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特開2022-155112車載電子システム、車両、制御方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155112
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】車載電子システム、車両、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20221005BHJP
   H04L 13/00 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
B60R16/02 660H
H04L13/00 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058451
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳永 智哉
(72)【発明者】
【氏名】吉村 祐亮
(72)【発明者】
【氏名】河野 悟司
【テーマコード(参考)】
5K034
【Fターム(参考)】
5K034AA11
5K034CC06
5K034DD01
5K034HH65
5K034JJ02
5K034SS01
5K034TT07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】複数のECUには計時機能を組み込む必要をなくし、車載電子システムにおけるスリープ中の消費電力を削減すること。
【解決手段】車載電子システムは、車両に搭載されるコアECUと、コアECUと車内通信ネットワークを通じて通信可能な複数のスレーブECUとを備え、コアECUは、車両の主電源がオフ状態中に現在時刻を管理する時刻管理部と、主電源がオフ状態中にスリープ状態にある複数のスレーブECUのそれぞれの起動時刻を管理する管理テーブルとを備え、コアECUは、主電源がオフ状態中に現在時刻が複数のスレーブECUのそれぞれの起動時刻になるときに、それぞれのスレーブECUに車内通信ネットワークを通じて起動信号を送信する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるコアECU(Electronic Control Unit)と、
前記コアECUと車内通信ネットワークを通じて通信可能な複数のスレーブECUと
を備え、
前記コアECUは、
前記車両の主電源がオフ状態中に現在時刻を管理する時刻管理部と、
前記主電源がオフ状態中にスリープ状態にある前記複数のスレーブECUのそれぞれの起動時刻を管理する管理テーブルと
を備え、
前記コアECUは、前記主電源がオフ状態中に前記現在時刻が前記複数のスレーブECUのそれぞれの起動時刻になるときに、それぞれのスレーブECUに前記車内通信ネットワークを通じて起動信号を送信する
車載電子システム。
【請求項2】
前記コアECUは、前記起動信号を前記現在時刻とともに送信する
請求項1に記載の車載電子システム。
【請求項3】
前記コアECUは、前記主電源がオフ状態になった場合に、前記複数のスレーブECUのそれぞれから、それぞれのスレーブECUの起動時刻を受信し、前記受信した起動時刻に基づいて、前記管理テーブルが管理する前記起動時刻を更新する
請求項1又は2に記載の車載電子システム。
【請求項4】
有線通信又は無線通信による前記複数のスレーブECUのプログラム書き換えを制御する書き換え制御部
を備え、
前記コアECUは、前記複数のスレーブECUのうちの少なくとも1つのスレーブECUのプログラム書き換えが行われた場合に、前記プログラム書き換えが行われたスレーブECUから、前記プログラム書き換えが行われたスレーブECUの起動時間を受信し、前記受信した起動時刻に基づいて、前記管理テーブルが管理する前記起動時刻を更新する
請求項1から3のいずれか一項に記載の車載電子システム。
【請求項5】
前記コアECUは、
前記車両の診断データを取得する外部診断装置と通信する通信部
をさらに備え、
前記複数のスレーブECUのそれぞれは、前記起動信号の受信に応じて起動した場合に、それぞれのスレーブECUが取得した車載機器の診断情報を前記コアECUに送信し、
前記コアECUは、前記複数のスレーブECUのそれぞれから受信した前記診断情報を記憶する
請求項1から4のいずれか一項に記載の車載電子システム。
【請求項6】
前記車載電子システムは、
前記主電源がオフ状態中に現在時刻を管理する機能を有し、現在時刻が予め定められた起動時刻になる場合に起動する1つ以上のスレーブECU
をさらに備え、
前記管理テーブルにより前記起動時刻が管理される前記複数のスレーブECUは、前記主電源がオフ状態中に現在時刻を管理する機能を有していないECUである
請求項1から5のいずれか一項に記載の車載電子システム。
【請求項7】
前記複数のスレーブECUのうち、前記主電源がオフ状態中に第1起動時刻で起動されるべき複数の第1スレーブECUが、第1車内通信ネットワークに接続され、
前記複数のスレーブECUのうち、前記主電源がオフ状態中に第1起動時刻とは異なる第2起動時刻で起動されるべき複数の第2スレーブECUが第2車内通信ネットワークに接続され、
前記管理テーブルはさらに、前記複数の第1スレーブECUの識別情報に対応づけて前記第1車内通信ネットワークを識別する情報を管理し、前記複数の第2スレーブECUの識別情報に対応づけて前記第2車内通信ネットワークを識別する情報を管理し、
前記コアECUは、
前記第1起動時刻において、前記第1車内通信ネットワークに接続されたスレーブECUを起動する起動信号を前記第1車内通信ネットワークに送信し、
前記第2起動時刻において、前記第2車内通信ネットワークに接続されたスレーブECUを起動する起動信号を前記第2車内通信ネットワークに送信する
請求項1から6のいずれか一項に記載の車載電子システム。
【請求項8】
前記管理テーブルは、前記複数のスレーブECUのそれぞれの前記起動時刻として許容される時間範囲を示す起動時間範囲情報を管理し、
前記コアECUは、前記管理テーブルが管理している前記起動時間範囲情報に基づいて、前記複数のスレーブECUのうち、同一の車内通信ネットワークに接続され、かつ、前記起動時刻として許容される時間範囲が重なる2つ以上のスレーブECUを選択し、選択した前記2つ以上のスレーブECUが接続された前記車内通信ネットワークに、前記起動時刻として許容される時間範囲が重なる時間内の時刻に、前記起動信号を送信する
請求項1から7のいずれか一項に記載の車載電子システム。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の車載電子システムを備える車両。
【請求項10】
車両に搭載され、車内通信ネットワークを通じて複数のスレーブECUと通信可能なコアECUが実行する制御方法であって、
前記車両の主電源がオフ状態中に現在時刻を管理する段階と、
