(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155105
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】ステップブラケット、その形成用部材、鞍乗型車両及び車両セットの製造方法。
(51)【国際特許分類】
B62K 19/40 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
B62K19/40
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058444
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八百川 哲雄
【テーマコード(参考)】
3D212
【Fターム(参考)】
3D212BN07
(57)【要約】
【課題】ステップを支持するためのブラケットを共通化した場合に、使用態様に応じてステップを配置すること。
【解決手段】ステップブラケットは、ステップを支持するための支持部と、鞍乗型車両の車体フレームに対して取り付けられる取付部と、を備える。取付部)は、第1の車体フレームの車幅方向の一方側に取り付け可能であるとともに、第2の車体フレームの一方側の反対側に、一方側に取り付けられる場合とはステップブラケットの前後が反転するように取り付け可能である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステップを支持するための支持部(52)と、
鞍乗型車両の車体フレームに対して取り付けられる取付部(51)と、
を備えるステップブラケットであって、
前記取付部(51)は、
第1の車体フレームの車幅方向の一方側に取り付け可能であるとともに、
第2の車体フレームの前記一方側の反対側に、前記一方側に取り付けられる場合とは前記ステップブラケットの前後が反転するように取り付け可能である、
ことを特徴とするステップブラケット。
【請求項2】
請求項1に記載のステップブラケットであって、
前記第1の車体フレームと前記第2の車体フレームとが同じ車種のフレームである、
ことを特徴とするステップブラケット。
【請求項3】
請求項1に記載のステップブラケットであって、
前記第1の車体フレームと前記第2の車体フレームとが異なる車種のフレームである、
ことを特徴とするステップブラケット。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載のステップブラケットであって、
前記取付部(51)が前記一方側に取り付けられた場合と前記反対側に取り付けられた場合とで、前記取付部(51)と前記支持部(52)の車両前後方向の位置関係が反転する、
ことを特徴とするステップブラケット。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載のステップブラケットであって、
前記ステップブラケット(5)は、前記鞍乗型車両に対して左右一対で取り付け可能であり、
左右一対の前記ステップブラケット(5)の前記取付部(51)がそれぞれ、
前記第1の車体フレームの前記一方側に取り付け可能であるとともに、
前記第2の車体フレームの前記反対側に、前記一方側に取り付けられる場合とは前記ステップブラケット(5)の前後が反転するように取り付け可能である、
ことを特徴とするステップブラケット。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載のステップブラケットであって、
前記支持部(52)が配置される基部(50)をさらに備え、
前記支持部(52)は、前記第1の車体フレームの前記一方側に取り付けられる場合と前記第2の車体フレームの前記反対側に取り付けられる場合とで、前記基部(50)に対する前記ステップの回動軸の方向が異なるように、前記基部(50)に配置される、
ことを特徴とするステップブラケット。
【請求項7】
請求項1から5までのいずれか1項に記載のステップブラケットであって、
前記支持部(52)は、前記ステップを回動可能に支持し、
前記支持部(52)は、前記ステップの回動軸が第1の方向となるように前記ステップを支持する軸受部を形成可能な第1の素形材(721)、及び、前記ステップの前記回動軸が前記第1の方向と異なる第2の方向となるように前記ステップを支持する軸受部を形成可能な第2の素形材(722)、が前記ステップブラケット(5)に接続された状態から、前記第1の素形材(721)又は前記第2の素形材(722)のいずれかが除去されることにより、前記ステップの前記回動軸の方向が前記第1の方向又は前記第2の方向のいずれかに決定される、
