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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155220
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】起泡性水中油型乳化油脂組成物
(51)【国際特許分類】
   A23D 7/00 20060101AFI20221005BHJP
   A23L 9/20 20160101ALI20221005BHJP
   A23C 13/14 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
A23D7/00 508
A23L9/20
A23C13/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058620
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柿原 晃太郎
(72)【発明者】
【氏名】菊池 志帆
【テーマコード(参考)】
4B001
4B025
4B026
【Fターム(参考)】
4B001AC02
4B001AC05
4B001AC15
4B001AC25
4B001AC40
4B001AC99
4B001BC03
4B001BC07
4B001BC99
4B025LB21
4B025LG14
4B025LG19
4B025LG23
4B025LG32
4B025LG33
4B025LG36
4B025LG53
4B025LK01
4B025LK02
4B025LP04
4B025LP10
4B025LP11
4B025LP12
4B025LP16
4B026DC01
4B026DC03
4B026DC06
4B026DG01
4B026DG03
4B026DH10
4B026DK03
4B026DK10
4B026DL01
4B026DL02
4B026DL03
4B026DL04
4B026DL08
4B026DL09
4B026DP01
4B026DP04
4B026DP10
4B026DX02
4B026DX04
(57)【要約】
【課題】増粘剤及びトランス脂肪酸を実質的に含有せず、常温での保形性、離水耐性、日持ちが良好で、甘過ぎず、口溶けにも優れ乳風味が豊かな、常温流通用ホイップドコンパウンドクリームを作製するための起泡性コンパウンドクリームの提供。
【解決手段】起泡性コンパウンドクリームは、起泡性水中油型乳化油脂組成物を65%以上含む。前記クリームの油脂全体中、乳脂肪が5~35%である。前記クリーム全体中、グリシン0.4~6%、リゾチーム0.005~0.1%、又は、ソルビン酸カリウム0.01~0.25%である。前記組成物全体中、油脂20~45%、水分20~55%、糖類10~40%、乳タンパク質0.05~4%、生クリーム0~25%、乳化剤X0.02~0.45%、乳化剤Y0.03~0.3%である。前記油脂全体中、油脂Aが50~100%である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
起泡性コンパウンドクリーム全体中、起泡性水中油型乳化油脂組成物を65重量%以上含み、
前記起泡性コンパウンドクリームに含まれる油脂全体中、乳脂肪の含量が5~35重量%であり、
前記起泡性コンパウンドクリーム全体中、グリシンの含量が0.4~6重量%、リゾチームの含量が0.005~0.1重量%、及び、ソルビン酸カリウムの含量が0.01~0.25重量%のうち少なくとも1つを満足し、
前記起泡性コンパウンドクリームの水分活性(Aw)が0.92~0.975であり、
前記起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中、油脂の含量が20~45重量%、水分の含量が20~55重量%、増粘剤の含量が0重量%以上0.02重量%未満であり、
前記油脂の構成脂肪酸全体中のトランス脂肪酸の含量が0重量%以上3重量%未満であり、
前記起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中、糖類の含量(固形分換算)が10~40重量%、乳タンパク質の含量(固形分換算)が0.05~4重量%、生クリームの含量が0~25重量%、乳化剤Xの含量が0.02~0.45重量%、乳化剤Yの含量が0.03~0.3重量%であり、
前記油脂全体中、油脂Aの含量が50~100重量%である、
常温流通用ホイップドコンパウンドクリームの作製に使用される起泡性コンパウンドクリーム。
油脂A:構成脂肪酸全体中、C12以下の飽和脂肪酸を40重量%以上含み、トランス脂肪酸の含量が0重量%以上3重量%未満であり、上昇融点が30~42℃の植物性油脂。
乳化剤X:構成脂肪酸全体中、C10~C14の飽和脂肪酸を60重量%以上含み、HLBが12~18、重合度が8~12であるポリグリセリン脂肪酸エステル、及び/又は、構成脂肪酸全体中、C10~C14の飽和脂肪酸を60重量%以上含み、HLBが12~18であるショ糖脂肪酸エステル。
乳化剤Y:構成脂肪酸全体中、C16~C22の飽和脂肪酸を70~100重量%含み、HLBが5~12であるポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はショ糖脂肪酸エステル。
【請求項2】
起泡性コンパウンドクリーム全体中、リン酸塩の含量が0重量%以上0.5重量%未満である、請求項1に記載の起泡性コンパウンドクリーム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の起泡性コンパウンドクリームがホイップされた、常温流通用ホイップドコンパウンドクリーム。
【請求項4】
請求項3に記載の常温流通用ホイップドコンパウンドクリームを含む食品。
【請求項5】
混合物全体中、油脂の含量が20~45重量%、水分の含量が20~55重量%、増粘剤の含量が0重量%以上0.02重量%未満であり、前記油脂の構成脂肪酸全体中のトランス脂肪酸の含量が0重量%以上3重量%未満であり、前記混合物全体中、糖類の含量(固形分換算)が10~40重量%、乳タンパク質の含量(固形分換算)が0.05~4重量%(固形分換算)、生クリームの含量が0~25重量%、乳化剤Xの含量が0.02~0.45重量%、乳化剤Yの含量が0.03~0.3重量%であり、前記油脂全体中、油脂Aの含量が50~100重量%である混合物を調製し、
該混合物に対し、予備乳化、均質化、殺菌、及び予備冷却を実施し、次いで、1段目は6~18MPa及び2段目は2~6Mpaの加圧条件で均質化処理した後、冷却して起泡性水中油型乳化油脂組成物を得、
前記起泡性水中油型乳化油脂組成物65重量%以上と、生クリームと、グリシン、リゾチーム、及びソルビン酸カリウムからなる群より選択される少なくとも1種とを混合して、起泡性コンパウンドクリーム全体中、グリシンの含量が0.4~6重量%、リゾチームの含量が0.005~0.1重量%、及び、ソルビン酸カリウムの含量が0.01~0.25重量%のうち少なくとも1つを満足し、かつ生クリームの含量が起泡性コンパウンドクリーム全体中3~25重量%である起泡性コンパウンドクリームを得、
