IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大阪瓦斯株式会社の特許一覧

特開2022-155265電源管理システム、燃料電池装置及び充放電装置
<>
  • 特開-電源管理システム、燃料電池装置及び充放電装置 図1
  • 特開-電源管理システム、燃料電池装置及び充放電装置 図2
  • 特開-電源管理システム、燃料電池装置及び充放電装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155265
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】電源管理システム、燃料電池装置及び充放電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20221005BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20221005BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
H02J13/00 311R
H02J3/38 110
H02J3/38 170
H02J3/32
H02J13/00 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058683
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】白木 壮哉
(72)【発明者】
【氏名】南 和徹
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AC05
5G064AC09
5G064CB13
5G064DA03
5G064DA05
5G066AA04
5G066HB07
5G066HB09
5G066JB03
(57)【要約】
【課題】電力需要の増大に伴う調整力の供出指令に対して、適切に対応可能な電源管理システム、燃料電池装置及び充放電装置を提供する。
【解決手段】電源管理システムAは、電源部12と電源制御部13とを有し、複数の施設20の夫々に設置されている電源装置10と、施設20の外部から複数の電源装置10の夫々の管理を行うことができる管理装置30と、を備え、管理装置30は、調整力の供出指令を受信すると共に、供出指令による調整力が現在の供出可能電力を上回っていたときに、管理対象の複数の電源装置10のうち、供出指令による所定の制御対象期間に停止、停止処理中、起動処理中の何れかの状態にある予定の複数の非運転電源装置10Aのうち少なくとも1つの装置に対し、電源部12を起動させる起動制御指令を送信し、起動制御指令を受けた非運転電源装置10Aの電源制御部13は、電源部12を起動させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電可能な電源部と電源制御部とを有し、複数の施設の夫々に設置されている電源装置と、
前記施設の外部からの通信により、複数の前記電源装置の夫々の管理を行うことができる管理装置と、を備える電源管理システムであって、
前記管理装置は、調整力の供出指令を受信すると共に、前記供出指令に基づく前記調整力が現在の供出可能電力を上回っていたときに、管理対象の複数の前記電源装置のうち、前記供出指令による将来の所定の制御対象期間に停止状態又は停止処理の実行途中若しくは起動処理の実行途中にあることが予定されている複数の前記電源装置である複数の非運転電源装置のうち少なくとも1つの装置に対して、前記供出指令による前記調整力を供出できるように前記電源部を起動させる起動制御指令を送信し、
前記起動制御指令を受けた前記非運転電源装置の前記電源制御部は、前記電源部を起動させる電源管理システム。
【請求項2】
前記電源制御部は、前記電源部の運転状態を制御可能に構成されており、
前記電源制御部は、前記電源部に前記停止処理を実行させる請求項1に記載の電源管理システム。
【請求項3】
前記施設には電力を消費する電力負荷装置が設置されており、
前記電源装置は、
前記電力負荷装置で消費された負荷電力を計測可能な計測部と、
前記計測部で計測された前記負荷電力を、前記電源部の発電により賄うときの発電コストを算出可能な演算部と、を更に有し、
