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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155153
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】流体制御弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
F16K31/06 305L
F16K31/06 305J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058507
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(72)【発明者】
【氏名】高橋 拓也
(72)【発明者】
【氏名】條 祐樹
【テーマコード(参考)】
3H106
【Fターム(参考)】
3H106DA07
3H106DA12
3H106DA23
3H106DB02
3H106DB12
3H106DB23
3H106DB32
3H106DC02
3H106DC17
3H106DD05
3H106EE34
3H106EE39
3H106GA15
3H106GB05
3H106GB06
3H106GB11
3H106KK05
(57)【要約】
【課題】流体制御弁において流体を所望の流量で流通させると共に小型化を実現する。
【解決手段】流体制御弁10のハウジング12が、導入管22側に設けられ弁体14の着座する第1テーパ部46と、該第1テーパ部46の径方向外側に設けられ前記弁体14及びプランジャ16を導出管24側へ向けて軸方向他端側へ付勢するスプリング88とを備えている。また、弁体14は、第1テーパ部46に着座する弁部66と、スプリング88の軸方向他端が当接する第1円環部68と、プランジャ16の軸方向一端が当接する第2円環部70と、該第2円環部70に形成され前記プランジャ16の内周面16aに対して径方向にクリアランスを有した状態で係合される複数の突出片74とを有している。第1及び第2円環部68、70の外周径が、プランジャ16の外周径よりも小さく形成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延在し流体の供給される導入ポート及び導出ポートを有したハウジングと、該ハウジングの内部に軸方向に沿って移動自在に設けられる弁体と、該弁体を前記軸方向に付勢する円筒状のプランジャと、通電作用下に励磁するコイルを有し前記プランジャを軸方向に付勢するソレノイド部とを備え、前記プランジャと共に前記弁体が軸方向に移動することで前記導入ポートと前記導出ポートとの連通状態を制御する流体制御弁において、
前記ハウジングには、前記導入ポート側に設けられ前記弁体の着座するシート部と、前記シート部の径方向外側に設けられ前記弁体及び前記プランジャを前記導出ポート側へ向けて前記軸方向に付勢するスプリングとを備え、
前記弁体は、前記シート部に着座する弁部と、前記プランジャの軸方向端部に当接するプランジャ当接部と、前記プランジャの内周面に対して径方向に隙間を有した状態で該プランジャと係合する突出片と、前記スプリングの軸方向端部を保持するスプリング当接部とを有し、
前記弁体の外周径が前記プランジャの外周径よりも小さく設定される、流体制御弁。
【請求項2】
請求項1記載の流体制御弁において、
前記シート部及び前記弁部は、前記流体の供給される前記導入ポートから前記導出ポート側へ向けて徐々に拡径する略円錐形状に形成される、流体制御弁。
【請求項3】
請求項1又は2記載の流体制御弁において、
前記弁体において、前記プランジャ当接部と前記スプリング当接部とが前記軸方向に離間して設けられると共に、複数の連結部材によって互いに連結される、流体制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁体を変位させることで流路を流れる流体の流通状態を制御する流体制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から筒状のボディの内部に軸方向に沿って変位自在な弁体を備え、該ボディの内部を流通する流体の流通状態を制御する流体制御弁が知られている。この流体制御弁は、例えば、特許文献1に開示されるように、中間ハウジングと、該中間ハウジングの一端側に設けられる流入側ハウジングと、該中間ハウジングの他端に接続される流出側ハウジングとを備え、前記中間ハウジングと前記流入側ハウジングとの間には、弁部を含む弁体支持部材を軸方向に沿って摺動自在に支持する第1摺動支持部が設けられている。
