(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155129
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】差動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20221005BHJP
【FI】
F16H57/04 J
F16H57/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058474
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健二
(72)【発明者】
【氏名】井樽 駿介
【テーマコード(参考)】
3J063
【Fターム(参考)】
3J063AA01
3J063AB04
3J063AC11
3J063BA11
3J063CA05
3J063CB05
3J063XD03
3J063XD17
3J063XD34
3J063XD47
3J063XD54
3J063XD62
3J063XD72
3J063XD73
3J063XF14
(57)【要約】
【課題】リングギヤ軸と交差する方向に分割可能なキャリアを備えていても、部品点数を増加させることなくオイルを滞留させることが可能な差動装置を提供すること。
【解決手段】差動装置1Aは、リングギヤ2と、リングギヤ2に噛み合う第1ギヤ3と、リングギヤ2と一体に回転するギヤケース4と、リングギヤ2、第1ギヤ3、及び、ギヤケース4を収容するキャリア5と、を備えている。キャリア5は、ドライブシャフト8の軸方向と交差する方向に分割可能な、第1キャリア部6及び第2キャリア部7を有している。第1キャリア部6及び第2キャリア部7は、その内周面の、ドライブシャフト8よりも上方であると共に、リングギヤ2と接触しない部位であり、かつ、ドライブシャフト8の軸方向を法線方向とする断面視でリングギヤ2と少なくとも一部が重なる部位に、リングギヤ2の表面から離れたオイルを滞留可能な第1受部61、第2受部71を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リングギヤと、
前記リングギヤに噛み合う第1ギヤと、
前記リングギヤと一体に回転するギヤケースと、
前記リングギヤ、前記第1ギヤ、及び、前記ギヤケースを収容する筐体であるキャリアと、を備え、
前記キャリアは、前記リングギヤの軸心を通るドライブシャフトの軸方向と交差する方向に分割可能な、第1キャリア部及び第2キャリア部を有し、
前記第1キャリア部は、当該第1キャリア部の内周面の、前記ドライブシャフトよりも上方であると共に、前記リングギヤと接触しない部位であり、かつ、前記ドライブシャフトの軸方向を法線方向とする断面視で前記リングギヤと少なくとも一部が重なる部位に、前記リングギヤの表面から離れたオイルを滞留可能な第1受部を備え、
前記第2キャリア部は、当該第2キャリア部の内周面の、前記ドライブシャフトよりも上方であると共に、前記リングギヤと接触しない部位であり、かつ、前記ドライブシャフトの軸方向を法線方向とする断面視で前記リングギヤと少なくとも一部が重なる部位に、前記リングギヤの表面から離れたオイルを滞留可能な第2受部を備えている、
差動装置。
【請求項2】
前記第1受部の下面は、前記リングギヤから当該リングギヤの軸心方向に離れるに連れて下に下がる第1傾斜面を有している、
請求項1に記載の差動装置。
【請求項3】
前記第2受部の下面は、前記リングギヤから当該リングギヤの軸心方向に離れるに連れて下に下がる第2傾斜面を有している、
請求項1または2に記載の差動装置。
【請求項4】
前記第2受部は、当該第2受部に滞留したオイルの少なくとも一部を落下可能に形成されている、
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の差動装置。
【請求項5】
前記第1キャリア部は、前記第2キャリア部よりも、前方に配置され、
前記第1キャリア部の前後方向の長さは、前記第2キャリア部の前後方向の長さよりも長い、
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の差動装置。
【請求項6】
前記第1受部は、当該第1受部に滞留したオイルの少なくとも一部が落下可能に形成されている、
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の差動装置。
【請求項7】
前記ギヤケースは、外周面に開口部を有し、
前記第1受部は、前記第1受部から落下したオイルを、前記開口部を通って前記ギヤケースの内部へと滴下させることが可能な位置に設けられている、
