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特開2022-155177超音波CT装置、その制御方法、および、超音波CT装置の制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155177
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】超音波CT装置、その制御方法、および、超音波CT装置の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/15 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
A61B8/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058547
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】特許業務法人 山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺田 崇秀
(72)【発明者】
【氏名】坪田 悠史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敦郎
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601BB03
4C601BB16
4C601DD08
4C601DE18
4C601EE08
4C601GB05
4C601GC02
4C601GC10
4C601HH12
4C601KK35
(57)【要約】
【課題】超音波の残響波の受信信号が、本来の受信信号に与える影響を抑えつつ、超音波の送信間隔を短縮することができる超音波CT装置を提供する。
【解決手段】送信と受信の繰り返しの際、前回以前の送信において送信された超音波であって、振動子アレイにより1回以上反射された残響波が、今回の受信に用いる振動子に到達するタイミングと、今回の送信において送信される超音波が、今回の受信に用いる振動子に到達するタイミングとがずれるように、今回の送信のタイミングを制御する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象が配置される領域を囲むように複数の振動子が配列された振動子アレイと、
前記振動子に送信信号を出力し、超音波を送信させる送信器と、
前記超音波の送信を受けた前記領域からの超音波を、前記振動子アレイの予め定めた数の振動子が受信して出力する受信信号を受け取って処理する受信器と、
超音波を送信させる前記振動子と、受信信号を受け取る前記振動子との組み合わせを、予め定められた一連の組み合わせに従って順次前記送信器と受信器に設定する超音波の送信と受信の繰り返しを制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記送信と受信の繰り返しの際、前回以前の送信において送信された超音波であって、前記振動子アレイにより1回以上反射された残響波が、前記今回の受信に用いる振動子に到達するタイミングと、今回の送信において送信される超音波が、前記今回の受信に用いる振動子に到達するタイミングとがずれるように、前記今回の送信のタイミングを制御することを特徴とする超音波CT装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波CT装置であって、前記送信と受信の一連の繰り返しにおいて、n回目の送信のタイミングは、n-1回目の送信に用いた振動子の位置と送信のタイミング、および、前記n回目の送信に用いる振動子の位置とn回目の受信に用いる振動子の位置を含む送受信条件に基づいて予め定められていることを特徴とする超音波CT装置。
【請求項3】
請求項2記載の超音波CT装置であって、前記送受信条件には、前記計測対象の構成要素について予め定められた最大音速と最小音速が含まれることを特徴とする超音波CT装置。
【請求項4】
請求項1に記載の超音波CT装置であって、前記受信器は、前記超音波のうち前記領域を透過した透過波の受信信号を処理する構成であり、
前記制御部は、今回送信される超音波の前記透過波が前記今回の受信に用いる振動子に到達するタイミングが、前回以前に送信された超音波のうち前記透過波の前記残響波が前記今回の受信に用いる振動子に到達するタイミングとずれるように、前記今回の送信のタイミングを制御することを特徴とする超音波CT装置。
【請求項5】
請求項1に記載の超音波CT装置であって、前記制御部は、前記送信に用いる振動子と前記受信に用いる振動子の組み合わせ毎に、前記受信器による前記受信信号の受信期間をさらに設定することを特徴とする超音波CT装置。
【請求項6】
請求項1に記載の超音波CT装置であって、前記制御部は、所定の受信期間の前記受信信号をリアルタイムに解析することにより、前記残響波の受信信号が前記所定の受信期間の受信信号に含まれるかどうかを判定し、前記残響波の受信信号が含まれる場合、前記今回の送信および受信をやり直すことを特徴とする超音波CT装置。
【請求項7】
請求項1に記載の超音波CT装置であって、前記制御部は、所定の受信期間の前記受信信号をリアルタイムに解析することにより、前記残響波の受信信号が前記所定の受信期間の受信信号に含まれるかどうかを判定し、前記残響波の受信信号が含まれ、かつ、前記超音波の受信信号が含まれていない場合、受信期間を延長し、今回の受信を継続することにより、前記超音波の受信信号を取得することを特徴とする超音波CT装置。
【請求項8】
請求項6に記載の超音波CT装置であって、前記制御部は、前記残響波の受信信号が前記受信期間の受信信号に含まれる場合、前記残響波と前記超音波の分離度合を判定し、前記分離度合に基づき、前記送信および受信のやり直すかどうかを決定することを特徴とする超音波CT装置。
【請求項9】
請求項6に記載の超音波CT装置であって、前記制御部は、前記残響波を受信した振動子の数が予め定めた閾値未満である場合、および/または、前記残響波の受信信号のピーク強度の前記超音波の受信信号のピーク強度に対する比が予め定めた閾値未満である場合、分離度合が所定値よりも高いと判定し、前記送信および受信のやり直しを行わないことを特徴とする超音波CT装置。
【請求項10】
