(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155189
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】ステータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/02 20060101AFI20221005BHJP
H02K 3/04 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
H02K15/02 A
H02K3/04 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058575
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】五百川 達
【テーマコード(参考)】
5H603
5H615
【Fターム(参考)】
5H603AA03
5H603AA09
5H603BB01
5H603BB02
5H603BB12
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB04
5H603CB11
5H603CB19
5H603CC03
5H603CC17
5H603CD22
5H603CE02
5H603EE01
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB02
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP15
5H615QQ03
5H615QQ12
5H615SS09
5H615SS10
5H615SS16
(57)【要約】
【課題】クランプの摩耗を抑制できるステータの製造方法を提供すること。
【解決手段】端部21を有する複数のコイル2を、端部21が互いに隣り合うようにステータコア1に配置し、次いで、互いに隣り合う端部21を、クロム、モリブデン、タングステン、ニッケル、パラジウムおよび白金からなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む接触部31を有するクランプ3によって挟んで溶接する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部を有する複数のコイルを、前記端部が互いに隣り合うようにステータコアに配置する工程と、
互いに隣り合う前記端部をクランプによって挟む工程と、
前記クランプに挟まれた前記端部を溶接する工程と、を含み、
前記クランプは、前記端部と接触し、クロム、モリブデン、タングステン、ニッケル、パラジウムおよび白金からなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む接触部を少なくとも含む、ステータの製造方法。
【請求項2】
前記クランプは、
前記接触部と、
前記接触部を支持し、ベリリウム銅を含む支持部と、を備える、請求項1に記載のステータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステータと、ステータに対して回転するローターとを備えるモータが知られている。ステータは、ステータコアと、ステータコアに支持される複数のコイルとを備える。複数のコイルのそれぞれは、端部を有する。コイルの端部は、互いに隣り合って配置されて接合されている。
【0003】
そのようなステータの製造方法として、例えば、複数のコイルをステータコアに配置した後、互いに隣り合うコイルの端部を治具によりクランプし、クランプされたコイルの端部同士をTIG溶接することが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
コイルの端部をクランプする治具は、ベリリウム銅から構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のステータの製造方法では、治具がベリリウム銅から構成されるので、治具が互いに隣り合うコイルの端部をクランプするときに、コイルと治具との摩擦によって治具が摩耗する場合がある。また、TIG溶接時の熱の影響で、治具の摩耗が進行するおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、クランプの摩耗を抑制できるステータの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明[1]は、端部を有する複数のコイルを、前記端部が互いに隣り合うようにステータコアに配置する工程と、互いに隣り合う前記端部をクランプによって挟む工程と、前記クランプに挟まれた前記端部を溶接する工程と、を含み、前記クランプは、前記端部と接触し、クロム、モリブデン、タングステン、ニッケル、パラジウムおよび白金からなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む接触部を少なくとも含む、ステータの製造方法を含む。
【0009】
本発明[2]は、前記クランプは、前記接触部と、前記接触部を支持し、ベリリウム銅を含む支持部と、を備える、上記[1]に記載のステータの製造方法を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明のステータの製造方法によれば、クランプが、コイルの端部と接触し、クロム、モリブデン、タングステン、ニッケル、パラジウムおよび白金からなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む接触部を少なくとも有する。そのため、クランプが互いに隣り合うコイルの端部をクランプするとき、および、コイルの端部を溶接するときに、クランプが摩耗すること抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明のステータの製造方法の一実施形態に用いられるステータコアおよび複数のコイルの平面図を示す。
【
図2】
図2は、
図1に示すコイルの端部を2つのクランプが挟み込んだ状態を説明するための説明図を示す。
【
図4】
図4は、
図2に示すコイルおよびクランプのA-A断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1~