ことを特徴とするステップブラケット。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載のステップブラケットであって、
前記取付部(51)は、前記一方側に対して複数の位置に取り付け可能である、
ことを特徴とするステップブラケット。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項に記載のステップブラケットであって、
前記取付部(51)は、前記車体フレームに締結される2つの締結部を含み、
前記2つの締結部のうち一方の締結部の前記車体フレームへの締結位置を選択可能である、
ことを特徴とするステップブラケット。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載のステップブラケット(5)を備える鞍乗型車両。
【請求項11】
鞍乗型車両のステップを支持するステップブラケット(5)の形成用部材であって、
基部(50)と、
前記基部(50)に設けられ、前記ステップを支持する支持部(52)を形成するための支持部(52)形成部と、を備え、
前記支持部(52)形成部は、
前記ステップの回動軸が第1の方向となるように前記ステップを支持する軸受部を形成可能な第1の素形材(721)と、
前記ステップの前記回動軸が前記第1の方向と異なる第2の方向となるように前記ステップを支持する軸受部を形成可能な第2の素形材(722)と、を含む、
ことを特徴とするステップブラケットの形成用部材。
【請求項12】
請求項11に記載のステップブラケット(5)の形成用部材であって、
前記基部(50)、前記第1の素形材(721)、及び前記第2の素形材(722)は鋳造で一体に形成される、
ことを特徴とするステップブラケットの製造方法。
【請求項13】
鞍乗型車両の車両セットの製造方法であって、
第1の鞍乗型車両の車体フレームに対して、ステップを支持するステップブラケット(5)を車幅方向の一方側に取り付ける工程と、
第2の鞍乗型車両(2)の車体フレームに対して、前記一方側の反対側に、前記一方側に取り付けられる場合とは前後を反転してステップブラケット(5)を取り付ける工程と、を含む、
ことを特徴とする鞍乗型車両の車両セットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステップブラケット、その形成用部材、鞍乗型車両及び車両セットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鞍乗型車両には、ライダが足を乗せるためのステップが設けられることがある。例えば、特許文献1では、ステップは、車体フレームに取り付けられたブラケットに回動可能に支持されており、使用時に収納状態から展開可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、製造コスト削減等の観点から、種々の部品についての共通化が要請されている。ステップ用のブラケットを共通化する際には、各使用態様においてステップが適切な位置に配置されることが望まれる。
【0005】
本発明は、ステップを支持するためのブラケットを共通化した場合に、使用態様に応じてステップを配置する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様のステップブラケットは、
ステップを支持するための支持部(52)と、
鞍乗型車両の車体フレームに対して取り付けられる取付部(51)と、
を備えるステップブラケットであって、
前記取付部(51)は、
第1の車体フレームの車幅方向の一方側に取り付け可能であるとともに、
第2の車体フレームの前記一方側の反対側に、前記一方側に取り付けられる場合とは前記ステップブラケット(5)の前後が反転するように取り付け可能である、ことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の第2の態様では、第1の態様において、
請求項1に記載のステップブラケットであって、
前記第1の車体フレームと前記第2の車体フレームとが同じ車種のフレームである、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の第3の態様では、第1の態様において、
前記第1の車体フレームと前記第2の車体フレームとが異なる車種のフレームである、ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の第4の態様では、第1から第3までのいずれかの1つの態様において、
前記取付部(51)が前記一方側に取り付けられた場合と前記反対側に取り付けられた場合とで、前記取付部(51)と前記支持部(52)の車両前後方向の位置関係が反転する、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の第5の態様では、第1から第4までのいずれかの1つの態様において、