請求項1に記載の超音波CT装置であって、前記制御部は、所定の受信期間の前記受信信号をリアルタイムに解析することにより、前記残響波の受信信号が所定の受信期間の受信信号に含まれるかを判定し、前記残響波の受信信号が含まれる場合、送信および受信の少なくとも一方のタイミングを変更するようにユーザに促す表示を、接続されている表示装置に表示することを特徴とする超音波CT装置。
【請求項11】
請求項1に記載の超音波CT装置であって、前記送信と受信の繰り返しにより前記受信器が得た前記受信信号を用いて、前記計測対象の画像を生成する演算部をさらに有し、
前記制御部は、前記画像を解析することにより、前記画像への前記残響波も影響の有無を判定し、前記残響波の影響がある場合、前記送信のタイミングを変更して、前記送信と受信の繰り返しをやり直すことを特徴とする超音波CT装置。
【請求項12】
請求項1に記載の超音波CT装置であって、前記送信と受信の繰り返しにより前記受信器が得た前記受信信号を用いて、前記計測対象の画像を生成する演算部をさらに有し、
前記制御部は、前記画像への前記残響波の影響の有無を判定し、前記残響波の影響がある場合、前記画像と、前記送信のタイミングを変更するようにユーザに促す表示を接続されている表示装置に表示することを特徴とする超音波CT装置。
【請求項13】
請求項1に記載の超音波CT装置であって、前記制御部は、所定のプレ送受信を実行し、前記残響波が前記受信に用いる振動子に到達するタイミングを求め、求めた前記残響波の到達タイミングに基づいて、所定の送信または一連の送信のタイミングを決定し、決定した送信タイミングを用いて本送受信を実行することを特徴とする超音波CT装置。
【請求項14】
請求項13に記載の超音波CT装置であって、前記制御部は、前記プレ送受信によって、前記超音波が前記受信に用いる振動子に到達するタイミングをさらに求め、前記残響波の到達タイミングを避け、前記超音波の到達タイミングに受信のタイミングが一致するように本送信の送信および受信のタイミングを設定することを特徴とする超音波CT装置。
【請求項15】
請求項13に記載の超音波CT装置であって、前記制御部は、前記プレ送受信と、前記本送受信をいずれも、前記予め定められた一連の組み合わせに従って行うことを特徴とする超音波CT装置。
【請求項16】
請求項1に記載の超音波CT装置であって、前記制御部は、事前に入力された、前記計測対象の体型、インプラントの有無、および、乳腺密度のうちの少なくとも一つに基づいて、前記今回の送信のタイミングを制御することを特徴とする超音波CT装置。
【請求項17】
計測対象が配置される領域を囲むように複数の振動子が配列された振動子アレイを用いた超音波CT装置の制御方法であって、
超音波の送信に用いる振動子と、受信に用いる振動子との組み合わせを、予め定められた一連の組み合わせに従って順次選択し、選択した振動子から超音波を送信し、受信する処理を繰り返しながら、前回以前に送信された超音波が前記振動子アレイにより1回以上反射された音波である残響波が、前記今回の受信に用いる振動子に到達するタイミングに対して、今回送信される超音波が、前記今回の受信に用いる振動子に到達するタイミングがずれるように、前記今回の送信のタイミングを制御することを特徴とする超音波CT装置の制御方法。
【請求項18】
計測対象が配置される領域を囲むように複数の振動子が配列された振動子アレイを備えた超音波CT装置の制御プログラムであって、
コンピュータに、
超音波の送信に用いる振動子と、受信に用いる振動子との組み合わせを、予め定められた一連の組み合わせに従って選択する第1ステップと、
選択した振動子から超音波を送信させ、受信する第2ステップと
を処理を繰り返し実行させ、
n回目の第1ステップおよび第2ステップにおいては、n-1回目以前の前記第2ステップにおいて送信された超音波が前記振動子アレイにより1回以上反射された音波である残響波が、前記n回目の受信に用いる振動子に到達するタイミングに対して、n回目の第2ステップにおいて送信される超音波が、前記n回目の第2ステップの受信に用いる振動子に到達するタイミングがずれるように、前記n回目の第2ステップの送信のタイミングを制御する
ことを特徴とする超音波CT装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波CT装置に関し、特に、その制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波CT(Computed Tomography)装置は、対象物の断層画像を生成する超音波撮像装置であり、特許文献1等に公開されている。対象物は、超音波を伝搬する媒質である超音波伝搬部材(水など)の中に配置され、対象物を囲むように(例えばリング状に)振動子が配置される。この対象物の内部に向かって、様々な位置の振動子から超音波が送信され、対象物の表面や内部で散乱した超音波や、対象物の内部を透過した超音波を、様々な位置にある振動子によって受信される。受信信号に基づいて、対象物の形状や音響特性を反映する物性値(音速等)の分布が算出され、対象物の物性値分布画像(音速画像)等が生成される。
【0003】
非特許文献1には、800μsの間隔で超音波を送信し、対象物を透過した超音波信号(透過波)を受信して音速像を生成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2017/098641号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Olivier Roy, Steven Schmidt, Cuiping Li, Veerendra Allada, Erik West, David Kunz, and Neb Duric, “Breast imaging using ultrasound tomography: From clinical requirements to system design,” 2013 IEEE International Ultrasonics Symposium (IUS), pp. 1174-1177, 2013.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