該起泡性コンパウンドクリームをホイップする工程を含む、常温流通用ホイップドコンパウンドクリームの製造方法。
【請求項6】
混合物全体中、油脂の含量が20~45重量%、水分の含量が20~55重量%、増粘剤の含量が0重量%以上0.02重量%未満であり、前記油脂の構成脂肪酸全体中のトランス脂肪酸の含量が0重量%以上3重量%未満であり、前記混合物全体中、糖類の含量(固形分換算)が10~40重量%、乳タンパク質の含量(固形分換算)が0.05~4重量%(固形分換算)、生クリームの含量が0~25重量%、乳化剤Xの含量が0.02~0.45重量%、乳化剤Yの含量が0.03~0.3重量%であり、前記油脂全体中、油脂Aの含量が50~100重量%であり、グリシン、リゾチーム、及びソルビン酸カリウムからなる群より選択される少なくとも1種を含む混合物を調製し、
該混合物に対し、予備乳化、均質化、殺菌、及び予備冷却を実施し、次いで、1段目は6~18MPa及び2段目は2~6Mpaの加圧条件で均質化処理した後、冷却して起泡性水中油型乳化油脂組成物を得、
前記起泡性水中油型乳化油脂組成物65重量%以上と、生クリームとを混合して、起泡性コンパウンドクリーム全体中、グリシンの含量が0.4~6重量%、リゾチームの含量が0.005~0.1重量%、及び、ソルビン酸カリウムの含量が0.01~0.25重量%のうち少なくとも1つを満足し、かつ生クリームの含量が起泡性コンパウンドクリーム全体中3~25重量%である起泡性コンパウンドクリームを得、
該起泡性コンパウンドクリームをホイップする工程を含む、常温流通用ホイップドコンパウンドクリームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起泡性コンパウンドクリーム、及び、常温流通用ホイップドコンパウンドクリームに関する。
【背景技術】
【0002】
ホイップドクリームには、油脂成分として生クリームのみを含むもの、植物油脂のみを含むもの、及び、生クリームと植物油脂の双方を含むコンパウンドクリームがある。これらホイップドクリームとしては、生クリームを含み、乳風味が豊かなものが好まれる。
【0003】
食品の流通においては、コールドチェーンの整備やエネルギーの観点から、常温で流通させることができ、日持ちのする食品が重要になってきている。
しかし、生クリームを含むホイップドコンパウンドクリームは、乳風味が豊かであるものの、常温では保形性が不十分であったり、離水が発生したり、日持ちが不十分になるといった問題があり、また、口溶けもやや重たくなる傾向がある。そこで、ホイップドコンパウンドクリームを常温で流通させるにあたって、乳風味を維持しながら、常温での保形性、離水耐性、及び日持ちを改善し、かつ、良好な口溶けを維持又は向上させることが求められる。
【0004】
ホイップドコンパウンドクリームの常温流通を可能にするため、該コンパウンドクリームに増粘剤を配合して、保形性や離水耐性を高め、日持ちも良くすることが考えられる。しかし、増粘剤を配合すると口溶けが悪化しやすい。
日持ちの向上は、糖質量を増やすことでも達成できるが、ホイップドコンパウンドクリームが甘くなりすぎたり、粘度の上昇によって口溶けが悪化する傾向がある。
また、ホイップドコンパウンドクリームの保形性や口溶けを良くするために、部分硬化油を配合することも考えられる。しかし部分硬化油はトランス脂肪酸を多く含有するため、健康への悪影響が懸念される。
【0005】
特許文献1では、油脂、蛋白質、エリスリトールを含む糖アルコール、及び、水を含む起泡性水中油型乳化物を、ホイップしてなるホイップドクリームが、常温での保形性や日持ちに優れ、風味良好であることが開示されており、該ホイップドクリームに、日持ち向上剤としてグリシンやリゾチームを配合することが記載されている。
【0006】
しかし、該文献で開示されているホイップドクリームは、増粘剤を含むため口溶けが悪く、また、部分硬化油も含むため健康面の問題も懸念される。更に、生クリームを配合した実施例は示されておらず、生クリームを使用した場合の常温での保形性や離水耐性に関しては全く記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010-273616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、増粘剤及びトランス脂肪酸を実質的に含有しないにも関わらず、常温での保形性、離水耐性、日持ちが良好で、かつ、甘過ぎず、口溶けにも優れ乳風味が豊かな、常温流通用ホイップドコンパウンドクリーム、及び、それを作製するための起泡性コンパウンドクリームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、増粘剤及びトランス脂肪酸を実質的に含有せず、特定の油脂を特定量含む油脂、水分、糖類、乳タンパク質、及び特定の2種の乳化剤をそれぞれ特定量含む起泡性水中油型乳化油脂組成物を特定量含み、かつ、乳脂肪と特定の日持ち向上剤をそれぞれ特定量含み、水分活性(Aw)が特定範囲内にある起泡性コンパウンドクリームが、ホイップすることで、常温での保形性、離水耐性、日持ちが良好で、かつ、甘過ぎず、口溶けにも優れ乳風味が豊かな、常温流通用ホイップドコンパウンドクリームを提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の第一は、起泡性コンパウンドクリーム全体中、起泡性水中油型乳化油脂組成物を65重量%以上含み、前記起泡性コンパウンドクリームに含まれる油脂全体中、乳脂肪の含量が5~35重量%であり、前記起泡性コンパウンドクリーム全体中、グリシンの含量が0.4~6重量%、リゾチームの含量が0.005~0.1重量%、及び、ソルビン酸カリウムの含量が0.01~0.25重量%のうち少なくとも1つを満足し、前記起泡性コンパウンドクリームの水分活性(Aw)が0.92~0.975であり、前記起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中、油脂の含量が20~45重量%、水分の含量が20~55重量%、増粘剤の含量が0重量%以上0.02重量%未満であり、前記油脂の構成脂肪酸全体中のトランス脂肪酸の含量が0重量%以上3重量%未満であり、前記起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中、糖類の含量(固形分換算)が10~40重量%、乳タンパク質の含量(固形分換算)が0.05~4重量%、生クリームの含量が0~25重量%、乳化剤Xの含量が0.02~0.45重量%、乳化剤Yの含量が0.03~0.3重量%であり、前記油脂全体中、油脂Aの含量が50~100重量%である、常温流通用ホイップドコンパウンドクリームの作製に使用される起泡性コンパウンドクリームに関する。
油脂A:構成脂肪酸全体中、C12以下の飽和脂肪酸を40重量%以上含み、トランス脂肪酸の含量が0重量%以上3重量%未満であり、上昇融点が30~42℃の植物性油脂。
乳化剤X:構成脂肪酸全体中、C10~C14の飽和脂肪酸を60重量%以上含み、HLBが12~18、重合度が8~12であるポリグリセリン脂肪酸エステル、及び/又は、構成脂肪酸全体中、C10~C14の飽和脂肪酸を60重量%以上含み、HLBが12~18であるショ糖脂肪酸エステル。
