(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155099
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】作業機システム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20221005BHJP
A01D 34/68 20060101ALI20221005BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
G05D1/02 H
A01D34/68 K
A01B69/00 Z
G05D1/02 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058438
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉野 司
【テーマコード(参考)】
2B043
2B083
5H301
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043BA08
2B043BB11
2B083AA02
2B083BA12
2B083BA15
2B083DA03
2B083HA07
2B083HA32
2B083HA60
5H301AA01
5H301BB01
5H301BB02
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD06
5H301DD17
5H301GG09
5H301QQ01
(57)【要約】
【課題】スケーラブルな芝刈り機を安価に提供する。
【解決手段】所定の作業エリアにおいて作業を行う第一作業機と第二作業機とを含む作業機システムが提供される。第一作業機は、第二作業機の位置を検出する位置検出部と、第二作業機に、第二作業機の位置に応じた走行制御情報を送信する通信部とを有する。第二作業機は、第一作業機に対して位置を表示するための位置表示部と、第一作業機から走行制御情報を受信する通信部と、走行制御情報に基づいて走行を制御する制御部とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の作業エリアにおいて作業を行う第一作業機と第二作業機とを含む作業機システムであって、
前記第一作業機は、
前記第二作業機の位置を検出する第一の位置検出手段と、
前記第二作業機に、前記第二作業機の位置に応じた走行制御情報を送信する通信手段とを有し、
前記第二作業機は、
前記第一作業機に対して位置を表示するための位置表示手段と、
前記第一作業機から前記走行制御情報を受信する受信手段と、
前記走行制御情報に基づいて走行を制御する走行制御手段とを有する
ことを特徴とする作業機システム。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機システムであって、
前記走行制御情報は、前記第二作業機の目標速度と目標旋回角とを含む
ことを特徴とする作業機システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の作業機システムであって、
第一の位置検出手段は、前記位置表示手段による位置の表示を光学的に検出する
ことを特徴とする作業機システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の作業機システムであって、
前記位置表示手段は、所定のパターンを記録したマーカを含む
ことを特徴とする作業機システム。
【請求項5】
請求項4に記載の作業機システムであって、
前記パターンは、前記第二作業機ごとに固有のパターンを含み、
前記第一の位置検出手段は、前記パターンに基づいて前記第二作業機それぞれの位置を検出する
ことを特徴とする作業機システム。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の作業機システムであって、
前記位置表示手段は、所定のパターンを表示する発光部を有する
ことを特徴とする作業機システム。
【請求項7】
請求項6に記載の作業機システムであって、
前記位置表示手段は、前記第一作業機からの指示に応じて発光し、
前記第一の位置検出手段は、前記パターンに基づいて前記第二作業機それぞれの位置を検出する
ことを特徴とする作業機システム。
【請求項8】
請求項3乃至7のいずれか一項に記載の作業機システムであって、
前記位置表示手段は、前記第二作業機の前方または後方の少なくともいずれか一方に対して表示を行い、
前記第一の位置検出手段は、前記第一作業機の前記位置表示手段による表示を検出する
ことを特徴とする作業機システム。
【請求項9】
請求項1または2に記載の作業機システムであって、
前記位置表示手段は、特定の周波数の信号を送信して前記位置の表示を行い、
前記第一の位置検出手段は、前記特定の周波数の信号を検知し、検知した信号に基づいて前記第二作業機の位置を検出する
ことを特徴とする作業機システム。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の作業機システムであって、
前記第一作業機はさらに、
前記第一作業機の位置を検出する第二の位置検出手段と、
前記第二の位置検出手段により検出した位置に基づいて前記第一作業機の走行を制御する走行制御手段とを有する
ことを特徴とする作業機システム。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の作業機システムであって、
前記第一作業機はさらに、作業者による操作に応じて走行を制御する走行制御手段を有する
ことを特徴とする作業機システム。