前記主電源がオフ状態中にスリープ状態にある前記複数のスレーブECUのそれぞれの起動時刻を管理する管理テーブルに基づいて、前記主電源がオフ状態中に前記現在時刻が前記複数のスレーブECUのそれぞれの起動時刻になるときに、それぞれのスレーブECUに前記車内通信ネットワークを通じて起動信号を送信する段階と
を備える制御方法。
【請求項11】
プログラムであって、
車両に搭載され、車内通信ネットワークを通じて複数のスレーブECUと通信可能なコアECUとして機能するコンピュータに、
前記車両の主電源がオフ状態中に現在時刻を管理する手順と、
前記主電源がオフ状態中にスリープ状態にある前記複数のスレーブECUのそれぞれの起動時刻を管理する管理テーブルに基づいて、前記主電源がオフ状態中に前記現在時刻が前記複数のスレーブECUのそれぞれの起動時刻になるときに、それぞれのスレーブECUに前記車内通信ネットワークを通じて起動信号を送信する手順と
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載電子システム、車両、制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の主電源オフ時に、時間の経過に応じて経過時間情報の値を変化させ、経過時間情報を含む車両ローカル時間をスレーブECUに繰り返し送信するマスタECUと、マスタECUから送信された車両ローカル時間を受信し、診断情報を記録する必要が発生したことに基づいて、最新の車両ローカル時間と診断情報を対応付けて記憶媒体に記録するスレーブECUとを備える車載システムが記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2012-171361号公報
【発明の概要】
【0003】
第1の態様において、車載電子システムが提供される。車載電子システムは、車両に搭載されるコアECU(Electronic Control Unit)を備える。車載電子システムは、コアECUと車内通信ネットワークを通じて通信可能な複数のスレーブECUを備える。コアECUは、車両の主電源がオフ状態中に現在時刻を管理する時刻管理部を備える。コアECUは、主電源がオフ状態中にスリープ状態にある複数のスレーブECUのそれぞれの起動時刻を管理する管理テーブルを備える。コアECUは、主電源がオフ状態中に現在時刻が複数のスレーブECUのそれぞれの起動時刻になるときに、それぞれのスレーブECUに車内通信ネットワークを通じて起動信号を送信する。
【0004】
コアECUは、起動信号を現在時刻とともに送信してよい。
【0005】
コアECUは、主電源がオフ状態になった場合に、複数のスレーブECUのそれぞれから、それぞれのスレーブECUの起動時刻を受信し、受信した起動時刻に基づいて、管理テーブルが管理する起動時刻を更新してよい。
【0006】
車載電子システムは、有線通信又は無線通信による複数のスレーブECUのプログラム書き換えを制御する書き換え制御部を備えてよい。コアECUは、複数のスレーブECUのうちの少なくとも1つのスレーブECUのプログラム書き換えが行われた場合に、プログラム書き換えが行われたスレーブECUから、プログラム書き換えが行われたスレーブECUの起動時間を受信し、受信した起動時刻に基づいて、管理テーブルが管理する起動時刻を更新してよい。
【0007】
コアECUは、車両の診断データを取得する外部診断装置と通信する通信部をさらに備えてよい。複数のスレーブECUのそれぞれは、起動信号の受信に応じて起動した場合に、それぞれのスレーブECUが取得した車載機器の診断情報をコアECUに送信してよい。コアECUは、複数のスレーブECUのそれぞれから受信した診断情報を記憶してよい。
【0008】
車載電子システムは、主電源がオフ状態中に現在時刻を管理する機能を有し、現在時刻が予め定められた起動時刻になる場合に起動する1つ以上のスレーブECUを備えてよい。管理テーブルにより起動時刻が管理される複数のスレーブECUは、主電源がオフ状態中に現在時刻を管理する機能を有していないECUであってよい。
【0009】
複数のスレーブECUのうち、主電源がオフ状態中に第1起動時刻で起動されるべき複数の第1スレーブECUが、第1車内通信ネットワークに接続されてよい。複数のスレーブECUのうち、主電源がオフ状態中に第1起動時刻とは異なる第2起動時刻で起動されるべき複数の第2スレーブECUが第2車内通信ネットワークに接続されてよい。管理テーブルはさらに、複数の第1スレーブECUの識別情報に対応づけて第1車内通信ネットワークを識別する情報を管理し、複数の第2スレーブECUの識別情報に対応づけて第2車内通信ネットワークを識別する情報を管理してよい。コアECUは、第1起動時刻において、第1車内通信ネットワークに接続されたスレーブECUを起動する起動信号を第1車内通信ネットワークに送信し、第2起動時刻において、第2車内通信ネットワークに接続されたスレーブECUを起動する起動信号を第2車内通信ネットワークに送信してよい。
【0010】
管理テーブルは、複数のスレーブECUのそれぞれの起動時刻として許容される時間範囲を示す起動時間範囲情報を管理してよい。コアECUは、管理テーブルが管理している起動時間範囲情報に基づいて、複数のスレーブECUのうち、同一の車内通信ネットワークに接続され、かつ、起動時刻として許容される時間範囲が重なる2つ以上のスレーブECUを選択し、選択した2つ以上のスレーブECUが接続された車内通信ネットワークに、起動時刻として許容される時間範囲が重なる時間内の時刻に、起動信号を送信してよい。
【0011】
第2の態様において、車両が提供される。車両は、上記の車載電子システムを備える。
【0012】
第3の態様において、制御方法が提供される。制御方法は、車両に搭載され、車内通信ネットワークを通じて複数のスレーブECUと通信可能なコアECUが実行する制御方法である。制御方法は、車両の主電源がオフ状態中に現在時刻を管理する段階を備える。制御方法は、主電源がオフ状態中にスリープ状態にある前記複数のスレーブECUのそれぞれの起動時刻を管理する管理テーブルに基づいて、前記主電源がオフ状態中に前記現在時刻が前記複数のスレーブECUのそれぞれの起動時刻になるときに、それぞれのスレーブECUに前記車内通信ネットワークを通じて起動信号を送信する段階を備える。
【0013】
第4の態様において、プログラムが提供される。プログラムは、車両に搭載され、車内通信ネットワークを通じて複数のスレーブECUと通信可能なコアECUとして機能するコンピュータに、前記車両の主電源がオフ状態中に現在時刻を管理する手順を実行させる。プログラムは、コンピュータに、主電源がオフ状態中にスリープ状態にある前記複数のスレーブECUのそれぞれの起動時刻を管理する管理テーブルに基づいて、前記主電源がオフ状態中に前記現在時刻が前記複数のスレーブECUのそれぞれの起動時刻になるときに、それぞれのスレーブECUに前記車内通信ネットワークを通じて起動信号を送信する手順を実行させる。
【0014】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態に係る車両20のシステム構成を模式的に示す。
