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特開2022-155225シャフトの取付部材、並びに、これを用いた吊り具及びハンギング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155225
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】シャフトの取付部材、並びに、これを用いた吊り具及びハンギング装置
(51)【国際特許分類】
   F16B 9/02 20060101AFI20221005BHJP
   F16B 1/00 20060101ALI20221005BHJP
   F16C 11/08 20060101ALI20221005BHJP
   F16C 11/10 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
F16B9/02 C
F16B1/00 A
F16B9/02 K
F16C11/08 Z
F16C11/10 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058626
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000109923
【氏名又は名称】トーソー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 智
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 俊晴
【テーマコード(参考)】
3J023
3J105
【Fターム(参考)】
3J023AA01
3J023BA02
3J023BB01
3J023CA02
3J023CA11
3J023CA12
3J023DA02
3J023DA06
3J105AA24
3J105CB03
3J105CB66
3J105CB75
3J105CC03
3J105CD06
3J105CF04
3J105CF12
3J105DA15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】横方向からの負荷に対してシャフトが傾くことが可能で、無負荷ではシャフトの垂下状態が保たれ易いシャフトの取付部材、並びに、吊り具及びハンギング装置を提供する。
【解決手段】取付対象面3に取り付けられるベース11と、シャフト2の一端を下側で支持するジョイント12と、ベース11の下面113,114よりも下方の位置を支点Oとしてシャフト2及びジョイント12が揺動可能となるように、ジョイント12とベース11とを接続する接続部13,15と、軸部141,143の軸がジョイント12の揺動に追随して傾くとともに、曲面状の先端部142がベース11の下面113,114に付勢された状態で当接するピボット14と、を備え、ベース11における先端部142が当接する箇所に、先端部142が嵌入する凹部114が設けられている、シャフトの取付部材、並びに、これを用いた吊り具及びハンギング装置である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトを垂下状態で取付対象面に支持するシャフトの取付部材であって、
前記取付対象面に取り付けられるとともに、下方を向く下面を有するベースと、
前記シャフトの一端を下側で支持するジョイントと、
前記ベースの前記下面よりも下方の位置を支点として前記シャフト及び前記ジョイントが揺動可能となるように、前記ジョイントと前記ベースとを接続する接続部と、
軸部及び曲面状の先端部を有し、前記軸部の軸が前記ジョイントの揺動に追随して傾くとともに、前記先端部が前記ベースの前記下面に付勢された状態で当接するピボットと、
を備え、
前記下面における前記先端部が当接する箇所に、当該先端部が嵌入する凹部が設けられている、シャフトの取付部材。
【請求項2】
前記接続部が、
前記ジョイントの上側に固定され、当該ジョイントから軸方向の上側に向けて突出する円柱部、及び、該円柱部に連なり、外周面の一部が、前記円柱部の中心軸と重なる一点を中心点とする球体状となる曲面張出部、を有するヒンジと、
前記曲面張出部の外周面の球体の直径よりも小さく前記円柱部の径よりも大きい径の円形開口部を有し、該円形開口部に前記円柱部を嵌入させて、前記円形開口部の一側に前記曲面張出部を、他側に前記円柱部を、それぞれ位置させた状態で前記ヒンジを保持するとともに、前記ベースに前記一側を向けた状態で固定されるヒンジカバーと、
を含んで構成される、請求項1に記載のシャフトの取付部材。
【請求項3】
前記ヒンジが、軸方向の上端から下方に陥没する穴部を有し、
前記ピボットにおける前記軸部が、前記穴部に収容されている、請求項2に記載のシャフトの取付部材。
【請求項4】
前記ピポットの前記軸部が嵌挿され、圧縮された状態で前記穴部に収容されるコイルバネを備え、
前記ピポットの前記先端部を前記下面に付勢する付勢力が、前記コイルバネの弾性力によるものである、請求項3に記載のシャフトの取付部材。
【請求項5】
前記穴部が、軸方向における上方側の大内径部と、該大内径部の下方側で当該大内径部よりも内径が小さい小内径部と、前記大内径部と前記小内径部との間を繋ぐ内径段差部と、を有し、
前記ピボットの前記軸部が、軸方向における上方側で前記大内径部内に嵌入可能かつ軸方向への移動が可能な大外径部と、該大外径部の下方側で前記小内径部内に嵌入可能かつ軸方向への移動が可能な小外径部と、前記大外径部と前記小外径部との間を繋ぐ外径段差部と、を有し、
前記コイルバネに、前記小外径部が嵌挿され、
前記コイルバネの一端が、前記外径段差部に当接し、他端が、前記内径段差部に当接している、請求項4に記載のシャフトの取付部材。
【請求項6】
前記ジョイントは、筒状であり、一方の開口から前記円柱部が嵌入されて前記ヒンジを固定し、他方の開口から前記シャフトの一端が嵌入されてこれを支持する、請求項2~5のいずれか1に記載のシャフトの取付部材。
【請求項7】
前記ジョイントは、嵌入される前記シャフトに向けて穿たれ、かつ、内周面に雌ネジ溝が形成された、1つまたは2つ以上の孔部を有し、