乳化剤Y:構成脂肪酸全体中、C16~C22の飽和脂肪酸を70~100重量%含み、HLBが5~12であるポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はショ糖脂肪酸エステル。
好ましくは、起泡性コンパウンドクリーム全体中、リン酸塩の含量が0重量%以上0.5重量%未満である。
本発明の第二は、前記起泡性コンパウンドクリームがホイップされた、常温流通用ホイップドコンパウンドクリーム、又は、該常温流通用ホイップドコンパウンドクリームを含む食品に関する。
本発明の第三は、混合物全体中、油脂の含量が20~45重量%、水分の含量が20~55重量%、増粘剤の含量が0重量%以上0.02重量%未満であり、前記油脂の構成脂肪酸全体中のトランス脂肪酸の含量が0重量%以上3重量%未満であり、前記混合物全体中、糖類の含量(固形分換算)が10~40重量%、乳タンパク質の含量(固形分換算)が0.05~4重量%(固形分換算)、生クリームの含量が0~25重量%、乳化剤Xの含量が0.02~0.45重量%、乳化剤Yの含量が0.03~0.3重量%であり、前記油脂全体中、油脂Aの含量が50~100重量%である混合物を調製し、該混合物に対し、予備乳化、均質化、殺菌、及び予備冷却を実施し、次いで、1段目は6~18MPa及び2段目は2~6Mpaの加圧条件で均質化処理した後、冷却して起泡性水中油型乳化油脂組成物を得、前記起泡性水中油型乳化油脂組成物65重量%以上と、生クリームと、グリシン、リゾチーム、及びソルビン酸カリウムからなる群より選択される少なくとも1種とを混合して、起泡性コンパウンドクリーム全体中、グリシンの含量が0.4~6重量%、リゾチームの含量が0.005~0.1重量%、及び、ソルビン酸カリウムの含量が0.01~0.25重量%のうち少なくとも1つを満足し、かつ生クリームの含量が起泡性コンパウンドクリーム全体中3~25重量%である起泡性コンパウンドクリームを得、該起泡性コンパウンドクリームをホイップする工程を含む、常温流通用ホイップドコンパウンドクリームの製造方法に関する。
本発明の第四は、混合物全体中、油脂の含量が20~45重量%、水分の含量が20~55重量%、増粘剤の含量が0重量%以上0.02重量%未満であり、前記油脂の構成脂肪酸全体中のトランス脂肪酸の含量が0重量%以上3重量%未満であり、前記混合物全体中、糖類の含量(固形分換算)が10~40重量%、乳タンパク質の含量(固形分換算)が0.05~4重量%(固形分換算)、生クリームの含量が0~25重量%、乳化剤Xの含量が0.02~0.45重量%、乳化剤Yの含量が0.03~0.3重量%であり、前記油脂全体中、油脂Aの含量が50~100重量%であり、グリシン、リゾチーム、及びソルビン酸カリウムからなる群より選択される少なくとも1種を含む混合物を調製し、該混合物に対し、予備乳化、均質化、殺菌、及び予備冷却を実施し、次いで、1段目は6~18MPa及び2段目は2~6Mpaの加圧条件で均質化処理した後、冷却して起泡性水中油型乳化油脂組成物を得、前記起泡性水中油型乳化油脂組成物65重量%以上と、生クリームとを混合して、起泡性コンパウンドクリーム全体中、グリシンの含量が0.4~6重量%、リゾチームの含量が0.005~0.1重量%、及び、ソルビン酸カリウムの含量が0.01~0.25重量%のうち少なくとも1つを満足し、かつ生クリームの含量が起泡性コンパウンドクリーム全体中3~25重量%である起泡性コンパウンドクリームを得、該起泡性コンパウンドクリームをホイップする工程を含む、常温流通用ホイップドコンパウンドクリームの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に従えば、増粘剤及びトランス脂肪酸を実質的に含有しないにも関わらず、常温での保形性、離水耐性、日持ちが良好で、かつ、甘過ぎず、口溶けにも優れ乳風味が豊かな、常温流通用ホイップドコンパウンドクリーム、及び、それを作製するための起泡性コンパウンドクリームを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。
本発明の起泡性コンパウンドクリームは、起泡性水中油型乳化油脂組成物を生クリームと混合して得ることができる。前記起泡性水中油型乳化油脂組成物は、油脂と必要に応じて油脂以外の油溶性原料とを含む油相、及び、水と必要に応じて水溶性原料とを含む水相からなる、水中油型の乳化物である。前記起泡性コンパウンドクリームをホイップすることにより、ホイップドコンパウンドクリームを得ることができる。
【0013】
まず、起泡性水中油型乳化油脂組成物について説明する。
前記起泡性水中油型乳化油脂組成物は、増粘剤及びトランス脂肪酸を実質的に含有せず、特定の油脂を特定量含む油脂、水分、糖類、乳タンパク質、及び特定の2種の乳化剤をそれぞれ特定量含むものである。
【0014】
前記起泡性水中油型乳化油脂組成物は、健康上の観点から、該起泡性水中油型乳化油脂組成物に含まれる油脂の構成脂肪酸として、トランス脂肪酸を多くは含有しないことが好ましい。ここで、トランス脂肪酸とは、トランス型の二重結合を持つ不飽和脂肪酸のことをいう。
【0015】
具体的には、トランス脂肪酸の含量は、前記油脂の構成脂肪酸全体中0重量%以上3重量%未満であることが好ましく、0重量%以上2重量%以下がより好ましく、0重量%以上1重量%以下がさらに好ましい。なお、トランス脂肪酸の含量を少なくするには、前記起泡性水中油型乳化油脂組成物に部分硬化油(部分水素添加油)を配合しないか、又は、その含量を低減すればよい。
【0016】
ホイップドコンパウンドクリームの口溶けを良好にするため、前記起泡性水中油型乳化油脂組成物に増粘剤を配合しないか、又は、その含量を低減することが好ましい。具体的には、増粘剤の含量は、前記起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中0重量%以上0.02重量%未満が好ましく、0重量%以上0.01重量%未満がより好ましい。
【0017】
前記増粘剤としては、ホイップドクリームに対して使用可能な増粘剤が挙げられ、例えば、ジェランガム、グアガム、キサンタンガム、寒天、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ローカストビーンガム、アラビアガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、結晶セルロース、微結晶セルロース、澱粉、デキストリン等が挙げられる。
【0018】
前記起泡性水中油型乳化油脂組成物は、油脂を、前記組成物全体中、合計で20~45重量%含有することが好ましく、25~40重量%がより好ましく、30~38重量%がさらに好ましい。油脂の含量が20重量%より少ないと、ホイップ時間が長くなりすぎる場合がある。また、45重量%より多いと、前記組成物の安定性や、起泡性コンパウンドクリームのホイップ性が悪化する場合がある。
【0019】
前記起泡性水中油型乳化油脂組成物に含まれる前記油脂は、特定の油脂Aを多く含むことが好ましい。ここで、油脂Aとは、油脂Aの構成脂肪酸全体中、C12以下の飽和脂肪酸を40重量%以上含み、トランス脂肪酸の含量が0重量%以上3重量%未満であり、上昇融点が30~42℃の植物性油脂のことをいう。