前記電源制御部は、前記演算部で算出された前記発電コストが、前記電源部を発電させることにより利用者が享受できるメリットよりも大きくなる場合に、前記電源部に前記停止処理を実行させる請求項2に記載の電源管理システム。
【請求項4】
前記施設には電力を消費する電力負荷装置が設置されており、
前記電源装置は、前記電力負荷装置で消費された負荷電力を計測可能な計測部を更に有し、
前記計測部で計測した前記負荷電力が所定の値未満である状態が所定の期間以上継続した場合に、前記電源制御部は、前記電源部に前記停止処理を実行させる請求項2又は3に記載の電源管理システム。
【請求項5】
前記電源制御部は、前記電源部の運転状態を制御可能に構成されており、
前記管理装置は、前記管理対象の複数の前記電源装置のうち、前記供出指令による前記所定の制御対象期間に前記運転状態にある複数の前記電源装置の全ての前記電源部で供出可能な最大出力電力を発電したとしても、前記供出指令による前記調整力を供出できないときに、複数の前記非運転電源装置のうち少なくとも1つの装置に対して、前記供出指令による前記調整力を供出できるように前記電源部を起動させる起動制御指令を送信する請求項1から4の何れか一項に記載の電源管理システム。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載の電源管理システムで用いられる前記電源装置の機能を備え、前記電源部が燃料電池を備える燃料電池装置。
【請求項7】
請求項1から5の何れか一項に記載の電源管理システムで用いられる前記電源装置の機能を備え、前記電源部が充放電部を備える充放電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源管理システム、燃料電池装置及び充放電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統には、従来から有る大規模な発電所だけでなく、住宅や事業所などの施設に設置された発電装置や充放電装置等の電源装置も接続されている。また、施設に設置された電力負荷装置も電力系統に接続されている。そして、電源装置及び電力負荷装置を用いて施設の受電点電力を増減させることで、電力系統での電力の需給バランス調整に貢献することができる。近年では、バーチャルパワープラント(VPP:Virtual Power Plant)という概念の下で、需要家の施設に設置された上述のような電源装置及び電力負荷装置などの需要家側エネルギーリソースの動作を制御することで、発電所と同等の機能を提供することが試みられている。なお、施設の受電点電力という場合、電力系統から施設への受電電力及び施設から電力系統への逆潮流電力の両方が含まれる。
【0003】
電源装置の電源には、燃料電池が用いられることがある。燃料電池、特に固体酸化物形燃料電池は、高効率ではあるが、起動停止に対する耐性が低く、連続運転が適している。特許文献1には、固体酸化物形燃料電池から負荷への電力供給が一定以下の状態が一定時間以上継続した場合に自動的に固体酸化物形燃料電池の停止動作を行うと共に、系統電力から負荷への電力供給が一定以上の状態が一定時間以上継続した場合に自動的に固体酸化物形燃料電池の起動動作を行うように制御することが可能な固体酸化物形燃料電池を備えた燃料電池システムが開示されている。更には、夜間は電力消費量が少ないため発電を停止させ、朝方起動させるような、DSS運転(デイリースタートストップ運転)も開示されている。
【0004】
特許文献2には、所定の判定対象期間における負荷計測値の平均演算値を算出する負荷演算部と、平均演算値又は平均演算値から導出される代替値の何れかと判定しきい値に基づいて運転継続又は運転停止を判定する運転判定部と、判定しきい値を設定するしきい値設定部と、運転判定部の判定結果に基づいて、固体酸化物形燃料電池に対する運転継続指令又は運転停止指令を与える運転制御部とを備えた燃料電池システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-198768号公報