【請求項12】
所定の作業エリアにおいて作業を行う第一作業機であって、
第二作業機の位置を検出する第一の位置検出手段と、
前記第二作業機に、前記第二作業機の位置に応じた走行制御情報を送信する通信手段とを有する
ことを特徴とする第一作業機。
【請求項13】
所定の作業エリアにおいて作業を行う第二作業機であって、
第一作業機に対して位置を表示するための位置表示手段と、
前記第一作業機から走行制御情報を受信する受信手段と、
前記走行制御情報に基づいて走行を制御する走行制御手段とを有する
ことを特徴とする第二作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業機に関し、特に複数台が連携して動作する芝刈り機等の作業機システムに関する。
【背景技術】
【0002】
芝地の広さに応じて効率的に芝刈りや草刈りを行うために、様々な大きさの芝刈り機あるいは無人芝刈り機が提案され、また市販されている(特許文献1,2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-253720号公報
【特許文献2】特開2020-89336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、大型の芝刈り機は、広い芝地の芝刈りを短時間で行うことができるが高価であり、運搬も簡単にはできない。また狭小な芝地の芝刈りにも不適である。一方小型の芝刈り機は、狭小な芝地には適当であり、安価で運搬も簡単だが、広い芝地の芝刈りには長時間を要し、不適である。
【0005】
本発明は上記従来例に鑑みて成されたもので、より柔軟に運用できる芝刈り機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は以下の構成を有する。すなわち、本発明の一側面によれば、所定の作業エリアにおいて作業を行う第一作業機と第二作業機とを含む作業機システムであって、
前記第一作業機は、
前記第二作業機の位置を検出する第一の位置検出手段と、
前記第二作業機に、前記第二作業機の位置に応じた走行制御情報を送信する通信手段とを有し、
前記第二作業機は、
前記第一作業機に対して位置を表示するための位置表示手段と、
前記第一作業機から前記走行制御情報を受信する受信手段と、
前記走行制御情報に基づいて走行を制御する走行制御手段とを有する
ことを特徴とする作業機システムが提供される。
【0007】
また本発明の他の側面によれば、所定の作業エリアにおいて作業を行う第一作業機であって、
第二作業機の位置を検出する第一の位置検出手段と、
前記第二作業機に、前記第二作業機の位置に応じた走行制御情報を送信する通信手段とを有する
ことを特徴とする第一作業機が提供される。
【0008】
また本発明のさらなる他の側面によれば、所定の作業エリアにおいて作業を行う第二作業機であって、
第一作業機に対して位置を表示するための位置表示手段と、
前記第一作業機から走行制御情報を受信する受信手段と、
前記走行制御情報に基づいて走行を制御する走行制御手段とを有する
ことを特徴とする第二作業機が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、より柔軟に運用できる芝刈り機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係るマスタ作業機およびフォロワ作業機の側面図。
【
図2】マスタ作業機およびフォロワ作業機の制御部を示すブロック図。
【
図4】フォロワ作業機の位置及び姿勢を検知する方法の一例を示す図。
【
図6】作業機の走行制御の手順の一例を示すフローチャート。
【
図7】マスタ作業機によるフォロワ作業機の位置及び姿勢を検知するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
[第一実施形態]
●作業機の構成
本実施形態の作業機は芝刈り機であり、芝刈り機下部に取り付けたカバーのついたブレードを回転させながら前進して芝や雑草を刈り取る。また本実施形態の作業機には、作業機自身が作業地の範囲や作業機の位置を把握して自律的に進路を制御するマスタ作業機と、マスタ作業機による制御の下で作業を遂行するフォロワ作業機とが含まれる。マスタ作業機は単独で作業を行うことができるが、フォロワ作業機は単独では作業できず、それを制御するマスタ作業機が必要である。フォロワ作業機の数を増減することで、狭小な作業地から広大な作業地まで、本実施形態の芝刈り機により対応することができる。マスタ作業機が制御できるフォロワの数はマスタ作業機による制御能力などにより制限されるが、ここでは特に定めない。マスタ作業機とフォロワ作業機により編成される作業機群を作業機システムとも呼ぶ。次に作業機の構成を説明する。
【0013】
図1(A)は、本発明の一実施形態に係るマスタ作業機1の側面図である。本実施形態のマスタ作業機1は、作業地(芝地)を移動しながら芝刈り作業を行う芝刈り機である。しかし、本発明は、除雪機、耕運機、道路舗装機等、他の種類の作業機にも適用可能である。
【0014】
マスタ作業機1は、左右の前輪103と、左右の後輪104とが車体102に支持された四輪車である。左右の後輪104は駆動輪であり、マスタ作業機1を作業地上で移動させる。各後輪104には、モータ104aを駆動源とした駆動機構が設けられ、左右の後輪104は独立して回転制御が行われる。左右の後輪4を独立して回転制御することにより、作業機1の進行方向を制御することができる。左右の前輪103は自由回転自在に設けられている。
【0015】