図4を用いて、本発明のステータの製造方法の一実施形態を説明する。ステータは、インナーロータ型のモータの一部を構成する。ステータは、ローター10を収容可能である(
図1参照)。
【0013】
ステータの製造方法は、複数のコイル2をステータコア1に配置する工程(
図1参照)と、互いに隣り合うコイル2の端部21をクランプ3によって挟む工程(
図2参照)と、コイル2の端部21を溶接する工程(
図4参照)とを含む。
【0014】
図1に示すように、ステータコア1は、円筒形状を有する。ステータコア1は、複数のコイル2を支持可能である。
【0015】
コイル2は、例えば、平角銅線から形成される。平角銅線の断面形状は、矩形状を有する。平角銅線の表面は、例えば、樹脂層によって被覆されて絶縁されている。コイル2は、例えば、平角銅線が複数回巻回される集中巻コイルとして構成される。コイル2は、端部21を有する。
【0016】
このような複数のコイル2を、端部21が互いに隣り合うようにステータコア1に配置する。コイル2がステータコア1に配置された状態で、コイル2の端部21は、ステータコア1の軸線方向に延びる(
図4参照)。コイル2がステータコア1に配置された状態で、コイル2の端部21は、2つずつステータコア1の径方向に隣接する。互いに隣接する端部21のペア22は、ステータコア1の径方向に互いに間隔を空けて、複数(3つ)並ぶ。また、複数(3つ)のペア22が径方向に並ぶ列23は、ステータコア1の周方向に互いに間隔を空けて複数配置される。
【0017】
次いで、
図2および
図3に示すように、互いに隣り合うコイル2の端部21を、2つのクランプ3によって挟む。クランプ3は、接触部31と、支持部32とを備える。
【0018】
接触部31は、四角柱形状を有する。接触部31は、クロム、モリブデン、タングステン、ニッケル、パラジウムおよび白金からなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む。金属として、より具体的には、金属単体および合金が挙げられる。金属単体としては、例えば、クロム、モリブデン、タングステン、ニッケル、パラジウムおよび白金が挙げられる。合金としては、例えば、ニッケルクロム合金(ステンレス)、ニッケル合金(インコネル)、クロムモリブデン合金、および、ニッケルクロムモリブデン合金が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。金属として、好ましくは、タングステンが挙げられる。すなわち、好ましくは、接触部31は、タングステンを含み、より好ましくは、タングステンからなる。接触部31の一方の側面は、複数の凹部311を有する。複数の凹部311は、接触部31の長手方向に間隔を空けて配置される。凹部311は、他方の側面に向かって狭くなるテーパ形状を有する。
【0019】
支持部32は、接触部31と別体である。支持部32は、接触部31を支持する。支持部32は、凹形状を有する。接触部31は、例えば、銀ペーストにより、支持部32にロウ付けされている。支持部32は、ベリリウム銅を含み、好ましくは、ベリリウム銅からなる。支持部32は、第1支持部321と、2つの第2支持部322とを有する。
【0020】
第1支持部321は、四角柱形状を有する。第1支持部321の長手方向の寸法は、接触部31の長手方向の寸法と同じである。第1支持部321は、接触部31の長手方向と直交する方向において、接触部31と並ぶ。第1支持部321は、接触部31の他方の側面に接合されている。
【0021】
第2支持部322は、接触部31の長手方向の両端部に接合されている。2つの第2支持部322のそれぞれは、第1支持部321の長手方向の端部にも接合されている。第2支持部322は、第1支持部321よりも幅広の四角柱形状を有する。
【0022】
そして、2つのクランプ3を準備して、2つのクランプ3の接触部31の凹部311が互いに向かい合うように、コイル2の端部21を挟む。本実施形態では、2つのクランプ3が、1つの列23に含まれる複数(3つ)のペア22を、ペア22の端部21が互いに隣接する方向と直交する方向から一括して挟み込む。
【0023】
2つのクランプ3がコイル2の端部21を挟んだ状態で、凹部311が端部21のペア22を受け入れて、接触部31が、端部21と接触する。このとき、接触部31の長手方向は、ステータコア1の径方向に沿う(
図1参照)。また、
図4に示すように、2つのクランプ3がコイル2の端部21を挟んだ状態で、端部21の少なくとも一部(遊端部)は、クランプ3に対してステータコア1(
図1参照)の反対側に位置する。なお、2つのクランプ3がコイル2の端部21を挟んだ状態で、クランプ3に対してステータコア1の反対側に位置する端部21の部分を、溶接部分211とする。
【0024】
次いで、2つのクランプ3に挟まれたコイル2の端部21(遊端部)を溶接する。例えば、ペア22の端部21の溶接部分211を、TIG溶接する。具体的には、TIG溶接装置のヘッド12を溶接部分211の近傍に配置する。そして、TIG溶接装置からクランプ3に溶接電流を印加する。すると、ヘッド12から溶接部分211にアーク放電が生じて、ペア22の端部21の溶接部分211が溶解して溶接される。
【0025】
以上によって、ステータが製造される。ステータは、ステータコア1と、複数のコイル2と、複数のクランプ3とを備える。
【0026】
<作用効果>
図2に示すように、上記したステータの製造方法では、クランプ3が、コイル2の端部21と接触し、クロム、モリブデン、タングステン、ニッケル、パラジウムおよび白金からなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む接触部31を有する。そのため、クランプ3が互いに隣り合うコイル2の端部21をクランプするとき、および、コイル2の端部21を溶接するときに、クランプ3が摩耗することを抑制できる。
【0027】
また、クランプ3は、接触部31に加えて、支持部32を備える。支持部32は、ベリリウム銅を含む。そのため、互いに隣り合うコイル2の端部21を溶接するときの熱を、支持部32が安定して放熱できる。その結果、溶接による熱が、コイル2が有する樹脂層に影響することを抑制できる。
【符号の説明】
【0028】
1 ステータコア
2 コイル
21 端部
3 クランプ
31 接触部
32 支持部