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特開2022-155277電磁波透過カバー及び電磁波透過カバーの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155277
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】電磁波透過カバー及び電磁波透過カバーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/40 20060101AFI20221005BHJP
   G01S 7/03 20060101ALI20221005BHJP
   G01S 13/931 20200101ALI20221005BHJP
   H01Q 1/42 20060101ALI20221005BHJP
   B29C 69/02 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
G01S7/40 143
G01S7/03 246
G01S13/931
H01Q1/42
B29C69/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058695
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】道家 真一
【テーマコード(参考)】
4F213
5J046
5J070
【Fターム(参考)】
4F213AG03
4F213WA05
4F213WA14
4F213WA43
4F213WB01
4F213WB11
5J046RA14
5J070AB24
5J070AC02
5J070AC06
5J070AE01
5J070AE09
5J070AF03
5J070AK40
(57)【要約】
【課題】発熱部がチッピングの影響を受けるのを抑制する。
【解決手段】ミリ波透過カバー20は、ミリ波レーダ装置13の前方に配置されるカバー本体部22を備える。カバー本体部22のカバー基材23は、ミリ波透過性を有する樹脂材料によって形成される。ヒータフィルム25は、カバー基材23の前方で、カバー基材23の前面の形状に対応した形状に賦形される。ヒータフィルム25は、ミリ波透過性を有する樹脂材料により形成されたフィルム基材26と、フィルム基材26よりも後方で帯状に形成された発熱部28とを備える。カバー本体部22は、さらにヒータフィルム25よりも前方に位置し、かつ同前方から衝撃が加わった場合に、衝撃から発熱部28を保護する保護部35を備える。保護部35は、ミリ波透過性を有し、かつフィルム基材26の前面の形状に対応した形状に賦形されて、前方からフィルム基材26を覆う樹脂シート36を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を送信及び受信する装置が搭載された乗物に適用され、かつ前記電磁波の送信方向における前記装置の前方に配置されるカバー本体部を有する電磁波透過カバーであって、
前記カバー本体部は、電磁波透過性を有する樹脂材料により成形されたカバー基材と、前記カバー基材の前記前方で、前記送信方向における前記カバー基材の前面の形状に対応した形状に賦形されたヒータフィルムとを備え、
前記ヒータフィルムが、電磁波透過性を有する樹脂材料により形成されたフィルム基材と、前記送信方向における前記フィルム基材よりも後方で帯状に形成され、かつ通電により発熱する発熱部とを備え、
前記カバー本体部は、さらに、前記ヒータフィルムよりも前記前方に位置し、かつ同前方から衝撃が加わった場合に、同衝撃から前記発熱部を保護する保護部を備え、
前記保護部は、電磁波透過性を有し、かつ前記送信方向における前記フィルム基材の前面の形状に対応した形状に賦形されて、前記前方から前記フィルム基材を覆う樹脂シートを備えている電磁波透過カバー。
【請求項2】
前記フィルム基材は、ポリエチレンテレフタレート(PET)により形成され、前記樹脂シートは、ポリカーボネート(PC)により形成されている請求項1に記載の電磁波透過カバー。
【請求項3】
前記樹脂シートは、0.3mm以上の厚みを有している請求項2に記載の電磁波透過カバー。
【請求項4】
電磁波を送信及び受信する装置が搭載された乗物に適用され、かつ前記電磁波の送信方向における前記装置の前方に配置されるカバー本体部を有し、
前記カバー本体部が、電磁波透過性を有する樹脂材料により形成されたカバー基材と、前記カバー基材の前記前方に隣接するヒータフィルムとを備え、
前記ヒータフィルムが、電磁波透過性を有する樹脂材料により形成されたフィルム基材と、前記送信方向における前記フィルム基材の後方に形成され、かつ通電により発熱する帯状の発熱部とを備え、
前記カバー本体部が、さらに、前記ヒータフィルムよりも前記前方に位置し、かつ同前方から衝撃が加わった場合に、同衝撃から前記発熱部を保護する保護部を備え、前記保護部が、電磁波透過性を有する樹脂シートを備える電磁波透過カバーを製造する方法であって、
前記送信方向における前記カバー基材の前面の形状に対応した形状に賦形された前記ヒータフィルムをインサート部材とし、前記ヒータフィルムよりも前記後方に前記カバー基材をインサート成形するカバー基材成形工程と、
前記樹脂シートを前記送信方向における前記フィルム基材の前面の形状に対応した形状に賦形することにより、前記前方から前記フィルム基材を前記樹脂シートで覆う被覆工程と
を備える電磁波透過カバーの製造方法。
【請求項5】