マスタ作業機1は作業部105を備える。作業部105は作業地の芝刈り作業を行う機構である。作業部105は、回転カッタ105aと、モータ105cを駆動源として回転カッタ105aを略鉛直方向の軸105b回りに回転させる駆動機構とを含む。回転カッタ105aは、作業機1の前後方向で中央部(前輪103と後輪104との間)において車体102の下方に配置されている。本実施形態の回転カッタ105aは、回転方向が正回転、逆回転いずれの場合も芝を切断できるようにブレード(刃)が設けられている。作業部105は回転カッタ105cの上下方向の位置を変化させる昇降機構を備えていてもよい。以上の構成により、前輪103及び後輪104で作業機1を移動させつつ、作業部105により芝刈り作業を行うことができる。
【0016】
車体102の頂部には、ユーザの操作入力を受け付ける操作パネル108が設けられている。操作パネル108には表示部を設けてもよく、操作パネル108としてタッチパネル式ディスプレイを採用してもよい。ユーザは操作パネル108から作業機1の各種の情報の入力を行うことが可能である。また位置を特定するためにGPS受信部101を備えている。特に位置精度の高い方式、たとえばリアルタイムキネマティックGPS(RTK-GPS)などを用いることが望ましい。
【0017】
マスタ作業機1は、その電源としてバッテリ106を備える。バッテリ106はモータ104a及び105c等、マスタ作業機1が備える電気負荷(アクチュエータとも呼ぶ)に電力を供給する。バッテリ106は充電ステーションにおいて充電が可能である。
【0018】
マスタ作業機1の制御のために制御部110が設けられている。これについては
図2で詳述する。マスタ作業機1はさらに、後方から追従する、または前方で先行するフォロワ作業機を検知するための検知部112とフォロワ作業機と通信するための通信部111とを備えている。検知部112は本実施形態ではカメラであり、マスタ作業機1の後方を中心とした所定範囲の画像を撮影する。マスタ作業機1により制御可能なフォロワ作業機は、このカメラの撮影範囲(視野)にあるものとなる。検知部112がカメラである場合には、前方或いは後方のフォロワ作業機2を検知するために、カメラを回転可能に構成し撮影方向を下辺としてもよい。また、360度を撮影範囲とする全方位カメラを備えてもよい。
【0019】
図1(B)はフォロワ作業機2の構成を示す。マスタ作業機1と共通な構成部品については説明を省略し、相違点について説明する。フォロワ作業機2は、マスタ作業機1が有していたGPS受信部101と検知部112とを有していない。これはフォロワ作業機2が自律的に行動せず、また他のフォロワ作業機を制御することがないためである。逆に、フォロワ作業機2は、マスタ作業機1が有さない構成部品として、表示部113を有している。表示部113はマスタ作業機1の検知部111により検知可能にフォロワ作業機2に取り付けられている。本実施形態では検知部113は、本体102の先端部に設けられた発光ダイオード(LED)などにより所定パターンで発光する。作業機は芝地や草地などで作業するので、より検知しやすい本体102の上部に設けてもよい。表示部113はフォロワ作業機2の位置を特定するために用いられるため、位置表示部と呼ぶこともある。ただし位置を直接的に表示しているわけではない。なお本実施形態ではフォロワ作業機2はマスタ作業機1の後方に追従するものとしているが、フォロワ作業機2がマスタ作業機1の前方に位置してもよい。そのため、表示部113は、フォロワ作業機2の前方と後方いずれの方向からの視認できるよう、フォロワ作業機2の上部に備えてもよい。また、フォロワ作業機2の後部表示部113を備えてもよいし、前部と後部の両方に備えてもよい。
【0020】
●作業機の制御構成
さてマスタ作業機1およびフォロワ作業機2は、その動作を制御する制御部110を備える。
図2はそれら作業機の制御部110及び周辺の構成を示したブロック図である。
【0021】
制御部110は、処理部11と、RAM、ROM等の記憶部12と、外部デバイスと処理部11との信号の送受信を中継するインタフェース部(I/F部)13とを含む。処理部11は、CPUに代表されるプロセッサであり、記憶部12に記憶されたプログラムを実行し、方位検知部14で検知した方向や、GPS受信部101で取得した位置情報など、および記憶部12に記憶した地図情報に基づいてモータ104a、105cなどのアクチュエータを制御する。処理部11は駆動回路16を介してアクチュエータの駆動制御を行う。
【0022】
GPS受信部101はGNSSによる位置センサの一例であり、マスタ作業機1の現在の位置を特定するためのセンサである。このほかにも例えば、左右の後輪104の回転量を検知する例えばロータリエンコーダなどのセンサで後輪104の駆動軸の回転量を直接検知したり、モータ104aの出力軸の回転量を検知したりすることで位置を検知してもよい。その場合には基準となる位置、たとえば固定ステーションの位置からの走行距離と方向とを積算することで基準位置に対する現在位置を取得できる。またマスタ作業機1の現在の位置は、作業地内に配置したマーカをカメラ等のセンサで検知し、その検知結果から特定してもよいし、或いは、作業地内に配置したビーコンから無線通信により取得した情報から特定してもよい。もしくはLiDAR(Light Detection and Ranging)の点群と作業機の相対位置関係から自己位置を特定してもよい。
【0023】
