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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155164
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】ロータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20221005BHJP
   H02K 1/27 20220101ALI20221005BHJP
【FI】
H02K15/02 K
H02K1/27 501B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058523
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】高松 宏幸
【テーマコード(参考)】
5H615
5H622
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB07
5H615PP02
5H615SS04
5H615SS05
5H615SS09
5H615SS15
5H622CA02
5H622CA05
5H622CA10
5H622CA14
5H622CB03
5H622CB05
5H622PP09
(57)【要約】
【課題】永久磁石を押圧するように磁石挿入孔に隣接する部分を永久磁石側に移動させるための磁石挿入孔に隣接する部分の延ばし量の制御を容易に行うことが可能なロータの製造方法を提供する。
【解決手段】このロータ100の製造方法では、磁石挿入孔41に隣接する凹部42を凹部42が凹む方向(Z2側に向かう方向)とは逆方向(Z1側に向かう方向)に押圧して、凹部42のうちの永久磁石30側(R2側)の部分42aが永久磁石30を押圧するように、凹部42のうちの永久磁石30側の部分42aを永久磁石30側に移動させるように塑性変形させることにより、永久磁石30を磁石挿入孔41に固定する。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石挿入孔と、前記磁石挿入孔に隣接するとともに、積層方向に沿って凹む凹部と、を含む複数の第1電磁鋼板を形成する第1電磁鋼板形成工程と、
前記第1電磁鋼板形成工程の後、複数の前記磁石挿入孔および複数の凹部が前記積層方向に積み重なるように、前記複数の第1電磁鋼板を積層する電磁鋼板積層工程と、
前記電磁鋼板積層工程の後、複数の前記磁石挿入孔が積み重なることにより形成された積層磁石挿入孔に永久磁石を配置する磁石配置工程と、
前記磁石配置工程の後、前記凹部を前記凹部が凹む方向とは逆方向に押圧して、前記凹部のうちの前記永久磁石側の部分が前記永久磁石を押圧するように、前記凹部のうちの前記永久磁石側の部分を前記永久磁石側に移動させるように塑性変形させることにより、前記永久磁石を前記磁石挿入孔に固定する磁石固定工程と、を備える、ロータの製造方法。
【請求項2】
前記磁石配置工程は、前記積層磁石挿入孔と前記永久磁石との間に隙間が形成されるように、前記積層磁石挿入孔に前記永久磁石を配置する工程であり、
前記磁石固定工程は、前記隙間を埋めるように前記凹部のうちの前記永久磁石側の部分を前記永久磁石側に移動させるように塑性変形させることにより、前記永久磁石を前記磁石挿入孔に固定する工程である、請求項1に記載のロータの製造方法。
【請求項3】
前記第1電磁鋼板形成工程は、前記磁石挿入孔および前記凹部に加えて、前記凹部の両側において前記磁石挿入孔から前記磁石挿入孔とは反対側に向かって延びる切欠き部を含む前記複数の第1電磁鋼板を形成する工程である、請求項1または2に記載のロータの製造方法。
【請求項4】
前記第1電磁鋼板形成工程は、
前記磁石挿入孔の内側に向かって突出する突出部を含むように前記磁石挿入孔を形成する磁石挿入孔形成工程と、
前記磁石挿入孔形成工程の後、前記突出部の両側の根元から前記磁石挿入孔とは反対側に向かって延びるように前記切欠き部を形成する切欠き部形成工程と、
前記切欠き部形成工程の後、前記切欠き部に挟まれた部分を前記積層方向に凹むように変形させることによって前記凹部を形成する凹部形成工程と、を含む、請求項3に記載のロータの製造方法。
【請求項5】
前記磁石挿入孔と、前記積層方向において前記凹部に対応する位置に貫通する凹部用貫通孔と、を含む第2電磁鋼板を形成する第2電磁鋼板形成工程をさらに備え、