【0020】
油脂Aの構成脂肪酸全体中のC12以下の飽和脂肪酸の含量は、40~90重量%が好ましく、45~80重量%がより好ましく、50~70重量%がさらに好ましい。C12以下の飽和脂肪酸の含量が40重量%未満であると、ホイップドコンパウンドクリームの口溶けと保形性のバランスが悪化する場合がある。
【0021】
油脂Aの構成脂肪酸全体中のトランス脂肪酸の含量は、0重量%以上2重量%以下が好ましく、0重量%以上1重量%以下がより好ましい。
【0022】
油脂Aの上昇融点は、30~38℃が好ましく、30~35℃がより好ましい。上昇融点が30℃未満であると、ホイップドコンパウンドクリームの常温での保形性や離水耐性が悪化する場合がある。また、42℃を超えると、前記起泡性水中油型乳化油脂組成物の安定性や、起泡性コンパウンドクリームのホイップ性が悪化する場合がある。前記上昇融点は、基準油脂分析試験法3.2.2.2融点(上昇融点)に記載の方法により測定することができる。
【0023】
油脂Aの具体例としては特に限定されないが、具体的には、パーム核ステアリン、極度硬化パーム核油、極度硬化パーム核油のエステル交換油脂、極度硬化パーム核油とパーム核油のエステル交換油脂、極度硬化パーム核油とヤシ油のエステル交換油脂などが挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも一種を用いることができる。特に、パーム核ステアリンが好ましい。
【0024】
前記起泡性水中油型乳化油脂組成物に含まれる油脂全体中、油脂Aの含量は、50~100重量%であることが好ましく、60~100重量%以上がより好ましく、70~100重量%がさらに好ましく、80~100重量%がより更に好ましい。油脂全体中の油脂Aの含量が50重量%未満であると、ホイップドコンパウンドクリームの常温での保形性や離水耐性が悪化する場合がある。
【0025】
油脂A以外に使用可能な油脂としては、特に限定されないが、油脂Aに該当しないパーム系油脂、菜種油、コーン油、綿実油、大豆油、ひまわり油、サフラワー油、オリーブ油、米油、牛脂、豚脂、魚油等が挙げられる。
【0026】
前記起泡性水中油型乳化油脂組成物は、水分を、前記組成物全体中、20~55重量%含有することが好ましく、25~50重量%がより好ましく、30~45重量%がさらに好ましく、35~43重量%が特に好ましい。水分の含量が20重量%未満であると、前記組成物の安定性や、起泡性コンパウンドクリームのホイップ性が悪化する場合がある。また、55重量%より多いと、ホイップドコンパウンドクリームの日持ちが悪化する場合がある。尚、前記水分の含量は、水の添加量と、各成分(例えば糖類や乳原料)に含まれる水分量とを合計した値である。
【0027】
前記起泡性水中油型乳化油脂組成物は糖類を含む。前記糖類の含量(固形分換算)は、前記組成物全体中10~40重量%であることが好ましく、10~35重量%がより好ましく、12~30重量%がさらに好ましく、15~25重量%がさらに好ましい。糖類の含量が10重量%未満であると、甘さが不足したり、水分活性が低く、菌の増殖が速くなる場合がある。また、40重量%より多いと、甘くなりすぎたり、前記組成物の粘度が高すぎて生産性が悪くなる場合がある。
【0028】
前記糖類としては特に限定されないが、例えば、グルコース、ガラクトース、フルクトースなどの単糖類、スクロース、マルトース、ラクトースなどの二糖類、甘さを有し水分活性を下げる効果を持つ多糖類や、ソルビトール、キシリトールなどの糖アルコール等が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも一種を用いることができる。
【0029】
前記起泡性水中油型乳化油脂組成物は乳タンパク質を含む。前記乳タンパク質の含量(固形分換算)は、前記組成物全体中0.05~4重量%であることが好ましく、0.1~3重量%がより好ましく、0.3~2重量%がさらに好ましい。乳タンパク質の含量が0.05重量%未満であると、乳化が不安定になったり、乳風味が不足する場合がある。また、4重量%より多いと、コストが上昇したり、乳化が不安定になる場合がある。
【0030】
前記乳タンパク質としては、例えば、ホエイやカゼイン等が挙げられる。これら乳タンパク質を含む乳タンパク質源としては、例えば、生乳、牛乳、バターミルク、脱脂濃縮乳、生クリーム、全粉乳、脱脂粉乳、ホエイパウダー、カゼインカリウム、カゼインナトリウム、チーズ等が挙げられる。
【0031】
前記起泡性水中油型乳化油脂組成物は、生クリームを含有するものであってもよいし、含有しないものであってもよい。前記生クリームの含量は、前記組成物全体中0~25重量%であることが好ましく、5~15重量%がより好ましい。生クリームの含量が25重量%を超えると、ホイップドコンパウンドクリームの常温での保形性や離水耐性が悪化する場合がある。なお、前記生クリームとは、乳等省令で定義される「生乳、牛乳または特別牛乳から乳脂肪分以外の成分を除去し、乳脂肪分が18.0%以上にしたもの」をいう。
【0032】
前記起泡性水中油型乳化油脂組成物は、乳化剤として、少なくとも乳化剤Xと乳化剤Yを含む。
前記乳化剤Xとは、ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸全体中、C10~C14の飽和脂肪酸を60重量%以上含み、HLBが12~18、重合度が8~12であるポリグリセリン脂肪酸エステル、及び/又は、ショ糖脂肪酸エステルの構成脂肪酸全体中、C10~C14の飽和脂肪酸を60重量%以上含み、HLBが12~18であるショ糖脂肪酸エステルのことを指す。
【0033】
乳化剤Xであるポリグリセリン脂肪酸エステル又はショ糖脂肪酸エステルの構成脂肪酸全体中のC10~C14の飽和脂肪酸の含量は、65~100重量%が好ましく、70~100重量%がより好ましい。C10~C14の飽和脂肪酸の含量が60重量%未満であると、ホイップドコンパウンドクリームの常温での保形性と離水耐性が悪化する場合がある。
【0034】
乳化剤Xである前記ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBは、13~17であることが好ましく、14~17がより好ましい。また、乳化剤Xである前記ショ糖脂肪酸エステルのHLBは、13~17であることが好ましく、14~17がより好ましい。
【0035】
前記重合度とは、ポリグリセリン脂肪酸エステル中のグリセリン単位の数を指す。前記重合度は9~11が好ましい。
【0036】
前記乳化剤Xの含量は、前記起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中0.02~0.45重量%であることが好ましく、0.02~0.3重量%がより好ましく、0.05~0.25重量%がさらに好ましく、0.08~0.2重量%が特に好ましい。乳化剤Xの含量が0.02重量%未満であると、ホイップドコンパウンドクリームの常温での保形性と離水耐性が悪化する場合がある。また、0.45重量%より多いと、異味が感じられ、ホイップドコンパウンドクリームの乳風味が損なわれる場合がある。
