(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155289
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
B60W 10/08 20060101AFI20221005BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20221005BHJP
B60K 6/54 20071001ALI20221005BHJP
B60K 6/442 20071001ALI20221005BHJP
B60K 6/52 20071001ALI20221005BHJP
B60W 10/02 20060101ALI20221005BHJP
B60W 20/00 20160101ALI20221005BHJP
F02D 29/06 20060101ALI20221005BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20221005BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20221005BHJP
F16H 61/02 20060101ALI20221005BHJP
F16H 61/08 20060101ALI20221005BHJP
F16H 59/46 20060101ALI20221005BHJP
F16H 63/50 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
B60W10/08 900
B60K6/48 ZHV
B60K6/54
B60K6/442
B60K6/52
B60W10/02 900
B60W20/00
F02D29/06 D
B60L15/20 J
B60L50/16
F16H61/02
F16H61/08
F16H59/46
F16H63/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058718
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】特許業務法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 嘉彬
(72)【発明者】
【氏名】藤原 崇弘
(72)【発明者】
【氏名】仲条 誠人
【テーマコード(参考)】
3D202
3G093
3J552
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA02
3D202AA08
3D202BB11
3D202BB37
3D202BB66
3D202BB67
3D202CC02
3D202CC04
3D202CC06
3D202CC19
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3D202CC85
3D202EE16
3D202FF02
3D202FF04
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3D202FF13
3D202FF14
3G093AA07
3G093BA03
3G093BA15
3G093DB03
3G093DB05
3G093EB01
3J552MA02
3J552MA07
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3J552NA02
3J552NB01
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3J552RB15
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3J552UA03
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3J552UA09
3J552VA42W
3J552VA78X
3J552VC01W
5H125AA01
5H125AB01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA00
5H125BE05
5H125CA08
5H125EE51
(57)【要約】
【課題】クラッチ係合時のイナーシャショックの発生を軽減可能な車両用駆動装置を提供する。
【解決手段】制御装置は、クラッチWSCの係合判断後、クラッチWSCを解放状態から完全係合状態にする係合制御(t3-t7)において、トルク容量を生じない係合準備フェーズ(t3-t6)と、トルク容量を生じ、完全係合状態まで至る実係合フェーズ(t6-t7)とを実行する。制御装置は、係合制御の際、車両が後輪に駆動連結されたリヤモータの駆動力で走行している場合において、車両が加速状態であるときは、回転電機の回転速度を伝達部材の回転速度よりも高く、かつ、回転電機の回転速度と伝達部材の回転速度との差回転速度を第1設定値となるよう制御し(t3-t7)、車両が減速状態であるときは、回転電機の回転速度を伝達部材の回転速度よりも低く、かつ、差回転速度を第2設定値となるよう制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機と、
前記回転電機と、前輪及び後輪の一方の車輪に駆動連結された伝達部材と、の間に介在され、前記回転電機と前記伝達部材との動力伝達を接断可能な第1クラッチと、
前記第1クラッチの係脱を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記第1クラッチが解放状態であるときに係合判断をした後、前記第1クラッチを解放状態から完全係合状態にする係合制御において、
前記係合制御を行う際、車両が前記前輪及び前記後輪の他方の車輪に駆動連結された駆動源の駆動力で走行している場合において、
前記車両が加速状態であるときは、前記回転電機の回転速度を前記伝達部材の回転速度よりも高く、かつ、前記回転電機の回転速度と前記伝達部材の回転速度との差回転速度を第1設定値となるように制御し、
前記車両が減速状態であるときは、前記回転電機の回転速度を前記伝達部材の回転速度よりも低く、かつ、前記差回転速度を第2設定値となるように制御する、
