(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155297
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】疾患モニタリングシステム
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
G01N33/543 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058728
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098796
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 全
(74)【代理人】
【識別番号】100121647
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 和孝
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【弁理士】
【氏名又は名称】芳野 理之
(72)【発明者】
【氏名】金田 伸一
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 雅司
(72)【発明者】
【氏名】山下 恵子
(57)【要約】
【課題】被検者が日常生活の中で簡便に、検査用検体の採取と、検査用検体に含まれる可能性のある疾患リスク診断用マーカーの測定と、を行うことができる疾患モニタリングシステムを提供すること。
【解決手段】疾患モニタリングシステム2は、ボトムケース22と、載置部211を有するアッパケース21と、穿刺針33を有するイムノクロマト反応用チップ3と、反応用チップホルダ24と、付勢部材25と、ロック解除部26と、光照射装置41と、光検出器42と、を備える。載置部211は、穿刺針33の先端部が通過可能な穿刺針用孔を有する。イムノクロマト反応用チップ3は、ロック解除部26がロックを解除すると付勢部材25から付勢力を受けてアッパケース21へ向かって移動する。穿刺針33は、穿刺針用孔を通して生体に穿刺され検査用検体を採取し、イムノクロマト反応用チップ3の移動を停止させるとともに穿刺針用孔を塞ぐストッパ34を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査用検体を採取し、前記検査用検体に含まれる可能性のある疾患リスク診断用マーカーの測定を行う疾患モニタリングシステムであって、
ボトムケースと、
前記ボトムケースに接続され、生体が載置される載置部を有するアッパケースと、
前記ボトムケースと前記アッパケースとの間に収容され、前記生体に穿刺される穿刺針を有するとともに前記検査用検体を採取して前記疾患リスク診断用マーカーを検出するイムノクロマト反応用チップと、
前記ボトムケースおよび前記アッパケースの少なくともいずれかに設けられ、前記イムノクロマト反応用チップを保持し、前記イムノクロマト反応用チップのロックを行うロック機構を有する反応用チップホルダと、
前記ボトムケースに設けられ、前記イムノクロマト反応用チップを前記アッパケースに向かって付勢する付勢部材と、
前記ボトムケースおよび前記アッパケースの少なくともいずれかに設けられ、前記ロック機構の前記ロックを解除するロック解除部と、
前記ボトムケースおよび前記アッパケースのいずれかに設けられ、前記イムノクロマト反応用チップに向かって測定光を照射する光照射装置と、
前記ボトムケースおよび前記アッパケースのいずれかに設けられ、前記光照射装置から照射され前記イムノクロマト反応用チップにおいて反射した反射測定光または前記イムノクロマト反応用チップを透過した透過測定光を検出する光検出器と、
を備え、
前記載置部は、前記穿刺針の先端部が通過可能な穿刺針用孔を有し、
前記イムノクロマト反応用チップは、前記ロック解除部が前記ロック機構の前記ロックを解除すると前記付勢部材から付勢力を受けて前記アッパケースへ向かって移動し、
前記穿刺針は、前記イムノクロマト反応用チップの移動に伴い前記穿刺針用孔を通して前記生体に穿刺され前記検査用検体を採取することを特徴とする疾患モニタリングシステム。
【請求項2】
前記穿刺針は、前記穿刺針が前記生体に穿刺された状態で前記イムノクロマト反応用チップの前記移動を停止させるとともに前記穿刺針用孔を塞ぐストッパを有することを特徴とする請求項1に記載の疾患モニタリングシステム。
【請求項3】
光吸収性を有する材料のコーティングが、前記ボトムケースの内面および前記アッパケースの内面に施されたことを特徴とする請求項1または2に記載の疾患モニタリングシステム。
【請求項4】
前記ロック解除部は、前記ボトムケースおよび前記アッパケースの少なくともいずれかの側面に設けられたことを特徴する請求項1~3のいずれか1項に記載の疾患モニタリングシステム。
【請求項5】
前記光検出器により検出された前記反射測定光または前記透過測定光に基づいて、前記疾患リスク診断用マーカーの検査進行状況および検査結果の少なくともいずれかを表示装置に表示させる表示処理を実行する制御部をさらに備えたことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の疾患モニタリングシステム。
【請求項6】
前記光検出器により検出された前記反射測定光または前記透過測定光に基づいて、前記疾患リスク診断用マーカーの検査進行状況および検査結果の少なくともいずれかを投影表示する投影装置をさらに備えたことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の疾患モニタリングシステム。
【請求項7】
前記検査用検体は、前記生体の血液であり、
前記光照射装置は、第1光照射装置であり、
前記光検出器は、第1光検出器であり、
前記イムノクロマト反応用チップは、
前記穿刺針が一方の端部に設けられるとともに、多孔質材料により形成され前記血液を血球と血漿成分とに分離する第1層と、
前記第1層の他方の端部に接続されるとともに、多孔質材料により形成され前記第1層により分離された前記血漿成分が移行される第2層と、
を有し、
前記ボトムケースおよび前記アッパケースのいずれかのうち前記第1層の前記他方の端部に対応する部分に設けられ、前記第1層の前記他方の端部に向かって測定光を照射する第2光照射装置と、
前記ボトムケースおよび前記アッパケースのいずれかのうち前記第1層の前記他方の端部に対応する部分に設けられ、前記第2光照射装置から照射され前記第1層の前記他方の端部において反射した反射測定光または前記第1層の前記他方の端部を透過した透過測定光を検出する第2光検出器と、
前記第2光検出器が前記反射測定光または前記透過測定光に基づいて前記血液が前記第1層の前記他方の端部に到達したことを検出すると、前記載置部に載置された前記生体の前記載置部からの離隔を案内する案内部と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の疾患モニタリングシステム。