【0037】
前記乳化剤Yとは、ポリグリセリン脂肪酸エステル又はショ糖脂肪酸エステルの構成脂肪酸全体中、C16~C22の飽和脂肪酸を70~100重量%含み、HLBが5~12である(即ち油溶性を示す)ポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はショ糖脂肪酸エステルのことを指す。前記乳化剤YのHLBは、6~11であることが好ましく、より好ましくは7~10である。
【0038】
乳化剤Yであるポリグリセリン脂肪酸エステル又はショ糖脂肪酸エステルの構成脂肪酸全体中のC16~C22の飽和脂肪酸の含量は、80~100重量%が好ましい。C16~C22の飽和脂肪酸の含量が70重量%未満であると、前記起泡性水中油型乳化油脂組成物の安定性が悪化する場合がある。
【0039】
前記乳化剤Yの含量は、前記起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中0.03~0.3重量%であることが好ましく、0.05~0.2重量%がより好ましく、0.07~0.15重量%がさらに好ましい。乳化剤Yの含量が0.03重量%未満であると、前記組成物の安定性が悪くなる場合がある。また、0.3重量%より多いと、ホイップ時間が長くなりすぎる場合がある。
【0040】
前記起泡性水中油型乳化油脂組成物は、乳化剤として、乳化剤Xと乳化剤Yのみを含有するものであってもよいが、乳化剤Xと乳化剤Y以外の乳化剤をさらに含有するものであってもよい。
【0041】
本実施形態に係る起泡性コンパウンドクリームは、前記起泡性水中油型乳化油脂組成物を特定量含み、また、乳脂肪と特定の日持ち向上剤を特定量含み、水分活性(Aw)が特定範囲内にあるものである。
【0042】
前記起泡性水中油型乳化油脂組成物の含量は、前記起泡性コンパウンドクリーム全体中65重量%以上であることが好ましく、70~95重量%がより好ましく、75~90重量%がさらに好ましい。前記組成物の含量が65重量%より少ないと、常温での保形性や離水耐性の向上効果が不十分となる場合がある。
【0043】
前記乳脂肪の含量は、前記起泡性コンパウンドクリームに含まれる油脂全体中5~35重量%であることが好ましく、10~30重量%がより好ましく、15~28重量%がさらに好ましい。乳脂肪の含量が5重量%未満であると、乳風味が不足する傾向がある。また、35重量%を超えると、ホイップドコンパウンドクリームの常温での保形性や離水耐性が悪化する場合がある。
【0044】
前記乳脂肪の供給源としては、例えば、生クリーム、バターミルクパウダー、バター、バターオイル、クリームチーズ、生乳、牛乳、全粉乳、濃縮乳、サワークリーム、無糖練乳、加糖練乳等が例示でき、それらの群より選ばれる少なくとも1種を原料として用いることができる。乳風味の観点から、乳脂肪の供給源は生クリームであることが好ましい。
【0045】
前記乳脂肪供給源として生クリームを使用する場合、起泡性コンパウンドクリーム全体中の生クリームの含量は、起泡性コンパウンドクリーム全体中3~25重量%であることが好ましく、5~20重量%がより好ましく、10~18重量%がさらに好ましい。生クリームの含量が3重量%未満であると、乳風味が不十分となる場合がある。また、25重量%を超えると、コストが上昇したり、ホイップドコンパウンドクリームの常温での保形性や離水耐性が悪化する場合がある。尚、ここでいう生クリームの含量とは、起泡性コンパウンドクリームを得る際に起泡性水中油型乳化油脂組成物と混合する生クリームの量と、起泡性水中油型乳化油脂組成物中に含まれる生クリームの量とを合計した量である。
【0046】
前記起泡性コンパウンドクリームは、日持ち向上剤として、グリシン、リゾチーム、及びソルビン酸カリウムからなる群より選択される少なくとも1種を含有する。これによって静菌効果が得られ、ホイップドコンパウンドクリームの日持ちを向上させることができる。
【0047】
グリシンを含有する場合、グリシンの含量は、前記起泡性コンパウンドクリーム全体中0.4~6重量%が好ましく、0.6~5重量%がより好ましく、0.8~4重量%が更に好ましい。グリシンの含量が0.4重量%以上であると、グリシンによる静菌効果を得ることができるが、6重量%より多いと風味が悪化する場合がある。
【0048】
リゾチームを含有する場合、リゾチームの含量は、前記起泡性コンパウンドクリーム全体中0.005~0.1重量%が好ましく、0.008~0.08重量%がより好ましく、0.01~0.06重量%が更に好ましい。リゾチームの含量が0.005重量%以上であると、リゾチームによる静菌効果を得ることができるが、0.1重量%より多いとコストが高くなる場合がある。
【0049】
ソルビン酸カリウムを含有する場合、ソルビン酸カリウムの含量は、前記起泡性コンパウンドクリーム全体中0.01~0.25重量%が好ましく、0.05~0.15重量%がより好ましく、0.07~0.12重量%が更に好ましい。ソルビン酸カリウムの含量が0.01重量%以上であると、ソルビン酸カリウムによる静菌効果を得ることができるが、0.25重量%より多いと風味が悪化する場合がある。
【0050】
日持ちの向上を図る場合には、起泡性コンパウンドクリームは、グリシンとリゾチームの双方を含有することが好ましい。更なる日持ち向上を図る場合には、更に、ソルビン酸カリウムを含有することが好ましい。
【0051】
前記起泡性コンパウンドクリームの水分活性(Aw)は、日持ちの観点から、0.92~0.975であることが好ましい。
このような水分活性にするためには、例えば、前記起泡性水中油型乳化油脂組成物の水中糖濃度が30~50重量%になるように水分と糖類の含量を調節すればよい。
なお、前記Awは、露点法(Fleischwirtschaft,vol.52,pp.1461-1462,1972)に準拠して、例えばアイネクス株式会社製「AquaLab Seris4 TE DUO」を用いることにより測定することができる。
【0052】
前記起泡性コンパウンドクリームは、リン酸塩を含んでもよいが、味や健康面などの観点から、その含量は少なければ少ないほど良い。具体的には、リン酸塩の含量は、起泡性コンパウンドクリーム全体中0重量%以上0.5重量%未満であることが好ましく、0重量%以上0.3重量%未満がより好ましく、0重量%以上0.1重量%未満がさらに好ましい。前記リン酸塩としては、リン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム等が例示できる。
【0053】
前記起泡性コンパウンドクリームは、発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、呈味剤、着色料、香料、塩分、ビタミン類、ミネラル類、酸化防止剤、風味成分(例えばフルーツソース、キャラメル、ココアパウダーなど)、その他の食品成分、添加剤等を含有してもよい。
【0054】
前記起泡性コンパウンドクリームをホイップすることで、ホイップドコンパウンドクリームが得られる。得られるホイップドコンパウンドクリームは、増粘剤及びトランス脂肪酸を実質的に含有しないにも関わらず、常温での保形性、離水耐性、日持ちが良好であるため、常温で流通させることができる。即ち、前記ホイップドコンパウンドクリームは、常温流通用に用いることができる。また、前記ホイップドコンパウンドクリームは、甘過ぎず、口溶けにも優れ、乳風味が豊かである。
