(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155280
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】コネクタのシールド構造
(51)【国際特許分類】
H01R 13/648 20060101AFI20221005BHJP
H01R 4/64 20060101ALI20221005BHJP
H01R 13/533 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
H01R13/648
H01R4/64 C
H01R13/533 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058709
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】藤井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】山蔭 駿平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 宏晃
【テーマコード(参考)】
5E021
5E087
【Fターム(参考)】
5E021FA03
5E021FB11
5E021FB20
5E021FC21
5E021FC29
5E021LA10
5E021LA15
5E021LA21
5E087EE07
5E087FF18
5E087JJ07
5E087LL03
5E087LL12
5E087MM08
5E087QQ04
5E087RR03
5E087RR25
5E087RR34
(57)【要約】
【課題】組み付け作業性を向上させつつも、電磁ノイズの遮蔽性を向上させること。
【解決手段】第1シールドプレート32及び第2シールドプレート33は、第1シールドプレート32の第2の貫通孔32e及び第2シールドプレート33の第2の貫通孔33eそれぞれに挿通される第1ボルトB1によってケース31に共締めされて固定される。第1シールドプレート32及び第2シールドプレート33は、第1シールドプレート32の第3の貫通孔32f及び第2シールドプレート33の第3の貫通孔33fそれぞれに挿通される第2ボルトB2によってケース31に共締めされて固定される。各第2の貫通孔32e,33eと各第3の貫通孔32f,33fとは、第1シールドプレート32及び第2シールドプレート33におけるそれぞれの第1の貫通孔32d,33d同士を結ぶ仮想直線L1を跨いで配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線の周囲が絶縁被膜で被覆されるとともに前記絶縁被膜がシールド部で覆われ、前記芯線が接続対象物のコネクタの端子に電気的に接続される一対の電線と、
一対の前記電線が引き出される引出口が形成された金属製のケースと、
板状の本体部と前記本体部を貫通して各前記電線が挿通される第1の貫通孔とをそれぞれ有する一対のシールドプレートと、を備え、
各前記シールドプレートは、前記第1の貫通孔に挿通された各前記電線の前記シールド部と前記ケースとを電気的に接続するコネクタのシールド構造であって、
各前記シールドプレートは、第1の締結部材が挿通する第2の貫通孔と第2の締結部材が挿通する第3の貫通孔とを有しており、
一対の前記シールドプレートは、前記第2の貫通孔同士が重なり合って前記ケースに対して前記第1の締結部材で共締めされ、且つ、前記第3の貫通孔同士が重なり合って前記ケースに対して前記第2の締結部材で共締めされて、前記引出口を閉塞し、
前記第2の貫通孔と前記第3の貫通孔とは、一対の前記シールドプレートにおけるそれぞれの前記第1の貫通孔を結ぶ仮想直線を跨いで配置されることを特徴とするコネクタのシールド構造。
【請求項2】
各前記シールドプレートは、前記第1の貫通孔に挿通された前記電線の前記シールド部に対して、カシメられて電気的に接続されるカシメ部を有し、
前記カシメ部は、前記シールドプレートに一体形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコネクタのシールド構造。
【請求項3】
前記シールドプレートは、前記シールドプレートの板厚方向に突出する補強部を有し、
前記補強部は、前記電線を囲むように延びていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコネクタのシールド構造。
【請求項4】