前記ステップブラケット(5)は、前記鞍乗型車両に対して左右一対で取り付け可能であり、
左右一対の前記ステップブラケット(5)の前記取付部(51)がそれぞれ、
前記第1の車体フレームの前記一方側に取り付け可能であるとともに、
前記第2の車体フレームの前記反対側に、前記一方側に取り付けられる場合とは前前記ステップブラケット(5)の前後が反転するように取り付け可能である、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の第6の態様では、第1から第5までのいずれかの1つの態様において、
前記支持部(52)が配置される基部(50)をさらに備え、
前記支持部(52)は、前記第1の車体フレームの前記一方側に取り付けられる場合と前記第2の車体フレームの前記反対側に取り付けられる場合とで、前記基部(50)に対する前記ステップの回動軸の方向が異なるように、前記基部(50)に配置される、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の第7の態様では、第1から第5までのいずれかの1つの態様において、
前記支持部(52)は、前記ステップを回動可能に支持し、
前記支持部(52)は、前記ステップの回動軸が第1の方向となるように前記ステップを支持する軸受部を形成可能な第1の素形材(721)、及び、前記ステップの前記回動軸が前記第1の方向と異なる第2の方向となるように前記ステップを支持する軸受部を形成可能な第2の素形材(722)、が前記ステップブラケット(5)に接続された状態から、前記第1の素形材(721)又は前記第2の素形材(722)のいずれかが除去されることにより、前記ステップの前記回動軸の方向が前記第1の方向又は前記第2の方向のいずれかに決定される、ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の第8の態様では、第1から第7までのいずれかの1つの態様において、
前記取付部(51)は、前記一方側に対して複数の位置に取り付け可能である、ことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の第9の態様では、第1から第8までのいずれかの1つの態様において、
前記取付部(51)は、前記車体フレームに締結される2つの締結部を含み、
前記2つの締結部のうち一方の締結部の前記車体フレームへの締結位置を選択可能である、ことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の第10の態様の鞍乗型車両は、第1から第9までのいずれかの1つの態様のステップブラケット(5)を備える。
【0016】
また、本発明の第11の態様のステップブラケットの形成用部材は、
鞍乗型車両のステップを支持するステップブラケット(5)の形成用部材であって、
基部(50)と、
前記基部(50)に設けられ、前記ステップを支持する支持部(52)を形成するための支持部(52)形成部と、を備え、
前記支持部(52)形成部は、
前記ステップの回動軸が第1の方向となるように前記ステップを支持する軸受部を形成可能な第1の素形材(721)と、
前記ステップの前記回動軸が前記第1の方向と異なる第2の方向となるように前記ステップを支持する軸受部を形成可能な第2の素形材(722)と、を含む、ことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の第12の態様では、第11の態様において、
前記基部(50)、前記第1の素形材(721)、及び前記第2の素形材(722)は鋳造で一体に形成される、ことを特徴とする。
【0018】
本発明の第13の態様の鞍乗型車両の車両セットの製造方法は、
鞍乗型車両の車両セットの製造方法であって、
第1の鞍乗型車両の車体フレームに対して、ステップを支持するステップブラケット(5)を車幅方向の一方側に取り付ける工程と、
第2の鞍乗型車両(2)の車体フレームに対して、前記一方側の反対側に、前記一方側に取り付けられる場合とは前後を反転してステップ(5)を取り付ける工程と、を含む、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ステップを支持するためのブラケットを共通化した場合に、使用態様に応じてステップを配置することができる。
【0020】
詳細には、第1の態様によれば、ステップブラケット(5)を第1の車体フレームの一方側に取り付ける場合と第2の車体フレームの反対側に取り付ける場合とで取付部(51)及び支持部(52)の前後方向の位置関係が反転する。したがって、ステップブラケット(5)は一方側に取り付けられる場合と反対側に取り付けられる場合とでステップを異なる位置に配置することができるので、使用態様に応じてステップを配置することができる。