車両用駆動装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記係合制御において、トルク容量を生じない係合準備フェーズと、トルク容量を生じ、完全係合状態まで至る実係合フェーズとを実行し、
前記係合準備フェーズの実行中において、
前記車両が加速状態であるときは、前記差回転速度が前記第1設定値となった後、前記差回転速度を、前記伝達部材の回転速度よりも高く、かつ、前記第1設定値より絶対値が小さい第3設定値となるように所定勾配で小さくするように制御し、
前記車両が減速状態であるときは、前記差回転速度が前記第2設定値となった後、前記差回転速度を、前記伝達部材の回転速度よりも低く、かつ、前記第2設定値より絶対値が小さい第4設定値となるように所定勾配で小さくするように制御する、
請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記車両が加速状態である場合は、前記差回転速度が前記第3設定値に達したことに応じて前記係合準備フェーズを終了して、前記実係合フェーズの実行を開始し、
前記車両が減速状態である場合は、前記差回転速度が前記第4設定値に達したことに応じて前記係合準備フェーズを終了して、前記実係合フェーズの実行を開始する、
請求項2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記係合準備フェーズにおいて、前記回転電機を回転速度制御し、
前記実係合フェーズにおいて、前記回転電機をトルク制御する、
請求項2又は3に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
エンジンに駆動連結されるエンジン連結部材と、
前記エンジン連結部材と前記回転電機との間に介在され、前記エンジン連結部材と前記回転電機との動力伝達を接断可能な第2クラッチと、
前記伝達部材である入力部材と、前記一方の車輪に駆動連結された出力部材と、を有し、前記入力部材と前記出力部材との間の変速比を変更可能な変速機構と、
を備え、
前記エンジン連結部材と、前記第2クラッチと、前記回転電機と、前記第1クラッチと、前記変速機構とが、前記エンジンから前記一方の車輪までの動力伝達経路に順に直列に駆動連結されている、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この技術は、例えば自動車等の車両に搭載される車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジンと、モータ・ジェネレータ(以下、単に「モータ」という)と、エンジンとモータとの間に介在されたエンジン接続用クラッチと、モータ及び前輪の間に介在された変速機構と、を備えた所謂1モータパラレル式のハイブリッド車両において、後輪を駆動するためのリヤモータを備えたハイブリッド車両が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなハイブリッド車両では、例えば、変速機構の所定のクラッチを解放状態にしたニュートラル状態にし、かつ、前側のモータを停止させた状態で、リヤモータの駆動力によって走行する場合がある。そして、アクセルペダルが踏まれるなど、ドライバによる加速要求があった場合は、リヤモータの駆動力を高めると共に、前側のモータを始動し、変速機構の所定のクラッチを係合状態にして変速段を形成することで、前輪も駆動させて駆動力を更に高めるようにする。このとき、前側のモータを始動してから、変速機構の所定のクラッチの差回転が0になってから当該クラッチを係合するようにして、クラッチ係合時の衝撃を小さくするようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のハイブリッド車両では、前側のモータを始動してから、変速機構の所定のクラッチの差回転が0になってから当該クラッチを係合するようにしているので、モータの回転速度を同期回転速度に対して低い方から一致させることになる。このため、例えば、同期回転速度を算出してモータを制御しても制御の遅れが発生する可能性や、制御の精度の限界によって若干の誤差が発生する可能性によって、前側のモータの回転速度が同期回転速度より低いときにクラッチが係合される可能性がある。リヤモータの駆動力の上昇によって車両が加速しているときに、前側のモータが同期回転速度よりも低い回転速度でクラッチを係合した場合、車両にイナーシャショックを発生する虞があり、ドライバビリティが低下する可能性がある。
【0006】
そこで、クラッチ係合時のイナーシャショックの発生を軽減可能な車両用駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本車両用駆動装置は、回転電機と、前記回転電機と、前輪及び後輪の一方の車輪に駆動連結された伝達部材と、の間に介在され、前記回転電機と前記伝達部材との動力伝達を接断可能な第1クラッチと、前記第1クラッチの係脱を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記第1クラッチが解放状態であるときに係合判断をした後、前記第1クラッチを解放状態から完全係合状態にする係合制御において、前記係合制御を行う際、車両が前記前輪及び前記後輪の他方の車輪に駆動連結された駆動源の駆動力で走行している場合において、前記車両が加速状態であるときは、前記回転電機の回転速度を前記伝達部材の回転速度よりも高く、かつ、前記回転電機の回転速度と前記伝達部材の回転速度との差回転速度を第1設定値となるように制御し、前記車両が減速状態であるときは、前記回転電機の回転速度を前記伝達部材の回転速度よりも低く、かつ、前記差回転速度を第2設定値となるように制御する。
【発明の効果】
【0008】
本車両用駆動装置によると、クラッチ係合時のイナーシャショックの発生を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係るハイブリッド車両を示すスケルトン図。
【
図2】実施形態に係るハイブリッド車両の加速状態における動作を示すタイムチャートである。
【
図3】実施形態に係るハイブリッド車両の動作を示すフローチャートである。
【