請求項6に記載の差動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の左右の車輪の差動や、前後輪の差動を行うための差動装置は、高負荷かつ高速回転で運転されるため、歯車の歯面や、軸受等に潤滑油を供給する必要がある。差動装置には、一般に跳ねかけ潤滑が採用されている。その跳ねかけ潤滑を採用した場合は、安定的な潤滑供給や、燃費向上のための撹拌抵抗低減という課題がある。その課題を解消するための手段としては、オイルを貯留するという構造が用いられている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1に記載のディファレンシャル装置の潤滑構造では、変速機ケース(3)のライトケース(4)の内壁面(3A)に、オイルを貯留するオイル貯留部(30)を形成している。オイル貯留部(30)は、ディファレンシャルケース(10)の回転中心軸(Co)の上方の位置に窪んで形成されている。オイル貯留部(30)の底壁部(31)のリングギヤ(11)側の先端部には、オイルを作動歯車機構(12)に供給するための開口部(10A)が形成されている。
【0004】
特許文献1に記載の変速機ケース(3)は、回転軸(Co)に対して平行方向に分割可能な右側のライトケース(4)と、左側のレフトケース(5)と、を結合して構成されている。変速機ケース(3)は、このように分割されて形成されていることで、追加部品を用いることなく、ライトケース(4)にオイル貯留部(30)を容易に形成できるようにしている。
【0005】
特許文献2に記載の差動機構の潤滑構造は、リングギヤ(7)から飛散した潤滑油を当接させる突起部(12)と、突起部(12)から飛散した潤滑油を導き入れる油溜部(15)と、油溜部(15)から潤滑油を滴下させる開口部(16)と、を有する。
【0006】
特許文献2に記載の差動機構のハウジング(4)は、リングギヤ軸に対して平行方向に分割可能な右側のクラッチケース(2)と、左側のミッションケース(3)と、を結合して構成されている。ハウジング(4)は、このように分割可能に形成されていることで、追加部品を用いることなく、クラッチケース(2)に油溜部(15)を容易に形成できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-215026号公報
【特許文献2】特開平8-54052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、ヘベルギヤを用いた作動装置のキャリア(ギヤボックス)は、リングギヤ軸に対して垂直方向に分割された第1キャリアと第2キャリアとを結合して構成されている。リングギヤ軸と交差する方向に分割されるキャリアは、レイアウト及び部品の金型成形の製法上、下方に溜まるオイルの油面よりも上側に、オイルを滞留させるオイル滞留部を設け難いという問題点があった。
【0009】
この問題点を解消するために、追加部材を使ってオイル滞留部を設けた場合は、部品点数が増加するため、コストアップになるという問題点があった。
【0010】
本発明は、このような問題を解決するために創作されたものであり、リングギヤの軸と交差する方向に分割可能なキャリアを備えていても、部品点数を増加させることなくオイルを滞留させることが可能な差動装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記した課題を解決するために、本発明に係る差動装置は、リングギヤと、前記リングギヤに噛み合う第1ギヤと、前記リングギヤと一体に回転するギヤケースと、前記リングギヤ、前記第1ギヤ、及び、前記ギヤケースを収容する筐体であるキャリアと、を備え、前記キャリアは、前記リングギヤの軸心を通るドライブシャフトの軸方向と交差する方向に分割可能な、第1キャリア部及び第2キャリア部を有し、前記第1キャリア部は、当該第1キャリア部の内周面の、前記ドライブシャフトよりも上方であると共に、前記リングギヤと接触しない部位であり、かつ、前記ドライブシャフトの軸方向を法線方向とする断面視で前記リングギヤと少なくとも一部が重なる部位に、前記リングギヤの表面から離れたオイルを滞留可能な第1受部を備え、前記第2キャリア部は、当該第2キャリア部の内周面の、前記ドライブシャフトよりも上方であると共に、前記リングギヤと接触しない部位であり、かつ、前記ドライブシャフトの軸方向を法線方向とする断面視で前記リングギヤと少なくとも一部が重なる部位に、前記リングギヤの表面から離れたオイルを滞留可能な第2受部を備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、リングギヤの軸と交差する方向に分割可能なキャリアを備えていても、部品点数を増加させることなくオイルを滞留させることが可能な差動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】本発明の第一の実施形態に係る差動装置の第1キャリア部を示す要部斜視図である。
【
図3】本発明の第一の実施形態に係る差動装置の第2キャリア部を示す要部斜視図である。
【
図6】本発明の第一の実施形態に係る差動装置を示す一部断面を有する要部概略斜視図である。
【
図7】
図4に示す第1受部周辺をB方向から見たときの状態を示す要部縮図である。
【