【0021】
また、第2の態様によれば、同一車種でステップの位置を変更可能に設定した場合に、各仕様でステップブラケット(5)を共通化することができる。
【0022】
また、第3の態様によれば、車種間でステップブラケット(5)を共通化する際に、ステップブラケット(5)を反転させて用いることにより、車種に応じたステップの配置を実現することができる。
【0023】
また、第4の態様によれば、ステップブラケット(5)を反対側に反転させて用いる場合に、取付部(51)と支持部(52)との位置関係が反転するため、使用態様毎にステップの配置を効果的に変更することができる。
【0024】
また、第5の態様によれば、左右一対のステップブラケット(5)をそれぞれ反転させて車体フレームに取り付けることができるので、左右両側においてステップブラケット(5)を共通化することができる。
【0025】
また、第6の態様によれば、ステップブラケット(5)を一方側に取り付ける場合と反対側に取り付ける場合とでステップの回転軸の方向を変更することができる。
【0026】
また、第7の態様によれば、使用態様に応じたステップブラケット(5)の加工を行うことにより、ステップの回動軸の方向を設定することができる。
【0027】
また、第8の態様によれば、ステップの位置を調整することができる。
【0028】
また、第9の態様によれば、車体フレームへの締結位置を選択することで、ステップの位置を容易に調整することができる。
【0029】
また、第10の態様によれば、第1~第9の態様のステップブラケット(5)を備える鞍乗型車両が提供される。
【0030】
また、第11の態様によれば、ステップを支持するためのブラケットを共通化した場合に、使用態様に応じてステップを配置するためのステップブラケット(5)の形成用部材が提供される。
【0031】
また、第12の態様によれば、基部、第1の素形材(721)及び第2の素形材(722)が一体に形成されることにより、製造時の工数を低減することができる。
【0032】
また、第13の態様によれば、共通のステップブラケット(5)を用いて、車両に応じた位置にステップが配置された車両のセットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】一実施形態に係るステップブラケットを取り付け可能な鞍乗型車両を模式的に示す右側面図。
【
図2】一実施形態に係るステップブラケットを取り付け可能な鞍乗型車両を模式的に示す右側面図。
【
図4】ステップブラケットが
図1の鞍乗型車両の車体フレームに取り付けられた状態を示す図。
【
図6】ステップブラケットが
図2の鞍乗型車両の車体フレームに取り付けられた状態を示す図。
【
図7】ステップブラケットの形成用部材の構成を示す概略図。
【
図8】一実施形態に係る、ステップブラケットが車体フレームに取り付けられた状態を示す図。
【
図9】(A)は、一実施形態に係る、車体フレームの一部を示す左側面図。(B)及び(C)は、ステップブラケットが車体フレームに取り付けられた状態を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0035】
また、各図において、Fr、Rr、U、D、L、Rは、それぞれ車両1の前進方向を基準として、前側、後側、上側、下側、左側、右側を示す。
【0036】
<1.鞍乗型車両1の概略>
図1は、一実施形態に係るステップブラケット5を取り付け可能な鞍乗型車両1を模式的に示す右側面図である。鞍乗型車両1は、ネイキッドタイプの自動二輪車である。以下、鞍乗型車両1のことを車両1と表記する場合がある。
【0037】
車両1は、その骨格をなす車体フレーム10を含む。車体フレーム10は、ヘッドパイプ100を含む。ヘッドパイプ100には、一対のフロントフォーク14が操舵自在に支持されている。フロントフォーク14の上端には前輪FW1を操舵するハンドル15が設けられている。ハンドル15はライダが把持するグリップ15aを含む。
【0038】
車体フレーム10は、ヘッドパイプ100から後方に延びて設けられるメインフレーム101と、メインフレーム101の後部から下方に延びて設けられるピボットフレーム102とを含む。メインフレーム101及びピボットフレーム102により、後輪RW1を駆動するパワーユニット11が支持されている。本実施形態では、パワーユニット11は、エンジン(例えば多気筒の4サイクルエンジン)と、エンジンの出力を変速する変速機とを含み、変速機の出力がチェーン伝動機構により後輪RW1に伝達される。また、ピボットフレーム102は、スイングアーム13を回動可能に支持する。スイングアーム13にはピボットフレーム102が回転自在に支持されている。