前記孔部の雌ネジ溝と螺合する雄ネジ溝が形成された雄ネジを有し、
前記孔部に前記雄ネジが捻じ込まれ、嵌入された前記シャフトの周面を当該雄ネジの先端が押圧することで、前記シャフトの一端を前記ジョイントが支持する、請求項6に記載のシャフトの取付部材。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1に記載のシャフトの取付部材と、
前記取付部材に一端が支持されたシャフトと、を有し、
前記シャフトの他端及び/または中途に、物の引っ掛け用に供される吊り輪部が設けられている、吊り具。
【請求項9】
物の引っ掛け用に供されるハンガーパイプと、
請求項1~8のいずれか1に記載のシャフトの取付部材と、
前記取付部材に一端が支持されたシャフトと、
前記シャフトの下端または中途に、前記ハンガーパイプを略水平に連結して支持する連結部材と、
を有するハンギング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、天井面の如き取付対象面に、シャフトを鉛直に支持するシャフトの取付部材、並びに、これを用いた吊り具及びハンギング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、天井等の取付対象面に一端が取り付けられて垂下したシャフトに対して、物干し竿等に代表されるハンガーパイプを略水平に支持するハンギング装置が知られている。また、取付対象面に取り付けられて垂下したシャフトの先端に環状の吊り輪部を備え、当該吊り輪部にハンガー等の吊掛可能な吊掛対象物を吊り掛けて用いる吊り具も知られている。これらのようなハンギング装置や吊り具におけるシャフトの一端は、何らかの取付部材によって取付対象面に取り付けられている。
【0003】
このとき、取付対象面に固定的に取付けられている取付部材に、シャフトが強固に固定されていると、垂下しているシャフトに横方向から外力が加わった際に、固定している天井面等の取付対象面や取付部材に負荷がかかってしまい、これらの劣化促進の原因になる場合がある。また、使用者は、なるべくぶつからない方がよいので、避けるよう神経を使う場合がある。
【0004】
これに対して、取付対象面に固定的に取付けられている取付部材に対して、シャフトを揺動自在に支持する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。取付対象面から揺動自在にシャフト(特許文献1においては「吊掛棒5」)が垂下した状態の場合には、そのシャフトの下端、あるいは、シャフトに支持されたハンガーパイプに、吊掛対象物(特許文献1においては「ドライハンガー11」)を吊り掛けようとした場合には、シャフト(あるいはさらに「ハンガーパイプ」)が揺れて安定せず、吊り掛け作業がし難い。また、シャフトに何らかの横方向からの力が加わることで、吊り掛けられた吊掛対象物が、シャフトごと(あるいはさらに「ハンガーパイプごと」)揺動し、周囲の壁や窓等にぶつかってしまう懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-225498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、上記の課題に鑑みて為されたものである。即ち、本発明は、垂下状態に支持されたシャフトに対して、横方向から負荷が加わった際には斜めに傾くことが可能でありながら、横方向からの負荷が無負荷状態の際には、シャフトの垂下状態が保たれ易いシャフトの取付部材、並びに、これを用いた吊り具及びハンギング装置を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、以下の本発明によって達成される。即ち、本発明のシャフトの取付部材はシャフトを垂下状態で取付対象面に支持するシャフトの取付部材であって、
前記取付対象面に取り付けられるとともに、下方を向く下面を有するベースと、
前記シャフトの一端を下側で支持するジョイントと、
前記ベースの前記下面よりも下方の位置を支点として前記シャフト及び前記ジョイントが揺動可能となるように、前記ジョイントと前記ベースとを接続する接続部と、
軸部及び曲面状の先端部を有し、前記軸部の軸が前記ジョイントの揺動に追随して傾くとともに、前記先端部が前記ベースの前記下面に付勢された状態で当接するピボットと、
を備え、
前記下面における前記先端部が当接する箇所に、当該先端部が嵌入する凹部が設けられている。
【0008】
本発明において、前記接続部としては、
前記ジョイントの上側に固定され、当該ジョイントから軸方向の上側に向けて突出する円柱部、及び、該円柱部に連なり、外周面の一部が、前記円柱部の中心軸と重なる一点を中心点とする球体状となる曲面張出部、を有するヒンジと、
前記曲面張出部の外周面の球体の直径よりも小さく前記円柱部の径よりも大きい径の円形開口部を有し、該円形開口部に前記円柱部を嵌入させて、前記円形開口部の一側に前記曲面張出部を、他側に前記円柱部を、それぞれ位置させた状態で前記ヒンジを保持するとともに、前記ベースに前記一側を向けた状態で固定されるヒンジカバーと、
を含んで構成されていてもよい。
【0009】
この場合において、前記ヒンジが、軸方向の上端から下方に陥没する穴部を有し、
前記ピボットにおける前記軸部が、前記穴部に収容されていてもよく、
さらに、前記ピポットの前記軸部が嵌挿され、圧縮された状態で前記穴部に収容されるコイルバネを備え、
前記ピポットの前記先端部を前記下面に付勢する付勢力が、前記コイルバネの弾性力によるものであってもよい。
【0010】
また、この場合において、前記穴部が、軸方向における上方側の大内径部と、該大内径部の下方側で当該大内径部よりも内径が小さい小内径部と、前記大内径部と前記小内径部との間を繋ぐ内径段差部と、を有し、
前記ピボットの前記軸部が、軸方向における上方側で前記大内径部内に嵌入可能かつ軸方向への移動が可能な大外径部と、該大外径部の下方側で前記小内径部内に嵌入可能かつ軸方向への移動が可能な小外径部と、前記大外径部と前記小外径部との間を繋ぐ外径段差部と、を有し、