図8】本発明の第二の実施形態に係る差動装置における第1キャリア部及びギヤケースの設置状態を示す要部斜視図である。
【
図9】本発明の第二の実施形態に係る差動装置における第2キャリア部及びギヤケースの設置状態を示す要部斜視図である。
【
図10】本発明の第三の実施形態に係る差動装置を示す要部概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、参照する図面は、分かり易さのためにデフォルメされたものであり、各部材の形状や寸法等を正確に表したものではない。
【0015】
[第一の実施形態]
図1~
図7を参照して、本発明の第一の実施形態に係る差動装置1Aを説明する。
【0016】
≪差動装置≫
図1に示すように、差動装置1Aは、左後輪と右後輪とを差動回転させるための装置である。差動装置1Aは、リングギヤ2と、リングギヤ2に噛み合う第1ギヤ3と、リングギヤ2と一体に回転するギヤケース4(
図2参照)と、リングギヤ2、第1ギヤ3及びギヤケース4を収容するキャリア5と、を備えている。
【0017】
≪リングギヤ≫
図2に示すように、リングギヤ2は、第1ギヤ3よりも大径の環状のベベルギヤから成る。リングギヤ2の軸方向の左端部には、ギヤケース4に一体形成されたフランジ部42が固定されている。このため、リングギヤ2は、ギヤケース4と一体となって軸心O1回りに回転する。
【0018】
≪第1ギヤ≫
図1に示すように、第1ギヤ3は、例えば、ドライブピニオンギヤから成る。第1ギヤ3は、リングギヤ2に直交するようにして噛合している。第1ギヤ3は、リングギヤ2の軸線O1-O1に直交する方向に沿うよう配置されたドライブピニオンシャフト30の後端部に一体に設けられている。ドライブピニオンシャフト30の後端部は、ベアリング31,32を介在してキャリア5の第1キャリア部6に軸支されている。第1ギヤ3、ドライブピニオンシャフト30及びベアリング31,32は、ピニオンシャフト収容部69に収容されている。
【0019】
≪ギヤケース≫
図2に示すように、ギヤケース4は、軸線O1―O1を中心として回転するデフケースである。ギヤケース4には、不図示のギヤ収納室を構成する略円筒状のシェル部43と、シェル部43の左右両端側に形成された円筒状のボス部44と、シェル部43の左端部寄りの位置に形成されたフランジ部42と、が一体に形成されている。ギヤケース4には、ギヤケース4に径方向に延設されたピニオンシャフト41と、ピニオンシャフト41を中心として回転する不図示の一対のピニオンギヤと、ピニオンギヤに噛合する不図示の一対のサイドギヤと、が設けられている。ギヤケース4は、左右のボス部44をそれぞれ二つ一組のベアリング46,48を介在してキャリア5に回転自在に軸支されている。
【0020】
<開口部>
ギヤケース4のシェル部43の外周面には、開口部4aが形成されている。開口部4aは、第1受部61から落下したオイルを、ギヤケース4内に滴下して潤滑させるための開口である。このため、第1受部61及び第2受部71は、開口部4aの上方に配置されている。これにより、第1受部61及び第2受部71から落下したオイルは、開口部4aを通ってギヤケース4の内部へと滴下する。開口部4aは、例えば、ギヤケース4の外周面において、第1受部61及び第2受部71の下方に位置に、周方向に適宜な間隔で複数の形成されている。また、開口部4aは、ギヤケース4内に不図示のピニオンギヤ及びサイドギヤを設けるときの挿通孔としても利用可能である。
【0021】
≪キャリア≫
図1に示すように、キャリア5は、筐体である。キャリア5は、リングギヤ2の軸心O1を通るドライブシャフト8の軸線と交差する方向に分割可能な、第1キャリア部6及び第2キャリア部7を有して成る。本第一の実施形態では、O1は左右方向に配置され、キャリア5は左右方向に分割される。キャリア5は、不図示のプロペラシャフトの軸方向におけるドライブシャフト8と重なる位置で、前側の第1キャリア部6と、後側の第2キャリア部7とに分割可能に、ボルトによって締結して一体に組み付けられている。
【0022】
図1または
図2に示すように、キャリア5内には、リングギヤ2と、第1ギヤ3と、ギヤケース4と、ドライブピニオンシャフト30と、複数のベアリング31,32,46,48と、オイルシール45,47と、が配置されている。
【0023】
キャリア5の底部には、オイルを貯留する油溜まり部5aが形成されている。油溜まり部5aには、リングギヤ2の下端部、及び、第1ギヤ3の下端部が浸漬される程度の液面レベルまで潤滑油が貯留されている。
【0024】
図2及び
図3に示すように、キャリア5の上方には、天井面5bが略水平に形成されている。天井面5bは、リングギヤ2によって掻き揚げられたオイルが飛散して当接するようになっている。天井面5bの左右には、左右下方向に傾斜して形成されたオイルガイド壁63,64,73,74が形成されている。
【0025】
<オイルガイド壁>
天井面5bの右側のオイルガイド壁63,73は、天井面5bに飛散したオイルを第1受部61、第2受部71に流れるようにガイドする壁面である。オイルガイド壁63,73は、天井面5bの右側から第1受部61、第2受部71に向けて右下方向に斜めに形成された斜面から成る。
