(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155268
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04858 20160101AFI20221005BHJP
H01M 8/249 20160101ALI20221005BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20221005BHJP
H01M 8/043 20160101ALI20221005BHJP
H01M 8/04701 20160101ALI20221005BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20221005BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20221005BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20221005BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20221005BHJP
【FI】
H01M8/04858
H01M8/249
H01M8/04746
H01M8/043
H01M8/04701
H01M8/0432
H01M8/04537
H01M8/10 101
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058686
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】宅和 雄也
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA06
5H127AA07
5H127AB08
5H127AB11
5H127AB23
5H127AC02
5H127BA02
5H127BA05
5H127BA13
5H127BA34
5H127BA37
5H127BA57
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB19
5H127BB37
5H127DB47
5H127DB66
5H127DC02
5H127DC12
5H127DC42
5H127DC46
5H127DC83
5H127DC89
5H127EE03
5H127EE29
5H127GG04
5H127GG09
(57)【要約】
【課題】出力要請に迅速且つ確実に応答することが可能な燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池1と運転制御部Cと管理装置Gとを備える燃料電池システムにおいて、燃料電池1は、運転により発生した直流電力を電力変換部12により交流電力に変換して電力負荷部3に供給可能で、且つ、運転により発生した直流電力を電力変換部12により交流電力に変換して電力系統15に供給可能な状態及び電力系統15から電力負荷部3に電力供給可能な状態で電力系統15と連系されており、運転制御部Cは、施設100の受電点電力を上下させるために管理装置Gから出力制御指令が見込まれる日時より前に、受電点電力を維持した状態で、燃料ガス量、空気量及び水量の少なくとも1つを増減させる予備運転を実行する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の施設の夫々に設置されて電力を出力可能な燃料電池と、前記燃料電池に供給される燃料ガス量、空気量及び水量を制御する運転制御部と、複数の前記燃料電池との間で前記施設の外部から通信可能な管理装置と、を備える燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池は、運転により発生した直流電力を電力変換部により交流電力に変換して電力負荷部に供給可能で、且つ、運転により発生した直流電力を前記電力変換部により交流電力に変換して電力系統に供給可能な状態及び前記電力系統から前記電力負荷部に電力供給可能な状態で前記電力系統と連系されており、
前記管理装置は、前記運転制御部に対して、前記燃料電池の出力電力を定める出力制御指令を送信可能に構成されており、
前記運転制御部は、前記施設の受電点電力を上下させるために前記管理装置から前記出力制御指令が見込まれる日時より前に、前記受電点電力を維持した状態で、前記燃料ガス量、前記空気量及び前記水量の少なくとも1つを増減させる予備運転を実行する燃料電池システム。
【請求項2】
前記運転制御部は、前記受電点電力を下げるために前記管理装置から受電点電力下げ指令が見込まれる日時より前に、前記燃料ガス量、前記空気量及び前記水量の少なくとも1つを増大させる前記予備運転を実行し、当該予備運転において、前記電力変換部の変換効率を低下させる請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記運転制御部は、前記予備運転において、前記燃料電池の運転温度が所定の範囲となるように、前記燃料ガス量、前記空気量及び前記水量の少なくとも1つを調整する請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記運転制御部は、前記燃料電池の現在の電力値と前記出力制御指令における目標電力値との差が所定の電力値以上である場合に、前記予備運転を実行する請求項1から3の何れか一項に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統に連系された燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、商用系統(電力系統)に連系された燃料電池を備えた燃料電池システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の燃料電池システムは、燃料電池によって発電された電力の電圧をDC/DCコンバータにより昇圧した後、インバータにより交流に変換し、変換した電力を家庭内負荷に通電する。