【特許文献2】特開2017-174750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2に記載のように、所定の条件下では燃料電池の運転を停止させることがある。しかし、特に固体酸化物形燃料電池は、作動温度が非常に高く、固体高分子形燃料電池と比べて起動及び停止に長い時間がかかるので、一度停止させると、電力需要の増大に伴う調整力の供出指令に対して、迅速に再起動させて、運転状態にすることは難しい。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電力需要の増大に伴う調整力の供出指令に対して、適切に対応可能な電源管理システム、燃料電池装置及び充放電装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る電源管理システムの特徴構成は、発電可能な電源部と電源制御部とを有し、複数の施設の夫々に設置されている電源装置と、前記施設の外部からの通信により、複数の前記電源装置の夫々の管理を行うことができる管理装置と、を備える電源管理システムであって、前記管理装置は、調整力の供出指令を受信すると共に、前記供出指令に基づく前記調整力が現在の供出可能電力を上回っていたときに、管理対象の複数の前記電源装置のうち、前記供出指令による将来の所定の制御対象期間に停止状態又は停止処理の実行途中若しくは起動処理の実行途中にあることが予定されている複数の前記電源装置である複数の非運転電源装置のうち少なくとも1つの装置に対して、前記供出指令による前記調整力を供出できるように前記電源部を起動させる起動制御指令を送信し、前記起動制御指令を受けた前記非運転電源装置の前記電源制御部は、前記電源部を起動させる点にある。
【0009】
上記特徴構成によれば、現在の供出可能電力を上回る調整力の供出指令に対して、非運転電源装置を予め起動させておくことにより、対応することができる。
【0010】
本発明に係る電源管理システムの別の特徴構成は、前記電源制御部は、前記電源部の運転状態を制御可能に構成されており、前記電源制御部は、前記電源部に前記停止処理を実行させる点にある。
【0011】
上記特徴構成によれば、電源部の発電状況を監視する電源制御部の判断により停止処理を実行させることができるので、電源装置を効率よく使用することができる。
【0012】
本発明に係る電源管理システムの更に別の特徴構成は、前記施設には電力を消費する電力負荷装置が設置されており、前記電源装置は、前記電力負荷装置で消費された負荷電力を計測可能な計測部と、前記計測部で計測された前記負荷電力を、前記電源部の発電により賄うときの発電コストを算出可能な演算部と、を更に有し、前記電源制御部は、前記演算部で算出された前記発電コストが、前記電源部を発電させることにより利用者が享受できるメリットよりも大きくなる場合に、前記電源部に前記停止処理を実行させる点にある。
【0013】
電力負荷装置における負荷電力が非常に小さい場合や熱負荷が非常に小さい場合などでは、電源部を最低出力電力で運転しても電源部で発生した出力電力や熱を電力負荷装置に供給してもなお余るため、電源装置を運転することによって得られるはずであった運転メリット(例えば、消費一次エネルギー削減量、エネルギーコスト削減量、排出二酸化炭素削減量など)が減少する。このように、演算部で算出された発電コストが、電源部を発電させることにより利用者が享受できるメリットよりも大きくなる場合に、電源部に前記停止処理を実行させることができるので、電源部の運転を継続させることによる無駄なエネルギー消費をなくし、電源装置を効率よく使用することができる。
【0014】
本発明に係る電源管理システムの更に別の特徴構成は、前記施設には電力を消費する電力負荷装置が設置されており、前記電源装置は、前記電力負荷装置で消費された負荷電力を計測可能な計測部を更に有し、前記計測部で計測した前記負荷電力が所定の値未満である状態が所定の期間以上継続した場合に、前記電源制御部は、前記電源部に前記停止処理を実行させる点にある。
【0015】
計測部で計測した負荷電力が所定の値未満である状態が所定の期間以上継続した場合には施設の利用者は不在であると考えられるので、このような場合には、電源制御部が電源部に停止処理を実行させることにより、電源部の運転を継続させることによる無駄なエネルギー消費をなくし、電源装置を効率よく使用することができる。
【0016】
