(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155161
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】ロータおよびロータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 1/28 20060101AFI20221005BHJP
H02K 15/02 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
H02K1/28 A
H02K15/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058519
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】古田 泰也
【テーマコード(参考)】
5H601
5H615
【Fターム(参考)】
5H601AA08
5H601AA30
5H601CC01
5H601CC02
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD18
5H601EE18
5H601GA02
5H601GA37
5H601GA38
5H601GA40
5H601JJ05
5H601KK14
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB02
5H615BB07
5H615BB14
5H615PP02
5H615PP06
5H615PP24
5H615SS19
(57)【要約】
【課題】ロータハブの円筒部がロータコアの径方向内側に締り嵌めにより固定される場合に、軸方向においてロータコアに生じる応力が局所的に大きくなるのを防止することが可能なロータおよびロータの製造方法を提供する。
【解決手段】このロータ100は、ロータコア10と、円筒部40とフランジ部50とを含むロータハブ30と、を備える。円筒部40は、ロータコア10のZ方向(軸方向)における全体に亘って締り嵌めによりロータコア10に固定されている。そして、フランジ部50のうちの少なくとも円筒部40と接合されている接合部分51aは、ロータコア10のZ1側(軸方向における一方側)の端面10aよりもZ方向の外側に設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータコアと、
前記ロータコアの径方向内側において前記ロータコアを支持する円筒部と、前記円筒部の前記ロータコアの軸方向における一方側の端部と接合され前記円筒部の前記径方向内側に設けられたフランジ部と、を含むロータハブと、を備え、
前記円筒部は、前記ロータコアの前記軸方向における全体に亘って締り嵌めにより前記ロータコアに固定されており、
前記フランジ部のうちの少なくとも前記円筒部と接合されている接合部分は、前記ロータコアの前記軸方向における一方側の端面よりも前記軸方向の外側に設けられている、ロータ。
【請求項2】
前記フランジ部は、前記接合部分から前記径方向内側に向かって延びるように前記フランジ部の前記円筒部側に設けられた円筒部側部分を含み、
前記フランジ部のうちの少なくとも前記円筒部側部分は、前記軸方向における一方側の前記端面よりも前記軸方向の外側に設けられている、請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
前記ロータコアの前記軸方向の一方側かつ前記円筒部の前記径方向外側に前記ロータコアに当接するように設けられ、前記円筒部が隙間嵌めされた円環状のエンドプレートをさらに備え、
前記フランジ部のうちの少なくとも前記円筒部側部分は、前記ロータコアの前記軸方向における一方側の前記端面よりも前記軸方向の外側で、かつ、前記エンドプレートの少なくとも一部と前記径方向にオーバーラップする位置に設けられている、請求項2に記載のロータ。
【請求項4】
前記円筒部は、前記円筒部の前記径方向内側で、かつ、前記円筒部側部分の前記軸方向における他方側に設けられたクラッチ部と係合するように前記径方向外側に凹む複数のスプライン凹部を含み、
前記複数のスプライン凹部は、前記円筒部の前記軸方向における全体に亘って設けられている、請求項3項に記載のロータ。
【請求項5】
ロータコアと、前記ロータコアの径方向内側において前記ロータコアを支持する円筒部と前記円筒部の前記ロータコアの軸方向における一方側の端部と接合され前記円筒部の前記径方向内側に設けられたフランジ部とを含むロータハブと、を備えるロータの製造方法であって、