電磁波を送信及び受信する装置が搭載された乗物に適用され、かつ前記電磁波の送信方向における前記装置の前方に配置されるカバー本体部を有し、
前記カバー本体部が、電磁波透過性を有する樹脂材料により形成されたカバー基材と、前記カバー基材の前記前方に隣接するヒータフィルムとを備え、
前記ヒータフィルムが、電磁波透過性を有する樹脂材料により形成されたフィルム基材と、前記送信方向における前記フィルム基材の後方に形成され、かつ通電により発熱する帯状の発熱部とを備え、
前記カバー本体部が、さらに、前記ヒータフィルムよりも前記前方に位置し、かつ同前方から衝撃が加わった場合に、同衝撃から前記発熱部を保護する保護部を備え、前記保護部が、電磁波透過性を有する樹脂シートを備える電磁波透過カバーを製造する方法であって、
前記保護部の前記樹脂シートを前記ヒータフィルムの前記フィルム基材に貼付けることにより、前記フィルム基材を前記前方から前記樹脂シートで覆った被覆体を形成する被覆工程と、
前記被覆体を前記送信方向における前記カバー基材の前面の形状に対応した形状に賦形し、その賦形した前記被覆体をインサート部材とし、前記ヒータフィルムよりも前記後方に前記カバー基材をインサート成形するカバー基材成形工程と
を備える電磁波透過カバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波透過カバー及びその電磁波透過カバーを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ミリ波等の電磁波を送信及び受信する装置が搭載された車両では、同装置から電磁波が車外へ向けて送信される。先行車両、歩行者等を含む車外の物体に当たって反射された電磁波は、上記装置によって受信される。そして、上記装置では、送信及び受信された電磁波により、上記物体が認識され、車両と物体との距離、相対速度等が検出される。
【0003】
上記車両では、電磁波の送信方向における上記装置の前方に、電磁波を透過する電磁波透過カバーが配置される。
ここで、上記電磁波透過カバーに氷雪が付着すると電磁波が減衰され、上記装置の検出性能が低下する問題がある。そこで、ヒータフィルムを付加した電磁波透過カバーが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ヒータフィルムは、フィルム基材の一方の面に、銅等の導電性発熱材料からなる発熱部を形成することにより形成されている。発熱部は、帯状をなし、かつ一定のパターンで配線されるように、フィルム基材上に形成されている。
【0005】
上記電磁波透過カバーによると、発熱部が通電により発熱する。そのため、電磁波透過カバーに氷雪が付着しても、発熱部が発した熱によって氷雪を融解させ、氷雪の付着に起因する電磁波の減衰を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6719506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記電磁波透過カバーは車両の外装部に取付けられるため、車両走行中に飛び石等が衝突して、傷(チッピング)が付く問題がある。そして、このチッピングが発熱部に達すると、発熱部が影響を受ける。ところが、上記特許文献1に記載された電磁波透過カバーでは、こうした問題について考慮されていない。そのため、発熱部がチッピングの影響を受けにくい電磁波透過カバー及びその製造方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する電磁波透過カバーは、電磁波を送信及び受信する装置が搭載された乗物に適用され、かつ前記電磁波の送信方向における前記装置の前方に配置されるカバー本体部を有する電磁波透過カバーであって、前記カバー本体部は、電磁波透過性を有する樹脂材料により成形されたカバー基材と、前記カバー基材の前記前方で、前記送信方向における前記カバー基材の前面の形状に対応した形状に賦形されたヒータフィルムとを備え、前記ヒータフィルムが、電磁波透過性を有する樹脂材料により形成されたフィルム基材と、前記送信方向における前記フィルム基材よりも後方で帯状に形成され、かつ通電により発熱する発熱部とを備え、前記カバー本体部は、さらに、前記ヒータフィルムよりも前記前方に位置し、かつ同前方から衝撃が加わった場合に、同衝撃から前記発熱部を保護する保護部を備え、前記保護部は、電磁波透過性を有し、かつ前記送信方向における前記フィルム基材の前面の形状に対応した形状に賦形されて、前記前方から前記フィルム基材を覆う樹脂シートを備えている。
【0009】
上記の構成によれば、保護部は、装置からの電磁波の送信方向におけるヒータフィルムの発熱部よりも前方に位置する。保護部の樹脂シートは、上記送信方向におけるフィルム基材の前面の形状に対応した形状に賦形されて、上記前方からフィルム基材を覆う。保護部は、カバー本体部に対し、上記前方から、飛び石等が衝突して衝撃が加わった場合に、その衝撃を受け止める。保護部は、発熱部に達するチッピングが上記衝突により生ずるのを抑制する。
【0010】
上記電磁波透過カバーにおいて、前記フィルム基材は、ポリエチレンテレフタレート(PET)により形成され、前記樹脂シートは、ポリカーボネート(PC)により形成されていることが好ましい。
【0011】
上記の構成によれば、PCは、PETよりも耐衝撃性が高い樹脂材料である。一方で、フィルム基材は、耐熱性及び耐収縮性(寸法安定性)に優れたPETによって形成されている。そのため、樹脂シートがPCによって形成されることで、衝撃を樹脂シートによって受け止め、発熱部に達するチッピングが生ずるのを抑制する効果として、大きな効果が得られる。