超音波CTでは、計測対象を囲むように振動子が配置された振動子列が用いられる。例えば、振動子列の形状はリング状である。ある振動子から送信された超音波は、対象物を透過して振動子列まで到達して受信されるが、その一部は到達した振動子列によって反射され、反射した超音波は、再び対象物を透過して別の振動子まで到達し、その一部は振動子列によって再び反射される。振動子列で1回以上反射された超音波を本明細書では「残響波」と呼ぶ。すなわち、振動子列には、ある振動子から送信され、対象物を1回透過して振動子列に到達した超音波のみならず、振動子列で1回以上反射された残響波も到達して受信される。残響波は、計測対象の形状や音響特性などを画像化する上では雑音になる。
【0007】
超音波CT装置は、リング状の振動子列を用いるため、超音波が複数回反射されながら複雑に往復し、構造的に残響波が生じやすく、曲面で反射された超音波の波面の形状も複雑である。また、超音波CT装置では、超音波を送信する振動子の位置を変えながら、計測対象の全周から何度も超音波を送信するため、送信する振動子の位置を変更するたびに残響波の伝搬方向も変化する。さらに、超音波CT装置では、処理回路のチャンネル数低減のため、リング状の振動子列のすべての振動子から受信信号を一度に信号処理するのではなく、振動子列を複数のグループに分け、同じ振動子からの送信を複数回繰り返しながら、グループごとに順次に受信信号を得て信号処理を行う。そのため、同じ振動子からの送信を複数回繰り返す必要があり、送信回数がさらに増加する。そのため、多数回の送信のたびに残響波が生じ、送信する振動子と受信する振動子のグループの位置の組み合わせも多数の組み合わせがあり、残響波は複雑に生じる。
【0008】
従来、前回以前に送信された超音波の残響波の受信信号が、今回送信された超音波の受信信号に重なるのを避けるため、前回の残響波が十分に減衰するのを待って、次の送信を行っている。そのため、例えば送信間隔は800μs程度必要であり、多数回の送信と受信を繰り返す超音波CTの撮像時間を短縮することは難しかった。
【0009】
本発明の目的は、超音波の残響波の受信信号が、本来の受信信号に与える影響を抑えつつ、超音波の送信間隔を短縮することができる超音波CT装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の超音波CT装置は、計測対象が配置される領域を囲むように複数の振動子が配列された振動子アレイと、振動子に送信信号を出力し、超音波を送信させる送信器と、超音波の送信を受けた領域からの超音波を、振動子アレイの予め定めた数の振動子が受信して出力する受信信号を受け取って処理する受信器と、超音波を送信させる振動子と、受信信号を受け取る振動子との組み合わせを、予め定められた一連の組み合わせに従って順次送信器と受信器に設定する超音波の送信と受信の繰り返しを制御する制御部とを備える。制御部は、送信と受信の繰り返しの際、前回以前の送信において送信された超音波であって、振動子アレイにより1回以上反射された残響波が、今回の受信に用いる振動子に到達するタイミングと、今回の送信において送信される超音波が、今回の受信に用いる振動子に到達するタイミングとがずれるように、今回の送信のタイミングを制御する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、受信する振動子に前回以前の残響波が到達するタイミングを避けて、超音波が到達するように、送信タイミングを送信ごとに設定するため、残響波が十分に減衰するまで待つことなく送信を行うことができ、撮像時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第一実施形態の超音波CT装置の全体構成を示すブロック図
図2】第一実施形態の超音波CT装置の機能ブロック図
図3】(a)~(e)第一実施形態の超音波CT装置のリング状の振動子アレイ内の超音波201と残響波202の波面のシミュレーション結果を示す説明図
図4】第一実施形態の超音波CT装置の振動子アレイの第1から第7受信モジュールに超音波201と残響波202が到達するタイミングを示すグラフ
図5】第一実施形態の超音波CT装置の透過波(超音波201)と残響波202(反射回数1回~4回)の信号強度を示すグラフ
図6】第一実施形態の超音波CT装置の第1から第7受信モジュールの残響波の到達タイミングを避けた受信タイミングと、そのための送信タイミングを示すグラフ
図7】第一実施形態の超音波CT装置の第1から第7受信モジュールにより順次受信をしていく一連の送受信の送信タイミングと受信タイミングとを示す説明図
図8】第一実施形態の超音波CT装置の動作を示すフローチャート
図9】第二実施形態の超音波CT装置のUI画面を示す図
図10】第三実施形態の超音波CT装置の動作を示すフローチャート
図11】第四実施形態の超音波CT装置の動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態の超音波CT装置について説明する。
【0014】
<<第一実施形態>>
本発明では、リング状の振動子アレイの振動子の配置が既知であることと、リング状振動子アレイの表面は滑らかであるため、残響波は、ほぼ鏡面反射していくことに着目し、残響波の伝搬経路を推定する。これにより、前回以前に送信した超音波の残響波が各振動子に到達するタイミングを推定し、今回送信する超音波が、今回受信する振動子へ到達するタイミング(受信期間)と重ならないように、今回送信する超音波の送信タイミングを設定する。これにより、前回以前の残響波が十分に減衰するまで待つことなく超音波を送信することができる。ここでいう残響波とは、今回(N回目)の送信よりも前の送信(N-1回目以前の送信)によって送信された超音波が、振動子アレイによって1回以上反射された音波をいう。
【0015】
具体的には、本実施形態の超音波CT装置は、予め定められた一連の送信と受信の繰り返しを行って撮像を行う際、前回以前の送信において送信され、振動子アレイにより1回以上反射された残響波が、今回の受信に用いる振動子に到達するタイミングと、今回の送信において送信される超音波が、今回の受信に用いる振動子に到達するタイミングとがずれるように、今回の送信のタイミングを制御する。
【0016】
以下、本実施形態の超音波CT装置について説明する。本実施形態の超音波CT装置は、乳房用の超音波CT装置であり、図1および図2に示すように、被検体100をうつ伏せに搭載するベッド101と、ベッド101に設けられた開口の下部に配置された計測部102とを備えて構成される。
【0017】