前記円筒部を、前記フランジ部のうちの少なくとも前記円筒部と接合されている接合部分が前記ロータコアの前記軸方向における一方側の端面よりも前記軸方向の外側に設けられるように、前記ロータコアの前記軸方向における全体に亘って締り嵌めにより前記ロータコアに固定する固定工程を備える、ロータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータおよびロータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロータコアを径方向内側において支持する円筒部と円筒部の径方向内側に設けられるフランジ部とを含むロータハブを備えるロータが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、ロータ支持部材(ロータハブ)がロータコアの径方向内側に嵌め込まれたロータが開示されている。上記特許文献1に記載のロータでは、ロータ支持部材は、ロータコアの径方向内側においてロータコアを支持する円筒状のロータ支持部(円筒部)と、ロータ支持部の径方向内側に設けられたロータ縦壁(フランジ部)と、を含む。ロータ縦壁は、ロータ支持部から径方向内側に延びるように設けられている。また、ロータ縦壁は、ロータコアの軸方向において、ロータコアの軸方向における一方側の端面と他方側の端面との間に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1には明記されていないが、上記特許文献1に記載のような従来のロータでは、ロータ支持部材(ロータハブ)のロータ支持部(円筒部)がロータコアの径方向内側に締り嵌めにより嵌め込まれて固定される場合がある。しかしながら、上記特許文献1に記載のロータでは、ロータ支持部のうちの径方向内側にロータ縦壁が設けられている部分は、ロータ支持部がロータ縦壁から径方向外側に向かって突っ張られるので、ロータ支持部がロータコアの径方向内側に締り嵌めにより嵌め込まれて固定される際に生じる応力が大きくなる。すなわち、軸方向においてロータコアに生じる応力が局所的に大きくなる。このため、ロータ支持部材(ロータハブ)のロータ支持部(円筒部)がロータコアの径方向内側に締り嵌めにより固定される場合に、軸方向においてロータコアに生じる応力が局所的に大きくなるのを防止することが可能なロータおよびロータの製造方法が望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、ロータハブの円筒部がロータコアの径方向内側に締り嵌めにより固定される場合に、軸方向においてロータコアに生じる応力が局所的に大きくなるのを防止することが可能なロータおよびロータの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面におけるロータは、ロータコアと、ロータコアの径方向内側においてロータコアを支持する円筒部と、円筒部のロータコアの軸方向における一方側の端部と接合され円筒部の径方向内側に設けられたフランジ部と、を含むロータハブと、を備え、円筒部は、ロータコアの軸方向における全体に亘って締り嵌めによりロータコアに固定されており、フランジ部のうちの少なくとも円筒部と接合されている接合部分は、ロータコアの軸方向における一方側の端面よりも軸方向の外側に設けられている。
【0008】
この発明の第1の局面におけるロータでは、上記のように、フランジ部のうちの少なくとも円筒部と接合されている接合部分は、ロータコアの軸方向における一方側の端面よりも軸方向の外側に設けられている。これにより、フランジ部が、円筒部のうちのロータコアにより締り嵌めにより固定される部分(ロータコアの軸方向における全体)に径方向内側から当接するように配置されにくい。これにより、円筒部がロータコアにより締り嵌めされる際に、円筒部においてフランジ部により径方向外側に向かって突っ張られる部分を形成されにくくすることができる。その結果、ロータハブの円筒部がロータコアの径方向内側に締り嵌めにより固定される場合に、軸方向においてロータコアに生じる応力が局所的に大きくなるのを防止することができる。
【0009】
また、上記第1の局面におけるロータでは、上記のように、円筒部は、ロータコアの軸方向における全体に亘って締り嵌めによりロータコアに固定されている。これにより、円筒部がロータコアの軸方向における一部のみにおいて締り嵌めによりロータコアに固定される場合と比較して、ロータコアと円筒部(フランジ部)との間でトルクを効率的に伝達することができる。
【0010】
また、上記目的を達成するために、この発明の第2の局面におけるロータの製造方法は、ロータコアと、ロータコアの径方向内側においてロータコアを支持する円筒部と円筒部のロータコアの軸方向における一方側の端部と接合され円筒部の径方向内側に設けられたフランジ部とを含むロータハブと、を備えるロータの製造方法であって、円筒部を、フランジ部のうちの少なくとも円筒部と接合されている接合部分がロータコアの軸方向における一方側の端面よりも軸方向の外側に設けられるように、ロータコアの軸方向における全体に亘って締り嵌めによりロータコアに固定する固定工程を備える。
【0011】