天井面5bの左側のオイルガイド壁64,74は、天井面5bに飛散したオイルを左側壁65,75に流れるようにガイドする壁面である。オイルガイド壁64,74は、天井面5bの左側から左側壁65,75に向けて左下方向に斜めに形成された斜面から成る。
【0026】
<第1キャリア部>
図1に示すように、第1キャリア部6は、第2キャリア部7よりも前方に配置されて、ボルトによって第2キャリア部7に固定されている。
図2に示すように、第1キャリア部6は、第1受部61と、オイルガイド壁63,64と、左側壁65と、伝達機構部収容部66と、ギヤケース支持部収容部67,68と、ピニオンシャフト収容部69と、を有している。
【0027】
<第2キャリア部>
図1に示すように、第2キャリア部7は、第1キャリア部6に対向配置されている。第1キャリア部6の前後方向の長さL1は、第2キャリア部7の前後方向の長さL2よりも長く形成されている。第2キャリア部7は、第1キャリア部6と略同様、
図3に示すように、第2受部71と、オイルガイド壁73,74と、左側壁75と、伝達機構部収容部76と、ギヤケース支持部収容部77,78と、を有している。
図2及び
図3に示すように、第2キャリア部7は、ピニオンシャフト収容部69を有していない点で第1キャリア部6と相違し、そのほかの部位は略対称形状をしている。
【0028】
このように、キャリア5は、第1キャリア部6と、第2キャリア部7とに分割できる方向がドライブシャフト8の軸方向と交差する方向である。このように分割される第1キャリア部6と第2キャリア部7とは、第1キャリア部6及び第2キャリア部7の形状、後記する第1受部61、第2受部71を金型形成可能な形状となっている。
以下、第1キャリア部6及び第2キャリア部7において、略対称形状の部位については、適宜一緒に説明する。
【0029】
<伝達機構部収容部>
伝達機構部収容部66,76は、リングギヤ2及びギヤケース4を収容する収容空間である。伝達機構部収容部66,76は、第1キャリア部6の中央部に形成された略半円柱形状の空間から成る。つまり、収容空間の半分である伝達機構部収容部66と、収容空間の半分である伝達機構部収容部76と、を合致させることで、リングギヤ2及びギヤケース4を収容する収容空間が形成される。伝達機構部収容部66,76の上部には、第1キャリア部6の第1受部61及び第2キャリア部7の第2受部71が形成されている。
【0030】
<第1受部及び第2受部>
図2及び
図3に示すように、第1受部61及び第2受部71は、リングギヤ2の表面から離れたオイルを滞留可能なオイル滞留箇所である。第1受部61と第2受部71とは、第1キャリア部6と第2キャリア部7とが合致する対称位置に対向して形成されている。第1受部61及び第2受部71は、第1キャリア部6及び第2キャリア部7の内周面の、ドライブシャフト8よりも上方のリングギヤ2と接触しない部位であって、ドライブシャフト8の軸方向を法線方向とする断面視でリングギヤ2と一部が重なる部位に形成されている。第1受部61は、第1ギヤ3及びピニオンシャフト収容部69の上方に配置されている(
図1参照)。第1受部61及び第2受部71は、ギヤケース4の上方に配置されている(
図2及び
図3参照)。第1受部61及び第2受部71は、第1受部61及び第2受部71に滞留したオイルの少なくとも一部が油溜まり部5aに落下可能に形成されている。
【0031】
さらに、詳述すると、
図4及び
図5に示すように、第1受部61及び第2受部71は、天井面5bに隣設されたオイルガイド壁63,73から側方へ斜め下方に連続する位置に形成されている。第1受部61及び第2受部71は、滞留部61a,71aと、下面61b,71bと、傾斜壁61c,71cと、垂直壁61d,71dと、突片61e,71eと、を有して成る。
【0032】
このように、第1キャリア部6及び第2キャリア部7は、第1受部61及び第2受部71を有していることで、オイルを滞留させ易くするので、油溜まり部5aの油面の高さを低くすることができる。このため、第1受部61及び第2受部71は、リングギヤ2の高速回転時の油溜まり部5aにおけるオイルの攪拌抵抗を低減させることができる。一般に、リングギヤ2は、オイルの攪拌抵抗が低減すると、オイルの供給が悪化するので、差動装置1Aの潤滑性が低下する。これに対して、本発明は、滞留部61a,71aを備えていることで、差動装置1Aへの安定したオイル潤滑が可能となるので、耐焼付きを向上させることができる。
【0033】
図4及び
図5に示すように、滞留部61a,71aは、第1受部61及び第2受部71によって捕集したオイルを一時的に貯留させるための部位である。滞留部61a,71aは、第1受部61及び第2受部71の中央部に後方向に窪んで形成されて、上下方向よりも左右方向に長く形成された凹陥部から成る。
【0034】