【0055】
前記ホイップドコンパウンドクリームは、様々な食品にトッピングしたり、ナッペしたり、フィリングしたり、サンドしたりして利用できる。前記食品としては、クリームパン、クリームサンド、サンドイッチ等のパン、ケーキ、シュー、オムレット、どら焼き等の菓子が挙げられる。前記ホイップドコンパウンドクリームを含む食品は、ホイップドコンパウンドクリームの形状を維持しながら、常温で流通させることができる。
【0056】
本実施形態に係る起泡性水中油型乳化油脂組成物及びホイップドコンパウンドクリームの製造方法を以下に例示する。
【0057】
(起泡性水中油型乳化油脂組成物の製造方法)
まず、混合物全体中、油脂の含量が20~45重量%、水分の含量が20~55重量%、増粘剤の含量が0重量%以上0.02重量%未満であり、前記油脂の構成脂肪酸全体中のトランス脂肪酸の含量が0重量%以上3重量%未満であり、前記混合物全体中、糖類の含量(固形分換算)が10~40重量%、乳タンパク質の含量(固形分換算)が0.05~4重量%(固形分換算)、生クリームの含量が0~20重量%、乳化剤Xの含量が0.02~0.45重量%、乳化剤Yの含量が0.03~0.3重量%であり、前記油脂全体中、油脂Aの含量が50~100重量%である混合物を調製する。
【0058】
この際、油脂に乳化剤Yなどを溶解させて予め作製した油相部と、水に乳化剤Xや糖類、乳タンパク質源などを加えて別途作製した水相部を混合することによって、前記混合物を調製することが好ましい。
【0059】
前記混合物に、グリシン、リゾチーム、及びソルビン酸カリウムからなる群より選択される少なくとも1種を含有させてもよいし、含有させなくてもよい。前記混合物に含有させない場合は、後述する常温流通用ホイップドクリームの製造時に、前記グリシン等を添加すればよい。
【0060】
次いで、前記混合物に対して、予備乳化、均質化、殺菌、及び予備冷却を実施し、次いで、1段目は好ましくは6~18MPa及び2段目は好ましくは2~6Mpaの加圧条件で均質化処理した後、冷却することで、本実施形態に係る起泡性水中油型乳化油脂組成物を得ることができる。1段目の均質化処理条件は9~15MPaがより好ましく、2段目の均質化処理条件は3~5MPaがより好ましい。
【0061】
(常温流通用ホイップドコンパウンドクリームの製造方法)
前記起泡性水中油型乳化油脂組成物65重量%以上と、生クリームなどの乳脂肪供給源と、必要に応じてグリシン、リゾチーム、及びソルビン酸カリウムからなる群より選択される少なくとも1種とを混合して、起泡性コンパウンドクリームを得る。
【0062】
起泡性コンパウンドクリームを作製する際には、起泡性コンパウンドクリームに含まれる油脂全体中、乳脂肪の含量が5~35重量%となるように調節することが好ましい。また、起泡性コンパウンドクリームの水分活性(Aw)が0.92~0.975となるように調整することが好ましい。起泡性コンパウンドクリームを作製する際には、前記起泡性水中油型乳化油脂組成物と生クリーム以外の成分、例えば、糖類を添加してもよい。
【0063】
但し、前記起泡性水中油型乳化油脂組成物が相当量の乳脂肪を含有している場合には、前記起泡性水中油型乳化油脂組成物に、生クリームなどの乳脂肪供給源を混合することなく、起泡性コンパウンドクリームを得ることもできる。
【0064】
該起泡性コンパウンドクリームを常法に従ってホイップすることで、常温流通用ホイップドコンパウンドクリームを得ることができる。
【実施例0065】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
【0066】
<実施例及び比較例で使用した原料>
1)(株)カネカ製「パーム核ステアリン」(C12以下の飽和脂肪酸含量:54.1重量%、トランス脂肪酸含量:0.7%、上昇融点:31.3℃)
2)(株)カネカ製「パーム核油」(C12以下の飽和脂肪酸含量:51.2重量%、トランス脂肪酸含量:0.4%、上昇融点:27.4℃)
3)(株)カネカ製「極度硬化パーム核油」(C12以下の飽和脂肪酸含量:53.0重量%、トランス脂肪酸含量:0.6%、上昇融点:40.3℃)
4)阪本薬品工業(株)製テトラグリセリンモノステアリン酸エステル「SYグリスターMS-3S」(C16~C22の飽和脂肪酸含量:99.8重量%、HLB:8.4)
5)ADM(株)製「Yelkin TS」
6)昭和産業(株)製マルトースシロップ「MR25-50」(水分含量:24.6重量%)
7)Hilmar Cheese Company社製「ラクトース」
8)(株)明治製「明治十勝フレッシュクリーム47」(乳脂肪含量:47.3重量%、トランス脂肪酸含量:2.1重量%(油脂の構成脂肪酸中)、水分含量:47.9重量%、乳タンパク質含量:1.7重量%)
9)Friesland Campina DMV社製「カゼインカリウムSPRAY」
10)よつ葉乳業(株)製「よつ葉脱脂粉乳」(乳脂肪含量:0.7重量%、水分含量:4.1重量%、乳タンパク質含量:35.6重量%)
11)阪本薬品工業(株)製ポリグリセリン脂肪酸エステル「SYグリスターMM-750」(C10~C14の飽和脂肪酸含量:99.8重量%、HLB:15.7、重合度:10)
12)三菱ケミカルフーズ(株)製ショ糖脂肪酸エステル「P-1670」(ショ糖パルミチン酸エステル、C10~C14の飽和脂肪酸含量:20重量%以下、パルミチン酸含量:約80重量%、HLB:16)
13)扶桑化学工業(株)製「精製クエン酸ナトリウム」
14)昭和電工(株)製「グリシン」
15)三栄源エフエフアイ(株)製「アートフレッシュ」(リゾチーム50%含有)
16)(株)林原製「サンマルトS」
【0067】
<保形性評価>
実施例及び比較例で得られたホイップドコンパウンドクリームを、出口が星型の口金を用いて透明なポリカップ容器に高さ6cm程度、底辺の直径7cm程度で、できるだけ空洞ができないように渦を巻きながら三角錐状にホイップドクリームを絞り、該ホイップドクリームの塊の高さを測定した。25℃で1日保存し、保存前後のホイップドコンパウンドクリームの高さの保持率を測定し、該高さの保持率を以下の評価基準に従って評価した。
5点:保存前後の高さの保持率が80%以上であり、常温での保形性が非常に良い
4点:保存前後の高さの保持率が75%以上80%未満であり、常温での保形性が良い
3点:保存前後の高さの保持率が70%以上75%未満であり、常温での保形性に問題がない
2点:保存前後の高さの保持率が60%以上70%未満であり、常温での保形性がやや悪い
1点:保存前後の高さの保持率が60%未満であり、常温での保形性が非常に悪い
【0068】
<離水耐性評価>
実施例および比較例で得られた各起泡性コンパウンドクリーム40gを、出口が星型の口金を用いて透明なポリカップ容器に高さ6cm程度、底辺の直径7cm程度で、できるだけ空洞ができないように渦を巻きながら三角錐状にホイップドクリームを絞り25℃で1日保存し、保存後のホイップドコンパウンドクリームの離水の量を測定して5点満点で評価した。