【請求項8】
前記第1層は、前記血液に含まれる前記血球成分と前記血漿成分との分離を行うとともに前記第2層へ向かう前記血漿成分の移行を促進する移行促進構造を有することを特徴とする請求項7に記載の疾患モニタリングシステム。
【請求項9】
前記移行促進構造は、前記第1層の前記多孔質材料の空間率が前記第1層の前記一方の端部から前記第1層の前記他方の端部に向かうにつれて低下する構造を有することを特徴とする請求項8に記載の疾患モニタリングシステム。
【請求項10】
前記穿刺針は、多孔質材料により形成され、凍結乾燥された抗凝固剤を前記多孔質材料に内包することを特徴とする請求項7~9のいずれか1項に記載の疾患モニタリングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査用検体に含まれる可能性のある疾患リスク診断用マーカーの測定を行う疾患モニタリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されたイムノクロマトグラフィー用テストストリップなどのように、血液、尿、便、鼻汁液および唾液などの検査用検体に含まれる可能性のある疾患リスク診断用マーカーを抗原抗体反応により測定あるいは検出するイムノクロマト反応用チップがある。このようなイムノクロマト反応用チップは、例えば医療機関や研究機関などの専門機関で使用されることが多い。
【0003】
これに対して、モニタリング対象者すなわち被検者が医療機関などに行かなくとも日常生活の中で簡便に、検査用検体の採取と、検査用検体に含まれる可能性のある疾患リスク診断用マーカーの測定と、を行うことができ、疾患リスクレベル等の検査結果を容易に認知できるシステムの提供が望まれている。
【0004】
特許文献2には、緊急検査や在宅検査など随時性、即時性が要求される医療現場での血液検査において、迅速且つ簡単に全血検体から血漿又は血清を分離回収できる血漿又は血清分離具及び血漿又は血清の採取方法が開示されている。しかし、特許文献2に記載された血漿又は血清分離具及び血漿又は血清の採取方法は、血液採取部に採血針を刺して出血させるステップと、出血後、出血部位に対して血漿又は血清分離具の血液導入部又は網状部材を当接させて血液を採取し、血液導入部より血液を供給するステップと、分離された血漿又は血清を血漿又は血清採取口から液球状にて取り出すステップと、取り出した血漿又は血清を定量ピペットや毛細管等で採取するステップと、を要する。そのため、特許文献2に記載された血漿又は血清分離具及び血漿又は血清の採取方法には、モニタリング対象者すなわち被検者が医療機関などに行かなくとも日常生活の中で簡便に検査用検体の採取を行う点において、改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-63911号公報
【特許文献2】特開2008-275627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、被検者が日常生活の中で簡便に、検査用検体の採取と、検査用検体に含まれる可能性のある疾患リスク診断用マーカーの測定と、を行うことができる疾患モニタリングシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、検査用検体を採取し、前記検査用検体に含まれる可能性のある疾患リスク診断用マーカーの測定を行う疾患モニタリングシステムであって、ボトムケースと、前記ボトムケースに接続され、生体が載置される載置部を有するアッパケースと、前記ボトムケースと前記アッパケースとの間に収容され、前記生体に穿刺される穿刺針を有するとともに前記検査用検体を採取して前記疾患リスク診断用マーカーを検出するイムノクロマト反応用チップと、前記ボトムケースおよび前記アッパケースの少なくともいずれかに設けられ、前記イムノクロマト反応用チップを保持し、前記イムノクロマト反応用チップのロックを行うロック機構を有する反応用チップホルダと、前記ボトムケースに設けられ、前記イムノクロマト反応用チップを前記アッパケースに向かって付勢する付勢部材と、前記ボトムケースおよび前記アッパケースの少なくともいずれかに設けられ、前記ロック機構の前記ロックを解除するロック解除部と、前記ボトムケースおよび前記アッパケースのいずれかに設けられ、前記イムノクロマト反応用チップに向かって測定光を照射する光照射装置と、前記ボトムケースおよび前記アッパケースのいずれかに設けられ、前記光照射装置から照射され前記イムノクロマト反応用チップにおいて反射した反射測定光または前記イムノクロマト反応用チップを透過した透過測定光を検出する光検出器と、を備え、前記載置部は、前記穿刺針の先端部が通過可能な穿刺針用孔を有し、前記イムノクロマト反応用チップは、前記ロック解除部が前記ロック機構の前記ロックを解除すると前記付勢部材から付勢力を受けて前記アッパケースへ向かって移動し、前記穿刺針は、前記イムノクロマト反応用チップの移動に伴い前記穿刺針用孔を通して前記生体に穿刺され前記検査用検体を採取することを特徴とする本発明に係る疾患モニタリングシステムにより解決される。
【0008】
本発明に係る疾患モニタリングシステムによれば、イムノクロマト反応用チップは、ボトムケースとアッパケースとの間に収容される。また、イムノクロマト反応用チップは、生体に穿刺される穿刺針を有し、穿刺針により検査用検体を採取して疾患リスク診断用マーカーを検出する。アッパケースは、生体が載置される載置部を有する。載置部は、イムノクロマト反応用チップの穿刺針の先端部が通過可能な穿刺針用孔を有する。被検者がロック解除部を操作して反応用チップホルダに設けられたロック機構のロックを解除すると、イムノクロマト反応用チップは、付勢部材から付勢力を受けてアッパケースへ向かって移動する。そうすると、穿刺針は、イムノクロマト反応用チップの移動に伴い穿刺針用孔を通して生体に穿刺され、検査用検体を採取する。これにより、被検者は、本発明に係る疾患モニタリングシステムを用いて、日常生活の中で簡便に検査用検体の採取を行うことができる。
【0009】
本発明に係る疾患モニタリングシステムにおいて、好ましくは、前記穿刺針は、前記穿刺針が前記生体に穿刺された状態で前記イムノクロマト反応用チップの前記移動を停止させるとともに前記穿刺針用孔を塞ぐストッパを有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る疾患モニタリングシステムによれば、穿刺針は、ストッパを有する。ストッパは、穿刺針が生体に穿刺された状態でイムノクロマト反応用チップの移動を停止させる。また、ストッパは、穿刺針が生体に穿刺された状態で穿刺針用孔を塞ぐ。そのため、ストッパは、迷入光が穿刺針用孔からイムノクロマト反応用チップが収容された空間に侵入することを抑えることができる。そのため、光検出器は、光照射装置から照射されイムノクロマト反応用チップにおいて反射した反射測定光またはイムノクロマト反応用チップを透過した透過測定光をより高い精度で検出できる。これにより、被検者は、本発明に係る疾患モニタリングシステムを用いて、日常生活の中で簡便に、検査用検体に含まれる可能性のある疾患リスク診断用マーカーの測定を行うことができる。