本発明に係る電源管理システムの更に別の特徴構成は、前記電源制御部は、前記電源部の運転状態を制御可能に構成されており、前記管理装置は、前記管理対象の複数の前記電源装置のうち、前記供出指令による前記所定の制御対象期間に前記運転状態にある複数の前記電源装置の全ての前記電源部で供出可能な最大出力電力を発電したとしても、前記供出指令による前記調整力を供出できないときに、複数の前記非運転電源装置のうち少なくとも1つの装置に対して、前記供出指令による前記調整力を供出できるように前記電源部を起動させる起動制御指令を送信する点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、制御対象期間に運転状態にある複数の電源装置の出力電力を当初の運転スケジュールから変更して出力電力を最大にしたときに、供出指令に基づく調整力を供出できないときであっても、非運転電源装置を起動させることにより、現在の供出可能電力を上回る調整力の供出指令に対して、対応することができる。
【0018】
上記目的を達成するための本発明に係る燃料電池装置の特徴構成は、上記電源管理システムの何れかで用いられる前記電源装置の機能を備え、前記電源部が燃料電池を備える点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、受電点電力を上昇させる調整力及び受電点電力を低下させる調整力の両方を提供できる電源管理システムで用いられる電源装置の機能を備える燃料電池装置を提供できる。
【0020】
上記目的を達成するための本発明に係る充放電装置の特徴構成は、上記電源管理システムの何れかで用いられる前記電源装置の機能を備え、前記電源部が充放電部を備える点にある。
【0021】
上記特徴構成によれば、受電点電力を上昇させる調整力及び受電点電力を低下させる調整力の両方を提供できる電源管理システムで用いられる電源装置の機能を備える充放電装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】施設と、管理装置と、アグリゲーションコーディネーターとの関係を示した図である。
図2】施設の構成例を示す図である。
図3】電源管理システムの処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、燃料電池装置10(電源装置の一例)及び電力負荷装置4が設けられる施設20と、管理装置30と、アグリゲーションコーディネーター40との関係を示した図である。図2は、施設20の構成例を示す図である。電源管理システムAは、複数の施設20の夫々に設置されて電力を発電可能な燃料電池装置10と、施設20の外部からの通信により複数の燃料電池装置10の夫々の管理を行うことができる管理装置30とを備える。なお、図1に記載した管理装置30の数及び施設20の数は適宜変更可能である。
【0024】
管理装置30は、リソースアグリゲーター等とも呼ばれ、VPP(Virtual Power Plant)サービス契約を締結した施設20に対して需要家側エネルギーリソースとしての燃料電池装置10及び電力負荷装置4への制御情報を伝達することで、その需要家側エネルギーリソースの制御を行う事業者である。アグリゲーションコーディネーター40は、各管理装置30が制御する電力量を束ね、電気の取引市場等において一般送配電事業者や小売電気事業者と電力取引を行う事業者である。
【0025】
管理装置30は、複数の施設20から、燃料電池装置10の出力電力及び運転スケジュール、電力負荷装置4の負荷電力、施設20での受電点電力などの電力情報を逐次収集して記憶している。なお、本実施形態で「電力負荷装置4の負荷電力」と記載する場合、施設20に設けられている全ての電力負荷装置4の合計の負荷電力のことを意味する。そして、管理装置30は、将来の所定の時間帯に各施設20から供出可能な電力を予測し、アグリゲーションコーディネーター40に伝達する。この供出可能電力は、施設20の受電点電力を上げる能力又は下げる能力といった調整余力である。なお、本実施形態において、「受電点電力を上げる」という場合、図2に示す電力系統1から電力線2への受電電力を増加させる、又は、電力線2から電力系統1への逆潮流電力を減少させることを意味し、「受電点電力を下げる」という場合、電力系統1から電力線2への受電電力を減少させる、又は、電力線2から電力系統1への逆潮流電力を増加させることを意味する。
【0026】