【0003】
また、弁体支持部材の下端が、電磁ソレノイド部の励磁作用下に可動するプランジャの上端に当接し、このプランジャは、中間ハウジングにおいて外周側に設けられた第2摺動支持部によって軸方向に移動自在に支持されている。
【0004】
そして、電磁ソレノイド部の励磁作用下にプランジャが第2摺動支持部に沿って移動することで、弁座に着座していた弁部を含む弁体支持部材が第1摺動支持部に沿って下降し、流入側ハウジングに供給された流体が、第1摺動支持部から中間ハウジングの内部へと導入され、プランジャの内部を通じて流出側ハウジングへと流通する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-148289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した流体制御弁では、第1摺動支持部によって弁部を含む弁部支持部材の外周側を径方向へ支持することで、弁座に対する弁部の径方向へのずれ及び軸線の傾きを抑制する構成としているが、前記第1摺動支持部の分だけ流体が流通する流路断面積が径方向に小さくなってしまうと共に、流体が所望の流量で流通できるように流路断面積を確保した場合、前記第1摺動支持部を径方向に拡大させる必要があり、それに伴って、流体制御弁が径方向に大型化してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、流体を所望の流量で流通させると共に小型化を図ることが可能な流体制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明の態様は、軸方向に延在し流体の供給される導入ポート及び導出ポートを有したハウジングと、ハウジングの内部に軸方向に沿って移動自在に設けられる弁体と、弁体を軸方向に付勢する円筒状のプランジャと、通電作用下に励磁するコイルを有しプランジャを軸方向に付勢するソレノイド部とを備え、プランジャと共に弁体が軸方向に移動することで導入ポートと導出ポートとの連通状態を制御する流体制御弁において、
ハウジングには、導入ポート側に設けられ弁体の着座するシート部と、シート部の径方向外側に設けられ弁体及びプランジャを導出ポート側へ向けて軸方向に付勢するスプリングとを備え、
弁体は、シート部に着座する弁部と、プランジャの軸方向端部に当接するプランジャ当接部と、プランジャの内周面に対して径方向に隙間を有した状態でプランジャと係合する突出片と、スプリングの軸方向端部を保持するスプリング当接部とを有し、
弁体の外周径がプランジャの外周径よりも小さく設定される。
【0009】
本発明によれば、導入ポート及び導出ポートを有したハウジングが、導入ポート側に設けられ弁体の着座するシート部と、シート部の径方向外側に設けられ弁体及びプランジャを導出ポート側へ向けて軸方向に付勢するスプリングとを備えている。また、弁体は、シート部に着座する弁部と、スプリングの軸方向端部が当接するスプリング当接部と、プランジャの軸方向端部が当接するプランジャ当接部と、プランジャの内周面に対して径方向に隙間を有した状態でプランジャと係合する突出片とを備え、この弁体の外周径がプランジャの外周径よりも小さく形成されている。
【0010】
従って、ハウジングの内部で弁体が軸方向に移動する際、弁体の外周面がハウジングに対して摺動することがなく、しかも、スプリングによってハウジングに対して同軸となるように径方向に位置調整される。そのため、プランジャと別体に構成された弁体を円滑に作動させることができると共に、弁部をシート部に対して確実且つ高精度に着座させることでシール性を確保することができる。
【0011】
その結果、弁部を軸方向へ移動可能に支持している従来の流体制御弁における第1摺動支持部を設けることなく、スプリングによってハウジングに対する弁体の同軸性を確保可能とすることで流路断面積を減少させることがないため、流体を所望の流量で流通させつつ径方向に小型化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0013】