図4】実施形態に係るハイブリッド車両の減速状態における動作を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係るハイブリッド車両100の実施形態を、
図1~
図4に沿って説明する。本実施形態では、駆動連結とは、互いの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、それら回転要素が一体的に回転するように連結された状態、あるいはそれら回転要素がクラッチ等を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いる。
【0011】
図1に示すように、ハイブリッド車両100は、左右の前輪11の駆動系として、エンジン(E/G)2と、エンジン2の出力軸21に接続された車両用駆動装置の一例であるハイブリッド駆動装置3とを備え、左右の後輪12の駆動系としてリヤモータ(M/G)80を備えている。前輪11は所謂1モータパラレル式のハイブリッド走行(HV走行)が可能であり、後輪12はEV走行が可能であり、前輪11及び後輪12を同時に駆動することで四輪駆動も可能になるように構成されている。また、本実施形態では、前輪11は前輪及び後輪の一方の車輪に相当し、後輪12は前輪及び後輪の他方の車輪に相当する。
【0012】
まず、前輪11の駆動系について説明する。エンジン2は、後述するECU7からの指令に基づき、エンジン回転速度NeやエンジントルクTeを自在に制御される。ハイブリッド駆動装置3は、エンジン接続用の第2クラッチの一例であるクラッチK0と、回転電機の一例であるモータ・ジェネレータ(M/G)4と、モータ・ジェネレータ(以下、単に「モータ」という)接続用の第1クラッチの一例であるクラッチWSCと、変速機構(A/T)5と、これらを制御する制御装置の一例であるECU7とを備えて構成されている。
【0013】
クラッチK0は、エンジン2の出力軸21に駆動連結されたエンジン連結部材の一例であるクラッチ入力軸31と、モータ4のロータ軸41に駆動連結されたクラッチ出力軸32とに駆動連結され、クラッチ入力軸31とクラッチ出力軸32との間に介在され、クラッチ入力軸31とクラッチ出力軸32との動力伝達を摩擦係合により接断可能にしている。クラッチK0は、ECU7からの指令に基づき、油圧制御装置(V/B)6から供給されるクラッチ油圧に応じて、係合状態が自在に制御され、そのトルク容量も自在に制御される。
【0014】
モータ4は、クラッチK0とクラッチWSCとの間の動力伝達経路に設けられている。モータ4は、図示を省略したステータ及びロータを備え、そのロータが接続されたロータ軸41がクラッチK0のクラッチ出力軸32と、クラッチWSCのクラッチ入力軸33とに駆動連結されている。モータ4は、ECU7からの指令に基づき、モータ回転速度やモータトルク(モータ4から出力されるトルク)を自在に制御される。また、モータ4のロータ軸41の外周側には、そのロータ軸41の回転速度、つまりモータ回転速度を検出するモータ回転速度センサ71が設けられている。
【0015】
モータ4は、インバータ82を介してバッテリ83に接続されている。これにより、バッテリ83から出力された電力がインバータ82を介してモータ4に給電されることで、モータ4が駆動される。また、エンジン2による走行時や惰性走行時に、モータ4を空回転させることで、電力を発生させてバッテリ83に充電することが可能である。
【0016】
クラッチWSCは、モータ4のロータ軸41に駆動連結されたクラッチ入力軸33と、後述する変速機構5の入力軸51に駆動連結されたクラッチ出力軸34とに駆動連結され、クラッチ入力軸33とクラッチ出力軸34との間に介在され、クラッチ入力軸33とクラッチ出力軸34との動力伝達を摩擦係合により接断可能にしている。クラッチWSCは、ECU7からの指令に基づき、油圧制御装置6から供給されるクラッチ油圧に応じて、係合状態が自在に制御され、そのトルク容量も自在に制御される。
【0017】
変速機構5は、エンジン2又はモータ4により駆動される入力部材の一例である入力軸51と、前輪11に駆動連結された出力部材の一例である出力軸52と、を有し、入力軸51と出力軸52との間の変速比を変更可能である。尚、入力軸51は、前輪11に駆動連結された伝達部材に相当する。変速機構5は、例えばプラネタリギヤ列を複数列組み合わせて構成した歯車機構を有する有段式変速機からなり、油圧制御装置6から供給される油圧に基づき複数の摩擦係合要素(クラッチやブレーキ)の摩擦係合状態を変更することで、伝達経路を変更して変速比の変更を行うように構成されている。変速機構5の出力軸52は、不図示のディファレンシャル装置に駆動連結され、ディファレンシャル装置から左右のドライブシャフト11aを介して左右の前輪11に駆動力が伝達される。
【0018】
また、変速機構5の入力軸51の外周側には、その入力軸51の回転速度を検出する入力回転速度センサ72が設けられている。さらに、変速機構5の出力軸52の外周側には、その出力軸52の回転速度、つまり出力回転速度を検出する出力回転速度センサ73が設けられている。出力軸52は、上述したようにディファレンシャル装置等を介して前輪11に駆動連結されているので、出力回転速度センサ73は車速を検出するものとしても用いることが可能である。
【0019】
本実施形態では、ハイブリッド駆動装置3において、クラッチ入力軸31と、クラッチK0と、モータ4と、クラッチWSCと、変速機構5とが、エンジン2から前輪11までの動力伝達経路に順に直列に駆動連結されている。
【0020】
尚、本実施形態にあっては、変速機構5を有段変速機として説明しているが、例えばベルト式、トロイダル式、コーンリング式などの無段変速機であってもよい。また、本実施形態では、クラッチK0やクラッチWSCは油圧制御される摩擦係合要素である場合について説明しているが、これには限られず、例えば電磁クラッチなどを適用してもよい。
【0021】
これらクラッチK0やクラッチWSCの係脱状態は、上述のように油圧の大きさで制御され、摩擦係合部材同士が離れた「解放状態」、スリップしつつ伝達するトルク容量を生じる「スリップ係合状態」、油圧を可能な限り大きくして摩擦係合部材同士を締結した「完全係合状態」に分けられる。なお、「スリップ係合状態」は、解放状態からピストンがストロークして摩擦係合部材に接触するストロークエンドとなってから、摩擦係合部材同士の回転速度が同期するまでの間と定義でき、「解放状態」は、ピストンがストロークエンド未満となって摩擦係合部材から離れた状態と定義できる。