前記コイルバネに、前記小外径部が嵌挿され、
前記コイルバネの一端が、前記外径段差部に当接し、他端が、前記内径段差部に当接していてもよい。
【0011】
また、本発明において、前記接続部が、前記ヒンジと前記ヒンジカバーとを含んで構成される場合には、前記ジョイントが筒状であり、一方の開口から前記円柱部が嵌入されて前記ヒンジを固定し、他方の開口から前記シャフトの一端が嵌入されてこれを支持する構成であってもよい。
【0012】
この場合に、前記ジョイントは、嵌入される前記シャフトに向けて穿たれ、かつ、内周面に雌ネジ溝が形成された、1つまたは2つ以上の孔部を有し、
前記孔部の雌ネジ溝と螺合する雄ネジ溝が形成された雄ネジを有し、
前記孔部に前記雄ネジが捻じ込まれ、嵌入された前記シャフトの周面を当該雄ネジの先端が押圧することで、前記シャフトの一端を前記連結部材が支持するようにしてもよい。
【0013】
一方、本発明の吊り具は、以上説明した本発明のシャフトの取付部材と、
前記取付部材に一端が支持されたシャフトと、を有し、
前記シャフトの他端及び/または中途に、物の引っ掛け用に供される吊り輪部が設けられている。
【0014】
また、本発明のハンギング装置は、物の引っ掛け用に供されるハンガーパイプと、
以上説明した本発明のシャフトの取付部材と、
前記取付部材に一端が支持されたシャフトと、
前記シャフトの下端または中途に、前記ハンガーパイプを略水平に連結して支持する連結部材と、
を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、垂下状態に支持されたシャフトに対して、横方向から負荷が加わった際には斜めに傾くことが可能でありながら、横方向からの負荷が無負荷状態の際には、シャフトの垂下状態が保たれ易いシャフトの取付部材、並びに、これを用いた吊り具及びハンギング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態にかかるシャフトの取付部材及びこれに取り付けられたシャフトの正面図である。
図2】本発明の実施形態にかかるシャフトの取付部材の構成部品を中心軸方向に分解した分解斜視図である。
図3】本発明の実施形態にかかるシャフトの取付部材の中心軸を含む平面による拡大縦断面図である。
図4】本発明の実施形態にかかるシャフトの取付部材の構成部品を中心軸方向に分解した分解縦断面図である。
図5】本発明の実施形態にかかるシャフトの取付部材に取り付けられたシャフトに対して、横方向の外力が作用した状態を示す縦断面図であり、(a)は右から左方向への、(b)は左から右方向への、それぞれ外力が作用した状態である。
図6】本発明の実施形態にかかるシャフトの取付部材を用いた吊り具の例を示す正面図である。
図7】本発明の実施形態にかかるシャフトの取付部材を用いた吊り具の中心軸を含む平面による縦断面図である。
図8】本発明の実施形態にかかるシャフトの取付部材を用いたハンギング装置の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
図1は、本発明の実施形態にかかるシャフトの取付部材及びこれに取り付けられたシャフトの正面図である。また、図2は、本発明の実施形態にかかるシャフトの取付部材の構成部品を中心軸方向に分解した分解斜視図である。また、図3は、本発明の実施形態にかかるシャフトの取付部材の構成部品を中心軸方向に分解した分解縦断面図である。さらに、図4は、本発明の実施形態にかかるシャフトの取付部材の構成部品を中心軸方向に分解した分解縦断面図である。
【0018】
なお、本実施形態において、上下とは、重力方向における上下を意味し、「水平」あるいは「水平面」といった場合には、重力方向と直交する平面を意味する。ただし、「水平」や「水平面」については、重力方向に対して正確に垂直である必要は無く、略水平と云える範疇は勿論、ある程度斜めの面であっても、本発明を実現し得る程度の傾きであれば、そのような傾斜面をも含む概念とする。
【0019】
本実施形態にかかるシャフトの取付部材(以下、単に「取付部材」と称する場合がある。)1は、シャフト2を垂下状態で取付対象面の一例である天井面3に支持するものである。なお、本発明において、取付対象面としては、天井面に限定されるものではなく、例えば、構造物の梁や鴨居、屋根裏、家具内部の天面等、シャフトを支持可能な部材や部位における、下方を向く水平面であればよい。
【0020】
図1図4に示すように、本実施形態にかかる取付部材1は、具体的には、天井面3に取り付けるベース11と、シャフト2の一端(上端)を下側で支持するジョイント12と、ジョイント12の上側に固定されたヒンジ13と、ベース11に固定されたヒンジカバー15と、軸部141,143及び曲面状の先端部142を有するピボット14と、ピボット14をベース11に向けて付勢するコイルバネ16と、を備える。
【0021】
ベース11は、円盤状の基台111とその同心上で下方に向けて立ち上がる円筒部112と、を有する。基台111には、軸X上の点を中心として、点対称で周方向に等間隔の位置に4つのネジ孔115が設けられており、ここに不図示の木ネジが貫通して天井面3に捻じ込まれて、ベース11が天井面3に固定され、取り付けられる。
【0022】
基台111の下面(下方を向く下面)における円筒部112の内周側には、環状平面113があり、その環状平面113の中心には、凹部114が設けられている。基台111における円筒部112の外周側であって、4つのネジ孔115が位置する領域よりも内周側には、点対称で周方向に等間隔の位置に4つのボルト孔116が設けられている。
【0023】
ヒンジ13は、ジョイント12から軸X方向の上側に向けて突出する円柱部131と、円柱部131に連なり、外周面の一部が、円柱部131の中心軸(軸Xと同じ)と重なる一点Oを中心点とする球体状となる曲面張出部132と、を有する。また、ヒンジ13は、曲面張出部132における軸X方向の上端から下方に陥没する穴部133と、円柱部131における下端に設けられたビス穴134を有する。
【0024】