すなわち、弁体が、ハウジングのシート部に着座する弁部と、スプリングの軸方向端部が当接するスプリング当接部と、プランジャの軸方向端部が当接するプランジャ当接部と、プランジャの内周面に対して径方向に隙間を有した状態でプランジャと係合する突出片とを備えており、弁体の外周径をプランジャの外周径よりも小さく形成することにより、ハウジングの内部で弁体が軸方向に移動する際、弁体の外周面がハウジングに対して摺動することがなく、さらに、スプリングによってハウジングに対して弁体が同軸となるように径方向に位置調整することができる。そのため、プランジャと別体で構成された弁体を、円滑に作動させることができると共に、弁部をシート部に対して確実且つ高精度に着座させることでシール性を確保することが可能となる。
【0014】
その結果、弁部を軸方向へ移動自在に支持するための第1摺動支持部を有した従来の流体制御弁と比較し、スプリングによってハウジングに対する弁体の同軸に維持可能とすることで、第1摺動支持部を不要として所望の流路断面積を確保することができるため、流体を所望の流量で流通させつつ径方向に小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係る流体制御弁の弁開状態を示す全体断面図である。
図2図1の流体制御弁における弁体及びソレノイド部近傍を示す拡大断面図である。
図3図1及び図2の流体制御弁を構成する弁体の外観斜視図である。
図4図3の弁体の全体側面図である。
図5図3の弁体を突出片側から見た平面図である。
図6図1に示す流体制御弁の弁閉状態を示す全体断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る流体制御弁について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0017】
この流体制御弁10は、図1及び図2に示されるように、ハウジング12と、該ハウジング12の内部に変位自在に設けられる弁体14と、前記弁体14と略同軸状に設けられるプランジャ16と、通電作用下に前記プランジャ16を軸方向(矢印A方向)に付勢するソレノイド部18とを備える。
【0018】
なお、以下、流体制御弁10が流体として冷却水の流通する冷却水回路に用いられる場合について説明すると共に、図1において、紙面の上下方向を軸方向と称すると共に、ハウジング12の導入管22側を軸方向一方側(矢印A方向)と称し、該ハウジング12の導出管24側を軸方向他方側(矢印B方向)と称する。
【0019】
ハウジング12は、例えば、樹脂製材料から形成され、円筒状に形成されるボディ本体20と、該ボディ本体20の軸方向一端(矢印A方向)に接続され冷却水の導入される導入管(導入ポート)22と、該ボディ本体20の軸方向他端(矢印B方向)に接続され前記冷却水の導出される導出管(導出ポート)24とを備える。
【0020】
ボディ本体20は、軸方向一端及び軸方向他端に形成される第1及び第2開口部26、28と、外周面から径方向外側へ突出したコネクタ部30と、ソレノイド部18を収容可能に内部に形成される収容室32とを有し、前記第1及び第2開口部26、28は、ボディ本体20の軸線L1と略直交するように形成された軸方向一端及び軸方向他端の中心に開口すると共に、第1開口部26と第2開口部28とが略同一直径で同軸状に形成される。
【0021】
また、ボディ本体20の軸方向一端及び軸方向他端には、第1及び第2開口部26、28から径方向外側となる位置に、軸方向に窪んだ環状の第1及び第2溝部34、36が形成される。第1及び第2溝部34、36は、同一直径で形成されると共に、軸方向に沿った深さも同一となるように形成されている。
【0022】
導入管22は、管状に形成される第1管体部38と、該第1管体部38の軸方向他端に形成され径方向に拡径した第1フランジ部40と、前記第1管体部38と前記第1フランジ部40とを接続する第1接続部42とを備える。
【0023】
第1管体部38は、略一定径で軸方向(矢印A、B方向)に沿って所定長さだけ延在し、内部に冷却水の導入され流通する導入路44が形成されると共に、該導入路44の軸方向他端には、ボディ本体20側(矢印B方向)に向かって徐々に拡径する第1テーパ部(シート部)46が形成される。そして、第1管体部38の軸方向一端には、図示しない配管を介して冷却水を供給するための冷却水供給手段(図示せず)が接続される。
【0024】
第1フランジ部40は、ボディ本体20の軸方向一端に接続可能に形成され、第1管体部38の軸線L1と略直交するように後述する第1接続部42の外周面から径方向外側へ向けて拡がるように形成される。
【0025】