例えば、施設20の受電点電力を上げるためには、燃料電池装置10の出力電力を下げること、及び、電力負荷装置4の負荷電力を上げることの少なくとも一方を行えばよいため、施設20の受電点電力を上げる場合の上げ側調整余力は、燃料電池装置10の出力電力を下げる余力がどの程度あるかを示し、電力負荷装置4の負荷電力を上げる余力がどの程度あるかを示す。また、施設20の受電点電力を下げるためには、燃料電池装置10の出力電力を上げること、及び、電力負荷装置4の負荷電力を下げることの少なくとも一方を行えばよいため、施設20の受電点電力を下げる場合の下げ側調整余力は、燃料電池装置10の出力電力を上げる余力がどの程度あるかを示し、電力負荷装置4の負荷電力を下げる余力がどの程度あるかを示す。
【0027】
また、管理装置30は、自身が管理する複数の施設20におけるベースライン受電点電力を決定する。このベースライン受電点電力は、各施設20から調整力(送配電事業者に提供する調整力及び小売事業者等に提供する供給力等を含む。以下同様。)を供出させない場合に予測される、各施設20の受電点電力の合計に相当する。
【0028】
図1に示すアグリゲーションコーディネーター40は、各管理装置30から受け取った供出可能電力を集計し、需給調整市場、卸電力市場などの電力の取引市場への入札を行うなどして、一般送配電事業者や小売電気事業者と電力取引を行う事業者の一例である。そして、アグリゲーションコーディネーター40は、取引を行った一般送配電事業者や小売電気事業者から、将来の所定の制御対象期間(以下、単に「制御対象期間」ともいう)での調整力の供出指令を受け取った場合、その供出指令で指定された調整力を各管理装置30に対して分配して伝達する。
【0029】
管理装置30は、アグリゲーションコーディネーター40から供出指令を受け取った場合、その供出指令で指定された調整力を各施設20に対して分配して伝達する。その結果、各施設20では、将来の所定の制御対象期間において需要家側エネルギーリソースとしての燃料電池装置10及び電力負荷装置4の制御が行われることで、その制御が行われなかった場合と比較して、施設20の受電点電力が増減するという調整力の供出が行われる。
【0030】
施設20には、燃料電池装置10と、電力負荷装置4とが設けられている。図2に示すように、燃料電池装置10及び電力負荷装置4は、電力系統1に連系される電力線2に接続される。電力線2には、施設20の受電電力を測定する電力メーター3が設置されている。なお、図1及び図2には、燃料電池装置10が1台設置されている例を示しているが、燃料電池装置10の設置台数は適宜変更可能である。
【0031】
電力メーター3で測定された受電点電力に関する情報は、ゲートウェイ5及びルーター6を介して管理装置30に伝達される。例えば、受電点電力に関する情報は、10秒毎などの所定のタイミングで管理装置30に伝達される。
【0032】
電力負荷装置4は、例えば照明装置、空調装置などの様々な装置であり、施設20に設置される燃料電池装置10及び電力系統1の少なくとも一方から電力供給を受けて電力を消費する。
【0033】
燃料電池装置10は、図2に示すように、電力系統1に連系される燃料電池部12(電源部の一例)と、燃料電池部12の発電電力を所定の電圧、周波数、位相に変換して電力線2に供給する電力変換部11と、燃料電池部12及び電力変換部11の動作を制御する燃料電池制御部13(電源制御部の一例)と、燃料電池装置10で取り扱われる情報を記憶する記憶部14と、電力負荷装置4で消費された負荷電力を計測する計測部15と、計測部15で計測された負荷電力を燃料電池部12の発電により賄うときの発電コストを算出する演算部16と、を備える。また、燃料電池装置10は、燃料電池部12の燃料ガスである水素を生成する燃料改質装置を備えていてもよい。
【0034】
燃料電池制御部13は、燃料電池部12の運転状態を制御可能に構成されている。燃料電池制御部13は、燃料電池部12を制御して、所定の上限出力電力(最大出力電力)と下限出力電力(最低出力電力)との間で、燃料電池装置10から電力線2への出力電力を調節できる。例えば、燃料電池制御部13は、燃料電池装置10の出力電力を上限出力電力に維持して連続運転させることができる。また、燃料電池制御部13は、燃料電池装置10の出力電力を、電力負荷装置4の負荷電力に追従させる運転を行わせることもできる。例えば、燃料電池制御部13は、電力測定部8で測定される電力(即ち、電力系統1から供給される電力)がゼロ又はゼロに近い電力になるように燃料電池装置10の出力電力を調節することで、電力負荷装置4の負荷電力に追従させる運転を行わせることができる。ただし、電力負荷装置4における負荷電力が非常に小さい場合や熱負荷が非常に小さい場合などでは、燃料電池部12を最低出力電力で運転しても燃料電池部12で発生した出力電力や熱を電力負荷装置4に供給してもなお余るため、燃料電池装置10を運転することによって得られるはずであった運転メリット(例えば、消費一次エネルギー削減量、エネルギーコスト削減量、排出二酸化炭素削減量など)が減少する。換言すると、電力負荷装置4で消費された負荷電力を燃料電池部12の発電により賄うときの発電コストが、燃料電池部12を発電させることにより利用者が享受できる運転メリットよりも大きくなる。
