(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155224
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】シャフトの取付部材、並びに、これを用いた吊り具及びハンギング装置
(51)【国際特許分類】
F16B 9/02 20060101AFI20221005BHJP
F16B 1/00 20060101ALI20221005BHJP
F16B 43/00 20060101ALI20221005BHJP
A47G 29/00 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
F16B9/02 A
F16B1/00 A
F16B43/00 Z
A47G29/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058625
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000109923
【氏名又は名称】トーソー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】伊東 栄治
【テーマコード(参考)】
3J023
3J034
3K100
【Fターム(参考)】
3J023AA01
3J023BA01
3J023BB01
3J023CA01
3J023CA11
3J023DA02
3J034AA02
3J034BA11
3J034CA01
3K100AA05
3K100AA16
3K100AB04
3K100AC01
3K100AC05
3K100AD05
3K100AE07
3K100AF04
3K100AH08
3K100AH30
3K100AJ03
(57)【要約】
【課題】垂下状態に支持されたシャフトに対して、横方向から負荷が加わった際には斜めに傾くことが可能でありながら、横方向からの負荷が無負荷状態の際には、シャフトの垂下状態が保たれ易いシャフトの取付部材、並びに、これを用いた吊り具及びハンギング装置を提供すること。
【解決手段】取付対象面3に取り付けるベース11と、ベース11に固定されて下方に突出し、下端に掛止部133を有する連結部材13と、上端に、掛止部133に引っ掛かる引掛け部123を有するとともに、下方で、シャフト2の一端を支持するソケット12と、を備え、ベース11とソケット12との間に、連結部材13が貫通した状態で環状の弾性部材14が介在している、シャフトの取付部材、並びに、これを用いた吊り具及びハンギング装置である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトを垂下状態で取付対象面に支持するシャフトの取付部材であって、
前記取付対象面に取り付けるベースと、
前記ベースに固定されて下方に突出し、下端に掛止部を有する連結部材と、
上端に、前記掛止部に引っ掛かる引掛け部を有するとともに、下方で、前記シャフトの一端を支持するソケットと、を備え、
前記ベースと前記ソケットとの間に、前記連結部材が貫通した状態で環状の弾性部材が介在している、シャフトの取付部材。
【請求項2】
前記ベースの下面には、前記連結部材を取り囲む、環状の押圧面が形成され、
前記シャフトが垂直に支持された状態における前記ソケットの上端には、前記引掛け部を取り囲む、環状の当接面が形成され、
前記押圧面と前記当接面との間に、直接または他の部材とともに前記弾性部材が挟み込まれている、請求項1に記載のシャフトの取付部材。
【請求項3】
前記引掛け部は、前記連結部材の前記掛止部以外の部位が貫通する開口であり、
前記掛止部は、前記引掛け部の開口よりも水平方向の径が大きくなっており、
前記引掛け部が前記掛止部に引っ掛かるように構成されている、請求項1または請求項2に記載のシャフトの取付部材。
【請求項4】
前記引掛け部の開口の内径が、下端から上端に向かうにしたがって漸次拡径するテーパ形状を有する、請求項3に記載のシャフトの取付部材。
【請求項5】
前記ソケットは、前記シャフトが嵌入される筒状部と、該筒状部の上端に位置し、前記開口及び前記当接面を備える上端部と、を有する、請求項3または4に記載のシャフトの取付部材。
【請求項6】
前記筒状部は、嵌入される前記シャフトに向けて穿たれ、かつ、内周面に雌ネジ溝が形成された、1つまたは2つ以上の孔部を有し、
前記孔部の雌ネジ溝と螺合する雄ネジ溝が形成された雄ネジを有し、
