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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155101
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】演算装置および作業機
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20221005BHJP
   A01B 69/00 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
G05D1/02 H
A01B69/00 Z
G05D1/02 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058440
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉野 司
【テーマコード(参考)】
2B043
5H301
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB06
2B043AB15
2B043BA07
2B043BB11
2B043DA01
2B043DA04
2B043DC03
2B043EB03
2B043EB04
2B043ED01
5H301AA01
5H301BB01
5H301BB02
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG08
5H301GG09
5H301QQ01
(57)【要約】
【課題】複数の作業機が協働して作業を行うシステムにおける作業効率の向上を比較的簡便に実現する。
【解決手段】作業領域の作業を其々が実行可能な複数の作業機についての走行経路を演算する演算装置であって、前記作業領域の地図情報を取得する取得手段と、前記複数の作業機の其々について、作業開始点、作業終了点および其れらの間の1以上の中間点を前記作業領域の外縁部に設定し、前記作業開始点から前記作業終了点までの走行経路を前記1以上の中間点を通過するように前記地図情報上に設定する設定手段と、を備え、前記走行経路は所定幅を有しており、前記複数の作業機に対応する複数の走行経路は、其れらの前記所定幅により前記作業領域を包絡する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業領域の作業を其々が実行可能な複数の作業機についての走行経路を演算する演算装置であって、
前記作業領域の地図情報を取得する取得手段と、
前記複数の作業機の其々について、作業開始点、作業終了点および其れらの間の1以上の中間点を前記作業領域の外縁部に設定し、前記作業開始点から前記作業終了点までの走行経路を前記1以上の中間点を通過するように前記地図情報上に設定する設定手段と、を備え、
前記走行経路は所定幅を有しており、前記複数の作業機に対応する複数の走行経路は、其れらの前記所定幅により前記作業領域を包絡する
ことを特徴とする演算装置。
【請求項2】
前記複数の作業機の1つを親機とし、その他の1以上の作業機を子機として、
前記演算装置は、前記親機の後側方を前記子機が追従するように、又は、前記親機の前側方を前記子機が先行するように、前記親機および前記子機の走行制御を行う制御手段を更に備える
ことを特徴とする請求項1記載の演算装置。
【請求項3】
前記設定手段は、前記複数の作業機の其々が前記作業領域の一方側および他方側の間を往復するための往復路を個々の走行経路が含むように、前記複数の走行経路の其々を設定し、
前記1以上の中間点は、前記往復路の折返し地点に対応する
ことを特徴とする請求項2記載の演算装置。
【請求項4】
前記設定手段は、前記往復路の方向が互いに平行になるように、前記複数の走行経路の其々を設定する
ことを特徴とする請求項3記載の演算装置。
【請求項5】
Nを3以上の整数として、個々の走行経路は第1~第Nの往復路を含み、
前記設定手段は、
第1の往復路および第Nの往復路がカーブ曲線となるように、また、
Kを2~(N-1)の任意の整数として、第Kの往復路が一直線となるように、
前記複数の走行経路の其々を設定する
ことを特徴とする請求項3記載の演算装置。
【請求項6】
Nを4以上の整数として、個々の走行経路は第1~第Nの往復路を含み、
前記設定手段は、
第1の往復路と第2の往復路の方向が、互いに平行になり又は20度以下の範囲内で互いに交差するように、
第(N-1)の往復路と第Nの往復路の方向が、互いに平行になり又は20度以下の範囲内で互いに交差するように、また、
第2の往復路~第(N-1)の往復路が互いに平行になるように、
前記複数の走行経路の其々を設定する
ことを特徴とする請求項3記載の演算装置。
【請求項7】
前記設定手段は、
前記複数の作業機の第1の往復路の方向が20度以下の範囲内で互いに交差するように、
前記複数の作業機の第Nの往復路の方向が20度以下の範囲内で互いに交差するように、また、
Kを2~(N-1)の任意の整数として、前記複数の作業機の第Kの往復路が互いに平行になるように、
前記複数の走行経路の其々を設定する
ことを特徴とする請求項6記載の演算装置。
【請求項8】
前記作業領域の前記一方側および前記他方側の其々の外縁部は曲線を呈しており、
個々の走行経路は、前記往復路間を接続する折返し路を含み、
前記設定手段は、前記折返し路が前記曲線に沿って形成されるように、前記複数の走行経路の其々を設定する
ことを特徴とする請求項3から請求項7の何れか1項記載の演算装置。
【請求項9】
前記設定手段は、前記作業領域の外縁部上に4つの点を選択して前記地図情報上に設定し、前記4つの点のうちの2つは前記一方側の前記曲線の両端に対応し、かつ、前記4つの点のうちの他の2つは前記他方側の前記曲線の両端に対応する
ことを特徴とする請求項8記載の演算装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9の何れか1項記載の演算装置と、
車体を走行させる走行部と、
前記作業を行う作業部と、