図2】管理テーブル260により管理される管理情報のデータ構造の一例を示す。
図3】ECU202が生成するECU起動情報のデータ構造を示す。
図4】IG電源がオフされた場合にECU202が実行する処理の実行手順を示す。
図5】コンピュータ2000の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0017】
図1は、一実施形態に係る車両20のシステム構成を模式的に示す。車両20は、車載電子システム22を備える。車載電子システム22は、TCU201、コアECU202、ECU210、ECU220a~ECU220e、ECU230、ECU240a~ECU240g、ECU297、MID298、及びIVI299と、診断ポート34とを備える。なお、図1には車両20が車載電子システム22を備える構成を示すが、車両20の構成は本実施形態の例に限られない。また、車載電子システム22の構成は本実施形態の例に限られない。
【0018】
診断ポート34には、車両20の診断情報を取得する外部診断装置が接続される。外部診断装置は、例えば車載式故障診断装置である。診断ポート34は、例えばOBD-IIコネクタであり、車載式故障診断装置は、例えばOBD-II仕様に準拠したスキャンツールである。
【0019】
コアECU202、ECU210、ECU220a~ECU220e、ECU230、ECU240a~ECU240g、及びECU297は、車載機器の制御及び診断の少なくとも一方を行う電子制御ユニット(Electronic Control Unit)である。コアECU202、ECU210、ECU220a~ECU220e、ECU230、ECU240a~ECU240g、及びECU297のそれぞれのECUは、プロセッサ及び揮発性メモリ及び不揮発性メモリを備えるコンピュータを含んで構成され得る。TCU201は、テレマティクス制御ユニット(Telematics Control Unit)である。TCU201は、車両20外との間の無線通信を担う。例えば、TCU201は、移動体網を通じた無線通信や、無線LAN通信を担う。
【0020】
コアECU202は通信ネットワーク180aを介してECU210に接続されている。コアECU202とECU210とは、通信ネットワーク180aを通じて相互に通信可能である。コアECU202は通信ネットワーク180eを介してECU230に接続されている。コアECU202とECU230とは、通信ネットワーク180eを通じて相互に通信可能である。
【0021】
ECU210は、通信ネットワーク180bを介してECU220aを含む複数のECUに接続されている。ECU210と通信ネットワーク180bに接続された複数のECUは、通信ネットワーク180bを通じて相互に通信可能である。ECU210は、通信ネットワーク180cを介してECU220b~ECU220dを含む複数のECUに接続されている。ECU210と通信ネットワーク180cに接続された複数のECUは、通信ネットワーク180cを通じて相互に通信可能である。ECU210は、通信ネットワーク180dを介してECU220eを含む複数のECUに接続されている。ECU210と通信ネットワーク180dに接続された複数のECUは、通信ネットワーク180dを通じて相互に通信可能である。
【0022】
ECU230は、通信ネットワーク180fを介してECU240a~ECU240cを含む複数のECUに接続されている。ECU230と通信ネットワーク180fに接続された複数のECUは、通信ネットワーク180fを通じて相互に通信可能である。ECU230は、通信ネットワーク180gを介してECU240d~ECU240fを含む複数のECUに接続されている。ECU230と通信ネットワーク180gに接続された複数のECUは、通信ネットワーク180gを通じて相互に通信可能である。ECU230は、通信ネットワーク180hを介してECU240g~ECU240iを含む複数のECUに接続されている。ECU230と通信ネットワーク180hに接続された複数のECUは、通信ネットワーク180hを通じて相互に通信可能である。
【0023】
コアECU202は通信ネットワーク180fを介してTCU201に接続されている。コアECU202とTCU201とは通信ネットワーク180fを通じて相互に通信可能である。コアECU202は通信ネットワーク180kを介してMID298に接続されている。コアECU202とMID298とは通信ネットワーク180kを通じて相互に通信可能である。コアECU202は通信ネットワーク180lを介してIVI299に接続されている。コアECU202とIVI299とは通信ネットワーク180lを通じて相互に通信可能である。コアECU202は通信ネットワーク180mを介して診断ポート34に接続されている。
【0024】
本実施形態において、ECU220aは燃料噴射装置を制御するECUであるとする。ECU220bは、車両20の走行用の電気エネルギーを蓄積する高圧バッテリを制御するECUであるとする。ECU220cは、高圧バッテリからの高圧電圧を、低圧バッテリを充電するための低圧電力に変換する電力コンバータを制御するECUであるとする。ECU220dは、高圧バッテリの充電を行うバッテリチャージャを制御するECUであるとする。ECU220eは、グリルシャッタを制御するECUであるとする。ECU297は、例えばADAS(先進運転支援システム)に関する制御を行うECUである。
【0025】
通信ネットワーク180a、通信ネットワーク180b、通信ネットワーク180c、通信ネットワーク180e、通信ネットワーク180f、通信ネットワーク180g、通信ネットワーク180h、通信ネットワーク180j、及び通信ネットワーク180k、通信ネットワーク180mは、少なくともCAN(Controller Area Network)通信ネットワークを含む車内通信ネットワークである。通信ネットワーク180dは、LIN(Local Interconnect Network)等に準拠した車内通信ネットワーク線である。通信ネットワーク180i及び通信ネットワーク180lは、イーサネット(登録商標)に準拠した通信ネットワーク及びCAN通信ネットワークを含む車内通信ネットワークである。なお、通信ネットワーク180a~通信ネットワーク180mのことを「通信ネットワーク180」と総称する場合がある。
【0026】
TCU201及びIVI299は、GNSS信号を受信して現在時刻を取得する機能を備える。コアECU202は、TCU201及びIVI299の少なくとも一方と時刻同期を行うことによって現在時刻を取得する。コアECU202は、MID298に現在時刻を表示させる。また、コアECU202は、TCU201又はIVI299との間の時刻同期によって取得した現在時刻に基づいて、車両20のイグニッション電源(IG電源)オフ後のスリープ状態における現在時刻を計時する。なお、イグニッション電源は主電源の一例である。
【0027】