また、家庭内負荷の消費電力を上回った余剰電力は、DC/DCコンバータ内に設けられた駆動回路から、湯水を貯留する貯留槽内のヒータに通電する。これにより、逆潮流を防止して、停電作業の妨げとなることを防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、各施設に設けられた燃料電池等の需要側リソースを束ねて需要等を増減し、供給力等を提供するバーチャルパワープラント(VPP、仮想発電所)が普及しつつある。このVPPでは、例えば、アグリゲーションコーディネーターからの供出指令に基づいて、燃料電池等のリソース制御を行うリソースアグリゲータが各施設の受電点電力を上げ下げして調整力を供出する。例えば、リソースアグリゲータから各施設に受電点電力下げ指令を出すことにより、電力系統に電力を供給することができる。
【0006】
特許文献1に記載の燃料電池システムでは、ヒータに余剰電力を消費させることにより、逆潮流による意図しない需給バランスの崩れを防止することができるものの、受電点電力下げ指令があったときに燃料電池の出力を即座に上昇させる必要がある。一方、燃料電池は、燃料ガス量、空気量及び水量を調整して電力量を制御する関係上で、出力変動速度に限界があり、出力要請に応えることができないおそれがあった。
【0007】
そこで、出力要請に迅速且つ確実に応答することが可能な燃料電池システムが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る燃料電池システムの特徴構成は、複数の施設の夫々に設置されて電力を出力可能な燃料電池と、前記燃料電池に供給される燃料ガス量、空気量及び水量を制御する運転制御部と、複数の前記燃料電池との間で前記施設の外部から通信可能な管理装置と、を備える燃料電池システムにおいて、前記燃料電池は、運転により発生した直流電力を電力変換部により交流電力に変換して電力負荷部に供給可能で、且つ、運転により発生した直流電力を前記電力変換部により交流電力に変換して電力系統に供給可能な状態及び前記電力系統から前記電力負荷部に電力供給可能な状態で前記電力系統と連系されており、前記管理装置は、前記運転制御部に対して、前記燃料電池の出力電力を定める出力制御指令を送信可能に構成されており、前記運転制御部は、前記施設の受電点電力を上下させるために前記管理装置から前記出力制御指令が見込まれる日時より前に、前記受電点電力を維持した状態で、前記燃料ガス量、前記空気量及び前記水量の少なくとも1つを増減させる予備運転を実行する点にある。
【0009】
本構成では、施設の受電点電力を上下させるために管理装置から出力制御指令が見込まれる日時より前に、受電点電力を維持した状態で、燃料ガス量、空気量及び水量の少なくとも1つを増減させる予備運転を実行する。つまり、受電点電力を変化させること無く、管理装置から燃料電池への出力増減要請(受電点電力の上下指令)に備えた予備運転を実行する。
【0010】
例えば、出力増要請(受電点電力の下げ指令)が見込まれる日時が予め分かっており、燃料ガス量が負荷追従運転に従った所定量で空気量や水量が余分に供給されている場合、出力増要請日時より前に燃料ガス量を増大させることにより、電力系統に供出すべき必要電力量を仮想的に確保する。その結果、出力要請に迅速且つ確実に応答することができる。
【0011】
他の特徴構成は、前記運転制御部は、前記受電点電力を下げるために前記管理装置から受電点電力下げ指令が見込まれる日時より前に、前記燃料ガス量、前記空気量及び前記水量の少なくとも1つを増大させる前記予備運転を実行し、当該予備運転において、前記電力変換部の変換効率を低下させる点にある。
【0012】
本構成のように、出力増要請に対応した予備運転において、燃料電池からの電力を直流から交流に変換する変換効率を低下させることにより、仮想的に余剰電力を消費する状態を作り出せば、受電点電力下げ指令があったときに変換効率を元に戻すだけで良いので、迅速な応答性を確保できる。
【0013】
他の特徴構成は、前記運転制御部は、前記予備運転において、前記燃料電池の運転温度が所定の範囲となるように、前記燃料ガス量、前記空気量及び前記水量の少なくとも1つを調整する点にある。
【0014】
燃料電池は、運転温度に対応した出力電力となっているため、本構成のように燃料電池の運転温度により予備運転制御をすれば、簡便な制御形態により電力系統に供出すべき必要電力量を仮想的に確保することができる。
【0015】
他の特徴構成は、前記運転制御部は、前記燃料電池の現在の電力値と前記出力制御指令における目標電力値との差が所定の電力値以上である場合に、前記予備運転を実行する点にある。
【0016】