前記走行部および前記作業部を駆動する駆動部と、を備える
ことを特徴とする作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2には、複数の作業機の1つ(親機)が他の作業機(子機)を走行制御することにより、其れら複数の作業機で所定の作業を協働して行う作業システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-117313号公報
【特許文献2】特表2001-507843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のシステムにおいては、一般に、作業領域の作業効率の向上のため、個々の作業機の走行経路を設定し、該設定された走行経路に沿って対応の作業機が高精度に走行することが求められる。
【0005】
本発明は、複数の作業機が協働して作業を行うシステムにおける作業効率の向上を比較的簡便に実現することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの側面は演算装置に係り、前記演算装置は、
作業領域の作業を其々が実行可能な複数の作業機についての走行経路を演算する演算装置であって、
前記作業領域の地図情報を取得する取得手段と、
前記複数の作業機の其々について、作業開始点、作業終了点および其れらの間の1以上の中間点を前記作業領域の外縁部に設定し、前記作業開始点から前記作業終了点までの走行経路を前記1以上の中間点を通過するように前記地図情報上に設定する設定手段と、を備え、
前記走行経路は所定幅を有しており、前記複数の作業機に対応する複数の走行経路は、其れらの前記所定幅により前記作業領域を包絡する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る作業システムの構成の一例を示す図。
図2】作業システムによる作業の実行方法の一例を示すフローチャート。
図3】走行経路の設定方法の一例を示すフローチャート。
図4】作業領域に設定された走行経路の一例を示す図。
図5】作業機を駆動制御する方法の一例を示すフローチャート。
図6A】作業機の走行制御の一例を示す図。
図6B】作業機の走行制御の他の例を示す図。
図7】作業領域に設定された走行経路の他の例を示す図。
図8】作業領域に設定された走行経路の他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
(システム構成について)
図1は、実施形態に係る作業システムSYの構成例を示す。作業システムSYは、複数の作業機WMを備えており、本実施形態では3つの作業機WMを備えるものとするが、作業機WMの数は本例に限られない。個々の作業機WMは自走式(無人走行型)の芝刈機とする。複数の作業機WMの1つは親機WMとして機能し、それ以外の他の作業機WMは子機WM及びWMとして機能する。親機WMは、子機WM及びWMに対して信号を出力可能であり、該信号は、本実施形態においては子機WM及びWMを走行制御するための走行指示を含む。子機WM及びWMの其々は、親機WMから走行指示を受け取り、該走行指示に基づいて走行する(以下、単に「走行指示」という場合がある。)。
【0011】
詳細については後述とするが、このような構成により、親機WMは、子機WM及びWMに走行指示を出力することにより、子機WM及びWMと協働して作業領域WR1の作業を行う。ここでは理解の容易化のため矩形形状の作業領域WR1を図示するが、後述のとおり、作業領域WR1は任意の形状であってよい。
【0012】
(親機の構成について)
図1に示されるように、親機WMは、走行部1、作業部2、駆動部3、自機位置特定部4、他機検出部5、送信部6aおよびシステムコントローラ7を備える。
【0013】
走行部1は、親機WMの車体を走行させる。走行部1は、本実施形態では左右一対の駆動輪11および左右一対の従動輪12を含む。例えば、左右一対の駆動輪11が互いに同じ回転数で一方向(前進するための方向)に回転することで親機WMは直進し、また、左右一対の駆動輪11が互いに同じ回転数で他方向(後退するための方向)に回転することで親機WMは後退することができる。左右一対の駆動輪11が互いに異なる回転数で一方向に回転することで親機WMは左旋回または右旋回し、また、左右一対の駆動輪11が互いに同じ回転数かつ互いに異なる方向に回転することで親機WMは超信地旋回を行うこともできる。
【0014】
作業部2は、所定の作業、本実施形態では芝刈作業を実現可能に構成される。作業部2は、芝刈り用ブレード21を含み、該ブレード21の回転により芝刈作業を行う。詳細については後述とするが、ブレード21は略円形の形状を有しており、その直径は作業幅D1に対応する。
【0015】
駆動部3は、走行部1および作業部2を駆動する。具体的には、駆動部3は、左右一対の駆動輪11を個別に回転させる走行用ドライバ31と、ブレード21を回転させる作業用ドライバ32とを含む。作業用ドライバ32は、ブレード21を昇降可能に構成され、作業実行時にはブレード21を降下させて回転させ、作業非実行時にはブレード21を上昇させて該回転を停止させる。
【0016】
自機位置特定部4は、自機(親機WM)の位置を特定可能に構成される。自機位置特定部4には、GPS(Global Positioning System)センサが典型的に用いられうる。他の実施形態として、LiDAR(Light Detection and Ranging)の点群と親機WMとの相対位置関係から自機位置が特定ないし推定されてもよい。このようにして、自機位置特定部4は、親機WMの位置を特定するための位置座標を取得する。位置座標は、典型的には緯度および経度を用いて表現されるが、他の例として、X-Y座標で表現されてもよいし、高低差を考慮してX-Y-Z座標で表現されてもよい。
【0017】
他機検出部5は、自機(親機WM)に対する他機(子機WM及びWMの其々)の相対位置を検出可能に構成される。他機検出部5には、対象物の距離および方向を計測するための測距装置が用いられ、本実施形態ではカメラ、典型的には複眼カメラが用いられるものとする。このようにして、他機検出部5は、親機WMに対する子機WM及びWMの其々の相対位置を検出し、取得する。他の実施形態として、レーダ(ミリ波レーダ)及び/又はLiDAR(Light Detection and Ranging)が他機検出部5として用いられてもよい。