前記接続対象物のコネクタは、電動圧縮機の高電圧用コネクタ及び低電圧用コネクタのうちの少なくとも一方であることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のコネクタのシールド構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタのシールド構造に関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタのシールド構造は、一対の電線と、金属製のケースと、一対のシールドプレートと、を備えている場合がある。各電線は、芯線の周囲が絶縁被膜で被覆されるとともに絶縁被膜がシールド部で覆われ、芯線が接続対象物のコネクタの端子に電気的に接続されるものである。ケースには、一対の電線が引き出される引出口が形成されている。各シールドプレートは、板状の本体部と本体部を貫通して各電線が挿通される第1の貫通孔とをそれぞれ有している。そして、各シールドプレートは、第1の貫通孔に挿通された各電線のシールド部とケースとを電気的に接続する。
【0003】
ここで、例えば、シールドプレートは、ケースの引出口に対して圧入されることにより、ケースに固定される場合が考えられる。この場合、シールドプレートをケースの引出口に圧入し易くするために、シールドプレートの縁の一部を切り欠くことにより、シールドプレートとケースとの接触面積を低減させることが考えられる。これによれば、シールドプレートをケースの引出口に対して圧入し易くすることができるが、その一方で、ケースの引出口とシールドプレートの縁との間に隙間が生じてしまう。その結果、ケースの引出口とシールドプレートの縁との間の隙間を介して電磁ノイズが通過可能になってしまうため、電磁ノイズの遮蔽性が低下する。
【0004】
そこで、例えば特許文献1では、シールドプレートによって引出口を閉塞した状態で、シールドプレートを締結部材であるボルトによってケースに固定している。これによれば、シールドプレートをケースに固定するために、シールドプレートをケースの引出口に対して圧入する必要が無いため、ケースの引出口とシールドプレートの縁との間の隙間を介して電磁ノイズが通過可能になってしまうといった問題が回避される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1では、1つのボルトによってシールドプレートをケースに固定しているため、シールドプレートをケースに固定する際に、シールドプレートが、ボルトを回動中心として、ケースに対して回動する虞がある。シールドプレートがケースに対して回動して、予め定められた固定位置に対してずれた位置でケースに対して固定されてしまうと、シールドプレートによって引出口が閉塞されていない状態で、シールドプレートがケースに固定されてしまう場合がある。すると、電磁ノイズがケースの外部から引出口を介してケースの内部へ侵入したり、電磁ノイズがケースの内部から引出口を介してケースの外部へ放射したりするため、電磁ノイズの遮蔽性が低下してしまう。
【0007】
そこで、シールドプレートをケースに固定する際に、シールドプレートを治具によって位置決めすることで、シールドプレートにおけるケースに対する回動を規制した状態で、シールドプレートをボルトによってケースに固定することが考えられる。しかし、シールドプレートを治具によって位置決めする作業が煩雑であるため、組み付け作業性が悪い。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためのコネクタのシールド構造は、芯線の周囲が絶縁被膜で被覆されるとともに前記絶縁被膜がシールド部で覆われ、前記芯線が接続対象物のコネクタの端子に電気的に接続される一対の電線と、一対の前記電線が引き出される引出口が形成された金属製のケースと、板状の本体部と前記本体部を貫通して各前記電線が挿通される第1の貫通孔とをそれぞれ有する一対のシールドプレートと、を備え、各前記シールドプレートは、前記第1の貫通孔に挿通された各前記電線の前記シールド部と前記ケースとを電気的に接続するコネクタのシールド構造であって、各前記シールドプレートは、第1の締結部材が挿通する第2の貫通孔と第2の締結部材が挿通する第3の貫通孔とを有しており、一対の前記シールドプレートは、前記第2の貫通孔同士が重なり合って前記ケースに対して前記第1の締結部材で共締めされ、且つ、前記第3の貫通孔同士が重なり合って前記ケースに対して前記第2の締結部材で共締めされて、前記引出口を閉塞し、前記第2の貫通孔と前記第3の貫通孔とは、一対の前記シールドプレートにおけるそれぞれの前記第1の貫通孔を結ぶ仮想直線を跨いで配置される。
【0009】
これによれば、各シールドプレートは、各シールドプレートの第2の貫通孔それぞれに挿通される第1の締結部材と、各シールドプレートの第3の貫通孔それぞれ挿通される第2の締結部材とによってケースに共締めされて固定される。このため、第1の締結部材及び第2の締結部材で各シールプレートをケースに固定する際に、各シールドプレートがケースに対して回動し難くなる。よって、各シールドプレートを、予め定められた固定位置でケースに対して固定するために、シールドプレートを治具によって位置決めしておく必要が無い。したがって、組み付け作業性が向上する。さらに、各第2の貫通孔と各第3の貫通孔とは、一対のシールドプレートにおけるそれぞれの第1の貫通孔同士を結ぶ仮想直線を跨いで配置されている。このため、各シールドプレートが、予め定められた固定位置でケースに対して固定され易くなるため、電磁ノイズの遮蔽性を向上させることができる。以上により、組み付け作業性を向上させつつも、電磁ノイズの遮蔽性を向上させることができる。