【0011】
本発明に係る疾患モニタリングシステムにおいて、好ましくは、光吸収性を有する材料のコーティングが、前記ボトムケースの内面および前記アッパケースの内面に施されたことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る疾患モニタリングシステムによれば、光吸収性を有する材料のコーティングがボトムケースの内面およびアッパケースの内面に施されているため、光検出器による反射測定光または透過測定光の検出の安定性を向上させることができる。また、穿刺針が穿刺針用孔を通して被検者により視認されることを抑えることができる。
【0013】
本発明に係る疾患モニタリングシステムにおいて、好ましくは、前記ロック解除部は、前記ボトムケースおよび前記アッパケースの少なくともいずれかの側面に設けられたことを特徴する。
【0014】
本発明に係る疾患モニタリングシステムによれば、被検者は、アッパケースに設けられた載置部に指などの生体を載置した状態で、ボトムケースおよびアッパケースの少なくともいずれかの側面に設けられたロック解除部を操作することによりロック機構のロックを解除できる。そのため、被検者は、例えば片手でロック機構のロックを解除し、載置部に載置した指などの生体に穿刺針を穿刺することができる。これにより、被検者は、本発明に係る疾患モニタリングシステムを用いて、日常生活の中で簡便に、検査用検体の採取と、検査用検体に含まれる可能性のある疾患リスク診断用マーカーの測定と、を行うことができる。
【0015】
本発明に係る疾患モニタリングシステムは、好ましくは、前記光検出器により検出された前記反射測定光または前記透過測定光に基づいて、前記疾患リスク診断用マーカーの検査進行状況および検査結果の少なくともいずれかを表示装置に表示させる表示処理を実行する制御部をさらに備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明に係る疾患モニタリングシステムによれば、制御部は、光検出器により検出された反射測定光または透過測定光に基づいて、疾患リスク診断用マーカーの検査進行状況および検査結果の少なくともいずれかを表示装置に表示させる表示処理を実行する。そのため、被検者は、表示装置を確認することにより、疾患リスク診断用マーカーの検査進行状況および検査結果の少なくともいずれかを容易に認知できる。
【0017】
本発明に係る疾患モニタリングシステムは、好ましくは、前記光検出器により検出された前記反射測定光または前記透過測定光に基づいて、前記疾患リスク診断用マーカーの検査進行状況および検査結果の少なくともいずれかを投影表示する投影装置をさらに備えたことを特徴とする。
【0018】
本発明に係る疾患モニタリングシステムによれば、投影装置は、光検出器により検出された反射測定光または透過測定光に基づいて、疾患リスク診断用マーカーの検査進行状況および検査結果の少なくともいずれかを、例えば鏡面や壁面など被検者が視認しやすい場所に投影表示することができる。そのため、被検者は、例えば鏡面や壁面などに投影された表示を確認することにより、疾患リスク診断用マーカーの検査進行状況および検査結果の少なくともいずれかを容易に認知できる。
【0019】
本発明に係る疾患モニタリングシステムにおいて、好ましくは、前記検査用検体は、前記生体の血液であり、前記光照射装置は、第1光照射装置であり、前記光検出器は、第1光検出器であり、前記イムノクロマト反応用チップは、前記穿刺針が一方の端部に設けられるとともに、多孔質材料により形成され前記血液を血球と血漿成分とに分離する第1層と、前記第1層の他方の端部に接続されるとともに、多孔質材料により形成され前記第1層により分離された前記血漿成分が移行される第2層と、を有する。本発明に係る疾患モニタリングシステムは、好ましくは、前記ボトムケースおよび前記アッパケースのいずれかのうち前記第1層の前記他方の端部に対応する部分に設けられ、前記第1層の前記他方の端部に向かって測定光を照射する第2光照射装置と、前記ボトムケースおよび前記アッパケースのいずれかのうち前記第1層の前記他方の端部に対応する部分に設けられ、前記第2光照射装置から照射され前記第1層の前記他方の端部において反射した反射測定光または前記第1層の前記他方の端部を透過した透過測定光を検出する第2光検出器と、前記第2光検出器が前記反射測定光または前記透過測定光に基づいて前記血液が前記第1層の前記他方の端部に到達したことを検出すると、前記載置部に載置された前記生体の前記載置部からの離隔を案内する案内部と、をさらに備えたことを特徴とする。
【0020】
本発明に係る疾患モニタリングシステムによれば、イムノクロマト反応用チップは、第1層と、第2層と、を有する。第1層の一方の端部には、穿刺針が設けられている。第1層は、多孔質材料により形成され、血液を血球と血漿成分とに分離する。第2層は、第1層の他方の端部に接続されるとともに、多孔質材料により形成されている。第1層により分離された血漿成分は、第1層から第2層へ移行する。疾患モニタリングシステムは、第1光照射装置とは異なる第2光照射装置と、第1光検出器とは異なる第2光検出器と、案内部と、をさらに備える。第2光照射装置は、第1層の他方の端部すなわち第1層と第2層との接続部分に対応する部分に設けられ、第1層の他方の端部に向かって測定光を照射する。第2光検出器は、第1層の他方の端部すなわち第1層と第2層との接続部分に対応する部分に設けられ、第2光照射装置から照射され第1層の他方の端部において反射した反射測定光または第1層の他方の端部を透過した透過測定光を検出する。そして、案内部は、第2光検出器が反射測定光または透過測定光に基づいて血液が第1層の他方の端部に到達したことを検出すると、載置部に載置された生体の載置部からの離隔を案内する。そのため、被検者は、検査用検体としての血液の採取が完了し、載置部に載置した生体を載置部から離すことができることを容易に認識できる。
【0021】
本発明に係る疾患モニタリングシステムにおいて、好ましくは、前記第1層は、前記血液に含まれる前記血球成分と前記血漿成分との分離を行うとともに前記第2層へ向かう前記血漿成分の移行を促進する移行促進構造を有することを特徴とする。
【0022】
本発明に係る疾患モニタリングシステムによれば、移行促進構造は、第1層により血液に含まれる血球成分と血漿成分との分離を確実に行うとともに、分離された血漿成分を第1層から第2層へより確実に移行させることができる。これにより、本発明に係る疾患モニタリングシステムは、検査用検体としての血液に含まれる可能性のある疾患リスク診断用マーカーをより高い精度で検出できる。
