(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155275
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】電源管理システム、燃料電池装置及び充放電装置
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20221005BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20221005BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
H02J13/00 311R
H02J13/00 301A
H02J3/32
H02J3/38 170
H02J3/38 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058693
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】南 和徹
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AC05
5G064AC09
5G064CB08
5G064DA03
5G066AA04
5G066HB07
5G066HB09
5G066JB03
(57)【要約】
【課題】電源管理システムにおいて、電力系統を保護しながら、各施設の受電点電力の下げ及び上げが適切に行えるように構成する。
【解決手段】施設3の電源装置8は、電力を電力負荷部9に供給可能で、且つ、電力を電力系統7に供給可能な状態及び電力系統7から電力負荷部9に供給可能な状態で電力系統7と連系される。電源装置8と連系される電力系統7の電圧を検出可能な電圧検出部5を備える。管理装置2は、調整力の供出指令を受信すると共に、電圧検出部5の検出値に基づいて、受信した供出指令の出力要請値を複数に分割し複数の電源装置8に割り当てて、割り当て値に応じた電源装置8の出力電力を定める出力制御指令を、複数の電源装置8に対して送信する指令送信処理を行う。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の施設の夫々に設置されて電力を出力可能な電源装置と、複数の前記電源装置との間で前記施設の外部から通信を行うことができる管理装置とを備える電源管理システムであって、
前記電源装置は、電力を電力負荷部に供給可能で、且つ、電力を電力系統に供給可能な状態及び前記電力系統から前記電力負荷部に供給可能な状態で前記電力系統と連系されており、
前記電源装置と連系される前記電力系統の電圧を検出可能な電圧検出部を備え、
前記管理装置は、調整力の供出指令を受信すると共に、前記電圧検出部の検出値に基づいて、受信した前記供出指令の出力要請値を複数に分割し複数の前記電源装置に割り当てて、割り当て値に応じた前記電源装置の出力電力を定める出力制御指令を、複数の前記電源装置に対して送信する指令送信処理を行う電源管理システム。
【請求項2】
前記電源装置に、前記電源装置の出力電力が減少すると発電効率又は充放電効率が低下する電源装置が含まれている請求項1に記載の電源管理システム。
【請求項3】
前記施設の受電点電力を下げるために前記管理装置から複数の前記電源装置に前記出力制御指令としての受電点電力下げ指令を指令する際、前記電圧検出部の検出値が事前に設定された設定値を越える前記電源装置に対しては、前記割り当て値を、他の前記電源装置の前記割り当て値よりも減少させる請求項1又は2に記載の電源管理システム。
【請求項4】
前記施設の受電点電力を上げるために前記管理装置から複数の前記電源装置に前記出力制御指令としての受電点電力上げ指令を指令する際、前記電圧検出部の検出値が事前に設定された設定値を越える前記電源装置に対しては、前記割り当て値を、他の前記電源装置の前記割り当て値よりも増加させる請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の電源管理システム。
【請求項5】
前記電源装置の出力電力と前記電圧検出部の検出値との相関関係に基づいて、前記出力制御指令に含まれる前記割り当て値が、前記電圧検出部の検出値が前記設定値を越えない値に設定される請求項3又は4に記載の電源管理システム。
【請求項6】
請求項1~5のうちのいずれか一項に記載の電源管理システムに用いられる前記電源装置の機能を備え、前記電源装置の電源部が燃料電池部を備える燃料電池装置。
【請求項7】
請求項1~5のうちのいずれか一項に記載の電源管理システムに用いられる前記電源装置の機能を備え、前記電源装置の電源部が充放電部を備える充放電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の施設の夫々に設置されて電力を出力可能な電源装置と、複数の電源装置との間で施設の外部から通信を行うことができる管理装置とを備える電源管理システムに関し、この電源管理システムに用いられる電源装置としての燃料電池装置及び充放電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、バーチャルパワープラント(VPP:Virtual Power Plant)という概念に基づいて、複数の施設及び電源装置と管理装置とを有する電源管理システムが提案されている。
【0003】
電源管理システムにおいて、調整力の供出指令を管理装置が受信すると、管理装置は、供出の当日に各施設の電源装置の調整力を電力系統に供出する。このように、分散して配置された複数の施設及び電源装置を管理装置によってまとめることにより、複数の施設及び電源装置を、一つの発電所や消費市場として機能させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のように、受電点電力の下げ及び上げが行われる場合、電力系統の保護という面から、電力系統の電圧(受電点電圧)を検出可能な電圧検出部と出力抑制装置とが設けられることが多い。