この第1フランジ部40には、ボディ本体20に臨む面から軸方向(矢印B方向)に突出した環状の第1環状凸部48を備え、前記ボディ本体20の軸方向一端に第1フランジ部40を当接させた際、第1溝部34の内部に挿入されることで導入管22がボディ本体20に対して同軸となるように位置決めされる。すなわち、導入管22の軸線L1とボディ本体20の軸線L1とが一致するように位置決めされる。
【0026】
第1接続部42は、第1管体部38の軸方向他端において径方向外側へ拡径した円筒状に形成され、その軸方向一端が径方向内側へ延在することで前記第1管体部38と接続されると共に、軸方向他端が、ボディ本体20の第1開口部26に臨むように配置される。また、第1接続部42の軸方向他端は、ボディ本体20に当接する第1フランジ部40の当接面よりも第1管体部38側(矢印A方向)となる位置に設けられる。
【0027】
そして、第1接続部42の軸方向一端は、第1管体部38の軸方向他端に対してボディ本体20から離間する方向(矢印A方向)へ軸方向に所定距離だけオフセットして設けられ、前記第1接続部42の軸方向一端と前記第1管体部38との間には、軸方向一端側(矢印A方向)へ向けて窪んだ環状の第1凹部50が形成される。
【0028】
この第1凹部50には、第1テーパ部46の径方向外側となる位置に形成されると共に、第1管体部38と同軸となるように形成され、後述するスプリング88の一端部が挿入される。すなわち、第1凹部50は、スプリング88の一端部を保持可能なスプリング保持部として機能する。
【0029】
導出管24は、上述した導入管22と同一形状に形成され、管状に形成される第2管体部52と、該第2管体部52の軸方向一端に形成され径方向に拡径した第2フランジ部54と、前記第2管体部52と前記第2フランジ部54とを接続する第2接続部56とを備える。
【0030】
第2管体部52は、略一定径で軸方向(矢印A、B方向)に沿って所定長さだけ延在し、内部に冷却水の導出される導出路58が形成されると共に、該導出路58の軸方向一端には、ボディ本体20側(矢印A方向)に向かって徐々に拡径する第2テーパ部60が形成される。そして、第2管体部52の軸方向他端には、ボディ本体20の内部を流通した冷却水の必要とされる図示しない装置が配管を介して接続される。
【0031】
第2フランジ部54は、ボディ本体20の軸方向他端に接続可能に形成され、第2管体部52の軸線L1と略直交するように後述する第2接続部56の外周面から径方向外側へ向けて拡がるように形成される。
【0032】
この第2フランジ部54には、ボディ本体20に臨む面から軸方向(矢印A方向)に突出した環状の第2環状凸部62を備え、前記ボディ本体20の軸方向他端に第2フランジ部54を当接させた際、第2溝部36の内部に挿入されることで導出管24がボディ本体20に対して同軸となるように位置決めされる。すなわち、導出管24の軸線L1とボディ本体20の軸線L1とが一致するように位置決めされる。
【0033】
第2接続部56は、第2管体部52の軸方向他端において径方向外側へ拡径した円筒状に形成され、その軸方向他端が径方向内側へ延在することで前記第2管体部52と接続されると共に、軸方向一端が、ボディ本体20の第2開口部28に臨むように配置される。また、第2接続部56の軸方向一端は、ボディ本体20に当接する第2フランジ部54の当接面よりも第2管体部52側(矢印B方向)となる位置に設けられる。
【0034】
そして、第2接続部56の軸方向他端は、第2管体部52の軸方向他端に対してボディ本体20から離間する方向(矢印B方向)へ軸方向に所定距離だけオフセットして設けられ、前記第2接続部56の軸方向他端と前記第2管体部52との間には、軸方向他端側(矢印B方向)へ向けて窪んだ環状の第2凹部64が形成される。
【0035】
上述した導入管22及び導出管24は、例えば、第1及び第2フランジ部40、54がそれぞれボディ本体20の軸方向一端及び軸方向他端に当接すると共に、第1及び第2環状凸部48、62が第1及び第2溝部34、36に挿入され前記ボディ本体20に対して位置決めされた状態で、溶着等によって一体的に接合される。
【0036】
弁体14は、図1図5に示されるように、例えば、樹脂製材料から一体成形で形成され、軸方向一端に形成される弁部66と、該弁部66に対して軸方向他端側(矢印B方向)に設けられる第1円環部(スプリング当接部)68と、該第1円環部68に対してさらに前記軸方向他端側に設けられる第2円環部(プランジャ当接部)70と、第1円環部68と第2円環部70とを接続する複数の連結部(連結部材)72と、前記第2円環部70から軸方向(矢印B方向)に突出してプランジャ16を保持する複数の突出片74とを備える。