【0010】
上記コネクタのシールド構造において、各前記シールドプレートは、前記第1の貫通孔に挿通された前記電線の前記シールド部に対して、カシメられて電気的に接続されるカシメ部を有し、前記カシメ部は、前記シールドプレートに一体形成されているとよい。
【0011】
これによれば、シールドプレートとカシメ部とが別体である場合に比べて、部品点数を削減することができる。
上記コネクタのシールド構造において、前記シールドプレートは、前記シールドプレートの板厚方向に突出する補強部を有し、前記補強部は、前記電線を囲むように延びているとよい。
【0012】
これによれば、補強部によってシールドプレートの強度が向上しているため、例えば、第1の締結部材及び第2の締結部材をケースに締結する際に、第1の締結部材及び第2の締結部材の締結力によって各シールドプレートが変形することを抑制することができる。
【0013】
上記コネクタのシールド構造において、前記接続対象物のコネクタは、電動圧縮機の高電圧用コネクタ及び低電圧用コネクタのうちの少なくとも一方であるとよい。
このようなシールド構造は、接続対象物のコネクタが、電動圧縮機の高電圧用コネクタ及び低電圧用コネクタのうちの少なくとも一方である場合に好適である。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、組み付け作業性を向上させつつも、電磁ノイズの遮蔽性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態における電動圧縮機を模式的に示す側面図。
【
図2】第1シールドプレート及び第2シールドプレートがケースに取り付けられている状態を示す図。
【
図4】電線の一部及び第1シールドプレートを示す分解斜視図。
【
図6】電線におけるシールド部の一部を露出させた状態を示す模式図。
【
図7】電線にシーリングを装着した状態を示す模式図。
【
図8】電線におけるシールド部の一部を折り返した状態を示す模式図。
【
図9】電線に第1シールドプレートを取り付けた状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、コネクタのシールド構造を電動圧縮機の高電圧用コネクタのシールド構造に具体化した一実施形態を
図1~
図9にしたがって説明する。したがって、本実施形態のシールド構造は、電動圧縮機の高電圧用コネクタに採用される。
【0017】
<電動圧縮機10の全体構成>
図1に示すように、電動圧縮機10は、ハウジング11を備えている。ハウジング11は、筒状である。ハウジング11は、金属製である。ハウジング11は、吐出ハウジング12、モータハウジング13、及びインバータケース14を有している。モータハウジング13内には、圧縮部15及び電動モータ16が収容されている。圧縮部15は、例えば、モータハウジング13内に固定された図示しない固定スクロールと、固定スクロールに対向配置される図示しない可動スクロールとから構成されるスクロール式である。
【0018】
電動圧縮機10は、インバータ17と、高電圧用コネクタ30と、を備えている。インバータ17は、電動モータ16を駆動する。インバータ17は、高電圧用コネクタ30と図示しない低電圧用コネクタと電気的に接続されている。インバータ17は、インバータケース14内に収容されている。そして、インバータ17が、電動モータ16を駆動すると、圧縮部15が駆動して、外部冷媒回路19からモータハウジング13内に吸入された冷媒が、圧縮部15により圧縮される。圧縮部15により圧縮された冷媒は、吐出ハウジング12内に吐出されて、外部冷媒回路19へ流出する。そして、外部冷媒回路19へ流出した冷媒は、外部冷媒回路19の図示しない熱交換器や膨張弁を経て、モータハウジング13内に還流する。電動圧縮機10及び外部冷媒回路19は、車両空調装置20を構成している。したがって、本実施形態の電動圧縮機10は、例えば、車両空調装置20に用いられている。
【0019】
<高電圧用コネクタ30の全体構成>
図2、
図3及び
図4に示すように、高電圧用コネクタ30は、ケース31を備えている。また、高電圧用コネクタ30は、一対の電線40を備えている。さらに、高電圧用コネクタ30は、シールドプレートとしての第1シールドプレート32及び第2シールドプレート33を備えている。したがって、本実施形態において、高電圧用コネクタ30は、一対のシールドプレートを備えている。