例えば一つの電力系統において、受電点電圧が上昇すると、この電力系統に属する施設の電源装置の出力電力の減少操作が出力抑制装置により行われて、受電点電圧が抑えられる。しかしながら、出力抑制装置が頻繁に作動すると、出力が抑制された電源装置の効率が低下するので、出力抑制装置の作動を少なくすることが好ましい。
電源装置の効率の低下として、例えば、電源装置の調整力の供出の精度が低下することや、電源装置の出力電力の微調整が行い難くなること、電源装置の調整力の供出の機会が失われて、電源管理システムとして金銭的損失が発生することや、電源装置の発電効率や充放電効率が低下すること等に基づくものがある。
【0006】
本発明は、電源管理システムにおいて、電力系統を保護しながら、各施設の受電点電力の下げ及び上げが適切に行えるように構成することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数の施設の夫々に設置されて電力を出力可能な電源装置と、複数の前記電源装置との間で前記施設の外部から通信を行うことができる管理装置とを備える電源管理システムであって、前記電源装置は、電力を電力負荷部に供給可能で、且つ、電力を電力系統に供給可能な状態及び前記電力系統から前記電力負荷部に供給可能な状態で前記電力系統と連系されており、前記電源装置と連系される前記電力系統の電圧を検出可能な電圧検出部を備え、前記管理装置は、調整力の供出指令を受信すると共に、前記電圧検出部の検出値に基づいて、受信した前記供出指令の出力要請値を複数に分割し複数の前記電源装置に割り当てて、割り当て値に応じた前記電源装置の出力電力を定める出力制御指令を、複数の前記電源装置に対して送信する指令送信処理を行う。
【0008】
本発明によると、供出指令を管理装置が受信した場合、管理装置は、各施設における受電点電力の下げ及び上げを行う為に、供出指令の出力要請値を複数の割り当て値に分割して各電源装置に割り当てる。
管理装置は、電源装置の各々において受電点電力の下げを行う際、電源装置に対して出力制御指令としての受電点電力下げ指令を送信することで、当該受電点下げ指令に含まれる割り当て値に基づいて電源装置の出力電力を増加させて調整力を創出させる。当該割り当て値に相当する電力(各施設の調整力)が電力系統に供出されることで、管理装置は供出指令の出力要請値に相当する電力(合計の調整力)を供出できたことになる。
管理装置は、電源装置の各々において受電点電力の上げを行う際、電源装置に対して出力制御指令としての受電点電力上げ指令を送信することで、当該受電点上げ指令に含まれる割り当て値に基づいて電源装置の出力電力を減少させて調整力を創出させる。当該割り当て値に相当する電力(各施設の調整力)が各施設に導入されることで、管理装置は供出指令の出力要請値に相当する電力(合計の調整力)を供出できたことになる。
【0009】
本発明ではさらに、供出指令の出力要請値を複数の割り当て値に分割して電源装置に割り当てる際に、各施設の電源装置が電力系統と連系する受電点の電圧値(受電点電圧)に基づいて割り当て値を設定することにより、電力系統の電圧の状態を考慮して電源装置に対して適切な割り当て値を設定することができる。
従って、例えば、本発明は、電源管理システムに電源装置の出力抑制装置(電力系統の電圧値(受電点電圧)が所定の整定値を越えた状況で、施設の電源装置の出力電力が電力系統に逆潮流されることを防止するために、当該電源装置の出力電力を抑制制御して、電力系統を保護する装置)が設けられている場合には、電源装置に割り当てる割り当て値を、受電点電圧を考慮して、出力抑制装置による出力電力の抑制制御が作動されないような設定にしたり、出力電力の抑制制御が解除されるような設定にしたりすることなどを適宜行うことができる。これにより、電源装置の出力抑制装置が設置されている場合であっても、管理装置からの出力制御指令に基づいて各施設の電源装置の出力電力を制御する際に、出力抑制装置による出力電力の抑制制御の影響を低減することができる。
これにより、電力系統を保護しながら、各施設の受電点電力の下げ及び上げ(例えば、電源装置の出力電力の制御)を適切に行うことができるのであり、電源管理システムの効率の向上を図ることができる。
【0010】
本発明において、前記電源装置に、前記電源装置の出力電力が減少すると発電効率又は充放電効率が低下する電源装置が含まれていると好適である。
【0011】
施設に設けられる電源装置としては、例えば燃料電池装置や蓄電池等のように、電源装置の出力電力が減少すると発電効率又は充放電効率が低下する電源装置が含まれていることがある。
本発明によると、出力抑制装置が設けられた場合における電源装置の出力電力の抑制制御の作動が抑えられることで電源装置の出力電力の低下が抑えられて、電源装置の発電効率又は充放電効率の低下を抑えることができるので、電源管理システムの効率の向上の面で有利である。
【0012】
本発明において、前記施設の受電点電力を下げるために前記管理装置から複数の前記電源装置に前記出力制御指令としての受電点電力下げ指令を指令する際、前記電圧検出部の検出値が事前に設定された設定値を越える前記電源装置に対しては、前記割り当て値を、他の前記電源装置の前記割り当て値よりも減少させると好適である。
【0013】
本発明によると、管理装置が施設の受電点電力を下げるための受電点電力下げ指令を指令する際、電圧検出部の検出値(受電点電圧)が設定値を越える電源装置に対して、割り当て値が減少される。
なお、当該設定値としては、上述の出力抑制装置による所定の整定値以下の電圧値、より好ましくは、当該所定の整定値よりも所定値だけ低い値に設定すると好適である。
これにより、前述の電源装置において、割り当て値に基づく電源装置の出力電力の増加が抑えられるので、電力系統が保護されて、電源管理システムの効率の向上の面で有利である。