GPS受信部101により特定した現在位置に基づいて、マスタ作業機1は、あらかじめ作成されたマップ上をプログラムされたルートに沿って芝刈り作業を実施する。なお、GNSSを使わない方法としてはLiDARを使ったSLAMという位置決定の手法も適用可能である。LiDARは周辺環境からの3次元のレーザー照射光の周辺物体からの反射光を記録できるセンサで、周辺環境(物体)の詳細な3次元点列を取得できる。SLAMを用いることで、このデータをあらかじめ取得した3Dポイントクラウドマップというものと実際に計測したときの点群のマッチングにより自分がどこにいるかを推定できる。一つの手法としてはNDTマッチングという手法がある。この装置と手法を使用することで自己位置を推定し、あらかじめ決められたルートをトレースすることも考えられる。一般的にGNSSを使った方法は、GNSS衛星の信号が受信できるよう空が開けた場所で有効であり、逆にLiDAR-SLAMは周辺に構造物や木などがある環境で有効な手法である。
【0024】
制御部110は、また、バッテリ106を充電する充電回路15を含む。充電回路15は不図示の受電コイルおよび整流ユニットを介して供給される電力により、バッテリ106を充電可能である。
【0025】
制御部110は、また、通信部111を含む。通信部111は、無線通信を介して、あるいは直接的にフォロワ作業機2と通信可能である。これによりマスタ作業機1はフォロワ作業機1に対して動作の制御を行う。動作の制御には、目標速度と目標旋回角の指示および作業部105の駆動及び停止の指示、表示部113による表示の指示を含む。また通信部111は、通信ネットワークを介して、管理サーバと無線通信が可能であってもよい。これによりたとえばマスタ作業機1による作業対象エリアの地図(例えばエリアの境界)をマスタ作業機1に設定することなどができる。また作業地域の境界はたとえば、その輪郭を形成する多角形の頂点の座標を指定することで行える。そのうちの1点を基準点として指定しておけば、基準点に基づいて作業対象領域の境界線を特定することができる。
【0026】
通信部による具体的な通信規格としては、Bluetooth(登録商標)のような短距離ワイヤレス通信や、WifiやLTEなどのワイヤレス通信を用いる。この際通信の方向はマスタ作業機1からフォロワ作業機2への一方向の通信でもいいし、双方向の通信でもよい。マスタ作業機1からフォロワ作業機2への通信パスは必ず必要となる。
【0027】
検知部112は例えば本体102に固定されたカメラであり、マスタ作業機1に対して固定された方向に、固定された視野で映像を撮影できる。検知部112のカメラは固定されているために、その画像内のオブジェクトから、対応する物、特にフォロワ作業機の方向と距離とを特定できる。カメラにより撮影は、所定のフームレートで行われ、フレームレートに応じた画像が取得される。検知対象のフォロワ作業機が他の物、例えば他のフォロワ作業機により遮蔽されないようカメラは高めの位置に設置されることが望ましい。また、マスタ作業機1の旋回中などフォロワ作業機2を後方で検出できないケースも考えられることから、視野の広いカメラ、たとえば全方位カメラを使用することが望ましい。マスタ作業機1の検知部112(カメラ)と制御部110は、フォロワ作業機2の位置や咽喉方向、速度等を検知することから、位置検出部を構成するものといえる。
【0028】
フォロワ作業機2も、マスタ作業機1と共通の構成要素を有する。そこでマスタ作業機1と相違する部分を中心として説明する。通信部111はマスタ作業機1の通信部111と通信する。主としてマスタ作業機1からの走行や作業、表示に関する指示を受信する。もちろん他の情報を受信してもよいし、必要に応じてマスタ作業機1に対して何らかの情報、たとえばフォロワ作業機2の状態などを送信することもできる。
【0029】
表示部113はフォロワ作業機2に固有の構成要素であり、本例では制御部110の制御の下でフォロワ作業機2に固有の情報を表示する。固有の情報はたとえば発光の空間的なパターンで示されてもよいし、時間的なパターンで示されてもよいし、それらの組み合わせであってもよい。またフォロワ作業機2は、マスタ作業機1の有する方位検知部14とGPS受信部101とを有していない。
【0030】
●作業機の編成
図3に、マスタ作業機1と複数のフォロワ作業機2とで編成された作業機群の例を示す。
図3(A)では、マスタ作業機1が編成の先頭に位置し、その左右後方に4台のフォロワ作業機2が位置する例が示されている。これは一例であって、マスタ作業機1の右或いは左側の一方にのみフォロワ作業機2が位置してもよい。また、マスタ作業機1が編成の後方に位置し、その左右前方に4台のフォロワ作業機2が位置してもよい。いずれにしても、刈残しがないように、各作業機による作業範囲が接するか又は一部重複するようにフォロワ作業機2は配置され、前進する。そのために、隣接する作業範囲を担当する作業機は前後にずれて位置する。また、フォロワ作業機2の少なくとも表示部113が、検知部112による検知範囲(例えばカメラの視野)に収まるようにフォロワ作業機2は位置が決められる。この編成あるいは隊列は、作業開始時には作業者により決定されて配置されるが、いったん作業が開始されると、マスタ作業機1によって維持される。
【0031】
図2(B)はマスタ作業機1の検知部112のカメラにより撮影した画像の一例を示す。画像には、
図3(A)のように配置された4台のフォロワ作業機2が収められている。そのうちの一つを例にとれば、その正面には表示部113があり、その中にはLED301が左右に1つずつ所定距離離間して配置されている。後述するようにこのLEDは、一時に1台のみ点灯し、他は消灯している。
【0032】
図3(C)に、マスタ作業機1によるLEDの点灯指示および点灯した光の検知タイミングの一例を示す。マスタ作業機1には予めフォロワ作業機2の数と、各フォロワ作業機のあて先あるいは識別情報(ID)が設定されている。各フォロワ作業機2には、それぞれのあて先あるいは識別情報が設定されている。この例では台数として4が設定されているものとする。4台のフォロワ作業機はそれぞれフォロワ1~フォロワ4と称される。
【0033】