計測部102は、水の充填された容器103と、振動子1がリング状に配列された振動子アレイ2と、複数の送受信器3と、振動子選択器4と、信号処理部5と、記憶部8と、振動子アレイ2を上下動させる機構部6と、機構部6の駆動部7とを備える。なお、図2には送受信器3は、1個のみ図示しているが、複数(例えば、256チャンネル)備えられている。振動子アレイ2の振動子1の数は、送受信器3よりも多く、例えば2048チャンネルである。
【0018】
容器103は、開口がベッド101の開口に一致するように、ベッド101の下に配置されている。これにより、ベッド101の開口を介して容器103内に被検体100の乳房100aが挿入される。振動子アレイ2は、容器103の内側または外側に配置されている。
【0019】
送受信器3はそれぞれ、送信器31と、受信器32と、送受分離器33とを含む。信号処理部5内には、制御部51と演算部52とが配置されている。信号処理部5には、撮像条件等をユーザから受け付けるための入出力部9と、記憶部8と、生成したCT画像等を表示する表示装置10が接続されている。
【0020】
振動子選択器4は、送信時には、今回の送信で超音波を送信させる1以上の振動子1aを、送信器31に選択的に接続する。また、振動子選択器4は、受信時には、今回受信器32が受信信号を受け取るべき1以上の振動子1を受信器に選択的に接続する。
【0021】
記憶部8には、1枚の超音波CT画像を得るために必要な複数回の送信および受信ごとに、超音波を送信させる振動子1aの位置と、受信信号を受け取る複数の振動子1の位置の組み合わせと、送信間隔が予め格納されている。
【0022】
制御部51は、送信および受信のたびに、記憶部8から読み出した送信に用いる振動子1と、受信信号を受け取る振動子1との組み合わせを読み出して、振動子選択器4に指示する。
【0023】
送信器31は、制御部51から送信すべき電気信号を受けとり、これを増幅して送信信号を生成して、振動子選択器4を介して、送信に用いる振動子1に出力する。送信信号を受け取った振動子1は、送信信号を超音波201に変換して、乳房100aが配置される空間に向かって送信する(図3(a))。
【0024】
送信された超音波201は、一部が乳房100aにより散乱および反射され、他の一部が乳房100aを透過し(図3(b))、振動子アレイ2の複数の振動子1に到達し(図3(c))、振動子1によって受信され、受信信号(電気信号)に変換される。また、振動子アレイ2に到達した超音波201の一部は、振動子アレイ2の滑らかな表面で鏡面反射され(図3(c))、残響波(反射波)202となって再び振動子アレイ2に到達する(図3(e))。残響波202が到達した振動子1は、残響波を受信信号に変換する。このため、超音波201と残響波202の受信信号がそれぞれの到達タイミングで、到達した振動子1から出力される。
【0025】
受信器32は、振動子選択器4により、選択された振動子1が受信した受信信号を受けとって増幅等し、演算部52に出力する。このとき、送受分離器33は、送信器31から出力された送信信号が電気信号のまま反射等されて受信器32に入力するのを防ぐ。
【0026】
演算部52は、受信器32が出力する受信信号を演算処理することにより、超音波CT画像を生成し、表示装置10に表示させる。
【0027】
入出力部9は、撮像条件等をユーザから受け付ける。
【0028】
本実施形態では、送受信器3の数(例えば256ch)は、振動子1の数(例えば2048ch)よりも少ないため、振動子選択器4が送信器31に接続する振動子1aの数は、256個の以下の予め定めた数(ここでは1ch)とする。
【0029】
また、振動子選択器4が、受信のたびに受信器32に接続する振動子1の数は、256ch以下の予め定めた数(ここでは256ch)である。本実施形態では、図2に示すように、振動子アレイ2のリング状に配列された振動子1(例えば2048ch)に、隣り合う256chごとの7つのグループ(以下、第1~第7受信モジュールと呼ぶ)を設定する。第1~第7受信モジュールが設けられていない複数の振動子1の中心に、送信に用いる振動子1aが位置するようにする。一つの送信振動子1aから7回送信を繰り返し、受信のたびに、第1受信モジュールから第7受信モジュールの振動子1を順に選択器4が選択して受信器32に接続する。これにより、一つの送信振動子1aからの超音波を受信した受信信号を、受信器32は、7回に分けて、第1受信モジュールから第7受信モジュールの順に受け取って処理する。これにより、一つの送信振動子1aの位置からの送受信(1ビューとも呼ぶ)が完了する。この送受信の動作を、送信振動子1aの位置を所定の角度ずつに順次変えながら、リング状の振動子アレイ2の全周にわたって繰り返し、超音波CTの再構成に必要な数の受信信号を取得する。
【0030】
これら一連の送信と受信の繰り返しの際の送信に用いる振動子1aと受信に用いる受信モジュールの組み合わせと、その送信および受信のタイミングは、予め定められ、記憶部8に格納されている。
【0031】
ここで、振動子1aと受信モジュールの組み合わせと、その送信および受信のタイミングを決定する方法について図4図7を用いて説明する。
【0032】
図4は、振動子1aから送信され、振動子アレイ2で囲まれた計測空間を透過した超音波201の波面が第1~第7受信モジュールの各振動子1に到達するタイミング(図3(a)~(c)参照)と、振動子アレイ2の鏡面で反射された残響波202の波面が、第1~第7受信モジュールの振動子1に到達するタイミングを示すグラフである。このグラフは、発明者らが、振動子アレイ2において超音波が、鏡面反射されて残響波が生じるとして演算により求めたものである。なお、振動子アレイの内側の計測空間は、水で満たされていると仮定している。
【0033】
図4において、送信タイミングは、0μsである。横軸は、第1から第7受信モジュールを示し、縦軸は、超音波201と残響波202がそれぞれの受信モジュールに到達するタイミングを、送信時刻からの経過時間によって表示している。残響波202は、振動子アレイ2によって1回から4回反射された残響波のそれぞれの受信タイミングを示している。超音波201の到達時間が二重の線で示されているのは、振動子アレイの内側の計測空間に乳房100aを配置した場合、乳房100aの組織(脂肪や乳腺等)の音速が水の音速とは異なることを考慮し、組織の最大音速と最小音速による到達時間の幅を表しているためである。すなわち、この二重の線の間の時間に、受信器32が受信信号を受信すれば、乳房100aの組織からの受信信号を取得することができることを表している。残響波202の到達時間も同様に最大音速と最小音速による到達時間の幅を持つが、図が複雑になるため幅の表示を省略し、水の音速における到達タイミングを線で示している。