5点:離水の量が0.3ml未満で、常温での離水耐性が非常に高い
4点:離水の量が0.3ml以上1ml未満で、常温での離水耐性が高い
3点:離水の量が1ml以上3ml未満で、常温での離水耐性に問題がない
2点:離水の量が3ml以上5ml未満で、常温での離水耐性がやや低く、やや問題がある
1点:離水の量が5ml以上で、常温での離水耐性が非常に低く、問題がある
【0069】
<日持ちの評価>
実施例及び比較例で得られた起泡性コンパウンドクリームを、25℃で5日間保存した後の一般生菌数を測定し、以下の基準で評価した。一般生菌数の測定は、起泡性コンパウンドクリームを滅菌生理食塩水により適宜希釈したものをサンプルとし、混釈法により実施した。培地は標準寒天培地を使用し、35℃で48時間培養して、48時間培養後の集落(コロニー)の数を数えて、一般生菌数(CFU/ml)とした。
○:一般生菌数が、5.0×10(CFU/ml)以下であり、常温での日持ちに問題がない。
×:一般生菌数が、5.0×10(CFU/ml)を超え、常温での日持ちに問題がある。
【0070】
<口溶け評価>
実施例及び比較例で得られたホイップドコンパウンドクリームを、熟練のパネラー10人が口に含み、口溶けを5点満点で評価して、その平均点を評価点とした。その際の評価基準は、以下の通りであった。
5点:実施例X3と同等であり、口溶けが非常に良い
4点:実施例X3よりやや劣るが、口溶けが良い
3点:実施例X3より劣るが、口溶けに問題がない
2点:実施例X3より明らかに劣り、口溶けがやや悪い
1点:実施例X3より著しく劣り、口溶けが非常に悪い
【0071】
<乳風味の評価>
実施例及び比較例で得られたホイップドコンパウンドクリームを、熟練のパネラー10人が口に含み、乳風味を5点満点で評価して、その平均点を評価点とした。その際の評価基準は、以下の通りであった。
5点:実施例X1と同等か、又はそれ以上の乳風味を感じる
4点:実施例X1よりも乳風味がやや劣る
3点:実施例X1よりも乳風味が劣るが、商品としては問題ないレベルである
2点:実施例X1よりも乳風味が大きく劣る
1点:実施例X1よりも乳風味が大きく劣り、乳風味をほとんど感じない
【0072】
<総合評価>
A:保形性、離水耐性、口溶け、乳風味の項目が4.5点以上、且つ日持ちが〇
B:保形性、離水耐性、口溶け、乳風味の項目が4.0点以上(但し全ての項目が4.5点以上の場合を除く)、且つ日持ちが〇
C:保形性、離水耐性、口溶け、乳風味の項目が3.0点以上(但し全ての項目が4.0点以上の場合を除く)、且つ日持ちが〇
D:保形性、離水耐性、口溶け、乳風味の項目が2.0点以上(但し全ての項目が3.0点以上の場合を除く)、且つ日持ちが〇
E:いずれかの項目が2.0点未満、及び/又は日持ちが×
【0073】
(製造例A1)
表1の配合に従い、油脂A(パーム核ステアリン)30.0重量部を65℃に加熱し、大豆レシチン0.1重量部、乳化剤Y(ポリグリセリン脂肪酸エステル)を0.1重量部溶解し、油相部を作製した。
一方、生クリーム10重量部に水27.6重量部を加え、マルトースシロップ25重量部、ラクトース4.5重量部を加え、60℃に加熱し、乳化剤X(ポリグリセリン脂肪酸エステル)を0.1重量部、ショ糖脂肪酸エステルを0.02重量部、クエン酸ナトリウム0.1重量部を加え、カゼインカリウムを0.5重量部、脱脂粉乳2.0重量部を加え、水相部を作製した。
水相部を攪拌しながら油相部を加え、20分間予備乳化を行った。その後、高圧ホモジナイザーで1段目2.0MPa/2段目1.0MPaの圧力で均質化した。次いで、プレート式加熱機を用いて90℃まで予備加熱した後、UHT殺菌機(スチームインジェクション)を用いて140℃で4秒間殺菌処理を行った。90℃まで蒸発冷却後、プレート式冷却機を用いて60℃まで冷却した。その後、再び高圧ホモジナイザーを用いて1段目9.0MPa/2段目3.0MPaの圧力で均質化した後、プレート式冷却機で12℃まで冷却したものを容器に充填し、起泡性水中油型乳化油脂組成物A1を得た。
【0074】
(実施例X1)
製造例A1で得た起泡性水中油型乳化油脂組成物A1を100重量部、グリシンを3重量部、リゾチーム製剤(リゾチーム50%含有)を0.05重量部、生クリーム10重量部、マルトース11重量部を混合することで起泡性コンパウンドクリームを得た。
得られた起泡性コンパウンドクリームをカントーミキサー(関東混合機工業(株)製「CS型20」)に4kg入れ、品温を5℃に調整し、高速撹拌条件(380rpm)で硬さが0.30Nになるまでホイップし、ホイップドコンパウンドクリームを得た。得られたホイップドコンパウンドクリームについて保形性、離水耐性、日持ち、口溶け、乳風味の評価を実施し、それらの結果を表1にまとめた。
【0075】
【表1】
【0076】
(製造例A2)
表1に従ってパーム核ステアリンの量を34.7重量部に変更し、生クリームを使用せず、水を32.9重量部に変更した以外は製造例A1と同様にして起泡性水中油型乳化油脂組成物A2を得た。
【0077】
(実施例X2)
表1に従い、起泡性水中油型乳化油脂組成物A2を使用した以外は実施例X1と同様にしてホイップドコンパウンドクリームを得て、保形性、離水耐性、日持ち、口溶け、乳風味の評価を実施し、それらの結果を表1にまとめた。
【0078】
(製造例A3)
表1に従ってパーム核ステアリンの量を18.0重量部に変更し、パーム核油12.0重量部を使用した以外は製造例A1と同様にして起泡性水中油型乳化油脂組成物A3を得た。
【0079】
(実施例X3)
表1に従い、起泡性水中油型乳化油脂組成物A3を使用した以外は実施例X1と同様にしてホイップドコンパウンドクリームを得て、保形性、離水耐性、日持ち、口溶け、乳風味の評価を実施し、それらの結果を表1にまとめた。
【0080】
(比較例B1)
表1に従ってパーム核ステアリンの量を16.0重量部に変更し、パーム核油14.0重量部を使用した以外は製造例A1と同様にして起泡性水中油型乳化油脂組成物B1を得た。
【0081】
(比較例Y1)
表1に従い、起泡性水中油型乳化油脂組成物B1を使用した以外は実施例X1と同様にしてホイップドコンパウンドクリームを得て、保形性、離水耐性、日持ち、口溶け、乳風味の評価を実施し、それらの結果を表1にまとめた。
【0082】
表1から明らかなように、起泡性水中油型乳化油脂組成物の油脂全体中の油脂Aの含量が50~100重量%の範囲にある起泡性水中油型乳化油脂組成物(製造例A1~A3)を用いて得た、油脂全体中の乳脂肪の含量が5~35重量%の範囲にあるホイップドコンパウンドクリーム(実施例X1~X3)は、いずれも、保形性、離水耐性、日持ち、口溶け、乳風味の全ての評価項目で良好な結果であった。特に、油脂Aの含量が80~100重量%の範囲にある起泡性水中油型乳化油脂組成物(製造例A1)を用いて得た、油脂全体中の乳脂肪の含量が15~28重量%の範囲にあるホイップドクリーム(実施例X1)は、総合評価がAで非常に良好であった。
一方、起泡性水中油型乳化油脂組成物の油脂全体中の油脂Aの含量が46.1重量%と少ない起泡性水中油型乳化油脂組成物(製造例B1)を用いて得たホイップドコンパウンドクリーム(比較例Y1)は、保形性と離水耐性が不十分で、常温流通用として難しい品質水準であり、総合評価はDであった。