前記電磁鋼板積層工程は、前記複数の第1電磁鋼板の前記凹部が前記第2電磁鋼板の前記凹部用貫通孔に挿入されるように、かつ、前記第2電磁鋼板が、前記積層方向における端部に位置するように、前記複数の第1電磁鋼板と前記第2電磁鋼板を積層する工程であり、
前記磁石固定工程は、前記凹部用貫通孔に挿入された前記凹部のうちの前記永久磁石側の部分を前記永久磁石側に移動させるように塑性変形させることにより、前記永久磁石を前記磁石挿入孔に固定する工程である、請求項1~4のいずれか1項に記載のロータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロータコアと、ロータコアに固定された永久磁石と、を備えるロータが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、軸方向に沿って磁石挿入孔が設けられたロータコアと、ロータコアの磁石挿入孔に配置された永久磁石と、を備えるロータが開示されている。上記特許文献1に記載のロータでは、ロータコアの磁石挿入孔に隣接する部分が永久磁石を押圧するように、磁石挿入孔に隣接する部分を永久磁石側に移動するように塑性変形させることによって、永久磁石が磁石挿入孔に固定されている。なお、磁石挿入孔に隣接する部分の塑性変形は、ロータコアの軸方向における端部側から磁石挿入孔に隣接する平坦な部分を押圧して延ばす(押し広げるように潰す)ことによって行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102011111626号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のロータでは、ロータコアの磁石挿入孔に隣接する部分の塑性変形が磁石挿入孔に隣接する平坦な部分を押圧して延ばす(押し広げるように潰す)ことによって行われているので、永久磁石側に延ばす部分の延ばし量の制御が比較的難しい。このため、永久磁石を押圧するように磁石挿入孔に隣接する部分を永久磁石側に移動させるための磁石挿入孔に隣接する部分の延ばし量の制御を容易に行うことが可能なロータの製造方法が望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、永久磁石を押圧するように磁石挿入孔に隣接する部分を永久磁石側に移動させるための磁石挿入孔に隣接する部分の延ばし量の制御を容易に行うことが可能なロータの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面におけるロータの製造方法は、磁石挿入孔と、磁石挿入孔に隣接するとともに、積層方向に沿って凹む凹部と、を含む複数の第1電磁鋼板を形成する第1電磁鋼板形成工程と、第1電磁鋼板形成工程の後、複数の磁石挿入孔および複数の凹部が積層方向に積み重なるように、複数の第1電磁鋼板を積層する電磁鋼板積層工程と、電磁鋼板積層工程の後、複数の磁石挿入孔が積み重なることにより形成された積層磁石挿入孔に永久磁石を配置する磁石配置工程と、磁石配置工程の後、凹部を凹部が凹む方向とは逆方向に押圧して、凹部のうちの永久磁石側の部分が永久磁石を押圧するように、凹部のうちの永久磁石側の部分を永久磁石側に移動させるように塑性変形させることにより、永久磁石を磁石挿入孔に固定する磁石固定工程と、を備える。
【0008】
この発明の一の局面におけるロータの製造方法では、上記のように、凹部を凹部が凹む方向とは逆方向に押圧して、凹部のうちの永久磁石側の部分が永久磁石を押圧するように、凹部のうちの永久磁石側の部分を永久磁石側に移動させるように塑性変形させることにより、永久磁石を磁石挿入孔に固定する。これにより、凹部を凹部が凹む方向とは逆方向に押圧することは、曲がっているものを元の状態に戻すように曲げることに相当するので、平坦な部分を押圧して延ばす(押し広げるように潰す)場合と比較して、永久磁石側に延ばす部分の延ばし量の制御が容易である。その結果、永久磁石を押圧するように磁石挿入孔に隣接する部分を永久磁石側に移動させるための磁石挿入孔に隣接する部分の延ばし量の制御を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記のように、永久磁石を押圧するように磁石挿入孔に隣接する部分を永久磁石側に移動させるための磁石挿入孔に隣接する部分の延ばし量の制御を容易に行うことが可能なロータの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態によるロータの構成を示す平面図である。
