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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155262
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】布
(51)【国際特許分類】
   D04B 21/00 20060101AFI20221005BHJP
   D04B 21/20 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
D04B21/00 B
D04B21/20 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058676
(22)【出願日】2021-03-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】594180232
【氏名又は名称】株式会社三機コンシス
(74)【代理人】
【識別番号】110002114
【氏名又は名称】特許業務法人河野国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100128624
【弁理士】
【氏名又は名称】穂坂 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138483
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 晃一
(72)【発明者】
【氏名】松本 正秀
【テーマコード(参考)】
4L002
【Fターム(参考)】
4L002AA00
4L002AB00
4L002CA00
4L002CA04
4L002EA00
4L002EA03
4L002FA01
4L002FA09
(57)【要約】
【課題】
中空糸膜が編生地に編み込まれた布を提供し、中空糸膜の内部を液体が流れる構成を提供することを課題とする。中空糸膜が編生地に編み込まれた布を衣類に縫い付ける際や中空糸膜が編生地に編み込まれた布で衣類を製造するべく縫製する際に、針が中空糸膜を貫通することを妨げる構成を提供することを課題とする。
【解決手段】
中空糸膜を挿入糸として編生地に編み込むことによって課題を解決する。また、中空糸膜に液体を供給するポンプを備え、ポンプを手動式とすることにより課題を解決する。
【選択図】 図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空糸膜が挿入糸として編生地に編み込まれた布。
【請求項2】
前記中空糸膜が前記編生地の片面に波型を呈して現れることを特徴とする請求項1に記載の布。
【請求項3】
前記編生地が上地と下地とから構成され、
前記編生地は前記上地と前記下地が結合された一重組織部と前記上地と前記下地が別々に分離した二重袋状組織部とを備え、
前記中空糸膜は前記二重袋状組織部に存することを特徴とする請求項1に記載の布。
【請求項4】
前記編生地は経編みされており、前記中空糸膜は経方向に編み込まれることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の布によって課題を解決する。
【請求項5】
前記中空糸膜に液体を供給するポンプを備え、前記空糸膜の内部を液体が流れることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の布。
【請求項6】
前記液体が水であることを特徴とする請求項5に記載の布。
【請求項7】
テープ状の形体で成ることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の布。
【請求項8】
前記中空糸膜は、前記布を縫製する際に前記中空糸膜が針の貫通を避けるための逃れを備えて前記編生地に配置されることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の布。
【請求項9】
前記編生地が吸水性と高い水拡散性を備えることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
中空糸膜が挿入糸として編生地に編み込まれた布に関する。
【背景技術】
【0002】
泥水ろ過に用いる中空糸膜モジュールを製造するために、中空糸膜を経編機の緯糸として用いる技術が開示されている(特許文献1)。この技術では、中空糸膜は編生地を構成する緯糸を構成している。