ヒンジ13における穴部133は、軸X方向における上方側の大内径部135と、大内径部135の下方側で当該大内径部135よりも内径が小さい小内径部136と、大内径部135と小内径部136との間を繋ぐ内径段差部137と、を有する。大内径部135及び小内径部136は、軸Xを中心軸とする円柱状の空洞であり、ヒンジ13における上端から軸X方向の中心よりも下方の領域まで延在している。また、小内径部136は、大内径部135の下方に連なっており、大内径部135よりも軸X方向の長さが短くなっている。
【0025】
ピポット14の軸部141,143は、軸X方向における上方側の大外径部143と、大外径部143の下方側の小外径部141と、大外径部143と小外径部141との間を繋ぐ外径段差部144と、を有する。大外径部143は、ヒンジ13の穴部133における大内径部135内に嵌入可能かつ軸X方向への移動が可能な外径を有している。一方、小外径部141は、ヒンジ13の穴部133における小内径部136内に嵌入可能かつ軸X方向への移動が可能な外径を有している。
【0026】
ヒンジ13における穴部133には、ピポット14とコイルバネ16とが収容される。詳しくは、コイルバネ16にピポット14の軸部の内の小外径部141が嵌挿され、圧縮された状態で穴部133に収容されている。コイルバネ16は、その一端である上端部161が、外径段差部144に当接し、他端である下端部162が、内径段差部137に当接している。
【0027】
ヒンジカバー15は、円形開口部156を有するリング部153と、リング部153の外周から上方に立ち上がる円筒状の筒状部152と、筒状部152の上端で外方に張り出す円環状のフランジ部151と、を有する。フランジ部151には、軸X上の点を中心として、点対称で周方向に等間隔の位置に4つのネジ孔154が設けられており、ここにボルト155が貫通してベース11のボルト孔116に捻じ込まれて、ヒンジカバー15がベース11に固定される。
【0028】
ヒンジカバー15における円形開口部156の径は、曲面張出部132の外周面の球体の直径よりも小さく円柱部131の径よりも大きい。ヒンジカバー15は、円形開口部156に円柱部131を嵌入させて、円形開口部156の上側(一側)に曲面張出部132を、下側(他側)に円柱部131を、それぞれ位置させた状態でヒンジ13を保持している。
【0029】
円形開口部156の開口縁156′には、ヒンジ13における曲面張出部132の外周面が当接し、かつ、摺擦可能になっている。そのため、ヒンジ13は、曲面張出部132の外周面が円形開口部156の開口縁156′を摺擦することで、点Oを中心点として、ヒンジ13の中心軸が、軸線Xから角度を以って傾けること、即ち揺動させることが可能になっている。
【0030】
点Oを中心点として、傾けることができるヒンジ13の中心軸の、軸線Xからの角度(後述する図5中のθ°)には制限があるが、傾ける方向については、円形開口部156と曲面張出部132との組み合わせによる構造上の特性として、360°任意の角度が可能となっている。
【0031】
円形開口部156の開口縁156′の内径は、下端から上端に向かうにしたがって漸次拡径するテーパ形状を有している。そのため、開口縁156′が面で曲面張出部132の外周面と当接するようになっており、ヒンジ13(さらにはこれに支持されるジョイント12やシャフト2等)をしっかり支持できるようになっている。
【0032】
この円形開口部156の開口縁156′の内面形状としては、曲面張出部132の外周面に対応する曲面形状(「対応する曲面形状」といった場合には、完全に倣う曲面形状から略倣う曲面形状までを幅広く含む概念とする。)であることが、ヒンジ13の安定支持の観点からはより好ましい。
【0033】
ヒンジカバー15は、ベース11に上側(一側)を向けた状態で固定されている。すると、図2に示されるように、ヒンジ13の曲面張出部132、コイルバネ16及びピポット14の多くの部分が、ベース11とヒンジカバー15とで囲まれた空間に収められた状態になっている。
【0034】
本実施形態にかかる取付部材1においては、ヒンジ13とヒンジカバー15とによって、本発明に云う「接続部」が構成されている(以下、「接続部13,15」と称する。)。このヒンジ13及びヒンジカバー15から構成される接続部13,15によれば、ベース11の下面よりも下方に位置する点Oを支点として、シャフト2及びジョイント12が揺動可能な状態で、ジョイント12とベース11とが接続されている。
【0035】
ヒンジ13における穴部133に収容されたピポット14は、ヒンジ13は勿論、ヒンジ13が固定されたジョイント12や、ジョイント12に取り付けられたシャフト2とも、軸の傾きが一致している。したがって、ピポット14の軸部141,143の軸は、ジョイント12等の揺動に追随して傾くようになっている。
【0036】
外径段差部144と内径段差部137との間に挟み込まれたコイルバネ16は、圧縮された状態で維持される。したがって、ピポット14は、その先端部142がベース11の下面に付勢された状態で当接している。圧縮されたコイルバネ16が伸長しようとする弾性力によって、ピポット14の先端部142をベース11の下面に付勢する付勢力が作用するようになっている。
【0037】
ベース11の下面における先端部142が当接する箇所には、凹部114が設けられており、当該凹部114に、ピポット14の先端部142が嵌入するようになっている。即ち、ピポット14の先端部142が凹部114に嵌入して、ヒンジ13以下の構成(ジョイント12及びシャフト2等)の垂下状態が、安定的に保持されている。
【0038】
ジョイント12は、筒状であり、下方に向いた一方の開口122及び上方に向いた他方の開口123を有する。詳しくは、ジョイント12は、外周面を構成する外筒部121と、上端で折り返して外筒部121の内側に形成された内筒部128と、外筒部121の軸X線方向の下端より手前で終わる内筒部128の下端を閉塞する底部129と、からなる。
【0039】
開口123から続く内周面は内筒部128の内周面であり、開口122から続く内周面は外筒部121の内周面である。開口123から円柱部131が嵌入されてヒンジ13を固定し、開口122からシャフト2の一端(上端)が嵌入されてこれを支持するようになっている。
【0040】