【0012】
上記電磁波透過カバーにおいて、前記樹脂シートは、0.3mm以上の厚みを有していることが好ましい。
上記の構成によるように、PCによって形成され、かつ0.3mm以上の厚みを有する樹脂シートは、飛び石等の衝突により衝撃が加わった場合、その衝撃を樹脂シートのみによって受け止め、発熱部に達するチッピングが上記衝突により生ずるのを抑制することが可能である。
【0013】
上記課題を解決する電磁波透過カバーの製造方法は、電磁波を送信及び受信する装置が搭載された乗物に適用され、かつ前記電磁波の送信方向における前記装置の前方に配置されるカバー本体部を有し、前記カバー本体部が、電磁波透過性を有する樹脂材料により形成されたカバー基材と、前記カバー基材の前記前方に隣接するヒータフィルムとを備え、前記ヒータフィルムが、電磁波透過性を有する樹脂材料により形成されたフィルム基材と、前記送信方向における前記フィルム基材の後方に形成され、かつ通電により発熱する帯状の発熱部とを備え、前記カバー本体部が、さらに、前記ヒータフィルムよりも前記前方に位置し、かつ同前方から衝撃が加わった場合に、同衝撃から前記発熱部を保護する保護部を備え、前記保護部が、電磁波透過性を有する樹脂シートを備える電磁波透過カバーを製造する方法であって、前記送信方向における前記カバー基材の前面の形状に対応した形状に賦形された前記ヒータフィルムをインサート部材とし、前記ヒータフィルムよりも前記後方に前記カバー基材をインサート成形するカバー基材成形工程と、前記樹脂シートを前記送信方向における前記フィルム基材の前面の形状に対応した形状に賦形することにより、前記前方から前記フィルム基材を前記樹脂シートで覆う被覆工程とを備える。
【0014】
上記の方法によれば、電磁波透過カバーの製造に際し、カバー基材成形工程及び被覆工程が行なわれる。
カバー基材成形工程では、装置からの電磁波の送信方向におけるカバー基材の前面の形状に対応した形状に賦形されたヒータフィルムがインサート部材とされる。上記送信方向におけるヒータフィルムよりも後方にカバー基材がインサート成形される。カバー基材が、ヒータフィルムに対し後方から付着した状態の中間体が得られる。
【0015】
ここで、カバー基材とヒータフィルムとが一体となった中間体を形成する別の方法として次のものが考えられる。すなわち、ヒータフィルム及びカバー基材を別々に形成する。ヒータフィルムを加熱して、フィルム基材を軟化させる。このヒータフィルムを、真空吸引して、カバー基材の上記前面に密着させる。すると、ヒータフィルムが、カバー基材の上記前面の形状に追従して変形(賦形)されながら同カバー基材に貼付けられる。
【0016】
この方法では、フィルム基材が熱により軟化して伸びやすくなる。上記送信方向におけるヒータフィルムよりも後方にはカバー基材が位置するのに対し、前方には、カバー基材に相当するものが位置しない。そのため、上記送信方向におけるフィルム基材の前面に、発熱部に対応した形状の凹凸が発生する。
【0017】
これに対し、上記インサート成形では、ヒータフィルムがインサート部材として金型内に配置され、この状態で、金型内に溶融樹脂が充填されてカバー基材が成形される。この際、フィルム基材の上記前面は、金型の成形面に対応した形状となるだけで、同前面に、発熱部に対応した形状の凹凸が形成されることはない。
【0018】
そして、続く被覆工程では、樹脂シートが、上記送信方向におけるフィルム基材の前面の形状に対応した形状に賦形される。この賦形により、中間体のフィルム基材が、上記前方から樹脂シートによって覆われて、目的とする電磁波透過カバーが得られる。
【0019】
この電磁波透過カバーでは、保護部が、ヒータフィルムの発熱部よりも上記前方に位置する。保護部の樹脂シートは、フィルム基材の上記前面の形状に対応した形状に賦形されて、上記前方からフィルム基材を覆う。保護部は、カバー本体部に対し、上記前方から、飛び石等が衝突して衝撃が加わった場合に、その衝撃を受け止める。保護部は、発熱部に達するチッピングが上記衝突により生ずるのを抑制する。
【0020】
上記課題を解決する電磁波透過カバーの製造方法は、電磁波を送信及び受信する装置が搭載された乗物に適用され、かつ前記電磁波の送信方向における前記装置の前方に配置されるカバー本体部を有し、前記カバー本体部が、電磁波透過性を有する樹脂材料により形成されたカバー基材と、前記カバー基材の前記前方に隣接するヒータフィルムとを備え、前記ヒータフィルムが、電磁波透過性を有する樹脂材料により形成されたフィルム基材と、前記送信方向における前記フィルム基材の後方に形成され、かつ通電により発熱する帯状の発熱部とを備え、前記カバー本体部が、さらに、前記ヒータフィルムよりも前記前方に位置し、かつ同前方から衝撃が加わった場合に、同衝撃から前記発熱部を保護する保護部を備え、前記保護部が、電磁波透過性を有する樹脂シートを備える電磁波透過カバーを製造する方法であって、前記保護部の前記樹脂シートを前記ヒータフィルムの前記フィルム基材に貼付けることにより、前記フィルム基材を前記前方から前記樹脂シートで覆った被覆体を形成する被覆工程と、前記被覆体を前記送信方向における前記カバー基材の前面の形状に対応した形状に賦形し、その賦形した前記被覆体をインサート部材とし、前記ヒータフィルムよりも前記後方に前記カバー基材をインサート成形するカバー基材成形工程とを備える。
【0021】
上記の方法によれば、電磁波透過カバーの製造に際し、被覆工程及びカバー基材成形工程が行なわれる。
被覆工程では、保護部の樹脂シートがヒータフィルムのフィルム基材に貼付けられる。すると、フィルム基材が、装置からの電磁波の送信方向における前方から樹脂シートによって覆われた被覆体が形成される。