【0018】
詳細については後述とするが、本実施形態においては、子機WM及びWMは親機WMの後側方を追従するため、他機検出部5は、親機WMの車体後方の様子を検出可能に取り付けられるものとする。他の実施形態として、子機WM及びWMは親機WMの前側方を先行してもよく、その場合、他機検出部5は、親機WMの車体前方の様子を検出可能に取り付けられうる。
【0019】
送信部6aは、子機WM及びWMの其々に対して走行指示を送信する。子機WM及びWMの其々は後述の受信部6bにより該走行指示を受信する。尚、親機WM並びに子機WM及びWMが相互に通信可能となるように、送信部6aおよび受信部6bの其々には送受信部が用いられてもよい。
【0020】
システムコントローラ7は、親機WMのシステム全体を制御するための演算装置として機能し、上述の個々の要素の駆動制御を行う。システムコントローラ7は、CPU(Central Processing Unit)71およびメモリ72を含み、CPU71が所定のプログラムをメモリ72上に展開して実行することにより後述の演算処理を行う。システムコントローラ7は、ASIC(特定用途向け集積回路)等の処理回路を備える半導体装置で構成されてもよい。即ち、システムコントローラ7の機能は、ハードウェア及びソフトウェアの何れによっても実現可能である。
【0021】
(子機の構成について)
図1に示されるように、子機WM及びWMの其々は、走行部1、作業部2および駆動部3を親機WM同様に備える他、受信部6bを更に備える。受信部6bは、親機WMの送信部6aから送信された走行指示を受信することができ、これにより、子機WM及びWMの其々は親機WMから該走行指示を受け取る。
【0022】
このような構成により、子機WM及びWMは、親機WMから受け取った走行指示に基づいて親機WMと共に走行し、作業領域WR1の作業を実行する。子機WM及びWMの其々の走行部1、作業部2および駆動部3は、それぞれ、親機WMの走行部1、作業部2および駆動部3と同等の機能を有し、即ち、子機WM及びWMは親機WMと同等の作業能力を有するものとする。本実施形態では、子機WM及びWMの其々は親機WMと同じ速度で親機WMの後側方を追従するように走行し、それにより個々の作業機WMが通過した作業幅D1の領域は作業済となる。他の実施形態として、親機WM並びに子機WM及びWMは親機WMの作業幅D1は互いに異なっていてもよいが、親機WM並びに子機WM及びWMの走行速度は互いに等しいことが好ましい。
【0023】
尚、子機WM及びWMの其々は、自機位置特定部4、他機検出部5、送信部6aおよびシステムコントローラ7を親機WM同様に備えていてもよいが、本実施形態では其れらを備えていないものとする。親機WMは、主作業機、マスタ、リーダー等と表現されてもよいし、また、子機WM及びWMの其々は、副作業機、スレーヴ、フォロワ等と表現されてもよい。
【0024】
(作業の実行方法について)
図2は、作業システムSYによる作業の実行方法を示すフローチャートである。本フローチャートは主にシステムコントローラ7により実行され、その内容は、複数の走行経路R1、R1及びR1を設定し(図4参照)、其れらに基づいて複数の作業機WM、WM及びWMを走行させる、というものである。複数の走行経路R1、R1及びR1は、複数の作業機WM、WM及びWMにそれぞれ対応して設定され、また、以下の説明において特に区別しない場合には単に走行経路R1と表現される。
【0025】
ステップS1000(以下、単に「S1000」という。後述の他のステップについても同様とする。)では、作業開始時刻か否かを判定する。作業開始時刻であった場合(Yes判定の場合)にはS1010に進み、そうでない場合(No判定の場合)にはS1000に戻る。作業開始時刻は、予めユーザにより設定されうる。ここでいうユーザは、典型的には作業システムSYの所有者であるが、一時的に作業システムSYを使用する他の者であってもよい。尚、S1000では、CPU71は判定部として機能すると云える。
【0026】
S1010では、走行経路R1の設定の要否を判定する。走行経路R1の設定が必要な場合(Yes判定の場合)にはS1020に進み、走行経路R1の設定が不要な場合(No判定の場合)にはS1030に進む。走行経路R1の設定が必要な場合の例としては、走行経路R1が未だ設定されていない場合、走行経路R1が既に設定されているが更新が必要な場合等が挙げられる。走行経路R1の設定が不要な場合の例としては、走行経路R1が既に設定されており更新が必要でない場合等が挙げられる。尚、S1010では、CPU71は判定部として機能すると云える。
【0027】
S1020では、走行経路R1(複数の走行経路R1、R1及びR1の其々)を設定する。その詳細については後述とする。尚、S1020では、CPU71は設定部として機能すると云える。
【0028】
S1030では、作業終了時刻か否かを判定する。作業終了時刻であった場合(Yes判定の場合)には本フローチャートを終了とし、そうでない場合(No判定の場合)にはS1040に進む。作業終了時刻は、予めユーザにより設定されうる。尚、S1030では、CPU71は判定部として機能すると云える。
【0029】
S1040では、複数の作業機WMの駆動制御を行って作業領域WR1についての作業を実行する。その詳細については後述とする。尚、S1040では、CPU71は作業実行指示部として機能すると云える。
【0030】
(走行経路の設定方法について)
図3は、S1020の内容(複数の走行経路R1、R1及びR1の設定方法)を示すフローチャートである。本フローチャートの概要は、複数の走行経路R1、R1及びR1を、其々が作業領域WR1の一方側および他方側の間を往復するための往復路を形成するように設定する、というものである(図4参照)。
【0031】