【0037】
弁部66は、ハウジング12の内部において、軸方向一端側(矢印A方向)となり、且つ、導入管22の第1テーパ部46に臨むように配置されると共に、軸方向から見て円形状に形成される。この弁部66は、軸方向他端側(矢印B方向)に軸方向と直交して平坦に形成された平坦面76を有すると共に、軸方向一端側(矢印A方向)には、前記平坦面76に対して軸方向一端側に向けて徐々に縮径する着座面78を有している。着座面78は、軸方向に沿って徐々に外周径の変化するテーパ状に形成され、弁部66の軸線L2に対する傾斜角度θ1(図4参照)が、第1テーパ部46の傾斜角度θ2(図2参照)と同一となるように形成される(θ1=θ2)。
【0038】
すなわち、図6に示されるように、弁体14の軸方向一端側(矢印A方向)への移動に伴って弁部66が第1テーパ部46へと当接すると共に、前記第1テーパ部46に弁部66の着座面78が面接触するように密着することで、ハウジング12の軸線L1に対して弁体14の軸線L2が同軸状となるように調整される。換言すれば、ハウジング12に対する弁体14のセンタリングがなされる。
【0039】
また、弁部66の平坦面76には、軸中心から軸方向他端側(矢印B方向)へ立設した脚部80が形成される。脚部80は、その軸中心から径方向外側へ向けて延在する4つのリブ82を有すると共に、その軸方向他端が、第1円環部68の内周面を接続する接続片84の中央に接続されている。
【0040】
複数のリブ82は、弁部66の平坦面76に接続される軸方向一端が最も幅広状に形成され、軸方向他端側となる第1円環部68側(矢印B方向)へ向けて徐々に幅狭状となるように形成されると共に、弁体14の軸方向から見て周方向に等間隔離間するように形成されている。換言すれば、4つのリブ82は、図5に示されるように、弁体14の軸方向から見て略十文字状に形成される。
【0041】
第1円環部68は、軸方向(矢印A、B方向)に一定厚さで形成され、その内部に軸方向に貫通した第1連通孔86を有し、弁体14の軸方向と直交するように設けられると共に、前記第1連通孔86には、直線状に形成され内周面に接続される接続片84を備えている。また、図4及び図5に示されるように、第1円環部68の外周径D1は、後述するプランジャ16の外周径D2よりも小さく設定される(D1<D2)。
【0042】
接続片84は、一定幅で第1円環部68の中心を通るように第1連通孔86の内部で一直線状に形成され、その一端及び他端がそれぞれ内周面に接続されている。これにより、第1連通孔86は、接続片84によって約等分となるように2分割される(図5参照)。
【0043】
また、第1円環部68には、図1及び図2に示されるように、その下面と導入管22の第1凹部50との間にスプリング88が介装されている。スプリング88は、例えば、コイルスプリングからなり、その軸方向一端が第1凹部50へと挿入され、軸方向他端が前記第1円環部68の下面に当接することで軸方向に保持されている。そして、スプリング88の弾発力によって第1円環部68が導入管22から離間する方向、すなわち、導出管24側(矢印B方向)へ向けて付勢されている。
【0044】
さらに、スプリング88は、その軸方向一端が第1凹部50に挿入され、且つ、軸方向他端が第1円環部68に当接した状態で径方向に係合されているため、ハウジング12の軸線L1及び弁体14の軸線L2と同軸状に保持された状態となる。
【0045】
そのため、弁体14は、スプリング88の弾発作用下に軸線L2(軸心)が常にハウジング12の軸線L1(軸心)と一致するように径方向に調整されることで、前記弁体14の弁部66と該弁部66の着座するハウジング12の第1テーパ部46とが常に同軸状に配置された状態となる。
【0046】
第2円環部70は、第1円環部68と略同一形状に形成され、軸方向(矢印A、B方向)に所定間隔離間して略平行に形成され、その内部には軸方向に貫通した第2連通孔90が形成される。また、第2円環部70は、第1円環部68に対して複数の連結部72によって連結される。
【0047】
連結部72は、例えば、弁体14の軸方向から見て断面矩形状に形成され、第1及び第2円環部68、70の周方向に等間隔離間して4本設けられると共に、軸方向に沿ってそれぞれ延在し、前記第1円環部68の内縁部近傍となる面と前記第1円環部68の内縁部近傍となる面とを接続している。
【0048】