【0014】
本発明において、前記施設の受電点電力を上げるために前記管理装置から複数の前記電源装置に前記出力制御指令としての受電点電力上げ指令を指令する際、前記電圧検出部の検出値が事前に設定された設定値を越える前記電源装置に対しては、前記割り当て値を、他の前記電源装置の前記割り当て値よりも増加させると好適である。
【0015】
本発明によると、管理装置が施設の受電点電力を上げるための受電点電力上げ指令を指令する際、電圧検出部の検出値(受電点電圧)が設定値を越えていない施設の電源装置に対して、割り当て値が増加される。
これにより、前述の施設において、割り当て値に基づく電源装置の出力電力の減少が促進されるので、天候の変化等による外部環境の変化により受電点電圧が上昇して出力抑制装置が作動する可能性を抑えることができる。
【0016】
本発明において、前記電源装置の出力電力と前記電圧検出部の検出値との相関関係に基づいて、前記出力制御指令に含まれる前記割り当て値が、前記電圧検出部の検出値が前記設定値を越えない値に設定されると好適である。
【0017】
本発明によると、受電点電力下げ指令により割り当て値が減少される場合、受電点電力上げ指令を指令により割り当て値が増大される場合、割り当て値は、電源装置の出力電力と電圧検出部の検出値(受電点電圧)との相関関係に基づいて、電圧検出部の検出値(受電点電圧)が設定値を越えない値に設定されるので、電力系統が保護されて、電源管理システムの効率の向上の面で有利である。
【0018】
以上の目的を達成するための本発明の燃料電池装置は、前述の電源管理システムに用いられる前記電源装置の機能を備え、前記電源装置の電源部が燃料電池部を備える。
【0019】
本発明によると、調整力を提供できる電源管理システムに用いられる電源装置の機能を備えた燃料電池装置を提供することができる。
【0020】
以上の目的を達成するための本発明の充放電装置は、前述の電源管理システムに用いられる前記電源装置の機能を備え、前記電源装置の電源部が充放電部を備える。
【0021】
本発明によると、調整力を提供できる電源管理システムに用いられる電源装置の機能を備えた充放電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】施設と、管理装置と、アグリゲーションコーディネーターとの関係を示す図である。
【
図3】燃料電池装置の出力電力と電力負荷装置の負荷電力とが同じ値となる負荷追従制御が行われる状態を示す図である。
【
図4】
図3に示す状態から燃料電池装置の出力電力が増加操作された状態を示す図である。
【
図5】正の調整力の供出指令の出力要請値に対して、均等な割り当てよりも減少された割り当て値を設定する状態を示す図である。
【
図6】燃料電池装置の出力電力と電力負荷装置の負荷電力とが同じ値となる負荷追従制御が行われる状態を示す図である。
【
図7】
図6に示す状態から燃料電池装置の出力電力が減少操作された状態を示す図である。
【
図8】負の調整力の供出指令の出力要請値に対して、均等な割り当てよりも増加された割り当て値を設定する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(電源管理システムの概要)
図1及び
図2に、管理装置2及び複数の施設3を有する電源管理システム1が示されている。電源管理システム1の外部に、アグリゲーションコーディネーター4、需給調整市場(図示せず)及び送配電事業者(図示せず)等が存在する。
【0024】
管理装置2は、リソースアグリゲーター等とも呼ばれ、バーチャルパワープラント(VPP、仮想発電所)サービス契約を締結した施設3に対して需要家側エネルギーリソースとしての燃料電池装置8及び電力負荷装置9への制御情報を伝達することで、その需要家側エネルギーリソースの制御を行う事業者である。
【0025】
アグリゲーションコーディネーター4は、各管理装置2が制御する電力量を束ね、電気の取引市場(需給調整市場、卸電力市場、容量市場等)において一般送配電事業者や小売電気事業者と電力取引を行う事業者である。
【0026】
図1及び
図2に示すように、管理装置2は、複数の施設3から、燃料電池装置8の出力電力A1、電力負荷装置9の負荷電力B1、施設3での電力メーター10の受電点電力などの電力情報を逐次収集して記憶している。本実施形態で「電力負荷装置9の負荷電力B1」と記載する場合、施設3に設けられている全ての電力負荷装置9の合計の負荷電力B1のことを意味する。
【0027】
管理装置2は、将来の所定の時間帯に各施設3から供出可能な電力を予測し、アグリゲーションコーディネーター4に伝達する。この供出可能電力は、施設3の受電点電力を上げる能力又は下げる能力といった調整力である。
本実施形態において、「受電点電力を上げる」と言う場合、電力系統7から電力線14への受電電力(順潮流電力)を増加させる、又は、電力線14から電力系統7への逆潮流電力を減少させることを意味し、「受電点電力を下げる」と言う場合、電力系統7から電力線14への受電電力(順潮流電力)を減少させる、又は、電力線14から電力系統7への逆潮流電力を増加させることを意味する。
【0028】
例えば、施設3の受電点電力を上げるためには、燃料電池装置8の出力電力A1を下げること、及び、電力負荷装置9の負荷電力B1を上げることのうちの少なくとも一方を行えばよいため、施設3の受電点電力を上げる場合の上げ側調整余力は、燃料電池装置8の出力電力A1を下げる余力がどの程度あるかを示し、電力負荷装置9の負荷電力B1を上げる余力がどの程度あるかを示している。
【0029】
施設3の受電点電力を下げるためには、燃料電池装置8の出力電力A1を上げること、及び、電力負荷装置9の負荷電力B1を下げることのうちの少なくとも一方を行えばよいため、施設3の受電点電力を下げる場合の下げ側調整余力は、燃料電池装置8の出力電力A1を上げる余力がどの程度あるかを示し、電力負荷装置9の負荷電力B1を下げる余力がどの程度あるかを示している。