前記孔部に前記雄ネジが捻じ込まれ、前記筒状部に嵌入された前記シャフトの周面を当該雄ネジの先端が押圧することで、前記シャフトの一端を前記ソケットが支持する、請求項5に記載のシャフトの取付部材。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1に記載のシャフトの取付部材と、
前記取付部材に一端が支持されたシャフトと、を有し、
前記シャフトの他端及び/または中途に、物の引っ掛け用に供される吊り輪部が設けられている、吊り具。
【請求項8】
物の引っ掛け用に供されるハンガーパイプと、
請求項1~6のいずれか1に記載のシャフトの取付部材と、
前記取付部材に一端が支持されたシャフトと、
前記シャフトの下端及び/または中途に、前記ハンガーパイプを略水平に連結して支持するジョイントと、
を有するハンギング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、天井面の如き取付対象面に、シャフトを鉛直に支持するシャフトの取付部材、並びに、これを用いた吊り具及びハンギング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、天井等の取付対象面に一端が取り付けられて垂下したシャフトに対して、物干し竿等に代表されるハンガーパイプを略水平に支持するハンギング装置が知られている。また、取付対象面に取り付けられて垂下したシャフトの先端に環状の吊り輪部を備え、当該吊り輪部にハンガー等の吊掛可能な吊掛対象物を吊り掛けて用いる吊り具も知られている。これらのようなハンギング装置や吊り具におけるシャフトの一端は、何らかの取付部材によって取付対象面に取り付けられている。
【0003】
このとき、取付対象面に固定的に取付けられている取付部材に、シャフトが強固に固定されていると、垂下しているシャフトに横方向から外力が加わった際に、固定している天井面等の取付対象面や取付部材に負荷がかかってしまい、これらの劣化促進の原因になる場合がある。また、使用者は、なるべくぶつからない方がよいので、避けるよう神経を使う場合がある。
【0004】
これに対して、取付対象面に固定的に取付けられている取付部材に対して、シャフトを揺動自在に支持する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。取付対象面から揺動自在にシャフト(特許文献1においては「吊掛棒5」)が垂下した状態の場合には、そのシャフトの下端、あるいは、シャフトに支持されたハンガーパイプに、吊掛対象物(特許文献1においては「ドライハンガー11」)を吊り掛けようとした場合には、シャフト(あるいはさらに「ハンガーパイプ」)が揺れて安定せず、吊り掛け作業がし難い。また、シャフトに何らかの横方向からの力が加わることで、吊り掛けられた吊掛対象物が、シャフトごと(あるいはさらに「ハンガーパイプごと」)揺動し、周囲の壁や窓等にぶつかってしまう懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、上記の課題に鑑みて為されたものである。即ち、本発明は、垂下状態に支持されたシャフトに対して、横方向から負荷が加わった際には斜めに傾くことが可能でありながら、横方向からの負荷が無負荷状態の際には、シャフトの垂下状態が保たれ易いシャフトの取付部材、並びに、これを用いた吊り具及びハンギング装置を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、以下の本発明によって達成される。即ち、本発明のシャフトの取付部材は、シャフトを垂下状態で取付対象面に支持するシャフトの取付部材であって、
前記取付対象面に取り付けるベースと、
前記ベースに固定されて下方に突出し、下端に掛止部を有する連結部材と、
上端に、前記掛止部に引っ掛かる引掛け部を有するとともに、下方で、前記シャフトの一端を支持するソケットと、を備え、
前記ベースと前記ソケットとの間に、前記連結部材が貫通した状態で環状の弾性部材が介在している。
【0008】
本発明において、前記ベースの下面には、前記連結部材を取り囲む、環状の押圧面が形成され、
前記シャフトが垂直に支持された状態における前記ソケットの上端には、前記引掛け部を取り囲む、環状の当接面が形成され、
前記押圧面と前記当接面との間に、直接または他の部材とともに前記弾性部材が挟み込まれていてもよい。
【0009】
また、本発明において、前記引掛け部は、前記連結部材の前記掛止部以外の部位が貫通する開口であり、
前記掛止部は、前記引掛け部の開口よりも水平方向の径が大きくなっており、