【0034】
図4から明らかなように、超音波201が送信された後、超音波201の透過波がまず受信モジュールに到達し、その後、残響波202が到達する。超音波201の到達タイミングと、残響波202の到達タイミングは、送信振動子1aと、受信モジュールとの距離によってそれぞれ異なる。
【0035】
そのため従来、1回目の送信を行ったあと、超音波201を第1受信モジュールにより受信し、さらに残響波202の第1から第7受信モジュールに到達して後に、2回目の送信を行うことにより、1回目の送信による残響波202が、2回目の送信の超音波201と重なって第2受信モジュール到達するのを防いでいた。したがって、送信間隔は、800μs以上に設定する必要があった。
【0036】
発明者らは、残響波202の反射回数と受信信号の強度との関係を演算により求めた。その結果を図5のグラフに示す。図5から明らかなように、残響波202の平均受信強度は、透過波(超音波201)と比較して、反射回数が増すたびに大きく減衰する。2回反射以降の残響波202は、最大受信強度であっても、透過波(超音波201)と比較して-40dBであるので、本実施形態では無視することにする。
【0037】
よって、本実施形態では、図6に示すように、前回の送信によって生じた1回反射の残響波202の到達タイミングを避けて、今回の送信の超音波が今回の受信モジュールに到達するように、今回送信する超音波の送信タイミングを決定する。
【0038】
例えば、図6のように、第2受信モジュールによる2回目に送信された超音波201の受信は、1回目に送信された超音波201の残響波202が第2受信モジュールに到達する直前に行う。そのために、残響波202が第2受信モジュールに到達する直前に、第2受信モジュールに2回目の送信の超音波201が到達するように、送受信条件に基づいて、2回目の送信のタイミングを決定する。
【0039】
なお、ここでいう送受信条件とは、2回目の送信に用いる振動子1aの位置と2回目の受信に用いる第2受信モジュールの位置に基づく、送信振動子1aと第2受信モジュールの距離、超音波201の音速、を考慮して2回目の送信のタイミングを決定する。また、超音波201の音速は、乳房100aの構成要素について予め定められた最大音速と最小音速を考慮することが望ましい。送受信条件として、送信する超音波の波面形状、波形、および、信号長等を考慮することがさらに望ましい。
【0040】
また、第3受信モジュールによる3回目に送信された超音波201の受信は、2回目に送信された超音波201の残響波202が第3受信モジュールに到達した直後に行う。そのために、2回目の送信の残響波202が第3受信モジュールに到達した直後に、第3受信モジュールに3回目の送信の超音波201が到達するように、送信振動子1aと第3受信モジュールの距離と超音波201の音速を考慮して3回目の送信のタイミングを決定する。
【0041】
同様に、第4、第5および第6受信モジュールによる4、5および6回目に送信された超音波201の受信は、それぞれ3、4および5回目に送信された超音波201の残響波202が第4、第5および第6受信モジュールに到達した直後に行う。そのために、3、4および5回目の残響波202が第4、第5および第6受信モジュールに到達した直後に、第4、第5および第6受信モジュールに、4、5および6回目の送信の超音波201が到達するように、送信振動子1aと第4、第5および第6受信モジュールの距離と超音波201の音速を考慮して4、5および6回目の送信のタイミングを決定する。
【0042】
第7受信モジュールによる7回目に送信された超音波201の受信は、6回目に送信された超音波201の残響波202が第7受信モジュールに到達する直前に行う。そのために、残響波202が第7受信モジュールに到達する直前に、第7受信モジュールに7回目の送信の超音波201が到達するように、送信振動子1aと第7受信モジュールの距離と超音波201の音速を考慮して7回目の送信のタイミングを決定する。
【0043】
図6のように決定した7回の送信タイミングと受信タイミングをまとめて、時系列にひと続きに表したものを図7に示す。図7から明らかなように、本実施形態では、前回の残響波202が今回の受信モジュールに到達するタイミングを避けて、残響波202の到達の直前または直後に、今回の超音波を受信するように決定されている。よって、送信間隔は送信の都度異なっている。なお、図7において受信モジュールをRMと略して記している。
【0044】
また、従来のように、一連の残響波202の到達終了後に、次の送信を行うのではなく、前回の残響波202の到達の前に、次の送信と受信を行ったり(2回目の送信、7回目の送信)、前回の残響波202の到達の前に次の送信を行っておき、残響波202の到達直後に、超音波201の受信を行う(3~6回目の送信)。
【0045】
よって、本実施形態の送信間隔は、従来の800μs程度よりも大幅に短い110~220μs程度に設定されている。よって、7回の送信を図6のように1ms以内に行うことができ、撮像時間の大幅な短縮が可能である。
【0046】
つぎに、本実施形態の乳房用超音波CT装置を用いて、乳房100aを撮影する際の各部の動作について、図8のフローチャートを用いて説明する。ここでは、一例として、乳房100aの透過波画像を撮像する。
【0047】
図7のように決定した、一連の送信と受信の繰り返しの際の送信に用いる振動子1aと受信に用いる受信モジュールの組み合わせと、その送信および受信のタイミングは、テーブル等の形式で、記憶部8に格納されている。
【0048】
なお、図7では、一つの位置の送信振動子1aから第1~第7受信モジュールへ7回送信を繰り返して各受信モジュールで受信するタイミングのみ示しているが、一つの断面のCT画像を生成するためには、送信振動子1aおよび第1~第7受信モジュールを所定の角度ずつずらしながら(ビュー角度を変更しながら)、全周方向から超音波を送信して受信する必要がある。記憶部8には、には、そのすべてのビューにおいて送信および受信を繰り返す際の振動子1aと受信に用いる受信モジュールの組み合わせと、その送信および受信のタイミングが一連の組み合わせとして格納されている。
【0049】