【0035】
このように、負荷電力が非常に小さい場合や熱負荷が非常に小さい場合には、燃料電池装置10(燃料電池部12)の運転を停止する方が、利用者にとってメリットがあるため、燃料電池制御部13は、運転中の燃料電池装置10(燃料電池部12)に運転停止の指令を行って、停止処理を実行させることができる。これにより、燃料電池装置10の運転を継続させることによる無駄なエネルギー消費を無くし、燃料電池装置10を効率よく使用することができる。
【0036】
また、計測部15で計測した負荷電力が所定の値未満である状態が所定の期間(例えば3日)以上継続した場合には、施設20の利用者は不在であると考えられる。このような場合にも、電力負荷装置4で消費された負荷電力を燃料電池部12の発電により賄うときの発電コストが、燃料電池部12を発電させることにより利用者が享受できる運転メリットよりも大きくなるので、燃料電池制御部13は、運転中の燃料電池装置10(燃料電池部12)に運転停止の指令を行って、停止処理を実行させることができる。これにより、燃料電池装置10の運転を継続させることによる無駄なエネルギー消費を無くし、燃料電池装置10を効率よく使用することができる。
【0037】
また、燃料電池制御部13は、停止中の燃料電池装置10(燃料電池部12)に対して運転開始の指令を行って、起動処理を実行させることができる。
【0038】
燃料電池制御部13は、電力変換部11から電力線2に供給する出力電力についての情報及び電力測定部8での測定電力についての情報を有しているため、電力負荷装置4の負荷電力(=出力電力+測定電力)を導出できる。なお、電力測定部8での測定電力の符号がプラスの場合は負荷電力が燃料電池装置10の出力電力よりも大きい状態であることを意味し、電力測定部8での測定電力の符号がマイナスの場合は負荷電力が燃料電池装置10の出力電力よりも小さい状態であることを意味する。
【0039】
燃料電池装置10は、施設20の利用者が燃料電池装置10に対する指令を行う場合に操作するリモコン7と接続されている。そして、燃料電池装置10が有する出力電力についての情報及び負荷電力についての情報などは、リモコン7及びルーター6を介して管理装置30に伝達される。例えば、燃料電池装置10が有する出力電力についての情報及び負荷電力についての情報などは、1分毎などの所定のタイミングで管理装置30に伝達される。
【0040】
上述したように、管理装置30は、アグリゲーションコーディネーター40から供出指令を受け取ったら、自身が管理する複数の施設20に対して、夫々の施設20が保有する燃料電池装置10の出力電力を定める出力制御指令を送信する指令送信処理を行う。そして、夫々の施設20の燃料電池装置10は、管理装置30からの出力制御指令に応じて、将来の所定の制御対象期間中、出力制御指令に基づいて定まる出力電力の供出を行う。
【0041】
しかし、管理装置30がアグリゲーションコーディネーター40から将来の所定の制御対象期間における供出指令を受け取ったときに、複数の施設20から収集して記憶している電力情報に基づくと、その時運転状態にある複数の施設20からの出力電力では供出指令に基づく調整力を供出できないと判断したとき、すなわち、供出指令に基づく調整力が現在の出力電力を上回っているときがある。例えば、夏場のエアコン使用等で電力需要が増加すると予想されるとき、曇天が続いて太陽光発電の出力減が予想されるとき、大規模な発電所の故障が発生し復旧が遅れると予想されるとき等である。
【0042】
管理装置30がそのように判断した場合には、管理装置30は、まず、将来の所定の制御対象期間に運転状態にある複数の燃料電池装置10の全ての燃料電池部12で供出可能な最大出力電力を発電したときに、アグリゲーションコーディネーター40からの供出指令に基づく調整力を供出できるか否かを検討する。所定の制御対象期間に運転状態にある複数の燃料電池装置10の出力電力を当初の運転スケジュールから変更して出力電力を最大にすることにより供出指令に基づく調整力を供出できるのであれば、所定の制御対象期間に運転状態にないその他の燃料電池装置10の運転スケジュールを変更する必要がないので、最小限の運転スケジュールの変更で済むからである。