【0023】
本発明に係る疾患モニタリングシステムにおいて、好ましくは、前記移行促進構造は、前記第1層の前記多孔質材料の空間率が前記第1層の前記一方の端部から前記第1層の前記他方の端部に向かうにつれて低下する構造を有する。
【0024】
本発明に係る疾患モニタリングシステムによれば、移行促進構造は、より簡便な構造により、第1層により分離された血漿成分を第1層から第2層へより確実に移行させることができる。これにより、本発明に係る疾患モニタリングシステムは、移行促進構造のより簡便な構造により、検査用検体としての血液に含まれる可能性のある疾患リスク診断用マーカーをより高い精度で検出できる。
【0025】
本発明に係る疾患モニタリングシステムにおいて、好ましくは、前記穿刺針は、多孔質材料により形成され、凍結乾燥された抗凝固剤を前記多孔質材料に内包することを特徴とする。
【0026】
本発明に係る疾患モニタリングシステムによれば、凍結乾燥された抗凝固剤が、穿刺針を形成する多孔質材料に内包されている。そのため、抗凝固剤は、穿刺針に浸潤した血液に溶解し、血液が穿刺針の多孔質材料において凝固することを抑えることができる。これにより、穿刺針は、穿刺針に浸潤した血液を穿刺針から第1層へより確実に移行させることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、被検者が日常生活の中で簡便に、検査用検体の採取と、検査用検体に含まれる可能性のある疾患リスク診断用マーカーの測定と、を行うことができる疾患モニタリングシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施形態に係る疾患モニタリングシステムの概要を表す斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る疾患モニタリングシステムを表す平面図である。
【
図3】本実施形態に係る疾患モニタリングシステムを表す側面図である。
【
図4】本実施形態のイムノクロマト反応用チップを表す平面図である。
【
図5】本実施形態に係る疾患モニタリングシステムの要部構成を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0030】
図1は、本発明の実施形態に係る疾患モニタリングシステムの概要を表す斜視図である。
図2は、本実施形態に係る疾患モニタリングシステムを表す平面図である。
図3は、本実施形態に係る疾患モニタリングシステムを表す側面図である。
【0031】
本実施形態に係る疾患モニタリングシステム2は、例えば血液、尿、便、鼻汁液および唾液などの検査用検体を採取し、検査用検体に含まれる可能性のある疾患リスク診断用マーカーを測定する。本実施形態の説明では、検査用検体が血液である場合を例に挙げる。なお、検査用検体は、血液だけに限定されるわけではない。本実施形態に係る疾患モニタリングシステム2により測定される疾患リスク診断用マーカーとしては、例えば腫瘍マーカーが挙げられる。腫瘍マーカーとしては、血液に含まれるたんぱく質や酵素、ホルモンなどが挙げられ、より具体的には、例えばCA19-9やCEA、CYFRA、AFP、PSA、CA125、CA15-3、SCC、NCC-ST-439、SLX、STN、βHCG、NSF、ProGRP、PIVKA-II、ElastaseIなどが挙げられる。なお、疾患リスク診断用マーカーは、腫瘍マーカーに限定されるわけではない。例えば、疾患リスク診断用マーカーは、ウイルスや、一般的に抗原抗体反応を利用して測定されるたんぱく質などの生理活性物質であってもよい。
【0032】
図1~
図3に表したように、疾患モニタリングシステム2は、アッパケース21と、ボトムケース22と、イムノクロマト反応用チップ3と、反応用チップホルダ24と、付勢部材25と、ロック解除部26と、第1光照射装置41と、第1光検出器42と、を備える。本実施形態の第1光照射装置41は、本発明の「光照射装置」の一例である。本実施形態の第1光検出器42は、本発明の「光検出器」の一例である。
【0033】
アッパケース21およびボトムケース22は、疾患モニタリングシステム2の筐体あるいは本体としての機能を有し、所定の強度を有する例えば熱可塑性樹脂などにより形成されている。アッパケース21およびボトムケース22を形成する熱可塑性樹脂としては、エチルアルコール液などを用いて検査の前後に都度払拭またはスプレーで除菌、殺菌可能な熱可塑性樹脂、例えば、ポリフェニレンオキサイド等のポリエーテル;ポリエチレンテレフタレート、ポリプチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリアセタール;ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂;ABS樹脂、ハイインパクト・スチロール等のスチレン系樹脂;ポリ-2-メチルペンテン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート樹脂から少なくとも1つ選ばれる不透明もしくは着色により不透明化された合成樹脂が挙げられる。好ましくは、これらの樹脂にリン酸ジルコニウム銀化合物をほぼ1~2.5重量%含む合成樹脂でアッパケース21およびボトムケース22を形成することで、抗菌性と共に、強度,耐衝撃性等を有するアッパケース21およびボトムケース22を形成できる。アッパケース21の内面およびボトムケース22の内面には、光吸収性を有する材料のコーティングが施されている。光吸収性を有する材料としては、例えば、ベンタブラックが挙げられる。例えば
図3に表した矢印A1のように、アッパケース21は、ヒンジ部23においてボトムケース22に接続されており、ボトムケース22に対して回動自在に軸支されている。
【0034】
アッパケース21は、モニタリング対象者すなわち被検者の生体が載置される載置部211を有する。被検者の生体としては、例えば被検者の指などが挙げられる。
図1に表したように、載置部211は、被検者が指を載置しやすいような溝形状を呈する。例えば、被検者は、中指や人差し指を載置部211に容易に載置しつつ、アッパケース21を手の平で包むように容易に把持することができる。
【0035】
図1および
図2に表したように、載置部211は、イムノクロマト反応用チップ3に設けられた穿刺針33の先端部331(
図3参照)が通過可能な穿刺針用孔212を有する。穿刺針用孔212は、載置部211の一方の端部であって、アッパケース21の略中央部に設けられている。これにより、例えば、被検者が中指や人差し指を載置部211に載置すると、穿刺針33は、指の第一関節よりも先端側の生体に穿刺される。穿刺針33の穿刺の詳細については、後述する。
【0036】
イムノクロマト反応用チップ3は、アッパケース21と、ボトムケース22と、の間に収容されるとともに、反応用チップホルダ24に保持される。反応用チップホルダ24は、アッパケース21およびボトムケース22の少なくともいずれかに設けられる。