図2図1の磁石挿入孔近傍の拡大平面図である。
図3図2の800-800線に沿った断面図である。
図4】第1実施形態によるロータの製造フロー示す図である。
図5】第1実施形態によるロータの製造フローにおける磁石挿入孔形成工程を示す図である。
図6】第1実施形態によるロータの製造フローにおける切欠き部形成工程を示す図である。
図7】第1実施形態によるロータの製造フローにおける凹部形成工程を示す図である。
図8】第1実施形態によるロータの製造フローにおける電磁鋼板積層工程を示す図である。
図9】第1実施形態によるロータの製造フローにおける磁石配置工程を示す図である。
図10図9の900-900線に沿った断面図である。
図11】第1実施形態によるロータの製造フローにおける凹部形成工程を示す図である。
図12】第2実施形態によるロータの磁石挿入孔近傍の拡大平面図である。
図13】第2実施形態によるロータの製造フローを示す図である。
図14】第2実施形態によるロータの製造フローにおける凹部形成工程を示す図である。
図15】第2実施形態によるロータの製造フローにおける磁石挿入孔形成工程を示す図である。
図16】第1実施形態の第1変形例によるロータの構成を示す断面図である。
図17】第1実施形態の第2変形例によるロータの構成を示す断面図である。
図18】第1実施形態の第3変形例によるロータの構成を示す断面図である。
図19】第1実施形態の第4変形例によるロータの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
[第1実施形態]
(ロータの構成)
図1図3を参照して、第1実施形態によるロータ100の構成について説明する。
【0013】
以下の説明では、ロータ100の軸方向、径方向および周方向を、それぞれ、Z方向、R方向およびC方向とする。また、Z方向の一方側および他方側を、それぞれ、Z1側およびZ2側とする。また、R方向の一方側(径方向内側)および他方側(径方向外側)を、それぞれ、R1側およびR2側とする。
【0014】
<ロータの全体構成>
図1に示すように、ロータ100は、ステータ101と共に、回転電機102の一部を構成する。回転電機102は、たとえば、モータ、ジェネレータ、または、モータ兼ジェネレータである。ロータ100およびステータ101は、それぞれ、円環状に形成されている。ロータ100は、回転軸線90回りに回転するように構成されている。ロータ100は、ロータ100の外周面とステータ101の内周面とがR方向に対向するように、ステータ101のR1側に配置されている。すなわち、ロータ100は、インナーロータ型の回転電機102の一部として構成されている。
【0015】
ロータ100は、ロータコア10と、ロータシャフト20と、を備える。ロータコア10は、Z方向(軸方向)に延びるシャフト挿入孔11を含む。シャフト挿入孔11は、Z方向に見て、ロータコア10の中央部に設けられている。ロータシャフト20は、シャフト挿入孔11内に配置されている。ロータシャフト20は、ロータコア10に対して固定されている。
【0016】
ロータシャフト20は、ギア等の回転力伝達部材を介して、エンジンや車軸等に接続されている。ロータコア10およびロータシャフト20のうちの一方が回転軸線90回りに回転することにより、ロータコア10およびロータシャフト20のうちの他方に回転力が伝達される。すなわち、ロータコア10とロータシャフト20とは、回転軸線90回りに一体的に回転する。そして、ロータシャフト20およびロータコア10がステータ101(図1参照)に対して回転軸線90回りに回転するように構成されている。
【0017】
ロータコア10は、複数の電磁鋼板12が積層されている。ロータコア10には、電磁鋼板12の積層方向(Z方向)に延びる積層磁石挿入孔13が形成されている。積層磁石挿入孔13は、ロータコア10のうちのR2側の部分に配置されている。積層磁石挿入孔13は、ロータコア10に複数設けられている。複数の積層磁石挿入孔13は、Z方向に見て、C方向に沿って等角度間隔に配置されている。
【0018】