特に、外筒部121の内周面と内筒部128の外周面との間にはスリットが形成されて、シャフト2のパイプが挿し込まれる挿込口122′が形成されている。この挿込口122′のスリットは、外筒部121と内筒部128の折り返し部分が上端になっており、挿し込まれたシャフト2の上端が突き当たるため、シャフト2の位置決め手段となっている。
【0041】
ジョイント12における底部129には、軸線Xを中心として、ビス孔126が形成されている。このビス孔126にビス127を貫通させ、ビス穴134に螺合させることで、ヒンジ13をジョイント12の上側に固定させる。ヒンジ13とジョイント12との固定は、シャフト2をジョイント12の開口122に嵌入する(挿込口122′に挿し込む)前に行う。
【0042】
ジョイント12における外筒部121には、内周面に雌ネジ溝が形成された孔部124が形成されている。孔部124は、雌ネジ溝の長さを確保するために、外筒部121の外表面から立ち上げられた円筒状の突出部124′に設けられている。孔部124は、開口122に嵌入されるシャフト2に向けて穿たれている。この孔部124には、孔部124に形成された雌ネジ溝と螺合する雄ネジ溝が形成された雄ネジ125が、捻じ込まれている。
【0043】
シャフト2の一端が、ジョイント12における開口122に嵌入され(挿込口122′に挿し込まれ)た状態で、雄ネジ125が孔部124に捻じ込まれると、その先端が外筒部121の内周面から突出し、シャフト2の周面を押圧する。雄ネジ125の当該押圧力によって、シャフト2の一端(上端)がジョイント12に固定され支持される。
【0044】
図1及び図3は、本実施形態の取付部材1にシャフト2が取り付けられて、垂下状態に支持された平常時を示すものである。例えば、後述する吊り具やハンギング装置として使用した際、物を吊り下げるときに前後方向に押したり引いたりする力が加わり、シャフト2に横方向の外力が作用する場合がある。本実施形態の取付部材1は、垂下状態に支持されたシャフト2に対して、横方向から負荷が加わった際には斜めに傾くことが可能でありながら、横方向からの負荷が無負荷状態の際には、シャフト2の垂下状態が保たれ易くなっている。
【0045】
以下、シャフト2が斜めに傾くことが可能でありながら、横方向からの負荷が無負荷状態の際には、シャフト2の垂下状態が保たれ易い、本実施形態にかかる作用乃至効果について、図5を用いて説明する。
図5は、本実施形態にかかるシャフトの取付部材1に取り付けられたシャフト2に対して、横方向の外力が作用した(横方向から負荷が加わった)状態を示す縦断面図であり、(a)は右から左方向への、(b)は左から右方向への、それぞれ外力が作用した状態を示すものである。
【0046】
右から左方向への外力が作用した場合には、図5(a)に示すように、シャフト2が左方向に押されて、斜めに傾こうとする。シャフト2が固定された取付部材1も、シャフト2とともに同方向に傾こうとするが、既述の通り、曲面張出部132の外周面が円形開口部156の開口縁156′を摺擦することで、ヒンジ13の中心軸が、軸線Xから角度を以って傾けられるようになっている。
【0047】
このとき、圧縮されたコイルバネ16の弾性力によって、ピポット14の先端部142が凹部114に嵌入した状態で付勢する付勢力が作用しており、ピポット14の先端部142が凹部114に嵌入した状態から脱するのに必要な外力の大きさ(荷重)には閾値が存在する。右から左方向への加えられた外力が、その閾値を超えて、ピポット14の先端部142が、元の位置から右側へ脱しかけると、ヒンジ13の中心軸が、軸線Xから角度を以って傾く。この閾値を超えるのに要した外力の強さの分、シャフト2に対する右から左方向への外力が減衰する。
【0048】
よって、右から左方向への外力が作用した場合、以上の作用により、本実施形態においてシャフト2の軸は、図5(a)に示すように、垂下状態の軸線Xから傾いた状態の軸線Xaの状態まで、斜めに傾くことができる。そのため、横方向からの負荷が軽減されて、その影響を抑えることができる。
【0049】
また、ピポット14の先端部142が凹部114に嵌入した状態から逸脱させるには、閾値を超える荷重の外力が加わった時であるから、その瞬間にピポット14やシャフト2が傾くので、クリック感を与えることになる。そのため、使用者は、そのクリック感を受けた際に、横方向への過剰な、あるいは、強めの力を加えていたことを認識することができる。
【0050】
一方、作用していた外力が解消され、横方向からの負荷が無負荷状態となった際には、コイルバネ16の弾性力によってピポット14の先端部142が、元の位置から右側へ脱しかけていた凹部114内の位置を付勢する付勢力が作用する。また、シャフト2及びヒンジ13等が鉛直状態に戻ろうとする重力が作用する。このコイルバネ16の弾性力による付勢力の作用と、シャフト2及びヒンジ13等が鉛直状態に戻ろうとする重力の作用によって、シャフト2が垂下状態の軸線Xの位置に戻る。
【0051】
このシャフト2が垂下状態の軸線Xの位置に戻る際にも、ピポット14の先端部142が凹部114に嵌入するときにクリック感を使用者に与えることができる。また、閾値を超える荷重の外力が加わらない限り、ピポット14の先端部142が凹部114に嵌入した状態から逸脱しないため、横方向からの負荷が無負荷状態の際には、シャフト2の垂下状態が保たれ易い。
【0052】
一方、左から右方向への外力が作用した場合には、以上の図5(a)に示す場合と逆方向へシャフト2が斜めに傾くことができる。詳細な作用は省略するが、この場合、図5(b)に示すように、曲面張出部132の外周面が円形開口部156の開口縁156′を摺擦し、ヒンジ13の中心軸が、軸線Xから角度を以って傾けられるようになっている。
【0053】
そして、作用していた左から右方向への外力が解消され、横方向からの負荷が無負荷状態となった際には、コイルバネ16の弾性力による付勢力の作用と、シャフト2及びヒンジ13等が鉛直状態に戻ろうとする重力の作用によって、シャフト2が垂下状態の軸線Xの位置に戻る。
【0054】