前記引掛け部が前記掛止部に引っ掛かるように構成されていてもよい。
【0010】
また、本発明においては、前記引掛け部の開口の内径が、下端から上端に向かうにしたがって漸次拡径するテーパ形状を有することが好ましい。
さらに、本発明において、ソケットは、前記シャフトが嵌入される筒状部と、該筒状部の上端に位置し、前記開口及び前記当接面を備える上端部と、を有していてもよい。
【0011】
この場合に、前記筒状部は、嵌入される前記シャフトに向けて穿たれ、かつ、内周面に雌ネジ溝が形成された、1つまたは2つ以上の孔部を有し、
前記孔部の雌ネジ溝と螺合する雄ネジ溝が形成された雄ネジを有し、
前記孔部に前記雄ネジが捻じ込まれ、嵌入された前記シャフトの周面を当該雄ネジの先端が押圧することで、前記シャフトの一端を前記ソケットが支持するようにしてもよい。
【0012】
一方、本発明の吊り具は、以上説明した本発明のシャフトの取付部材と、
前記取付部材に一端が支持されたシャフトと、を有し、
前記シャフトの他端及び/または中途に、物の引っ掛け用に供される吊り輪部が設けられている。
【0013】
また、本発明のハンギング装置は、物の引っ掛け用に供されるハンガーパイプと、
以上説明した本発明のシャフトの取付部材と、
前記取付部材に一端が支持されたシャフトと、
前記シャフトの下端または中途に、前記ハンガーパイプを略水平に連結して支持するジョイントと、
を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、垂下状態に支持されたシャフトに対して、横方向から負荷が加わった際には斜めに傾くことが可能でありながら、横方向からの負荷が無負荷状態の際には、シャフトの垂下状態が保たれ易いシャフトの取付部材、並びに、これを用いた吊り具及びハンギング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態にかかるシャフトの取付部材及びこれに取り付けられたシャフトの正面図である。
【
図2】本発明の実施形態にかかるシャフトの取付部材の中心軸を含む平面による縦断面図である。
【
図3】本発明の実施形態にかかるシャフトの取付部材の構成部品を中心軸方向に分解した分解縦断面図である。
【
図4】本発明の実施形態にかかるシャフトの取付部材に取り付けられたシャフトに対して、横方向の外力が作用した状態を示す縦断面図であり、(a)は右から左方向への、(b)は左から右方向への、それぞれ外力が作用した状態である。
【
図5】本発明の実施形態にかかるシャフトの取付部材を用いた吊り具の例を示す正面図である。
【
図6】本発明の実施形態にかかるシャフトの取付部材を用いた吊り具の中心軸を含む平面による縦断面図である。
【
図7】本発明の実施形態にかかる取付部材を用いたハンギング装置の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
図1は、本発明の実施形態にかかるシャフトの取付部材及びこれに取り付けられたシャフトの正面図である。また、
図2は、本発明の実施形態にかかるシャフトの取付部材の中心軸を含む平面による縦断面図である。さらに、
図3は、本発明の実施形態にかかるシャフトの取付部材の構成部品を中心軸方向に分解した分解縦断面図である。
【0017】
なお、本実施形態において、上下とは、重力方向における上下を意味し、「水平」あるいは「水平面」といった場合には、重力方向と直交する平面を意味する。ただし、「水平」や「水平面」については、重力方向に対して正確に垂直である必要は無く、略水平と云える範疇は勿論、ある程度斜めの面であっても、本発明を実現し得る程度の傾きであれば、そのような傾斜面をも含む概念とする。
【0018】
本実施形態にかかるシャフトの取付部材(以下、単に「取付部材」と称する場合がある。)1は、シャフト2を垂下状態で取付対象面の一例である天井面3に支持するものである。なお、本発明において、取付対象面としては、天井面に限定されるものではなく、例えば、構造物の梁や鴨居、屋根裏、家具内部の天面等、シャフトを支持可能な部材や部位における、下方を向く水平面であればよい。
【0019】
図1~
図3に示すように、本実施形態にかかる取付部材1は、具体的には、天井面3に取り付けるベース11と、ベース11に固定されて下方に突出するボルト(本発明における「連結部材」)13と、シャフト2の一端(上端)を支持するソケット12と、を備える。
【0020】
