(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155103
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】鞍乗り型車両のラジエータ支持構造
(51)【国際特許分類】
B62J 41/00 20200101AFI20221005BHJP
B62M 7/02 20060101ALI20221005BHJP
B62J 23/00 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
B62J41/00
B62M7/02 F
B62J23/00 H
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058442
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山岸 融
(57)【要約】
【課題】車種間での部品の共通化が可能となる鞍乗り型車両のラジエータ支持構造を実現する。
【解決手段】水冷エンジン(30)とラジエータ(50)を備える鞍乗り型車両(1)のラジエータ支持構造であって、ラジエータ(50)が水冷エンジン(30)のみで支持されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水冷エンジン(30)とラジエータ(50)を備える鞍乗り型車両(1)のラジエータ支持構造であって、
前記ラジエータ(50)が前記水冷エンジン(30)のみで支持されていることを特徴とする鞍乗り型車両のラジエータ支持構造。
【請求項2】
前記ラジエータ(50)は、前記水冷エンジン(30)のシリンダヘッドカバー(32)よりも下方の位置で前記水冷エンジン(30)に支持されていることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗り型車両のラジエータ支持構造。
【請求項3】
前記ラジエータ(50)は、前記水冷エンジン(30)のシリンダヘッド(31)により支持されていることを特徴とする請求項1または2に記載の鞍乗り型車両のラジエータ支持構造。
【請求項4】
前記ラジエータ(50)は、前記水冷エンジン(30)のクランクケース(33)により支持されていることを特徴とする請求項1または2に記載の鞍乗り型車両のラジエータ支持構造。
【請求項5】
前記ラジエータ(50)は、走行風を受ける前面部(50a)に、通風孔を備えるカバー部材(60)が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の鞍乗り型車両のラジエータ支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り型車両のラジエータ支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動二輪車におけるラジエータの下部をアームによりエンジンで支持した構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、ラジエータの上部をメインフレームに支持しているため、メインフレームにラジエータの取付部を設ける必要がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、その目的は、エンジン以外の車体構成部品にラジエータを支持するための専用の構造を設ける必要がなく、車種間での部品の共通化が可能となる鞍乗り型車両のラジエータ支持構造を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る第1の形態は、水冷エンジン(30)とラジエータ(50)を備える鞍乗り型車両(1)のラジエータ支持構造であって、前記ラジエータ(50)が前記水冷エンジン(30)のみで支持されている。
【0007】
また、本発明に係る第2の形態は、第1の形態において、前記ラジエータ(50)は、前記水冷エンジン(30)のシリンダヘッドカバー(32)よりも下方の位置で前記水冷エンジン(30)に支持されている。
【0008】
また、本発明に係る第3の形態は、第1または第2の形態において、前記ラジエータ(50)は、前記水冷エンジン(30)のシリンダヘッド(31)により支持されている。
【0009】
また、本発明に係る第4の形態は、第1または第2の形態において、前記ラジエータ(50)は、前記水冷エンジン(30)のクランクケース(33)により支持されている。
【0010】