【0022】
油圧制御装置6は、例えばバルブボディにより構成されており、不図示の機械式オイルポンプや電動オイルポンプから供給された油圧からライン圧等を生成する不図示のプライマリレギュレータバルブ等を有し、ECU7からの制御信号に基づいてクラッチK0、クラッチWSC、後述するモータ切離しクラッチCMなどをそれぞれ制御するための油圧を給排可能になっている。このため、油圧制御装置6は、各係合要素に油圧を給排するためのリニアソレノイドバルブを有している。
【0023】
次に、後輪12の駆動系について説明する。駆動源の一例であるリヤモータ80は、インバータ84を介してバッテリ83に接続されており、ECU7からの駆動指令に基づきインバータ84から電力制御されることにより駆動及び回生自在に構成されている。ハイブリッド車両100は、後輪12に駆動連結されたリヤモータ80の駆動力で走行可能である。リヤモータ80は、モータ切離しクラッチCMを介してギヤボックス81に駆動連結されている。ギヤボックス81には、不図示の所定減速比の減速ギヤ機構及びディファレンシャル装置が内蔵されており、モータ切離しクラッチCMの係合時には、リヤモータ80の回転を、ギヤボックス81の減速ギヤ機構で減速しつつ、かつ、ディファレンシャル装置で左右の車軸12aの差回転を吸収しつつ、左右の後輪12に伝達する。
【0024】
ECU7は、例えば、CPUと、処理プログラムを記憶するROMと、データを一時的に記憶するRAMと、入出力回路とを備えており、油圧制御装置6への制御信号や、インバータ82,84への制御信号等、各種の電気指令を出力する。ECU7には、クラッチK0などの係合状態を検出するために、エンジン2の出力軸21の回転速度を検出する不図示のエンジン回転速度センサと、モータ4のロータ軸41の回転速度を検出するモータ回転速度センサ71と、変速機構5の入力軸51の回転速度を検出する入力回転速度センサ72と、変速機構5の出力軸52の回転速度を検出する出力回転速度センサ73等が、接続されている。
【0025】
ECU7は、不図示のエンジン制御部を介してエンジン2に指令し、エンジン回転速度NeやエンジントルクTeを自在に制御する。また、ECU7は、油圧制御装置6に指令し、クラッチ油圧を調圧制御することでクラッチK0の摩擦係合状態を自在に制御する。即ち、ECU7は、クラッチK0の係脱を電気指令により制御する。また、ECU7は、インバータ82を介してモータ4を電力制御し、回転速度制御によるモータ回転速度Nmの制御やトルク制御によるモータトルクTmの制御を自在にする。また、ECU7は、油圧制御装置6に指令し、クラッチ油圧を調圧制御することでクラッチWSCの摩擦係合状態を自在に制御する。即ち、ECU7は、クラッチWSCの係脱を電気指令により制御する。また、ECU7は、例えば車速やアクセル開度に基づき変速段を選択判断し、油圧制御装置6に指令し、各摩擦係合要素(クラッチやブレーキ)を油圧制御して、変速制御(変速比の変更)を行うように制御する。また、ECU7は、インバータ84を介してリヤモータ80を電力制御し、回転速度制御によるモータ回転速度の制御やトルク制御によるモータトルクの制御を自在にする。
【0026】
以上のように構成されたハイブリッド車両100は、エンジン2及び/又はモータ4の駆動力を用いた走行では、ハイブリッド駆動装置3から出力された動力が前輪11に伝達されると共に、モータ切離しクラッチCMが解放されて、リヤモータ80が後輪12から切り離された状態にされる。そして、変速機構5において、シフトレンジ、車速、アクセル開度に応じてECU7により最適な変速段が判断されることで油圧制御装置6が電子制御され、その変速判断に基づき形成される変速段を形成する。また、ハイブリッド駆動装置3から出力された動力が前輪11に伝達されるときに、モータ切離しクラッチCMを係合してリヤモータ80を駆動することで、四輪駆動を実現することができる。
【0027】
次に、本実施形態のハイブリッド車両100において、前輪11はHV走行をせずに空転状態であり、後輪12によるEV走行で走行している状態から、前輪11によるHV走行を復帰する際の動作について、
図2~
図4を用いて詳細に説明する。
【0028】
まず、後輪12によりEV走行し、前輪11が空転状態であって、ハイブリッド車両100が加速状態にある場合に、モータ4の駆動を開始して前輪11を駆動する際の動作について、
図2に示すタイムチャートと
図3に示すフローチャートを用いて詳細に説明する。尚、ここではリヤモータ80の回転によって後輪12を駆動することでハイブリッド車両100が加速している場合について説明するが、例えば、下り坂の走行時にリヤモータ80が被駆動状態であってもハイブリッド車両100が加速している場合も含めるものとする。
【0029】
ハイブリッド車両100は、後輪駆動・前輪空転の状態で走行している(t0、ステップS1)。このときは、前輪11は走行に伴って回転され、変速機構5では車速に応じた変速段が形成されているものとする。クラッチWSCは解放されており、変速機構5の入力軸51の回転はモータ4には伝達されない。また、モータ4には通電されておらず、エンジン2はアイドリング状態である。クラッチK0は係合状態であるので、モータ4はエンジン2のアイドリングによって連れ回されているものとする。また、モータ切離しクラッチCMが係合しており、リヤモータ80の回転によって後輪12が駆動される。リヤモータ80が駆動することでハイブリッド車両100は加速状態にあり、アクセルペダルやブレーキ装置の操作はない状態であるものとする。
【0030】
ECU7は、ドライバによるHV走行の復帰要求があるか否かを判断する(ステップS2)。ECU7は、例えば、ドライバがブレーキペダルを踏まずにアクセルペダルを踏みこむことで、HV復帰要求があるものと判断する。ECU7は、HV走行の復帰要求が無いと判断した場合は(ステップS2のNO)、再びHV走行の復帰要求があるか否かを判断する(ステップS2)。
【0031】