S2000では、作業領域WR1の地図情報inf1を取得する。地図情報inf1は、予めメモリ72に格納され且つメモリ72から読み出すことにより取得されてもよいし、所定のサーバからネットワークを介して取得されてもよい。尚、S2000では、CPU71は取得部として機能すると云える。
【0032】
S2010では、作業開始点P、作業終了点Pおよび其れらの間の1以上の中間点Pを地図情報inf1上に設定し、作業開始点Pから作業終了点Pまでの走行経路R1を、中間点Pを通過するように設定する。尚、S2010では、CPU71は設定部として機能すると云える。
【0033】
作業開始点P、作業終了点Pおよび中間点Pは、複数の作業機WMの其々について作業領域WR1の外縁部に設定される。ここでは作業領域WR1は矩形形状であり、作業開始点P、作業終了点Pおよび中間点Pは作業領域WR1の互いに向かい合う2つの辺部に設定される。これにより、個々の走行経路R1は、対応の作業機WMが作業領域WR1の一方側(辺部E1とする。)および他方側(辺部E2とする。)の間を往復するための往復路r1_1等を形成するように設定される。
【0034】
ここではNを3以上の整数として、N個の往復路が形成されるものとする。第1の往復路、第2の往復路、・・・、第Nの往復路は、図中において、往復路r1_1、往復路r1_2、・・・、往復路r1_Nとそれぞれ示される。また、Kを1~Nの任意の整数として、親機WM、子機WM及び子機WMに対応する第Kの往復路r1_Kは、往復路r10_K、r11_K及びr12_Kとそれぞれ示される。中間点Pは往復路の折返し地点に対応し、その数量は(N-1)×2となる。
【0035】
尚、連続する2つの往復路間を接続する走行路を折返し路r2とし、複数の作業機WMの折返し路r2は、ここでは見易くするために互いに重ならないように図示するが、其れらは互いに重なっているとよい。
【0036】
図4に示されるように、作業開始点Pについて:
親機WMに対応するものは、作業開始点P0と示され;
子機WMに対応するものは、作業開始点P1と示され;及び
子機WMに対応するものは、作業開始点P2と示される。
【0037】
また、作業終了点Pについて:
親機WMに対応するものは、作業終了点P0と示され;
子機WMに対応するものは、作業終了点P1と示され;及び
子機WMに対応するものは、作業終了点P2と示される。
【0038】
また、中間点Pについて:
親機WMに対応するものは、中間点P0と示され;
子機WMに対応するものは、中間点P1と示され;及び
子機WMに対応するものは、中間点P2と示される。ここで、説明の便宜上、mを1~(N-1)×2の任意の整数として、親機WM、子機WM及び子機WMに対応する中間点P_mは、中間点P0_m、P1_m及びP2_mとそれぞれ示されうる。
【0039】
本フローチャートによれば、複数の走行経路R1、R1及びR1を、其々が往復路r10_K、r11_K及びr12_Kを形成するように、地図情報inf1上に設定可能である(Kは、1~Nの任意の整数とする。)。往復路r10_K、r11_K及びr12_Kの其々は作業幅D1を有するため、其れらにより形成される往復路r1_Kの幅は好適にはD1×3で設定され、作業領域WR1のサイズによってはD1×3以下で設定されればよい。
【0040】
本実施形態においては、往復路r1_Kの幅は、K=2~(N-1)についてはD1×3で設定され、並びに、K=1及び/又はK=NについてはD1×3又は其れより小さく設定されうる。
【0041】
図4の例では、往復路r1_Kの方向を往復方向とし、それと交差(実質的に直行)する方向を折返し方向とし、また、作業領域WR1の折返し方向のサイズをL1とする。このとき、L1÷(D1×3)の余剰は往復路r1_1及びr1_Nの一方又は双方により行われればよい。本例では、作業開始点P及び作業終了点Pは、何れも作業領域WR1の辺部E1に設定されるものとする。作業開始点P及び作業終了点Pは、辺部E1及びE2の何れに設定されてもよく、辺部E1及びE2の一方に固定的に設定されてもよい。その態様に応じて、往復路r1_1及びr1_Nの双方がD1×3未満の作業幅で行われてもよい。
【0042】
上述の方法によれば、走行経路R1は所定幅を有し、複数の作業機WM、WM及びWMに対応する複数の走行経路R1、R1及びR1は、其れらの幅により作業領域WR1を包絡するように設定可能である。この場合、複数の走行経路R1、R1及びR1が互いに重複する部分が作業領域WR1の辺部E1及びE2のみに留まると共に作業領域WR1全体を一様に作業可能となり、作業領域WR1の作業効率を向上可能となる。
【0043】
尚、ここでは理解の容易化のため作業領域WR1を矩形形状とした。この場合、上述の往復路は、其れらの方向が互いに平行になるように設定される。詳細については後述とするが、本例の内容は他の形状の作業領域WR1においても適用可能である。
【0044】
(作業領域を作業する際の複数の作業機の駆動制御について)
図5は、S1040の内容(複数の作業機WMを駆動制御する方法)を示すフローチャートである。本フローチャートの概要は、親機WMの後側方を子機WM及びWMが追従するように複数の作業機WM、WM及びWMの其々の走行制御を行う、というものである。
【0045】
S3000では、子機WM及びWMを停止させつつ親機WMを走行させる。親機WMの走行制御は走行経路R1に基づいて行われる。親機WMの作業部2は親機WMの走行部1と共に駆動される。尚、S3000では、CPU71は制御部(或いは、走行制御部、走行指示部等)として機能すると云える。
【0046】
S3010では、親機WMが子機WM及びWMから所定距離だけ先行した後に子機WM及びWMの走行を開始させる。子機WMの走行制御は走行経路R1に基づいて行われ、また、子機WMの走行制御は走行経路R1に基づいて行われる。子機WM及びWMの作業部2は、それぞれ子機WM及びWMの走行部1と共に駆動される。尚、S3010では、CPU71は制御部として機能すると云える。
【0047】
前述のとおり、子機WM及びWMは親機WMからの走行指示により実現される。よって、S3010において子機WM及びWMが走行を開始する位置は、少なくとも走行中の親機WMから走行指示を受取り可能な位置であればよい。また、詳細については後述とするが、其れら走行指示は、自機位置特定部4の特定結果および他機検出部5の検出結果に基づいて補正されうる。