本構成のように、現在の電力値と目標電力値との差が所定の電力値以上である場合に予備運転を実行すれば、燃料電池の出力変動速度に対応した効率的な制御となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】施設、管理装置及びアグリゲーションコーディネーターの関係を示した図である。
【
図4】本実施形態に係る燃料電池の予備制御例である。
【
図5】別実施形態に係る燃料電池の予備制御例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る燃料電池システムの実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態では、燃料電池システムの一例として、需給調整市場,卸電力市場,容量市場等に用いられる燃料電池システムについて説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0019】
[全体概要]
図1は、燃料電池装置X及び電力負荷部3が設けられる施設100と、管理装置Gと、アグリゲーションコーディネーターZとの関係を示した図である。
図2は、施設100の構成例を示す図である。燃料電池システムは、複数の施設100の夫々に設置されて電力を出力可能な燃料電池装置Xと、複数の燃料電池装置Xとの間で施設100の外部の遠隔地から通信を行うことができる管理装置Gとを備える。なお、
図1に記載した管理装置Gの数及び施設100の数は適宜変更可能である。
【0020】
管理装置Gは、リソースアグリゲータ等とも呼ばれ、バーチャルパワープラント(VPP、仮想発電所)サービス契約を締結した施設100に対して需要家側エネルギーリソースとしての燃料電池装置X及び電力負荷部3への制御情報を伝達することで、その需要家側エネルギーリソースの制御を行う事業者である。アグリゲーションコーディネーターZは、各管理装置Gが制御する電力量を束ね、電気の取引市場(需給調整市場、卸電力市場、容量市場等)において一般送配電事業者や小売電気事業者と電力取引を行う事業者である。
【0021】
図1~
図2に示すように、管理装置Gは、複数の施設100から、燃料電池装置Xの出力電力、電力負荷部3の負荷電力、施設100での電力メーターMの受電点電力などの電力情報を逐次収集して記憶している。なお、本実施形態で「電力負荷部3の負荷電力」と記載する場合、施設100に設けられている全ての電力負荷部3の合計の負荷電力のことを意味する。そして、管理装置Gは、将来の所定の時間帯に各施設100から供出可能な電力を予測し、アグリゲーションコーディネーターZに伝達する。この供出可能電力は、施設100の受電点電力を上げる能力又は下げる能力といった調整余力である。なお、本実施形態において、「受電点電力を上げる」と言う場合、電力系統15から電力線PLへの受電電力(順潮流電力)を増加させる、又は、電力線PLから電力系統15への逆潮流電力を減少させることを意味し、「受電点電力を下げる」と言う場合、電力系統15から電力線PLへの受電電力(順潮流電力)を減少させる、又は、電力線PLから電力系統15への逆潮流電力を増加させることを意味する。
【0022】
例えば、施設100の受電点電力を上げるためには、燃料電池装置Xの出力電力を下げること、及び、電力負荷部3の負荷電力を上げることの少なくとも一方を行えばよいため、施設100の受電点電力を上げる場合の上げ側調整余力は、燃料電池装置Xの出力電力を下げる余力がどの程度あるかを示し、電力負荷部3の負荷電力を上げる余力がどの程度あるかを示す。また、施設100の受電点電力を下げるためには、燃料電池装置Xの出力電力を上げること、及び、電力負荷部3の負荷電力を下げることの少なくとも一方を行えばよいため、施設100の受電点電力を下げる場合の下げ側調整余力は、燃料電池装置Xの出力電力を上げる余力がどの程度あるかを示し、電力負荷部3の負荷電力を下げる余力がどの程度あるかを示す。
【0023】
また、管理装置Gは、自身が管理する複数の施設100におけるベースライン受電点電力を決定する。このベースライン受電点電力は、各施設100から調整力等(即ち、送配電事業者に提供する調整力及び小売事業者等に提供する供給力等を含む)を供出させない場合に予測される、各施設100の受電点電力の合計に相当する。
【0024】
アグリゲーションコーディネーターZは、各管理装置Gから受け取った供出可能電力を集計し、需給調整市場,卸電力市場,容量市場等の取引市場への入札を行うなどして、一般送配電事業者や小売電気事業者と取引を行う。そして、アグリゲーションコーディネーターZは、取引を行った一般送配電事業者や小売電気事業者から、将来の所定の制御対象期間での調整力等の供出指令を受け取った場合、その供出指令で指定された調整力等を各管理装置Gに対して分配して伝達する。
【0025】
管理装置Gは、アグリゲーションコーディネーターZから供出指令を受け取った場合、その供出指令で指定された調整力等を各施設100に対して分配して伝達する。その結果、各施設100では、将来の所定の制御対象期間において需要家側エネルギーリソースとしての燃料電池装置X及び電力負荷部3の制御が行われることで、その制御が行われなかった場合と比較して、施設100の受電点電力が増減するという調整力等の供出が行われる。
【0026】
施設100には、燃料電池装置Xと、電力負荷部3とが設けられている。燃料電池装置X及び電力負荷部3は、電力系統15に連系される電力線PLに接続される。電力線PLには、施設100の受電電力を測定する電力メーターMが設置されている。なお、
図1及び