【0030】
管理装置2は、自身が管理する複数の施設3におけるベースライン受電点電力を決定する。このベースライン受電点電力は、各施設3から調整力(即ち、送配電事業者に提供する調整力及び小売事業者等に提供する供給力等を含む)を供出させない場合に予測される、各施設3の受電点電力の合計に相当する。
【0031】
アグリゲーションコーディネーター4は、各管理装置2から受け取った供出可能調整力を集計し、需給調整市場,卸電力市場,容量市場等の取引市場への入札を行うなどして、一般送配電事業者や小売電気事業者と取引を行う。アグリゲーションコーディネーター4は、取引を行った一般送配電事業者や小売電気事業者から、将来の所定の制御対象期間での調整力の供出指令を受け取った場合、その供出指令で指定された調整力を各管理装置2に対して分配して伝達する。
【0032】
管理装置2は、アグリゲーションコーディネーター4から供出指令を受け取った場合、その供出指令で指定された調整力を各施設3に対して分配して伝達する。各施設3は、将来の所定の制御対象期間において、需要家側エネルギーリソースとしての燃料電池装置8の調整力を供出する制御が行われる。その結果、前述の制御が行われなかった場合と比較して、施設3の受電点電力が増減するという調整力の供出が行われる。
【0033】
(施設の構成)
図2に示すように、施設3の各々に、燃料電池装置8(電源装置に相当)、電力負荷装置9(電力負荷部に相当)、電力メーター10、ゲートウェイ11、ルーター12、リモコン13、電力測定部15等が設けられている。
【0034】
施設3において、電力線14が設けられ、電力線14が電力系統7と連系されており、電力メーター10が電力線14に設けられている。燃料電池装置8及び電力負荷装置9が電力線14に接続されており、電力測定部15が電力線14に設けられている。
【0035】
電力負荷装置9は、例えば照明装置や空調装置等の装置であり、燃料電池装置8及び電力系統7のうちの少なくとも一方からの電力の供給を受けることができる。
リモコン13が燃料電池装置8に接続されており、施設3の利用者がリモコン13を操作することにより、燃料電池装置8に対して指令を行うことができる。
【0036】
電力メーター10により施設3の受電点電力が検出されており、検出された受電点電力が、ゲートウェイ11及びルーター12を介して、管理装置2に送信されている。電力系統7の電圧(以下、受電点電圧V1と称する)を検出可能な電圧検出部5が、電力メーター10に対して電力系統7の側の部分に設けられており、電圧検出部5の検出値(受電点電圧V1)が、管理装置2に送信されている。
【0037】
電力測定部15の検出値(後述の(燃料電池装置の構成)を参照)が、ゲートウェイ11及びルーター12を介して、管理装置2に送信されている。燃料電池装置8の情報が、リモコン13及びルーター12を介して、管理装置2に送信されている。
【0038】
(燃料電池装置の構成)
図2に示すように、燃料電池装置8に、電力変換部16、燃料電池部17、燃料改質部18、燃料電池制御部19及び記憶部20等が設けられている。燃料電池部17は、電力線14を介して電力系統7と連系されており、燃料改質部18により都市ガス等から生成された水素を燃料ガスとして発電する。
【0039】
燃料電池部17の発電した電力が、電力変換部16により所定の電圧、周波数及び位相に変換されて、電力線14に供給されるのであり、燃料電池制御部19は、燃料電池部17及び電力変換部16の作動を制御する。燃料電池装置8で取り扱われる情報が、記憶部20に記憶される。
【0040】
燃料電池制御部19は、電力測定部15で検出される電力(電力系統7から供給される電力)の検出値がゼロとなるように(燃料電池装置8の出力電力A1と電力負荷装置9の負荷電力B1とが同じ値となるように)、燃料電池装置8の出力電力A1を増減させる負荷追従制御(
図3参照)を行うことができる。
燃料電池制御部19は、負荷追従制御とは別に、電力メーター10により検出される施設3の受電点電力が所定の電力値になるように、燃料電池装置8の出力電力A1を増減させる制御を行うことができる。
燃料電池制御部19は、燃料電池装置8の出力電力A1を上限値AM1に維持して連続運転(定格出力運転)させることができる。
【0041】
以上の燃料電池装置8の3つの制御は、上限値AM1と下限値AM2との間において、燃料電池装置8から電力線14への出力電力を調整する形態で行われる(
図3及び
図4参照)。一般に燃料電池装置8では、燃料電池装置8の出力電力A1が減少すると、燃料電池装置8の発電効率は低下する。
【0042】
燃料電池制御部19は、電力変換部16から電力線14に供給する出力電力A1についての情報及び電力メーター10での測定電力についての情報を有しているため、電力負荷装置9の負荷電力B1(=出力電力A1+測定電力)を導出できる。電力メーター10の測定電力の符号が正の場合は負荷電力B1が燃料電池装置8の出力電力A1よりも大きい状態であることを意味し、電力メーター10での測定電力の符号が負の場合は燃料電池装置8の出力電力A1が負荷電力B1よりも大きい状態であることを意味している。
【0043】
電力測定部15の検出値が正の値であると、電力系統7の電力が電力線14に導入されている状態を意味し、燃料電池装置8の出力電力A1が電力負荷装置9の負荷電力B1よりも小さい状態であることを意味している。電力測定部15の検出値が負の値であると、電力線14の電力が電力系統7に供給されている状態を意味し、燃料電池装置8の出力電力A1が電力負荷装置9の負荷電力B1よりも大きい状態であることを意味している。
【0044】
受電点電力を上げるということは、電力系統7から電力線14への受電電力を増加させること、又は、電力線14から電力系統7への逆潮流電力を減少させることを意味している。受電点電力を下げるということは、電力系統7から電力線14への受電電力を減少させること、又は、電力線14から電力系統7への逆潮流電力を増加させることを意味している。