図2に示すように、ロータ100は、積層磁石挿入孔13に配置された永久磁石30を備える。すなわち、回転電機102は、埋込永久磁石型モータ(IPMモータ:Interior Permanent Magnet Motor)として構成されている。永久磁石30は、Z方向に直交する断面が長方形形状を有している。永久磁石30は、たとえば、磁化方向(着磁方向)が短手方向となるように構成されている。
【0019】
図3に示すように、複数の電磁鋼板12は、複数の第1電磁鋼板40と、第2電磁鋼板50と、を含む。複数の第1電磁鋼板40の各々は、磁石挿入孔41を含む。複数の第1電磁鋼板40は、積層方向(Z方向)に積み重なるように積層されている。第2電磁鋼板50は、第1電磁鋼板40の磁石挿入孔41に対応する位置に設けられた磁石挿入孔51を含む。第2電磁鋼板50は、複数の第1電磁鋼板40のZ2側に積層されている。具体的には、第2電磁鋼板50は、ロータコア10のZ2側の端部10aのみに設けられている。なお、図3では、第2電磁鋼板50が1つだけ設けられた例を示しているが、第2電磁鋼板50が2つ以上設けられてもよい。また、積層磁石挿入孔13は、複数の第1電磁鋼板40の複数の磁石挿入孔41と、第2電磁鋼板50の磁石挿入孔51とが積み重なることにより形成されている。
【0020】
複数の第1電磁鋼板40の各々は、磁石挿入孔41に対してR1側に隣接するとともに積層方向に沿って凹む凹部42を含む。凹部42はZ2側に向かって凹んでいる。図3では、凹部42のZ方向における凹みが第1電磁鋼板40の厚みより小さい。そして、第2電磁鋼板50とZ方向に隣接する第1電磁鋼板40の凹部42は、凹部42に対応する位置に貫通する第2電磁鋼板50の凹部用貫通孔52内に、Z2側に凹んだ状態で配置されている。なお、凹部42は、磁石挿入孔41毎に1つずつ設けられている。
【0021】
ここで、ロータ100では、凹部42が、凹部42が凹む方向(Z2側に向かう方向)とは逆方向(Z1側に向かう方向)に押圧され、凹部42のうちの永久磁石30側(R2側)に移動させるように塑性変形された永久磁石30側の部分42aが永久磁石30を押圧することによって、永久磁石30が磁石挿入孔41に固定されている。なお、永久磁石30が磁石挿入孔41に固定される方法の詳細は、後述するロータ100の製造方法において説明する。
【0022】
これにより、凹部42のうちの永久磁石30側(R2側)の部分42aが永久磁石30を押圧するように塑性変形されているので、永久磁石30を磁石挿入孔41に確実に固定することができる。また、凹部42を凹部42が凹む方向(Z2側に向かう方向)とは逆方向(Z1側に向かう方向)に押圧することは、曲がっているものを元の状態に戻すように曲げることに相当するので、平坦な部分を押圧して延ばす(押し広げるように潰す)場合と比較して、磁石挿入孔41側(R2側)に延ばす部分の延ばし量の制御が容易である。その結果、永久磁石30を磁石挿入孔41に固定する際に、永久磁石30を押圧するように凹部42のうちの永久磁石30側(R2側)の部分42aを永久磁石30側に移動させるための磁石挿入孔41に隣接する部分の延ばし量の制御を容易に行うことができる。
【0023】
図2に示すように、凹部42の両側には、磁石挿入孔41側(R2側)から磁石挿入孔41とは反対側(R1側)に向かって延びるように切欠き部43が形成されている。切欠き部43は、凹部42を塑性変形しやすくするために設けられている。
【0024】
(ロータの製造方法)
図3図11を参照して、第1実施形態によるロータ100の製造方法について説明する。なお、以下のロータ100の製造工程の説明において用いる方向は、説明を簡略化するために、上記のロータ100の構成の説明において用いた方向と同じ方向であるとする。
【0025】
<第1電磁鋼板形成工程>
まず、図4に示すように、ステップS10において、第1電磁鋼板40を形成する第1電磁鋼板形成工程が行われる。図3に示すように、第1電磁鋼板形成工程(S10)は、磁石挿入孔41と、磁石挿入孔41に隣接するとともに、積層方向(Z方向)に沿って凹む凹部42と、を含む複数の第1電磁鋼板40を形成する工程である。磁石挿入孔41および凹部42は、プレス加工によって形成される。
【0026】
また、第1電磁鋼板形成工程(S10)は、磁石挿入孔41および凹部42に加えて、凹部42の両側において磁石挿入孔41から磁石挿入孔41とは反対側(R1側)に向かって延びる切欠き部43を含む複数の第1電磁鋼板40を形成する工程である。切欠き部43は、磁石挿入孔41および凹部42と同様に、プレス加工によって形成される。これにより、凹部42が切欠き部43に挟まれた状態となるので、切欠き部43がない場合と比較して、後述する磁石固定工程(S50)において、凹部42のうちの永久磁石30側(R2側)の部分42aが永久磁石30を押圧するように凹部42のうちの永久磁石30側の部分42aを永久磁石30側に移動させるように容易に塑性変形させることができる。