図3に表したように、反応用チップホルダ24は、突起部242を有する。一方で、イムノクロマト反応用チップ3は、切欠部324を有する。イムノクロマト反応用チップ3が反応用チップホルダ24に装着されると、反応用チップホルダ24の突起部242とイムノクロマト反応用チップ3の切欠部324とが互いに嵌まり合う。これにより、イムノクロマト反応用チップ3は、反応用チップホルダ24に固定される。なお、イムノクロマト反応用チップ3が反応用チップホルダ24に固定される限りにおいて、反応用チップホルダ24が切欠部を有していてもよく、イムノクロマト反応用チップ3が突起部を有していてもよい。
【0037】
イムノクロマト反応用チップ3は、反応用チップホルダ24に対して着脱可能とされている。そのため、被検者は、アッパケース21をボトムケース22に対して回動させて疾患モニタリングシステム2の本体を開き、反応用チップホルダ24に固定されたイムノクロマト反応用チップ3を別の新しいイムノクロマト反応用チップ3に容易に交換できる。イムノクロマト反応用チップ3は、生体に穿刺される穿刺針33を有するとともに、載置部211に載置された生体から検査用検体としての血液を採取して疾患リスク診断用マーカーを検出する。
【0038】
図3に表したように、穿刺針33は、ストッパ34を有する。ストッパ34は、穿刺針33と一体的に形成されていてもよく、穿刺針33とは別体として穿刺針33に設けられていてもよい。ストッパ34の詳細については、後述する。
【0039】
前述したように、反応用チップホルダ24は、イムノクロマト反応用チップ3を保持する。また、
図3に表したように、反応用チップホルダ24は、ロック機構241を有する。ロック機構241は、イムノクロマト反応用チップ3のロックを行う。つまり、ロック機構241は、イムノクロマト反応用チップ3の移動を抑制する。
【0040】
付勢部材25は、例えばばねやゴムなどの弾性部材であり、ボトムケース22に設けられている。
図3に表した矢印A2のように、付勢部材25は、反応用チップホルダ24に保持されたイムノクロマト反応用チップ3をアッパケース21に向かって付勢している。
【0041】
図1~
図3に表したように、ロック解除部26は、アッパケース21の側面213に設けられている。ロック解除部26は、ボトムケース22の側面223に設けられていてもよい。
【0042】
ロック解除部26は、被検者から例えば押下などの操作を受けると、ロック機構241のロックを解除する。例えば、被検者は、右手の中指あるいは人差し指を載置部211に載置した場合には、右手の親指を用いてロック解除部26を操作できる。あるいは、被検者は、左手の中指あるいは人差し指を載置部211に載置した場合には、左手の小指を用いてロック解除部26を操作できる。
【0043】
被検者がロック解除部26を操作し、ロック解除部26がロック機構241のロックを解除すると、
図3に表した矢印A2のように、イムノクロマト反応用チップ3は、ロックを解除され、付勢部材25から付勢力を受けてアッパケース21へ向かって移動する。例えば、イムノクロマト反応用チップ3は、付勢部材25から付勢力を受けて、反応用チップホルダ24を略中心として回動する。
【0044】
第1光照射装置41は、アッパケース21およびボトムケース22のいずれかに設けられ、イムノクロマト反応用チップ3に向かって測定光を照射する。
図3に表した疾患モニタリングシステム2では、第1光照射装置41は、アッパケース21に設けられている。第1光照射装置41は、例えば発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)であり、所定の波長の光を照射する。
【0045】
第1光検出器42は、アッパケース21およびボトムケース22のいずれかに設けられ、第1光照射装置41から照射された光を検出する。
図3に表した疾患モニタリングシステム2では、第1光検出器42は、ボトムケース22に設けられている。第1光検出器42は、例えばアレイ型フォトダイオードである。例えば、第1光検出器42は、第1光照射装置41から照射されイムノクロマト反応用チップ3において反射した反射測定光を検出する。あるいは、第1光検出器42は、第1光照射装置41から照射されイムノクロマト反応用チップ3を透過した透過測定光を検出する。
図3に表した疾患モニタリングシステム2では、第1光検出器42は、第1光照射装置41から照射されイムノクロマト反応用チップ3を透過した透過測定光を検出する。第1光検出器42は、第1光照射装置41から照射されイムノクロマト反応用チップ3において反射した反射測定光を検出する場合には、第1光照射装置41の近傍のアッパケース21に設けられる。
【0046】
次に、本実施形態のイムノクロマト反応用チップ3を、図面を参照して説明する。
図4は、本実施形態のイムノクロマト反応用チップを表す平面図である。
本実施形態のイムノクロマト反応用チップ3は、第1層31と、第2層32と、穿刺針33と、ストッパ34と、を有する。
【0047】
穿刺針33は、第1層31の一方の端部311に設けられ、多孔質材料により形成されている。穿刺針33を形成する多孔質材料としては、例えば、紙、セルロース混合物、ニトロセルロース、ポリエステル、アクリロニトリルコポリマー、ガラス、レーヨン等の不織繊維が挙げられる。あるいは、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなプラスチック材料やセラミックス等の多孔体などが挙げられる。
【0048】
図3に表した矢印A3のように、穿刺針33が生体に穿刺されることにより穿刺針33に採取された(すなわち浸潤した)血液は、毛細管現象により穿刺針33から第1層31へ移行する。ここで、穿刺針33は、凍結乾燥された抗凝固剤を多孔質材料に内包する。そのため、抗凝固剤は、穿刺針33に浸潤した血液に溶解し、血液が穿刺針33の多孔質材料において凝固することを抑えることができる。これにより、穿刺針33は、穿刺針33に浸潤した血液を穿刺針33から第1層31へより確実に移行させることができる。
【0049】
第1層31は、毛細管現象を発生させうる多孔質材料から適宜選択された材料により形成されており、血球成分分離層として機能する。第1層31を形成する多孔質材料としては、例えば、穿刺針33に関して前述した不織繊維や多孔体などが挙げられる。第1層31は、血液を血球と血漿成分とに分離し、
図4に表した矢印A4のように、毛細管現象により血漿成分のみを第1層31から第2層32へ移行させる。一方で、第1層31により分離された血球は、第1層31に捕捉される。第1層31は、第1層31から第2層32へ向かう血漿成分の分離と血漿成分の移行とを促進する移行促進構造を有する。つまり、移行促進構造は、血液に含まれる血球成分と血漿成分との分離を行うとともに、第1層31から第2層32へ向かう血漿成分の移行を促進する。具体的には、第1層31の移行促進構造は、第1層31の多孔質材料の空間率が第1層31の一方の端部311から第1層31の他方の端部312に向かうにつれて低下する特徴を有する。これにより、第1層31の移行促進構造は、より簡便な構造により、第1層31により分離された血漿成分を第1層31から第2層32へより確実に移行させることができる。