下面61b,71bは、滞留部61a,71aの下壁を形成する下側の面である。下面61b,71bは、後記する突片61e,71eからリングギヤ2の方向(後方向)に斜めに下がる第1傾斜面61f及び第2傾斜面71fを形成している。第1受部61及び第2受部71に一時的に貯留されたオイルは、下面61b,71bから下方に落ちるようになっている。
【0035】
傾斜壁61c,71cは、キャリア5の天井面5bからオイルガイド壁63,73に流れたオイルを垂直壁61dに流れるようにガイドするための壁である。傾斜壁61c,71cは、オイルガイド壁63,73に連続して側方下側に斜めに形成された斜面から成る。
【0036】
垂直壁61d,71dは、傾斜壁61c,71cの壁面を側方下側に斜めに流れたオイルを垂直壁61d,71dの下側の突片61e,71eに流れるようにガイドするための壁である。垂直壁61d,71dは、傾斜壁61c,71cの下端から突片61e,71eの右端に向けて垂直に形成された縦壁から成る。
【0037】
図4及び
図5に示すように、突片61e,71eは、垂直壁61d,71dに沿って下方向に流れたオイルを第1受部61及び第2受部71の中央部に向けて流れるようにガイドするための壁を形成する突出部である。突片61e,71eは、傾斜壁61c,71cの下端から左側のリングギヤ2方向に突出形成された板状の突出片から成る。突片61e,71eの上方側には、第1受部61及び第2受部62の下面61b,71bが形成されている。突片61e,71eの縁は、平面視で円弧状に形成されている(
図6及び
図7参照)。
【0038】
第1受部61及び第2受部71の下面61b,71bは、リングギヤ2から当該リングギヤ2の軸心O1方向に離れるに連れて下に下がる第1傾斜面61f及び第2傾斜部71fを有している(
図2及び
図3参照)。また、第1受部61及び第2受部71の下面61b,71bに形成された第1傾斜面61f及び第2傾斜部71fは、
図1に示すように、第1受部61及び第2受部71の奥側(前側及び後側)からリングギヤ2側方向に近づくのに連れて下に下がるように形成されている。つまり、第1傾斜面61f及び第2傾斜部71fは、二方向に傾斜している。第1傾斜面61f及び第2傾斜面71fは、さらに、大量のオイルを第1受部61及び第2受部71に滞留し易くすると共に、滞留したオイルをギヤケース4上に流れ落ちるように導くためのガイド面である。
【0039】
<左側壁>
図2及び
図3に示すように、キャリア5内の上部の左側壁65,75は、リングギヤ2の上部近傍に配置されているので、リングギヤ2によって掻き揚げられたオイルが飛沫して付着する。その左側壁65,75に付着したオイルは、左側壁65,75を伝ってベアリング46に落下し、充分な量のオイルがベアリング46に供給される。このため、そのオイルは、ベアリング46の軸方向外側に流れて、オイルシール45に達し、ベアリング46の潤滑用として供給される。残りのオイルは、キャリア5の底部の油溜まり部5aに流れ落ちる。
【0040】
<ギヤケース支持部収容部>
ギヤケース支持部収容部67,68,77,78は、ベアリング46,48を収容する収容空間である。ギヤケース支持部収容部67,77は、伝達機構部収容部66,76の左側から第1キャリア部6及び第2キャリア部7の左端に亘って形成された略半円柱形状の空間から成る。ギヤケース支持部収容部68,78は、伝達機構部収容部66,76の右側から第1キャリア部6及び第2キャリア部7の右端に亘って形成された略半円柱形状の空間から成る。つまり、収容空間の半分である伝達機構部収容部66と、収容空間の半分である伝達機構部収容部76と、を合致させることで、リングギヤ2及びギヤケース4を収容する収容空間が形成される。
【0041】
<ピニオンシャフト収容部>
図2に示すように、ピニオンシャフト収容部69は、ドライブピニオンシャフト30を収容する収容空間である。ピニオンシャフト収容部69は、第1キャリア部6の左右方向中央部から前方向に延設されている。
【0042】
≪差動装置の作用≫
本発明の第一の実施形態に係る差動装置1Aは、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、
図1~
図7を参照して、その作用効果を説明する。
【0043】
<高速回転で車両前進時>
図1に示すように、比較的高速な回転速度で車両前進時には、右側から見てリングギヤ2が時計回り(矢印a方向)に回転して油溜まり部5aのオイルを掻き揚げる。リングギヤ2に付着したオイルは、リングギヤ2のあらゆる接線方向に沿って飛ばされて、一部が上方の天井面5bに当接し、そのほかの多くは第1受部61方向に飛散する。
【0044】
図4に示すように、天井面5b及び第1受部61に飛散したオイルは、天井面5bからオイルガイド壁63、傾斜壁61c、垂直壁61d、突片61eに沿って滞留部61a方向(矢印c,d,e方向)に流れて、第1受部61内に一時的に捕集される。
【0045】
第1受部61に一時的に貯留されたオイルは、
図4、
図6あるいは
図7に示すように、自重により下面61bを下方向(矢印f方向)に流れて、回転しているギヤケース4の開口部4a内、あるいは、ギヤケース4の外周面上に流れ落ちる。ギヤケース4の開口部4a内に流れ落ちたオイルは、回転しているギヤケース4内の不図示のピニオンギヤ及びサイドギヤを潤滑させる。