なお、図5による説明においては、便宜的に、左右に180°異なる方向(反対方向)からの横方向の外力が作用した場合を例示して説明しているが、これらに限られない。即ち、球体状の曲面張出部132と円形開口部156とによりヒンジカバー15に対してヒンジ13がどの角度にも自由に傾けられるように構成された本実施形態の取付部材1においては、シャフト2が360°の何れの横方向からの外力を受けても、同様に、シャフト2の軸は、斜めに傾くことができる。
【0055】
したがって、例えば、人がぶつかる等シャフト2に横方向の外力が作用しても、シャフト2の軸が斜めに傾き、外力の作用が緩和される。そして、作用していた外力が解消され、横方向からの負荷が無負荷状態となった後には、コイルバネ16の弾性力による付勢力の作用と、シャフト2及びヒンジ13等が鉛直状態に戻ろうとする重力の作用によって、シャフト2が垂下状態に戻る。
【0056】
垂下状態の軸線Xと、傾いた状態の軸線Xaと、の成す角、即ち、シャフト2の軸の傾斜角θ(図5(a)及び図5(b)参照)の最大値は、曲面張出部132と円形開口部156との大きさ、形状等の関係や、曲面張出部132とジョイント12の上端との間の距離(両者の干渉状態)、ベース11とヒンジカバー15とで囲まれた空間の余裕等の各種条件によって決まってくる。
【0057】
このシャフト2の軸の傾斜角θの最大値を大きくすることで、横方向からの外力に対する耐性を強くすることができる。シャフト2の軸の傾斜角θの最大値を大きくしようとすると、取付部材1の大きさが大きくなりやすいので、実用的な範囲で適宜設計することが好ましい。シャフト2の軸の傾斜角θの最大値に好ましい範囲や制限はないが、おおよそ、1°~20°程度の範囲から選択される。
【0058】
ピポット14の先端部142が凹部114に嵌入した状態から逸脱させる際、あるいは、逸脱した状態から嵌入させる際のクリック感の強弱は、コイルバネ16の弾性力を調整したり、ピポット14の先端部142と凹部114の形状の関係を制御したり等することで、調整することができる。
【0059】
コイルバネ16として、弾性力の強い物を用いたり、より圧縮状態で用いたりすることで、クリック感を強くすることができる。逆に、コイルバネ16として、弾性力の弱い物を用いたり、より圧縮させない状態で用いたりすることで、クリック感を弱くすることができる。
【0060】
また、ピポット14の先端部142と凹部114とが、平常時(シャフト2が垂下状態にあるとき)に隙間なく嵌合し、逸脱する際に段差を超えなければならないようにすることで、クリック感を強くすることができる。また、その段差を大きく、急峻にすることで、クリック感をより強くすることができる。逆に、平常時におけるピポット14の先端部142と凹部114との嵌合を緩くしたり、逸脱する際の段差を緩やかにしたり、さらには段差無くスロープ状にしたりすることで、クリック感を弱くすることができる。
【0061】
本実施形態にかかるシャフトの取付部材1においては、シャフト2が脱着自在(取り付け、取り外しが自在)になっている。したがって、同じ取付部材1を用意しておく(取付対象面に取付部材を予め取り付けておくことと、販売する商品のラインナップに、シャフトを含まない取付部材の単体を用意すること、さらには、単一の取付部材と異なる種類のシャフトとのセットを複数種類用意すること、の全ての場合を含む。)だけで、長さや形状等の種類の異なるシャフトと組み合わせたり、変更したりすることが容易である。
【0062】
以上説明した本実施形態にかかる取付部材1は、例えば、下端や中途にリング状の吊り輪部を設けたシャフトを天井面3等に取り付けることで、それ自体を吊り具として用いることができる。
図6は、本実施形態にかかる取付部材1を用いた吊り具の例を示す正面図である。また、図7は、本発明の実施形態にかかる取付部材1を用いた吊り具の中心軸を含む平面による縦断面図である。
【0063】
図6及び図7に示されるように、取付部材1と、取付部材1に一端が支持されたシャフト2と、を有し、シャフト2の他端(下端)に、物の引っ掛け用に供される吊り輪部7が設けられることで、吊り具として用いることができる。
吊り輪部7は、筒状の固定部71と、その下端に固定された環状部72とからなる。固定部71の上部は開口しており、シャフト2の下端が差し込まれて、閉塞された下端で止まり、位置決めされるようになっている。
【0064】
固定部71は、ジョイント12の外筒部121における孔部124と同様、内周面に雌ネジ溝が形成された、2つの孔部714a,714bを有する。孔部714a,714bは、固定部71に嵌入されるシャフト2に向けて穿たれている。この孔部714a,714bには、孔部714a,714bに形成された雌ネジ溝と螺合する雄ネジ溝が形成された雄ネジ715a,715bが、それぞれ捻じ込まれている。
【0065】
シャフト2の下端近傍には、全周にわたって陥没してくびれたくびれ部25が形成され、くびれ部25に連なり下端までは、くびれ部25より上方の直管部21と同径の首部26となっている。固定部71に嵌入されたシャフト2の下端が、閉塞された下端に当接して位置決めされると、くびれ部25が雄ネジ715aの先端と対向する位置に来るようになっている。
【0066】
その状態で、雄ネジ715a,715bが孔部714a,714bに捻じ込まれると、その先端が固定部71の内周面から突出し、シャフト2の周面を押圧する。雄ネジ715a,715bの当該押圧力によって、シャフト2の下端に固定部71が固定され、シャフト2に吊り輪部7が設けられる。
【0067】
このとき、孔部714aに捻じ込まれた雄ネジ715aの先端は、シャフト2のくびれ部25に嵌り込むように突出してシャフト2を押圧し、上下動が生じないようにしっかりと固定部71が固定される。一方、孔部714bに捻じ込まれた雄ネジ715bの先端は、シャフト2の直管部21の外周面に突出して、シャフト2を押圧して押さえ込んでいる。即ち、雄ネジ715aによって吊り輪部7の上下動を規制しつつ、雄ネジ715a及び雄ネジ715bによって、吊り輪部7全体をシャフト2に固定している。
【0068】