【0043】
しかし、将来の所定の制御対象期間に運転状態にある複数の燃料電池装置10の全ての燃料電池部12で供出可能な最大出力電力を発電したとしても、供出指令に基づく調整力を供出できないことがわかったときは、管理装置30は、管理対象の複数の施設20が保有する夫々の燃料電池装置10のうち、供出指令による制御対象期間に停止状態又は停止処理の実行途中若しくは起動処理の実行途中にあることが予定されている複数の燃料電池装置10(以下、これを「複数の非運転燃料電池装置10A」という)のうち少なくとも1つの非運転燃料電池装置10A(非運転電源装置の一例)に対して、供出指令による調整力を供出できるように燃料電池部12を起動させる起動制御指令を送信する。
【0044】
上記の「制御対象期間に停止状態」にある非運転燃料電池装置10Aとは、管理装置30がアグリゲーションコーディネーター40から供出指令を受け取ったときに、運転状態にある燃料電池装置10、停止処理の実行途中の燃料電池装置10、停止状態にある燃料電池装置10、及び、起動処理の実行途中の燃料電池装置10のうち、制御対象期間に停止状態にあることが予定されている燃料電池装置10を全て含んでいる。また、「制御対象期間に停止処理の実行途中」にある非運転燃料電池装置10Aとは、管理装置30がアグリゲーションコーディネーター40から供出指令を受け取ったときに、運転状態にある燃料電池装置10、停止処理の実行途中の燃料電池装置10、停止状態にある燃料電池装置10、及び、起動処理の実行途中の燃料電池装置10のうち、制御対象期間に停止処理の実行途中であることが予定されている燃料電池装置10を全て含んでいる。また、「制御対象期間に起動処理の実行途中」にある非運転燃料電池装置10Aとは、管理装置30がアグリゲーションコーディネーター40から供出指令を受け取ったときに、運転状態にある燃料電池装置10、停止処理の実行途中の燃料電池装置10、停止状態にある燃料電池装置10、及び、起動処理の実行途中の燃料電池装置10のうち、制御対象期間に起動処理の実行途中であることが予定されている燃料電池装置10を全て含んでいる。
【0045】
管理装置30は、複数の非運転燃料電池装置10Aのうち、将来の所定の制御期間に運転状態になることにより、供出指令に基づく調整力が供出できる1又は複数の非運転燃料電池装置10Aを選んで、起動制御指令を送信する。
【0046】
管理装置30から起動制御指令を受信した非運転燃料電池装置10Aの燃料電池制御部13は、制御対象期間に運転状態になるように、燃料電池部12の運転スケジュールを変更する。運転スケジュールの変更とは、例えば、制御対象期間に停止状態にある予定の非運転燃料電池装置10Aを起動させたり、停止処理の実行途中にある予定の非運転燃料電池装置10Aの停止処理を中止(キャンセル)させたり、起動処理の実行途中にある予定の非運転燃料電池装置10Aの起動処理を前倒しして早めに起動処理を実行させたりすることである。
【0047】
特に、燃料電池部12を構成する燃料電池が固体酸化物形である場合には、起動から発電可能になるまで時間を要するため、アグリゲーションコーディネーター40の供出指令から制御対象期間までの期間が短い場合(例えば、半日から1日程度)には、供出指令を受信したときに運転状態にある非運転燃料電池装置10Aについては、停止処理を行わずに、運転状態を維持することが好ましい。また、起動制御指令を送信する非運転燃料電池装置10Aの台数は、供出指令に基づく調整力を供出するために必要な最低限の出力電力を発電する台数よりも、少し余裕を持った出力電力(例えば、最低限の出力電力の1.1倍)を発電できるような台数に決めることが好ましい。
【0048】