【0022】
カバー基材成形工程では、被覆体が、上記送信方向におけるカバー基材の前面の形状に対応した形状に賦形される。賦形された被覆体がインサート部材とされ、上記送信方向におけるヒータフィルムよりも後方にカバー基材がインサート成形される。カバー基材が、被覆体のヒータフィルムに対し、上記後方から付着した状態の電磁波透過カバーが得られる。
【0023】
この電磁波透過カバーでは、保護部が、ヒータフィルムの発熱部よりも上記前方に位置する。保護部の樹脂シートは、上記前方からフィルム基材を覆う。保護部は、カバー本体部に対し、上記前方から、飛び石等が衝突して衝撃が加わった場合に、その衝撃を受け止める。保護部は、発熱部に達するチッピングが上記衝突により生ずるのを抑制する。
【発明の効果】
【0024】
上記電磁波透過カバー及び電磁波透過カバーの製造方法によれば、発熱部がチッピングの影響を受けるのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】電磁波透過カバーを車両用のミリ波透過カバーに具体化した第1実施形態において、ミリ波透過カバーを、フロントグリルの一部とともに示す部分正面図。
図2】第1実施形態のヒータフィルムにおける発熱部の概略正面図。
図3】第1実施形態のミリ波透過カバーの一部をミリ波レーダ装置の一部とともに示す部分平断面図。
図4】第1実施形態のミリ波透過カバーを製造する途中の形態を示す部分平断面図。
図5】同じく、第1実施形態のミリ波透過カバーを製造する途中の形態を示す部分平断面図。
図6】同じく、第1実施形態のミリ波透過カバーを製造する途中の形態(ヒータフィルム)を示す部分平断面図。
図7】同じく、第1実施形態のミリ波透過カバーを製造する途中の形態を示す部分平断面図。
図8】同じく、第1実施形態のミリ波透過カバーを製造する途中の形態を示す図であり、保護部を中間体に貼付ける前の状態を示す部分平断面図。
図9】第2実施形態のミリ波透過カバーを製造する途中の形態を示す部分平断面図。
図10】第3実施形態のミリ波透過カバーの部分平断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1実施形態)
以下、電磁波透過カバーを車両用のミリ波透過カバーに具体化した第1実施形態について、図1図8を参照して説明する。
【0027】
なお、以下の記載においては、車両の前進方向を前方とし、後進方向を後方として説明する。また、図3図8では、ミリ波透過カバーにおける各部を認識可能な大きさとするために、縮尺を適宜変更して各部を示している。この点は、第2実施形態を示す図9についても、また、第3実施形態を示す図10についても同様である。
【0028】
図1及び図3に示すように、車両10の前部の車幅方向における中央部分であって、フロントグリル11の後方には、電磁波を送信及び受信する装置として、前方監視用のミリ波レーダ装置13が搭載されている。図3では、ミリ波レーダ装置13の一部のみが図示されている。ミリ波レーダ装置13は、電磁波におけるミリ波を、車外のうち前方へ向けて送信し、かつ、車外の物体に当たって反射されたミリ波を受信する機能を有する。ミリ波とは、波長が1mm~10mmであり、周波数が30GHz~300GHzである電波をいう。
【0029】
なお、第1実施形態では、上述したように、ミリ波レーダ装置13が車両10の前方に向けてミリ波を送信することから、ミリ波レーダ装置13によるミリ波の送信方向は、車両10の後方から前方へ向かう方向である。ミリ波の送信方向における前方は、車両10の前方と概ね合致し、同送信方向における後方は車両10の後方と概ね合致する。そのため、以後の記載では、ミリ波の送信方向における前方を単に「前方」、「前」等といい、同送信方向における後方を単に「後方」、「後」等というものとする。
【0030】
上記フロントグリル11の厚みは、一般的なフロントグリルと同様、一定ではない。また、フロントグリル11では、樹脂製基材の表面に金属めっき層が形成されることがある。フロントグリル11は、送信又は反射されたミリ波と干渉する。このため、フロントグリル11において、ミリ波の送信方向におけるミリ波レーダ装置13の前方には、窓部12が開口されている。
【0031】
窓部12には、第1実施形態のミリ波透過カバー20が配置されている。ミリ波透過カバー20は、その前面が車両10の前方を向き、かつ後面が車両10の後方を向くように、起立した状態で配置される。ミリ波透過カバー20の前面は意匠面21を構成している。
【0032】
ミリ波透過カバー20の主要部は、カバー本体部22によって構成されている。図3は、カバー本体部22の一部を拡大して示している。カバー本体部22は、カバー基材23、ヒータフィルム25及び保護部35を備えており、ミリ波レーダ装置13の前方に位置している。
【0033】
カバー基材23は、電磁波透過性としてのミリ波透過性を有する樹脂材料を用いて樹脂成形することによって形成されている。カバー基材23の形成に用いられる樹脂材料は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。第1実施形態では、カバー基材23は、PC(ポリカーボネート)によって形成されているが、他の樹脂材料、例えば、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)によって形成されてもよい。
【0034】