この発明の第2の局面におけるロータの製造方法では、上記のように、円筒部を、フランジ部のうちの少なくとも円筒部と接合されている接合部分がロータコアの軸方向における一方側の端面よりも軸方向の外側に設けられるように、ロータコアの軸方向における全体に亘って締り嵌めによりロータコアに固定する。これにより、フランジ部が、円筒部のうちのロータコアにより締り嵌めにより固定される部分(ロータコアの軸方向における全体)に径方向内側から当接するように配置されにくい状態で、円筒部が締り嵌めによりロータコアに固定される。これにより、上記第1の局面におけるロータと同様に、円筒部がロータコアにより締り嵌めされる際に、円筒部においてフランジ部により径方向外側に向かって突っ張られる部分を形成されにくくすることができる。その結果、上記第1の局面におけるロータと同様に、ロータハブの円筒部がロータコアの径方向内側に締り嵌めにより固定される場合に、軸方向においてロータコアに生じる応力が局所的に大きくなるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上記のように、ロータハブの円筒部がロータコアの径方向内側に締り嵌めにより固定される場合に、軸方向においてロータコアに生じる応力が局所的に大きくなるのを防止することが可能なロータおよびロータの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態によるロータを備える車両用駆動装置の一部を示す断面図である。
【
図2】一実施形態によるロータのロータコアおよび円筒部を軸方向に見た断面図である。
【
図4】一実施形態によるロータの製造フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
[ロータの構成]
図1~
図3を参照して、一実施形態によるロータ100の構成について説明する。
【0016】
以下の説明では、ロータ100(ロータコア10(
図1参照))の軸方向、径方向および周方向を、それぞれ、Z方向、R方向およびC方向とする。また、Z方向の一方側および他方側を、それぞれ、Z1側およびZ2側とする。また、R方向の一方側(径方向内側)および他方側(径方向外側)を、それぞれ、R1側およびR2側とする。
【0017】
(ロータの全体構成)
図1に示すように、ロータ100は、ステータ101と共に、回転電機102の一部を構成する。回転電機102は、たとえば、モータ、ジェネレータ、または、モータ兼ジェネレータである。ロータ100およびステータ101は、それぞれ、円環状に形成されている。ロータ100は、回転軸線90回りに回転するように構成されている。ロータ100は、ロータ100の外周面とステータ101の内周面とがR方向に対向するように、ステータ101のR1側に配置されている。すなわち、ロータ100は、インナーロータ型の回転電機102の一部として構成されている。
【0018】
回転電機102は、エンジン(図示しない)と共に、車両を駆動させるための駆動源として車両用駆動装置103に設けられている。車両用駆動装置103には、駆動力の伝達および遮断を行うためのクラッチ部104が設けられている。クラッチ部104は、ロータ100の円筒部40(後述する)のR1側に設けられている。また、クラッチ部104は、円筒部40の円筒部側部分51(後述する)のZ2側(軸方向における他方側)に設けられている。クラッチ部104は、ロータ100の円筒部40のR1側において、Z2側に設けられた第1クラッチ部104aと、Z1側に設けられた第2クラッチ部104bと、を含む。
【0019】
ロータ100は、ロータコア10と、エンドプレート21と、エンドプレート22と、ロータハブ30と、を備える。
【0020】
ロータコア10には、Z方向(軸方向)に延びるロータハブ挿入孔11が形成されている。
図2に示すように、ロータハブ挿入孔11は、Z方向に見て、ロータコア10の中央部に設けられている。そして、ロータハブ30は、ロータハブ挿入孔11に挿入されている。すなわち、ロータハブ30は、ロータコア10のR1側に設けられている。後述するように、ロータハブ30は、ロータコア10に対して固定されている。
【0021】
図1に示すように、ロータコア10は、複数の電磁鋼板が積層されている。ロータコア10には、電磁鋼板の積層方向(Z方向)に延びる磁石挿入孔12が形成されている。磁石挿入孔12は、ロータコア10のうちのR2側の部分に配置されている。
図2に示すように、磁石挿入孔12は、ロータコア10に複数(本実施形態では32個)設けられている。複数の磁石挿入孔12は、Z方向に見て、C方向に沿って等角度間隔に配置されている。
【0022】
複数の磁石挿入孔12の各々には、永久磁石13が収容されている(配置されている)。すなわち、回転電機102は、埋込永久磁石型モータ(IPMモータ:Interior Permanent Magnet Motor)として構成されている。永久磁石13は、Z方向に直交する断面が長方形形状を有している。永久磁石13は、たとえば、磁化方向(着磁方向)が短手方向となるように構成されている。