図3(C)に示した通り、マスタ作業機1はフォロワ1~フォロワ4それぞれに対して順次、所定の時間間隔で点灯指示を送信する。自身への点灯指示を受信したフォロワ作業機2は、指示に応じて表示部113のLEDを一定期間点灯する。点灯する期間は、マスタ作業機1が次のフォロワ作業機2に対する点灯指示を送信するまで、またはそれよりも短いものとし、複数のフォロワ作業機による点灯が同時に撮影されることを防ぐ。この点灯期間は予め定めておいてよい。またマスタ作業機1は、点灯指示後、点灯が予想される期間、画像から点灯を検知し、点灯指示したフォロワ作業機2の位置や姿勢を推定する。
【0034】
なおこの例ではフォロワ作業機2は、指示に応じて2つのLEDを同時に点灯し、また消灯するが、これは検知部112がカメラを備えているためである。検知部としてたとえばPSD(Position Sensitive Device:位置検出素子)のような点灯したLEDの方向を検出できる検出器を使ってもよい。この場合マスタ作業機1は各フォロワ作業機2の各LEDについて点灯の指示を出し、指示を受信したフォロワ作業機2は指示されたLEDを点灯及び消灯する。
【0035】
●フォロワの位置及び姿勢の推定
図4に、マスタ作業機1によるフォロワ作業機2の位置及び姿勢を推定する方法の概略を示す。マスタ作業機1は、フォロワ作業機2の2つのLEDの間隔からマスタ-フォロワ間の距離を推定し、2つのLED位置を結ぶ線の上下の傾きからフォロワ作業機2の傾斜(ロール角)を推定する。
【0036】
まず、フォロワ作業機2までの距離については、フォロワ作業機2の表示部113を撮像したとき撮像面上のLED間の距離lcを測定する。カメラの光学系の焦点距離z及び実際の2つのLED301RとLED301Lとの間の距離lwは既知であるから、それら値によりフォロワ作業機2までの距離dmを下式で推定できる。
dm=(lw/lc)z
ここで2つのLEDの中間部をフォロワ作業機2の代表位置Pfとする。マスタ作業機1から代表位置Pfの方位θPfは、撮像面の中央から、撮像面上の2つのLED像の中間位置までの距離をlPfとして、
θPf=tan
-1(lPF/z)
となる。θPfは、
図4(A)においては、点oと代表位置Pfとを結ぶ線と光学中心線とが成す角である。
【0037】
このθPfを用いて点oから点Pfまでの距離dPfを求めると以下のようになる。
dPf=√(dm2+(dm・tan(θPf))2)
これにより、フォロワ作業機2の位置を、距離dPfと方位θPfとによる極軸座標系で特定できる。もちろん直交座標系に変換してもよい。
【0038】
またフォロワ作業機2のロール角θrについては、
図4(B)に示したように撮像素子上のLED像の間の水平距離wと垂直距離hとから以下のように求めることができる。
θr=tan
-1(h/w)
またフォロワ作業機のヨー角については、フォロワ作業機2の代表位置Pf時間変化を観測することで推定する。
図4(C)にその方法の一例を示す。或る時刻tで撮影した画像上の代表点の位置をPf(t)とし、所定時間後の時刻t'で撮影した画像上の代表点の位置をPf(t')とする。フォロワ作業機2の速度はマスタ作業機1により指定されているので、その速度vはマスタ作業機1には既知である。したがって撮影の間に進行した距離dxはv(t'-t)となる。画像上のPf(t)とPf(t')の位置のずれは、マスタ作業機1の進行方向と速度とを基準として、進行方向または速度又はその両方が相違している場合に生じる。ここでは、マスタ作業機1はフォロワ作業機2に対して、マスタ作業機1と同じ速度を指定するものとする。すると画像上のPf(t)とPf(t')の位置のずれは、進行方向のずれすなわちフォロワ作業機2のヨー角にあるものと推定できる。
【0039】
そのような前提のもとに、本実施形態では
図4(A)で説明した要領で中央位置Pf(t)とPf(t')との水平方向の距離dyを推定する。そして前述した距離dxとから以下の式でヨー角θyを推定する。
θy=tan
-1(dy/dx)
ヨー角を推定することで、距離dmを補正することもできる。距離dmの推定は、2つのLED301R,LED301Lとの間の距離に基づいている。しかしフォロワ作業機2のヨー角によってもこの距離は変化する。そのため、実際の距離よりも遠距離を推定値として算出することもあり得る。そのため、
図4(A)で説明した距離dmはdm=(lw/lc)zであったところを、dm'=(lw'/lc)zとし、ここでlw'=lw・cosθyとする。この用の補正することで、フォロワ作業機2のヨー角を補正した距離を推定できる。
【0040】
以上をまとめると、ヨー角の補正を行った場合にはフォロワ作業機1の位置は以下のとおり推定できる。
方位:θPf=tan-1(lPF/z)
距離:dPf=√(dm2+(dm・tan(θPf))2)
ここでdm=(lw・cosθy/lc)z、θy=tan-1(dy/dx)、
ロール角:θr=tan-1(h/w)
ここでw、hはそれぞれ撮像素子上のLED像の間の水平距離と垂直距離、
ヨー角:θy=tan-1(dy/dx)
ここでdy=位置Pf(t)とPf(t')との水平方向の距離、dx=v(t'-t)、vはフォロワ作業機2の速度、tおよびt'は画像撮影時刻である。
【0041】
なおフォロワ作業機2のピッチ角に関しては鉛直方向に離間したLED等のマーカ対を設置する必要がある。しかしながら、通常の運用の際にピッチ角を用いてフォロワ作業機2の制御を行うことはないのでここでは考慮しないものとする。
【0042】
●マスタ作業機による制御
マスタ作業機1は、それ自身は前述したように、その位置と方向とを特定することができ、また作業エリア(作業領域)の地図と設定済みの予定経路とを保持している。したがって、それらの情報に基づいて、予定経路に沿って走行し、また走行しつつ芝の刈り取りを行う。加えてマスタ作業機1はフォロワ作業機2の動作を制御する。マスタ作業機1は、フォロワ作業機2の数及び隊列についても予め設定されている。これはたとえば