ベース11は、円盤状の基台111とその同心上で下方に向けて立ち上がる円柱部112と、を有する。基台111には、中心から対称の位置に2つのネジ穴115が設けられており、ここに不図示の木ネジが貫通して天井面3に捻じ込まれて、ベース11が天井面3に固定され、取り付けられる。
【0021】
基台111の中心には、雌ネジ溝が設けられたボルト孔114が形成されている。基台111におけるボルト孔114の周囲は、下方に向けて円形のリブ116が突出しており、ベース11の下面におけるリブ116と円柱部112との間には、円環状の水平面である円環面(後述するように、本発明における「押圧面」に相当。)113が形成されている。
【0022】
ベース11の円柱部112内には、リング状で厚みのある弾性部材14が、2つのワッシャ15a,15bで挟み込まれた状態で収容されている。この内、一番上側に位置するワッシャ15aは、リブ116、円環面113及び円柱部112で形成された円環状の溝に嵌り込み、円環面113にワッシャ15aの上面が当接している。
【0023】
弾性部材14は、天然ゴム、合成ゴム、シリコーンゴム等のゴム、エラストマ等の弾性を有する材料でリング状に形成された物が好適に用いられる。ただし、ここで用いる弾性部材としては、例えば、リング状のコイルバネや、リング状に形成された板バネ等であっても構わない。
【0024】
ベース11の下方には、ソケット12が位置している。ソケット12は、下方に向いた差込穴126を有する筒状の筒状部121と、筒状部121の上端を閉塞する位置にある上端部122と、からなる。上端部122には、その中心に中心軸Xを中心とする開口123が設けられており、筒状部121の上端は完全には閉塞されていない。上端部122における開口123の周りには(開口123を取り囲んで)、上端面(後述するように、本発明における「当接面」に相当。)127が形成されている。
【0025】
筒状部121は、さらに、その外径が大きい下方側の大外径部121aと、大外径部121aから連なり上端部122に繋がる外径が小さい小外径部121bと、に分かれている。
大外径部121aの内側は、差込穴126と同径の内周面121a′が上方まで延び、段差部121c′を介して、小外径部121bの内側まで続く縮内径面121b′へと連なっている。シャフト2の一端は、ソケット12における差込穴126から差し込まれて内周面121a′に嵌入し、段差部121c′で止まるようになっている。即ち、この段差部121c′は、シャフト2の位置決め手段となっている。
【0026】
筒状部121の大外径部121aには、内周面に雌ネジ溝が形成された、2つの孔部124a,124bを有する。孔部124a,124bは、嵌入されるシャフト2に向けて穿たれている。この孔部124a,124bには、孔部124a,124bに形成された雌ネジ溝と螺合する雄ネジ溝が形成された雄ネジ125a,125bが、それぞれ捻じ込まれている。
【0027】
ボルト13は、雄ネジ溝が形成された軸部132と、軸部132から径方向に張り出した頭部133とからなる。また、頭部133の下端面には、六角棒スパナの先が嵌合する六角穴131が設けられている。即ち、ボルト13は、「六角穴付きボルト」あるいは「内六角ボルト」と称される物である。
【0028】
図3に示されるように、ボルト13は、軸部132に、ワッシャ16、ソケット12の開口123、ワッシャ15b、弾性部材14、ワッシャ15aを下からこの順で貫通した状態で、ボルト孔114に捻じ込まれる。ボルト13の頭部133及びワッシャ16は、水平方向の径が、ソケット12の開口123よりも大きくなっており、ボルト13の軸部132は、開口123よりも小さくなっている。そのため、ソケット12の開口123がボルト13の頭部133及びワッシャ16に引っ掛かるように構成されている。したがって、ソケット12の開口123は、本発明における引掛け部に相当し、ボルト13の頭部133及びワッシャ16は掛止部に相当する。
【0029】
ボルト13の軸部132に形成された雄ネジが、ボルト孔114に形成された雌ネジに捻じ込まれることで、ボルト13の軸部132に開口123が引っ掛かった状態のソケット12が、ベース11に固定される。このとき、ベース11の下面に形成された、ボルト13を取り囲む、円環面(押圧面)113と、ソケット12の上端122に形成された、開口(引掛け部)123を取り囲む、環状の上端面(当接面)127との間に、2つのワッシャ15a,15bとともに弾性部材14が挟み込まれている。
【0030】
ボルト13がボルト孔114に捻じ込まれ、弾性部材14が挟み込まれた状態でベース11にソケット12が取り付けられて、本実施形態にかかる取付部材1が完成する。この取付部材1は、ベース11を取付対象面としての天井面3等に固定した上で、ソケット12にシャフト2を支持させて使用される。