【0039】
車体フレーム10は、メインフレーム101の後部から後方に延びるシートフレーム103を含む。シートフレーム103は、ライダが着座するシート12を支持する。また、車体フレーム10は、ピボットフレーム102とシートフレーム103とを連結するステー104を含む。
【0040】
<2.鞍乗型車両2の概略>
図2は、一実施形態に係るステップブラケット5を取り付け可能な鞍乗型車両2を模式的に示す右側面図である。鞍乗型車両2は、スーパースポーツタイプの自動二輪車である。以下、鞍乗型車両2のことを車両2と表記する場合がある。
【0041】
車両2は、その骨格をなす車体フレーム20を含む。車体フレーム20は、ヘッドパイプ200を含む。ヘッドパイプ200には、一対のフロントフォーク24が操舵自在に支持されている。フロントフォーク24の上端には前輪FW2を操舵するハンドル25が設けられている。ハンドル25はライダが把持するグリップ25aを含む。
【0042】
車体フレーム20は、ヘッドパイプ200から後方に延びて設けられるメインフレーム201と、メインフレーム201の後部から下方に延びて設けられるピボットフレーム202とを含む。メインフレーム201及びピボットフレーム202により、後輪RW2を駆動するパワーユニット21が支持されている。本実施形態では、パワーユニット21は、エンジン(例えば多気筒の4サイクルエンジン)と、エンジンの出力を変速する変速機とを含み、変速機の出力がチェーン伝動機構により後輪RW2に伝達される。また、ピボットフレーム202は、スイングアーム23を回動可能に支持する。スイングアーム23にはピボットフレーム202が回転自在に支持されている。
【0043】
車体フレーム20は、メインフレーム201の後部から後方に延びるシートフレーム203を含む。シートフレーム203は、ライダが着座するシート22を支持する。
【0044】
<3.ステップブラケット5の構成>
図3は、ステップブラケット5の構成を示す概略図である。ステップブラケット5は後述するステップ6を支持するためのブラケットであり、本実施形態では、車両1又は車両2に取り付け可能に構成される。なお、詳しくは後述するが、
図3には、ステップブラケット5が車両1の右側面に取り付けられる際の態様が例示されている。以下、ステップブラケットの一般的な構成について説明する場合はステップブラケット5と表記し、ステップブラケットが車両1の右側面に取り付けられる際の態様に特有の構成について説明する場合はステップブラケット5aと表記することがある。なお、車両1の左側面に取り付けられるステップブラケット5は、これと対称の形状を有し得る。
【0045】
ステップブラケット5は、基部50と、取付部51と支持部52とを含む。基部50は、ベースとなる板状の部材であり、取付部51及び支持部52が配置される。基部50は、例えば金属材料で形成される。本実施形態では基部50はL字状の形状を有している。
【0046】
取付部51は、車両1の車体フレーム10又は車両2の車体フレーム20に対して取り付けられる部分である。本実施形態では、取付部51は、基部50に形成された開口511及び開口512を含む。本実施形態では、開口511及び開口512は、いわゆるボルト穴である。ステップブラケット5は、取付部51としての開口511及び開口512を介して、ボルト等の締結部材91及び締結部材92(
図4参照)により車体フレーム10又は車体フレーム20に取り付けられる。
【0047】
支持部52は、ステップ6を支持するための部分である。ステップブラケット5aは、支持部52として軸受部521を有している。軸受部522は、ステップ6の回動軸を形成する軸部材を回動可能に支持することができる。さらに言えば、軸受部521は、ステップ6の回動軸の方向が方向D1となるように、ステップ6の軸部材を回動可能に支持する。
【0048】
<4.ステップブラケット5の車体フレームへの取り付け>
以下、ステップブラケット5の車体フレームへの取り付けについて説明する。本実施形態では、ステップブラケット5の取付部51は、車体フレーム10の車幅方向の一方側に取り付け可能であるとともに、車体フレーム20の一方側の反対側に、一方側に取り付けられる場合とはステップブラケット5の前後が反転するように取り付け可能である。これにより、ステップを支持するためのブラケットを共通化した場合に、使用態様に応じてステップを配置することができる。詳細には、ステップブラケット5を車体フレーム10の一方側に取り付ける場合と車体フレーム20の反対側に取り付ける場合とで取付部51及び支持部52の前後方向の位置関係が反転する。したがって、ステップブラケット5は、一方側に取り付けられる場合と反対側に取り付けられる場合とでステップ6を異なる位置に配置することができるので、使用態様に応じてステップを配置することができる。