【0045】
(施設における調整力)
図3及び
図4に示すように、施設3の電力系統7の各々において、受電点電圧V1に対して、電力系統7の保護という面から、整定値V2が事前に設定されている。
この場合、出力抑制装置が施設3に設けられることが多い。受電点電圧V1が整定値V2を越えると、この施設3の燃料電池装置8の出力電力A1の減少操作(発電出力の抑制制御)が出力抑制装置により行われて、受電点電圧V1が整定値V2以下に抑えられる。
【0046】
図3に示す状態は、燃料電池装置8の出力電力A1と電力負荷装置9の負荷電力B1とが、同じ値の状態で、燃料電池装置8の出力電力A1が上限値AM1よりも低い状態であり、
図4に示すように、燃料電池装置8の出力電力A1を上限値AM1の付近まで増加操作が可能である。
【0047】
図3から
図4に示すように、燃料電池装置8の出力電力A1の増加操作が行われて、燃料電池装置8の出力電力A1が、電力負荷装置9の負荷電力B1よりも大きくなると、燃料電池装置8の出力電力A1と電力負荷装置9の負荷電力B1との差が、正の調整力A2Pとなる。正の調整力A2Pは、施設3の余剰の電力であり、施設3から電力系統7に供出可能である。
【0048】
図6に示す状態は、燃料電池装置8の出力電力A1と電力負荷装置9の負荷電力B1とが同じ値の状態で、燃料電池装置8の出力電力A1が上限値AM1と略同じ状態であり、
図7に示すように、燃料電池装置8の出力電力A1の減少操作が可能である。
【0049】
図6から
図7に示すように、燃料電池装置8の出力電力A1の減少操作が行われて、燃料電池装置8の出力電力A1が、電力負荷装置9の負荷電力B1よりも小さくなると、燃料電池装置8の出力電力A1と電力負荷装置9の負荷電力B1との差が、負の調整力A2Mとなる。負の調整力A2Mは、施設3の不足の電力であり、電力系統7から電力負荷装置9に導入可能な電力である。
【0050】
施設3の各々において、燃料電池装置8の発電状態の変化や、電力負荷装置9の負荷状態の変化により、正の調整力A2Pが発生したり、負の調整力A2Mが発生したりする。施設3の正の調整力A2Pの合計が、電源管理システム1として供出可能な電力(合計の調整力)となるのであり、施設3の負の調整力A2Mの合計が、電源管理システム1として導入可能な電力(合計の調整力)となる。
【0051】
(管理装置、アグリゲーションコーディネーター及び需給調整市場の間の流れ)
図1及び
図2に示すように、管理装置2は、施設3の各々から、受電点電圧V1及び受電点電力、電力測定部15の検出値、燃料電池装置8の情報等の各種の電力情報を、収集して記憶している。
【0052】
管理装置2は、現在及び過去の電力情報に基づいて、施設3における今後の正及び負の調整力A2P,A2Mの発生状態を予測し、正の調整力A2Pの合計や、負の調整力A2Mの合計を予測して、これらを基に制御対象期間における供出可能電力を算出する。供出可能電力は、施設3の受電点電力を上げる能力又は受電点電力を下げる調整余力である。管理装置2は、制御対象期間における供出可能電力がアグリゲーションコーディネーター4からの供出指令における制御対象期間での調整力(出力要請値)を満たすことができれば、アグリゲーションコーディネーター4に当該供出指令に応じることができる旨を送信する。なお、管理装置2は、供出可能電力が供出指令の出力要請値を満たしていない場合には、制御対象期間における供出可能電力をアグリゲーションコーディネーター4に送信するようにしてもよい。
【0053】
供出可能電力としては、例えば、「〇日後の〇月〇日の〇時~〇時に〇kWの電力を供出可能」というものや、「〇日後の〇月〇日の〇時~〇時に〇kWの電力を導入可能」というものがある。他の電源管理システム1の管理装置2からも、同様の情報がアグリゲーションコーディネーター4に送信されている。
【0054】
アグリゲーションコーディネーター4は、複数の電源管理システム1からの情報(供出可能電力など)に基づいて、需給調整市場に入札して、送配電事業者と取引を行う。
取引の結果、アグリゲーションコーディネーター4と送配電事業者との取引が成立すると、アグリゲーションコーディネーター4は、供出指令を電源管理システム1(管理装置2)の各々に送信する。
【0055】
管理装置2は、複数の燃料電池装置8に対して燃料電池装置8の出力電力A1を定める出力制御指令を指令する。管理装置2が施設3に指令する出力制御指令として、施設3の受電点電力を下げる受電点電力下げ指令があり、施設3の受電点電力を上げる受電点電力上げ指令がある。なお、管理装置2は、受電点電力を維持する出力制御指定を指令する場合もある。
【0056】
燃料電池装置8は、管理装置2から出力制御指令を受け取ると、出力制御指令の対象となる制御対象期間の間、出力制御指令に基づいて定まる出力電力A1の供出を目標とする第1運転モードで作動する。
出力制御対象期間以外の期間では、燃料電池装置8は、第1運転モードとは別の第2運転モードで作動する。燃料電池装置8の第2運転モードとしては、前述の(施設の構成)に記載の負荷追従制御や、定格出力運転がある。
【0057】
(正の調整力の供出指令を受信した管理装置の処理)(その1)
管理装置2が正の調整力の供出指令を受信した場合(管理装置2が出力制御指令として受電点電力下げ指令を指令する場合)、例えば電力系統7への電力の供出当日の朝や、電力系統7への電力の供出の数時間前に、管理装置2は、以下の説明のように燃料電池装置8から出力電力を供出可能な燃料電池装置8を選抜する。
【0058】
施設3において、受電点電圧V1が低いということは、電力線14から電力系統7への正の調整力を供出する能力が高いことを意味し、受電点電圧V1が高いということは、電力線14から電力系統7への正の調整力を供出する能力が低いことを意味している。