【0048】
S3020では、親機WMが作業終了点P0に到達したか否かを判定する。親機WMが作業終了点P0に到達していた場合(Yes判定の場合)にはS3100に進み、そうでない場合(No判定の場合)にはS3030に進む。尚、S3020では、CPU71は判定部として機能すると云える。
【0049】
S3030では、親機WMが中間点P0に到達したか否かを判定する。親機WMが中間点P0に到達していた場合(Yes判定の場合)にはS3040に進み、そうでない場合(No判定の場合)にはS3060に進む(詳細については後述とするが、作業機WM、WM及びWMの走行制御を維持する。)。尚、S3030では、CPU71は判定部として機能すると云える。
【0050】
S3040では、子機WM及びWMをそれぞれ中間点P1及びP2前にて一時的に待機させながら、親機WMを中間点P0(例えばP0_m)にて旋回させた後、次の中間点P0(例えばP0_(m+1))まで走行させる(図6A参照)。子機WM及びWMの待機位置は、少なくとも走行中の親機WMから走行指示を受取り可能かつ親機WMが子機WM及びWMに干渉しない位置であればよい。尚、S3040では、CPU71は制御部として機能すると云える。
【0051】
S3050では、親機WMを旋回させて走行経路R1に沿って走行させる(図6B参照)。これと略同時に、子機WMを中間点P1(例えばP1_m)まで走行させて旋回させた後、次の中間点P1(例えばP1_(m+1))まで走行させる。また、これと略同時に、子機WMを中間点P2(例えばP2_m)まで走行させて旋回させた後、次の中間点P2(例えばP2_(m+1))まで走行させる。子機WM及びWMの走行制御は、親機WM並びに子機WM及びWMが互いに干渉しないように、親機WMが中間点P0から所定距離だけ先行した後に行われてもよい。また、子機WM及びWMの走行制御は、子機WM及びWMが互いに干渉しないように行われればよく、順番に行われてもよいし、略同時に行われてもよい。尚、S3050では、CPU71は制御部として機能すると云える。
【0052】
S3060では、走行経路R1、R1及びR1に基づいて作業機WM、WM及びWMを走行させ、S3020に戻る(即ち、作業機WM、WM及びWMの走行制御を維持する。)。尚、S3060では、CPU71は制御部として機能すると云える。
【0053】
S3100では、S3020にて親機WMが作業終了点P0に到達したことに応じて、親機WMを所定位置に退避させつつ、子機WM及びWMを作業終了点P1及びP2まで走行させる。親機WMの退避位置は、子機WM及びWMが親機WMに干渉しない位置であればよく、作業領域WR1外であってよい。尚、S3100では、CPU71は制御部として機能すると云える。
【0054】
本フローチャートによれば、作業機WM、WM及びWMは、親機WMの後側方を子機WM及びWMが追従するように、走行制御される。本実施形態では、親機WMの後側方の一方(後左側方)を子機WMが追従し、他方(後右側方)を子機WMが追従するものとしたが、他の実施形態として、親機WMの後側方の一方又は他方を子機WM及びWMの双方が追従することとしてもよい。更に他の実施形態として、親機WMの前側方の一方(前左側方)を子機WMが先行し且つ他方(前右側方)を子機WMが先行することとしてもよいし、親機WMの前側方の一方又は他方を子機WM及びWMの双方が先行することとしてもよい。また、親機WMに対する子機WM及びWMの相対位置は、複数の往復路r1_1等の一部において(例えば、往路と復路とで)変更されてもよい。
【0055】
(子機の走行制御の方法について)
前述のとおり、子機WM及びWMは、自機位置特定部4および他機検出部5を備えておらず、親機WMから受け取った走行指示に基づいて走行する。そのため、図5のフローチャートにおいて、親機WMは、子機WM及びWMに出力する走行指示を、子機WM及びWMの実際の走行態様に基づいて補正可能とする。
【0056】
前述のとおり、親機WMは、自機位置特定部4であるGPSセンサにより、地図情報inf1上における親機WMの位置座標を取得することができ、その結果は地図情報inf1上に対応付けられる。また、親機WMは、他機検出部5である測距装置により、子機WM及びWMの個々について親機WMとの相対位置(距離および方向)を取得することができ、子機WM及びWMの個々の実際の位置は親機WMに対する相対位置に基づいて特定される。即ち、子機WM及びWMの個々の位置座標は、自機位置特定部4の特定結果および他機検出部5の検出結果に基づいて算出可能である。この観点で、自機位置特定部4および他機検出部5は、子機WM及びWMの個々の実際の位置を特定するための特定部として機能する、と云える。
【0057】
以上のようにして、親機WMから子機WMに出力される走行指示は子機WMの実際の位置座標に基づいて補正され、親機WMから子機WMに出力される走行指示は子機WMの実際の位置座標に基づいて補正されうる。
【0058】
本実施形態では、子機WM及びWMの個々には所定のマーク、本実施形態ではQRコード(登録商標)が設けられているものとする。これにより、親機WMは子機WM及びWMを個別に識別可能となり、例えば、子機WM及びWMに出力される走行指示および其れらの補正内容が錯綜することを防止することができる。
【0059】
子機WM及びWMに設けられるマークは、其れらを個別に識別可能なものであればよく、QRコードに代替して、文字、数字、記号、其れらに付された色、或いは、其れらの組み合わせが用いられてもよい。
【0060】
(他の外形の作業領域の場合の走行経路について)
上述の実施形態においては理解の容易化のため、平面視において矩形形状の外形を有する作業領域WR1を例示したが、作業領域WR1は多様な外形を有しうる。そのような場合においても、個々の走行経路R1は、図3のフローチャートに基づいて、対応の作業機WMが作業領域WR1の一方側および他方側の間を往復するための往復路r1_1等を形成するように設定可能である。
【0061】
‐第1の例:任意の四角形形状の作業領域