図3に例示したようなものである。設定は、予め数及び隊列の候補を用意しておき、作業の管理者がそのうちから適当なものを選択することで行ってよい。マスタ作業機1は、設定された数のフォロワ作業機2による、設定された隊列を維持しながら作業を遂行する。それらの制御について以下に説明する。
【0043】
図6(A)にマスタ作業機1によるマスタ作業機1の走行制御の手順の一例を示す。
図6(A)の手順は特にマスタ作業機1の処理部11により記憶部12に記憶したプログラムを実行することで実現される。これは後述する
図7の手順についても同様である。すなわち処理部11は、走行に関しては走行制御部を構成するものといえる。
【0044】
マスタ作業機1は、現在の位置、速度、進行方向を決定する(S601)。位置はGPS受信部101で受信したGPS信号により決定してよい。速度は左右の車輪それぞれと同軸に設けた不図示のエンコーダにより車輪速を取得し、そこから算出してよい。進行方向は、方向検知部14により取得した方向に基づいてよい。
【0045】
次に地図情報や設定済みの経路情報を参照し、向かうべき方向を決定し、併せて速度も決定する(S603)。速度は例えばあらかじめ設定された速度であってよい。向かうべき方向は設定された経路に従ったものであってよい。
【0046】
最後に、ステップS603で決定した速度で、決定した進行方向へ走行するよう駆動回路16を制御する(S605)。たとえば、現在の進行方向と向かうべき目標方向との差である舵角を決定し、それに合わせて駆動輪である左右の後輪104の回転数を制御する。さらに左右の後輪それぞれの速度の平均が目標速度となるよう左右の後輪104の回転数を制御する。
【0047】
ステップS605における制御をもう少し詳しく説明する。作業機は、左右の後輪104の回転数に差を持たせることで旋回する。このとき低速側の後輪の線速度をV1、高速側の後輪の線速度をV2、左右の後輪の間隔をwとし、速度差Vd=V2-V1とする。作業機が旋回する角速度ωは、tanω=Vd/Wとなるような値である。すなわちω=tan-1(Vd/W)である。ここで進路変更の際の旋回の角速度ωを固定、すなわち左右の後輪の速度差Vdを固定したとする。作業機の進行方向を目標旋回角θだけ変える場合には、時間t=θ/ω=θ/tan-1(Vd/W)だけ、速度差Vdを左右の車輪に与えればよい。なおこの間に作業機の内側すなわち低速側の後輪は単位時間あたり距離V1進行するから、外側すなわち高速側の後輪の回転半径Rは、R=W・(V2/V1)となる。
【0048】
また、作業機の目標速度をVt、現在の速度をVとし、左右それぞれの目標の速度をV1、V2(Vd=V2-V1)であるとする。このとき代表位置(マーク間の中央)の線速度は(V1+V2)/2であり、Vt=(V1+V2)/2である。変化させる速度は現在速度Vに対してVt-Vであり、左右輪の中央をこの速度にするために、左右輪の速度差Vdを左右に割り振ればよい。
【0049】
以上から、目標速度Vt、目標旋回角θとし、目標の速度で目標の進歩に向かうためには、以下のような制御を行えばよい。すなわち、時間t=θ/ω=θ/tan-1(Vd/W)にわたり、カーブの内側の速度を、Vt-(Vd/2)とし、カーブの外側の速度を、Vt+(Vd/2)とするよう後輪104の駆動を制御する。こうすることで、目標の速度で、目標の方向に作業機を向けることができる。
【0050】
なお、後輪の線速度Vは、たとえば駆動モータの回転数Kと後輪の外径rとからV=π・r・Kとして特定できる。したがって、旋回の内側および外側の後輪の回転数をそれぞれK1、K2とすれば、
時間t=θ/ω=θ/tan-1(Vd/W)
にわたり、旋回の内側後輪の回転数を、Vt-(Vd/2)=π・r・K1となるよう、
K1=(Vt-(Vd/2))/(π・r)
とし、旋回の外側後輪の回転数を、Vt+(Vd/2)=π・r・K2となるよう、
K2=(Vt+(Vd/2))/(π・r)
とすればよい。
ここで変数はθおよびVtであり、それ以外の数は予め定めておくことができる。
【0051】
なおここでは旋回の角速度ω(または速度差Vd)を固定したが、旋回する時間tを固定し、時間tで目標の方向に向かうよう作業機の旋回の角速度ω(または速度差Vd)を変化させてもよい。
【0052】
図6(B)はフォロワ作業機2による走行制御の手順の一例を示す。
図6(B)の手順は特にフォロワ作業機2の処理部11により記憶部12に記憶したプログラムを実行することで実現される。
【0053】
フォロワ作業機2は、速度と進行方向とを含む指示(走行制御情報とも呼ぶ)をマスタ作業機1から受信する(S611)。次にフォロワ作業機2は、受信した速度と進行方向とに基づいて駆動回路16を制御する。この制御については
図6(A)のステップS605で説明したと同様の要領でよい。
【0054】
このようにして、マスタ作業機1およびフォロワ作業機2は進行し、また作業を行う。なお、作業については
図6では説明していないが、刈込を行う作業領域ではマスタ作業機1はカッタを駆動し、またカッタを駆動する指示をフォロワ作業機2に送信する。フォロワ作業機2は指示に応じてカッタを駆動し、刈込作業を遂行する。また
図6(A)の手順は所定時間おきに繰り返され、
図6(B)の手順は、マスタ作業機1からの指示の受信の都度繰り返される。
【0055】
理想的にはマスタ作業機1とフォロワ作業機2との関係は
図3(A)に例示したようになっているのが理想的ではある。しかし、実際には車輪のスリップや制御の遅れや検出の誤差などの要因により各フォロワ作業機2の位置や速度、走行方向がばらつくことがあり得る。そこでマスタ作業機1は、フォロワ作業機2の位置や方向を特定し、それを理想的なものへと修正させるための指示を送信する。これが