【0059】
整定値V2(例えば、107V)よりも低い設定値V3(例えば、106V)が事前に設定されており、管理装置2は、受電点電圧V1が設定値V3よりも低い施設3の燃料電池装置8を、出力電力を供出可能な燃料電池装置8として選抜する。受電点電圧V1が設定値V3よりも高い施設3の燃料電池装置8は、供出不可の燃料電池装置8として選抜から外される(前記電圧検出部の検出値が事前に設定された設定値を越える前記電源装置に対しては、前記割り当て値を、他の前記電源装置の前記割り当て値よりも減少(具体的には、ゼロに減少)させる状態に相当)。
【0060】
管理装置2は、供出可能な燃料電池装置8を選抜すると、正の調整力の供出指令の出力要請値を、供出可能な燃料電池装置8の数で割って、複数の均等な割り当て値を設定し、均等な割り当て値を、供出可能な燃料電池装置8に割り当てる。
【0061】
この場合、
図3及び
図4に示すように、受電点電圧V1が低い施設3の燃料電池装置8は、十分な正の調整力A2Pを得ることができると判断できるので、均等な割り当て値に基づいて燃料電池装置8の出力電力A1を増加操作しても、受電点電圧V1は設定値V3に達しない。管理装置2は、このような燃料電池装置8に対して、均等な割り当て値をそのまま割り当てる。
【0062】
(正の調整力の供出指令を受信した管理装置の処理)(その2)
管理装置2は、出力電力を供出可能な燃料電池装置8として選抜された燃料電池装置8のうち、受電点電圧V1が比較的高い施設3の燃料電池装置8に対して、以下の説明のように、割り当て値を、他の施設3の燃料電池装置8の割り当て値(均等な割り当て値)よりも減少させる操作を行う。
【0063】
均等な割り当て値を、供出可能な燃料電池装置8に割り当てる場合、受電点電圧V1が比較的高い施設3の燃料電池装置8は、十分な正の調整力A2Pを得ることができないと判断できるので、このような施設3では、均等な割り当て値に基づいて燃料電池装置8の出力電力A1を増加操作(出力電力A1に均等な割り当て値を加算する増加操作)すると、受電点電圧V1が設定値V3を越えることがある。
【0064】
図5に示すように、管理装置2は、施設3の各々において、過去の電力情報に基づき、燃料電池装置8の出力電力A1と受電点電圧V1との相関関係を、関係式F1として把握している。
【0065】
この場合、前述の施設3の燃料電池装置8の出力電力A1が値A11であったとする。 管理装置2は、均等な割り当て値を大きく減少させた値から、均等な割り当て値を少しだけ減少させた値に亘って、割り当て値を複数段階に減少させた値を設定する。
【0066】
複数段階の割り当て値のうち、最小の割り当て値に基づいて、燃料電池装置8の出力電力A1を増加操作(値A12)した場合、関係式F1により受電点電圧V1が得られる。この後、段階的に大きな割り当て値に基づいて、燃料電池装置8の出力電力A1を増加操作して(値A13,A14,A15)、関係式F1により受電点電圧V1が得られる。
【0067】
例えば、値A14に対応する割り当て値であると、受電点電圧V1は設定値V3を越えず、値A15に対応する割り当て値であると、受電点電圧V1は設定値V3を越える結果が得られたとする。
【0068】
複数の減少された割り当て値において、値A14に対応する割り当て値が、受電点電圧V1が設定値V3を越えない割り当て値のうちの最大値であり、管理装置2は、値A14に対応する割り当て値を、燃料電池装置8に対して、減少された割り当て値として割り当てる。
【0069】
(正の調整力の供出指令を受信した管理装置の処理)(その3)
均等な割り当て値から減少された割り当て値が燃料電池装置8に対して割り当てられた場合、正の調整力の供出指令の出力要請値を全て賄えない可能性が生じる。
【0070】
管理装置2は、出力電力を供給可能な燃料電池装置8を選抜した後に、受電点電圧V1が低い施設3の燃料電池装置8に対して、以下の説明のように、割り当て値を、他の施設3の燃料電池装置8の割り当て値(均等な割り当て値)よりも増加させる操作を行う。
【0071】
管理装置2は、均等な割り当て値が割り当てられた燃料電池装置8、及び、均等な割り当て値から減少された割り当て値が割り当てられた燃料電池装置8により、正の調整力の供出指令の出力要請値を賄った場合において、賄えない残りの出力要請値を演算する。
【0072】
管理装置2は、均等な割り当て値が割り当てられた燃料電池装置8のうち、出力電力A1の増加が許容できる燃料電池装置8(施設3の受電点電圧V1が十分に低く、十分な正の調整力A2Pを得ることができる燃料電池装置8)を選抜する。管理装置2は、残りの出力要請値を複数に分割し、分割した残りの出力要請値を、前述の燃料電池装置8に割り当てる。これにより、均等な割り当てよりも少し増加された割り当て値が、前述の燃料電池装置8に割り当てられる。
【0073】
前述の(正の調整力の供出指令を受信した管理装置の処理)(その1)(その2)(その3)に記載のように、管理装置2は、正の調整力の供出指令に対して、受電点電圧V1に基づいて、均等な割り当て値、均等な割り当て値から減少された割り当て値、均等な割り当て値よりも少し増加された割り当て値を、供給可能な燃料電池装置8として選抜された燃料電池装置8に割り当てる。
【0074】
(正の調整力の供出指令を受信した管理装置の処理)(その4)
燃料電池装置8に割り当て値が割り当てられた後、電力系統7への電力の供出の際に、管理装置2は、施設3の受電点電力を下げるために、出力制御指令としての受電点電力下げ指令を複数の燃料電池装置8に指令する(前記割り当て値に応じた前記電源装置の出力電力を定める出力制御指令を、複数の前記電源装置に対して送信する指令送信処理に相当)。
【0075】
図3から
図4に示すように、施設3において、燃料電池装置8の出力電力A1が、割り当て値に基づいて増加操作されて、正の調整力A2Pが創出される。管理装置2は、燃料電池装置8の各々において創出された正の調整力A2Pが電力系統7に供出されることで、合計された正の調整力を供出指令の出力要請値に相当する電力として供出できたことになる。