【0031】
ボルト13の頭部(掛止部)133は、ソケット12の筒状部121における縮内径面121b′の内側の空間内に収容された状態となり、後にソケット12における内周面121a′に嵌入されたシャフト2の上端部24が頭部133と干渉しないようになっている。なお、パイプ状のシャフト2の上端部24は開口しており、軸線X方向において、当該上端部24の位置とボルト13の頭部133の位置とが重なっていても、多少であれば干渉が回避できる。勿論、シャフト2の上端部24が閉塞している場合は、この限りではない。
【0032】
シャフト2の一端が、ソケット12における差込穴126から差し込まれて内周面121a′に嵌入された状態で、雄ネジ125a,125bが孔部124a,124bに捻じ込まれると、その先端が内周面121a′から突出し、シャフト2の周面を押圧する。雄ネジ125a,125bの当該押圧力によって、シャフト2の一端がソケット12に固定され支持される。
【0033】
シャフト2は、直管のパイプ状の部材である直管部21と、上端部24の少し手前で全周にわたって陥没してくびれたくびれ部22と、くびれ部22に連なり上端部24まで直管部21と同径の首部23と、を有する。ソケット12の内周面121a′に嵌入されたシャフト2の上端部24が段差部121c′に当接して位置決めされると、くびれ部22が雄ネジ125aの先端と対向する位置に来るようになっている。
【0034】
したがって、孔部124aに捻じ込まれた雄ネジ125aの先端は、このくびれ部22に嵌り込むように突出してシャフト2を押圧し、上下動が生じないようにしっかりとシャフト2が固定される。一方、孔部124bに捻じ込まれた雄ネジ125bの先端は、シャフト2の直管部21の外周面に突出して、シャフト2を押圧して押さえ込んでいる。即ち、雄ネジ125aによってシャフト2の上下動を規制しつつ、雄ネジ125a及び雄ネジ125bによって、シャフト2全体を固定し支持している。
【0035】
図1及び
図2は、本実施形態の取付部材1にシャフト2が取り付けられて、垂下状態に支持された平常時を示すものである。例えば、後述する吊り具やハンギング装置として使用した際、物を吊り下げるときに前後方向に押したり引いたりする力が加わり、シャフト2に横方向の外力が作用する場合がある。本実施形態の取付部材1は、垂下状態に支持されたシャフト2に対して、横方向から負荷が加わった際には斜めに傾くことが可能となっている。
【0036】
以下、シャフト2が斜めに傾くことが可能となる本実施形態にかかる作用乃至効果について、
図4を用いて説明する。
図4は、本実施形態にかかるシャフトの取付部材1に取り付けられたシャフト2に対して、横方向の外力が作用した(横方向から負荷が加わった)状態を示す縦断面図であり、(a)は右から左方向への、(b)は左から右方向への、それぞれ外力が作用した状態を示すものである。
【0037】
右から左方向への外力が作用した場合には、
図4(a)に示すように、シャフト2が左方向に押されて、斜めに傾こうとする。シャフト2が固定された取付部材1も、シャフト2とともに同方向に傾こうとするが、取付部材1はソケット12に設けられた開口123が引掛け部となり、ここを基点としてその左側の上端面(当接面)127が上方に迫り出し、ワッシャ15aを介して弾性部材14を押圧する。開口123の左側において、弾性部材14は、ワッシャ15bを介してベース11下面の円環面(押圧面)113を押圧しつつ、自身は圧縮する。この弾性部材14の圧縮による弾性力によって、右から左方向への外力が減衰する。
【0038】
よって、右から左方向への外力が作用した場合、以上の作用により、本実施形態においてシャフト2の軸は、
図4(a)に示すように、垂下状態の軸線Xから傾いた状態の軸線Xaの状態まで、斜めに傾くことができる。そのため、横方向からの負荷が軽減されて、その影響を抑えることができる。
そして、作用していた外力が解消され、横方向からの負荷が無負荷状態となった際には、弾性部材14の弾性力によって弾性部材14の形状が復元し、シャフト2が垂下状態の軸線Xの位置に戻る。
【0039】
一方、左から右方向への外力が作用した場合には、以上の
図4(a)に示す場合と逆方向へシャフト2が斜めに傾くことができる。詳細な作用は省略するが、
図4(b)に示すように、開口123の右側の上端面(当接面)127が上方に迫り出し、弾性部材14が押圧され、ベース11下面の円環面(押圧面)113を押圧しつつ、自身は圧縮する。この弾性部材14の圧縮による弾性力によって、左から右方向への外力が減衰する。