ヒータフィルム25は、カバー基材23と保護部35との間に配置されており、上記樹脂製のカバー基材23の前方に隣接する箇所に位置している。ヒータフィルム25は、カバー基材23の前面の形状に対応した形状に賦形され、同前面に密着している。ヒータフィルム25は、フィルム基材26、接着層27、発熱部28及びレジスト層29を備えている。
【0035】
フィルム基材26は、ヒータフィルム25の骨格部分をなす部分である。フィルム基材26は、ミリ波透過性を有する樹脂材料であって、耐熱性及び耐収縮性(寸法安定性)に優れた樹脂材料によって形成されている。第1実施形態では、フィルム基材26は、PET(ポリエチレンテレフタレート)によって形成されている。また、第1実施形態では、フィルム基材26は、0.1mm程度の厚みを有している。
【0036】
接着層27は、発熱部28をフィルム基材26に接着する機能を有している。接着層27としては、例えば、OCA(OPTICAL CLEAR ADHESIVE)と呼ばれる無色のフィルム状の光学粘着シートを用いることができる。ここでの透明には、無色透明のほか、着色透明(有色透明)も含まれる。
【0037】
発熱部28は、導電性発熱材料からなる箔によって形成されている。発熱部28は、フィルム基材26よりも後方で帯状に形成されており、通電により発熱する。第1実施形態では、発熱部28は銅箔によって形成されている。発熱部28は、所定の配線パターン、例えば、図2に示すように、互いに平行に延びる複数の直線部28aと、隣り合う直線部28aの端部同士を連結する円弧状の複数の連結部28bとを備える配線パターンで配線されるように形成されている。
【0038】
図3に示すように、レジスト層29は絶縁材料からなり、接着層27上であって、発熱部28の周りに形成されており、発熱部28を被覆している。
レジスト層29とカバー基材23との間には、バインダ層31が形成されている。バインダ層31は、カバー基材23の樹脂成形時に、溶融状態の樹脂材料から熱が伝わり、圧力が加わることで、接着力を発揮して、カバー基材23とレジスト層29との密着性を高める機能を有している。バインダ層31は、カバー基材23との結合が可能な樹脂材料、例えば、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、上記ABS等によって形成されている。
【0039】
保護部35は、樹脂シート36及び接着層37を備えており、シート状をなし、フィルム基材26よりも前方に配置されている。保護部35は、カバー本体部22に対し、前方から飛び石等による衝撃が加わった場合に、その衝撃から発熱部28を保護する役割を担っている。
【0040】
樹脂シート36は、フィルム基材26とは別部材によって構成されている。樹脂シート36は、上記カバー基材23と同様、ミリ波透過性を有する樹脂材料によって形成されている。樹脂シート36の形成に用いられる樹脂材料は、上記カバー基材23と同様、透明であってもよいし、不透明であってもよい。第1実施形態では、樹脂シート36は、PCによって形成されている。樹脂シート36としては、飛び石等の衝突による衝撃から発熱部28を保護する観点からは、0.3mm以上の厚みを有するものを用いることが望ましく、第1実施形態では、0.4mm程度の厚みを有するものが用いられている。樹脂シート36は、フィルム基材26の前面の形状に対応した形状に賦形されている。
【0041】
接着層37は、上記OCAによって形成されている。接着層37は、上記樹脂シート36とフィルム基材26との間に位置し、樹脂シート36をフィルム基材26の前面に対し、密着状態で接着している。
【0042】
ミリ波透過カバー20は、上記カバー本体部22のほかに、同カバー本体部22をフロントグリル11に取付けるための取付部(図示略)等を備えている。
次に、上記のように構成された第1実施形態の作用について、ミリ波透過カバー20の製造方法とともに説明する。また、作用に伴い生ずる効果についても併せて説明する。
【0043】
ミリ波透過カバー20は、ヒータフィルム作成工程、カバー基材成形工程及び被覆工程を経ることによって形成される。
<ヒータフィルム作成工程>
図4に示すように、ヒータフィルム作成工程では、フィルム基材26の後面に上記OCAが貼付けられることによって、接着層27が形成される。
【0044】
接着層27が形成された上記フィルム基材26と、導電性発熱材料からなる箔38、ここでは銅箔とが、ローラ等により、互いに接近する側へ押される。箔38は、接着層27によりフィルム基材26に貼付けられる。
【0045】
次に、図5に示すように、上記箔38に対し、パターニング加工が行なわれる。パターニング加工は、フォトリソグラフィ及び光学マスクのプロセスを行なうことで、接着層27上の箔38のうち、不要な部分を除去することで、帯状をなし、かつ所定の配線パターンで配線された発熱部28を形成する加工法である。
【0046】
図6に示すように、接着層27上であって、発熱部28の周りにソルダーレレジスト等が塗布されることによって、発熱部28を被覆するレジスト層29が形成される。
このようにして、フィルム基材26、接着層27、発熱部28及びレジスト層29を備えるヒータフィルム25が作成される。
【0047】
<カバー基材成形工程>
カバー基材成形工程では、上記ヒータフィルム25が、カバー基材23の前面の形状に対応した(沿った)形状をなるように賦形される。この賦形に際しては、例えば、カバー基材23の前面の形状と同様の形状を自身の前面に有する治具(図示略)が用いられる。ヒータフィルム25が加熱されて軟化させられ、上記治具に対し、接触した状態又は接近した状態で配置される。軟化状態のヒータフィルム25が治具側へ真空吸引される。すると、ヒータフィルム25が、上記治具の前面に密着させられることで、カバー基材23の前面の形状に対応した形状に賦形される。