【0046】
また、
図2に示すように、ギヤケース4上に流れ落ちたオイルは、軸方向外側に流れてベアリング48に達してベアリング48の潤滑用として供給される。残りの一部のオイルは、ギヤケース4の右開口端からギヤケース4内の中央部側(矢印r方向)に流れて、不図示のピニオンギヤ及びサイドギヤを潤滑させる。その後、オイルは、油溜まり部5aに流れて戻る。
【0047】
また、
図2及び
図3に示すように、天井面5bに当接したオイルの一部は、天井面5bに当接した後、天井面5bからオイルガイド壁64,74、左側壁65,75に沿って下方向(矢印j,k方向)に流れて、ギヤケース4上に流れ落ちる。ギヤケース4上に流れたオイルは、軸方向外側に流れてベアリング46に達してベアリング46の潤滑用として供給され、残りの一部は、ギヤケース4内に供給されて不図示のピニオンギヤ及びサイドギヤを潤滑させる。その後、油溜まり部5aに流れて戻る。
【0048】
また、
図1及び
図2に示すように、車両前進時には、第1ギヤ3が反時計回り方向(矢印p方向)に回転し、油溜まり部5aのオイルを掻き揚げる。第1ギヤ3に掻き揚げられたオイルの一部は、上方に飛散されて突片61eの下面に当接し、その後、突片61eから下方に落ちて、第1ギヤ3、リングギヤ2、ギヤケース4、油溜まり部5a上に流れ落ちる。
【0049】
そのオイルの一部は、第1ギヤ3の軸方向外側に流れてベアリング31,32に達してベアリング31,32の潤滑用として供給される。残りの一部のオイルは、ギヤケース4の外周面を軸方向外側に流れてベアリング48に達してベアリング48の潤滑用として供給されると共に、ギヤケース4内に供給されて不図示のピニオンギヤ及びサイドギヤを潤滑させる。その後、油溜まり部5aに流れて戻る。このため、本発明の差動装置1Aは、従来以上のオイル供給量を確保することができるので、歯車の歯面や軸受等の摺動部の耐焼き付き性を向上させることができる。
【0050】
このように高速回転で車両前進時、油溜まり部5aのオイルは、循環しながら第1受部61に一時的に滞留することで、第1受部61にオイルが滞留している分だけ、オイル油面の高さが低下する。このため、リングギヤ2は、油溜まり部5aのオイルに浸っている面積が低減するので、リングギヤ2回りのオイル攪拌抵抗を低減させることができる。
【0051】
<高速回転で車両後進時>
図1に示すように、比較的高速な回転速度で車両後進時には、右側から見てリングギヤ2が反時計回り(矢印b方向)に回転して油溜まり部5aのオイルを掻き揚げる。リングギヤ2に付着したオイルは、リングギヤ2のあらゆる接線方向に沿って飛ばされて、一部が上方の天井面5bに当接し、そのほかの多くは第2受部71方向に飛散する。
【0052】
図5に示すように、天井面5b及び第2受部71に飛散したオイルは、天井面5bからオイルガイド壁73、傾斜壁71c、垂直壁71d、突片71eに沿って滞留部71a方向(矢印c,d,e方向)に流れて、第2受部71内に一時的に捕集される。
【0053】
第2受部71に一時的に貯留されたオイルは、
図6及び
図7に示すように、自重により下面71bを下方向(矢印f方向)に流れて、回転しているギヤケース4の開口部4a(
図3参照)内、あるいは、ギヤケース4の外周面上に流れ落ちる。
図3に示すギヤケース4の開口部4a内に流れ落ちたオイルは、回転しているギヤケース4内の不図示のピニオンギヤ及びサイドギヤを潤滑させる。
【0054】
また、
図2及び
図3に示すように、天井面5bに当接したオイルの一部は、天井面5bに当接した後、天井面5bからオイルガイド壁64,74、左側壁65,75に沿って下方向(矢印j,k方向)に流れて、ギヤケース4上に流れ落ちる。ギヤケース4上に流れたオイルは、軸方向外側に流れてベアリング46に達してベアリング46の潤滑用として供給され、残りの一部は、ギヤケース4内に供給されて、不図示のピニオンギヤ及びサイドギヤを潤滑させる。その後、油溜まり部5aに流れて戻る。
【0055】
また、
図1及び
図2に示すように、車両後進時には、第1ギヤ3が時計回り方向(矢印q方向)に回転し、油溜まり部5aのオイルを掻き揚げる。第1ギヤ3に掻き揚げられたオイルの一部は、上方に飛散されて突片61eの下面に当接し、その後、突片61eから下方に落ちて、第1ギヤ3、リングギヤ2、ギヤケース4、油溜まり部5a上に流れ落ちる。
【0056】
そのオイルの一部は、第1ギヤ3の軸方向外側に流れてベアリング31,32に達してベアリング31,32の潤滑用として供給される。残りの一部のオイルは、ギヤケース4の外周面を軸方向外側に流れてベアリング48に達してベアリング48の潤滑用として供給されると共に、ギヤケース4内に供給されて不図示のピニオンギヤ及びサイドギヤを潤滑させる。その後、油溜まり部5aに流れて戻る。このため、本発明の差動装置1Aは、従来以上のオイル供給量を確保することができるので、歯車の歯面や軸受等の摺動部の耐焼き付き性を向上させることができる。