【0076】
(負の調整力の供出指令を受信した管理装置の処理)(その1)
管理装置2が負の調整力の供出指令を受信した場合(管理装置2が出力制御指令として受電点電力上げ指令を指令する場合)、例えば、電力系統7からの電力の導入当日の朝や、電力系統7からの電力の導入の数時間前に、管理装置2は、以下の説明のように施設3のうちから電力を導入可能な施設3を選抜する。
【0077】
施設3において、受電点電圧V1が低いということは、電力系統7から電力線14への負の調整力供出する能力が低いことを意味し、受電点電圧V1が高いということは、電力系統7から電力線14への負の調整力を供出する能力が高いことを意味している。
【0078】
整定値V2(例えば、107V)よりも低い設定値V4(例えば、106V)が事前に設定されており、管理装置2は、受電点電圧V1が設定値V4よりも高い施設3を、導入可能な施設3として選抜する。受電点電圧V1が設定値V4よりも低い施設3は、導入不可の施設3として選抜から外される。
【0079】
管理装置2は導入可能な施設3を選抜すると、負の調整力の供出指令の出力要請値を、導入可能な施設3の燃料電池装置8の数で割って、複数の均等な複数の割り当て値を設定し、均等な割り当て値を、導入可能な施設3の燃料電池装置8に割り当てる。
【0080】
この場合、
図6及び
図7に示すように、受電点電圧V1が設定値V4よりも少しだけ高い施設3の燃料電池装置8は、均等な割り当て値に基づいて出力電力A1を減少操作すると、受電点電圧V1が設定値V4よりも低くなる。管理装置2は、このような施設3の燃料電池装置8に対して、均等な割り当て値をそのまま割り当てる。
【0081】
(負の調整力の供出指令を受信した管理装置の処理)(その2)
管理装置2は、導入可能な施設3として選抜された施設3のうち、受電点電圧V1が比較的高い施設3の燃料電池装置8に対して、以下の説明のように、割り当て値を、他の施設3の燃料電池装置8の割り当て値(均等な割り当て値)よりも増加させる操作を行う。
【0082】
均等な割り当て値を、導入可能な施設3の燃料電池装置8に割り当てる場合、受電点電圧V1が十分に高い施設3の燃料電池装置8は、均等な割り当て値に基づいて燃料電池装置8の出力電力A1を減少操作(出力電力A1に均等な割り当て値を減算する減少操作)しても、受電点電圧V1が設定値V4よりも小さくならないことがある。
【0083】
図8に示すように、管理装置2は、施設3の各々において、過去の電力情報に基づき、燃料電池装置8の出力電力A1と受電点電圧V1との相関関係を、関係式F1として把握している。
【0084】
この場合、前述の施設3の燃料電池装置8の出力電力A1が、値A21であり、均等な割り当て値に基づいて燃料電池装置8の出力電力A1を減少操作した場合に、値A22であったとする。管理装置2は、均等な割り当て値を大きく増加させた値から、均等な割り当て値を少しだけ増加させた値に亘って、割り当て値を複数段階に増加させた値を設定する。
【0085】
複数段階の割り当て値のうち、増加が最小の割り当て値に基づいて、燃料電池装置8の出力電力A1を減少操作(値A22)した場合、関係式F1により受電点電圧V1が得られる。この後、段階的に大きな増加の割り当て値に基づいて、燃料電池装置8の出力電力A1を減少操作して(値A23,A24,A25)、関係式F1により受電点電圧V1が得られる。
【0086】
例えば、値A23に対応する割り当て値であると、受電点電圧V1は設定値V4を越えており、値A24に対応する割り当て値であると、受電点電圧V1は設定値V4よりも低くなる結果が得られたとする。
【0087】
複数の増加された割り当て値において、値A24に対応する割り当て値が、受電点電圧V1が設定値V4を越えない割り当て値のうちの最大値であり、管理装置2は、値A24に対応する割り当て値を、燃料電池装置8に対して、増加された割り当て値として割り当てる。
【0088】
(負の調整力の供出指令を受信した管理装置の処理)(その3)
均等な割り当て値から増加された割り当て値が燃料電池装置8に対して割り当てられた場合、負の調整力の供出指令の出力要請値以上の電力を施設3に導入する状態になる可能性が生じる。
【0089】
管理装置2は、均等な割り当て値が割り当てられた燃料電池装置8、及び、均等な割り当て値から増加された割り当て値が割り当てられた燃料電池装置8により、負の調整力の供出指令の出力要請値を賄った場合において、負の調整力の供出指令の出力要請値を越える分の電力を演算する。
【0090】
管理装置2は、均等な割り当て値が割り当てられた燃料電池装置8のうち、割り当て値の減少が許容できる燃料電池装置8を選抜する。管理装置2は、負の調整力の供出指令の出力要請値を越える分の電力を複数に分割し、分割した電力を前述の燃料電池装置8に割り当てる。これにより、均等な割り当てよりも少し減少された割り当て値が、前述の燃料電池装置8に割り当てられる。
【0091】
前述の(負の調整力の供出指令を受信した管理装置の処理)(その1)(その2)(その3)に記載のように、管理装置2は、負の調整力の供出指令に対して、受電点電圧V1に基づいて、均等な割り当て値、均等な割り当て値から増加された割り当て値、均等な割り当て値よりも少し増加された割り当て値を、導入可能な施設3として選抜された施設3の燃料電池装置8に割り当てる。
【0092】
(負の調整力の供出指令を受信した管理装置の処理)(その4)
燃料電池装置8に割り当て値が割り当てられた後、電力系統7からの電力の導入の際、管理装置2は、施設3の受電点電力を上げるために、出力制御指令としての受電点電力上げ指令を複数の燃料電池装置8に指令する(前記割り当て値に応じた前記電源装置の出力電力を定める出力制御指令を、複数の前記電源装置に対して送信する指令送信処理に相当)。