【0003】
中空糸膜を衣服に用いる技術が開示されている(特許文献2)。特許文献2の技術を図7に示す。この技術では、衣類70に中空糸膜71を取り付け、ポンプ72を利用して中空糸膜の内部に水を流し、気化熱による冷却効果を得ている。水は水容器73から供給され、ポンプ72は電動式である。この技術では、衣類に中空糸膜を取り付ける手段は縫い付けによっている。中空糸膜を縫いつける場合、針を使うことから、中空糸膜の上方を針が通過する際や編生地を針が刺す際に中空糸膜を傷つける危険がある。また、複数の中空糸膜が近隣に並ぶ場合には、針が中空糸膜を傷つける可能性が上がるために、縫い付けにより取付けることは困難となる。
【0004】
また、前述のとおりポンプ72が電動式であるために電源74とスイッチ75が必要であるところ、衣服の着心地やデザイン性の観点から、電源やスイッチはない方が好ましい。
【0005】
導電線を、導電性繊維で成る編物の表面に編み込み、経方向及び緯方向の両方向に伸張させることができる電線が開示されている(特許文献3)。この技術では、導電均一性を得るために、導電線が破損したときに互いが補うよう、複数の導電線は交差したり絡んだりして配置される。また、経緯方向に伸縮させるため、導電線は緯方向に延びる波型を描いて編み込まれている。
【0006】
一方、編み物に中空糸膜を編み込む場合には、導電線のごとく、互いに交差したり絡んだりするよう配置するといった要請はなく、むしろ、中空糸膜からの水分の吸水拡散をより図るために、中空糸膜は編生地とできる限り広い面積で接触させることが求められ、結果的に中空糸膜どうしでは間隔が空く。また、中空糸膜では、編生地と充分接触させることが求められる。このように、挿入糸として糸を編み込む思想において、導電線を編み込む場合と中空糸膜を編み込む場合とでは解決課題が異なるため、導電線を編み込む思想をそのまま中空糸膜を編み込む思想に適用することはできない。
【0007】
中空糸膜の内部の空洞に水を通すことにより、水自体により、または気化熱により、中空糸膜の周囲を冷やすことができる。また、中空糸膜を衣服に用いる場合、中空糸膜の表面の微細孔により、繊維表面から内側に向かって汗を吸水し中空部で導水拡散し、繊維の外部に放出する。その際気化熱を奪うことにより、着衣者の身体を冷やすことができる。しかし、中空糸膜は、表面の微細孔がこすれや引張りにより容易に損傷するため、織物や編物を構成する糸として用いることは困難である。よって、中空糸膜を布に利用する技術、ひいては衣類に利用する技術が待望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009-235583
【特許文献2】特開2020-204131
【特許文献3】特開2016-92009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
中空糸膜が編生地に編み込まれた布を提供することを課題とする。
【0010】
また、中空糸膜が編生地に編み込まれた布の利用形態の一つとして、中空糸膜の内部を液体が流れる構成を提供することを課題とする。
【0011】
また、中空糸膜が編生地に編み込まれた布を衣類に縫い付ける際や、中空糸膜が編生地に編み込まれた布で衣類を製造するべく縫製する際に、針が中空糸膜を貫通することを妨げる構成を提供することを課題とする。
【0012】
また、編生地に編み込んだ中空糸膜の表面から外部に出る水が、吸水拡散されやすい構成を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)中空糸膜が挿入糸として編生地に編み込まれた布によって課題を解決する。
(2)前記中空糸膜が前記編生地の片面に波型を呈して現れることを特徴とする(1)に記載の布によって課題を解決する。
(3)前記編生地が上地と下地とから構成され、前記編生地は前記上地と前記下地が結合された一重組織部と前記上地と前記下地が別々に分離した二重袋状組織部とを備え、前記中空糸膜は前記二重袋状組織部に存することを特徴とする(1)に記載の布によって課題を解決する。
(4)前記編生地は経編みされており、前記中空糸膜は経方向に編み込まれることを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載の布によって課題を解決する。
(5)前記中空糸膜に液体を供給するポンプを備え、前記空糸膜の内部を液体が流れることを特徴とする(1)から(4)のいずれかに記載の布によって課題を解決する。