【0050】
第2層32は、第1層31の他方の端部312に接続されている。第2層32は、多孔質材料により形成されており、イムノクロマト用反応層として機能する。第2層32を形成する多孔質材料としては、例えば、穿刺針33に関して前述した不織繊維や多孔体などが挙げられる。
図4に表した矢印A4のように、第1層31により分離された血漿成分は、第1層31から第2層32へ移行し、毛細管現象により第2層32の端部325へ向かってさらに移行する。
【0051】
図4に表したように、第2層32は、発色抗体担持層321と、検体検出ライン322と、コントロールライン323と、を有する。発色抗体担持層321と、検体検出ライン322と、コントロールライン323と、は、血漿成分の移行方向すなわち矢印A4の方向に沿ってこの順に並んで配置されている。
【0052】
発色抗体担持層321は、発色抗体すなわち標識抗体を含有する層である。標識抗体は、抗原物質(すなわち疾患リスク診断用マーカー)に反応する抗体が標識体に固定化されたものである。標識体としては、例えば、金コロイド粒子や白金コロイド粒子などのコロイド状金属粒子、カラーラテックス粒子などが挙げられる。
【0053】
第1層31により分離された血漿成分は、第1層31から第2層32へ移行し、発色抗体担持層321を通過する。このとき、検査用検体としての血液が抗原物質(すなわち疾患リスク診断用マーカー)を含有する場合には、標識抗体の一部は、疾患リスク診断用マーカーと結合する。そして、疾患リスク診断用マーカーと結合した標識抗体と、疾患リスク診断用マーカーと結合していない標識抗体(すなわち標識抗体のみ)と、の混合物が、検体検出ライン322へ向かって移行する。
【0054】
疾患リスク診断用マーカーと結合した標識抗体は、検体検出ライン322に到達すると、検体検出ライン322のキャプチャ抗体に捕捉される。そうすると、検体検出ライン322が発色する。一方で、疾患リスク診断用マーカーと結合していない標識抗体(すなわち標識抗体のみ)は、検体検出ライン322のキャプチャ抗体に捕捉されず検体検出ライン322を通過し、コントロールライン323へ向かって移行する。疾患リスク診断用マーカーと結合していない標識抗体は、コントロールライン323に到達すると、コントロールライン323の補足用抗体に結合するか、あるいは、コントロールライン323に担持された抗原物質と反応する。そうすると、コントロールライン323が発色する。
【0055】
検査用検体としての血液が抗原物質(すなわち疾患リスク診断用マーカー)を含有していない場合には、発色抗体担持層321に含まれる標識抗体のみが検体検出ライン322へ向かって移行する。このときの標識抗体は、疾患リスク診断用マーカーと結合していないため、検体検出ライン322のキャプチャ抗体に捕捉されず検体検出ライン322を通過し、コントロールライン323へ向かって移行する。そのため、血液が疾患リスク診断用マーカーを含有していない場合には、検体検出ライン322は発色しない。標識抗体は、コントロールライン323に到達すると、コントロールライン323の抗原物質と反応する。そうすると、コントロールライン323が発色する。
【0056】
疾患リスク診断用マーカーの測定、より具体的には疾患リスク診断用マーカーのレベル値の測定は、イムノクロマトグラフィーにおける公知の測定方法により行われる。例えば、疾患リスク診断用マーカーのレベル値の測定は、検体検出ライン322およびコントロールライン323における吸光度あるいは反射測定光の強度を測定することにより行われる。
【0057】
図4に表したように、本実施形態の第1光照射装置41は、検体検出ライン322からコントロールライン323にわたって設けられ、検体検出ライン322およびコントロールライン323に対して同時に測定光を照射する。第1光検出器42は、検体検出ライン322からコントロールライン323にわたって設けられ、検体検出ライン322およびコントロールライン323において反射した反射測定光を検出する。あるいは、第1光検出器42は、検体検出ライン322からコントロールライン323にわたって設けられ、検体検出ライン322およびコントロールライン323を透過した透過測定光を検出する。
【0058】
本実施形態の疾患モニタリングシステム2は、第1光検出器42により検出された透過測定光に基づいて吸光度を算出し、算出された吸光度に基づいて疾患リスク診断用マーカーのレベル値を算出する。あるいは、本実施形態の疾患モニタリングシステム2は、第1光検出器42により検出された反射測定光に基づいて反射測定光の強度を算出し、算出された反射測定光の強度に基づいて疾患リスク診断用マーカーのレベル値を算出する。あるいは、本実施形態の疾患モニタリングシステム2は、第1光検出器42の検出結果に基づいて、検体検出ライン322の発色強度とコントロールライン323の発色強度との比率を算出し、算出した発色強度の比率に基づいて疾患リスク診断用マーカーのレベル値を算出する。
【0059】
次に、本実施形態に係る疾患モニタリングシステム2の使用形態を、
図1~
図4を参照しつつ説明する。
【0060】
被検者は、本実施形態の疾患モニタリングシステム2を使用する際には、まず、中指あるいは人差し指を載置部211に載置する。続いて、被検者は、アッパケース21の側面213に設けられたロック解除部26を操作する。これにより、ロック解除部26がロック機構241のロックを解除する。そうすると、
図3に表した矢印A2のように、イムノクロマト反応用チップ3は、ロックを解除され、付勢部材25から付勢力を受けてアッパケース21へ向かって移動する。
【0061】
イムノクロマト反応用チップ3の第1層31に設けられた穿刺針33は、イムノクロマト反応用チップ3の移動に伴い、載置部211に設けられた穿刺針用孔212を通して載置部211に載置された生体(本使用形態では指)に穿刺される。これにより、穿刺針33は、検査用検体として血液を採取する。
【0062】
このとき、穿刺針33に設けられたストッパ34は、アッパケース21のうち穿刺針用孔212の周辺部分と接触し、穿刺針33が生体に穿刺された状態でイムノクロマト反応用チップ3の移動を停止させる。また、ストッパ34は、穿刺針33が生体に穿刺された状態で穿刺針用孔212を塞ぐ。
【0063】
図3に表した矢印A3のように、穿刺針33に浸潤した血液は毛細管現象により穿刺針33から第1層31へ移行する。第1層31に移行した血液は、第1層31により血球と血漿成分とに分離される。
図4に表した矢印A4のように、第1層31により分離された血漿成分は、第1層31から第2層32へ移行し、毛細管現象により第2層32の端部325へ向かってさらに移行する。
【0064】