供出指令に基づく調整力を供出するために非運転燃料電池装置10Aに運転スケジュールを変更させて運転状態にするのであれば、運転スケジュールを変更する非運転燃料電池装置10Aの台数は少ないほど好ましい。一般に燃料電池、特に固体酸化物形燃料電池は、起動と停止の繰り返しや、発電時間が長くなるほど劣化し、故障のリスクが増加し、出力電力や発電効率が低下する。起動と停止が繰り返されると、運転中の高温状態から停止中の常温まで部材の温度が上下動することになるため、温度変化に伴って部品に加わる応力変化などの影響から、部品の耐久性や信頼性が低下するおそれがあるためである。したがって、管理装置30は、運転スケジュールを変更させる非運転燃料電池装置10Aを選定するときには、起動と停止の繰り返し回数が少なく、発電時間の短い非運転燃料電池装置10Aを優先的に選定する。起動と停止の繰り返し回数が少なく、発電時間の短い非運転燃料電池装置10Aを優先的に選ぶことにより、故障のリスクも低下し、確実に供出指令に基づく調整力を供出することができる。
【0049】
次に、電源管理システムAの処理フローについて、図3を用いて説明する。
【0050】
管理装置30がアグリゲーションコーディネーター40から調整力の供出指令を受けると(ステップS1)、自身が管理する複数の施設20から収集、記憶した、燃料電池装置10の出力電力及び運転スケジュール、電力負荷装置4の負荷電力、施設20での受電点電力などの電力情報を確認する(ステップS2)。記憶された電力情報のうち燃料電池装置10の出力電力及び運転スケジュールに基づいて、管理装置30が現在の複数の施設20からの出力電力では将来の所定の制御対象期間において供出指令に基づく調整力を供出できないと判断した場合には(ステップS3のNo)、管理対象の複数の施設20が保有する夫々の燃料電池装置10のうち、供出指令に基づく調整力を供出するのに必要な非運転燃料電池装置10Aを選定して(ステップS4)、燃料電池部12を起動させる起動制御指令を送信する(ステップS5)。起動制御指令を受信した非運転燃料電池装置10Aの燃料電池制御部13が燃料電池部12を起動させて(ステップS6)、起動処理の完了後に発電を行い(ステップS7)、管理装置30に発電した出力電力を供出する(ステップS8)。管理装置30は、供出指令に基づいて、アグリゲーションコーディネーター40に調整力を供出する(ステップS9)。
【0051】
管理装置30から起動制御指令を受けて起動した非運転燃料電池装置10Aの夫々について、所定の制御対象期間の終了後、管理装置30は、そのまま運転を継続させるか、再び停止させるかを判断し、夫々の非運転燃料電池装置10Aに運転継続指令又は運転停止指令を送信するとよい。例えば、上述したように、起動と停止を繰り返した非運転燃料電池装置10Aの燃料電池部12は劣化が進行している可能性が高いので、所定の回数以上起動と停止を繰り返した非運転燃料電池装置10Aに対しては、管理装置30は運転継続指令を送信する。また、発電時間が長時間に亘る非運転燃料電池装置10Aの燃料電池部12についても劣化が進行している可能性が高いので、発電時間が所定の時間以上である非運転燃料電池装置10Aについては、管理装置30は運転停止指令を送信する。更に、管理装置30は、運転継続により得られる利用者が享受できるメリット(例えばコスト)と運転停止により得られる利用者が享受できるメリットとを比較し、前者が後者より大きければ運転継続指令を送信し、後者が前者より大きければ運転停止指令を送信する。
【0052】
〔別実施形態〕
上記実施形態では、電源管理システムAの構成について具体例を挙げて説明したが、その構成は適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、電源装置が備える電源部が燃料電池部12を備える例を説明したが、電源部は電力を出力できる他の装置であってもよい。例えば、電源部が、蓄電池などの充放電部を備える装置であってもよい。その場合、電源管理システムで用いられる電源装置の機能を備え、電源部が充放電部を備える充放電装置が実現される。或いは、電源部は、エンジンとそのエンジンによって駆動される発電機とを備える装置などであってもよい。
【0053】
なお、上述した実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、電源管理システム、燃料電池装置及び充放電装置に利用できる。
【符号の説明】
【0055】
A 電源管理システム
4 電力負荷装置
10 燃料電池装置(電源装置)
10A 非運転燃料電池装置(非運転電源装置)
12 燃料電池部(電源部)
13 燃料電池制御部(電源制御部)
15 計測部
16 演算部
20 施設
30 管理装置
40 アグリゲーションコーディネーター
図1
図2
図3