【0083】
(製造例A4)
表2に従ってパーム核ステアリンの代わりに極度硬化パーム核油を使用した以外は製造例A1と同様にして起泡性水中油型乳化油脂組成物A4を得た。
【0084】
(実施例X4)
表2に従い、起泡性水中油型乳化油脂組成物A4を使用した以外は実施例X1と同様にしてホイップドコンパウンドクリームを得て、保形性、離水耐性、日持ち、口溶け、乳風味の評価を実施し、それらの結果を表2にまとめた。
【0085】
【表2】
【0086】
(製造例B2)
表2に従ってパーム核ステアリンの代わりにパーム核油を使用した以外は製造例A1と同様にして起泡性水中油型乳化油脂組成物B2を得た。
【0087】
(比較例Y2)
表2に従い、起泡性水中油型乳化油脂組成物B2を使用した以外は実施例X1と同様にしてホイップドコンパウンドクリームを得て、保形性、離水耐性、日持ち、口溶け、乳風味の評価を実施し、それらの結果を表2にまとめた。
【0088】
表2から明らかなように、起泡性水中油型乳化油脂組成物中の油脂Aの上昇融点が30~42℃の範囲にある起泡性水中油型乳化油脂組成物(製造例A1、A4)を用いて得たホイップドコンパウンドクリーム(実施例X1、X4)は、いずれも、保形性、離水耐性、日持ち、口溶け、乳風味の全ての評価項目で良好な結果であった。特に、油脂Aの上昇融点が30~35℃の範囲にある起泡性水中油型乳化油脂組成物(製造例A1)を用いて得たホイップドクリーム(実施例X1)は、総合評価がAで非常に良好であった。
一方、油脂Aの代わりに上昇融点が27.4℃と低い油脂を配合した起泡性水中油型乳化油脂組成物(製造例B2)を用いて得たホイップドコンパウンドクリーム(比較例Y2)は、保形性と離水耐性が不十分で、常温流通用として難しい品質水準であり、総合評価はEであった。
【0089】
(製造例A5)
表3に従って乳化剤Xの含量を0.25重量部に変更し、水分量を27.4重量部に変更した以外は製造例A1と同様にして起泡性水中油型乳化油脂組成物A5を得た。
【0090】
(実施例X5)
表3に従い、起泡性水中油型乳化油脂組成物A5を使用した以外は実施例X1と同様にしてホイップドコンパウンドクリームを得て、保形性、離水耐性、日持ち、口溶け、乳風味の評価を実施し、それらの結果を表3にまとめた。
【0091】
【表3】
【0092】
(製造例A6)
表3に従って乳化剤Xの含量を0.03重量部に変更し、水分量を27.7重量部に変更した以外は製造例A1と同様にして起泡性水中油型乳化油脂組成物A6を得た。
【0093】
(実施例X6)
表3に従い、起泡性水中油型乳化油脂組成物A6を使用した以外は実施例X1と同様にしてホイップドコンパウンドクリームを得て、保形性、離水耐性、日持ち、口溶け、乳風味の評価を実施し、それらの結果を表3にまとめた。
【0094】
(製造例B3)
表3に従い、乳化剤Xの含量を0.50重量部に変更し、水分量を27.2重量部に変更した以外は製造例A1と同様にして起泡性水中油型乳化油脂組成物B3を得た。
【0095】
(比較例Y3)
表3に従い、起泡性水中油型乳化油脂組成物B3を使用した以外は実施例X1と同様にしてホイップドコンパウンドクリームを得て、保形性、離水耐性、日持ち、口溶け、乳風味の評価を実施し、それらの結果を表3にまとめた。
【0096】
(製造例B4)
表3に従い、乳化剤Xの含量を0.01重量部に変更し、水分量を27.7重量部に変更した以外は製造例A1と同様にして起泡性水中油型乳化油脂組成物B4を得た。
【0097】
(比較例Y4)
表3に従い、起泡性水中油型乳化油脂組成物B4を使用した以外は実施例X1と同様にしてホイップドコンパウンドクリームを得て、保形性、離水耐性、日持ち、口溶け、乳風味の評価を実施し、それらの結果を表3にまとめた。
【0098】
表3から明らかなように、起泡性水中油型乳化油脂組成物の乳化剤Xの含量が0.02~0.45重量%の範囲にある起泡性水中油型乳化油脂組成物(製造例A1、A5、A6)を用いて得たホイップドコンパウンドクリーム(実施例X1、X5、X6)は、いずれも、保形性、離水耐性、日持ち、口溶け、乳風味の全ての評価項目で良好な結果であった。特に、乳化剤Xの含量が0.08~0.2重量%の範囲にある起泡性水中油型乳化油脂組成物(製造例A1)を用いて得たホイップドクリーム(実施例X1)は、総合評価がAで非常に良好であった。
一方、前記乳化剤Xの含量が0.50重量%と多い起泡性水中油型乳化油脂組成物(製造例B3)を用いて得たホイップドコンパウンドクリーム(比較例Y3)は、異味が感じられ、実施例X1で得たホイップドコンパウンドクリームよりも乳風味の評価が劣り、常温流通用として難しい品質水準であり、総合評価はDであった。また、前記乳化剤Xの含量が0.01重量%と少ない起泡性水中油型乳化油脂組成物(製造例B4)を用いて得たホイップドコンパウンドクリーム(比較例Y4)は、保形性と離水耐性が不十分で、常温流通用として難しい品質水準であり、総合評価はDであった。
【0099】
(実施例X7)
表4に従い、生クリームの配合量を23重量部に変更し、マルトースの配合量を16重量部に変更した以外は実施例X1と同様にしてホイップドコンパウンドクリームを得て、保形性、離水耐性、日持ち、口溶け、乳風味の評価を実施し、それらの結果を表4にまとめた。
【0100】
【表4】
(比較例Y5)
表4に従い、生クリームの配合量を28重量部に変更し、マルトースの配合量を18重量部に変更した以外は実施例X1と同様にしてホイップドコンパウンドクリームを得て、保形性、離水耐性、日持ち、口溶け、乳風味の評価を実施し、それらの結果を表4にまとめた。
【0101】
(比較例Y6)
表4に従い、起泡性水中油型乳化油脂組成物A2を使用し、生クリームの配合量を3重量部に変更し、マルトースの配合量を9重量部に変更した以外は実施例X1と同様にしてホイップドコンパウンドクリームを得て、保形性、離水耐性、日持ち、口溶け、乳風味の評価を実施し、それらの結果を表4にまとめた。
【0102】
表4から明らかなように、起泡性コンパウンドクリーム全体中の起泡性水中油型乳化油脂組成物の含量が65重量%以上、起泡性コンパウンドクリームに含まれる油脂全体中の乳脂肪の含量が5~35重量%の範囲にある起泡性コンパウンドクリームをホイップして得たホイップドクリーム(実施例X1、X7)は、いずれも、保形性、離水耐性、日持ち、口溶け、乳風味の全ての評価項目で良好な結果であった。特に、起泡性コンパウンドクリームに含まれる油脂全体中の乳脂肪の含量が15~28重量%の範囲にある起泡性コンパウンドクリームをホイップして得たホイップドクリーム(実施例X1)は、総合評価がAで非常に良好であった。
一方、起泡性コンパウンドクリームに含まれる乳脂肪の含量が37.3重量%と多い起泡性コンパウンドクリームをホイップして得たホイップドクリーム(比較例Y5)は、保形性と離水耐性が不十分で、常温流通用として難しい品質水準であり、総合評価はDであった。また、起泡性コンパウンドクリームに含まれる乳脂肪の含量が3.9重量%と少ない起泡性コンパウンドクリームをホイップして得たホイップドクリーム(比較例Y6)は、乳風味が不十分で、常温流通用として難しい品質水準であり、総合評価はDであった。