【0020】
<ケース31の構成>
図2及び
図3に示すように、ケース31は、端壁31aと、端壁31aから突出する筒部31bと、を有している。ケース31は、金属製である。ケース31の端壁31aには、第1引出口31cと、第2引出口31dと、が形成されている。第1引出口31c及び第2引出口31dは、端壁31aを板厚方向に貫通している。第1引出口31c及び第2引出口31dは、平面視すると、所定の間隔を置いて隣り合うように並んで配置されている。第1引出口31c及び第2引出口31dからは、電線40がそれぞれ引き出されている。また、ケース31の端壁31aには、雌ねじ孔31eが2つ形成されている。各雌ねじ孔31eは、端壁31aを平面視すると、第1引出口31c及び第2引出口31dの並設方向に対して直交する方向に並んで配置されている。
【0021】
<第1シールドプレート32の構成>
第1シールドプレート32は、薄平板状の1枚の金属板をプレス成型することにより形成されている。第1シールドプレート32は、本体部としての第1本体部32aと、第1延在部32bと、第2延在部32cと、を有している。第1本体部32aは、平面視すると、略U字状である。したがって、第1本体部32aは、平面視すると、湾曲状に延びている。
【0022】
第1シールドプレート32は、第1の貫通孔32dを有している。第1の貫通孔32dは、第1本体部32aに形成されている。第1の貫通孔32dは、第1本体部32aを板厚方向に貫通している。第1の貫通孔32dは、円孔状である。なお、第1本体部32aの板厚方向を単に「板厚方向」と記載する場合もある。第1の貫通孔32dは、第1本体部32aの中央部に形成されている。
【0023】
第1本体部32aは、平面視したときに、第1の貫通孔32dに対して離間する方向へ凸となるように第1の貫通孔32dの周囲を湾曲して延びる第1縁部321aを有している。第1縁部321aの一部分は、第1の貫通孔32dの内周面に沿って延びている。また、第1本体部32aは、平面視したときに、第1の貫通孔32dに対して接近する方向へ凹となるように第1の貫通孔32dの周囲を湾曲して延びる第2縁部322aを有している。第2縁部322aは、第1縁部321aに沿って延びている。
【0024】
第1延在部32bは、第1本体部32aにおける湾曲状に延びる方向の一方に位置する部位から第1の貫通孔32dに対して離間する方向に延在している。第1シールドプレート32は、第2の貫通孔32eを有している。第2の貫通孔32eは、第1延在部32bに形成されている。第2の貫通孔32eは、第1延在部32bを板厚方向に貫通している。第1延在部32bの板厚方向は、第1本体部32aの板厚方向と一致している。
【0025】
第2延在部32cは、第1本体部32aにおける湾曲状に延びる方向の他方に位置する部位から第1の貫通孔32dに対して離間する方向に延在している。第1延在部32bにおける第1本体部32aから延在する方向と、第2延在部32cにおける第1本体部32aから延在する方向とは交差している。第1シールドプレート32は、第3の貫通孔32fを有している。第3の貫通孔32fは、第2延在部32cに形成されている。第3の貫通孔32fは、第2延在部32cを板厚方向に貫通している。第2延在部32cの板厚方向は、第1本体部32aの板厚方向と一致している。第2の貫通孔32eと第1の貫通孔32dとの間の距離と、第3の貫通孔32fと第1の貫通孔32dとの間の距離と、は等しい。
【0026】
第1シールドプレート32は、補強部としての第1突起部32gを有している。第1突起部32gは、第1本体部32aの第1縁部321aから第1本体部32aの板厚方向に起立している。第1突起部32gは、第1本体部32aの一部が板厚方向に折り曲げられることにより形成されている。したがって、第1突起部32gは、板厚方向に突出している。第1突起部32gは、平面視すると、第1の貫通孔32dを囲むように延びている。第1の貫通孔32dには、電線40が挿通される。したがって、第1突起部32gは、電線40を囲むように延びている。
【0027】
<第2シールドプレート33の構成>
第2シールドプレート33は、薄平板状の1枚の金属板をプレス成型することにより形成されている。第2シールドプレート33は、本体部としての第2本体部33aと、第3延在部33bと、第4延在部33cと、を有している。第2本体部33aは、平面視すると、略U字状である。したがって、第2本体部33aは、平面視すると、湾曲状に延びている。
【0028】
第2シールドプレート33は、第1の貫通孔33dを有している。第1の貫通孔33dは、第2本体部33aに形成されている。第1の貫通孔33dは、第2本体部33aを板厚方向に貫通している。第1の貫通孔33dは、円孔状である。第1の貫通孔33dは、第2本体部33aの中央部に形成されている。
【0029】