【0048】
なお、上記賦形は、ヒータフィルム25にバインダ層31が形成された状態で行なわれてもよい。バインダ層31の種類によっては、同バインダ層31は上記賦形の後に形成されてもよい。
【0049】
バインダ層31は、例えば、ヒータフィルム25(レジスト層29)の後面に対し、粉体塗装、スクリーン印刷等を行なうことによって形成することができる。
上記のように、賦形され、かつバインダ層31が形成されたヒータフィルム25をインサート部材としてカバー基材23がインサート成形される。このインサート成形に際しては、図7に示すように、固定型61及び可動型62を備える金型60が用いられる。可動型62が固定型61から離間させられ、バインダ層31付きヒータフィルム25が固定型61に配置される。金型60が型締めされると、バインダ層31付きヒータフィルム25と可動型62との間にキャビティ63が形成される。このキャビティ63に対し、カバー基材23を形成するための溶融状態の樹脂材料、この場合、PCが射出されて、充填される。溶融樹脂が硬化されることにより、図8に示すように、バインダ層31付きヒータフィルム25の後方にカバー基材23が樹脂成形される。すると、カバー基材23がヒータフィルム25に対しバインダ層31を介して付着した中間体64が得られる。
【0050】
ここで、カバー基材23とヒータフィルム25とが一体となった上記中間体64を形成する別の方法として次のものが考えられる。すなわち、ヒータフィルム25及びカバー基材23を別々に形成する。ヒータフィルム25を加熱して、フィルム基材26を軟化させる。このヒータフィルム25を真空吸引して、カバー基材23の前面に密着させる。すると、ヒータフィルム25が、カバー基材23の上記前面の形状に追従して変形(賦形)されながら同カバー基材23に貼付けられる。
【0051】
この方法では、フィルム基材26が熱により軟化して伸びやすくなる。ヒータフィルム25よりも後方にはカバー基材23が位置するのに対し、前方には、カバー基材23に相当するものが位置しない。そのため、フィルム基材26の前面に、発熱部28に対応した形状の凹凸が発生し、同前面が平滑な面にならない。
【0052】
これに対し、第1実施形態では、上述したように、インサート成形により上記中間体64が形成される。インサート成形では、図7に示すように、キャビティ63に溶融樹脂が充填される際に、フィルム基材26の前面は、固定型61の成形面に対応した形状となるだけで、同前面に、発熱部28に対応した形状の凹凸が形成されることはない。フィルム基材26の前面を平滑な面にすることができる。
【0053】
<被覆工程>
図8に示すように、被覆工程では、ヒータフィルム25が、前方から保護部35によって覆われる。より詳しくは、被覆工程では、保護部35が、遠赤外線、接触加熱等によって加熱される。加熱により軟化した保護部35が、上記中間体64におけるフィルム基材26の前面に接触した状態、又は接近した状態で配置される。
【0054】
この状態で、保護部35が中間体64側へ真空吸引される。すると、樹脂シート36が接着層37を介してフィルム基材26に対し、同フィルム基材26の前面に密着され、同前面の形状に対応した(沿った)形状に賦形される。このように賦形された樹脂シート36は、接着層37によりフィルム基材26の前面に貼付けられる。なお、圧縮空気によって加圧される(圧空成形)ことで上記賦形が行なわれてもよい。
【0055】
すると、図3に示すように、樹脂シート36を有する保護部35と、ヒータフィルム25及びカバー基材23を有する中間体64とが一体となった、目的とするミリ波透過カバー20が得られる。
【0056】
このようにして得られたミリ波透過カバー20は、取付部においてフロントグリル11に取付けられる。このミリ波透過カバー20では、シート状の保護部35が発熱部28よりも前方に位置する。保護部35の樹脂シート36は、フィルム基材26の前面の形状に対応した形状に賦形されて、前方からフィルム基材26を覆っている。保護部35は、カバー本体部22に対し、前方から飛び石等が衝突して衝撃が加わった場合に、その衝撃を受け止める。保護部35は、発熱部28に達するチッピングが上記衝突により生ずるのを抑制し、同発熱部28がチッピングの影響を受けるのを抑制することができる。
【0057】
特に、第1実施形態では、フィルム基材26がPETにより形成され、樹脂シート36がPCにより形成されている。PCは、PETよりも耐衝撃性が高い樹脂材料である。そのため、衝撃を樹脂シート36によって受け止め、発熱部28に達するチッピングが上記衝突により生ずるのを抑制する効果として、より大きな効果が得られる。
【0058】
また、第1実施形態では、PC製の樹脂シート36が、0.4mm程度の厚みを有している。そのため、飛び石等が衝突して衝撃が加わった場合、その衝撃を樹脂シート36のみによって受け止め、発熱部28に達するチッピングが生ずるのを抑制することが可能である。
【0059】
ところで、ミリ波透過カバー20の意匠面21に氷雪が付着した場合には、発熱部28が通電されて発熱する。発熱部28が発した熱の一部は、接着層27、フィルム基材26及び保護部35を介して意匠面21に伝達される。この熱により、意匠面21に付着している氷雪が融解され、氷雪によるミリ波の減衰が抑制される。
【0060】
また、図3に示すミリ波レーダ装置13からミリ波が送信されると、そのミリ波は、カバー本体部22の各部を透過する。透過したミリ波は、先行車両、歩行者等を含む車両前方の物体に当たって反射された後、再びカバー本体部22を透過し、ミリ波レーダ装置13によって受信される。ミリ波レーダ装置13では、送信及び受信された上記ミリ波に基づき、物体が認識され、車両10と同物体との距離、相対速度等の検出等が行われる。