図7は、第1の例に係る作業領域WR1を示す。本例においては、互いに対向する作業領域WR1の辺部E1及びE2は平行でなく、また、其れらを接続する他の辺部E3及びE4は平行でないものとする。
【0062】
辺部E1及びE2が成す角を角θ12(<90度)とし、辺部E3及びE4が成す角を角θ34(<90度)とし、また、θ12>θ34とする。この場合、作業効率の向上の観点では、往復路r1_1等は、其れらの方向が辺部E3及びE4に沿うように設定されることが好ましいが、其れらの方向が辺部E1及びE2に沿うように設定されてもよい。
【0063】
また、辺部E1及びE2間の距離を距離L12とし、辺部E1及びE2間の距離を距離L34とし、また、L12<L34とする。この場合、作業効率の向上の観点では、往復路r1_1等は、其れらの方向が辺部E3及びE4に沿うように設定されることが好ましいが、其れらの方向が辺部E1及びE2に沿うように設定されてもよい。
【0064】
走行経路R1が含むN個の往復路(往復路r1_1、r1_2、・・・、r1_N)について、本実施形態ではNを4以上の整数とする。往復路r1_2からr1_(N-1)は、互いに平行になるように設定されるとよい。このとき、Kを2~(N-1)の任意の整数として、往復路r10_K、r11_K及びr12_Kは互いに平行になるように設定される。
【0065】
一方、往復路r1_1及びr1_2は、其れらの方向が互いに平行になり又は20度以下の範囲内で互いに交差するように設定されるとよい。このとき、往復路r10_2、r11_2及びr12_2は互いに平行になるように設定されるのに対して、往復路r10_1、r11_1及びr12_1は20度以下の範囲内で互いに交差するように設定されうる。付随的に、往復路r10_1、r11_1及びr12_1のうち、往復路r1_2に最も近い1つ(ここでは往復路r12_1)は往復路r1_2と平行となるように設定されうる。
【0066】
また、往復路r1_(N-1)及びr1_Nは、其れらの方向が互いに平行になり又は20度以下の範囲内で互いに交差するように設定されるとよい。このとき、往復路r10_(N-1)、r11_(N-1)及びr12_(N-1)は互いに平行になるように設定されるのに対して、往復路r10_N、r11_N及びr12_Nは20度以下の範囲内で互いに交差するように設定されうる。付随的に、往復路r10_N、r11_N及びr12_Nのうち、往復路r1_2に最も近い1つ(ここでは往復路r11_N)は往復路r1_(N-1)と平行となるように設定されうる。
【0067】
また、折返し路r2は、親機WM、子機WM及び子機WMの其々について、辺部E1又はE2に沿って設定される。
【0068】
本例の場合、複数の作業機WMによる作業幅(≦D1×3)は、往復路r1_1においては作業開始点P側と中間点P側とで互いに異なり、また、往復路r1_Nにおいては作業終了点P側と中間点P側とで互いに異なることとなる。このような場合、例えば、作業開始点Pにおいて複数の作業機WMが互いに干渉する可能性がある。そのため、其れらの一部/全部は、互いに異なるタイミングで作業開始点Pにて作業の開始を待機することとすればよい。
【0069】
本例によれば、作業領域WR1が任意の四角形形状であっても走行経路R1を設定可能であり、作業領域WR1の作業効率を向上可能となる。
【0070】
‐第2の例:曲線形状の外形を有する作業領域
図8は、第2の例に係る作業領域WR1を示す。本例においては、作業領域WR1の外縁部は曲線を呈する。このような場合、作業領域WR1を仮想的に4つの角部を有する四角形形状として演算処理することにより、走行経路R1を設定することが可能となる。本例では、4つの点Pa、Pb、Pc及びPdが上記角部として作業領域WR1の外縁部上に設定される。点Pa、Pb、Pc及びPdは、図3のフローチャートを実現可能となるように地図情報inf1上に設定されればよい。
【0071】
点Pa‐Pb間の縁部は、辺部E1に関連付けられる(縁部E1とする。)。点Pc‐Pd間の縁部は、辺部E2に関連付けられる(縁部E2とする。)。点Pa‐Pc間の縁部は、辺部E3に関連付けられる(縁部E3とする。)。また、点Pb‐Pd間の縁部は、辺部E4に関連付けられる(縁部E4とする。)。
【0072】
換言すると、作業領域WR1の外縁部上に選択された4つの点Pa、Pb、Pc及びPdのうち、2つ(ここでは点Pa及びPb)は、作業領域WR1の一方側の曲線の両端に対応する。また、他の2つ(ここでは点Pc及びPd)は、作業領域WR1の他方側の曲線の両端に対応する。
【0073】
ここで、縁部E1及びE2の其々において互いに隣り合う2つの中間点P間を接続する走行路、即ちN個の往復路(往復路r1_1、r1_2、・・・、r1_N)間を接続する走行路、を折返し路r2とする。図中において、親機WM、子機WM及び子機WMに対応する折返し路r2は、折返し路r20、r21及びr22とそれぞれ示される。このとき、折返し路r20、r21及びr22の其々は、縁部E1又はE2の曲線に沿って設定される(図中には縁部E2の模式拡大図を示すが、縁部E1についても同様である。)。
【0074】
一方、往復路r1_1は縁部E3の曲線に沿って設定される。この場合、往復路r10_1、r11_1及びr12_1は、点Pa又はPcに近いほど互いに近接し且つ点Pa及びPcから遠いほど互いに離間するように、設定される。即ち、往復路r10_1、r11_1及びr12_1はカーブ曲線を描く。付随的に、往復路r10_1、r11_1及びr12_1のうち、往復路r1_2に最も近い1つ(ここでは往復路r12_1)は比較的小さい曲率を有し、往復路r1_2と実質的に平行となるように設定されうる。
【0075】
同様に、往復路r1_Nは縁部E4の曲線に沿って設定される。この場合、往復路r10_N、r11_N及びr12_Nは、点Pb又はPdに近いほど互いに近接し且つ点Pb及びPdから遠いほど互いに離間するように、設定される。即ち、往復路r10_N、r11_N及びr12_Nはカーブ曲線を描く。付随的に、往復路r10_N、r11_N及びr12_Nのうち、往復路r1_2に最も近い1つ(ここでは往復路r11_N)は比較的小さい曲率を有し、往復路r1_(N-1)と平行となるように設定されうる。