(6)前記液体が水であることを特徴とする(5)に記載の布によって課題を解決する。
(7)テープ状の形体で成ることを特徴とする(1)から(6)のいずれかに記載の布によって課題を解決する。
(8)前記中空糸膜は、前記布を縫製する際に前記中空糸膜が針の貫通を避けるための逃れを備えて前記編生地に配置されることを特徴とする(1)から(7)のいずれかに記載の布によって課題を解決する。
(9)前記編生地が吸水速乾性を備えることを特徴とする(1)から(8)のいずれかに記載の布によって課題を解決する。
【0014】
中空糸膜を、挿入糸として編生地に編み込むことにより、編生地を構成する糸として編み込む際のようなこすれや引っ張りが起きず、中空糸膜の表面の損傷がほとんど起きない。また、中空糸膜を挿入糸として用いることにより、材料としての中空糸膜の量が少なくて済む。
【0015】
中空糸膜を編み込むにあたり、例えば中空糸膜が編生地の表面を波型を形成するように配置し、編生地を伸縮性のある素材で構成する結果、伸縮可能な布とすることができる。
【0016】
中空糸膜が編生地の片面に現れる布であることにより、そのような布を製品に取り付ける際に、中空糸膜が現れている面が製品.と接する側に向くようにすることができる。この結果、中空糸膜は取り付け対象と編生地とに挟まれることになり、中空糸膜が外部と接することがなくなる。この結果中空糸膜の損傷を避けることができる。
【0017】
編生地を上地と下地とで構成し、上地と下地を結合した一重組織とする技術が公知である。そのような編生地を編む際に、中空糸膜を挿入糸として編み込む。中空糸膜を挿入糸として編み込むにあたり、編み込む位置を緯糸方向にずらさず、同じ位置にする。これにより、上地と下地が結合せずに二重袋状組織となり、中空糸膜がこの二重袋状組織にくるまれる状態で存するようにできる。中空糸膜が、布の二重袋状組織にくるまれた状態で存するために、中空糸膜は、編生地と接することができ、また外部からの接触を避けることができるためこすれにより痛むことがない。
【0018】
中空糸膜の内部にはチューブ状の空洞があるため、この空洞に液体を流すことができる。例えば、中空糸膜を編み込んだ布を衣服に施した場合を想定すると次の通りである。液体を香水入りにすることにより、布から発する香水の香りを利用できる。また、液体を防虫効果のある臭いを備えたものとすることにより、防虫効果を得ることができる。液体を医療効果を備えたものとすることにより、医療効果を得ることができる。中空糸膜を編み込んだ布を衣服に取り付けるにあたり、医療効果を得ることができる位置に取り付けることができる。
【0019】
液体を水とすることにより、水自体により、または気化熱により、周囲を冷やすことができる。
【0020】
中空糸膜が、編生地の表面の面積のより多くを占めた方が、中空糸膜の備える吸水拡散効果をより多く得ることができる。そこで、編生地において、中空糸膜が接する面積は、できる限り広いことが望ましい。そこで、例えば、波型を描くように配置してもよい。波型の波の頂点に該当する箇所では、中空糸膜が大きく方向転換することになる。よって方向転換の角度は中空糸膜の最小曲げ半径を考慮して決定する。
【0021】
中空糸膜の内部を水が流れる場合、中空糸膜の表面の微細孔から水がにじみ出る。編生地が水を蓄えたまま維持されることにより、周囲を冷やし続けることができる。従って、中空糸膜の周辺は、吸水性と、水拡散性が高いことが好ましい。そのような性質は、公知の技術により編生地の素材自体をそのような性質のもので構成してもよい。また公知の技術によりそのような性質を後から付与してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施例1を示す。
図2】実施例2を示す。
図3】実施例2示す。
図4】実施例3を示す。
図5】実施例3及び実施例4を示す。
図6】実施例4を示す。
図7】実施例5を示す。
図8】実施例5を示す。
図9】従来例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照し説明する。実施例1と実施例2は、経編で編生地形成し、編生地形成と並行して挿入糸として中空糸膜を編み込む例である。このうち、実施例1は中空糸膜が編生地の片面に波型を呈して現れる例であり、実施例2は中空糸膜が二重袋状組織部にくるまれた状態で延びて存在する例である。実施例3は、編生地に編み込んだ中空糸膜の内部に水を流す例である。実施例4は、中空糸膜を編み込んだ布がテープ状にされており、衣服に取り付けて利用される例である。実施例5は、中空糸膜を編み込んだ布を製品に取り付けるべく縫製する際に4中空糸膜に針が貫通しないよう、逃れを設ける例である。