また、本発明に係る第5の形態は、第4の形態において、前記ラジエータ(50)は、走行風を受ける前面部(50a)に、通風孔を備えるカバー部材(60)が設けられている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エンジン以外の車体構成部品にラジエータを支持するための特別な構造を設ける必要がなく、車種間での部品の共通化が可能となる鞍乗り型車両のラジエータ支持構造を実現することができる。
【0012】
詳しくは、本発明に係る第1の形態によれば、ラジエータ50が水冷エンジン30のみで支持されていることにより、エンジン30以外のメインフレーム3などにラジエータ50を支持するための専用の取付部を設ける必要がなくなり、メインフレーム3をラジエータ50の取付構造を考慮することなく構成できるので、例えば、ラジエータのない空冷エンジンの車体フレームに水冷エンジンを搭載するなど、車種間での車体フレームの共通化が可能となる。
【0013】
また、本発明に係る第2の形態によれば、ラジエータ50が水冷エンジン30のシリンダヘッドカバー32よりも下方の位置で水冷エンジン(30)に支持されていることにより、ラジエータ50を取り付けた状態でシリンダヘッドカバー32を取り外しできるのでメンテナンス性が向上する。
【0014】
また、本発明に係る第3の形態によれば、ラジエータ50が水冷エンジン30のシリンダヘッド31により支持されていることにより、ラジエータ50が上方に配置されて前方からの走行風を多く受けることができる。また、ラジエータ50をエンジン30の前方に配置することで、前方からの走行風を多く受けることができると共に、エンジン30からの熱の影響を少なくすることができる。
【0015】
また、本発明に係る第4の形態によれば、ラジエータ50が水冷エンジン30のクランクケース33により支持されていることにより、エンジン30からの熱の影響を少なくすることができる。また、ラジエータ50がダウンフレーム13より下方に配置できるので、メインフレーム3をラジエータ50の取付構造を考慮することなく構成できる。
【0016】
また、本発明に係る第5の形態によれば、ラジエータ50の走行風を受ける前面部50aに、通風孔を備えるカバー部材60が設けられていることにより、ラジエータ50を下方に配置した場合でも、カバー部材60を取り付けることで路面からの泥の付着や飛び石による破損などから保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】本実施形態のラジエータの第1の支持構造を示す部分側面図(a)および(a)のD1方向から見た正面図(b)である。
【
図3】本実施形態のラジエータの第2の支持構造を示す部分側面図(a)および(a)のD1方向から見た正面図(b)である。
【
図4】本実施形態のラジエータにカバー部材を取り付けた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち2つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0019】
以下、本発明のラジエータ支持構造を鞍乗り型車両の一例である自動二輪車に適用した実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
[全体構成]
まず、
図1を参照して、本実施形態のラジエータ支持構造を適用した自動二輪車の概略構成について説明する。なお、以下では、前後、左右及び上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車体に対する方向と同一とする。
【0021】
図1は、本実施形態のラジエータ支持構造を適用した自動二輪車1の右側面である。
【0022】
自動二輪車1の車体フレーム2は、ヘッドパイプ9から車体後方に延出する左右一対のメインフレーム3を有する。ヘッドパイプ9に揺動自在に軸支される前輪WFの操舵系は、車輪軸16によって前輪WFを軸支する左右一対のフロントフォーク15と、ヘッドパイプ9の上下でフロントフォーク15をクランプするトップブリッジ8およびボトムブリッジ11と、トップブリッジ8およびボトムブリッジ11を互いに連結してヘッドパイプ9に軸支されるステアリングステム(不図示)とからなる。フロントフォーク15の上部には、操舵ハンドル6が固定されている。
【0023】