コアECU202は、ECU220a~ECU220e、ECU240a~ECU240i、ECU210、ECU230、及びECU297の通信を中継する機能を持つ。ECU220a~ECU220e、ECU240a~ECU240i、ECU210、ECU230、及びECU297は、車内通信ネットワークを通じて通信可能なスレーブECUである。ECU202は、IG電源がオフ状態中におけるECU220a~ECU220e及びECU240a~ECU240fの起動を管理する。一方、ECU240g、ECU240h、ECU240i、及びECU297は、IG電源がオフ状態中に現在時刻を自ら管理する機能を有し、現在時刻が予め定められた起動時刻になる場合に自ら起動するスレーブECUである。ECU240g、ECU240h、ECU240i、及びECU297はECU202の制御によらずに起動可能なスレーブECUである。
【0028】
コアECU202は、時刻管理部250と、管理テーブル260と、診断データ記憶部280と、通信部270と、書き換え制御部290とを備える。
【0029】
時刻管理部250は、車両のIG電源がオフ状態中に現在時刻を管理する。管理テーブル260は、IG電源がオフ状態中にスリープ状態にあるECU220a~ECU220e及びECU240a~ECU240fのそれぞれの起動時刻を管理する。コアECU202は、IG電源がオフ状態中に現在時刻がECU220a~ECU220e及びECU240a~ECU240fのそれぞれの起動時刻になるときに、それぞれのECUに車内通信ネットワークを通じて起動信号を送信する。これにより、ECU220a~ECU220e及びECU240a~ECU240fの各ECUは、起動用の時間管理をせず、かつ、スリープ状態で起動信号を待機することができるので、車載電子システム22における消費電力を削減することができる。なお、IG電源は、車両20の主電源の一例である。
【0030】
コアECU202は、起動信号を現在時刻とともに送信する。これにより、ECU220及びECU240は起動時に現在時刻を受信することができる。これにより、ECU220及びECU240がタイマー機能を持つマイコンを備える必要がないため、コストを削減することができる。なお、ECU220及びECU240は、起動信号に応じて起動した場合に、診断データを取得してよい。このとき、ECU220及びECU240は、起動信号とともに受信した現在時刻に基づいて診断データの取得時刻を特定してよい。ECU220及びECU240は、特定した取得時刻を診断データに対応づけてECU202に送信してよい。
【0031】
コアECU202は、IG電源がオフ状態になった場合に、ECU220a~ECU220e及びECU240a~ECU240fのそれぞれから、それぞれのECUの起動時刻を受信し、受信した起動時刻に基づいて、管理テーブル260が管理する起動時刻を更新する。これにより、IG電源のオフサイクルごとに起動時刻を更新することができる。そのため、ECU220a~ECU220e及びECU240a~ECU240fを不必要にウェイクアップをさせる必要がなくなるため、消費電力を低減することができる。
【0032】
書き換え制御部290は、有線通信又は無線通信によるECU220a~ECU220e及びECU240a~ECU240fのプログラム書き換えを制御する。無線通信で行うプログラムの書き換えは、OTA(Over The Air)と呼ばれる場合がある。コアECU202は、ECU220a~ECU220e及びECU240a~ECU240fのうちの少なくとも1つのECUのプログラム書き換えが行われた場合に、プログラム書き換えが行われたECUから、プログラム書き換えが行われたECUの起動時間を受信し、受信した起動時刻に基づいて、管理テーブル260が管理する起動時刻を更新する。
【0033】
例えば書き換え制御部290がECU220aのプログラム書き換えを行う場合、TCU201を通じて無線通信によって受信したECU202a用のプログラムを、ECU220aに転送する。このとき、書き換え制御部290は、ECU220aをプログラム書き換えモードで動作させることにより、ECU202a用のプログラムをECU220aに書き込む。書き換え制御部290は、ECU220aに書き込まれたプログラムがECU220aの起動時に読み込まれるようにアクティベートして、ECU220aを再起動する。ECU220aに書き込まれたプログラムには、IG電源オフ中のECU220aの起動時刻を示す起動時刻情報が含まれる。ECU220aは、アクティベート後に再起動した場合に、ECU220aに書き込まれたプログラムに含まれる起動時刻情報をECU202に送信する。これにより、ECUのプログラム書き換えによって、IGオフ中の起動時刻が変更されたり、IGオフ中の起動時刻が追加されたりした場合でも、正しい起動時刻にECUを起動することが可能になる。
【0034】
通信部270は、車両20の診断データを取得する外部診断装置と通信する。ECU220a~ECU220e及びECU240a~ECU240fのそれぞれは、起動信号の受信に応じて起動した場合に、それぞれのECUが取得した車載機器の診断情報をコアECU202に送信する。コアECU202は、ECU220a~ECU220e及びECU240a~ECU240fのそれぞれから受信した診断情報を記憶する。これにより、外部診断装置に対する診断情報の応答性を高めることができる。
【0035】
上述したように、ECU240g、ECU240h、ECU240i、及びECU297は、IG電源がオフ状態中に現在時刻を管理する機能を有し、現在時刻が予め定められた起動時刻になる場合に起動するECUである。管理テーブル260により起動時刻が管理されるECU220a~ECU220e及びECU240a~ECU240fは、IG電源がオフ状態中に現在時刻を管理する機能を有していないECUである。つまり、管理テーブル260には、ECU240g、ECU240h、ECU240i、及びECU297の起動時間情報は含まれない。これにより、管理テーブル260には、IG電源がオフ状態中に現在時刻を管理する機能を有していないECUのみの起動時刻情報を管理すればよい。そのため、管理テーブル260で管理されるべき情報量を削減することができるので、スリープ中に動作させる必要があるメモリの容量を削減することができる。
【0036】
なお、車内通信ネットワーク180fに接続されているECU240a~ECU240cは、IG電源がオフ状態中においてIG電源オフの5時間後に起動され得るECUである。例えば、車内通信ネットワーク180gに接続されているECU240a~ECU240cは、IG電源がオフ後に3時間毎に起動され得るECUである。管理テーブル260は、ECU240a~ECU240cの識別情報に対応づけて通信ネットワーク180fを識別する情報を管理し、ECU240d~ECU240fの識別情報に対応づけて通信ネットワーク180gを識別する情報をさらに管理する。コアECU202は、IG電源オフの5時間後に、通信ネットワーク180fに接続されたECUを起動する起動信号を通信ネットワーク180fに送信し、IG電源オフ後に3時間毎に、車内通信ネットワーク180gに接続されたECUを起動する起動信号を通信ネットワーク180gに送信する。