【0023】
ロータコア10では、C方向に隣り合う一対の永久磁石13により磁極14が形成されている。すなわち、磁極14は、ロータコア10に複数(本実施形態では16個)形成されている。磁極14を形成する一対の永久磁石13は、R1側に凸のV字状に配置されている。なお、磁極14を形成する一対の永久磁石13の形状は、これに限られない。
【0024】
ロータコア10は、ロータコア10の内周面からR1側(径方向内側)に突出するキー部15を含む。キー部15は、Z方向に見て、矩形形状を有する。キー部15は、ロータコア10において、2つ設けられている。2つのキー部15は、Z方向に見て、C方向に沿って等角度(180度)間隔に配置されている。
図3に示すように、キー部15は、C方向(周方向)において、ロータコア10のd軸に対応する位置に設けられている。キー部15は、ロータコア10のZ方向の全体に亘って設けられている。
【0025】
ロータコア10は、C方向においてキー部15と隣接する位置にR2側(径方向外側)に凹むように設けられた逃がし部16を含む。具体的には、逃がし部16は、C方向において、キー部15の両側にキー部15と隣接するように設けられている。なお、逃がし部16は、キー部15と係合するキー溝部42のR2側の角部が、キー部15の根元と接触するのを防止するために設けられている。
【0026】
ロータコア10は、C方向においてロータコア10のq軸に対応する位置に設けられた冷媒流路用凹部19を含む。冷媒流路用凹部19は、R2側(径方向外側)に凹むように設けられている。冷媒流路用凹部19は、ロータコア10を冷却する冷却用冷媒が流通する。
【0027】
図1に示すように、エンドプレート21およびエンドプレート22は、それぞれ、ロータコア10のZ1側(軸方向における一方側)およびZ2側(軸方向における他方側)に、ロータコア10に当接するように設けられている。また、エンドプレート21およびエンドプレート22は、それぞれ、円筒部40のR2側(径方向外側)に設けられている。具体的には、エンドプレート21は、ロータコア10のZ1側の端面10aと当接するように、ロータコア10のZ1側に設けられている。また、エンドプレート22は、ロータコア10のZ2側の端面10bと当接するように、ロータコア10のZ2側に設けられている。エンドプレート21およびエンドプレート22は、磁石挿入孔12から永久磁石13が飛び出すのを防止するために設けられている。なお、エンドプレート21およびエンドプレート22は、それぞれ、円環状であり、R1側に円筒部40が隙間嵌めされている。
【0028】
ロータハブ30は、円筒部40と、フランジ部50と、を含む。
図2に示すように、円筒部40は、円筒形状を有する。円筒部40は、ロータコア10の内周面と円筒部40の外周面とが対向するように、ロータコア10のR1側に設けられている。円筒部40は、ロータコア10のR1側(径方向内側)においてロータコア10を支持する。
図1に示すように、フランジ部50は、円筒部40のZ1側の端部41と接合されている。フランジ部50は、円筒部40のR1側に設けられている。フランジ部50は、円筒部40のZ1側の端部41と接合された接合部分51aからR1側(径方向内側)に向かって延びるようにフランジ部50の円筒部40側(R2側)に設けられた円筒部側部分51を含む。
【0029】
円筒部40は、キー部15と係合するキー溝部42を含む。キー溝部42は、円筒部40の外周面においてキー部15と対向する位置にR1側(径方向内側)に凹むように設けられている。キー溝部42は、R1側に突出する矩形形状のキー部15と係合するように、R1側に矩形形状に凹んでいる。キー溝部42は、円筒部40において、2つ設けられている。2つのキー溝部42は、Z方向に見て、C方向に沿って等角度(180度)間隔に配置されている。
図3に示すように、キー溝部42は、C方向において、ロータコア10のd軸に対応する位置に設けられている。キー溝部42は、円筒部40のZ方向の全体に亘って設けられている。
【0030】
図2に示すように、円筒部40は、クラッチ部104(
図1参照)と係合するようにR2側(径方向外側)に凹む複数のスプライン凹部43を含む。具体的には、クラッチ部104は、クラッチ部104の外周面において円筒部40の複数のスプライン凹部43と対向する位置にR2側に突出する複数のスプライン凸部(図示しない)を含む。そして、円筒部40の複数のスプライン凹部43の各々は、クラッチ部104の複数のスプライン凸部と係合している。
【0031】
複数のスプライン凹部43は、円筒部40のZ方向(軸方向)における全体に亘って設けられている。これにより、円筒部側部分51のZ2側(軸方向における他方側)に配置されたクラッチ部104は、円筒部40のZ方向(軸方向)における全体に亘って円筒部40の複数のスプライン凹部43と係合可能となる。これにより、クラッチ部104を円筒部40の複数のスプライン凹部43とZ方向における比較的広い範囲において係合することによって、円筒部40(フランジ部50)とクラッチ部104との間でトルクを効率的に伝達させることができる。