そして、血液が疾患リスク診断用マーカーを含有する場合には、検体検出ライン322およびコントロールライン323の両方が発色する。一方で、血液が疾患リスク診断用マーカーを含有していない場合には、検体検出ライン322は発色せず、コントロールライン323のみが発色する。これは、
図4に関して前述した通りである。
【0065】
本実施形態に係る疾患モニタリングシステム2によれば、被検者が指などの生体を載置部211に載置しロック解除部26を操作すると、穿刺針33は、イムノクロマト反応用チップ3の移動に伴い穿刺針用孔212を通して生体に穿刺され、検査用検体としての血液を採取する。このとき、ストッパ34は、穿刺針33が生体に穿刺された状態でイムノクロマト反応用チップ3の移動を停止させる。これにより、被検者は、本実施形態に係る疾患モニタリングシステム2を用いて、日常生活の中で簡便に検査用検体としての血液の採取を行うことができる。
【0066】
また、ストッパ34は、穿刺針33が生体に穿刺された状態で穿刺針用孔212を塞ぐ。そのため、ストッパ34は、迷入光が穿刺針用孔212からイムノクロマト反応用チップ3が収容された空間に侵入することを抑えることができる。そのため、第1光検出器42は、イムノクロマト反応用チップ3において反射した反射測定光またはイムノクロマト反応用チップ3を透過した透過測定光をより高い精度で検出できる。これにより、被検者は、本実施形態に係る疾患モニタリングシステム2を用いて、日常生活の中で簡便に、検査用検体としての血液に含まれる可能性のある疾患リスク診断用マーカーの測定を行うことができる。
【0067】
また、光吸収性を有する材料のコーティングがアッパケース21の内面およびボトムケース22の内面に施されているため、第1光検出器42による反射測定光または透過測定光の検出の安定性を向上させることができる。さらに、穿刺針33が穿刺針用孔212を通して被検者により視認されることを抑えることができる。
【0068】
また、被検者は、アッパケース21に設けられた載置部211に指などの生体を載置した状態で、アッパケース21の側面213に設けられたロック解除部26を操作することによりロック機構241のロックを解除できる。そのため、被検者は、例えば片手でロック機構241のロックを解除し、載置部211に載置した指などの生体に穿刺針33を穿刺することができる。これにより、被検者は、本実施形態に係る疾患モニタリングシステム2を用いて、日常生活の中で簡便に、検査用検体としての血液の採取と、検査用検体としての血液に含まれる可能性のある疾患リスク診断用マーカーの測定と、を行うことができる。
【0069】
さらに、第1層31の多孔質材料の空間率が一方の端部311から他方の端部312に向かうにつれて低下する構造を有する移行促進構造が第1層31に設けられているため、第1層31により分離された血漿成分は、第1層31から第2層32へより確実に移行する。これにより、本実施形態に係る疾患モニタリングシステム2は、移行促進構造のより簡便な構造により、検査用検体としての血液に含まれる可能性のある疾患リスク診断用マーカーをより高い精度で検出できる。
【0070】
次に、本実施形態に係る疾患モニタリングシステム2を、図面を参照してさらに説明する。
図5は、本実施形態に係る疾患モニタリングシステムの要部構成を表すブロック図である。
【0071】
本実施形態に係る疾患モニタリングシステム2は、制御部51と、記憶部52と、案内部53と、投影装置54と、通信部55と、をさらに備える。制御部51は、疾患リスク診断部511と、表示処理部512と、を有し、記憶部52に記憶されたプログラム521を読み出して種々の演算や処理を実行する。疾患リスク診断部511および表示処理部512は、記憶部52に格納(記憶)されているプログラム521を制御部51が実行することにより実現される。なお、疾患リスク診断部511および表示処理部512は、ハードウェアによって実現されてもよく、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせによって実現されてもよい。
【0072】
疾患リスク診断部511は、疾患リスク診断用マーカーのレベル値を算出し、疾患リスク診断用マーカーが検査用検体としての血液に含まれている可能性があるか否かを診断する。例えば、疾患リスク診断部511は、第1光検出器42により検出された透過測定光に基づいて吸光度を算出し、算出された吸光度に基づいて疾患リスク診断用マーカーのレベル値を算出する。あるいは、疾患リスク診断部511は、第1光検出器42により検出された反射測定光に基づいて反射測定光の強度を算出し、算出された反射測定光の強度に基づいて疾患リスク診断用マーカーのレベル値を算出する。あるいは、疾患リスク診断部511は、第1光検出器42の検出結果に基づいて、検体検出ライン322の発色強度とコントロールライン323の発色強度との比率を算出し、算出した発色強度の比率に基づいて疾患リスク診断用マーカーのレベル値を算出する。
【0073】
表示処理部512は、第1光検出器42により検出された反射測定光または透過測定光に基づいて、疾患リスク診断用マーカーの検査進行状況および検査結果の少なくともいずれかに関する信号を通信部55を介して表示装置6に送信し、疾患リスク診断用マーカーの検査進行状況および検査結果の少なくともいずれかを表示装置6の表示部61に表示させる表示処理を実行する。例えば、表示処理部512は、疾患リスク診断部511により算出された疾患リスク診断用マーカーのレベル値の経時変化をグラフや表などを用いて表示装置6の表示部61に表示させる表示処理を実行する。また、表示処理部512は、疾患リスク診断部511により算出された疾患リスク診断用マーカーのレベル値が所定閾値よりも高い場合には、疾患リスク診断用マーカーが検査用検体としての血液に含まれている可能性があることを表示装置6の表示部61に表示させる表示処理を実行する。
【0074】
表示装置6としては、例えば、スマートフォンやタブレットコンピュータなどの携帯型の電子端末装置が挙げられる。あるいは、表示装置6は、鏡面や壁面の内部に組み込まれ電子的に表示を行う表示機構であってもよい。表示部61は、表示装置6に設けられたディスプレイであり、例えば利用者の指の接触等を検出可能なタッチパネルを含むディスプレイであってもよい。なお、
図5に表したブロック図では、表示装置6は、本実施形態に係る疾患モニタリングシステム2とは別体として設けられている。但し、表示装置6は、本実施形態に係る疾患モニタリングシステム2の一部として、疾患モニタリングシステム2と一体的に設けられていてもよい。
【0075】