ECU7は、HV走行の復帰要求があると判断した場合は(t1、ステップS2のYES)、回転速度制御の開始条件を満たすか否かを判断する(ステップS3)。ECU7は、回転速度制御の開始条件を満たさないと判断した場合は(ステップS3のNO)、再びHV走行の復帰要求があるか否かを判断する(ステップS2)。ECU7は、回転速度制御の開始条件を満たすと判断した場合は(ステップS3のYES)、モータ4の回転速度制御を開始する(t2)。
【0032】
ECU7は、ハイブリッド車両100が加速状態であるか否かを判断する(ステップS4)。ECU7は、例えば、出力回転速度センサ73の検出値に基づいて、ハイブリッド車両100が加速状態であるか否かを判断する。ECU7は、ハイブリッド車両100が加速状態であると判断した場合は(ステップS4のYES)、モータ4の回転速度を入力軸51との同期回転速度よりも高くなるように、即ち正方向に差回転を生成するように上昇させる(t2、ステップS5)。ここでのモータ4の回転速度の上昇は急上昇とし、レスポンス性を向上することが望ましい。また、ECU7は、ハイブリッド車両100が加速状態でないと判断した場合は(ステップS4のNO)、モータ4の回転速度を入力軸51との同期回転速度よりも低くなるように、即ち負方向に差回転を生成するように上昇させる(
図4のt12、ステップS6)。尚、ハイブリッド車両100が加速状態でないと判断した場合の詳細については、後述する。
【0033】
ECU7は、入力回転速度センサ72の検出値に基づいて入力軸51の回転速度を検出し、モータ回転速度センサ71の検出値に基づいてモータ4の回転速度を検出する。そして、ECU7は、モータ4の回転速度を入力軸51との同期回転速度よりも高くなるように制御する際は、モータ4の回転速度を入力軸51の回転速度より第1設定値高くなるように設定する(t3)。即ち、ECU7は、ハイブリッド車両100が加速状態であるときは、モータ4の回転速度を入力軸51の回転速度よりも高く、かつ、モータ4の回転速度と入力軸51の回転速度との差回転速度を第1設定値となるように制御する。ここでの第1設定値は、例えば100rpmとすることができる。
【0034】
ECU7は、モータ4の回転速度を入力軸51の回転速度より第1設定値高くなるように設定することで、クラッチWSCの係合制御を開始する(t3)。ここで、本実施形態では、ECU7は、クラッチWSCが解放状態であるときに係合判断(t3)をした後、クラッチWSCを解放状態から完全係合状態にする係合制御(t3-t7)において、トルク容量を生じない係合準備フェーズ(t3-t6)と、トルク容量を生じ、完全係合状態まで至る実係合フェーズ(t6-t7)とを実行するものとする。
【0035】
ECU7は、係合準備フェーズでは、ファストフィルを実行し(t3-t4)、トルク容量を生じないように待機圧まで下げて待機する(t4-t6)。この間、ECU7は、モータ4の回転速度を入力軸51の回転速度より第1設定値高くするようにした差回転速度を維持する(t3-t5、ステップS7)。
【0036】
ECU7は、モータ4の回転速度制御を終了するか否かを判断する(ステップ8)。ECU7は、例えば、所定時間経過したか否かに基づいて、モータ4の回転速度制御を終了するか否かを判断する。ここで、所定時間の経過を必要とすることにより、モータ4の回転速度を安定させることができる。ECU7は、モータ4の回転速度制御を終了しないと判断した場合は(ステップS8のNO)、モータ4の回転速度を入力軸51の回転速度より第1設定値高くするようにした差回転速度を維持して回転速度制御を継続する(t3-t5、ステップS7)。
【0037】
ECU7は、モータ4の回転速度制御を終了すると判断した場合は(ステップS8のYES)、差回転速度を減少するための回転速度制御を開始する(ステップS9)。差回転速度を減少するための回転速度制御では、ECU7は、差回転速度を徐々に小さくし、差回転速度が第3設定値になるまで下げていく(t5-t6)。即ち、ECU7は、係合準備フェーズの実行中において、ハイブリッド車両100が加速状態であるときは、差回転速度が第1設定値となった後、差回転速度を、入力軸51の回転速度よりも高く、かつ、第1設定値より絶対値が小さい第3設定値となるように所定勾配で小さくするように制御する。
【0038】
ECU7は、差回転速度減少制御を終了するか否かを判断する(ステップS10)。ECU7は、例えば、差回転速度が第3設定値に達したか否かに基づいて、差回転速度減少制御を終了するか否かを判断する。ECU7は、差回転速度減少制御を終了しないと判断した場合は(ステップS10のNO)、差回転速度減少制御を継続する(t5-t6、ステップS9)。
【0039】
ECU7は、差回転速度減少制御を終了すると判断した場合は(ステップS10のYES)、差回転速度減少制御を終了し、トルク制御に切り替える(t6、ステップS11)。また、ECU7は、クラッチWSCの要求トルクを上昇することで、クラッチWSCの係合圧を上昇し、係合準備フェーズから実係合フェーズに切り替える(t6、ステップS11)。クラッチWSCの要求トルクは、t6まで0Nmであり、t6からスイープ状に上昇するようにしている。これにより、クラッチWSCにトルク容量を持たせて、差回転速度を小さくするようにしている。
【0040】
ECU7は、クラッチWSCを、滑り係合状態を経て、完全係合状態にする(t7)。即ち、ECU7は、ハイブリッド車両100が加速状態である場合は、差回転速度が第3設定値に達したことに応じて係合準備フェーズを終了して、実係合フェーズの実行を開始する。また、ECU7は、係合準備フェーズにおいてモータ4を回転速度制御し、実係合フェーズにおいてモータ4をトルク制御する。
【0041】
その後、ECU7は、クラッチWSCの完全係合に伴ってモータ4の回転速度と入力軸51の回転速度が同期すると(t7)、クラッチK0の係合圧を更に高くしてエンジントルクの上昇に備える(t7-t8)。
【0042】
次に、後輪12によりEV走行し、前輪11が空転状態であって、ハイブリッド車両100が減速状態にある場合に、モータ4の駆動を開始して前輪11を駆動する際の動作について、
図4に示すタイムチャートと
図3に示すフローチャートを用いて詳細に説明する。尚、ここではリヤモータ80が被駆動状態でハイブリッド車両100が減速している場合について説明するが、例えば、上り坂の走行時にリヤモータ80が駆動状態であってもハイブリッド車両100が減速している場合も含めるものとする。また、