【0076】
本例の場合、子機WM1は、作業開始点PPから最初の中間点PR_1を介して2番目の中間点PR_2に到達するまでの間、曲線の外縁部E3及びE2に沿って走行することとなる。同様に、子機WM2は、最後から2番目の中間点PR_((N-1)×2-1)から最後の中間点PR_((N-1)×2)を介して作業終了点PQに到達するまでの間、曲線の外縁部E2及びE4に沿って走行することとなる。
【0077】
また、往復路r1_2~r1_(N-1)は前述の第1の例同様に設定される。即ち、Kを2~(N-1)の整数として、往復路r10_K、r11_K及びr12_Kは一直線を描く。
【0078】
本例によれば、作業領域WR1が曲線を有する形状であっても走行経路R1を比較的簡便に設定可能となり、作業領域WR1の作業効率を向上可能となる。
【0079】
‐応用例
上述の第1~第2の例の一部/全部は組合せ可能であり、作業領域WR1が多角形の外形を有し或いは辺部の一部/全部が曲線を有する場合においても個々の走行経路R1を設定可能である。例えば、作業領域WR1が多角形の外形を有する場合には、複数の辺部のうち、互いに対向し且つ比較的平行な2つを選択して、其れらの間を往復するための往復路r1_1を設定することにより、走行経路R1を適切に設定可能となる。その際、作業開始点P、作業終了点P及び中間点Pは角部に設定されなくてもよい。同様に、作業領域WR1の外形の全部が曲線の場合には、その周縁部のうち、互いに対向し且つ比較的平行な2つの部分を選択して、其れらの間を往復するための往復路r1_1を設定することにより、走行経路R1を適切に設定可能となる。
【0080】
よって、以上の実施形態によれば、任意の外形の作業領域WR1について、走行経路R1を、対応の作業機WMが作業領域WR1の一方側および他方側の間を往復するための往復路r1_1等を形成するように設定可能である。このようにして設定された走行経路R1によれば、任意の外形の作業領域WR1の作業を複数の作業機WMにより協働で実現可能となり、また、その作業効率を向上可能となる。
【0081】
(その他)
前述のとおり、システムコントローラ7の機能は、ハードウェア及びソフトウェアの何れによっても実現可能である。よって、各実施形態では各ステップの内容がCPU71により実現されるものとしたが、システムコントローラ7の機能は処理回路により実現されてもよい。この場合、システムコントローラ7は、各ステップを実現する回路部を備えてもよく、例えば、SIP(System in Package)として構成されてもよいし、複数の半導体パッケージが実装基板上に実装されて構成されていてもよい。
【0082】
また、システムコントローラ7は、実施形態においては親機WMに設けられることとしたが、他の実施形態として、親機WM外に設けられてもよく、例えば、作業領域WR1から離れた場所に設けられてもよい。この場合、親機WMは、システムコントローラ7とネットワークを介して通信可能に構成され、通信により受け取った上述の走行経路R1に基づいて親機WM本体の走行制御を行い且つ子機WM及びWMに走行指示を出力すればよい。
【0083】
以上の説明においては、理解の容易化のため、各要素をその機能面に関連する名称で示したが、各要素は、実施形態で説明された内容を主機能として備えるものに限られるものではなく、それを補助的に備えるものであってもよい。よって、各要素は、その表現に厳密に限定されるものではなく、その表現は同様の表現に置換え可能とする。同様の趣旨で、「装置(apparatus)」という表現は、「部(unit)」、「部品(component, piece)」、「部材(member)」、「構造体(structure)」、「組立体(assembly)」等に置換されてもよいし或いは省略されてもよい。
【0084】
(実施形態のまとめ)
実施形態の幾つかの特徴は、親機WMの観点で次のように小括される:
第1の態様は作業機(例えばWM)に係り、前記作業機は、
自機を親機(例えばWM)とし且つ他機を子機(例えばWM、WM)として該子機に走行指示を出力することにより該子機と協働して作業領域(例えばWR1)の作業を実行可能な作業機であって、
前記親機および前記子機のそれぞれの走行経路(例えばR1)を地図情報(例えばinf1)上に設定する設定部(例えばS2010)と、
前記子機に前記走行指示を出力しつつ前記親機である前記自機の走行制御を行うことにより前記子機と共に作業を行う制御部(例えばS1040)と、
前記子機の実際の位置を特定する特定部(例えば4、5)と、を備え、
前記制御部は、前記設定部により設定された前記走行経路における前記子機の前記地図情報上の位置と、前記特定部により特定された前記子機の実際の位置と、の差に基づいて前記走行指示を補正する
ことを特徴とする。これにより、複数の作業機が協働して作業を行うシステムにおける作業効率の向上を比較的簡便に実現することができる。
【0085】
第2の態様では、
GPSセンサ(例えば4)を更に備える
ことを特徴とする。これにより、上述の第1の態様を適切に実現可能となる。
【0086】
第3の態様では、
前記特定部は、前記GPSセンサの検出結果を前記地図情報上に対応付け、前記子機の実際の位置を前記親機である前記自機との相対位置に基づいて特定する
ことを特徴とする。これにより、上述の第2の態様を適切に実現可能となる。
【0087】
第4の態様では、
前記親機である前記自機に対する前記子機の相対位置を計測するための測距装置(例えば5)を更に備え、
前記特定部は、前記測距装置の結果に基づいて前記子機の実際の位置を特定する
ことを特徴とする。これにより、上述の第3の態様を適切に実現可能となる。
【0088】
第5の態様では、
前記測距装置はカメラを含む
ことを特徴とする。これにより、上述の第4の態様を適切に実現可能となる。
【0089】
第6の態様では、
前記子機には所定のマークが設けられており、
前記特定部は、前記マークに基づいて前記子機の実際の位置を特定する
ことを特徴とする。これにより、上述の第5の態様を適切に実現可能となる。
【0090】
第7の態様では、
前記マークはQRコードである