【0027】
また、図4に示すように、第1電磁鋼板形成工程(S10)は、磁石挿入孔形成工程(S11)と、切欠き部形成工程(S12)と、凹部形成工程(S13)と、を含む。磁石挿入孔形成工程(S11)と、切欠き部形成工程(S12)と、凹部形成工程(S13)とは、この順に行われる。
【0028】
図5に示すように、磁石挿入孔形成工程(S11)は、磁石挿入孔41の内側(R1側)に向かって突出する突出部42bを含むように磁石挿入孔41を形成する工程である。突出部42bは、積層方向(Z方向)に見て、矩形形状を有する。
【0029】
図6に示すように、切欠き部形成工程(S12)は、突出部42bの両側の根元42cから磁石挿入孔41とは反対側(R1側)に向かって延びるように切欠き部43を形成する工程である。すなわち、突出部42bに対して磁石挿入孔41側(R2側)とは反対側(R1側)の部分は、2つの切欠き部43に挟まれた状態となる。
【0030】
図7に示すように、凹部形成工程(S13)は、切欠き部43に挟まれた部分42dを積層方向(Z方向)に凹むように変形させることによって凹部42を形成する工程である。凹部42は、プレス加工によって形成される。これにより、凹部42を形成する際に切欠き部43に挟まれた部分42dのみが変形されるので、凹部42と隣接する磁石挿入孔41を変形させることなく凹部42を形成することができる。
【0031】
凹部形成工程(S13)では、切欠き部43に挟まれた部分42dが積層方向(Z方向)に凹むと、切欠き部43に挟まれた部分42dが凹んだ分だけ、突出部42bは磁石挿入孔41とは反対側(R1側)に向かって移動する。なお、突出部42bは、積層方向(Z方向)に見て、少なくとも突出部42bが磁石挿入孔41とオーバラップしない(突出部42bが磁石挿入孔41の内側に突出しない)位置まで移動される。
【0032】
また、第1電磁鋼板形成工程(S10)は、磁石挿入孔41と、磁石挿入孔41に対して径方向内側(R1側)に隣接する凹部42と、を含む複数の第1電磁鋼板40を形成する工程である。すなわち、第1電磁鋼板40は、第1電磁鋼板40において、磁石挿入孔41と、凹部42とが、この順に、径方向内側(R1側)に向かって並ぶように形成される。
【0033】
これにより、後述する磁石固定工程(S50)において凹部42のうちの永久磁石30側(R2側)の部分42aが永久磁石30を押圧する方向が、ロータ100(図1参照)の回転時に永久磁石30に加わる遠心力の方向と同じ径方向外側(R2側)に向かう方向となる。その結果、ロータ100の回転時に、永久磁石30に加わる遠心力によって、永久磁石30の固定が緩むのを防止することができる。また、磁石挿入孔41は、ロータ100(図1参照)において径方向外側(R2側)の部分に設けられるので、凹部42が磁石挿入孔41と径方向内側(R1側)に隣接する位置に設けられることによって、凹部42を設けるスペースを容易に確保することができる。
【0034】
<第2電磁鋼板形成工程>
次に、図4に示すように、ステップS20において、第2電磁鋼板50を形成する第2電磁鋼板形成工程が行われる。図3に示すように、第2電磁鋼板形成工程(S20)は、磁石挿入孔51と、積層方向(Z方向)において凹部42に対応する位置に貫通する凹部用貫通孔52と、を含む第2電磁鋼板50を形成する工程である。磁石挿入孔51および凹部用貫通孔52は、プレス加工によって形成される。
【0035】
<電磁鋼板積層工程>
次に、図4に示すように、ステップS30において、複数の第1電磁鋼板40を積層する電磁鋼板積層工程が行われる。図8に示すように、電磁鋼板積層工程(S30)は、複数の磁石挿入孔41および複数の凹部42が積層方向(Z方向)に積み重なるように、複数の第1電磁鋼板40を積層する工程である。
【0036】