【0040】
よって、左から右方向への外力が作用した場合にも、本実施形態においてシャフト2の軸は、
図4(b)に示すように、垂下状態の軸線Xから傾いた状態の軸線Xbの状態まで、斜めに傾くことができ、横方向からの負荷が軽減されて、その影響を抑えることができる。
そして、作用していた外力が解消され、横方向からの負荷が無負荷状態となった際には、弾性部材14の弾性力によって弾性部材14の形状が復元し、シャフト2が垂下状態の軸線Xの位置に戻る。
【0041】
なお、
図4による説明においては、便宜的に、左右に180°異なる方向(反対方向)からの横方向の外力が作用した場合を例示して説明しているが、これらに限られない。即ち、円環面113、上端面(当接面)127及び弾性部材14等が円環状乃至円形状である本実施形態の取付部材1においては、シャフト2が360°の何れの横方向からの外力を受けても、同様に、シャフト2の軸は、斜めに傾くことができる。
【0042】
したがって、例えば、人がぶつかる等シャフト2に横方向の外力が作用しても、シャフト2の軸が斜めに傾き、外力の作用が緩和される。そして、作用していた外力が解消され、横方向からの負荷が無負荷状態となった後には、弾性部材14の弾性力によって自身の形状が復元し、シャフト2が垂下状態に戻る。
【0043】
垂下状態の軸線Xと、傾いた状態の軸線Xaと、の成す角、即ち、シャフト2の軸の傾斜角θ(
図4(a)及び(b)参照)の最大値は、弾性部材14の厚さや弾性力によって決まる弾性部材14の変形量や、ベース11の円柱部112の内径の大きさに対する、ソケット12の小外径部121bの外径の余裕等の各種条件によって決まってくる。弾性部材14の変形量を大きくしたり、円柱部112の内径の大きさに対する小外径部121bの外径の余裕を大きく取ることで、シャフト2の軸の傾斜角θの最大値を大きくすることができる。
【0044】
このシャフト2の軸の傾斜角θの最大値を大きくすることで、横方向からの外力に対する耐性を強くすることができる。シャフト2の軸の傾斜角θの最大値を大きくしようとすると、取付部材1の大きさが大きくなりやすいので、実用的な範囲で適宜設計することが好ましい。シャフト2の軸の傾斜角θの最大値に好ましい範囲や制限はないが、おおよそ、1°~20°程度の範囲から選択される。
【0045】
また、本実施形態では、ソケット12の引掛け部に相当する開口123の内径が、下端から上端に向かうにしたがって漸次拡径するテーパ形状を有している。そのため、
図4に示されるように、ソケット12全体が斜めに傾いた際にも開口123の内周面がボルト13の軸部132に干渉するまでの余裕が広がり、シャフト2の軸の傾斜角θの最大値を大きくすることができる。開口123の内面のテーパ角度に制限はないが、例えば、1°~30°程度の範囲から選択される。
【0046】
本実施形態にかかるシャフトの取付部材1においては、シャフト2が脱着自在(取り付け、取り外しが自在)になっている。したがって、同じ取付部材1を用意しておく(取付対象面に取付部材を予め取り付けておくことと、販売する商品のラインナップに、シャフトを含まない取付部材の単体を用意すること、さらには、単一の取付部材と異なる種類のシャフトとのセットを複数種類用意すること、の全ての場合を含む。)だけで、長さや形状等の種類の異なるシャフトと組み合わせたり、変更したりすることが容易である。
【0047】
以上説明した本実施形態にかかる取付部材1は、例えば、下端や中途にリング状の吊り輪部を設けたシャフトを天井面3等に取り付けることで、それ自体を吊り具として用いることができる。
図5は、本実施形態にかかる取付部材1を用いた吊り具の例を示す正面図である。また、
図6は、本発明の実施形態にかかる取付部材1を用いた吊り具の中心軸を含む平面による縦断面図である。
【0048】
図5及び
図6に示されるように、取付部材1と、取付部材1に一端が支持されたシャフト2と、を有し、シャフト2の他端(下端)に、物の引っ掛け用に供される吊り輪部7が設けられることで、吊り具として用いることができる。
吊り輪部7は、筒状の固定部71と、その下端に固定された環状部72とからなる。固定部71の上部は開口しており、シャフト2の下端が差し込まれて、閉塞された下端で止まり、位置決めされるようになっている。
【0049】