以上のように構成された吊り具は、シャフト2に設けられた吊り輪部7の環状部72に、例えば、衣類や洗濯物のハンガー、あるいは、図7に示されるように物干し竿8の一端等を吊り掛けて、用いることができる。物干し竿8を吊り掛けて用いる場合には、当該吊り具をもう一つ用意して一対とし、物干し竿8の両端を吊り輪部7の環状部72に吊り掛けて橋渡すようにして利用すればよい。
【0069】
図6及び図7の例の吊り具によれば、吊り掛け対象物である衣類や物干し竿8、あるいは、シャフト2に、横方向の外力が作用した際には、シャフト2が斜めに傾くことが可能となっている。そのため、吊り具全体が天井面等の取付対象面に対して斜めに撓ることで、横方向からの負荷が軽減されて、その影響を抑えることができる。
【0070】
また、図6及び図7の例の吊り具によれば、シャフト2等が斜めに傾くのに要する荷重の閾値を超える外力が加わった際に、使用者は、クリック感を受けるため、シャフト2等に対して、横方向への過剰な、あるいは、強めの力を加えていたことを認識することができる。
【0071】
そして、作用していた外力が解消され、横方向からの負荷が無負荷状態となった際には、シャフト2が垂下状態の位置に戻る。そのため、吊り具の全体についても、正常な形状(全体が撓っていない形状)に戻る。
シャフト2が垂下状態の軸線Xの位置に戻る際にも、クリック感を使用者に与えることができる。また、閾値を超える荷重の外力が横方向から加わらない限りシャフト2が傾くことがない為、横方向からの負荷が無負荷状態の際には、シャフト2の垂下状態が保たれ易い。
【0072】
なお、図6及び図7の例の吊り具において、吊り輪部7は、シャフト2の下端にのみ設けられているが、本発明のシャフトの取付部材を用いた吊り具としては、これに限定されない。即ち、吊り輪部が、シャフトの下端と、1箇所または2箇所以上の中途との計2箇所以上に設けられていても構わないし、1箇所または2箇所以上の中途にのみ設けられていても構わない。
【0073】
さらに、本実施形態にかかる取付部材1は、シャフト2とともに、いわゆるハンギング装置の一部として、ハンガーパイプを支持する構成部材として用いることができる。
図8は、本実施形態にかかる取付部材1を用いたハンギング装置100の例を示す斜視図である。
【0074】
図8に示されるように、ハンギング装置100は、物の引っ掛け用に供されるハンガーパイプ5と、本実施形態にかかる取付部材1が左右一対(2個)と、それぞれの取付部材1に一端が支持されたシャフト2が一対(2本)と、それぞれのシャフト2の下端に、ハンガーパイプ5の端部を支持する連結部材4が一対(2個)と、を有する。一対の連結部材4によって、ハンガーパイプ5は、その左右の両端が支持されて、略水平に保持されている。
一対、即ち2個(本)の取付部材1、シャフト2及び連結部材4は、それぞれ同一の構成の物である。したがって、以下、便宜的に、1つの物について説明する。
【0075】
取付部材1は、ベース11が木ネジ等により取付対象面である天井面3に取り付けられるとともに、ジョイント12にシャフト2の一端が嵌入されてこれを支持している。即ち、本実施形態にかかる取付部材1によって、シャフト2が、天井面3に垂下状態で取り付けられている。
【0076】
連結部材4としては、特に制限はなく、例えば、シャフト2の下端が嵌入する上向きのソケット部と、ハンガーパイプ5の端部が嵌入する横向きのソケット部とを備え、それぞれの抜け止めのための手段、例えばネジ止め手段を有する構成のものを挙げることができる。
【0077】
なお、図8の例のハンギング装置100において、連結部材4は、シャフト2の下端のみに設けられた例を挙げているが、これに限定されるものではない。即ち、連結部材は、例えば、シャフト2の中途に設けられて、そこにハンガーパイプを支持するようにしてもよいし、中途の1箇所または2箇所以上と下端と、に合計複数個設けて、複数本のハンガーパイプを支持するようにしてもよい。その場合、中途に設けられる連結部材と、下端に設けられる連結部材とは、形状、構造等が異なっていて、その機能に応じた物になっている。
【0078】
ハンガーパイプ5は、上下面に丸みを有する断面略長方形のパイプ状直管である。このハンガーパイプ5に、図8の例における植木鉢6等の吊り掛け対象物が吊り掛けられて、ハンギング装置として用いられる。ハンガーパイプ5は、例えば、アルミニウムや樹脂等の材料で成形されたものである。
ハンガーパイプ5の周面には、吊り掛け対象物が滑ったり外れたりし難いように、滑り止め加工が施されていてもよい。
【0079】
なお、図8の例のハンギング装置100では、ハンガーパイプ5として、意匠性と実用性の高い断面略長方形のものを例示しているが、一般的な物干し竿のような断面円形の直管をハンガーパイプとしても構わないし、さらにはパイプ状でもない中実の棒(例えば木製の棒材)をハンガーパイプとしても構わない(即ち、本発明において「ハンガーパイプ」の概念には、忠実の物を含むこととする。)。
【0080】
図8の例のハンギング装置100によれば、植木鉢6等の吊り掛け対象物、ハンガーパイプ5、あるいは、シャフト2に、横方向の外力が作用した際には、シャフト2が斜めに傾くことが可能となっている。そのため、ハンギング装置100全体が天井面3の取付箇所に対して斜めに撓ることで、横方向からの負荷が軽減されて、その影響を抑えることができる。
【0081】
また、図8の例のハンギング装置100によれば、シャフト2等が斜めに傾くのに要する荷重の閾値を超える外力が加わった際に、使用者は、クリック感を受けるため、シャフト2等に対して、横方向への過剰な、あるいは、強めの力を加えていたことを認識することができる。
【0082】
そして、作用していた外力が解消され、横方向からの負荷が無負荷状態となった際には、シャフト2が垂下状態の位置に戻る。そのため、ハンギング装置100全体についても、正常な形状(全体が撓っていない形状)に戻る。
シャフト2が垂下状態の軸線Xの位置に戻る際にも、クリック感を使用者に与えることができる。また、閾値を超える荷重の外力が加わらない限り、横方向からの負荷が無負荷状態の際には、シャフト2の垂下状態が保たれ易い。
【0083】