メインフレーム3の後方下部には、スイングアーム19を揺動可能に軸支するピボット18を支持する左右一対のピボットプレート17が接続されている。ピボットプレート17は、メインフレーム3の後端部から車体下方に延びている。左右のスイングアーム19は、前端部がピボットプレート17に揺動可能に支持され、後端部は後輪WRを回転自在に支持している。また、左右のピボットプレート17は、メインフレーム3の下部においてエンジン30やトランスミッション40などのパワーユニットを支持している。本実施形態のエンジン30は、4サイクル水冷単気筒エンジンであり、車体前方に向けて傾斜した状態で配置されている。エンジン30は、シリンダヘッド31、シリンダヘッドカバー32およびクランクケース33を含む。エンジン30には、不図示のエアクリーナを介して吸気通路12が接続されている。エンジン30には排気管24が接続され、排気管24の後端部には、車体後方に延びるマフラー25が接続されている。
【0024】
メインフレーム3の前方下部には、ダウンフレーム13が分岐してエンジン30に向けて下方に延びており、エンジン30を支持している。ヘッドパイプ9の前方には、防風スクリーン7を備えるフロントカウル10が配設されている。トランスミッション40の下部はアンダカウル21により覆われている。前輪WFの上部を覆うフロントフェンダ14は、フロントフォーク15に固定されている。メインフレーム3の上部には、燃料タンクの上部を覆うタンクカバー4が取り付けられている。タンクカバー4に取り付けられるシート5の後方には、リヤフェンダ22およびリヤカウル23が配設されている。
【0025】
スイングアーム19の後端部には、車輪軸20によって後輪WRが回転自在に軸支されている。エンジン30の駆動力は、ドライブチェーン(不図示)を介して後輪WRに伝達される。スイングアーム19の前端部は、ピボット18において揺動自在にピボットプレート17に軸支されている。
【0026】
本実施形態では、以下に詳述するように、第1の支持構造または第2の支持構造により、ラジエータ50がエンジン30のみに支持されている。このように、ラジエータ50をエンジン30のみで支持することで、エンジン30以外のメインフレーム3にラジエータ50を支持するための特別な構造を設ける必要がなく、車種間での部品の共通化が可能となる。
【0027】
<第1の支持構造>まず、
図2を参照して、本実施形態のラジエータ50の第1の支持構造について説明する。
【0028】
図2は、本実施形態のラジエータ50の第1の支持構造を示す部分側面図(a)および(a)のD1方向から見た図(正面図)(b)である。
【0029】
第1の支持構造においては、
図2に示すように、ラジエータ50は、エンジン30のシリンダヘッド31の車体前方側の壁部に取付部材51、52により取り付けられることで、エンジン30のみで支持されている。ラジエータ50は、エンジン30のシリンダヘッドカバー32よりも下方の位置でエンジン30に支持されている。ラジエータ50は、上端部が一対の取付部材51によりエンジン30のシリンダヘッド31の車体前方側の壁部上部に支持され、下端部が一対の取付部材52によりエンジン30のシリンダヘッド31の車体前方側の壁部下部に支持されている。
【0030】
取付部材51、52は、金属製のプレート状のステーであり、ボルトなどの締結部材によりエンジン30およびラジエータ50に設けられた所定の取付部位に固定される。
【0031】
なお、第1の支持構造においては、エンジン30のシリンダヘッド31に支持されるラジエータ50と干渉しないように、ダウンフレーム13の長さは、ダウンフレーム13の下端部がシリンダヘッド31よりも上方(ラジエータ50の直上方)に位置する長さに短縮されている。
【0032】
<第2の支持構造>次に、
図3および
図4を参照して、本実施形態のラジエータ50の第2の支持構造について説明する。
【0033】
図3は、本実施形態のラジエータ50の第2の支持構造を示す部分側面図(a)および(a)のD1方向から見た図(正面図)(b)である。
図4は、本実施形態のラジエータ50の第2の支持構造においてラジエータ50にカバー部材60を取り付けた状態を示す斜視図である。
【0034】
第2の支持構造においては、
図3に示すように、ラジエータ50は、エンジン30のシリンダヘッド31の下部に位置するクランクケース33の車体前方側の壁部に取付部材51、52により取り付けられることで、エンジン30のみで支持されている。ラジエータ50は、上端部が一対の取付部材51によりエンジン30のクランクケース33の車体前方側の壁部上部に支持され、下端部が一対の取付部材52によりエンジン30のクランクケース33の車体前方側の壁部下部に支持されている。
【0035】
取付部材51、52は、例えば、金属製のプレート状のステーであり、両端部がボルトなどの締結部材によりエンジン30およびラジエータ50に設けられた所定の取付部位に固定される。
【0036】
なお、第2の支持構造においては、エンジン30のクランクケース33に支持されるラジエータ50と干渉しないように、ダウンフレーム13の長さは、ダウンフレーム13の下端部がクランクケース33よりも上方(ラジエータ50の直上方)に位置する長さとなっている。