【実施例0024】
図1に実施例1を示す。図1(a)に示す通り、実施例1では、編生地10を経編で形成し、編生地10の形成と並行して、中空糸膜20を、縦方向に挿入する挿入糸として編み込む。
【0025】
経編みでは、X軸方向に延びる緯糸40に、Y軸方向に延びる経糸30を絡み止めて編み目を形成する。経糸30を絡み止める作業を、一本の緯糸40に対してX軸方向に順次継続し、緯糸40の端部まで絡み止め終えたら折り返し、Y軸方向に隣り合う別の緯糸40に、順次、同様の編み目を作っていく。
【0026】
中空糸膜20の編み込み方は次のとおりである。経糸を緯糸に絡み止めて編生地を形成する際に、経糸は、絡み止める対象の緯糸と合わせて中空糸膜を絡み止める。図1(a)の符号50で示す箇所(中空糸膜止め50)に見られる糸が、中空糸膜を緯糸と合わせて絡み止めた経糸である。
【0027】
実施例1では、中空糸膜を、編生地に対して波型を形成するように配置する。このため中空糸膜止め50を、所定の周期で変える。これを図1(b)によって説明する。図1(b)は、一つの編み目を正方形のマスで示しており、黒く塗りつぶしたマスが中空糸膜を絡み止める箇所である。
【0028】
編生地を形成する際、編み目は、6aから1a、1bから6b、6cから1c、(中略)、6mから1m、1nから6n、6oから1o、の順に作られていく。すなわちこの順に、一つずつ、経糸30を緯糸40に絡み止めていく。6aから1aの編み目を作る際、5aの位置で、経糸は、中空糸膜50を、絡み止める対象の緯糸と合わせ、重ねて絡み止める。1bから6bの編み目を作る際、X軸のマイナス方向に一つずらした4bで中空糸膜を絡み止める。以降、6cから1cの編み目を作る際には3cの位置で、1dから6dの編み目を作る際には2dの位置で、経糸は中空糸膜を絡み止める。6eから1e、1fから6f、6gから1gの編み目を作る際、経糸は中空糸膜を絡み止めない。1hから6hの編み目を作る際に、経糸は2hの箇所で中空糸膜を絡み止める。以降、6iから1iの編み目を作る際は3iの位置で、1jから6jの編み目を作る際は4jの位置で、6kから1kの編み目を作る際は5kの位置で、経糸は中空糸膜を絡み止める。1lから6l、6mから1m、1nから6n、の編み目を作る際、経糸は中空糸膜を絡み止めない。ここまでで、一つの周期である。以降、この周期を繰り返す。
【0029】
上記の通りに編むことにより、図1(a)に示す通り、中空糸膜は、編生地の片面で、波型を呈して配置される。中空糸膜は、編生地の経糸が緯糸と重ねて絡み止めるため、編生地と密着する。このため中空糸膜の表面の微細孔からにじみ出る液体は、編生地に効率良く染み込む。また経糸の張力を調整することにより、中空糸膜の特性に応じて空洞をつぶさないようにすることができる。波型の頂点の角度を、編み止める対象の中空糸膜の特性に応じて決定し、中空糸膜がそのような角度で配置されるように編み止める箇所を決定することができる。
【0030】
中空糸膜は、中に水を流した場合に水の通過流量が多いこと、及び使用上問題の生じない強度を備えること、の観点で外径内径等を決定する。太さが細いと編むのが容易となるが水量が少ない。また微細孔からの透水量を多くすると強度が下がる。使用に適した中空糸膜は、例えば次の通りである。
外径:504μm
内径:264μm
透水量:155L/(m・bar・hr)
破断強力:2.5N
破断強度:17.6MPa
破断伸度:180%
【実施例0031】
図2に実施例2を示す。実施例2では編生地10を経編みで編んで形成し、編生地10の形成と並行して中空糸膜20を縦方向に挿入する挿入糸として編み込む。図3図2のA-A‘断面図である。図3に示す通り、編生地10は上地10aと下地10よりなり、中空糸膜20は,上地と下地が接合せずに形成された袋状の空所の中を延びている。袋状の空所以外の箇所では、上地と下地は編み止められて接合している。図2の点線は、ここに上地と下地が接合せずに形成された袋状の空所があり、その中に中空糸膜が存することを示している。
【0032】