第2本体部33aは、平面視したときに、第1の貫通孔33dに対して離間する方向へ凸となるように第1の貫通孔33dの周囲を湾曲して延びる第3縁部331aを有している。第3縁部331aの一部分は、第1の貫通孔33dの内周面に沿って延びている。また、第2本体部33aは、平面視したときに、第1の貫通孔33dに対して接近する方向へ凹となるように第1の貫通孔33dの周囲を湾曲して延びる第4縁部332aを有している。第4縁部332aは、第3縁部331aに沿って延びている。
【0030】
第3延在部33bは、第2本体部33aにおける湾曲状に延びる方向の一方に位置する部位から第1の貫通孔33dに対して離間する方向に延在している。第2シールドプレート33は、第2の貫通孔33eを有している。第2の貫通孔33eは、第3延在部33bに形成されている。第2の貫通孔33eは、第3延在部33bを板厚方向に貫通している。第3延在部33bの板厚方向は、第2本体部33aの板厚方向と一致している。
【0031】
第4延在部33cは、第2本体部33aにおける湾曲状に延びる方向の他方に位置する部位から第1の貫通孔33dに対して離間する方向に延在している。第3延在部33bにおける第2本体部33aから延在する方向と、第4延在部33cにおける第2本体部33aから延在する方向とは交差している。第2シールドプレート33は、第3の貫通孔33fを有している。第3の貫通孔33fは、第4延在部33cに形成されている。第3の貫通孔33fは、第4延在部33cを板厚方向に貫通している。第4延在部33cの板厚方向は、第1本体部32aの板厚方向と一致している。第2の貫通孔33eと第1の貫通孔33dとの間の距離と、第3の貫通孔33fと第1の貫通孔33dとの間の距離と、は等しい。
【0032】
第2シールドプレート33は、補強部としての第2突起部33gを有している。第2突起部33gは、第2本体部33aの第3縁部331aから第2本体部33aの板厚方向に起立している。第2突起部33gは、第2本体部33aの一部が板厚方向に折り曲げられることにより形成されている。したがって、第2突起部33gは、板厚方向に突出している。第2突起部33gは、平面視すると、第1の貫通孔33dを囲むように延びている。第1の貫通孔33dには、電線40が挿通される。したがって、第2突起部33gは、電線40を囲むように延びている。
【0033】
<カシメ部34の構成>
図3、
図4及び
図5に示すように、第1シールドプレート32及び第2シールドプレート33は、カシメ部34をそれぞれ有している。なお、
図3、
図4及び
図5では、第1シールドプレート32のカシメ部34の構成について説明するが、第2シールドプレート33のカシメ部34の構成は、第1シールドプレート32のカシメ部34の構成と同じであるため、その詳細な説明を省略する。カシメ部34は、略筒状である。カシメ部34は、第1本体部32aの第1の貫通孔32dの内周縁の全周から筒状に突出している。カシメ部34は、第1シールドプレート32に一体形成されている。カシメ部34の内側と第1の貫通孔32dとは連通している。
【0034】
<電線40の構成>
図3、
図4及び
図5に示すように、電線40は、芯線42と、絶縁被膜43と、シールド部44と、シース45と、を有している。芯線42の端部は、電動圧縮機10のインバータ17の端子T1に電気的に接続されている。したがって、芯線42の接続対象物は、インバータ17である。絶縁被膜43は、芯線42の周囲を被覆している。絶縁被膜43は、絶縁性材料製である。シールド部44は、絶縁被膜43の周囲を覆っている。したがって、芯線42の周囲が絶縁被膜43で被覆されるとともに絶縁被膜43がシールド部44で覆われている。シールド部44は、複数の導電性材料からなる素線が編み込まれることによって形成された編組である。シース45は、シールド部44の周囲を被覆している。シース45は、絶縁性材料製である。
【0035】
<電線40とシールドプレート32との関係>
図6、
図7、
図8、及び
図9にしたがって、電線40に第1シールドプレート32を取り付ける手順について説明する。
図6に示すように、シース45の端部を剥がす。すると、シース45を剥がした部位にシールド部44の一部が露出する。続いて、
図7に示すように、シース45の端部に、C字状のシーリング46を装着する。シーリング46は、例えば、金属製である。シーリング46は、絶縁被膜43よりも強度が高ければよい。次に、
図8に示すように、シールド部44における露出した部位を折り返すことによって、シーリング46をシールド部44における折り返した部位である折り返し部44aによって覆う。そして、電線40を第1の貫通孔32dに挿通する。さらに、