図6(B)のステップS611で受信する指示である。
【0056】
図7に、マスタ作業機1がフォロワ作業機2に対して指示を送信するための手順の一例を示す。
図7の手順は、本例では
図6(A)の手順とは独立して実行されるものとするが、
図6(A)の手順に続けて行われてもよいし、
図6(A)の前に行われてもよい。
【0057】
まず特定のフォロワ作業機2に着目し、着目フォロワ作業機2の位置、速度、進行方向を特定する(S701)。これは、
図3(B)、
図3(C)で説明した要領で着目フォロワ作業機2にLEDを発光させて特定し、
図4で説明した要領で位置および進行方向を特定すればよい。なお速度に関しては、値を推定してもよいが、この例では指示した速度で走行していることを前提とする。次にそれらの値、及びマスタ作業機1の位置、速度、進行方向等に基づいて、着目フォロワ作業機2に指示する方向と速度とを決定する(S703)。そして決定した方向と速度とを含む指示を着目フォロワ作業機に送信する(S705)。そして以上の工程を、すべてのフォロワ作業機2に対して着目し、繰り返す(S707)。最後のフォロワ作業機2に着目したなら、また先頭から繰り返す。
【0058】
ここでステップS703における決定についてもう少し詳しく説明する。
図5にフォロワ作業機2の位置の修正の概略を示す。フォロワ作業機2は、実線で示した位置にあり進行している。そのときマスタ作業機1は、方向θmと距離dmとをフォロワ作業機2の方向および距離として特定する。しかしながら、設定によれば理想的な位置は、方向θi、距離diの位置である。そこでマスタ作業機1は、その位置へと移動するための方向と速度とをフォロワ作業機2に対して指示する。このとき、指示する方向は、本実施形態では、フォロワ作業機2の現在の進行方向を基準とした方向である。そのため、マスタ作業機1は、フォロワ作業機2の進行方向を特定する必要があるが、この進行方向は、既に説明したように、フォロワ作業機2のヨー角として推定できる。このようにして、マスタ作業機1は、フォロワ作業機2ごとに指示する進行方向と速度とを決定する。
【0059】
以上説明した通り、本実施形態によれば、マスタ作業機によりフォロワ作業機の動作を指示し、フォロワ作業機は指示に応じて動作する。このためフォロワ作業機には自律的に動作するための構成要素が不要となる。フォロワ作業機は、たとえば、自機の位置を特定するための構成や、自機の動作を決定する必要がない。これによりフォロワ作業機を安価に提供できる。さらに安価なフォロワ作業機を追加することによって、作業領域に応じた編成を安価かつ容易に行うことができる。
【0060】
[第二実施形態]
第一実施形態ではマスタ作業機1は自律的に動作する作業機であった。これに対して、マスタ作業機は手動で操作されてもよく、例えば乗用式や手押し式であってもよい。その場合マスタ作業機は地図や自分の位置を把握する機能(GPS受信機等)、また操舵制御や速度制御を自律的に行うための機能を有していなくともよい。これらは作業者が行うためである。しかしながら、フォロワ作業機2の位置や速度、進行方向を特定してそれを制御する機能は本実施形態でもやはり必要となる。
【0061】
[第三実施形態]
第1実施形態では、表示部113にはLEDを採用した。これに対して表示部113に、たとえばArUcoマーカと呼ばれる二次元マーカを表示部113に表示する。このマーカは各フォロワ作業機について固有のパターンを有する。
図8にその例を示す。フォロワ作業機2には、それぞれ固有のパターンを持つマーカが表示部113として装着されている。マスタ作業機1は、検知部112のカメラで撮影した画像から各フォロワ作業機2を認識してその位置および姿勢を検知する。このArUcoマーカを表示部112として使用することで、複数のフォロワ作業機2を同時に検出することができる。したがって本実施形態では、
図7の手順において、ステップS701で撮影した最新の画像から着目フォロワ作業機を特定してもよいし、ステップS701ですべてのフォロワ作業機を特定し、ステップS703とステップS705とを、それぞれのフォロワ作業機に対して繰り返してもよい。また、一つのフォロワ作業機に複数のArUcoマーカを搭載して位置姿勢の測定精度を向上させることも考えられる。どのArUcoマーカがどのフォロワ作業機に搭載されているかという情報はあらかじめユーザインタフェースを介してマスタ作業機1の記憶部12に記録されているものとする。またマーカには、フォロワ作業機を固有に識別するためのマークに加えて、距離を測定するためのマークも含まれてもよい。あるいは、カメラで撮影された着目フォロワ作業機の幅を基準にして距離を推定してもよい。これは第一実施形態についても同様である。
なお本実施形態では、ArUcoマーカを、フォロワ作業機2の前方または後方に位置するマスタ作業機1から検出するために、フォロワ作業機2の前部及び後部の少なくとも2か所に同じマーカを備えてもよい。さらに側方からも検出できるよう左右の側部に同じマーカを備えてもよい。
【0062】
この実施形態によれば、表示部113にはLED等の部品やその制御が必要ないのでより安価にフォロワ作業機を構成できる。
【0063】
[第四実施形態]