図2には、燃料電池装置Xが各施設100に1台設置されている例を示しているが、燃料電池装置Xの設置台数は適宜変更可能である。
【0027】
電力メーターMで測定された受電点電力に関する情報は、ゲートウェイGW及びルーターRTを介して管理装置Gに伝達される。例えば、受電点電力に関する情報は、10秒毎などの所定のタイミングで管理装置Gに伝達される。
【0028】
電力負荷部3は、例えば照明装置、空調装置などの様々な装置であり、施設100に設置される燃料電池装置X及び電力系統15の少なくとも一方から電力供給を受けることができる。
【0029】
燃料電池装置Xは、電力系統15に連系される固体酸化物形燃料電池1を備える。また、固体酸化物形燃料電池1の発電電力は、電力変換部12にて所定の電圧、周波数、位相に変換して電力線PLに供給される。燃料電池装置X及び電力変換部12の動作は、運転制御部Cにより制御される。
【0030】
運転制御部Cは、所定の上限出力電力と下限出力電力との間で、燃料電池装置Xから電力線PLへの出力電力を調節できる。例えば、運転制御部Cは、燃料電池装置Xの出力電力を上限出力電力に維持して連続運転(定格出力運転)させることができる。また、運転制御部Cは、燃料電池装置Xの出力電力を、電力負荷部3の負荷電力に追従させる運転(負荷追従運転)を行わせることもできる。例えば、運転制御部Cは、電力系統15から供給される電力がゼロ又はゼロに近い値になるように燃料電池装置Xの出力電力を調節することで、電力負荷部3の負荷電力に追従させる運転を行わせることができる。
【0031】
運転制御部Cは、電力変換部12から電力線PLに供給する出力電力についての情報及び電力メーターMでの測定電力についての情報を有しているため、電力負荷部3の負荷電力(=出力電力+測定電力)を導出できる。なお、電力メーターMでの測定電力の符号がプラス(順潮流)の場合は負荷電力が燃料電池装置Xの出力電力よりも大きい状態であることを意味し、電力メーターMでの測定電力の符号がマイナス(逆潮流)の場合は燃料電池装置Xの出力電力が負荷電力よりも大きい状態であることを意味する。
【0032】
燃料電池装置Xは、施設100の利用者が燃料電池装置Xに対する指令を出す場合に操作するリモコンRMと接続されている。そして、燃料電池装置Xが有する出力電力についての情報及び負荷電力についての情報などは、リモコンRM及びルーターRTを介して管理装置Gに伝達される。例えば、燃料電池装置Xが有する出力電力についての情報及び負荷電力についての情報などは、1分毎などの所定のタイミングで管理装置Gに伝達される。
【0033】
上述したように、管理装置Gは、複数の燃料電池装置Xに対して、燃料電池装置Xの出力電力を定める出力制御指令を送信できる。そして、燃料電池装置Xは、管理装置Gから出力制御指令を受け取った場合、出力制御指令の対象となる制御対象期間の間、出力制御指令に基づいて定まる出力電力の供給を目標とする第1運転モードで動作し、制御対象期間から外れる非制御対象期間の間、第1運転モードとは別の第2運転モードで動作する。
【0034】
第1運転モードは、需給調整市場,卸電力市場又は容量市場において出力制御指令(需給調整市場の出力増減要請や容量市場の発動指令等)が見込まれる日(受電点電力下げ指令日又は受電点電力上げ指令日)において、複数の燃料電池装置Xの出力電力を調整する運転モードである。この第1運転モードにおいて、施設100の受電点電力を下げることが要請される日時を「受電点電力下げ指令日時」と称し、施設100の受電点電力を上げることが要請される日時を「受電点電力上げ指令日時」と称する。
【0035】
第2運転モードは、複数の燃料電池装置Xにおいて予め設定されている運転モードである。或いは、管理装置Gは、複数の燃料電池装置Xに対して、第2運転モードを定める運転モード制御指令を送信でき、燃料電池装置Xは、管理装置Gから受け取った運転モード制御指令に従って第2運転モードを決定する。例えば、第2運転モードは、燃料電池装置Xの出力電力を上限出力電力で維持する運転(定格出力運転)、燃料電池装置Xの出力電力を電力負荷部3の負荷電力に追従させる運転(負荷追従運転)などである。
【0036】
[燃料電池システムの構成]
図3は、燃料電池装置Xの構成を示す図である。燃料電池システムは、上述した管理装置Gと、燃料電池装置Xと、電力変換部12と、燃料電池装置X及び電力変換部12の作動を制御する運転制御部Cとを備える。運転制御部Cは、情報処理機能,情報記憶機能及び情報通信機能等を有するハードウェア及びソフトウェアで構成されており、各施設100に設けられているが、一部又は全部が管理装置Gに設けられていても良い。
【0037】
燃料電池装置Xは、運転により発生した直流電力を電力変換部12により交流電力に変換して電力負荷部3に供給すると共に運転により発生した熱を熱負荷部4に供給する固体酸化物形燃料電池1(燃料電池の一例)と、燃料電池装置Xの雰囲気温度を計測する雰囲気温度センサT1とを備える。電力負荷部3は、固体酸化物形燃料電池1から供給される電力に加えて、電力系統15から供給される電力も消費することが可能である。つまり、固体酸化物形燃料電池1は、運転により発生した直流電力を電力変換部12により交流電力に変換して電力負荷部3に供給可能で、且つ、電力系統15から電力負荷部3に電力供給可能な状態及び運転により発生した直流電力を電力変換部12により交流電力に変換して電力系統15に供給可能な状態で電力系統15と連系されている。
【0038】
熱負荷部4は、固体酸化物形燃料電池1から発生する熱に加えて、原燃料を燃焼して熱を発生する補助熱源装置11から供給される熱を消費することもできる。