【0032】
キー溝部42は、C方向(周方向)において、互いに隣り合う複数のスプライン凹部43同士の間に配置されている。具体的には、
図3に示すように、複数のスプライン凹部43の各々は、C方向において、ロータコア10のq軸に対応する位置に設けられている。また、上述したように、キー溝部42は、C方向において、ロータコア10のd軸に対応する位置に設けられている。
【0033】
これにより、円筒部40にR1側(径方向内側)に凹むように設けられたキー溝部42と、円筒部40にR2側(径方向外側)に凹むように設けられた複数のスプライン凹部43とが、R方向(径方向)にオーバーラップしにくくなる。これにより、キー溝部42と複数のスプライン凹部43とがR方向にオーバーラップすることに起因して円筒部40のR方向における厚みが過度に小さくなる(強度が低下する)部分がC方向において広範囲に生じるのを防止することができる。
【0034】
また、複数のスプライン凹部43は、それぞれ、C方向に沿って延びる底面部43aと、底面部43aのC方向における両端において底面部43aと連続する傾斜側面部43bと、を含む。具体的には、複数のスプライン凹部43において、傾斜側面部43bと、底面部43aと、傾斜側面部43bとが、この順にC方向に並んでいる。また、傾斜側面部43bは、R1側に向かうにしたがってC方向における幅が拡がるように傾斜する。すなわち、複数のスプライン凹部43の各々と係合するクラッチ部104の複数のスプライン凸部の各々は、R1側に向かうにしたがってC方向における幅が広がっている。また、キー溝部42のC方向における端部42aは、C方向において、傾斜側面部43bとR方向にオーバーラップする位置に設けられている。具体的には、キー溝部42のC方向における端部42aは、C方向において、傾斜側面部43bの中央部とR方向にオーバーラップしている。
【0035】
(ロータコアと円筒部との固定構造)
ここで、円筒部40は、ロータコア10のZ方向(軸方向)における全体に亘って締り嵌めによりロータコア10に固定されている。具体的には、Z方向における全体に亘ってロータコア10の内径(ロータハブ挿入孔11の内径)が円筒部40の外径よりも大きくなっているロータコア10のロータハブ挿入孔11に円筒部40が焼嵌め等の締り嵌めにより嵌め込まれている。
【0036】
これにより、円筒部40がロータコア10のZ方向(軸方向)における一部のみにおいて締り嵌めによりロータコア10に固定される場合と比較して、ロータコア10と円筒部40(フランジ部50)との間でトルクを効率的に伝達することができる。
【0037】
また、
図1に示すように、フランジ部50のうちの少なくとも円筒部40と接合されている接合部分51aは、ロータコア10のZ1側(軸方向における一方側)の端面10aよりもZ方向(軸方向)の外側に設けられている。具体的には、フランジ部50のうちの円筒部40と接合されている接合部分51a全体が、ロータコア10のZ1側の端面10aよりもZ1側に設けられている。
【0038】
これにより、フランジ部50が、円筒部40のうちのロータコア10により締り嵌めにより固定される部分(ロータコア10のZ方向(軸方向)における全体)にR1側(径方向内側)から当接するように配置されにくい。これにより、円筒部40がロータコア10により締り嵌めされる際に、円筒部40においてフランジ部50によりR2側(径方向外側)に向かって突っ張られる部分を形成されにくくすることができる。その結果、ロータハブ30の円筒部40がロータコア10のR1側に締り嵌めにより固定される場合に、Z方向においてロータコア10に生じる応力が局所的に大きくなるのを防止することができる。
【0039】
また、フランジ部50のうちの少なくとも円筒部側部分51は、Z1側(軸方向における一方側)の端面10aよりもZ方向(軸方向)の外側に設けられている。具体的には、フランジ部50のうちの円筒部側部分51全体が、ロータコア10のZ1側の端面10aよりもZ1側に設けられている。
【0040】
これにより、フランジ部50が、円筒部40のうちのロータコア10により締り嵌めにより固定される部分にR1側(径方向内側)から当接するようにより配置されにくい。これにより、円筒部40がロータコア10により締り嵌めされる際に、円筒部40においてフランジ部50によりR2側(径方向外側)に向かって突っ張られる部分をより形成されにくくすることができる。
【0041】
また、フランジ部50のうちの少なくとも円筒部側部分51は、ロータコア10のZ1側(軸方向における一方側)の端面10aよりもZ方向(軸方向)の外側で、かつ、エンドプレート21の少なくとも一部とR方向(径方向)にオーバーラップする位置に設けられている。具体的には、フランジ部50のうちの円筒部側部分51全体のZ2側の面が、Z方向において、ロータコア10のZ1側の端面10aと、エンドプレート21のZ2側の端部との間に位置するように、円筒部側部分51が接合部分51aからR1側に向かって延びるように設けられている。