図2に示すフローチャートについては、上述の説明と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0043】
ハイブリッド車両100は、後輪被駆動・前輪空転の状態で走行している(t10、ステップS1)。ECU7は、ドライバによるHV走行の復帰要求があるか否かを判断する(ステップS2)。ECU7は、HV走行の復帰要求があると判断した場合は(t11、ステップS2のYES)、回転速度制御の開始条件を満たすか否かを判断する(ステップS3)。ECU7は、回転速度制御の開始条件を満たすと判断した場合は(ステップS3のYES)、モータ4の回転速度制御を開始する(t12)。
【0044】
ECU7は、ハイブリッド車両100が加速状態であるか否かを判断する(ステップS4)。ECU7は、ハイブリッド車両100が加速状態でない、即ち減速状態であると判断した場合は(ステップS4のNO)、モータ4の回転速度を入力軸51との同期回転速度よりも低くなるように、即ち負方向に差回転を生成するように上昇させる(t12、ステップS6)。
【0045】
ECU7は、入力回転速度センサ72の検出値に基づいて入力軸51の回転速度を検出し、モータ回転速度センサ71の検出値に基づいてモータ4の回転速度を検出する。そして、ECU7は、モータ4の回転速度を入力軸51との同期回転速度よりも低くなるように制御する際は、モータ4の回転速度を入力軸51の回転速度より第2設定値低くなるように設定する(t3)。即ち、ECU7は、ハイブリッド車両100が減速状態であるときは、モータ4の回転速度を入力軸51の回転速度よりも低く、かつ、モータ4の回転速度と入力軸51の回転速度との差回転速度を第2設定値となるように制御する。ここでの第2設定値は、例えば100rpmとすることができる。尚、第2設定値は、第1設定値と同じでもよく、異ならせてもよい。
【0046】
ECU7は、モータ4の回転速度を入力軸51の回転速度より第2設定値低くなるように設定することで、クラッチWSCの係合制御を開始する(t13)。ECU7は、係合準備フェーズでは、ファストフィルを実行し(t13-t14)、トルク容量を生じないように待機圧まで下げて待機する(t14-t16)。この間、ECU7は、モータ4の回転速度を入力軸51の回転速度より第2設定値低くするようにした差回転速度を維持する(t13-t15、ステップS7)。
【0047】
ECU7は、モータ4の回転速度制御を終了するか否かを判断する(ステップ8)。ECU7は、例えば、所定時間経過したか否かに基づいて、モータ4の回転速度制御を終了するか否かを判断する。ECU7は、モータ4の回転速度制御を終了しないと判断した場合は(ステップS8のNO)、モータ4の回転速度を入力軸51の回転速度より第1設定値高くするようにした差回転速度を維持して回転速度制御を継続する(t13-t15、ステップS7)。
【0048】
ECU7は、モータ4の回転速度制御を終了すると判断した場合は(ステップS8のYES)、差回転速度を減少するための回転速度制御を開始する(ステップS9)。差回転速度を減少するための回転速度制御では、ECU7は、差回転速度を徐々に小さくし、差回転速度が第4設定値になるまで下げていく(t15-t16)。即ち、ECU7は、係合準備フェーズの実行中において、ハイブリッド車両100が減速状態であるときは、差回転速度が第2設定値となった後、差回転速度を、入力軸51の回転速度よりも低く、かつ、第2設定値より絶対値が小さい第4設定値となるように所定勾配で小さくするように制御する。尚、この時点(t5)よりエンジントルクは低下するので、クラッチK0の係合圧を下げるようにする。また、第4設定値は、第3設定値と同じでもよく、異ならせてもよい。
【0049】
ECU7は、差回転速度減少制御を終了するか否かを判断する(ステップS10)。ECU7は、例えば、差回転速度が第4設定値に達したか否かに基づいて、差回転速度減少制御を終了するか否かを判断する。ECU7は、差回転速度減少制御を終了しないと判断した場合は(ステップS10のNO)、差回転速度減少制御を継続する(t15-t16、ステップS9)。
【0050】
ECU7は、差回転速度減少制御を終了すると判断した場合は(ステップS10のYES)、差回転速度減少制御を終了し、トルク制御に切り替える(t16、ステップS11)。また、ECU7は、クラッチWSCの要求トルクを上昇することで、クラッチWSCの係合圧を上昇し、係合準備フェーズから実係合フェーズに切り替える(t16、ステップS11)。そして、ECU7は、クラッチWSCを滑り係合状態を経て、完全係合状態にする(t17)。即ち、ECU7は、ハイブリッド車両100が減速状態である場合は、差回転速度が第4設定値に達したことに応じて係合準備フェーズを終了して、実係合フェーズの実行を開始する。また、ECU7は、係合準備フェーズにおいてモータ4を回転速度制御し、実係合フェーズにおいてモータ4をトルク制御する。
【0051】
以上説明したように、本実施形態のハイブリッド駆動装置3によると、HV走行を行っていない状態からHV走行に復帰する際に、ハイブリッド車両100が加速状態であるときは、モータ4の回転速度を入力軸51の回転速度よりも高く、かつ、モータ4の回転速度と入力軸51の回転速度との差回転速度を第1設定値となるように制御している。このため、モータ4の回転速度を入力軸51の回転速度に同期させる際に、回転速度が大きい方から同期させることになるので、制御の遅れや誤差によって同期回転速度に達する前に係合した場合でも、発生するイナーシャショックは加速方向になるので、加速中であることからショックを軽減することができる。即ち、仮に、加速中において、同期回転速度よりもモータ4の方が小さい回転速度で係合すると、イナーシャショックを発生した場合に加速と反対方向の大きなショックを発生しやすいが、本実施形態では同期回転速度よりもモータ4の方が大きい回転速度で係合するので、イナーシャショックが発生しても加速方向と同方向であるので、ショックを軽減することができる。これにより、ドライバビリティの低下を抑制することができる。
【0052】