【0039】
固体酸化物形燃料電池1は、供給される改質用水を蒸発させる気化器1bと、原燃料(炭化水素を含むガス、例えば都市ガス13A)を水蒸気改質して燃料ガス(水素を含むガス)を生成する改質器1aと、改質器1aで生成された燃料ガスを用いて発電する複数の燃料電池セルSを有するセルスタックと、セルスタックからのオフガスを燃焼する燃焼部1cと、を容器1Aの内部に備える。この容器1Aは、断熱性を有する材料を用いて構成されていることが好ましい。セルスタックは電力変換部12に電気的に接続される。
【0040】
セルスタックは、改質器1aで生成された燃料ガスが通流する燃料通流部(図示せず)を有するアノード50と、酸素(空気)が通流する空気通流部(図示せず)を有するカソード60とを備えた燃料電池セルSを、複数個電気的に直列接続した状態で備えている。図示は省略するが、燃料電池セルSは、アノード50とカソード60との間に固体電解質層を備えた固体酸化物形に構成される。アノード50に燃料ガスが供給され、カソード60に酸素が供給される。
【0041】
セルスタックの下部には、改質器1aから燃料ガス流路L4を通して供給される燃料ガスを受け入れるガスマニホールド1eが設けられる。このガスマニホールド1eに供給された燃料ガスが複数の燃料電池セルSの下端から上方側に通流して発電反応に供される。発電反応に供されたのちの排出燃料ガスは、上端の燃料ガス排出口50aから排出される。
【0042】
固体酸化物形燃料電池1には、空気供給流路L5が接続された空気導入部70が設けられており、この空気供給流路L5の途中には、エアフィルタ21とエアブロア22とエア流量計23とが設けられる。エアブロア22の作動により、空気が空気供給流路L5を通して容器1A内に供給される。エアフィルタ21は、エアブロア22によって空気供給流路L5に吸い込まれた空気中の塵などの異物を捕らえる。エア流量計23は、容器1A内に供給される空気の単位時間当たりの流量を測定する。複数の燃料電池セルSの夫々には容器1A内の空気が下方側から上方側に通流して発電反応に供される。発電反応に供されたのちの排空気は、上端の空気排出口60aから排出される。エア流量計23の測定結果は運転制御部Cに伝達され、エアブロア22の動作は運転制御部Cが制御する。
【0043】
セルスタックの上方には、燃料ガス排出口50aから排出される発電反応に用いられなかった水素を含む排出燃料ガスと、空気排出口60aから排出される排空気と、を燃焼させる燃焼空間が形成される。これら排出燃料ガスと排空気とが、セルスタックからのオフガスとなる。この燃焼空間には点火器1dも設けられる。つまり、セルスタックの上方の燃焼空間によって、セルスタックからのオフガスを燃焼する燃焼部1cが実現される。加えて、一体で構成された気化器1bと改質器1aとが、燃焼部1cとして機能するセルスタックの上方の燃焼空間に隣接して設けられている。点火器1dの動作は運転制御部Cが制御する。燃焼温度センサT3は燃焼部1cの温度を測定し、その測定結果は運転制御部Cに伝達される。そして、燃焼部1cでの燃焼が適正に行われているか否かの判定などに用いられる。
【0044】
容器1Aには、燃焼部1cにて発生した燃焼排ガスを、熱交換器Eを経由させて外部に排出するための排気部80が下部に形成されている。そして、容器1A内には、排気部80から外部に排出される燃焼排ガス中の一酸化炭素ガス等を除去する燃焼触媒部90(例えば、白金系触媒)が設けられている。雰囲気温度センサT1は容器1A内部の温度、例えば、セルスタックの側方の温度を測定し、その測定結果は運転制御部Cに伝達される。
【0045】
気化器1bは、供給される改質用水を、燃焼部1cから伝えられる燃焼熱を用いて加熱して蒸発させる。改質用水タンク24に貯えられている改質用水は、改質用水タンク24に連結される改質用水流路L2を介して気化器1bに供給される。具体的には、改質用水ポンプPが動作することで改質用水タンク24に貯えられている改質用水が改質用水流路L2を通流して気化器1bの内部に流入する。改質用水ポンプPの動作は運転制御部Cが制御する。このように、改質用水ポンプPは、改質器1aに供給する改質用水の単位時間当たりの流量を調節する水流量調節部として機能する。
【0046】
気化器1bには原燃料流路L1を介して原燃料も供給される。原燃料流路L1の途中には質量流量計Faと原燃料ブロアBとが設けられている。質量流量計Faには例えば原燃料の熱拡散作用を利用して測定を行う熱式質量流量計が用いられる。更に、原燃料ブロアBの下流側の原燃料流路L1には、原燃料(例えば、都市ガス等)に含まれる硫黄化合物を取り除くための脱硫器20が設けられている。そして、原燃料ブロアBが動作することで、原燃料が原燃料流路L1を通流し且つ脱硫器20で脱硫された後で気化器1bの内部に流入する。質量流量計Faは、気化器1bに供給される原燃料の単位時間当たりの流量を測定し、その測定結果は運転制御部Cに伝達される。質量流量計Faが熱式質量流量計である場合、運転制御部Cは、記憶している供給原燃料熱量の値を参照して、原燃料の流量を決定する。運転制御部Cは、質量流量計Faを用いて測定される原燃料の流量が目標の流量になるように原燃料ブロアB及び後述する開閉バルブV1の動作を制御する。このように、原燃料ブロアB及び開閉バルブV1は、改質器1aに供給する原燃料の単位時間当たりの流量を調節する原燃料流量調節部として機能する。以上のようにして、気化器1bでは、運転制御部Cによって単位時間当たりの供給量が制御された原燃料及び水蒸気が混合された混合ガスが生成され、混合ガス流路L3を介して改質器1aに供給される。