【0037】
このように、ECU220a~ECU220e及びECU240a~ECU240fのうち、IG電源がオフ状態中に第1起動時刻で起動されるべき複数の第1ECUが、第1車内通信ネットワークに接続されており、ECU220a~ECU220e及びECU240a~ECU240fのうち、IG電源がオフ状態中に第1起動時刻とは異なる第2起動時刻で起動されるべき複数の第2スレーブECUが第2車内通信ネットワークに接続されている。そして、管理テーブル260は、複数の第1スレーブECUの識別情報に対応づけて第1車内通信ネットワークを識別する情報を管理し、複数の第2スレーブECUの識別情報に対応づけて第2車内通信ネットワークを識別する情報をさらに管理する。コアECU202は、第1起動時刻において、第1車内通信ネットワークに接続されたスレーブECUを起動する起動信号を第1車内通信ネットワークに送信し、第2起動時刻において、第2車内通信ネットワークに接続されたスレーブECUを起動する起動信号を第2車内通信ネットワークに送信する。これにより、略同一時刻に起動する複数のECUを一つの通信ネットワーク180にできるだけ集約して接続することで、その通信ネットワーク180にはその通信ネットワークに接続された全てのECUを起動する起動信号を送信する構成を採用することが用意になる。そのため、その通信ネットワーク180に接続するECUには、個別にECUを起動する起動信号を検出する機能を持つトランシーバをECUに組み込む必要がなくなる。これにより、ウェイクアップ対応したトランシーバの個数を削減することができる。そのため、コストを削減することができる。
【0038】
管理テーブル260は、ECU220a~ECU220e及びECU240a~ECU240fのそれぞれの起動時刻として許容される時間範囲を示す起動時間範囲情報を管理する。コアECU202は、管理テーブル260が管理している起動時間範囲情報に基づいて、ECU220a~ECU220e及びECU240a~ECU240fのうち、同一の車内通信ネットワークに接続され、かつ、起動時刻として許容される時間範囲が重なる2つ以上のスレーブECUを選択し、選択した2つ以上のスレーブECUが接続された車内通信ネットワークに、当該許容される時間範囲が重なる時間内の時刻に、起動信号を送信する。
【0039】
図2は、管理テーブル260により管理される管理情報のデータ構造の一例を示す。管理情報は、ECU-IDと、個別起動認識機能と、通信ネットワークIDと、起動時刻1及び起動時刻2を含む複数の起動時刻とを対応づける情報である。
【0040】
「ECUID」は、車両20が備えるECUのうち、IGオフ中にECU202が起動させるECUの識別情報である。図2のECUID「1」~「5」は、順にECU220a~ECU220eを示す。ECUID「6」~「8」は、順にECU240a-ECU240cを示す。ECUID「9」~「11」は、順にECU240d-ECU240fを示すものとする。
【0041】
「個別起動認識機能」は、ECUを個別に起動する起動信号を認識する機能を持つECUであるか否かを示す。個別起動認識機能「1」は、ECUを個別に起動する起動信号を認識する機能を持つECUであることを示し、個別起動認識機能「0」は、ECUを個別に起動する起動信号を認識する機能を持たないECUであることを示す。例えば、ECU220a~ECU220eは、ECUを個別に起動する起動信号を認識する機能を持つECUである。具体的には、ECU220aは、スリープ中に通信ネットワーク180上を流れる信号の中から、ECU220aを指定した起動信号を検出する機能を持ち、ECU220aを指定した起動信号を検出するとスリープ状態から起動する。
【0042】
一方、ECU240a~ECU240dは、ECUを個別に起動する起動信号を認識する機能を持たないECUである。例えば、ECU240a~ECU240dは、スリープ中に通信ネットワーク180上を流れる信号の中から、通信ネットワーク全体に対する起動信号を検出するとスリープ状態から起動する機能を持つ。しかし、ECU240a~ECU240dはいずれも、自身のECUを指定した起動信号をスリープ中に検出する機能を持たない。
【0043】
「通信ネットワークID」は、ECUが接続され通信ネットワーク180を識別する情報である。図2の通信ネットワークID「1」~「5」は、順に通信ネットワーク180b、通信ネットワーク180c、通信ネットワーク180d、通信ネットワーク180f、及び通信ネットワーク180gを示すものとする。
【0044】
「起動時刻1」及び「起動時刻2」のそれぞれは、起動時刻及び許容時間をデータ項目として含む。「起動時刻」は、起動する時刻を示す情報である。本実施形態において、「起動時刻」は、IG電源がオフされてからECUを起動するまでの時間を示すものとする。「許容時間」は、起動時間を基準としてECUを起動することが許容された時間範囲を示す。「起動時刻」及び「許容範囲」は、ECUを起動する時間範囲を示す情報である。
【0045】
一例として、例えば、ECUID「1」に対応づけられた起動時刻「5h」及び許容時間「±1h」は、燃料噴射装置の気化器のリークチェックを行うために、IG電源がオフされてから4時間後~6時間後の時間範囲内でECU220aを起動すべきことを示す。
【0046】
また、ECUID「2」の「起動時刻1」の「5min毎」及び許容時間「±0min」は、高圧バッテリの温度を定期的に測定するために、IG電源がオフされてから5分間隔でECU220bを起動することを示す。ECUID「2」の「起動時刻2」及びECUID「3」の「起動時刻1」の「6d」及び許容時間「±1d」は、高圧バッテリを用いて低圧バッテリの補充電を行うために、IG電源がオフされてから5日~7日間隔でECU220b及びECU220cを起動することを示す。また、ECUID「4」の起動時刻「2:00」は、高圧バッテリの充電をユーザが設定した「午前2時」から開始するために、IG電源がオフされた後の2時になった場合にECU220dを起動することを示す。
【0047】
図3は、ECU202が生成するECU起動情報のデータ構造を示す。ECU起動情報は、ECUIDと、NWIDと、起動時刻とを対応づける情報である。ECU202は、IGオフ時に、IG管理テーブル260を参照して、各ECUの起動時刻を決定する。
【0048】
「ECUID」は、ECUの識別情報を示す。「ECUID」には、管理テーブル260の「ECUID」のいずれか1つ以上の値が格納される。「NWID」は、通信ネットワーク全体に対する起動信号を送信するべき通信ネットワーク180の識別情報を示す。「起動時刻」は、ECUの起動時刻である。具体的には、「起動時刻」は、IG電源がオフされてからECUを起動する時刻までの時間を示す。
【0049】
例えば、図3のECU起動情報によると、ECU202は、ECUID「1」及び「5」で識別されるECUを、IGオフ後「+5h」の起動時刻に起動することを示す。つまり、ECU202は、IGオフ後5時間後に、ECUID「1」で識別されるECU220a及びECUID「5」で識別されるECU220eを起動することを示す。