図9に示すように、折り返し部44aに第1シールドプレート32のカシメ部34をかしめる。このようにして、電線40に第1シールドプレート32が取り付けられる。したがって、カシメ部34は、第1の貫通孔32dに挿通された電線40のシールド部44に対して、カシメられて電気的に接続される。なお、電線40に第2シールドプレート33を取り付ける手順は、電線40に第1シールドプレート32を取り付ける手順と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0036】
<第1シールドプレート32と第2シールドプレート33との関係>
図2に示すように、第1シールドプレート32と第2シールドプレート33とは、第1延在部32bと第3延在部33bとが板厚方向で重なり合い、第2延在部32cと第4延在部33cとが板厚方向で重なり合うように互いに配置されている。このとき、第1シールドプレート32と第2シールドプレート33とは、平面視すると、第1シールドプレート32の第2縁部322aと、第2シールドプレート33の第4縁部332aと、が向き合った状態で互いに配置されている。そして、第1シールドプレート32の第2の貫通孔32eと第2シールドプレート33の第2の貫通孔33eとが板厚方向で重なり合っている。また、第1シールドプレート32の第3の貫通孔32fと第2シールドプレート33の第3の貫通孔33fとが板厚方向で重なり合っている。
【0037】
第1シールドプレート32の第1の貫通孔32dと第2シールドプレート33の第1の貫通孔33dとを結ぶ仮想的な直線を仮想直線L1とする。第1シールドプレート32及び第2シールドプレート33における仮想直線L1を跨いで区画された領域をそれぞれ第1領域A1及び第2領域A2とする。第1延在部32bと第3延在部33bとは、第1領域A1にそれぞれ配置されている。よって、第1シールドプレート32の第2の貫通孔32eと第2シールドプレート33の第2の貫通孔33eとは、第1領域A1にそれぞれ配置されている。第2延在部32cと第4延在部33cとは、第2領域A2にそれぞれ配置されている。よって、第1シールドプレート32の第3の貫通孔32fと第2シールドプレート33の第3の貫通孔33fとは、第2領域A2にそれぞれ配置されている。第1シールドプレート32の第2の貫通孔32e及び第3の貫通孔32fは、仮想直線L1を跨いだそれぞれの領域に設けられている。第2シールドプレート33の第2の貫通孔33e及び第3の貫通孔33fは、仮想直線L1を跨いだそれぞれの領域に設けられている。したがって、各第2の貫通孔32e,33eと各第3の貫通孔32f,33fとは、第1シールドプレート32及び第2シールドプレート33におけるそれぞれの第1の貫通孔32d,33dを結ぶ仮想直線L1を跨いで配置されている。
【0038】
<シールド構造について>
図2及び
図3に示すように、電線40が取り付けられた第1シールドプレート32、及び電線40が取り付けられた第2シールドプレート33は、各カシメ部34が第1引出口31c及び第2引出口31dにそれぞれ挿入された状態で、ケース31に配置される。さらに、第1シールドプレート32及び第2シールドプレート33は、ケース31に対して配置される。このとき、第1シールドプレート32の第2の貫通孔32e及び第2シールドプレート33の第2の貫通孔33eが2つの雌ねじ孔31eの一方に重なり合っている。また、第1シールドプレート32の第3の貫通孔32f及び第2シールドプレート33の第3の貫通孔33fが2つの雌ねじ孔31eの他方に重なり合っている。
【0039】
そして、第1シールドプレート32の第2の貫通孔32e及び第2シールドプレート33の第2の貫通孔33eをそれぞれ通過する第1の締結部材としての第1ボルトB1が2つの雌ねじ孔31eの一方に螺合される。また、第1シールドプレート32の第3の貫通孔32f及び第2シールドプレート33の第3の貫通孔33fをそれぞれ通過する第2の締結部材としての第2ボルトB2が2つの雌ねじ孔31eの他方に螺合される。このように、第1ボルトB1及び第2ボルトB2がケース31に締結されることにより、第1シールドプレート32及び第2シールドプレート33がケース31に対して共締めされて固定されている。したがって、第1シールドプレート32及び第2シールドプレート33は、第2の貫通孔32e,33e同士が重なり合ってケース31に対して第1ボルトB1で共締めされている。また、第1シールドプレート32及び第2シールドプレート33は、第3の貫通孔32f,33f同士が重なり合ってケース31に対して第2ボルトB2で共締めされている。
【0040】
そして、第1シールドプレート32及び第2シールドプレート33は、各電線40のシールド部44に対して、各カシメ部34を介して電気的に接続されるとともに第1引出口31c及び第2引出口31dを閉塞した状態でケース31に固定される。これにより、ケース31とシールド部44とが電気的に接続される。したがって、第1シールドプレート32及び第2シールドプレート33は、第1引出口31c及び第2引出口31dを閉塞している。なお、第1シールドプレート32及び第2シールドプレート33がケース31に固定された後、ケース31の筒部31bの開口は、図示しない樹脂製の蓋部によって閉塞される。