【0037】
また、第2の支持構造では、ラジエータ50は、車体下部であって地面に近い位置に支持されるため、走行中に泥が付着したり石などの物体が衝突したりする可能性がある。このため、ラジエータ50は、走行風を受ける前面部50aに、通風孔を備えるカバー部材60が取り付け可能である。
【0038】
カバー部材60は、例えば、
図4に示すように、上面部61、左右の側面部62、下面部63、複数のプレート(羽板)64を有するルーバーである。上面部61、左右の側面部62および下面部63は中央に矩形の開口を有する外形フレームを構成し、外形フレームの開口部分に複数の細長い複数のプレート64が隙間をあけて平行に並べられて構成されている。上面部61、左右の側面部62および下面部63は、ラジエータ50の前面部50aから上下左右に広がるような傾斜面を構成しており、走行風が開口部分に取り込まれやすくなっている。各プレート64の角度を調整することによってラジエータ50への通気は確保しつつ、ラジエータ50の放熱フィンに泥が付着したり、飛び石により破損したりすることから保護することができる。なお、プレート61が並べられる方向は、上下方向であって、左右方向(車幅方向)であってもよい。また、プレート(羽板)64に代えて、ネット状の部材を用いてもよい。
【0039】
カバー部材60の外形は、ラジエータ50の外形とほぼ同等のサイズとされ、ラジエータ50の前面部50aの全ての表面を覆うように、前面部50aにほぼ密着するように取り付けられる。
【0040】
なお、カバー部材60をラジエータ50に対して着脱可能に構成し、カバー部材60を第1の支持構造のラジエータ50に取り付けることも可能である。
【0041】
以上のように、本実施形態の第1および第2のラジエータ支持構造によれば、ラジエータ50をエンジン30のみで支持することで、エンジン30以外のメインフレーム3などにラジエータ50を支持するための専用の取付部を設ける必要がなくなり、メインフレーム3をラジエータ50の取付構造を考慮することなく構成できるので、例えば、ラジエータのない空冷エンジンの車体フレームに水冷エンジンを搭載するなど、車種間での車体フレームの共通化が可能となる。
【0042】
また、第1のラジエータ支持構造によれば、ラジエータ50をエンジン30のシリンダヘッドカバー32よりも下方で支持することで、ラジエータ50を取り付けた状態でシリンダヘッドカバー32を取り外しできるのでメンテナンス性が向上する。
【0043】
また、第1のラジエータ支持構造によれば、ラジエータ50をシリンダヘッド31で支持することで、ラジエータ50が上方に配置されて前方からの走行風を多く受けることができる。また、ラジエータ50をエンジン30の前方に配置することで、前方からの走行風を多く受けることができると共に、エンジン30からの熱の影響を少なくすることができる。
【0044】
また、第2のラジエータ支持構造によれば、ラジエータ50をエンジン30のクランクケース33に支持することで、エンジン30からの熱の影響を少なくすることができる。また、ラジエータ50がダウンフレーム13より下方に配置できるので、メインフレーム3をラジエータ50の取付構造を考慮することなく構成できる。また、ラジエータ50を下方に配置した場合でも、カバー部材60を取り付けることで路面からの泥の付着や飛び石による破損などからラジエータ50を保護することができる。
【0045】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。例えば、本実施形態では、自動二輪車に適用した例を説明したが、これに限られず、鞍乗り型車両全般あるいは鞍乗り型車両以外にも適用できる。
【符号の説明】
【0046】
1…鞍乗り型車両(自動二輪車)
2…車体フレーム
3…メインフレーム
4…タンクカバー
5…シート
6…操舵ハンドル
7…防風スクリーン
8…トップブリッジ
9…ヘッドパイプ
10…フロントカウル
11…ボトムブリッジ
12…吸気通路
13…ダウンフレーム
14…フロントフェンダ
15…フロントフォーク
16…車輪軸
17…ピボットプレート
18…ピボット
19…スイングアーム
20…車輪軸
21…アンダカウル
22…リヤフェンダ
23…リヤカウル
24…排気管
25…マフラー
30…エンジン
31…シリンダヘッド
32…シリンダヘッドカバー
33…クランクケース
40…トランスミッション
50…ラジエータ
50a…前面部
51、52…取付部材
60…カバー部材
61…上面部
62…側面部
63…下面部
64…プレート(羽板)
WF…前輪
WR…後輪