以上、本発明のシャフトの取付部材及びこれを用いたハンギング装置について、好ましい実施形態を挙げて説明したが、本発明のシャフトの取付部材及びこれを用いたハンギング装置は上記の実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、上記の実施形態においては、取付部材1に対するシャフト2の固定方法として、雄ネジ125によりシャフト2の周面を押圧して固定する例を挙げているが、従来公知の如何なる態様であっても構わない。
【0084】
また、上記の実施形態においては、本発明に云う「接続部」が、ヒンジ13とヒンジカバー15とによって、点Oを中心点として、360°任意の角度へシャフト2及びジョイント12を傾けることが可能な構成となっているが、接続部の構成はこれに限定されるものではない。
【0085】
例えば、ベースの下面よりも下方の位置で水平に保持された状態でベースに固定された円柱体と、これが嵌挿されたパイプとで接続部が構成され、このパイプの周面にジョイントが接続されて下方に垂下し、パイプが円柱体の周りを回動することでジョイント等が揺動可能となっている構成などが、適用可能である。
【0086】
この場合、パイプと円柱体に共通する軸が揺動の支点となり、当該支点を中心に1本の円弧を描くように揺動する。即ち、この場合においては、平面視(上方からの視点で見た場合)において、シャフト等の揺動によりシャフトの下端が直線を描いている。一方、上記実施形態のように360°任意の方向にシャフト2等を傾けられる構成においては、平面視において、揺動によりシャフトの下端は円形の面を描き得る。
【0087】
本発明において、接続部の構成としては、平面視において、揺動によりシャフトの下端が描く図形が、上記実施形態のように円形の面を描き得る構成から、直線を描く構成までを広く含むものである。勿論、平面視において、揺動によりシャフトの下端が描く図形としては、円形の面を描き得る構成から、直線を描く構成までの間の中庸の構成であってもよい。当該中庸の構成としては、交差した2本以上の直線を描き得る構成や、一部の扇形が欠けた円形の面、三角形、四角形、あるいは、星形等の他の図形の面、その他、何れの図形の面を描き得る構成等を挙げることができる。これら何れの構成であっても、シャフト及びジョイントが揺動可能となる本発明に云う「接続部」を満たす。
【0088】
何れの方向にどの程度の大きさで、シャフト及びジョイントが揺動可能であったとしても、揺動可能な方向への揺動に追随してピポットの先端部が傾く。ピポットの先端部は、その揺動の支点よりも上方にあるため、ベースの下面における当接位置が揺動によって移動しようとする。すると、ピポットの先端部が、ベースの下面に設けられた凹部に嵌入した状態から逸脱しようとする力が働く。そのため、シャフト等が斜めに傾くのに要する荷重の閾値を超えた横方向の外力が作用した際には、使用者にクリック感を与えるとともに、シャフトが斜めに傾くことが可能となる。
【0089】
一方、作用していた外力が解消され、横方向からの負荷が無負荷状態となった際には、シャフトが垂下状態の位置に戻る。シャフトが垂下状態の位置に戻る際にも、クリック感を使用者に与えることができる。また、閾値を超える荷重の外力が横方向から加わらない限りシャフトが傾くことがない為、横方向からの負荷が無負荷状態の際には、シャフトの垂下状態が保たれ易い。
【0090】
上記の実施形態においては、ベース11の下面に設けられた凹部114が比較的大きめで、シャフト2が横方向からの外力を受けて傾いても、ピポット14の先端部142が凹部114から完全には逸脱しない例を挙げているが、本発明においてはこれに限られない。例えば、凹部114が先端部142に対して十分に小さくて、シャフト2が横方向からの外力を受けて傾いた際に、ピポット14の先端部142が凹部114から完全に逸脱してしまう構成であってもよい。
【0091】
この場合、凹部114から逸脱したピポット14の先端部142は、凹部114の周りの環状平面113に当接した状態になる。その場合であっても、シャフト2及びヒンジ13等が鉛直状態に戻ろうとする重力の作用によって、シャフト2が垂下状態に戻るし、戻る際に、ピポット14の先端部142が凹部114に嵌入するときのクリック感も使用者に与えることができる。また、閾値を超える荷重の外力が加わらない限り、ピポット14の先端部142が凹部114に嵌入した状態から逸脱しない作用・効果についても本実施形態の場合と同様であるため、横方向からの負荷が無負荷状態の際には、シャフト2の垂下状態が保たれ易い。
【0092】
その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明のシャフトの取付部材、並びに、これを用いた吊り具及びハンギング装置を適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0093】
1…取付部材(シャフトの取付部材)、2…シャフト、3…天井面(取付対象面)、4…ジョイント、5…ハンガーパイプ、6…植木鉢(吊り掛け対象物)、7…吊り輪部、8…物干し竿、11…ベース、12…連結部材、13…ヒンジ(「接続部」の一部)、14…ピボット、15…ヒンジカバー(「接続部」の一部)、16…コイルバネ、21…直管部、25…くびれ部、26…首部、71…固定部71、72…環状部72、100…ハンギング装置、111…基台、112…円筒部、113…環状平面(下面)、114…凹部、115…ネジ孔、116…ボルト孔、121…外筒部、122…開口(一方の開口)、122′…挿込口、123…開口(他方の開口)、124…孔部、124′…突出部、125…雄ネジ、126…ビス孔、127…ビス、128…内筒部、129…底部、131…円柱部、132…曲面張出部、133…穴部、134…ビス穴、135…大内径部、136…小内径部、137…内径段差部、141…小外径部(「軸部」の一部)、142…先端部、143…大外径部(「軸部」の一部)、144…外径段差部、151…フランジ部、152…筒状部、153…リング部、154…ネジ孔、155…ボルト、156…円形開口部、156′…開口縁、161…上端部、162…下端部、714a,714b…孔部、715a,715b…雄ネジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8