【0049】
本実施形態では、より具体的には、車体フレーム10の右側に取り付け可能な取付部51は、車体フレーム20の左側にステップブラケット5の前後が反転するように取り付け可能である。すなわち、ステップブラケット5は、互いに異なる車種のフレームである車体フレーム10及び車体フレーム20に取り付け可能に構成されている。以下、それぞれの車体フレームへの取り付け態様について説明する。
【0050】
図4は、ステップブラケット5が車体フレーム10に取り付けられた状態を示す図である。より具体的には、
図4は、ステップブラケット5が車体フレーム10の右側に取り付けられた状態を示している。
【0051】
ステップブラケット5の取付部51は、車体フレーム10のピボットフレーム102に取り付けられている。例えば、ピボットフレーム102には、締結部材91又は締結部材92によりステップブラケット5が取り付けられるための不図示のボルト穴が形成される。また、ピボットフレーム102には、パワーユニット11を支持するための支持部1051、1052及びスイングアーム13を回動可能に支持する軸受部102aが形成されている。本実施形態では、ステップブラケット5は、上下方向で2つの支持部1051、1052の間に取り付けられている。しかしながら、ステップブラケット5の取り付け時の配置は適宜設計可能である。
【0052】
また、ステップブラケット5aは、支持部52が取付部51よりも前方に位置するように設けられている。また、車両側面視で、ステップ6の回動軸の方向D1は、車両の前方に向かうに従って上方に向かうように斜めに延びている。したがって、ステップ6は、折りたたまれた状態から、前方かつ下方に向かって展開される。
【0053】
図5は、ステップブラケット5の構成を示す概略図である。
図5には、ステップブラケット5が車両2の左側面に取り付けられる際の態様が例示されている。以下、ステップブラケットの一般的な構成について説明する場合はステップブラケット5と表記し、ステップブラケットが車両2の左側面に取り付けられる際の態様に特有の構成について説明する場合はステップブラケット5bと表記することがある。また、
図6は、ステップブラケット5が車体フレーム20に取り付けられた状態を示す図である。より具体的には、
図6は、ステップブラケット5bが車体フレーム20の右側に取り付けられた状態を示している。
【0054】
車両2の左側面に取り付けられるステップブラケット5bは、車両1の右側面に取り付けられるステップブラケット5aと、基部50及び取付部51については同様の構成を有する。すなわち、ステップブラケット5は、車両1に取り付けられる場合と車両2に取り付けられる場合とで、基部50及び取付部51を共通化することができる。
【0055】
一方で、車両2の左側面に取り付けられるステップブラケット5bの支持部52としての軸受部522は、車両1の右側面に取り付けられるステップブラケット5aの軸受部521と、支持するステップ6の軸方向が異なる。すなわち、支持部52は、車体フレーム10の一方側に取り付けられる場合と車体フレーム20の反対側に取り付けられる場合とで、基部50に対するステップ9の回動軸の方向が異なるように配置される。具体的には、軸受部522の軸方向D2が、軸受部521の軸方向D1と交差するように設定されている。これにより、支持部52は、ステップブラケット5が車体フレーム20の左側に取り付けられた場合も、ステップ6が折りたたまれた状態から前方かつ下方に向かって展開されるように、ステップ6を支持することができる。このように、本実施形態のステップブラケット5は、支持部52の構成を変更することで、車両1又は車両2に選択的に取り付けることができる。
【0056】
ステップブラケット5の取付部51は、車体フレーム20のピボットフレーム202に取り付けられている。例えば、ピボットフレーム202には、締結部材91又は締結部材92によりステップブラケット5が取り付けられるための不図示のボルト穴が形成される。また、ピボットフレーム202には、パワーユニット11を支持するための支持部2051、2052及びスイングアーム23を回動可能に支持する軸受部202aが形成されている。本実施形態では、ステップブラケット5は、上下方向で2つの支持部2051、2052の間に取り付けられている。しかしながら、ステップブラケット5の取り付け時の配置は適宜設計可能である。
【0057】
また、ステップブラケット5は、車体フレーム20の左側面に取り付けられる場合、支持部52が取付部51よりも後方に位置するように設けられる。したがって、ステップブラケット5が車体フレーム10に取り付けられる場合と比較して、ステップ6を後方に配置することができる。また、