また、電磁鋼板積層工程(S30)は、複数の第1電磁鋼板40の凹部42が第2電磁鋼板50の凹部用貫通孔52に挿入されるように、かつ、第2電磁鋼板50が、積層方向(Z方向)における端部10aに位置するように、複数の第1電磁鋼板40と第2電磁鋼板50を積層する工程である。すなわち、Z2側に凹む複数の凹部42が積み重なるように積層された複数の第1電磁鋼板40のZ2側に、凹部42の位置と凹部用貫通孔52の位置とが一致するように、凹部用貫通孔52を含む第2電磁鋼板50が積層される。そして、第2電磁鋼板50よりも更にZ2側には第1電磁鋼板40が積層されない。なお、積層方向(Z方向)における端部10aに位置させる第2電磁鋼板50の個数は、1つでもよいし、複数(たとえば、2つ)が積み重なるように積層されてもよい。また、第2電磁鋼板50は、積層方向(Z方向)における一方側の端部10aまたは他方側の端部10aのいずれかのみに配置されてもよいし、積層方向(Z方向)における一方側の端部10aおよび他方側の端部10aの両方に配置されてもよい。
【0037】
また、電磁鋼板積層工程(S30)は、複数の第1電磁鋼板40を積層方向(Z方向)の一方端側から他方端側に亘るように積層する工程である。すなわち、積層方向(Z方向)に積層させる電磁鋼板12のうち、積層方向における端部10aの第2電磁鋼板50以外が全て第1電磁鋼板40となるように、複数の第1電磁鋼板40と、第2電磁鋼板50とが積層される。これにより、複数の第1電磁鋼板40を含む複数の電磁鋼板12が積層されたロータコア10において、積層方向(Z方向)における広範囲に亘って、凹部42を含む複数の第1電磁鋼板40を積層することができる。その結果、後述する磁石固定工程(S50)において、積層方向(Z方向)の広範囲において、凹部42のうちの永久磁石30側(R2側)の部分42aを永久磁石30に押圧させて、永久磁石30をより堅固に固定することができる。
【0038】
<磁石配置工程>
次に、図4に示すように、ステップS40において、積層磁石挿入孔13に永久磁石30を配置する磁石配置工程が行われる。図9および図10に示すように、磁石配置工程(S40)は、複数の磁石挿入孔41が積み重なることにより形成された積層磁石挿入孔13に永久磁石30を配置する工程である。また、磁石配置工程(S40)は、積層磁石挿入孔13と永久磁石30との間にR方向における隙間Gが形成されるように、積層磁石挿入孔13に永久磁石30を配置する工程である。なお、図9および図10では、永久磁石30が磁石挿入孔41のR方向における中央部に配置されている例を示したが、磁石配置工程(S40)において、永久磁石30が磁石挿入孔41内のR1側寄りに配置されてもよいし、磁石挿入孔41内のR2側寄りに配置されてもよい。
【0039】
<磁石固定工程>
次に、図4に示すように、ステップS50において、永久磁石30を磁石挿入孔41に固定する磁石固定工程が行われる。図11に示すように、磁石固定工程(S50)は、凹部42を凹部42が凹む方向(Z2側に向かう方向)とは逆方向(Z1側に向かう方向)に押圧して、凹部42のうちの永久磁石30側(R2側)の部分42aが永久磁石30を押圧するように、凹部42のうちの永久磁石30側の部分42aを永久磁石30側に移動させるように塑性変形させることにより、永久磁石30を磁石挿入孔41に固定する工程である。
【0040】
具体的には、凹部42を凹部42が凹む方向(Z2側に向かう方向)とは逆方向(Z1側に向かう方向)に押圧して凹みが小さくなっただけ、磁石挿入孔41に隣接する凹部42のうちの永久磁石30側(磁石挿入孔41側)(R2側)の部分42aが、永久磁石30側に移動するように塑性変形する。そして、凹部42のうちの永久磁石30側の部分42aが永久磁石30を押圧する位置まで永久磁石30側に移動するように塑性変形されると、凹部42のうちの永久磁石30側の部分42aが永久磁石30を押圧する状態となる。すなわち、永久磁石30が磁石挿入孔41において固定された状態となる。
【0041】
これにより、凹部42を凹部42が凹む方向(Z2側に向かう方向)とは逆方向(Z1側に向かう方向)に押圧することは、曲がっているものを元の状態に戻すように曲げることに相当するので、平坦な部分を押圧して延ばす(押し広げるように潰す)場合と比較して、磁石挿入孔41側(R2側)に延ばす部分の延ばし量の制御が容易である。その結果、永久磁石30を押圧するように凹部42のうちの永久磁石30側(R2側)の部分42aを永久磁石30側に移動させるための磁石挿入孔41に隣接する部分の移動量の制御を容易に行うことができる。
【0042】