ことを特徴とする。これにより、上述の第6の態様を適切に実現可能となる。
【0091】
第8の態様では、
前記測距装置はレーダ及び/又はLiDARを含む
ことを特徴とする。これにより、上述の第4の態様を適切に実現可能となる。
【0092】
第9の態様では、
前記子機にはGPSセンサが設けられておらず、前記制御部は該子機に前記走行指示を出力する
ことを特徴とする。これにより、上述の第1の態様を適切に実現可能となる。
【0093】
第10の態様では、
前記制御部は、前記親機の後側方を前記子機が追従するように、又は、前記親機の前側方を前記子機が先行するように、前記子機に前記走行指示を出力しつつ前記親機である前記自機の前記走行制御を行う
ことを特徴とする。これにより、上述の第1の態様を適切に実現可能となる。
【0094】
また、実施形態の他の幾つかの特徴は、親機WMに搭載可能な演算装置としてのシステムコントローラ7の観点で次のように小括される:
第1の態様は演算装置(例えば7)に係り、前記演算装置は、
作業領域(例えばWR1)の作業を其々が実行可能な複数の作業機(例えばWM)についての走行経路を演算する演算装置であって、
前記作業領域の地図情報(例えばinf1)を取得する取得手段(例えばS2000)と、
前記複数の作業機の其々について、作業開始点(例えばP)、作業終了点(例えばP)および其れらの間の1以上の中間点(例えばP)を前記作業領域の外縁部に設定し、前記作業開始点から前記作業終了点までの走行経路(例えばR1)を前記1以上の中間点を通過するように前記地図情報上に設定する設定手段(例えばS2010)と、を備え、
前記走行経路は所定幅(例えばD1)を有しており、前記複数の作業機に対応する複数の走行経路は、其れらの前記所定幅により前記作業領域を包絡する
ことを特徴とする。これにより、複数の作業機が協働して作業を行うシステムにおける作業効率の向上を比較的簡便に実現することができる。
【0095】
第2の態様では、
前記複数の作業機の1つを親機(例えばWM)とし、その他の1以上の作業機を子機(例えばWM及びWM)として、
前記演算装置は、前記親機の後側方を前記子機が追従するように、又は、前記親機の前側方を前記子機が先行するように、前記親機および前記子機の走行制御を行う制御手段(例えばS1040)を更に備える
ことを特徴とする。これにより、上述の第1の態様を適切に実現可能となる。
【0096】
第3の態様では、
前記設定手段は、前記複数の作業機の其々が前記作業領域の一方側および他方側の間を往復するための往復路(例えばr1_1等)を個々の走行経路が含むように、前記複数の走行経路の其々を設定し、
前記1以上の中間点は、前記往復路の折返し地点に対応する
ことを特徴とする。これにより、上述の第2の態様を適切に実現可能となる。
【0097】
第4の態様では、
前記設定手段は、前記往復路の方向が互いに平行になるように、前記複数の走行経路の其々を設定する
ことを特徴とする。これにより、上述の第3の態様を適切に実現可能となる。
【0098】
第5の態様では、
Nを3以上の整数として、個々の走行経路は第1~第Nの往復路を含み、
前記設定手段は、
第1の往復路および第Nの往復路がカーブ曲線となるように、また、
Kを2~(N-1)の任意の整数として、第Kの往復路が一直線となるように、
前記複数の走行経路の其々を設定する
ことを特徴とする。これにより、上述の第3の態様を適切に実現可能となる。
【0099】
第6の態様では、
Nを4以上の整数として、個々の走行経路は第1~第Nの往復路を含み、
前記設定手段は、
第1の往復路と第2の往復路の方向が、互いに平行になり又は20度以下の範囲内で互いに交差するように、
第(N-1)の往復路と第Nの往復路の方向が、互いに平行になり又は20度以下の範囲内で互いに交差するように、また、
第2の往復路~第(N-1)の往復路が互いに平行になるように、
前記複数の走行経路の其々を設定する
ことを特徴とする。これにより、上述の第3の態様を適切に実現可能となる。
【0100】
第7の態様では、
前記設定手段は、
前記複数の作業機の第1の往復路の方向が20度以下の範囲内で互いに交差するように、
前記複数の作業機の第Nの往復路の方向が20度以下の範囲内で互いに交差するように、また、
Kを2~(N-1)の任意の整数として、前記複数の作業機の第Kの往復路が互いに平行になるように、
前記複数の走行経路の其々を設定する
ことを特徴とする。これにより、上述の第6の態様を適切に実現可能となる。
【0101】
第8の態様では、
前記作業領域の前記一方側および前記他方側の其々の外縁部は曲線を呈しており、
個々の走行経路は、前記往復路間を接続する折返し路(例えばr2)を含み、
前記設定手段は、前記折返し路が前記曲線に沿って形成されるように、前記複数の走行経路の其々を設定する
ことを特徴とする。これにより、上述の第3の態様を適切に実現可能となる。
【0102】
第9の態様では、
前記設定手段は、前記作業領域の外縁部上に4つの点(例えばPa、Pb、Pc、Pd)を選択して前記地図情報上に設定し、前記4つの点のうちの2つ(例えばPa、Pb)は前記一方側の前記曲線の両端に対応し、かつ、前記4つの点のうちの他の2つ(例えばPc、Pd)は前記他方側の前記曲線の両端に対応する
ことを特徴とする。これにより、上述の第8の態様を適切に実現可能となる。
【0103】
第10の態様では、
請求項1から請求項9の何れか1項記載の演算装置(例えば7)と、
車体を走行させる走行部(例えば1)と、
前記作業を行う作業部(例えば2)と、
前記走行部および前記作業部を駆動する駆動部(例えば3)と、を備える
ことを特徴とする。即ち、上述の演算装置は典型的な作業機に適用可能である。
【0104】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0105】
WM:作業機、WM:親機、WM及びWM:子機、1:走行部、2:作業部、3:駆動部、4:自機位置特定部、5:他機検出部、6a:送信部、6b:受信部、7:システムコントローラ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8