実施例2における中空糸膜の編み込み方は次の通りである。実施例2では、緯糸は、表側を構成する緯糸と裏側を構成する緯糸の二重になっている。中空糸膜は、経方向に挿入する挿入糸として編み込む。挿入糸は経糸で絡み止めていく。実施例2では、挿入糸を絡み止める位置をX軸方向にずらさず、全範囲でX軸方向に同じ位置で絡み止めて、Y方向に編み進める。この編み方は公知の編み方である。挿入糸をからめとる位置での糸の配置等は次の通りである。まず、裏側になる緯糸が緯方向に糸を引かれ、次にその表側に挿入糸が経方向に引かれ挿入位置に用意される。次に表側になる緯糸が緯方向に引かれる。この段階で裏緯糸、挿入糸、表緯糸の順番で糸がある次に経糸が上記の糸を縛るように編む。このように経方向に編み込まれる挿入糸は経糸に触れることなく編み込まれていく。
【0033】
この結果、編生地の中空糸膜を絡み止めた箇所は空所になり、中空糸膜はこの空所に収まった状態となる。
【実施例0034】
実施例3では、編生地に編み込んだ中空糸膜の内部に水を流す例を説明する。図4に示す通り、中空糸膜20の開口両端はポンプ60と連結している。ポンプ60は弾性体で成り、手指で押すことにより水を送り出すことができる。水は水道水を用いる。
【0035】
ポンプは手指で押して用いる手動式なので、電源やスイッチは不要である。電源やスイッチを不要としたことにより、この布を製品に取り付けて用いる際等、便利である。また、ポンプを手動式としたことにより、水の流速の自由が利く。好ましい流速は、気温・湿度・中空糸膜の透水量等によって変動するところ、例えばこの布を衣服に利用した場合、着衣者が手動で調整できる。
【0036】
気化により水が減少するところ、ポンプのフタを開けて中の水を補充したり交換したりできる。水の腐敗を防ぐため、水道水に除菌・消臭機能が施されていることが好ましい。
【0037】
中空糸膜の内部を流れる水を、循環しない構成とすることができる。循環しない構成としたものを図10に例示する。この場合、中空糸膜の一端のみがポンプ60と連結し、他端は開放されている。内部を流れる水は、他端に至るまでに気化により大半が消滅する。
【実施例0038】
実施例4では、中空糸膜が編み込まれ、テープ状にされた布を衣服に取り付ける。「テープ状」とは幅が細くて長い状態をいう。取り付ける場所次第で、中空糸膜の編み込み方や中空糸膜の本数、編生地の材料を選択する。
【0039】
衣類の、冷やしたい箇所に、テープ状にされた布を縫い付けたり貼りつけたりして取り付ける。衣類に取り付けるという観点では、テープの幅は、例えば1cm~2cm程度が扱いやすい。
【0040】
図5に示す通り、テープ状にした布15を衣服62に縫い付ける。テープ状の布15には中空糸膜20が編み込まれている。25が縫い目である。中空糸膜20の一端がポンプ60とつながっている。図6で、中空糸膜20の配置に応じた縫い目25の関係を例示する。(a)、(b)及び(c)では中空糸膜が波型に編み込まれており、テープ状にされた布は縦方向に伸縮可能である。伸縮する必要がある箇所に取り付けるのに向いている。この場合編生地を伸縮性のある糸で構成する。(d)では中空糸膜は直線型に延びており縦方向に伸縮できない。
【0041】
(a)から(d)に示す通り、テープ状布15に編み込まれた中空糸膜20の位置に応じて、中空糸膜20の上を針が通らずに済む個所で、対象に縫いつける。
【0042】
実施例4ではテープ状布を取り付ける対象は衣服であるが、取付ける対象は衣類に限らない。冷やすことを目的とした場合、家具、自動車の車内のシート、建物の外壁や屋根に用いることができる。また、加湿を目的とした場合、室内のカーテンやパーティションに用いることができる。
【0043】
また、中空糸膜の内部に流す液体次第で様々に利用でき、それに応じた製品に取り付けることができる。防虫目的の場合には衣服に加え、テントに用いることができる。また、除菌目的の場合には、衣服に加え、室内のカーテンやパーティションに用いることができる。
【実施例0044】
実施例5では、中空糸膜を編み込んだ布を縫製する際に中空糸膜に針が貫通しないよう、「逃れ」を設ける例を説明する。
【0045】
中空糸膜を編み込んだ布は、製品化の際に縫製の工程を経る。中空糸膜を編み込んだ布をテープ状にして、製品に縫い付ける場合にも縫製の工程を経る。中空糸膜の内部を水が流れていることから、縫製の際に中空糸膜に針が貫通することは避ける必要がある。縫製により針が通る箇所は、中空糸膜を編み込んだ布を製造する時点には不明であるので、いずれの箇所が縫製対象となっても中空糸膜に針の貫通を避けることができるようにされている必要がある。
【0046】