また、連結部72は、第1及び第2連通孔86、90側へと突出することはなく、第1及び第2円環部68、70の内周面よりも径方向外側となる位置に配置される。
【0049】
突出片74は、例えば、連結部72と同様に、弁体14の軸方向から見て断面矩形状に形成されると共に、前記連結部72と同一の数量及び位置となるように形成され、第2円環部70の上面に対して所定高さだけ軸方向(矢印B方向)へ突出して形成される。すなわち、突出片74は、連結部72と同数となる4本設けられる。また、図2に示されるように、突出片74の軸方向(矢印A、B方向)に沿った高さH1は、図6に示される弁閉状態から図1及び図2に示される弁開状態まで弁体14が移動する際の軸方向に沿ったストローク距離H2よりも長く形成されている(H1>H2)。
【0050】
そして、複数の突出片74の外周側には、後述するプランジャ16の軸方向一端が挿通され、図5に示されるように、4本の突出片74の外周部を通る仮想円Eの直径が、後述するプランジャ16の内周面16aよりも小さく形成される。
【0051】
プランジャ16は、例えば、磁性材料から円筒状に形成され、その内周面16aが軸方向に沿って一定径で形成されると共に、外周面も軸方向に沿って一定径で形成され、その外周径D2が、弁体14における第1及び第2円環部68、70の外周径D1よりも大きく形成されている(D2>D1)。
【0052】
そして、プランジャ16は、ハウジング12(ボディ本体20)の内部において、弁体14の軸方向他端側に配置され第2円環部70の上面に当接すると共に、導出管24の軸方向一端に臨むように収容される。また、プランジャ16は、弁体14側となる軸方向一端において、複数の突出片74の外側となるように設けられ、その内周面16aと突出片74との間には径方向に所定間隔のクリアランスCを有している。すなわち、プランジャ16は、突出片74が内部に挿通された弁体14の軸方向他端に対してクリアランスCの分だけ径方向に相対移動可能に保持されている。
【0053】
また、プランジャ16は、スプリング88の弾発作用下に弁体14を介して導出管24側(矢印B方向)へと付勢された際、その軸方向他端が前記導出管24における第2接続部56の軸方向一端に当接することで係止される。換言すれば、第2接続部56の軸方向一端は、プランジャ16の軸方向他端側(矢印B方向)への移動を規制するストッパとして機能する。
【0054】
ソレノイド部18は、図1及び図2に示されるように、コイル92への通電作用下に磁力を発生して軸方向の推力を得るものであり、ハウジング12における収容室32に配設され、コイル92の巻回されるボビン94と、前記コイル92及び前記ボビン94の外周側に設けられるヨーク96と、前記ハウジング12に対して保持された固定コア98と、該固定コア98の内部に設けられるスリーブ104とを有し、前記スリーブ104の内部にプランジャ16が軸方向(矢印A、B方向)に沿って移動自在に設けられている。
【0055】
ボビン94は樹脂製材料から円筒状に形成され、その外周面にコイル92が複数回巻回されると共に、コイル92が、コネクタ部30の内部に設けられた端子100と電気的に接続される。ヨーク96は、磁性材料から形成され、ボビン94及びコイル92の外周側及び軸方向他端を覆うように設けられる。
【0056】
固定コア98は、金属製材料から円筒状に形成され、ボビン94の内周側に設けられると共に内周面が弁体14に臨むように設けられ、軸方向一端に形成された鍔部102が、ボディ本体20の軸方向他端に保持されている。そして、固定コア98の内周側に沿うように円筒状のスリーブ104が設けられている。
【0057】
本発明の実施の形態に係る流体制御弁10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。なお、図1に示される弁体14の弁部66が導入管22の第1テーパ部46から離間した弁開状態を初期状態として説明する。
【0058】
先ず、図1に示される流体制御弁10の弁開状態では、ソレノイド部18が非通電状態にあり、スプリング88の弾発作用下に弁体14の弁部66がシート部となる第1テーパ部46から導出管24側へと離間して導入管22の導入路44と導出管24の導出路58とが連通した状態にある。
【0059】
この弁開状態において、図示しない冷却水供給源から配管を通じて供給される冷却水が、導入管22の導入路44を通じて第1開口部26からハウジング12の収容室32へと導入される。この際、導入路44の軸方向他端となる第1テーパ部46が下流側(矢印B方向)に向けて拡径するテーパ状に形成されると共に、該第1テーパ部46に臨む弁体14の弁部66が軸方向他端側(矢印B方向)に徐々に拡径する略円錐形状に形成されているため、冷却水が導入管22からボディ本体20の内部へと流入する際の流通抵抗が好適に低減され円滑に流通する。