【0041】
第1引出口31c及び第2引出口31dの内部には、シール部材36がそれぞれ設けられている。各シール部材36は、ゴム製である。各シール部材36は、第1引出口31c及び第2引出口31dの内部におけるカシメ部34が挿入されている部位よりもインバータ17寄りの部位に配置されている。各シール部材36は、電線40と第1引出口31cの内周面との間、及び電線40と第2引出口31dの内周面との間をシールしている。
【0042】
ケース31は、インバータケース14の外面に固定されている。各電線40の一端部は、インバータケース14内に延在している。そして、各電線40の芯線42がインバータ17の端子T1に電気的に接続されている。そして、各電線40の他端部は、第1引出口31c及び第2引出口31dからケース31の外部へ引き出されている。各電線40の他端部には、コネクタ接続部C1が設けられている。そして、コネクタ接続部C1が外部電源P1の相手側コネクタ18に接続される。このようにして、高電圧用コネクタ30のシールド構造が形成されている。
【0043】
コネクタ接続部C1と相手側コネクタ18とが接続されると、外部電源P1からの電力が電線40を介してインバータ17に供給される。これにより、インバータ17は、電動モータ16を駆動する。
【0044】
<作用>
次に、本実施形態の作用について説明する。
芯線42は、シールド部44に覆われているため、芯線42と電線40の外部との間で電磁ノイズが通過することが抑制される。また、第1引出口31cは、第1シールドプレート32及び電線40によって閉塞されているため、第1引出口31cを介して電磁ノイズが通過することが抑制される。さらに、第2引出口31dは、第2シールドプレート33及び電線40によって閉塞されているため、第2引出口31dを介して電磁ノイズが通過することが抑制される。その結果、電磁ノイズの遮蔽性が向上する。このように、本実施形態のコネクタのシールド構造は、電動圧縮機10の高電圧用コネクタ30に採用されている。
【0045】
<効果>
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)第1シールドプレート32及び第2シールドプレート33は、第1シールドプレート32の第2の貫通孔32e及び第2シールドプレート33の第2の貫通孔33eそれぞれに挿通される第1ボルトB1によってケース31に共締めされて固定される。また、第1シールドプレート32及び第2シールドプレート33は、第1シールドプレート32の第3の貫通孔32f及び第2シールドプレート33の第3の貫通孔33fそれぞれに挿通される第2ボルトB2によってケース31に共締めされて固定される。このため、第1ボルトB1及び第2ボルトB2で第1シールドプレート32及び第2シールドプレート33をケース31に固定する際に、第1シールドプレート32及び第2シールドプレート33がケース31に対して回動し難くなる。よって、第1シールドプレート32及び第2シールドプレート33を、予め定められた固定位置でケース31に対して固定するために、第1シールドプレート32及び第2シールドプレート33を治具によって位置決めしておく必要が無い。したがって、組み付け作業性が向上する。さらに、各第2の貫通孔32e,33eと各第3の貫通孔32f,33fとは、第1シールドプレート32及び第2シールドプレート33におけるそれぞれの第1の貫通孔32d,33d同士を結ぶ仮想直線L1を跨いで配置されている。このため、第1シールドプレート32及び第2シールドプレート33が、予め定められた固定位置でケース31に対して固定され易くなるため、電磁ノイズの遮蔽性を向上させることができる。以上により、組み付け作業性を向上させつつも、電磁ノイズの遮蔽性を向上させることができる。
【0046】
(2)第1シールドプレート32とカシメ部34とは、一体形成されている。また、第2シールドプレート33とカシメ部34とは、一体形成されている。これによれば、第1シールドプレート32とカシメ部34とが別体である場合に比べて、部品点数を削減することができる。また、第2シールドプレート33とカシメ部34とが別体である場合に比べて、部品点数を削減することができる。さらに、第1シールドプレート32とカシメ部34との位置決め、及び第2シールドプレート33とカシメ部34との位置決めが不要となるため、組み付け作業性がさらに向上する。
【0047】
(3)第1シールドプレート32は、電線40を囲むように延びる第1突起部32gを有している。これによれば、第1突起部32gによって第1シールドプレート32の強度が向上しているため、例えば、第1ボルトB1及び第2ボルトB2の締結力によって第1シールドプレート32が変形することを抑制することができる。また、第2シールドプレート33は、電線40を囲むように延びる第2突起部33gを有している。これによれば、第2突起部33gによって第2シールドプレート33の強度が向上しているため、例えば、第1ボルトB1及び第2ボルトB2の締結力によって第2シールドプレート33が変形することを抑制することができる。