また、磁石固定工程(S50)は、R方向における隙間Gを埋めるように凹部42のうちの永久磁石30側(R2側)の部分42aを永久磁石30側に移動させるように塑性変形させることにより、永久磁石30を磁石挿入孔41に固定する工程である。具体的には、永久磁石30側に移動された凹部42のうちの永久磁石30側の部分42aが永久磁石30を押圧することによって、永久磁石30が、磁石挿入孔41の凹部42とは反対側(R2側)に当接する状態となる。すなわち、永久磁石30が、磁石挿入孔41の凹部42側とは反対側(R2側)の面と、凹部42のうちの永久磁石30側(R2側)の部分42aとに挟まれた状態となる。これにより、積層磁石挿入孔13と永久磁石30との間にR方向における隙間Gが形成されている場合でも、凹部42のうちの永久磁石30側の部分42aが永久磁石30を押圧するように凹部42のうちの永久磁石30側の部分42aを確実に移動させることができる。
【0043】
また、磁石固定工程(S50)は、凹部用貫通孔52に挿入された凹部42のうちの永久磁石30側(R2側)の部分42aを永久磁石30側に移動させるように塑性変形させることにより、永久磁石30を磁石挿入孔41に固定する工程である。これにより、凹部42のうちの永久磁石30側(R2側)の部分42aを永久磁石30側に移動させるように塑性変形させた後、凹部42の積層方向(Z方向)に沿った凹みが残った場合であっても、凹部42の凹んだ部分を凹部用貫通孔52内に位置させることができる。その結果、磁石固定工程(S50)の後に、凹部42の凹んだ部分を除去する工程を別途設ける必要がない。なお、磁石固定工程(S50)では、凹部42のZ方向における凹みが第1電磁鋼板40の厚みより小さくなるまで凹部42が押圧され、磁石固定工程(S50)の後、Z方向における凹みが残った状態となっている。
【0044】
なお、磁石固定工程(S50)では、凹部42を押圧する際に、上側押さえ部材81と、下側押さえ部材82と、加圧部材83と、を備える加圧装置80が用いられる。上側押さえ部材81は、ロータコア10のZ1側に配置される。下側押さえ部材82は、ロータコア10のZ2側に配置される。また、加圧部材83は、下側押さえ部材82とバネで連結されており、下側押さえ部材82に対してZ方向に相対移動可能となっている。加圧部材83は、Z2側に向かって凹んでいる凹部42のZ2側に配置される。そして、上側押さえ部材81および下側押さえ部材82によって、ロータコア10の凹部42の近傍以外の部分をZ方向の両側からを押さえた状態で、第2電磁鋼板50の凹部用貫通孔52に挿入されている第1電磁鋼板40の凹部42が、加圧部材83によってZ1側に向かって押圧される。
【0045】
[第2実施形態]
(ロータの構成)
図12を参照して、第2実施形態によるロータ200の構成について説明する。なお、図中において、上記第1実施形態と同様の部分には、同一の符号を付している。
【0046】
図12に示すように、ロータ200は、ロータコア210を備える。ロータコア210は、複数の第1電磁鋼板240を含む。複数の第1電磁鋼板40の各々は、磁石挿入孔41に隣接するとともに積層方向(Z方向)に沿って凹む凹部242を含む。
【0047】
ロータ200では、上記第1実施形態と同様に、凹部242が、凹部242が凹む方向(Z2側に向かう方向)とは逆方向(Z1側に向かう方向)に押圧され、凹部242のうちの永久磁石30側(R2側)に移動させるように塑性変形された永久磁石30側の部分242aが永久磁石30を押圧することによって、永久磁石30が磁石挿入孔41に固定されている。
【0048】
ロータコア210では、上記第1実施形態と異なり、凹部242の両側には、切欠き部が形成されていない。
【0049】
なお、第2実施形態のロータ200のその他の構成は、上記第1実施形態のロータ100と同様である。
【0050】
(ロータの製造方法)
図12図15を参照して、第2実施形態によるロータ200の製造方法について説明する。
【0051】
<第1電磁鋼板形成工程>
まず、図13に示すように、ステップS210において、第1電磁鋼板240を形成する第1電磁鋼板形成工程が行われる。図12に示すように、第1電磁鋼板形成工程(S210)は、上記第1実施形態と同様に、磁石挿入孔41と、磁石挿入孔41に隣接するとともに、積層方向(Z方向)に沿って凹む凹部242と、を含む複数の第1電磁鋼板240を形成する工程である。磁石挿入孔41および凹部242は、プレス加工によって形成される。
【0052】