固定部71は、ソケット12における大外径部121aと同様、内周面に雌ネジ溝が形成された、2つの孔部714a,714bを有する。孔部714a,714bは、固定部71に嵌入されるシャフト2に向けて穿たれている。この孔部714a,714bには、孔部714a,714bに形成された雌ネジ溝と螺合する雄ネジ溝が形成された雄ネジ715a,715bが、それぞれ捻じ込まれている。
【0050】
シャフト2の下端近傍には、上端近傍と同様、全周にわたって陥没してくびれたくびれ部25が形成され、くびれ部25に連なり下端までは、直管部21と同径の首部26となっている。固定部71に嵌入されたシャフト2の下端が、閉塞された下端に当接して位置決めされると、くびれ部25が雄ネジ715aの先端と対向する位置に来るようになっている。
【0051】
その状態で、雄ネジ715a,715bが孔部714a,714bに捻じ込まれると、その先端が固定部71の内周面から突出し、シャフト2の周面を押圧する。雄ネジ715a,715bの当該押圧力によって、シャフト2の下端に固定部71が固定され、シャフト2に吊り輪部7が設けられる。
【0052】
このとき、孔部714aに捻じ込まれた雄ネジ715aの先端は、シャフト2のくびれ部25に嵌り込むように突出してシャフト2を押圧し、上下動が生じないようにしっかりと固定部71が固定される。一方、孔部714bに捻じ込まれた雄ネジ715bの先端は、シャフト2の直管部21の外周面に突出して、シャフト2を押圧して押さえ込んでいる。即ち、雄ネジ715aによって吊り輪部7の上下動を規制しつつ、雄ネジ715a及び雄ネジ715bによって、吊り輪部7全体をシャフト2に固定している。
【0053】
以上のように構成された吊り具は、シャフト2に設けられた吊り輪部7の環状部72に、例えば、衣類や洗濯物のハンガー、あるいは、
図6に示されるように物干し竿8の一端等を吊り掛けて、用いることができる。物干し竿8を吊り掛けて用いる場合には、当該吊り具をもう一つ用意して一対とし、物干し竿8の両端を吊り輪部7の環状部72に吊り掛けて橋渡すようにして利用すればよい。
【0054】
図5及び
図6の例の吊り具によれば、吊り掛け対象物である衣類や物干し竿8、あるいは、シャフト2に、横方向の外力が作用した際には、シャフト2が斜めに傾くことが可能となっている。そのため、吊り具全体が天井面等の取付対象面に対して斜めに撓ることで、横方向からの負荷が軽減されて、その影響を抑えることができる。
【0055】
そして、作用していた外力が解消され、横方向からの負荷が無負荷状態となった際には、取付部材1に内蔵された弾性部材14の弾性力によって弾性部材14の形状が復元し、シャフト2が垂下状態の位置に戻る。そのため、吊り具の全体についても、正常な形状(全体が撓っていない形状)に戻る。
【0056】
なお、
図5及び
図6の例の吊り具において、吊り輪部7は、シャフト2の下端にのみ設けられているが、本発明のシャフトの取付部材を用いた吊り具としては、これに限定されない。即ち、吊り輪部が、シャフトの下端と、1箇所または2箇所以上の中途との計2箇所以上に設けられていても構わないし、1箇所または2箇所以上の中途にのみ設けられていても構わない。
【0057】
さらに、本実施形態にかかる取付部材1は、シャフト2とともに、いわゆるハンギング装置の一部として、ハンガーパイプを支持する構成部材として用いることができる。
図7は、本実施形態にかかる取付部材1を用いたハンギング装置100の例を示す斜視図である。
【0058】
図7に示されるように、ハンギング装置100は、物の引っ掛け用に供されるハンガーパイプ5と、本実施形態にかかる取付部材1が左右一対(2個)と、それぞれの取付部材1に一端が支持されたシャフト2が一対(2本)と、それぞれのシャフト2の下端に、ハンガーパイプ5の端部を支持するジョイント4が一対(2個)と、を有する。一対のジョイント4によって、ハンガーパイプ5は、その左右の両端が支持されて、略水平に保持されている。
一対、即ち2個(本)の取付部材1、シャフト2及びジョイント4は、それぞれ同一の構成の物である。したがって、以下、便宜的に、1つの物について説明する。
【0059】
取付部材1は、ベース11が木ネジ等により取付対象面である天井面3に取り付けられるとともに、ソケット12にシャフト2の一端が嵌入されてこれを支持している。即ち、本実施形態にかかる取付部材1によって、シャフト2が、天井面3に垂下状態で取り付けられている。
【0060】
ジョイント4としては、特に制限はなく、例えば、シャフト2の下端が嵌入する上向きのソケット部と、ハンガーパイプ5の端部が嵌入する横向きのソケット部とを備え、それぞれの抜け止めのための手段、例えばネジ止め手段を有する構成のものを挙げることができる。