同様に、本実施形態のハイブリッド駆動装置3によると、HV走行を行っていない状態からHV走行に復帰する際に、ハイブリッド車両100が減速状態であるときは、モータ4の回転速度を入力軸51の回転速度よりも低く、かつ、モータ4の回転速度と入力軸51の回転速度との差回転速度を第2設定値となるように制御している。このため、モータ4の回転速度を入力軸51の回転速度に同期させる際に、回転速度が小さい方から同期させることになるので、制御の遅れや誤差によって同期回転速度に達する前に係合した場合でも、発生するイナーシャショックは減速方向になるので、減速中であることからショックを軽減することができる。即ち、仮に、減速中において、同期回転速度よりもモータ4の方が大きい回転速度で係合すると、イナーシャショックを発生した場合に減速と反対方向の大きなショックを発生しやすいが、本実施形態では同期回転速度よりもモータ4の方が小さい回転速度で係合するので、イナーシャショックが発生しても減速方向と同方向であるので、ショックを軽減することができる。これにより、ドライバビリティの低下を抑制することができる。
【0053】
また、本実施形態のハイブリッド駆動装置3によると、ECU7は、クラッチWSCの係合準備フェーズの実行中において、ハイブリッド車両100が加速状態であるときは、差回転速度が第1設定値となった後、差回転速度を、入力軸51の回転速度よりも高く、かつ、第1設定値より絶対値が小さい第3設定値となるように所定勾配で小さくするように制御している。また、ECU7は、クラッチWSCの係合準備フェーズの実行中において、ハイブリッド車両100が減速状態であるときは、差回転速度が第2設定値となった後、差回転速度を、入力軸51の回転速度よりも低く、かつ、第2設定値より絶対値が小さい第4設定値となるように所定勾配で小さくするように制御している。このため、モータ4の回転速度を同期回転速度に徐々に近づけることができるので、係合時のショックの軽減を図ることができる。
【0054】
また、本実施形態のハイブリッド駆動装置3によると、ECU7は、ハイブリッド車両100が加速状態である場合は、差回転速度が第3設定値に達したことに応じて係合準備フェーズを終了して、実係合フェーズの実行を開始する。また、ECU7は、ハイブリッド車両100が減速状態である場合は、差回転速度が第4設定値に達したことに応じて係合準備フェーズを終了して、実係合フェーズの実行を開始する。このため、差回転速度を十分に小さくしてから実係合フェーズを開始するので、実係合フェーズの実行時間を短くすることができる。これにより、レスポンス性を高め、また、滑り係合状態の時間を短くして燃費の向上を図ることができる。
【0055】
また、本実施形態のハイブリッド駆動装置3によると、ECU7は、係合準備フェーズにおいてモータ4を回転速度制御し、実係合フェーズにおいてモータ4をトルク制御するようにしている。このため、レスポンス性を高めることができる。
【0056】
また、本実施形態のハイブリッド駆動装置3によると、クラッチ入力軸31と、クラッチK0と、モータ4と、クラッチWSCと、変速機構5とが、エンジン2から前輪11までの動力伝達経路に順に直列に駆動連結されている。このため、ハイブリッド駆動装置3は、所謂1モータパラレル式のものに適用することができる。
【0057】
上述した本実施形態のハイブリッド駆動装置3では、クラッチK0が係合状態で、エンジン2がアイドリング状態からHV走行に復帰する場合について説明したが、これには限られず、例えば、クラッチK0を解放状態とし、エンジン2を停止した状態からHV走行に復帰するようにしてもよい。この場合も、クラッチWSCの係合やモータ4の動作などは同様の手法で制御することができる。
【0058】
また、本実施形態のハイブリッド駆動装置3では、第1クラッチとしてクラッチWSCを適用した場合について説明したが、これには限られない。例えば、クラッチWSCを有さないトレーンであっても、変速機構5において変速段を形成するクラッチを第1クラッチとして制御するようにしてもよい。
【0059】
また、本実施形態のハイブリッド駆動装置3では、ECU7は、係合制御においてトルク容量を生じない係合準備フェーズと、トルク容量を生じ完全係合状態まで至る実係合フェーズとを実行する場合について説明したが、これには限られない。例えば、係合準備フェーズを有さずに実係合フェーズのみを有するようにしてもよい。
【0060】
また、本実施形態のハイブリッド駆動装置3では、ECU7は、クラッチWSCの係合準備フェーズの実行中において、ハイブリッド車両100が加速状態であるときは、差回転速度が第1設定値となった後、差回転速度を、入力軸51の回転速度よりも高く、かつ、第1設定値より絶対値が小さい第3設定値となるように所定勾配で小さくするように制御しているが、これには限られず、モータ4の回転速度を入力軸51の回転速度よりも高く、かつ、差回転速度を第1設定値となるように制御するものであれば、他の方法でもよい。また、ECU7は、クラッチWSCの係合準備フェーズの実行中において、ハイブリッド車両100が減速状態であるときは、差回転速度が第2設定値となった後、差回転速度を、入力軸51の回転速度よりも低く、かつ、第2設定値より絶対値が小さい第4設定値となるように所定勾配で小さくするように制御しているが、これには限られず、モータ4の回転速度を入力軸51の回転速度よりも低く、かつ、差回転速度を第2設定値となるように制御するものであれば、他の方法でもよい。これらいずれの場合も、ECU7は、係合準備フェーズにおいてモータ4を回転速度制御し、実係合フェーズにおいてモータ4をトルク制御するようにできる。
【0061】
また、本実施形態のハイブリッド駆動装置3によると、ECU7は、ハイブリッド車両100が加速状態である場合は、差回転速度が第3設定値に達したことに応じて係合準備フェーズを終了して、実係合フェーズの実行を開始しているが、これには限られず、他の条件に応じて係合準備フェーズを終了して、実係合フェーズの実行を開始するようにしてもよい。また、ECU7は、ハイブリッド車両100が減速状態である場合は、差回転速度が第4設定値に達したことに応じて係合準備フェーズを終了して、実係合フェーズの実行を開始しているが、これには限られず、他の条件に応じて係合準備フェーズを終了して、実係合フェーズの実行を開始するようにしてもよい。これらいずれの場合も、ECU7は、係合準備フェーズにおいてモータ4を回転速度制御し、実係合フェーズにおいてモータ4をトルク制御するようにできる。