【0060】
このボディ本体20の収容室32に流入した冷却水は、弁部66の外周面に沿って流れた後に、第1円環部68と固定コア98との間(弁体14の外側)を通じて軸方向他端側へと流れると共に、第1連通孔86を通じて第1円環部68の内側(弁体14の内側)を軸方向他端側へと流れる。また、第1円環部68の外周側を流れる冷却水は、該第1円環部68の下流側において複数の連結部72の間の開口した部位から内周側へと流れて軸方向他端側(矢印B方向)へ流れる。
【0061】
そして、第1円環部68の下流側へ流れた冷却水は、第2円環部70において第2連通孔90を通じて軸方向他端側(矢印B方向)となる下流側へと流れ、プランジャ16の内側を通過した後に、第2開口部28から導出管24の導出路58を通じて図示しない装置へと供給される。
【0062】
すなわち、第1円環部68と第2円環部70との間において、複数の連結部72の間を通じて弁体14の外周側から径方向内側に向かう流路を設けることで、多くの流通経路を通じて冷却水を下流側へと流通させることができる。
【0063】
次に、上述した弁開状態から弁体14の弁部66を第1テーパ部46へと着座させる流体制御弁10の弁閉状態へと切り替える場合について説明する。
【0064】
先ず、図示しないコントローラからの制御信号が配線を介してコネクタ部30の端子100へと入力されることで、コイル92が通電して励磁することで磁束が生じる。この磁束は、固定コア98、コイル92、ヨーク96及びプランジャ16を回るように流れ、発生する磁力によって前記プランジャ16が固定コア98側(矢印A方向)へと吸引される。
【0065】
これにより、プランジャ16がスリーブ104に沿って弁体14側へと移動し、その軸方向一端が弁体14の第2円環部70を押圧することで、スプリング88の弾発力に抗して前記弁体14が導入管22側(矢印A方向)へと移動することで、弁部66(着座面78)が第1テーパ部46に当接して導入路44の軸方向他端が閉塞される。また、略円錐形状の弁部66がテーパ状の第1テーパ部46に沿うように移動して当接することで、前記弁体14の軸線L2が前記第1テーパ部46を有した導入管22の軸線L1と同軸となるように径方向に調整されると共に、同軸状に配置された弁部66と第1テーパ部46とを当接させることで、より高精度に両者を密着させてシート性を高めることが可能となる。
【0066】
その結果、導入管22の導入路44とボディ本体20の内部との連通が遮断され、前記ボディ本体20を通じた冷却水の導出管24側への流通が停止する。
【0067】
この際、弁体14において最も外周径の大きな第1及び第2円環部68、70の外周径D1が、プランジャ16の外周径D2よりも小さく形成されているため、前記弁体14が軸方向に移動する際に、スリーブ104の内周面に摺動することがなく、前記弁体14を円滑に作動させることが可能となる。
【0068】
また、弁体14の弁部66が、上流側となる導入管22側(矢印A方向)へ向かって徐々に縮径する略円錐形状に形成されているため、冷却水の流れに逆らうように前記弁体14を前記導入管22側へと移動させる際の作動抵抗を抑制することができ、前記弁体14を流体の流通方向と直交する平面状に形成した従来の流体制御弁と比較し、より小さな力で弁閉状態とすることが可能となる。
【0069】
さらに、突出片74の高さH1が、弁体14のストローク距離H2よりも大きく形成されているため、前記弁体14が第1テーパ部46に着座した弁閉状態から弁開状態に至るまでの軸方向に沿った作動範囲の全域において、導出管24における第2接続部56の軸方向一端と突出片74との間の軸方向距離が、プランジャ16の軸方向長さよりも小さくなる。そのため、プランジャ16が突出片74から上方(矢印B方向)へと脱抜してしまうことが防止され、前記突出片74の外周側に係合された状態で常に維持される。
【0070】