あるいは、表示処理部512は、第1光検出器42により検出された反射測定光または透過測定光に基づいて、疾患リスク診断用マーカーの検査進行状況および検査結果の少なくともいずれかに関する信号を投影装置54に送信し、疾患リスク診断用マーカーの検査進行状況および検査結果の少なくともいずれかを投影装置54に投影表示させる制御を実行する。例えば、表示処理部512は、疾患リスク診断部511により算出された疾患リスク診断用マーカーのレベル値の経時変化をグラフや表などを用いて投影装置54に投影表示させる制御を実行する。また、表示処理部512は、疾患リスク診断部511により算出された疾患リスク診断用マーカーのレベル値が所定閾値よりも高い場合には、疾患リスク診断用マーカーが検査用検体としての血液に含まれている可能性があることを投影装置54に投影表示させる制御を実行する。
【0076】
投影装置54は、疾患リスク診断用マーカーの検査進行状況および検査結果の少なくともいずれかを、例えば鏡面や壁面など被検者が視認しやすい場所に投影表示する。
【0077】
記憶部52は、プログラム521を格納すなわち記憶する。プログラム521は、測定のためのシーケンスプログラムや、画像処理のための画像処理プログラムや、演算プログラムなどを含む。記憶部52としては、例えば、疾患モニタリングシステム2に内蔵された半導体メモリなどが挙げられる。あるいは、記憶部52としては、疾患モニタリングシステム2に接続可能なCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、RAM(Random access memory)、ROM(Read only memory)、ハードディスク、メモリカードなどの種々の記憶媒体やデータサーバなどが挙げられる。なお、プログラム521は、記憶部52に格納されていることには限定されず、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に予め格納され頒布されてもよく、あるいはネットワークを介して計測器本体4にダウンロードされてもよい。
【0078】
図3、
図4および
図5に表したように、本実施形態に係る疾患モニタリングシステム2は、第2光照射装置43と、第2光検出器44と、をさらに備える。
図3および
図4に表したように、第2光照射装置43は、アッパケース21およびボトムケース22のいずれかのうちイムノクロマト反応用チップ3の第1層31の他方の端部312に対応する部分に設けられ、第1層31の他方の端部312に向かって測定光を照射する。
図3に表した疾患モニタリングシステム2では、第2光照射装置43は、アッパケース21のうちイムノクロマト反応用チップ3の第1層31の他方の端部312に対応する部分に設けられている。第2光照射装置43は、例えば発光ダイオードであり、所定の波長の光を照射する。
【0079】
図3および
図4に表したように、第2光検出器44は、アッパケース21およびボトムケース22のいずれかのうちイムノクロマト反応用チップ3の第1層31の他方の端部312に対応する部分に設けられ、第2光照射装置43から照射された光を検出する。
図3に表した疾患モニタリングシステム2では、第2光検出器44は、ボトムケース22のうちイムノクロマト反応用チップ3の第1層31の他方の端部312に対応する部分に設けられている。第2光検出器44は、例えばアレイ型フォトダイオードである。例えば、第2光検出器44は、第2光照射装置43から照射され第1層31の他方の端部312において反射した反射測定光を検出する。あるいは、第2光検出器44は、第2光照射装置43から照射され第1層31の他方の端部312を透過した透過測定光を検出する。
図3に表した疾患モニタリングシステム2では、第2光検出器44は、第2光照射装置43から照射され第1層31の他方の端部312を透過した透過測定光を検出する。第2光検出器44は、第2光照射装置43から照射され第1層31の他方の端部312において反射した反射測定光を検出する場合には、第2光照射装置43の近傍のアッパケース21に設けられる。
【0080】
図1および
図2に表したように、案内部53は、載置部211の近傍、より具体的には穿刺針用孔212の近傍に設けられている。第2光検出器44が反射測定光または透過測定光に基づいて検査用検体としての血液が第1層31の他方の端部312に到達したことを検出すると、載置部211に載置された生体の載置部211からの離隔を案内する。離隔の案内は、案内部53が光を放射することによって行われてもよく、案内部53が音を発生することによって行われてもよい。
【0081】
本実施形態に係る疾患モニタリングシステム2によれば、制御部51の表示処理部512は、第1光検出器42により検出された反射測定光または透過測定光に基づいて、疾患リスク診断用マーカーの検査進行状況および検査結果の少なくともいずれかを表示装置6の表示部61に表示させる表示処理を実行する。そのため、被検者は、表示装置6の表示部61を確認することにより、疾患リスク診断用マーカーの検査進行状況および検査結果の少なくともいずれかを容易に認知できる。
【0082】
また、投影装置54は、第1光検出器42により検出された反射測定光または透過測定光に基づいて、疾患リスク診断用マーカーの検査進行状況および検査結果の少なくともいずれかを、例えば鏡面や壁面など被検者が視認しやすい場所に投影表示することができる。そのため、被検者は、例えば鏡面や壁面などに投影された表示を確認することにより、疾患リスク診断用マーカーの検査進行状況および検査結果の少なくともいずれかを容易に認知できる。
【0083】
また、案内部53は、第2光検出器44が反射測定光または透過測定光に基づいて検査用検体としての血液が第1層31の他方の端部312に到達したことを検出すると、載置部211に載置された生体の載置部211からの離隔を案内する。そのため、被検者は、検査用検体としての血液の採取が完了し、載置部211に載置した生体を載置部211から離すことができることを容易に認識できる。また、案内部53が載置部211の近傍、より具体的には穿刺針用孔212の近傍に設けられているため、被検者は、載置部211に載置した生体を載置部211から離すことができることをより確実に認識できる。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
【符号の説明】
【0085】
2:疾患モニタリングシステム、 3:イムノクロマト反応用チップ、 4:計測器本体、 6:表示装置、 21:アッパケース、 22:ボトムケース、 23:ヒンジ部、 24:反応用チップホルダ、 25:付勢部材、 26:ロック解除部、 31:第1層、 32:第2層、 33:穿刺針、 34:ストッパ、 41:第1光照射装置、 42:第1光検出器、 43:第2光照射装置、 44:第2光検出器、 51:制御部、 52:記憶部、 53:案内部、 54:投影装置、 55:通信部、 61:表示部、 211:載置部、 212:穿刺針用孔、 213:側面、 223:側面、 241:ロック機構、 242:突起部、 311:一方の端部、 312:他方の端部、 321:発色抗体担持層、 322:検体検出ライン、 323:コントロールライン、 324:切欠部、 325:端部、 331:先端部、 511:疾患リスク診断部、 512:表示処理部、 521:プログラム