【0062】
また、本実施形態のハイブリッド駆動装置3では、変速機構5を有している場合について説明したが、これには限られず、変速機構5の代わりに変速を行わない動力伝達機構を適用するようにしてもよい。
【0063】
また、本実施形態のハイブリッド車両100では、後輪12を駆動する駆動源としてリヤモータ80を適用した場合について説明したが、これには限られず、駆動源としてエンジンを適用してもよい。また、本実施形態では、前輪を駆動する車両用駆動装置としてエンジン2に接続されるハイブリッド駆動装置3を適用した場合について説明したが、これには限られず、前輪11をEV用の駆動装置によって駆動するようにしてもよい。これにより、例えば、前輪11をEV駆動、後輪12をエンジン駆動する車両において、エンジン駆動による後輪12での走行中に前輪11のEV駆動を復帰させる場合において、本実施形態の制御を適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
2…エンジン、3…ハイブリッド駆動装置(車両用駆動装置)、4…モータ・ジェネレータ(回転電機)、5…変速機構、7…ECU(制御装置)、11…前輪(一方の車輪)、12…後輪(他方の車輪)、31…クラッチ入力軸(エンジン連結部材)、51…入力軸(伝達部材、入力部材)、52…出力軸(出力部材)、80…リヤモータ(駆動源)、K0…クラッチ(第2クラッチ)、WSC…クラッチ(第1クラッチ)
【手続補正書】
【提出日】2022-02-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機と、
前記回転電機と、前輪及び後輪の一方の車輪に駆動連結された伝達部材と、の間に介在され、前記回転電機と前記伝達部材との動力伝達を接断可能な第1クラッチと、
前記第1クラッチの係脱を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記第1クラッチが解放状態であるときに係合判断をした後、前記第1クラッチを解放状態から完全係合状態にする係合制御において、
前記係合制御を行う際、車両が前記前輪及び前記後輪の他方の車輪に駆動連結された駆動源の駆動力で走行している場合において、
前記車両が加速状態であるときは、前記回転電機の回転速度を前記伝達部材の回転速度よりも高くなるように制御し、
前記車両が減速状態であるときは、前記回転電機の回転速度を前記伝達部材の回転速度よりも低くなるように制御する、
車両用駆動装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記車両が加速状態であるときは、前記回転電機の回転速度と前記伝達部材の回転速度との差回転速度が第1設定値となるように、前記回転電機の回転速度を制御し、
前記車両が減速状態であるときは、前記差回転速度が第2設定値となるように、前記回転電機の回転速度を制御する、
請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記係合制御において、トルク容量を生じない係合準備フェーズと、トルク容量を生じ、完全係合状態まで至る実係合フェーズとを実行し、
前記係合準備フェーズの実行中において、
前記車両が加速状態であるときは、前記差回転速度が前記第1設定値となった後、前記差回転速度を、前記伝達部材の回転速度よりも高く、かつ、前記第1設定値より絶対値が小さい第3設定値となるように所定勾配で小さくするように制御し、
前記車両が減速状態であるときは、前記差回転速度が前記第2設定値となった後、前記差回転速度を、前記伝達部材の回転速度よりも低く、かつ、前記第2設定値より絶対値が小さい第4設定値となるように所定勾配で小さくするように制御する、
請求項2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記車両が加速状態である場合は、前記差回転速度が前記第3設定値に達したことに応じて前記係合準備フェーズを終了して、前記実係合フェーズの実行を開始し、
前記車両が減速状態である場合は、前記差回転速度が前記第4設定値に達したことに応じて前記係合準備フェーズを終了して、前記実係合フェーズの実行を開始する、
請求項3に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記係合準備フェーズにおいて、前記回転電機を回転速度制御し、
前記実係合フェーズにおいて、前記回転電機をトルク制御する、
請求項3又は4に記載の車両用駆動装置。
【請求項6】
エンジンに駆動連結されるエンジン連結部材と、
前記エンジン連結部材と前記回転電機との間に介在され、前記エンジン連結部材と前記回転電機との動力伝達を接断可能な第2クラッチと、
前記伝達部材である入力部材と、前記一方の車輪に駆動連結された出力部材と、を有し、前記入力部材と前記出力部材との間の変速比を変更可能な変速機構と、
を備え、
前記エンジン連結部材と、前記第2クラッチと、前記回転電機と、前記第1クラッチと、前記変速機構とが、前記エンジンから前記一方の車輪までの動力伝達経路に順に直列に駆動連結されている、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の車両用駆動装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本車両用駆動装置は、回転電機と、前記回転電機と、前輪及び後輪の一方の車輪に駆動連結された伝達部材と、の間に介在され、前記回転電機と前記伝達部材との動力伝達を接断可能な第1クラッチと、前記第1クラッチの係脱を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記第1クラッチが解放状態であるときに係合判断をした後、前記第1クラッチを解放状態から完全係合状態にする係合制御において、前記係合制御を行う際、車両が前記前輪及び前記後輪の他方の車輪に駆動連結された駆動源の駆動力で走行している場合において、前記車両が加速状態であるときは、前記回転電機の回転速度を前記伝達部材の回転速度よりも高くなるように制御し、前記車両が減速状態であるときは、前記回転電機の回転速度を前記伝達部材の回転速度よりも低くなるように制御する。