また、図13に示すように、第1電磁鋼板形成工程(S210)は、凹部形成工程(S211)と、磁石挿入孔形成工程(S212)と、を含む。凹部形成工程(S211)と、磁石挿入孔形成工程(S212)とは、この順に行われる。なお、第1電磁鋼板形成工程(S210)では、上記第1実施形態と異なり、凹部242の両側に切欠き部を形成する工程は行われない。
【0053】
図14に示すように、凹部形成工程(S211)は、磁石挿入孔41が形成される予定の部分に対して径方向内側(R1側)に隣接する部分を、積層方向(Z方向)に凹むように変形させることによって凹部242を形成する工程である。
【0054】
図15に示すように、磁石挿入孔形成工程(S212)は、凹部242に対して径方向外側(R2側)に隣接する部分に磁石挿入孔41を形成する工程である。これにより、凹部242が形成された後に磁石挿入孔41が形成されるので、磁石挿入孔41を形成した後に凹部242が形成される場合と異なり、凹部242の形成によって磁石挿入孔41の形状が歪んでしまうのを防止することができる。
【0055】
なお、第2実施形態のロータ200の製造方法のその他の工程は、上記第1実施形態のロータ100の製造方法と同様である。
【0056】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0057】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、複数の第1電磁鋼板40、240が積層方向(Z方向)の一方端側から他方端側に亘るように積層されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図16に示す第1変形例によるロータ300のように、複数の第1電磁鋼板が積層方向の一方端側の部分のみに積層されていてもよい。また、図17に示す第2変形例によるロータ400のように、複数の第1電磁鋼板が積層方向の一方端側の部分および他方端部側の部分のみに積層されていてもよい。
【0058】
また、上記第1および第2実施形態では、磁石固定工程(S50)の後、凹みが残った状態となっている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図18に示す第3変形例によるロータ500のように、磁石固定工程の後、凹みが残らずに平坦な状態となっていてもよい。
【0059】
また、上記第1および第2実施形態では、磁石挿入孔51と、積層方向(Z方向)において凹部42、242に対応する位置に貫通する凹部用貫通孔52と、を含む第2電磁鋼板50が積層されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図19に示す第4変形例によるロータ600のように、磁石挿入孔を含むとともに、積層方向(Z方向)において凹部に対応する位置に貫通する凹部用貫通孔を含まない第2電磁鋼板が積層されていてもよい。この場合、凹んだ状態の凹部を配置させる凹部用貫通孔がないので、上記第3変形例によるロータ500と同様に、凹部を凹みが残らないようにすることが好ましい。
【0060】
また、上記第1および第2実施形態では、複数の第1電磁鋼板40、240の各々において、凹部42が、磁石挿入孔41に対して径方向内側(R1側)に隣接するように設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数の第1電磁鋼板の各々において、凹部が、磁石挿入孔に対して径方向外側に隣接するように設けられていてもよいし、磁石挿入孔に対して周方向に隣接するように設けられていてもよい。
【0061】
また、上記第1および第2実施形態では、凹部42、242が、磁石挿入孔41毎に1つずつ設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、凹部が、磁石挿入孔に設けられる個数は限定されない。
【符号の説明】
【0062】
10a…(積層方向における)端部、13…積層磁石挿入孔、30…永久磁石、40…第1電磁鋼板、41…磁石挿入孔、42、242…凹部、42a、242a…(凹部のうちの永久磁石側の)部分、42b…突出部、42c…(突出部の両側の)根元、42d…(切欠き部に挟まれた)部分、43…切欠き部、50…第2電磁鋼板、51…磁石挿入孔、52…凹部用貫通孔、100、200、300、400、500、600…ロータ、G…隙間
図1
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