図7及び図8は、中空糸膜を表面に編み込んだ布をテープ状の形態とした場合の「逃れ」の例である。図7では、中空糸膜20が、編生地10との関係でループ22を備え、ループ22の箇所は編生地10に編み込まれない。縫製の際は、縫い目25で示す位置、すなわち中空糸膜が編生地10に編み込まれていない位置を縫う。このループ22が「逃れ」に相当する(逃れA)。図8では、中空糸膜の、符号24で示す位置を編生地10に編み込まないが、中空糸膜をループ状にはしない。この、編み込まない位置24が「逃れ」に相当する(逃れB)。縫製の際には、24の位置の中空糸膜を持ち上げて避けながら、縫い目25の位置を縫う。
【符号の説明】
【0047】
10 編生地
10a 上地
10b 下地
15 テープ状の布
20 中空糸膜
22 逃れA
24 逃れB
25 縫い目
30 経糸
40 緯糸
50 中空糸膜止め
60 ポンプ
62 衣類
70 衣類
71 中空糸膜
72 ポンプ
73 吸水用器
74 電源
75 スイッチ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2021-08-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管壁に微細孔を有する中空糸膜が挿入糸として経方向に編生地に編み込まれた布。
【請求項2】
前記中空糸膜が前記編生地の片面に波型を呈して現れることを特徴とする請求項1に記載の布。
【請求項3】
前記編生地が上地と下地とから構成され、前記編生地は前記上地と前記下地が結合された一重組織部と前記上地と前記下地が別々に分離した二重袋状組織部とを備え、前記中空糸膜は前記二重袋状組織部に存することを特徴とする請求項1に記載の布。
【請求項4】
前記編生地は経編みされていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の布。
【請求項5】
前記中空糸膜に液体を供給するポンプを備え、前記中空糸膜の内部を液体が流れることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の布。
【請求項6】
前記液体が水であることを特徴とする請求項5に記載の布。
【請求項7】
テープ状の形体で成ることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の布。
【請求項8】
前記中空糸膜は、前記布を縫製する際に前記中空糸膜が針の貫通を避けるための逃れを備えて前記編生地に配置されることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の布。
【請求項9】
前記編生地が吸水性と高い水拡散性を備えることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の布。
【手続補正書】
【提出日】2022-01-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管壁に微細孔を有する中空糸膜が、経糸と緯糸で構成される編生地に、挿入糸として縦方向に編み込まれた布であって、
前記中空糸膜は前記編生地の片面に現れるか、あるいは
前記中空糸膜は上地と下地とから構成される前記編生地において
上地と下地が別々に分離して形成される二重袋状組織部に存する、
布。
【請求項2】
前記中空糸膜が前記編生地の片面に波型を呈して現れることを特徴とする請求項1に記載の布。
【請求項3】
前記編生地は経編みされていることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の布。
【請求項4】
前記中空糸膜に液体を供給するポンプを備え、前記中空糸膜の内部を液体が流れることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の布。
【請求項5】
前記液体が水であることを特徴とする請求項4に記載の布。
【請求項6】
テープ状の形体で成ることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の布。
【請求項7】
前記中空糸膜は、前記布を縫製する際に前記中空糸膜が針の貫通を避けるための逃れを備えて前記編生地に配置されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の布。
【請求項8】
前記編生地が吸水性と高い水拡散性を備えることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の布。