【0057】
このように高速回転で車両後進時、油溜まり部5aのオイルは、循環しながら第2受部61に一時的に滞留することで、第2受部71にオイルが滞留している分だけ、オイル油面の高さが低下する。このため、リングギヤ2は、油溜まり部5aのオイルに浸っている面積が低減するので、リングギヤ2回りのオイル攪拌抵抗を低減させることができる。
【0058】
<低速速回転で車両前進時及び車両後進時>
比較的低速な回転速度で車両前進時及び車両後進時は、リングギヤ2及び第1ギヤ3が低速回転しているので、リングギヤ2及び第1ギヤ3に付着した油溜まり部5aのオイルを掻き揚げるが、飛散しない。このため、低速回転時、リングギヤ2及び第1ギヤ3に付着したオイルは、第1受部61及び第2受部71に捕集されて一時的に滞留することがなく、油溜まり部5aのオイルの油面高さが下がらないため、各摺動部へ安定してオイルを供給することができる。
【0059】
また、リングギヤ2及び第1ギヤ3に付着した油溜まり部5aのオイルを掻き揚げて飛散させる程度の低速な回転速度で車両前進時及び車両後進時は、オイルが第1受部61及び第2受部71に捕集されて一時的に滞留する。第1受部61及び第2受部71に滞留したオイルは、第1受部61及び第2受部71から落下可能な状態に一時的に滞留して歯車の歯面や軸受等の摺動部に流れるので、低速回転時に摺動部で必要なオイルを確保し易い。
このため、本発明の差動装置1Aは、従来以上に摺動部へのオイル供給量を確保することができるので、摺動部の耐焼き付き性を向上させることができる。
【0060】
このように、本発明の第一の実施形態に係る差動装置1Aは、
図1、
図2、あるいは、
図3に示すように、リングギヤ2と、リングギヤ2に噛み合う第1ギヤ3と、リングギヤ2と一体に回転するギヤケース4と、リングギヤ2、第1ギヤ3、及び、ギヤケース4を収容する筐体であるキャリア5と、を備え、キャリア5は、リングギヤ2の軸心O1を通るドライブシャフト8の軸方向と交差する方向に分割可能な、第1キャリア部6及び第2キャリア部7を有し、第1キャリア部6は、当該第1キャリア部6の内周面の、ドライブシャフト8よりも上方であると共に、リングギヤ2と接触しない部位であり、かつ、ドライブシャフト8の軸方向を法線方向とする断面視でリングギヤ2と少なくとも一部が重なる部位に、リングギヤ2の表面から離れたオイルを滞留可能な第1受部61を備え、第2キャリア部7は、当該第2キャリア部7の内周面の、ドライブシャフト8よりも上方であると共に、リングギヤ2と接触しない部位であり、かつ、ドライブシャフト8の軸方向を法線方向とする断面視でリングギヤ2と少なくとも一部が重なる部位に、リングギヤ2の表面から離れたオイルを滞留可能な第2受部71を備えている。
【0061】
かかる構成によれば、第1キャリア部6及び第2キャリア部7は、ドライブシャフト8の上方に、ドライブシャフト8の軸方向を法線方向とする断面視で、リングギヤ2と一部が重なる部位に、リングギヤ2から離れたオイルを滞留可能な第1受部61及び第2受部71を有する。このため、第1受部61及び第2受部71は、より多量のオイルを一時的に滞留させることができるので、オイルを滞留させた分だけ、油溜まり部5aのオイル油面の高さを低下させることができる。
その結果、リングギヤ2は、油溜まり部5aのオイルに浸っている面積が低減するので、高速回転時のリングギヤ2回りのオイル攪拌抵抗を低減させることができると共に、耐焼き付き性を向上させることができる。
これにより、本発明は、第1キャリア部6及び第2キャリア部7に第1受部61及び第2受部71を有することで、リングギヤ2の軸方向と交差する方向に分割可能なキャリア5を備えていても、部品点数を増加させることなくオイルを滞留させる。
【0062】
また、
図2及び
図4に示す第1受部61の下面61bは、リングギヤ2から当該リングギヤ2の軸心O1方向に離れるに連れて下に下がる第1傾斜面61fを有している。
【0063】
かかる構成によれば、第1受部61の下面61bは、リングギヤ2から当該リングギヤ2の軸心O1方向に離れるに連れて下に下がる第1傾斜面61fを有していることで、さらに、オイルを滞留し易くすることができる。
【0064】
また、
図3及び
図5に示す第2受部71の下面71bは、リングギヤ2から当該リングギヤ2の軸心O1方向に離れるに連れて下に下がる第2傾斜面71fを有している。
【0065】
かかる構成によれば、第2受部71の下面71bは、リングギヤ2から当該リングギヤ2の軸心O1方向に離れるに連れて下に下がる第2傾斜面71fを有していることで、さらに、オイルを滞留し易くすることができる。
【0066】
また、
図3に示すように、第2受部71は、当該第2受部71に滞留したオイルの少なくとも一部を落下可能に形成されている。
【0067】
かかる構成によれば、第2受部71は、第2受部71に滞留したオイルの一部を落下可能に形成されているので、リングギヤ2によって循環させた油溜まり部5aのオイルを一時的に滞留して、滞留分だけ油溜まり部5aのオイル油面高さを低下させることができる。このため、リングギヤ2は、油溜まり部5aのオイルに浸っている面積が低減するので、リングギヤ2回りのオイル攪拌抵抗を低減させることができる。