以上のように、本実施の形態では、冷却水の供給される導入管22及び導出管24を有したハウジング12が、前記導入管22側に設けられ弁体14の着座する第1テーパ部46と、該第1テーパ部46の径方向外側に設けられ前記弁体14及び前記プランジャ16を前記導出管24側へ向けて前記軸方向他端側へ付勢するスプリング88とを備えている。また、弁体14は、プランジャ16と別体に構成され、第1テーパ部46に着座する弁部66と、スプリング88の軸方向他端が当接する第1円環部68と、プランジャ16の軸方向一端が当接する第2円環部70と、前記第2円環部70に形成され前記プランジャ16の内周面16aに対して径方向にクリアランスCを有した状態で係合される複数の突出片74とを有し、前記第1及び第2円環部68、70の外周径D1を前記プランジャ16の外周径D2よりも小さく形成している。
【0071】
従って、ハウジング12の内部で弁体14が軸方向に移動する際、弁体14の第1及び第2円環部68、70の外周面が前記ハウジング12に対して摺動することがないため円滑に作動させることができ、しかも、弁体14とプランジャ16とを別体として弁体14に対してプランジャ16を径方向に移動自在に係合させることで、スプリング88によって弁体14がハウジング12に対して同軸状となるように径方向に位置調整することができ、前記プランジャ16の傾きや軸線のずれの影響を前記弁体14が受けることが回避される。
【0072】
その結果、スプリング88によって径方向に位置調整のなされた弁体14を第1テーパ部46に対して確実且つ高精度に着座させてシール性を確保することが可能となり、しかも、弁部を軸方向へ移動可能に支持するための第1摺動支持部を備えていた従来の流体制御弁と比較し、該第1摺動支持部を設ける必要がないため、径方向に十分な流路断面積を確保することが可能となり、冷却水を所望の流量で流通させつつ、該第1摺動支持部を設けた場合と比較して径方向に小型化を図ることが可能となる。
【0073】
また、弁体14の弁部66及び導入管22の第1テーパ部46を、冷却水の導入される導入管22から導出管24側へ向けて徐々に拡径する略円錐形状にそれぞれ形成しているため、弁閉時において前記弁部66が前記第1テーパ部46に沿うように当接することで、弁部66を含む弁体14の軸心(軸線L2)と前記第1テーパ部46を含む導入管22の軸心(軸線L1)とが一致するように径方向に調整することができると共に、前記弁体14が前記第1テーパ部46から離間した弁開状態において、弁部66の外周面に沿って流れる冷却水の流通抵抗を抑制することができる。
【0074】
さらに、弁体14における第1円環部68と第2円環部70とが軸方向(矢印A、B方向)に所定距離だけ離間して設けられると共に、前記第1円環部68と前記第2円環部70とを複数の連結部72で互いに連結する構成としているため、例えば、前記第1円環部68と前記第2円環部70との間を中実体で構成した場合と比較して弁体14の軽量化を図ることができると共に、その内部に冷却水が流通可能な流路を確保することが可能となる。さらに、弁体14を軽量化することで該弁体14を付勢するプランジャ16を含む可動部の全体を軽量化することができる。
【0075】
さらにまた、樹脂製材料から弁体14を形成することで、金属製材料から形成した場合と比較して軽量化を図ることが可能となり、それに伴って、前記弁体14を軸方向に付勢するためのプランジャ16の軽量化を図ることができるため、前記プランジャ16及び前記弁体14からなる可動部の重量を低減することができる。その結果、プランジャ16を付勢するためのソレノイド部18を小型化できると共に、耐振性を高めることができる。
【0076】
一方、上述した流体制御弁10を構成する弁体14では、スプリング88の当接する第1円環部68と、プランジャ16の当接する第2円環部70とを別に備える構成としているが、これに限定されるものではなく、前記スプリング88及び前記プランジャ16の当接する単一の円環部を備える構成であってもよい。
【0077】
また、ハウジング12を構成する導入管22及び導出管24を同一形状で形成することで、部品を共用することが可能となり、それに伴って、部品点数の削減を図ると共に製造コストの削減を図ることができ、さらに、流体制御弁10に組み付ける際の誤組付を防止することができる。
【0078】
さらに、上述した流体制御弁10において、流通状態の制御される流体は冷却水に限定されるものではない。
【0079】
なお、本発明に係る流体制御弁は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0080】
10…流体制御弁 12…ハウジング
14…弁体 16…プランジャ
18…ソレノイド部 22…導入管
24…導出管 46…第1テーパ部
66…弁部 68…第1円環部
70…第2円環部 72…連結部
88…スプリング
図1
図2
図3
図4
図5
図6