なお、信号処理部5は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサーと、メモリとを備えたコンピュータ等によって構成され、CPUが、メモリに格納されたプログラムを読み込んで実行することにより、信号処理部5の各部の機能をソフトウエアにより実現することも可能であるし、その一部または全部をハードウエアによって実現することも可能である。例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)のようなカスタムICや、FPGA(Field-Programmable Gate Array)のようなプログラマブルICを用いて信号処理部5を構成し、信号処理部5の各部の機能を実現するように回路設計を行えばよい。
【0050】
被検体100は、ベッド101上にうつぶせに横たわり、乳房100aを容器103内に挿入する。
【0051】
<ステップ401>
ユーザから撮像開始の指示を入出力部9に入力したならば、制御部5は、記憶部8から、送信振動子1aと受信に用いる受信モジュールの一連の組み合わせと、それらの送信タイミングおよび受信タイミング(受信期間)を読み出す(ステップ401)。
【0052】
<ステップ402>
制御部5は、一連の組み合わせの中の最初の送信振動子1aと受信に用いる受信モジュールの組み合わせを振動子選択器4に設定する。これにより、振動子選択器4は、振動子1aを送信器31に接続し、設定された受信モジュールを受信器32に接続する(ステップ402)。
【0053】
<ステップ403>
【0054】
つぎに、制御部51は、記憶部8から読み出した送信タイミングを待って、送信タイミングになったならば、電気信号を送信器31に出力する。これにより、送信器31は、送信信号を振動子選択器4を介して振動子1aに出力し、振動子1aは超音波201を送信する。
【0055】
超音波201は、乳房100aを透過して第1受信モジュールに到達し、第1受信モジュールの振動子1により受信信号に変換される。振動子選択器4は、制御部51の制御下で、ステップ401で読みだした受信タイミング(受信期間)における第1受信モジュールの振動子1の受信信号を、受信器32に受け渡す(ステップ403)。
【0056】
これにより、受信器32は、第1受信モジュールの振動子1が出力する受信信号を受信し、増幅して、演算部52に出力する。演算部52は、記憶部8に格納する。
【0057】
<ステップ404>
次に、制御部51は、ステップ402で設定した組み合わせが、記憶部8から読み出した送信振動子1aと受信に用いる受信モジュールの組み合わせの最後かどうかを判定する(ステップ404)。第1送信の場合、最後ではないため、ステップ402に戻り、第2送信の送信振動子1aと受信に用いる第2受信モジュールの組み合わせを、振動子選択器4に設定し、ステップ403を行う。
【0058】
これにより、図6および図7に示すように、1回目の送信の残響波202が第2受信モジュールに到達する前に、振動子1aからの2回目の送信と、第2受信モジュールによる受信とを行う。
【0059】
再び、ステップ402に戻り、送信振動子1aと受信に用いる第3受信モジュールの組み合わせと、その送信タイミングおよび受信タイミング(受信期間)を振動子選択器4に設定し、ステップ403を行う。
これにより、図6および図7に示すように、2回目の送信の残響波202が第3受信モジュールに到達する前に、振動子1aからの3回目の送信を行い、残響波202が第3受信モジュールに到達した直後に、第3受信モジュールにより3回目の送信の超音波を受信する。
【0060】
同様に、ステップ402~403を繰り返し、記憶部8に格納されている一連の組み合わせすべてについて、送信と受信を行って、第1から第7受信モジュールでの受信が終了したならば、ステップ405に進む。
【0061】
<ステップ405>
演算部52は、各ビューにおいて得られた受信信号を処理することにより、乳房100aの断面像(透過波画像)を公知の手法により生成する(ステップ405)。
【0062】
また、上記ステップ401~404を振動子アレイ2の位置を深さ方向に所定のピッチで変更しながら繰り返すことにより、予め定めたすべての深さにおいて、乳房100aの断層像を生成することができ、乳房100aの三次元データを取得することができる。
【0063】
上述してきたように、本実施形態によれば、受信する振動子に前回以前の残響波が到達するタイミングを避けて、超音波が到達するように、送信タイミングを送信ごとに設定するため、残響波が十分に減衰するまで待つことなく送信を行うことができ、撮像時間を短縮することができる。これにより検査のスループットを上げることができる。
【0064】
<<第二実施形態>>
第二実施形態の乳房用超音波CT装置について図9を用いて説明する。
【0065】
第一実施形態では、図6および図7のように、残響波202が受信モジュールに到達するタイミングを避けて、超音波201が受信モジュールに到達するように予め送信のタイミングおよび受信のタイミングを演算に基づいて設定し、記憶部8に格納する構成であったが、超音波201や残響波202が受信モジュールに到達するタイミングは、乳腺密度、乳房100aのサイズ、被検体100の体型、インプラントの有無によって異なる。
【0066】
そこで、第二実施形態では、予め被検体100の複数の種類の乳腺密度、乳房100aのサイズ、および、被検体100の体型ごとに、また、これらの組み合わせごとに、一連の振動子と受信モジュール、および、その送信のタイミングと受信タイミングを演算に基づいて設定し、記憶部8に格納しておく。
【0067】
制御部51は、図4のステップ401の前に、例えば、図9のような入力画面(GUI)を表示装置10に表示し、入出力部9を介して、乳腺密度(脂肪性、乳腺散在、不均一高濃度、極めて高濃度)のいずれかの選択または数値入力、乳房100aのサイズ、被検体100の体型、インプラントの有無等の入力を受け付ける構成とする。
【0068】
そして、制御部51は、図4のステップ401において、送信振動子と受信モジュール
の組み合わせと送受信タイミングを読み出す際に、入力された乳腺密度等に対応するものを読み出す。
【0069】
これにより、被検体100によって、乳腺密度、乳房100aのサイズ、被検体100の体型が異なる場合であっても、最適な送信振動子と受信モジュールの組み合わせとその送受信タイミングを設定することができる。よって、撮像時間の短縮を図ることができ、残響波202が受信器32により受信されるのを防止できるため、精度よく再構成画像を生成することができる。
【0070】