【0061】
第1実施形態によると、上記以外にも、次の効果が得られる。
・ヒータフィルムの一形態として、上記第1実施形態とは異なり、ヒータ線をフィルム基材上に配線したタイプが知られている。ヒータ線は、銅等の導電性発熱材料からなる線状の発熱部と、ウレタン樹脂等の樹脂材料からなり、かつ発熱部を被覆する被覆部とからなる。
【0062】
上記タイプのヒータフィルムの作成に際しては、ヒータ線をフィルム基材に対し這わせる加工が難しく、コストが高くなる。
これに対し、第1実施形態では、導電性発熱材料からなる箔38を、接着層27によりフィルム基材26に貼付け、この箔38をパターニング加工することによって、所定の配線パターンで配線された発熱部28を形成している。そのため、ヒータ線をフィルム基材上に配線する場合に比べ、低コストで、発熱部28を形成することができる。
【0063】
また、ヒータ線を配線する場合よりも、配線パターンの設計の自由度を高めることができる。
・フィルム基材26を、上記第1実施形態とは異なり、0.4mm程度の大きな厚みを有するPC製のフィルム材によって形成することも考えられる。
【0064】
一方で、電子デバイスを効率良く量産する手法の1つとして、ロール・ツー・ロール方式と呼ばれる方式がある。この方式でヒータフィルムを量産する場合、フィルム材が巻かれてロールにされる。ヒータフィルムの作成に際し、ロールからフィルム材が引き出される。引き出されたフィルム材に対し、接着剤の塗布、箔の接着、パターニング加工等の加工が順に行なわれる。上記の各加工が行なわれた後のフィルム材は、再び巻かれてロールにされる。フィルム材の厚みが薄いほど、ロールの巻き数、すなわちロール毎に巻くことのできる長さが長くなる。
【0065】
この点、第1実施形態では、ヒータフィルム25のフィルム基材26を、0.1mm程度の厚みを有するPET製のフィルム材によって形成している。そのため、ヒータフィルム25をロールにする場合、上記のように、フィルム基材26を、0.4mm程度の厚みを有するPC製のフィルム材によって形成する場合に比べ、ロール毎の巻き数を多くすることができる。従って、生産効率を高め、ヒータフィルム25ひいてはミリ波透過カバー20の製造コストを低減することができる。
【0066】
・また、上記のようにフィルム基材26を、0.4mm程度の大きな厚みを有するPC製のフィルム材によって形成した場合、次の懸念がある。
それは、フィルム基材26に対し接着層27によって箔38を貼付けたものに対し、パターニング加工のフォトリソグラフィを行なう際、化学反応に伴い発生する熱によって、フィルム基材26が大きく変形及び収縮する。これに対し、箔38は、フィルム基材26ほどは大きく変形及び収縮しない。そのため、発熱部28がフィルム基材26から剥離するおそれがある。
【0067】
この点、第1実施形態では、フィルム基材26を、0.1mm程度の厚みを有するPETのシート材によって形成している。そのため、フォトリソグラフィ時におけるフィルム基材26の変形及び収縮を抑制することができる。発熱部28がフィルム基材26から剥離するのを抑制することができる。
【0068】
・第1実施形態では、ヒータフィルム25の前方に隣接する保護部35が、0.4mm程度の厚みを有するシート状をなしていて、その前面が意匠面21を構成している。そのため、発熱部28から意匠面21までの距離が短く、発熱部28が発した熱が意匠面21に伝わりやすい。意匠面21に付着した氷雪を効率よく融解することができる。
【0069】
(第2実施形態)
次に、電磁波透過カバーを車両用のミリ波透過カバーに具体化した第2実施形態について、図9を参照して説明する。
【0070】
第2実施形態のミリ波透過カバー40は、第1実施形態のミリ波透過カバー20と同じ構成を有している。そのため、第1実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0071】
第2実施形態は、製造方法の点で第1実施形態と若干異なっている。第2実施形態では、ミリ波透過カバー40の製造に際し、カバー基材成形工程の実施前に被覆工程が行なわれる。
【0072】
被覆工程では、保護部35の樹脂シート36が、接着層37によりヒータフィルム25のフィルム基材26に貼付けられる。すると、フィルム基材26が前方から樹脂シート36によって覆われた被覆体41が形成される。
【0073】
カバー基材成形工程では、被覆体41が、カバー基材23の前面の形状に対応した形状に賦形される。すなわち、被覆体41が加熱されて軟化させられ、カバー基材23の前面の形状と同様の形状を自身の前面に有する治具(図示略)に対し、接触した状態、又は接近した状態で配置される。軟化状態の被覆体41が治具側へ真空吸引される。すると、被覆体41が、上記治具の前面に密着させられることで、カバー基材23の前面の形状に対応した形状に賦形される。
【0074】
なお、この場合の賦形は、第1実施形態と同様に、被覆体41におけるヒータフィルム25にバインダ層31が形成された状態で行なわれてもよい。バインダ層31の種類によっては、同バインダ層31は上記賦形の後に形成されてもよい。
【0075】
賦形後の被覆体41がインサート部材とされる。図9において二点鎖線で示すように、被覆体41よりも後方にカバー基材23がインサート成形される。すると、カバー基材23が、被覆体41のヒータフィルム25に対しバインダ層31を介して付着した、目的とするミリ波透過カバー40が得られる。