図4と
図6とを比較すると、取付部51が車両1の右側に取り付けられた場合と車両2の左側に取り付けられた場合とで、取付部51と支持部52の車両前後方向の位置関係が反転する。このように、異なる車種間でステップブラケット5を共通化する際に、取付部51に対する支持部52の位置が反転するので、車種に応じたステップ6の配置を実現することができる。
【0058】
なお、ここでは、車体フレーム10の右側に取り付けられるステップブラケット5と車体フレーム20の左側に取り付けられるステップブラケット5との共通化について説明した。同様に、車体フレーム10の車体フレーム10の左側に取り付けられるステップブラケット5と車体フレーム20の右側に取り付けられるステップブラケット5とが共通化されてもよい。さらに言えば、ステップブラケット5は、車両1に対して左右一対で取り付け可能であってもよい。そして、車体フレーム10の右側に取り付け可能なステップブラケット5が、車体フレーム20の左側に前後を反転して取り付け可能であってもよい。また、車体フレーム10の左側に取り付け可能なステップブラケット5が、車体フレーム20の右側に前後を反転して取り付け可能であってもよい。これにより、車両の左右両側においてステップブラケット5を共通化することができる。
【0059】
<5.ステップブラケット5の形成用部材7>
前述したように、本実施形態のステップブラケット5は、支持部52の構成を変更することで、車両1又は車両2に選択的に取り付けることができる。本実施形態では、ステップブラケット5の形成用部材7を加工することにより、形成されたステップブラケット5の支持部52の構成を変更することができる。
【0060】
図7は、ステップブラケット5の形成用部材7の構成を示す概略図である。形成用部材7は、ステップブラケット5を形成するための部材である。形成用部材7は、例えば鉄、アルミ等の金属材料で形成される。形成用部材7は、ステップブラケット5の基部50を形成する基部形成部71と、ステップブラケット5の支持部52を形成する支持部形成部72とを含む。基部形成部71には、機械加工等によって、取付部51を形成することができる。また、基部形成部71に対して所定の加工を行うことにより、支持部52としての軸受部521又は軸受部522を形成することができる。
【0061】
支持部形成部72は、軸受部521を形成するための素形材721と、軸受部522を形成するための素形材722とを含む。素形材721は、主平面が互いに対向する一対の板状の部材で構成される。この一対の板状の部材は形成用部材70から延びて設けられる。同様に、素形材721は、主平面が互いに対向する一対の板状の部材で構成される。この一対の板状の部材は形成用部材70から延びて設けられる。本実施形態では、基部形成部71、素形材721及び素形材722は鋳造で一体に形成される。また、本実施形態では、素形材721及び素形材722が接続した状態で設けられている。しかしながら、素形材721、素形材722を構成する4つの板状部材が互いに離間して基部形成部71から延びて設けられてもよい。なお、本実施形態では、基部形成部71及び支持部形成部72が一体に形成されるが、他の態様も採用可能である。例えば、基部形成部71と支持部形成部72とを別体に用意し、これらを溶接等により接続してもよい。
【0062】
本実施形態では、支持部形成部72に対して、機械加工等により素形材722を取り除き、素形材721に開口を形成することにより、軸受部521を形成することができる。また、支持部形成部72に対して、機械加工等により素形材721を取り除き、素形材722に開口を形成することにより、軸受部522を形成することができる。すなわち、本実施形態では、支持部形成部72から、素形材721又は素形材722のいずれかを除去可能であり、これらのいずれかが除去されることにより、ステップ6の回動軸の方向が方向D1又は方向D2のいずれかに決定されるといえる。
【0063】
このように、ステップブラケット5は、車体フレーム10に取り付けられる場合と車体フレーム20に取り付けられた場合とで、形成用部材70を共通化することができる。したがって、車両1及び車両2を製造する場合の製造コストを低減することができる。
【0064】
また、基部形成部71及び支持部形成部72を別体に用意し、これらを溶接等により接続する場合には、支持部形成部72の素形材自体は共通化することができる。この場合、共通の素形材の基部形成部71への取付位置、取り付け角度を変更することにより、軸受部521又は軸受部522のいずれかを形成することができる。また、基部形成部71及び支持部形成部72を別体に用意し、これらを溶接等により接続する場合には、素形材としての、主平面が互いに対向する一対の板状の部材の間隔等も調整可能である。したがって、支持する対称のステップ6が複数種類ある場合にも、ステップ6の種類に応じてその軸受部を形成することができる。一方で、本実施形態のように基部形成部71及び支持部形成部72を一体に形成する場合には、支持部形成部72の基部形成部71への取付工程が不要なため、ステップブラケット5の製造工程を簡素化することができる。