【0050】
ここで、図2の管理情報によると、ECU220aには4時間から6時間の時間範囲内に起動するべきことが許容され、ECU220eには5時間から7時間の時間範囲内に起動するべきことが許容されている。ECU220aを起動することが許容された時間範囲と、ECU220eの起動することが許容された時間範囲とは、IGオフ後「5時間後~6時間後」の時間範囲で重なる。そのため、ECU202は、起動することが許容された時間範囲が重なる「5時間後~6時間後」の時間範囲内の時刻を、ECU220a及びECU220eの起動時刻として決定する。ECU220aを起動するためにはECU210を起動する必要がある。また、ECU220eを起動するためにもECU210を起動する必要がある。そのため、ECU220a及びECU220eの起動時刻を同じ時刻にすることで、ECU220a及びECU220eを起動するためにECU210を1度だけ起動すればよくなる。そのため、ECU210a及びECU210eを別々の時刻に起動する場合に比べて、ECU210a及びECU220eを起動するために必要な消費電力を削減することができる。
【0051】
上述したように、ECU220a~ECU220eは、個別の起動信号を認識する機能を持つECUである。したがって、ECU220a~ECU220eを起動する場合には、通信ネットワーク全体に対する起動信号を送信しない。そのため、ECU220a~ECU220eについては、ECU起動情報の「NWID」には無効の値が設定される。
【0052】
また、図3のECU起動情報に示されるように、ECU202は、管理情報に基づいて、ECUID「2」で識別されるECU220bをIG電源オフ後5分毎に起動すると決定する。また、ECU202は、管理情報に従って、ECUID「2」で識別されるECU220b及びECUID「3」で識別されるECU220cをIG電源オフ後6日毎に起動すると決定する。また、ECU202は、管理情報に従って、ECUID「4」で識別されるECU220dをIG電源オフ後の午前2時に起動すると決定する。
【0053】
次に、ECU240a~ECU240dのように個別の起動信号を認識する機能を持たないECUの起動時刻について説明する。図3に示されるように、ECU202は、NWID「4」で識別される通信ネットワーク180fに、通信ネットワーク全体に対する起動信号を送信すると決定する。図2の管理情報によれば、ECU240a、ECU240b、及びECU240cの起動を許容する時間範囲は、それぞれIG電源オフ後の「4時間~6時間後」、「5時間~7時間後」、及び「3時間~5時間後」である。よって、ECU202は、これらの時間範囲で重複するIG電源オフから5時間後の時刻を、ECU240a、ECU240b、及びECU240cの起動時刻として決定する。これにより、ECU202は、ECU240a、ECU240b、及びECU240cを同時に起動することができる。よって、ECU240a、ECU240b、及びECU240cを別々の時刻に起動する場合に比べて、起動するために必要な消費電力を削減することができる。
【0054】
また、図3に示されるように、ECU202は、NWID「5」で識別される通信ネットワーク180gに、通信ネットワーク全体に対する起動信号を送信すると決定する。図2の管理情報によれば、ECU240d、ECU240e、及びECU240fの起動を許容する時間範囲は、それぞれIG電源オフ後の「1時間~3時間毎」、「2時間~4時間後」、及び「5時間~7時間後」である。よって、ECU202は、IG電源オフ後3時間毎の時刻を、ECU240a、ECU240b、及びECU240cの起動時刻として決定して、IGで元オフ後3時間後に通信ネットワーク全体に対する起動信号を通信ネットワーク180gに送信すると決定する。これにより、ECU240d及びECU240eは、図2の管理情報で許容される範囲内のタイミングで同時に起動することができる。なお、ECU240fは図2の管理情報で許容されるタイミングより多くのタイミングで起動される。しかし、ECU240d及びECU240eを同時に起動することで、ECU240d及びECU240eを別々の時刻に起動する場合に比べて、ECU240fが起動される回数を少なくすることができる。このように、まとめることで、ECU240d、ECU240e、及びECU240fを別々の時刻に起動する場合に比べて、各ECUを起動するために必要な消費電力を削減することができる。
【0055】
図4は、IG電源がオフされた場合にECU202が実行する処理の実行手順を示す。図4のフローチャートの処理は、車両20のIG電源がオフになった場合に開始される。
【0056】
S400において、ECU202は、スリープ中にECU202が起動させる対象となるECU220a~ECU220e及びECU240a~ECU240fから、起動時刻を示す起動時刻情報を収集する。ECU220a~ECU220e及びECU240a~ECU240fは、それぞれのECUを制御するプログラムによって定められた起動時刻及び許容時間を示す起動時刻情報を記憶している。ECU220a~ECU220e及びECU240a~ECU240fは、IG電源がオフされた場合に、ECUを制御するプログラムによって定められた起動時刻情報を、通信ネットワーク180を通じてECU202に送信する。なお、ECU202は、IG電源がオフされた場合に、起動時刻情報の送信を要求する信号をECU220a~ECU220e及びECU240a~ECU240fに送信することによって、起動時刻情報を収集してよい。なお、ECU220a~ECU220e及びECU240a~ECU240fのうち、スリープ中に供給される電源系統だけでなくIG電源に接続されているECUは、IG電源からの電源供給が停止した場合に、起動時刻情報をECU202に送信してよい。
【0057】
S402において、各ECUから収集した起動時刻情報に基づいて、管理情報を更新する。具体的には、ECU202は、各ECUから収集した起動時刻情報に基づいて、管理情報の「起動時刻1」及び「起動時刻2」を含む複数の起動時刻のデータ項目の情報を更新する。
【0058】
S404において、ECU202は、ECU220a~ECU220e及びECU240a~ECU240fの各ECUの起動時刻を決定する。具体的には、ECU202は、S402で更新した管理情報に基づいて、図2及び図3等に関連して説明したように各ECUの起動時刻を含むECU起動情報を決定する。より具体的には、ECU202は、各ECUの起動時刻及び許容時間に基づいて、複数のECUを起動することが許容される時間範囲が重なる時間範囲内に起動時刻を決定する。
【0059】
S406において、ECU202はスリープ状態に遷移する。ECU202がスリープ状態になると、ECU202の電源状態はスリープ状態となり、時刻管理部250が現在時刻の計時を開始する。なお、ECU202は、IG電源がオン中にTCU201又はIVI299との間で時刻同期を行う。時刻管理部250は、スリープ状態にある間、IG電源がオン中に行われた時刻同期によって決定された時刻と、ECU202内のクロック信号に基づいて、現在時刻を決定する。