【0047】
改質器1aは、気化器1bから供給される混合ガスに含まれる原燃料の水蒸気改質処理を行う。図示は省略するが、改質器1aの内部には改質触媒が充填されており、この改質触媒の触媒作用によって原燃料が改質処理される。また、気化器1bと同様に、改質器1aにも、燃焼部1cで発生した燃焼熱が伝達される。改質温度センサT2は改質器1aの温度(例えば、改質触媒の温度)を測定し、その測定結果は運転制御部Cに伝達される。そして、改質器1aの温度が適正か否かの判定などに用いられる。
【0048】
固体酸化物形燃料電池1の発電電力は電力変換部12に供給される。電力変換部12は固体酸化物形燃料電池1の発電電力を電力系統15から受電する受電電力と同じ電圧、同じ位相及び同じ周波数にする。電力変換部12の動作は運転制御部Cが制御する。電力変換部12は、発電電力供給ライン13を介して受電電力供給ライン14に電気的に接続される。そして、固体酸化物形燃料電池1からの発電電力が電力変換部12,発電電力供給ライン13及び受電電力供給ライン14(上述した電力線PLに相当)を介して電力負荷部3に供給される。この受電電力供給ライン14は電力系統15に接続されている。つまり、固体酸化物形燃料電池1は、運転により発生した直流電力を電力変換部12により交流電力に変換して電力系統15に供給可能な状態で電力系統15と連系されている。
【0049】
電力変換部12は、燃料電池セルSのアノード50及びカソード60に接続されており、昇圧回路12a、インバータ回路12b及び平滑回路12cを備えている。昇圧回路12aは、燃料電池セルSの直流電力の直流電圧を昇圧する。インバータ回路12bは、昇圧回路12aで昇圧された直流電圧を交流電圧に変換する。平滑回路12cは、インバータ回路12bで変換された交流電圧を平滑化、つまり交流電圧のノイズを除去するノイズ除去フィルタとして機能する。
【0050】
インバータ回路12bは、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等から構成される複数のスイッチング素子を備えている。例えば単相2線で構成される一対のスイッチング素子は、昇圧回路12aの一対の出力端の間に直列に接続されている。つまり、一方のスイッチング素子のコレクタ端子が昇圧回路12aの出力端の一端に接続され、一方のスイッチング素子のエミッタ端子と他方のスイッチング素子のコレクタ端子とが接続され、他方のスイッチング素子のエミッタ端子が昇圧回路12aの出力端の他端に接続されている。
【0051】
この電力変換部12は次のように動作する。燃料電池セルSが発電した直流電力の直流電圧は、昇圧回路12aによって昇圧される。昇圧された直流電圧は、インバータ回路12bに入力されると、所定のスイッチング周波数によりスイッチング素子が切り替えられることにより、交流電圧に変換される。インバータ回路12bから出力された交流電圧は平滑回路12cに導入されて、交流電力として出力される。このように固体酸化物形燃料電池1が発電した発電電力と、電力系統15の商用電力とは、電力変換部12を介して連系運転可能となる。
【0052】
受電電力供給ライン14には、電力負荷部3の電力負荷を計測する電力負荷計測部16が設けられ、その計測結果が運転制御部Cに伝達される。そして、運転制御部Cは、電力系統15から供給される電力がゼロ又はゼロに近い値になるように燃料電池装置Xの出力電力を調節することで、電力負荷部3の負荷電力に追従させる運転(第2運転モードの負荷追従運転)を行わせることができる。この負荷追従運転は、上述した電力メーターM付近での受電点電力の計測値に基づいて固体酸化物形燃料電池1の発電電力を制御しても良いし、電力負荷計測部16で検出される電力負荷と固体酸化物形燃料電池1から受電電力供給ライン14に供給される発電電力とが等しくなるように制御しても良い。また、運転制御部Cは、固体酸化物形燃料電池1を定格出力(固体酸化物形燃料電池1に供給されるガス流量が120~130L/h)で動作させることも可能である(第2運転モードの定格出力運転)。ただし、負荷追従運転において、電力負荷計測部16で計測される電力負荷が、固体酸化物形燃料電池1の最低発電電力(電力変換部12により受電電力供給ライン14に供給される最低発電電力)よりも小さい場合、余剰電力が発生する。また、定格出力運転モードにおいて、固体酸化物形燃料電池1を定格出力で動作させ、電力変換部12からの出力電力が電力負荷よりも大きい場合にも、余剰電力が発生する。その余剰電力を熱に代えて回収する余剰電力消費用の電気ヒータ9で消費しても良い。
【0053】
なお、電力負荷部3にどのような装置を含めるのかは適宜設定可能である。例えば、固体酸化物形燃料電池1を運転するために用いられる補機や、熱負荷部4へ供給する湯水の凍結を防止する凍結防止用ヒータ等を、電力負荷部3から除外するような設定も可能である。また、電力負荷部3の待機電力を、電力負荷計測部16で計測する電力負荷から減算してもよい。
【0054】
電気ヒータ9は、複数の抵抗加熱器から構成され、排熱回収用ポンプ7の作動により排熱回収路6を通流する湯水を加熱する。
【0055】
貯湯タンク2には、固体酸化物形燃料電池1で発生した熱が湯水の形態で蓄えられる。つまり、貯湯タンク2は、固体酸化物形燃料電池1の運転により発生した熱を用いて加温された湯水が貯留される。貯湯タンク2の下部には、給水路17を介して上水が供給される。貯湯タンク2の内部では、相対的に低温の湯水がその下部に貯えられ、相対的に高温の湯水がその上部に貯えられるように構成されている。