【0061】
なお、
図7の例のハンギング装置100において、ジョイント4は、シャフト2の下端のみに設けられた例を挙げているが、これに限定されるものではない。即ち、ジョイントは、例えば、シャフト2の中途に設けられて、そこにハンガーパイプを支持するようにしてもよいし、中途の1箇所または2箇所以上と下端に合計複数個設けて、複数本のハンガーパイプを支持するようにしてもよい。その場合、中途に設けられるジョイントと、下端に設けられるジョイントとは、形状、構造等が異なっていて、その機能に応じた物になっている。
【0062】
ハンガーパイプ5は、上下面に丸みを有する断面略長方形のパイプ状直管である。このハンガーパイプ5に、
図7の例における植木鉢6等の吊り掛け対象物が吊り掛けられて、ハンギング装置として用いられる。ハンガーパイプ5は、例えば、アルミニウムや樹脂等の材料で成形されたものである。
ハンガーパイプ5の周面には、吊り掛け対象物が滑ったり外れたりし難いように、滑り止め加工が施されていてもよい。
【0063】
なお、
図7の例のハンギング装置100では、ハンガーパイプ5として、意匠性と実用性の高い断面略長方形のものを例示しているが、一般的な物干し竿のような断面円形の直管をハンガーパイプとしても構わないし、さらにはパイプ状でもない中実の棒(例えば木製の棒材)をハンガーパイプとしても構わない(即ち、本発明において「ハンガーパイプ」の概念には、忠実の物を含むこととする。)。
【0064】
図7の例のハンギング装置100によれば、植木鉢6等の吊り掛け対象物、ハンガーパイプ5、あるいは、シャフト2に、横方向の外力が作用した際には、シャフト2が斜めに傾くことが可能となっている。そのため、ハンギング装置100全体が天井面3の取付箇所に対して斜めに撓ることで、横方向からの負荷が軽減されて、その影響を抑えることができる。
【0065】
そして、作用していた外力が解消され、横方向からの負荷が無負荷状態となった際には、取付部材1に内蔵された弾性部材14の弾性力によって弾性部材14の形状が復元し、シャフト2が垂下状態の位置に戻る。そのため、ハンギング装置100全体についても、正常な形状(全体が撓っていない形状)に戻る。
【0066】
以上、本発明のシャフトの取付部材及びこれを用いたハンギング装置について、好ましい実施形態を挙げて説明したが、本発明のシャフトの取付部材及びこれを用いたハンギング装置は上記の実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、上記の実施形態においては、取付部材1に対するシャフト2の固定方法として、2本の雄ネジ125a,125bによりシャフト2の周面を押圧して固定する例を挙げているが、従来公知の如何なる態様であっても構わない。
【0067】
また、上記の実施形態においては、ベース11の円環面(押圧面)113と、ソケット12の上端面(当接面)127との間に、弾性部材14が、他の部材である2つのワッシャ15a,15bとともに挟み込まれている例を挙げているが、ベースの押圧面とソケットの当接面との間に介在する弾性部材は、単独で、これらの間に直接挟み込まれていてもよい。
【0068】
その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明のシャフトの取付部材、並びに、これを用いた吊り具及びハンギング装置を適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0069】
1…取付部材(シャフトの取付部材)、2…シャフト、3…天井面(取付対象面)、4…ジョイント、5…ハンガーパイプ、6…植木鉢(吊り掛け対象物)、7…吊り輪部、8…物干し竿、11…ベース、12…ソケット、13…ボルト(連結部材)、14…弾性部材、15a,15b…ワッシャ、16…ワッシャ(掛止部)、21…直管部、22…くびれ部、23…首部、24…上端部、25…くびれ部、26…首部、71…固定部71、72…環状部72、100…ハンギング装置、111…基台、112…円柱部、113…円環面(押圧面)、114…ボルト孔、115…ネジ穴、116…リブ、121…筒状部、121a…大外径部、121b…小外径部、121a′…内周面、121b′…縮内径面、121c′…段差部、122…上端部、123…開口(引掛け部)、124a,124b…孔部、125a,125b…雄ネジ、126…差込穴、127…上端面(当接面)、131…六角穴、132…軸部、133…頭部(掛止部)、714a,714b…孔部、715a,715b…雄ネジ