【0060】
S408において、時刻管理部250は、現在時刻がS404で決定した各ECUの起動時刻のいずれかに該当するか否かを判断する。現在時刻が各ECUの起動時刻のいずれかに該当する場合はS410に移行し、現在時刻が各ECUの起動時刻のいずれにも該当しない場合はS414に処理を移行する。なお、S408において、時刻管理部250は、起動信号の送信に要する遅延時間を考慮して、現在時刻がS404で決定した各ECUの起動時刻より予め定められた遅延時間だけ前の時刻に該当するか否かを判断してよい。
【0061】
S408の判断において現在時刻が各ECUの起動時刻のいずれかに該当すると判断した場合、S410において起動信号を送信する。続いて、S412において、ECU202は、起動したECUが取得した診断データを受信して、受信した診断データを診断データ記憶部280に記憶し、S414に処理を移行する。なお、S412において、各ECUは、S410で送信された現在時刻に基づいて診断データの取得時刻を特定し、診断データの取得時刻を診断データとともにECU202に送信してよい。ECU202は、各ECUから受信した診断データを取得時効に対応づけて診断データ記憶部280に記憶してよい。また、ECU202は、診断ポート34に外部診断装置が接続された場合、各ECUから診断データを受信することなく、診断データ記憶部280に記憶されている診断データを外部診断装置に送信してよい。
【0062】
S414において、IG電源がオンされたか否かを判断する。IG電源がオンされていない場合はS408に処理を移行する。IG電源がオンされた場合、本フローチャートの処理を終了して、ECU202はIG電源がオンされた場合の処理を開始する。
【0063】
以上に説明したように、車載電子システム22によれば、IG電源オフ中にECU202が計時を行い、管理テーブルで定められた起動時刻に複数のECUのそれぞれを起動させる。そのため、ECU202によって起動される複数のECUには計時機能を組み込む必要がなくなる。そのため、車載電子システム22におけるスリープ中の消費電力を削減することができる。
【0064】
車両20は、輸送機器の一例としての車両である。車両は、内燃機関を備える自動車、電気自動車、燃料電池自動車(FCV)等の自動車であってよい。自動車は、バス、トラック、二輪自動車等を含む。車両は、鞍乗型車両等であってよく、バイクであってよい。輸送機器としては、車両の他に、無人航空機を含む航空機、船舶等の機器を含む。輸送機器は、人又は物品を輸送する任意の機器であってよい。輸送機器は移動体の一例である。移動体は、輸送機器に限らず、移動可能な任意の機器であってよい。
【0065】
図5は、本発明の複数の実施形態が全体的又は部分的に具現化され得るコンピュータ2000の例を示す。コンピュータ2000にインストールされたプログラムは、コンピュータ2000を、実施形態に係る車載電子システム等のシステム又はシステムの各部、もしくはECU202等の装置又は当該装置の各部として機能させる、当該システム又はシステムの各部もしくは当該装置又は当該装置の各部に関連付けられるオペレーションを実行させる、及び/又は、実施形態に係るプロセス又は当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ2000に、本明細書に記載の処理手順及びブロック図のブロックのうちのいくつか又はすべてに関連付けられた特定のオペレーションを実行させるべく、CPU2012によって実行されてよい。
【0066】
本実施形態によるコンピュータ2000は、CPU2012、及びRAM2014を含み、それらはホストコントローラ2010によって相互に接続されている。コンピュータ2000はまた、ROM2026、フラッシュメモリ2024、通信インタフェース2022、及び入力/出力チップ2040を含む。ROM2026、フラッシュメモリ2024、通信インタフェース2022、及び入力/出力チップ2040は、入力/出力コントローラ2020を介してホストコントローラ2010に接続されている。
【0067】
CPU2012は、ROM2026及びRAM2014内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。
【0068】
通信インタフェース2022は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。フラッシュメモリ2024は、コンピュータ2000内のCPU2012によって使用されるプログラム及びデータを格納する。ROM2026は、アクティブ化時にコンピュータ2000によって実行されるブートプログラム等、及び/又はコンピュータ2000のハードウエアに依存するプログラムを格納する。入力/出力チップ2040はまた、キーボード、マウス及びモニタ等の様々な入力/出力ユニットをシリアルポート、パラレルポート、キーボードポート、マウスポート、モニタポート、USBポート、HDMI(登録商標)ポート等の入力/出力ポートを介して、入力/出力コントローラ2020に接続してよい。
【0069】
プログラムは、CD-ROM、DVD-ROM、又はメモリカードのようなコンピュータ可読記憶媒体又はネットワークを介して提供される。RAM2014、ROM2026、又はフラッシュメモリ2024は、コンピュータ可読記憶媒体の例である。プログラムは、フラッシュメモリ2024、RAM2014、又はROM2026にインストールされ、CPU2012によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ2000に読み取られ、プログラムと上記様々なタイプのハードウエアリソースとの間の連携をもたらす。装置又は方法が、コンピュータ2000の使用に従い情報のオペレーション又は処理を実現することによって構成されてよい。
【0070】
例えば、コンピュータ2000及び外部デバイス間で通信が実行される場合、CPU2012は、RAM2014にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インタフェース2022に対し、通信処理を命令してよい。通信インタフェース2022は、CPU2012の制御下、RAM2014及びフラッシュメモリ2024のような記録媒体内に提供される送信バッファ処理領域に格納された送信データを読み取り、読み取った送信データをネットワークに送信し、ネットワークから受信された受信データを、記録媒体上に提供される受信バッファ処理領域等に書き込む。
【0071】
また、CPU2012は、フラッシュメモリ2024等のような記録媒体に格納されたファイル又はデータベースの全部又は必要な部分がRAM2014に読み取られるようにし、RAM2014上のデータに対し様々な種類の処理を実行してよい。CPU2012は次に、処理されたデータを記録媒体にライトバックする。