【0065】
以上説明したように、本実施形態によれば、取付部51は、車体フレーム10の車幅方向の一方側に取り付け可能であるとともに、車体フレーム20の反対側にステップブラケット5の前後が反転するように取り付け可能である。したがって、ステップを支持するためのブラケットを共通化した場合に、使用態様に応じてステップを配置することができる。
【0066】
<6.第2実施形態>
第1実施形態ではステップブラケット5が異なる車種のフレームに前後を反転して取り付け可能であるのに対し、第2実施形態では、ステップブラケット5が同じ車種のフレームに前後を反転して取り付け可能である。以下、第1実施形態と同様の構成については同様の符号を付して説明を省略する。
【0067】
図8は、一実施形態に係る、ステップブラケット5が車体フレーム10に取り付けられた状態を示す図である。より具体的には、
図8は、ステップブラケット5が車体フレーム10の左側に取り付けられた状態を示している。
【0068】
本実施形態では、ステップブラケット5を車体フレーム10の右側に取り付け可能であるとともに(
図4)、ステップブラケット5を車体フレーム10の左側に、右側に取り付ける場合とは前後を反転して取り付け可能である(
図8)。これにより、同一の車種において、オプション等によりステップ6の種類や位置を変更する際に、変更前後でステップブラケット5を共通化することができる。したがって、製造コストを低減することができる。
【0069】
<7.他の実施形態>
図9(A)は、一実施形態に係る、車体フレーム290の一部を示す左側面図である。車体フレーム290は、ステップブラケット5を複数の位置で支持可能な点で、上記実施形態の車体フレーム20と異なる。以下、上記実施形態と同様の構成については同様の符号を付して説明を省略する。
【0070】
車体フレーム290には、取付部51が取り付けられてステップブラケット5を支持するための支持部2061~支持部2063が設けられている。本実施形態では、支持部2061は、開口511と同じ締結部材91が貫通するボルト穴であり、支持部2062、2063は開口512と同じ締結部材92が貫通するボルト穴である。
【0071】
図9(B)及び
図9(C)は、ステップブラケット5が車体フレーム290に取り付けられた状態を例示する図である。
図9(B)では、開口512及び支持部2062に締結部材92が貫通してこれらが締結されている。
図9(C)では、開口512及び支持部2063に締結部材92が貫通してこれらが締結されている。本実施形態では、取付部51が、支持部2062に取り付けられるか支持部2063に取り付けられるかにより、ステップ6の位置を調整することができる。
【0072】
また、本実施形態では、取付部51のうち、上側の開口511による取り付け位置は固定された状態で、下側の開口512による取り付け位置を移動させることができる。したがって、ステップ6の位置の、後ろ斜め上側への調整を容易に行うことができる。
【0073】
また、上記実施形態にかかるステップブラケット5が設けられた鞍乗型車両の車両セットが製造されてもよい。この車両セットの製造には、鞍乗型車両1の車体フレーム10に対して、ステップ6を支持するステップブラケット5を車幅方向の一方側(例えば右側)に取り付ける工程が含まれ得る。また、鞍乗型車両2の車体フレーム20に対して、車幅方向の反対側(例えば左側)に、車体フレーム10の一方側に取り付けられる場合とはステップブラケット5の前後が反転するように、ステップブラケット5を取り付ける工程が含まれ得る。これにより、共通のステップブラケット5を用いて、車両に応じた位置にステップ6が配置された車両のセットが提供される。
【0074】
第1実施形態では、ステップブラケット5は、異なる車種かつ異なる車体フレームの間で共通化されている。また、第2実施形態では、ステップブラケット5は、同じ車種かつ同じ車体フレームの間で共通化されている。しかしながら、例えば、ステップブラケット5は、異なる車種かつ同じ車体フレームの間で共通化されてもよいし、同じ車種かつ異なる車体フレームの間で共通化されてもよい。すなわち、ステップブラケット5が共通化される車体フレームの条件は限定されない。
【符号の説明】
【0075】
1:鞍乗型車両、10:車体フレーム、2:鞍乗型車両、20:車体フレーム、5:ステップブラケット、51:取付部、52:支持部