なお、乳腺密度、乳房100aのサイズ、被検体100の体型の設定入力は、被検体またはオペレータが図9の画面上で手入力する方法に限られるものではなく、カルテからの自動入力や、他の検査装置から自動入力する構成にすることも可能である。例えば、マンモグラフィ装置から、乳腺密度を自動的に受け取る構成にすることができる。
【0071】
第二実施形態の超音波CT装置の上述した以外の構成および動作は、第一の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0072】
<<第三実施形態>>
第三実施形態の乳房用超音波CT装置について図10を用いて説明する。
【0073】
図10のように本実施形態の超音波CT装置の撮像動作は、第一実施形態の図8のフローと同様であるが、図10のフローにはステップ501、502、503が追加されている。
【0074】
第三実施形態では、ステップ501、502、503において、制御部51は、所定の受信期間の受信信号をリアルタイムに解析することにより、残響波201の受信信号が所定の受信期間に含まれるかを判定し、残響波201の受信信号が含まれる場合には、送信および受信の少なくとも一方のタイミングを変更して、今回の送信および受信をやり直す。または、まだ超音波201が到達しておらず、これから到達する場合には受信のみをやり直す。これにより、予め記憶部8に格納しておいた送信および受信モジュールの受信タイミングを決定する際に用いた残響波202の到達時間が、実際の残響波202の到達時間に対してずれていた場合であっても、残響波202の受信信号が含まれない受信信号を取得する。以下、具体的に説明する。
【0075】
<ステップ401~403>
第一実施形態と同様に、ステップ401~403を行うことにより、送信振動子1aから第1受信モジュールの受信タイミング(受信期間)の受信信号を受信器32は受け取る。
【0076】
<ステップ501、502>
制御部51は、受信器32が取得した受信信号を解析し(ステップ501)、受信信号に残響波202のピークが含まれるかどうかを判定する(ステップ502)。例えば、時系列な受信信号に、所定値以上大きなピークが2つ含まれる場合や、隣接する振動子1の受信信号のピークの時間関係(例えば、連続した時間関係)が超音波201で想定される関係のみではなく、残響波202で想定される関係を含む場合には、超音波(透過波)201と残響202の両方が受信されているか、または、残響波202のみが受信されているかと判定できるので、ステップ503に進む。
【0077】
<ステップ503>
ステップ503において、制御部51は、送信および受信のタイミングを変更して、今回の送受信をやり直すか、または、受信のみをやり直す。
【0078】
例えば、上記ステップ502において、制御部51が超音波(透過波)201と残響波202の両方が受信されていると判定した場合、受信信号に含まれていると判定した残響波202を回避できるように、残響波202と受信期間の時間関係から、送信および受信のタイミングを演算し直し、送信タイミングと受信タイミングを変更する。あるいは、第二実施形態のように、複数の一連の振動子と受信モジュール、および、その送信タイミングと受信タイミングの組み合わせを記憶部8に格納しておき、その中から選択して送信タイミングと受信タイミングを設定しなおす。変更後の送信タイミングと受信タイミングにより今回の送受信をやり直す。
【0079】
また、例えば、上記ステップ502において、制御部51が残響波202のみが受信され、超音波(透過波)201がまだ受信されていないと判定した場合、受信期間を延長し、これから到達する超音波201を受信する。すなわち、ステップ501とステップ502は、ステップ403と同時に受信信号をリアルタイムに解析、判定することも可能であるため、受信信号に残響波202が含まれると判定したとしても、本来受信すべき超音波201が受信モジュールに到達してない場合もある。その場合は、制御部51は、ステップ503において、予め定めた受信期間まで延長することにより受信を継続し、ステップ403において残響波202が含まれない超音波201の受信信号をステップ405の演算に用いればよい。受信を継続した結果、残響波202と超音波201が混在すると判定した場合には、ステップ503に進み、今回の送受信をやり直す。
【0080】
なお、ステップ502において、残響波202を受信したチャンネル数が、所定の閾値よりも少ない場合や、受信された残響波202のピーク強度が、受信された超音波201のピーク強度と比較して十分に小さい場合には、制御部51は、超音波201の残響波202に対する「分離度合」が所定値よりも高いと判定できる。その場合、制御部51は、ステップ503に進んで送受信をやり直さずに、ステップ404に進んでもよい。
【0081】
具体的には、受信モジュールが256チャンネルだとして、残響波202が含まれる受信信号を受信したチャンネル数が十分に少ない場合(例えば、10チャンネル未満である場合等)は、ステップ405において全てのビュー・チャンネルで得られた受信信号を処理して断層像を生成するため、残響波202の断層像への影響は軽微になる。よって、今回の送受信をやり直すかどうかのチャンネル数の閾値を予め定めておき、制御部51は、残響波202を受信したチャンネル数が閾値未満であれば、「分離度合」が高いと判定と判定して、そのままステップ404に進む。また、分離度合の判定基準に、残響波202と判定した受信信号のピークの強度と超音波201と判定した受信信号のピークの強度の比の閾値を含めてもよい。残響波202の強度が超音波201の強度に対する比が、閾値未満である場合は、制御部51は、分離度合が高い判定して、そのままステップ404に進む。なお、チャンネル数による分離度合の判定と、残響波のピーク強度による分離度合の判定を組み合わせて、送受信のやり直しをするかどうかを判断してもよい。
【0082】
なお、上述したステップ503では、制御部51がやり直しの送信および受信のタイミングを設定する構成について説明したが、制御部51は、送信および受信の少なくとも一方のタイミングを変更するようにユーザに促す表示を、接続されている表示装置に表示し、ユーザが所望する変更後のタイミングを受け付け、そのタイミングで送受信を行ってもよい。
【0083】