【0056】
貯湯タンク2に貯えられている湯水は、排熱回収用ポンプ7を作動させることにより、排熱回収路6を通って固体酸化物形燃料電池1の燃焼排ガスが流通する熱交換器Eと貯湯タンク2との間で循環する。排熱回収路6の途中には、排熱回収路6を通って貯湯タンク2から熱交換器Eへと流れる湯水からの放熱を行うための放熱器8が設置されている。貯湯タンク2の上部に貯留されている相対的に高温の湯水は、貯湯タンク2の上部に接続されている湯水供給路5及び補助熱源装置11を介して熱負荷部4に供給される。
【0057】
熱負荷部4は、給湯用途や暖房用途等である。熱負荷部4が給湯用途の場合、湯水は貯湯タンク2へ帰還しない。熱負荷部4が暖房用途の場合、湯水が保有している熱のみが消費されて、湯水は貯湯タンク2へと帰還することもある。
【0058】
燃料計Yは、固体酸化物形燃料電池1に原燃料流路L1を介して供給される原燃料(燃料)、及び、補助熱源装置11やガスコンロ等で構成される他の燃料消費機器Kに原燃料流路L6を介して供給される原燃料(燃料)の合計体積を計測する。
【0059】
[運転制御部による制御形態]
続いて、燃料電池システムの運転制御部Cに係る制御形態について説明する。上述したように、管理装置Gは、複数の燃料電池装置Xの運転制御部Cに対して、固体酸化物形燃料電池1の出力電力を定める出力制御指令を送信できる。燃料電池装置Xは、この出力制御指令に基づいて定まる出力電力の供給を目標とする第1運転モードで動作する。一方、出力制御指令がないときは、第1運転モードとは別の第2運転モードで動作する。第2運転モードとして、燃料電池装置Xの出力電力を電力負荷部3の負荷電力に追従させる運転(負荷追従運転)をしている場合、施設100の受電点電力下げ指令(燃料電池装置Xの出力増要請)があったときに、固体酸化物形燃料電池1の特性上、余剰電力を即座に確保できない。また、第2運転モードとして、燃料電池装置Xの出力電力を上限出力電力で維持する運転(定格出力運転)をしている場合、施設100の受電点電力上げ指令(燃料電池装置Xの出力減要請)があったときに、固体酸化物形燃料電池1の特性上、出力電力を即座に低下できない。
【0060】
そこで、本実施形態における運転制御部Cは、
図4~
図5に示すように、施設100の受電点電力を上下させるために管理装置Gから出力制御指令が見込まれる日時(受電点電力上げ指令日時又は受電点電力下げ指令日時)より前に、受電点電力を維持した状態で(電力変換部12からの出力を維持した状態で)、固体酸化物形燃料電池1に供給される燃料ガス量、空気量及び水量の少なくとも1つを増減させる予備運転を実行する。つまり、受電点電力を変化させること無く、管理装置Gから燃料電池装置Xへの出力増減要請に備えた予備運転を実行する。
【0061】
運転制御部Cは、この予備運転において、原燃料ブロアB及び開閉バルブV1を制御して、改質器1aに供給する原燃料の単位時間当たりの燃料ガス量を調整し、エアブロア22を制御して、容器1A内に供給される空気の単位時間当たりの空気量を調整し、改質用水ポンプPを制御して、改質器1aに供給する改質用水の単位時間当たりの水量を調整する。これにより、例えば、出力増要請が見込まれる日時(受電点電力下げ指令日時)が予め分かっており、燃料ガス量が負荷追従運転に従った所定量で空気量や水量が余分に供給されている場合、受電点電力下げ指令日時より前に燃料ガス量を増大させることにより、電力系統15に供出すべき必要電力量を仮想的に確保する。その結果、出力要請に迅速且つ確実に応答することができる。
【0062】
また、運転制御部Cは、インバータ回路12bのスイッチング周波数を上下させて、固体酸化物形燃料電池1の出力電力を直流から交流に変換する変換効率を変化させ、電力変換部12からの出力を維持する。例えば、施設100の受電点電力を下げるための管理装置Gから燃料電池装置Xへの受電点電力下げ指令(出力増指令)に対応した予備運転において、固体酸化物形燃料電池1の出力電力を直流から交流に変換する変換効率を低下させることにより仮想的に余剰電力を消費する状態を作り出せば、受電点電力下げ指令日時に変換効率を元に戻すだけで良いので、迅速な応答性を確保できる。なお、受電点電力を維持する他の態様としては、昇圧回路12aにより昇圧される電圧値を変動させても良い。
【0063】
また、運転制御部Cは、固体酸化物形燃料電池1の現在の出力電力(電力値)と出力制御指令における目標電力値との差が所定の電力値(例えば100W)以上である場合に、予備運転を実行しても良い。このように、現在の電力値と目標電力値との差が所定の電力値以上である場合に予備運転を実行すれば、固体酸化物形燃料電池1の出力変動速度に対応した効率的な制御となる。
【0064】