【0093】
図6から
図7に示すように、施設3において、燃料電池装置8の出力電力A1が、割り当て値に基づいて減少操作され、負の調整力A2Mが創出される。管理装置2は、燃料電池装置8の各々において創出された負の調整力A2Mに基づいて、電力系統7からの電力を電力負荷装置9に導入する。管理装置2は、燃料電池装置8の各々において創出された負の調整力A2Mが電力系統7に供出されることで、合計された負の調整力を供出指令の出力要請値に相当する電力として供出できたことになる。
【0094】
(発明の実施の第1別形態)
施設3において、複数の燃料電池装置8が設けられていてもよく、複数の電力負荷装置9が設けられていてもよい。
【0095】
(発明の実施の第2別形態)
前述の(正の調整力の供出指令を受信した管理装置の処理)(その1)において、受電点電圧V1が設定値V3よりも高い施設3の燃料電池装置8では、供出不可の燃料電池装置8として選抜から外されるのではなく、他の燃料電池装置8の割り当て値(均等な割り当て値)よりも減少された割り当て値が割り当てられてもよい。
【0096】
(発明の実施の第3別形態)
前述の(正の調整力の供出指令を受信した管理装置の処理)(その2)において、割り当て値に基づいて燃料電池装置8の出力電力A1を増加操作すると、受電点電圧V1が設定値V3を越える施設3の燃料電池装置8に対して、割り当て値が一定値だけ減少されてもよく、割り当て値を無くしてもよい。
【0097】
(発明の実施の第4別形態)
前述の(負の調整力の供出指令を受信した管理装置の処理)(その1)において、受電点電圧V1が設定値V4よりも低い施設3の燃料電池装置8では、導入不可の燃料電池装置8として選抜から外されるのではなく、他の施設3の燃料電池装置8の割り当て値(均等な割り当て値)よりも減少された割り当て値が割り当てられてもよい。
【0098】
(発明の実施の第5別形態)
前述の(負の調整力の供出指令を受信した管理装置の処理)(その2)において、均等な割り当て値に基づいて燃料電池装置8の出力電力A1を減少操作しても、受電点電圧V1が設定値V4よりも低くならない施設3の燃料電池装置8では、他の施設3の燃料電池装置8の割り当て値よりも一定値だけ増加された割り当て値が割り当てられてもよい。
【0099】
(発明の実施の第6別形態)
前述の(正の調整力の供出指令を受信した管理装置の処理)(その2)及び(負の調整力の供出指令を受信した管理装置の処理)(その2)において、燃料電池装置8に対して減少(増加)された割り当て値を得る場合、複数段階の割り当て値を設定するのではなく、関係式F1に基づいて、割り当て値を連続的に変化させて、受電点電圧V1を得ることにより、設定値V3,V4と比較するように構成してもよい。
【0100】
この構成によると、受電点電圧V1が設定値V3,V4と同じになる割り当て値、又は僅かに小さくなる割り当て値を、減少(増加)された割り当て値として設定することができる。
受電点電圧V1が設定値V3,V4よりも一定値だけ小さくなる割り当て値を、減少(増加)された割り当て値として設定することもできる。
【0101】
(発明の実施の第7別形態)
前述の(正の調整力の供出指令を受信した管理装置の処理)(その2)及び(負の調整力の供出指令を受信した管理装置の処理)(その2)において、関係式F1を事前に把握しておくのではなく、以下の説明のように関係式F1を得るように構成してもよい。
【0102】
管理装置2は、受電点電力下げ指令及び受電点電力上げ指令を燃料電池装置8に指令する直前において、燃料電池装置8の出力電力A1を、値A12~A15,A22~A25等のうちの少なくとも2点の値に増減操作して、受電点電圧V1を検出する。管理装置2は、燃料電池装置8の出力電力A1の少なくとも2点の値と、これに対応する受電点電圧V1の値とに基づいて、一次関数又は2次関数としての関係式F1を得る。
【0103】
(発明の実施の第8別形態)
前述の(正の調整力の供出指令を受信した管理装置の処理)(その1)~(負の調整力の供出指令を受信した管理装置の処理)(その3)に記載の受電点電圧V1として、ある瞬間の値、所定時間内での受電点電圧V1の平均値、所定時間内での受電点電圧V1の最高値等のように、各種の値を使用することができる。
天候の変化等による発電装置の発電量の変化や、消費電力量の急激な変化等が、受電点電圧V1に与える影響を抑える為に、前述の各種の値のうちから適切な受電点電圧V1を選択すればよい。
【0104】
(発明の実施の第9別形態)
以上の実施形態では、本発明の電源管理システムの構成について具体例を挙げて説明したが、その構成は適宜変更が可能である。
例えば、以上の実施形態では、電源装置が備える電源部が燃料電池部17を備える例を説明したが、電源部は電力を出力できる他の装置であってもよい。例えば、電源部が、蓄電池などの充放電部を備える装置であってもよい。その場合、電源管理システムに用いられる電源装置の機能を備え、電源部が充放電部を備える充放電装置が実現される。
又は、電源部は、エンジンとエンジンによって駆動される発電機とを備える装置などであってもよい。
【0105】
以上の実施形態(別形態を含む、以下同じ)において開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用でき、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変できる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、調整力の供出が可能な電源管理システムに適用できる。
【符号の説明】
【0107】
2 管理装置
3 施設
5 電圧検出部
7 電力系統
8 燃料電池装置(電源装置)
9 電力負荷装置(電力負荷部)
A1 出力電力
A2P 調整力
A2M 調整力
F1 関係式(相関関係)
V1 受電点電圧(電圧)
V3 設定値
V4 設定値