本実施形態では、ステップ501、502において、制御部51は、受信信号を解析して残響波202が受信期間に受信した受信信号に含まれるかどうかを判定しているが、演算部52が生成したプレビュー画像(図9参照)を用いて、十分な画質が得られているかどうかを制御部51が判定してもよい。十分な画質が得られていない場合には、画像に残響波202の影響があると判断し、制御部51は、送信および受信のタイミングを変更して、当該断面の送受信の繰り返しをやり直す。
【0084】
また、制御部51は、十分な画質が得られておらず画像に残響波202の影響があると判断した場合、送信および受信のタイミングを変更して当該断面を撮像しなおすようにユーザに促す表示を接続されている表示装置に表示させ、ユーザが所望する変更後の送受信タイミングを受け付け、そのタイミングで送受信を行ってもよい。あるいは、制御部51は判断せず、ユーザに判断をゆだね、ユーザが指定する断面をユーザが所望する送受信タイミングで撮像しなおすことを受け付けてもよい。
【0085】
第三実施形態の超音波CT装置の上述した以外の構成および動作は、第一の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0086】
第三実施形態の超音波CT装置では、残響波の受信信号が、透過波の受信信号に混入するのを防止でき、短時間に解像度の高い超音波CT画像を取得することができる。
【0087】
<<第四実施形態>>
第四実施形態の乳房用超音波CT装置について図11を用いて説明する。
【0088】
本実施形態の超音波CT装置は第一実施形態の装置と同様の構成であるが、図11のフローに示すように、制御部は、所定のプレ送受信を実行し、残響波202が受信に用いる振動子に到達するタイミングを求め(ステップ511~515)、求めた残響波の到達タイミングに基づいて、今回のみまたは一連の送信および受信のタイミングを決定し(ステップ516)、決定した送信および受信タイミングを用いて本送受信を実行する(ステップ517~520)。
【0089】
制御部51の制御動作の一例を図11を用いて説明する。
【0090】
<ステップ511~515>
本実施形態では、プレ送受信のステップ511~515として制御部51は、被検体を配置した状態で、第二実施形態のステップ401~403、501~502と同様に、一連の送受信および受信信号の解析を行って、各送受信について残響波202の到達タイミングを検出する。
【0091】
なお、ステップ513では、制御部51は、第二実施形態で示した受信タイミングの受信期間を広げてプレ送受信を行ってもよい。これにより、想定よりもずれて残響波が到達した場合であっても、残響波202を受信期間内に確実に受信することができ、残響波202の到達タイミングを検出できる。
【0092】
また、プレ送受信のステップ514において、制御部51は、残響波202だけではなく超音波201の到達タイミングも同様の方法で検出してもよい。
【0093】
また、ステップ514においては、制御部51は、残響波202の強度を解析し、強度が予め定めた閾値よりも小さい場合には、画像にほとんど影響を与えないと判断して、残響波202の到達を無視してもよい。
【0094】
<ステップ516>
ステップ516において、制御部51は、ステップ514で検出した各送受信について求めた残響波202の到達タイミングに基づいて、残響波202の到達タイミングを避けるように受信タイミングを設定し、その受信タイミングに超音波201が到達するように、送信振動子1aと受信モジュールの位置等を考慮して送信タイミングを決定する。
【0095】
なお、ステップ514において、制御部51は、残響波202と超音波201の両方の到達タイミングを検出している場合には、残響波202の到達タイミングを避け、超音波201の到達タイミングを受信タイミングが含むように、受信タイミングを設定することができる。
【0096】
なお、第二実施形態のように、予め複数の送信タイミングと受信タイミングのパラメータセットを用意しておき、制御部51がプレ送受信の結果から最適なセットを選択して設定する構成としてもよい。
【0097】
<ステップ517~520>
本送受信のステップ517~520では、ステップ516で設定した送信および受信のタイミングを用いて、第一実施形態の図8のステップ402~405と同様に送受信を行って、断層像を生成する。
【0098】
上記ステップ511~512では、プレ送受信および本送受信がいずれも、第一の実施形態と同様に、予め定められた一連の振動子と受信モジュールの組み合わせに従って行う構成とした場合について説明したが、この構成に限られず、プレ送受信は、本送受信とは異なる送受信動作を行ってもよい。例えば、一つの振動子1aの位置から超音波201を送信し、各受信モジュールに到達した超音波201と、残響波202の到達タイミングを計測することにより、図4のようなグラフを得て、このグラフに基づいて、ステップ516において、少なくとも1回反射の残響波を避けるように、各送信の送信タイミングと受信タイミングを決定してもよい。
【0099】
第四実施形態の超音波CT装置の上述した以外の構成および動作は、第一および第三の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0100】
第四実施形態の超音波CT装置では、プレ送受信によって実際に残響波を計測して、各送信の送信タイミングと受信タイミングを決定することができるため、本送受信において残響波の受信信号が、透過波の受信信号に混入するのを防止でき、短時間に解像度の高い超音波CT画像を取得することができる。
【0101】
また、プレ送受信によって超音波201の到達タイミングを計測して送受信タイミングを設定することもできるため、残響波202を避け、超音波201の受信精度を向上させることができ、より解像度の高い超音波CT画像を取得できる。
【0102】
<変形例>
上述してきた第一~第四実施形態では、透過波を受信して透過波画像を撮像する際に残響波を避けたタイミングで透過波を受信する構成であったが、反射波画像を撮像する際にも同様に、残響波を避けて反射波を受信する構成とすることが可能である。
【符号の説明】
【0103】
1…振動子、1a…送信振動子、2…振動子アレイ、3…送受信器、4…振動子選択器、5…信号処理器、6…機構部、7…駆動部、8…記憶部、9…入出力部、10…表示装置、51…制御部、52…演算部、31…送信器、32…受信器、33…送受分離器、100…被検体、100a…乳房、102…計測部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11