【0072】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、及びデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理にかけられてよい。CPU2012は、RAM2014から読み取られたデータに対し、本明細書に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々な種類のオペレーション、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々な種類の処理を実行してよく、結果をRAM2014にライトバックする。また、CPU2012は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU2012は、第1の属性の属性値が指定されている、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0073】
上で説明したプログラム又はソフトウエアモジュールは、コンピュータ2000上又はコンピュータ2000近傍のコンピュータ可読記憶媒体に格納されてよい。専用通信ネットワーク又はインターネットに接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスク又はRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読記憶媒体として使用可能である。コンピュータ可読記憶媒体に格納されたプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ2000に提供してよい。
【0074】
コンピュータ2000にインストールされ、コンピュータ2000をECU202として機能させるプログラムは、CPU2012等に働きかけて、コンピュータ2000を、ECU202の各部としてそれぞれ機能させてよい。これらのプログラムに記述された情報処理は、コンピュータ2000に読込まれることにより、ソフトウエアと上述した各種のハードウエア資源とが協働した具体的手段であるECU202の各部として機能する。そして、これらの具体的手段によって、本実施形態におけるコンピュータ2000の使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の第1ECU210が構築される。
【0075】
様々な実施形態が、ブロック図等を参照して説明された。ブロック図において各ブロックは、(1)オペレーションが実行されるプロセスの段階又は(2)オペレーションを実行する役割を持つ装置の各部を表わしてよい。特定の段階及び各部が、専用回路、コンピュータ可読記憶媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプログラマブル回路、及び/又はコンピュータ可読記憶媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプロセッサによって実装されてよい。専用回路は、デジタル及び/又はアナログハードウエア回路を含んでよく、集積回路(IC)及び/又はディスクリート回路を含んでよい。プログラマブル回路は、論理AND、論理OR、論理XOR、論理NAND、論理NOR、及び他の論理オペレーション、フリップフロップ、レジスタ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)等のようなメモリ要素等を含む、再構成可能なハードウエア回路を含んでよい。
【0076】
コンピュータ可読記憶媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよく、その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読記憶媒体は、処理手順又はブロック図で指定されたオペレーションを実行するための手段をもたらすべく実行され得る命令を含む製品の少なくとも一部を構成する。コンピュータ可読記憶媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読記憶媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROM又はフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(登録商標)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0077】
コンピュータ可読命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、又はSmalltalk(登録商標)、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、及び「C」プログラミング言語又は同様のプログラミング言語のような従来の手続型プログラミング言語を含む、1又は複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコード又はオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。
【0078】
コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサ又はプログラマブル回路に対し、ローカルに又はローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して提供され、説明された処理手順又はブロック図で指定されたオペレーションを実行するための手段をもたらすべく、コンピュータ可読命令を実行してよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
【0079】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0080】
特許請求の範囲、明細書、及び図面中において示した装置、システム、プログラム、及び方法における動作、手順、ステップ、及び段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、及び図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0081】
20 車両
22 車載電子システム
34 診断ポート
180 通信ネットワーク
201 TCU
202 ECU
210、220、230、240 ECU
250 時刻管理部
260 管理テーブル
270 通信部
280 診断データ記憶部
290 書き換え制御部
297 ECU
298 MID
299 IVI
2000 コンピュータ
2010 ホストコントローラ
2012 CPU
2014 RAM
2020 入力/出力コントローラ
2022 通信インタフェース
2024 フラッシュメモリ
2026 ROM
2040 入力/出力チップ
図1
図2
図3
図4
図5