芝草刈りの環境では土や芝のゴミによる汚れにより検知部112のカメラや表示部113を覆い隠してしまうことがある。これに対応するために翻字し形態では無線方式の位置認識手法を採用した。無線方式には、Wifi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ビーコン、UWBなどを使った方法がある。これは送信機からの信号を受信器で受けることで送受信機間の距離を検出することができる方式で、受信機を2台用意することで三角測量の原理により方向も検出することができるというものである。近年では1台の受信機で距離と方向まで検出できるものもある。無線方式を用いることで、カメラや表示部が覆われたり汚れたり、あるいはフォロワ作業機により遮られたりしても、フォロワ作業機2の位置や進行方向、速度等を特定することが容易になる。なお電波でフォロワ作業機を特定する場合には、フォロワ作業機ごとに異なる特定の周波数を用いたり、異なる拡散符号を用いるなどして実現できる。
【0064】
●実施形態のまとめ
上記実施形態は以下のシステム及び装置を少なくとも開示する。
【0065】
1.上記実施形態の作業機システムは、
所定の作業エリアにおいて作業を行う第一作業機と第二作業機とを含む作業機システムであって、
前記第一作業機は、
前記第二作業機の位置を検出する第一の位置検出手段と、
前記第二作業機に、前記第二作業機の位置に応じた走行制御情報を送信する通信手段とを有し、
前記第二作業機は、
前記第一作業機に対して位置を表示するための位置表示手段と、
前記第一作業機から前記走行制御情報を受信する受信手段と、
前記走行制御情報に基づいて走行を制御する走行制御手段とを有する
ことを特徴とする作業機システムが提供される。
この構成により、第一作業機は、自律的な制御能力を持たない第二作業機を制御できる。
【0066】
2.上記実施形態の作業機システムでは、
前記走行制御情報は、前記第二作業機の目標速度と目標旋回角とを含む
ことを特徴とする。
この構成により、第二作業機は、第一作業機の指示に応じた速度と方向へ移動できる。
【0067】
3.上記実施形態の作業機システムでは、
第一の位置検出手段は、前記位置表示手段による位置の表示を光学的に検出する
ことを特徴とする。
この構成により、第二作業機の位置を高精度で検知できる。
【0068】
4.上記実施形態の作業機システムでは、
前記位置表示手段は、所定のパターンを記録したマーカを含む
ことを特徴とする。
この構成により、第二作業機をより安価に構成できる。
【0069】
5.上記実施形態の作業機システムでは、
前記パターンは、前記第二作業機ごとに固有のパターンを含み、
前記第一の位置検出手段は、前記パターンに基づいて前記第二作業機それぞれの位置を検出する
ことを特徴とする。
この構成により、パターンから第二の作業機を個別に識別でき、それぞれの位置を推定できる。
【0070】
6.上記実施形態の作業機システムでは、
前記位置表示手段は、所定のパターンを表示する発光部を有する
ことを特徴とする。
この構成により、位置表示手段が汚れるなどして認識しにくい状況であっても、第二作業機の検知が可能となる。
【0071】
7.上記実施形態の作業機システムでは、
前記位置表示手段は、前記第一作業機からの指示に応じて発光し、
前記第一の位置検出手段は、前記パターンに基づいて前記第二作業機それぞれの位置を検出する
ことを特徴とする。
この構成により、パターンから第二作業機を個別に識別でき、それぞれの位置を推定できる。
【0072】
8.上記実施形態の作業機システムでは、
前記位置表示手段は、前記第二作業機の前方または後方の少なくともいずれか一方に対して表示を行い、
前記第一の位置検出手段は、前記第一作業機の前記位置表示手段による表示を検出する
ことを特徴とする。
この構成により、前方の第一作業機が後方または前方の第二作業機を制御し、隊列による作業が可能となる。
【0073】
9.上記実施形態の作業機システムでは、
前記位置表示手段は、特定の周波数の信号を送信して前記位置の表示を行い、
前記第一の位置検出手段は、前記特定の周波数の信号を検知し、検知した信号に基づいて前記第二作業機の位置を検出する
ことを特徴とする。
この構成により、第二作業機を光学的に検知できない環境でも、第一作業機が第二作業機を制御できる。
【0074】
10.上記実施形態の作業機システムでは、
前記第一作業機はさらに、
前記第一作業機の位置を検出する第二の位置検出手段と、
前記第二の位置検出手段により検出した位置に基づいて前記第一作業機の走行を制御する走行制御手段とを有する
ことを特徴とする。
この構成により、第一作業機は自律的に作業でき、さらに第二作業機を制御できるので、作業機の隊列を自律動作させることができる。
【0075】
11.上記実施形態の作業機システムでは、
前記第一作業機はさらに、作業者による操作に応じて走行を制御する走行制御手段を有する
ことを特徴とする。
この構成により、手動で操作される第一作業機により第二作業機を制御できるので、作業機の隊列を自律動作させることができる。
【0076】
12.上記実施形態の第一作業機は、
所定の作業エリアにおいて作業を行う第一作業機であって、
第二作業機の位置を検出する第一の位置検出手段と、
前記第二作業機に、前記第二作業機の位置に応じた走行制御情報を送信する通信手段とを有する
ことを特徴とする。
この構成により、第二作業機を制御して作業させることができる。
【0077】
13.上記実施形態の第二作業機は、
所定の作業エリアにおいて作業を行う第二作業機であって、
第一作業機に対して位置を表示するための位置表示手段と、
前記第一作業機から走行制御情報を受信する受信手段と、
前記走行制御情報に基づいて走行を制御する走行制御手段とを有する
ことを特徴とする。
この構成により、第二作業機は自律的な行動ができなくとも、第一作業機による指示に応じて作業させることができる。
【0078】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 マスタ作業機、2 フォロワ作業機、110 制御部、111 通信部、112 検知部、113 表示部