【0076】
従って、第2実施形態は、製造工程の点で第1実施形態と若干異なるものの、同じ構成を有しているため、第1実施形態と同様に、発熱部28がチッピングの影響を受けるのを抑制する効果が得られる。
【0077】
(第3実施形態)
次に、電磁波透過カバーを車両用のミリ波透過カバー50に具体化した第3実施形態について、図10を参照して説明する。
【0078】
第3実施形態では、ヒータフィルム25に代えてヒータフィルム51が用いられる。ヒータフィルム51におけるフィルム基材52は、PETに代えて、上記樹脂シート36を形成する樹脂材料と同一の樹脂材料であるPCによって形成されている。
【0079】
このフィルム基材52は、第2実施形態におけるフィルム基材26よりも厚みの大きな厚み、例えば、フィルム基材26の厚みに樹脂シート36の厚みを加えた程度の厚みを有している。
【0080】
このようにフィルム基材52が、樹脂シート36と同一の樹脂材料であるPCによって形成され、しかもフィルム基材52の厚みがフィルム基材26の厚みよりも増している。このことから、フィルム基材52は、カバー本体部22に対し前方から飛び石等が衝突して衝撃が加わった場合、その衝撃を受け止めて、発熱部28に達するチッピングが上記衝突により生ずるのを抑制する機能を有する。すなわち、フィルム基材52は、保護部35と同様に、発熱部28を衝撃から保護する機能を有する。そのため、第3実施形態では、フィルム基材52とは別部材からなる保護部35が設けられていない。
【0081】
上記ヒータフィルム51は、フィルム基材52のほかに、接着層27、発熱部28及びレジスト層29を備えている。なお、ヒータフィルム51を構成する複数の上記部材のうち、フィルム基材52とは異なる部材は、ヒータフィルム25におけるものと同じである。
【0082】
上記のように、ミリ波透過カバー50がミリ波透過カバー40と異なる構成を有していることから、製造工程も第2実施形態と異なっている。
第3実施形態では、被覆工程が行なわれることなくカバー基材成形工程が行なわれる。
【0083】
カバー基材成形工程では、ヒータフィルム51が、カバー基材23の前面の形状に対応した形状に賦形される。すなわち、ヒータフィルム51が加熱されて軟化させられ、カバー基材23の前面の形状と同様の形状を自身の前面に有する治具(図示略)に対し接触した状態、又は接近した状態で配置される。軟化状態のヒータフィルム51が治具側へ真空吸引される。すると、ヒータフィルム51が、上記治具の前面に密着させられることで、カバー基材23の前面の形状に対応した形状に賦形される。
【0084】
なお、この場合の賦形は、第2実施形態と同様に、ヒータフィルム51にバインダ層31が形成された状態で行なわれてもよい。バインダ層31の種類によっては、同バインダ層31は賦形の後に形成されてもよい。
【0085】
賦形後のヒータフィルム51がインサート部材とされ、第2実施形態と同様に、ヒータフィルム51よりも後方にカバー基材23がインサート成形される。すると、カバー基材23が、ヒータフィルム51に対しバインダ層31を介して付着した、目的とするミリ波透過カバー50が得られる。
【0086】
従って、第3実施形態は、製造工程の点で第2実施形態と若干異なるものの、第2実施形態と同様に、発熱部28がチッピングの影響を受けるのを抑制する効果が得られる。
なお、各実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。上記実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0087】
・第1及び第2実施形態におけるフィルム基材26として、PET以外にも、次の条件を満たす材料によって形成されたものが用いられてもよい。
条件:ミリ波透過性を有し、かつ耐熱性及び耐収縮性(寸法安定性)に優れた樹脂材料であること。
【0088】
該当する樹脂材料としては、例えば、ポリアミド(PA)が挙げられる。
・樹脂シート36として、PC以外にも、次の条件を満たす材料によって形成されたものが用いられてもよい。
【0089】
条件:飛び石等の衝突によって前方から衝撃が加わってチッピングが付いても、発熱部28に到達するのを抑制する。
・上記ミリ波透過カバー20,40,50は、車両のエンブレム、オーナメント、マーク等に具体化することができる。
【0090】
・上記電磁波透過カバーは、車外の物体を検出するための電磁波を送信及び受信する装置が搭載された車両であれば適用可能である。この場合、装置が送信及び受信する電磁波には、ミリ波のほかにも、近赤外線等の電磁波が含まれる。
【0091】
・車外の物体を検出するための電磁波を送信及び受信する装置は、前方監視用以外にも、後方監視用、前側方監視用、又は後側方監視用の装置であってもよい。この場合、電磁波透過カバーは、電磁波の送信方向における上記装置の前方に配置される。
【0092】
・電磁波透過カバーは、電磁波を送信及び受信する装置が、車両とは異なる種類の乗物、例えば、電車、航空機、船舶等の乗物に搭載された場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0093】
10…車両(乗物)
20,40,50…ミリ波透過カバー(電磁波透過カバー)
22…カバー本体部
23…カバー基材
25,51…ヒータフィルム
26,52…フィルム基材
28…発熱部
35…保護部
36…樹脂シート
41…被覆体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10