【0048】
(4)本実施形態のシールド構造は、接続対象物のコネクタが、電動圧縮機10の高電圧用コネクタ30である場合に好適である。
(5)例えば、第1シールドプレート32の第2の貫通孔32eと第2シールドプレート33の第2の貫通孔33eとが重なり合っていない場合を考える。さらには、第1シールドプレート32の第3の貫通孔32fと第2シールドプレート33の第3の貫通孔33fとが重なり合っていない場合を考える。この場合、第1シールドプレート32及び第2シールドプレート33をケース31に固定するためには、4本のボルトが必要になる。そこで、本実施形態では、第1シールドプレート32の第2の貫通孔32eと第2シールドプレート33の第2の貫通孔33eとが重なり合っている。さらには、第1シールドプレート32の第3の貫通孔32fと第2シールドプレート33の第3の貫通孔33fとが重なり合っている。したがって、第1ボルトB1及び第2ボルトB2で第1シールドプレート32及び第2シールドプレート33をケース31に固定することができるため、部品点数を削減することができる。
【0049】
(6)第1シールドプレート32とカシメ部34とは、一体形成されている。第2シールドプレート33とカシメ部34とは、一体形成されている。これによれば、カシメ部34を第1シールドプレート32に対して固定する工程、及びカシメ部34を第2シールドプレート33に対して固定する工程が不要となるため、製造手順を簡素化することができる。
【0050】
(7)第1シールドプレート32及び第2シールドプレート33は、第1ボルトB1及び第2ボルトB2を介してケース31に固定されている。これによれば、第1シールドプレート32及び第2シールドプレート33が第1シールドプレート32及び第2シールドプレート33の延びる方向に対して交差するように反り返ることを抑制することができる。
【0051】
<変更例>
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0052】
○ 実施形態において、第1シールドプレート32とカシメ部34とが別体であってもよい。
○ 実施形態において、第2シールドプレート33とカシメ部34とが別体であってもよい。
【0053】
○ 実施形態において、第1シールドプレート32が第1突起部32gを有していなくてもよい。また、第2シールドプレート33が第2突起部33gを有していなくてもよい。
【0054】
○ 実施形態において、ケース31の端壁31aに、引出口が1つだけ形成されており、1つの引出口から一対の電線40が引き出されていてもよい。この場合であっても、引出口は、第1シールドプレート32及び第2シールドプレート33によって閉塞されている必要がある。
【0055】
○ 実施形態において、例えば、第1の締結部材及び第2の締結部材としてピンをケース31に圧入することにより、第1シールドプレート32及び第2シールドプレート33をケース31に締結してもよい。
【0056】
○ 実施形態において、シールド構造の接続対象物のコネクタは、電動圧縮機10の高電圧用コネクタ30に限らず、インバータ17に制御信号を送信する低電圧用コネクタであってもよい。要は、接続対象物のコネクタは、電動圧縮機10の高電圧用コネクタ30及び低電圧用コネクタのうちの少なくとも一方であればよい。
【0057】
○ 実施形態において、圧縮部15は、スクロール式に限らず、例えば、ピストン式やベーン式等であってもよい。
○ 実施形態において、電動圧縮機10は、車両空調装置20を構成していたが、これに限らず、例えば、電動圧縮機10は、燃料電池車に搭載されており、燃料電池に供給される流体としての空気を圧縮部15により圧縮するものであってもよい。
【符号の説明】
【0058】
10…電動圧縮機、17…接続対象物であるインバータ、30…高電圧用コネクタ、31…ケース、31c…引出口としての第1引出口、31d…引出口としての第2引出口、32…シールドプレートとしての第1シールドプレート、32a…本体部としての第1本体部、32d…第1の貫通孔、32e…第2の貫通孔、32f…第3の貫通孔、32g…補強部としての第1突起部、33…シールドプレートとしての第2シールドプレート、33a…本体部としての第2本体部、33d…第1の貫通孔、33e…第2の貫通孔、33f…第3の貫通孔、33g…補強部としての第2突起部、34…カシメ部、40…電線、42…芯線、43…絶縁被膜、44…シールド部、B1…第1の締結部材としての第1ボルト、B2…第2の締結部材としての第2ボルト、L1…仮想直線、T1…端子。