算した値が、予め定められた値以上でない場合(S67:NO)には、荷室用冷凍機17aの接続先を切り替えない(S69)。
【0089】
以上、第2の実施形態における車両100によれば、第1の燃料電池システム100aのFC31aの劣化度Aおよび第2の燃料電池システム100bのFC31bの劣化度Bを考慮して、高電圧補機17の接続先を切り替える。これにより、第1の燃料電池システム100aおよび第2の燃料電池システム100bの燃料電池スタックの劣化度が均等になるように調整することができ、車両100の航続距離を増加させることができる。
【0090】
また、第2の実施形態における車両100によれば、第1の燃料電池システム100aの水素残量Aおよび第2の燃料電池システム100bの水素残量Bおよび、第1の燃料電池システム100aのFC31aの劣化度Aおよび第2の燃料電池システム100bのFC31bの劣化度Bを考慮して、高電圧補機17の接続先を切り替える。これにより、第1の燃料電池システム100aおよび第2の燃料電池システム100bの水素残量が均等になるように調整すると同時に、燃料電池スタックの劣化度が均等になるように調整することができ、車両100の航続距離を増加させることができる。
【0091】
上記第2の実施形態において、第1の燃料電池システム100aのFC31aの劣化度Aと第2の燃料電池システム100bのFC31bの劣化度Bの差が予め定められた値未満である場合、接続先の燃料電池システムを切り替えた高電圧補機17の接続先を、元の接続先の燃料電池システムに切り替えてもよい。また、劣化度は、FCECUが燃料電池スタックの稼働時間を監視し、稼働時間の長さによって、劣化度の大小を判定するようにしてもよい。
【0092】
図18は、本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。コンピュータ2200にインストールされたプログラムは、コンピュータ2200に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられる操作または当該装置の1または複数のセクションとして機能させることができ、または当該操作または当該1または複数のセクションを実行させることができ、および/またはコンピュータ2200に、本発明の実施形態に係るプロセスまたは当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ2200に、本明細書に記載のフローチャートおよびブロック図のブロックのうちのいくつかまたはすべてに関連付けられた特定の操作を実行させるべく、CPU2212によって実行されてよい。
【0093】
本実施形態によるコンピュータ2200は、CPU2212、RAM2214、グラフィックコントローラ2216、およびディスプレイデバイス2218を含み、それらはホストコントローラ2210によって相互に接続されている。コンピュータ2200はまた、通信インタフェース2222、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226、およびICカードドライブのような入/出力ユニットを含み、それらは入/出力コントローラ2220を介してホストコントローラ2210に接続されている。コンピュータはまた、ROM2230およびキーボード2242のようなレガシの入/出力ユニットを含み、それらは入/出力チップ2240を介して入/出力コントローラ2220に接続されている。
【0094】
CPU2212は、ROM2230およびRAM2214内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ2216は、RAM2214内に提供されるフレームバッファ等またはそれ自体の中にCPU2212によって生成されたイメージデータを取得し、イメージデータがディスプレイデバイス2218上に表示されるようにする。
【0095】
通信インタフェース2222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブ2224は、コンピュータ2200内のCPU2212によって使用されるプログラムおよびデータを格納する。DVD-ROMドライブ2226は、プログラムまたはデータをDVD-ROM2201から読み取り、ハードディスクドライブ2224にRAM2214を介してプログラムまたはデータを提供する。ICカードドライブは、プログラムおよびデータをICカードから読み取り、および/またはプログラムおよびデータをICカードに書き込む。
【0096】
ROM2230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ2200によって実行されるブートプログラム等、および/またはコンピュータ2200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入/出力チップ2240はまた、様々な入/出力ユニットをパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入/出力コントローラ2220に接続してよい。
【0097】
プログラムが、DVD-ROM2201またはICカードのようなコンピュータ可読媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読媒体から読み取られ、コンピュータ可読媒体の例でもあるハードディスクドライブ2224、RAM2214、またはROM2230にインストールされ、CPU2212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ2200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置または方法が、コンピュータ2200の使用に従い情報の操作または処理を実現することによって構成されてよい。
【0098】
例えば、通信がコンピュータ2200および外部デバイス間で実行される場合、CPU2212は、RAM2214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インタフェース2222に対し、通信処理を命令してよい。通信インタフェース2222は、CPU2212の制御下、RAM2214、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROM2201、またはICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ処理領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、またはネットワークから受信された受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ処理領域等に書き込む。
【0099】
また、CPU2212は、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226(DVD-ROM2201)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイルまたはデータベースの全部または必要な部分がRAM2214に読み取られるようにし、RAM2214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU2212は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックする。
【0100】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、およびデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU2212は、RAM2214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプの操作、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM2214に対しライトバックする。また、CPU2212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU2212は、第1の属性の属性値が指定される、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0101】
上で説明したプログラムまたはソフトウェアモジュールは、コンピュータ2200上またはコンピュータ2200近傍のコンピュータ可読媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスクまたはRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ2200に提供する。
【0102】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0103】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0104】
10a 第1のFCユニット
10b 第2のFCユニット
11a FCVCU
11b FCVCU
12a BATTVCU
12b BATTVCU
13a PDU
13b PDU
14a MOT
14b MOT
15a 高電圧補機
15b 高電圧補機
16a IPU
16b IPU
17 高電圧補機
22a,23a,24a 水素タンク
22a,23a,24b 水素タンク
25a,26a,27a 弁
25a,26a,27b 弁
28a 減圧バルブユニット
28b 減圧バルブユニット
29a 配管
29b 配管
32 FCECUマスタ
100a 第1の燃料電池システム
100b 第2の燃料電池システム
100 車両