図4には、本実施形態の運転制御部Cによる予備運転の一例が示されている。本実施形態では、運転制御部Cは、施設100の受電点電力を下げるために管理装置Gから出力増指令(受電点電力下げ指令)が見込まれる日時(受電点電力下げ指令日時)より前に、燃料ガス量、空気量及び水量を増大させる予備運転を実行し、この予備運転において、固体酸化物形燃料電池1からの電力を、電力変換部12により直流から交流に変換する変換効率を低下させて(スイッチング周波数を上げて)、受電点電力を変動させること無く、燃料電池装置Xにおける負荷追従運転等を維持しながら電力系統15への出力値を一定に維持する。このとき、運転制御部Cは、固体酸化物形燃料電池1の運転温度が所定の範囲(例えば、700℃付近)となるように、燃料ガス量、空気量及び水量を調整する。これにより、固体酸化物形燃料電池1の運転温度に対応して固体酸化物形燃料電池1の出力電力を制御することができる(例えば、運転温度700℃のとき出力700W、運転温度650℃のとき出力180W)。なお、固体酸化物形燃料電池1の運転温度としては、雰囲気温度センサT1で計測された計測値を用いることができるが、改質温度センサT2又は燃焼温度センサT3で計測された計測値を用いても良い。このように、固体酸化物形燃料電池1の運転温度により予備運転制御をすれば、固体酸化物形燃料電池1の制御形態が簡便なものとなる。
【0065】
図4に示す例では、事前に固体酸化物形燃料電池1の運転温度を目標とする温度に近似させているため、受電点電力下げ指令があってから実際に電力系統15へ電力を出力するまでに、固体酸化物形燃料電池1の出力電力を迅速に上げることができる。しかも、電力変換部12の変更効率を変化させるだけなので、電力負荷部3に出力する電力が維持され、燃料電池装置Xにおける負荷追従運転等に影響を与えることもない。なお、
図4に示す例とは反対に、施設100の受電点電力を上げるために管理装置Gから出力減指令(受電点電力上げ指令)が見込まれる日時より前に、燃料ガス量、空気量及び水量を低下させる予備運転を実行し、この予備運転において、固体酸化物形燃料電池1からの電力を、電力変換部12により直流から交流に変換する変換効率を上昇させて(スイッチング周波数を下げて)、燃料電池装置Xにおける負荷追従運転等を維持しながら受電点電力を変動させること無く、電力系統15への出力値を一定に維持しても良い。
【0066】
[別実施形態]
図5に示すように、運転制御部Cは、施設100の受電点電力を下げるために管理装置Gから出力増指令(受電点電力下げ指令)が見込まれる日時(受電点電力下げ指令日時)より前に、受電点電力を維持した状態で、固体酸化物形燃料電池1に供給される燃料ガス量、空気量及び水量の少なくとも1つを段階的に調整しても良い。
図5に示す別実施形態における運転制御部Cは、電力系統15への出力増指令(受電点電力下げ指令)が見込まれる日時(受電点電力下げ指令日時)より前に、燃料ガス量を段階的に増大させると共に、空気量及び水量を増大させる予備運転を実行し、この予備運転において、固体酸化物形燃料電池1からの電力を、電力変換部12により直流から交流に変換する変換効率を低下させて(スイッチング周波数を上げて)、電力系統15への出力値を一定(例えばゼロ)に維持する。
【0067】
別実施形態においても、事前に固体酸化物形燃料電池1の運転温度が目標とする温度に近似させているため、受電点電力下げ指令があってから実際に電力系統15へ電力を出力するまでに、固体酸化物形燃料電池1の出力電力を迅速に上げることができる。しかも、段階的に燃料ガス量を増大させることにより、固体酸化物形燃料電池1の温度上昇を緩やかにして、固体酸化物形燃料電池1にかかる負荷を低減できる。
【0068】
[その他の実施形態]
<1>上述した実施形態では、燃料電池装置Xが固体酸化物形燃料電池1を備えたが、燃料電池装置Xが、固体高分子形燃料電池(PEFC)、リン酸形燃料電池(PAFC)又は溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)を備えても良い。
【0069】
<2>上述した実施形態に係る予備運転では、受電点電力を維持するように電力変換部12からの出力を維持した状態で、固体酸化物形燃料電池1に供給される燃料ガス量、空気量及び水量の少なくとも1つを増減させた。これに代えて又はこれに加えて、受電点電力を維持するように固体酸化物形燃料電池1の出力を一定とした状態で、固体酸化物形燃料電池1に供給される燃料ガス量、空気量及び水量の少なくとも1つを増減させても良い。この別実施形態における予備運転では、通常運転時において固体酸化物形燃料電池1に供給される燃料ガス量、空気量及び水量が目標出力に応じて調整されている場合、例えば空気量及び水量だけを増減させ、燃料ガス量を変化させない制御を実行することにより、固体酸化物形燃料電池1の出力を一定とした状態を作り出す。つまり、燃料ガス量、空気量及び水量の全てを増減させるのでなく、燃料ガス量、空気量及び水量の少なくとも1つを変化させない制御により、固体酸化物形燃料電池1の出力を一定に制御しても良い。このように、固体酸化物形燃料電池1側で、発電に使用される燃料利用率、空気利用率及び水利用率の少なくとも何れか1つを変更することにより、管理装置Gから出力制御指令が見込まれる日時(受電点電力上げ指令日時又は受電点電力下げ指令日時)の前後に、変化させなかった燃料ガス量、空気量及び水量の少なくとも1つを増減させれば、出力要請に応えることができる。
【0070】
<3>上記実施形態では、具体的な数値を挙げて燃料電池システムで行われる制御例について説明したが、それらの数値は例示目的で記載したものであり適宜変更可能である。
【0071】
なお、上述した実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、電力系統に連系された燃料電池システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 :固体酸化物形燃料電池(燃料電池)
3 :電力負荷部
15 :電力系統
C :運転制御部
G :管理装置