【0042】
これにより、円筒部側部分51が、Z方向(軸方向)において、ロータコア10のZ1側(軸方向における一方側)の端面10aからZ方向の外側に大きく離れるのを防止することができる。これにより、円筒部側部分51がロータコア10のZ1側の端面10aよりもZ方向の外側に配置されることに起因してZ方向のスペースが大きくなるのを防止しながら、円筒部40がロータコア10により締り嵌めされる際に、円筒部40においてフランジ部50によりR2側(径方向外側)に向かって突っ張られる部分を形成されにくくすることができる。
【0043】
[ロータの製造方法]
図4を参照して、一実施形態によるロータ100の製造方法について説明する。
【0044】
まず、ステップS1において、ロータコア10およびロータハブ30を準備する準備工程が行われる。具体的には、準備工程(S1)において、ロータコア10が準備される。また、円筒部40と、円筒部40のZ方向における一方側の端部41と接合され円筒部40のR1側に設けられたフランジ部50と、を含むロータハブ30が準備される。
【0045】
次に、ステップS2において、ロータコア10にロータハブ30の円筒部40を締り嵌めにより固定する固定工程が行われる。具体的には、固定工程(S2)において、ロータコア10のZ方向に延びるロータハブ挿入孔11にロータハブ30の円筒部40が、たとえば焼嵌め等により締り嵌めされる。
【0046】
ここで、固定工程(S2)は、円筒部40を、フランジ部50のうちの少なくとも円筒部40と接合されている接合部分51aがロータコア10のZ1側(軸方向における一方側)の端面10aよりもZ方向(軸方向)の外側に設けられるように、ロータコア10のZ方向における全体に亘って締り嵌めによりロータコア10に固定する。具体的には、準備工程(S1)において、Z方向における全体に亘ってロータコア10の内径(ロータハブ挿入孔11の内径)が円筒部40の外径よりも大きくなっているロータコア10およびロータハブ30が準備される。そして、固定工程(S2)において、ロータコア10の加熱膨張によって、一時的にロータコア10の内径を大きくすることによって、ロータコア10のZ方向に延びるロータハブ挿入孔11にロータハブ30の円筒部40が挿入される。そして、ロータコア10の冷却収縮によって、Z方向における全体に亘って、円筒部40がロータコア10に締め付けられる。
【0047】
これにより、フランジ部50が、円筒部40のうちのロータコア10により締り嵌めにより固定される部分(ロータコア10のZ方向(軸方向)における全体)にR1側(径方向内側)から当接するように配置されにくい状態で、円筒部40が締り嵌めによりロータコア10に固定される。これにより、円筒部40がロータコア10により締り嵌めされる際に、円筒部40においてフランジ部50によりR2側(径方向外側)に向かって突っ張られる部分を形成されにくくすることができる。その結果、ロータハブ30の円筒部40がロータコア10のR1側に締り嵌めにより固定される場合に、Z方向においてロータコア10に生じる応力が局所的に大きくなるのを防止することができる。
【0048】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0049】
たとえば、上記実施形態では、フランジ部50のうちの少なくとも円筒部側部分51が、ロータコア10のZ1側(軸方向における一方側)の端面10aよりもZ方向(軸方向)の外側で、かつ、エンドプレート21の少なくとも一部とR方向(径方向)にオーバーラップする位置に設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、フランジ部のうちの円筒部側部分が、ロータコアの軸方向における一方側の端面よりも軸方向の外側で、かつ、エンドプレートと径方向にオーバーラップしない位置に設けられていてもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、キー溝部42が、C方向(周方向)において、互いに隣り合う複数のスプライン凹部43同士の間に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、キー溝部が、周方向において、互いに隣り合う複数のスプライン凹部同士の間以外の位置に配置されていてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、複数のスプライン凹部43が、円筒部40のZ方向(軸方向)における全体に亘って設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数のスプライン凹部が、円筒部の軸方向における一部のみに設けられていてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、複数のスプライン凹部43が、それぞれ、R1側(径方向内側)に向かうにしたがってC方向(周方向)における幅が拡がるように傾斜する傾斜側面部43bを含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数のスプライン凹部が、それぞれ、径方向内側に向かうにしたがって周方向における幅が拡がらない側面部を含むように構成されていてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、円筒部40は、クラッチ部104と係合するようにR2側(径方向外側)に凹む複数のスプライン凹部43を含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、円筒部が、クラッチ部と係合するように径方向外側に凹む複数のスプライン凹部を含まないように構成されていてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、ロータコア10が、C方向(周方向)においてキー部15と隣接する位置にR2側(径方向外側)に凹むように設けられた逃がし部16を含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ロータコアが、周方向においてキー部と隣接する位置に径方向外側に凹むように設けられた逃がし部を含まないように構成されていてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、ロータコア10が、C方向(周方向)においてロータコア10のq軸に対応する位置に設けられた冷媒流路用凹部19を含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ロータコアが、周方向においてロータコアのq軸に対応しない位置に設けられた冷媒流路用凹部を含むように構成されていてもよい。また、ロータコアが、冷媒流路用凹部を含まないように構成されていてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、キー溝部42のC方向(周方向)における端部42aが、C方向(周方向)において、傾斜側面部43bとR方向(径方向)にオーバーラップする位置に設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、キー溝部の周方向における端部が、周方向において、傾斜側面部と径方向にオーバーラップしない位置に設けられていてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、キー部15およびキー溝部42が、それぞれ、ロータコア10および円筒部40において、2つ設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、キー部およびキー溝部が、それぞれ、ロータコアおよび円筒部において、1つだけ設けられていてもよいし、3つ以上設けられていてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、キー部15およびキー溝部42が、それぞれ、ロータコア10および円筒部40のZ方向(軸方向)の全体に亘って設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、キー部が、ロータコアの軸方向の一部に設けられていてもよいし、キー溝部が、円筒部の軸方向の一部に設けられていてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、キー部15およびキー溝部42が、C方向(周方向)において、ロータコア10のd軸に対応する位置に設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、キー部およびキー溝部が、周方向において、ロータコアのd軸に対応しない位置に設けられていてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、ロータコア10および円筒部40が、それぞれ、キー部15、および、キー部15と係合するキー溝部42を含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ロータコアが、キー部を含まないように構成されていてもよいし、円筒部が、キー溝部を含まないように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10…ロータコア、10a…ロータコアの(軸方向における一方側)の端面、21…エンドプレート、30…ロータハブ、40…円筒部、41…円筒部の(ロータコアの軸方向における一方側)の端部、43…スプライン凹部、50…フランジ部、51…円筒部側部分、51a…接合部分、100…ロータ、104…クラッチ部