【0068】
また、
図1に示すように、第1キャリア部6は、第2キャリア部7よりも、前方に配置され、第1キャリア部6の前後方向の長さL1は、第2キャリア部7の前後方向の長さL2よりも長い。
【0069】
かかる構成によれば、差動装置1Aは、第2キャリア部7の前後方向の長さL2が第1キャリア部6の前後方向の長さL1はよりも短い分だけ、第2キャリア部7を小さく形成して軽量化を図ることができる。
【0070】
また、
図2に示すように、第1受部61は、当該第1受部61に滞留したオイルの少なくとも一部が落下可能に形成されている。
【0071】
かかる構成によれば、第1受部61は、第1受部61に滞留したオイルの一部を落下可能に形成されているので、リングギヤ2によって循環させた油溜まり部5aのオイルを一時的に滞留して、滞留分だけ油溜まり部5aのオイル油面高さを低下させることができる。このため、リングギヤ2は、油溜まり部5aのオイルに浸っている面積が低減するので、リングギヤ2回りのオイル攪拌抵抗を低減させることができる。
【0072】
また、ギヤケース4は、外周面に開口部4aを有し、第1受部61は、第1受部61から落下したオイルを、開口部4aを通ってギヤケース4の内部へと滴下させることが可能な位置に設けられている。
【0073】
かかる構成によれば、第1受部61は、第1受部61から落下したオイルを、開口部4aを通ってギヤケース4の内部へと滴下させることができるので、ギヤケース4内の一対のピニオンギヤ及びサイドギヤに、効率よくオイルを供給することができる。
【0074】
[第二の実施形態]
次に、
図8及び
図9を参照して、本発明の第二の実施形態に係る差動装置1Bについて、第一の実施形態に係る差動装置1Aとの相違点を中心に説明する。
【0075】
図8は、本発明の第二の実施形態に係る差動装置1Bにおける第1キャリア部6及びギヤケース4Bの設置状態を示す要部斜視図である。
図9は、本発明の第二の実施形態に係る差動装置1Bにおける第2キャリア部7及びギヤケース4Bの設置状態を示す要部斜視図である。
【0076】
図8及び
図9に示すように、本発明の第二の実施形態に係る差動装置1Bは、第一の実施形態のシェル部43の外周面に形成されているオイル流入用の開口部4a(
図2及び
図3参照)が無いギヤケース4Bを備えている点で、第一の実施形態の差動装置1Aと相違している。
【0077】
この場合、ギヤケース4Bは、外周面にオイル流入用の開口部が無いので、第1受部61及び第2受部71から落下したオイルをベアリング側の開口端からギヤケース4内に流入させて、不図示のピニオンギヤ及びサイドギヤを潤滑させる。
【0078】
このように、ギヤケース4Bは、外周面にオイル流入用の開口部が無くても、第一の実施形態よりもギヤケース4B内へのオイルの供給機能が低下するものの、ギヤケース4B内の不図示のピニオンギヤ及びサイドギヤにオイルを供給することが可能である。
【0079】
[第三の実施形態]
次に、
図10を参照して、本発明の第三の実施形態に係る差動装置1Cについて、第一の実施形態に係る差動装置1Aとの相違点を中心に説明する。
図10は、本発明の第三の実施形態に係る差動装置1Cを示す要部概略断面図である。
【0080】
第一の実施形態では、
図1に示すように、下面61bに第1傾斜面61fを有する第1受部61と、下面71bに第2傾斜面71fを有する第2受部71と、を備えたキャリア5を説明したが、これに限定されるものではない。
【0081】
図10に示すように、本発明の第三の実施形態に係る差動装置1Cは、水平な下面61Cbを有する第1受部61Cが形成された第1キャリア部6Cと、水平な下面71Cbを有する第2受部71Cが形成された第2キャリア部7Cと、を備えている点で、第一の実施形態と相違している。
【0082】
このように、第1受部61C及び第2受部71Cの下面61Cb,71Cbは、水平に形成されている。
【0083】
かかる構成によれば、第1受部61C及び第2受部71Cの下面61Cb,71Cbは、水平に形成されていることで、第一の実施形態の第1受部61及び第2受部71よりもオイルの捕集機能は劣るものの、高速回転時にオイルを短時間ではあるが、滞留させることが可能である。
【0084】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の改造及び変更が可能であり、本発明はこれら改造及び変更された発明にも及ぶことは勿論である。
【符号の説明】
【0085】
1A,1B,1C 差動装置
2 リングギヤ
3 第1ギヤ
4,4B ギヤケース
4a 開口部
5 キャリア
6,6C 第1キャリア部
7,7C 第2キャリア部
8 ドライブシャフト
61,61C 第1受部
61b,71b 下面
61f 第1傾斜面
71f 第2受部
72C 第2傾斜面
L1 第1キャリア部の前後方向の長さ
L2 第2キャリア部の前後方向の長さ
O1 リングギヤの軸心