(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155298
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】通気衣服
(51)【国際特許分類】
A41D 13/002 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
A41D13/002 105
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058729
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】516150420
【氏名又は名称】有限会社ネクストトレーディング
(74)【代理人】
【識別番号】110002804
【氏名又は名称】弁理士法人フェニックス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松村 真一
【テーマコード(参考)】
3B011
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AB01
3B011AC02
3B011AC03
(57)【要約】
【課題】着用者の首部や脇部を積極的に空冷すると同時に、背中の蒸れを効率よく防ぐことができる通気衣服を提供すること。
【解決手段】前身頃1と、送風器を取付け可能な取付開口部21が開設された後身頃2と、後身頃2との間に空気流路3を形成する裏地4とを備え、後身頃2の取付開口部21に取り付けた送風器により空気流路3内へ空気を送り込み、空気流路3に開設された襟開口部31及び脇開口部32からそれぞれ、着用者の首部及び脇部に向けて空気を噴出させる通気衣服において、裏地4を着用者の背面の背すじに対向する背すじ通気部41と、背面の左右側部に対向する左右一対の翼片部42とから構成し、背すじ通気部41の通気性を翼片部42の通気性よりも大きくした。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前身頃と、送風器を取付け可能な取付開口部が開設された後身頃と、前記後身頃との間に空気流路を形成する裏地とを備え、前記後身頃の前記取付開口部に取り付けた前記送風器により前記空気流路内へ空気を送り込み、前記空気流路に開設された襟開口部及び脇開口部からそれぞれ、着用者の首部及び脇部に向けて前記空気を噴出させる通気衣服であって、
前記裏地が、着用者の背面の背すじに対向する背すじ通気部と、前記背面の左右側部に対向する左右一対の翼片部とを備え、前記背すじ通気部の通気性が前記翼片部の通気性よりも大きくされていることを特徴とした通気衣服。
【請求項2】
前記背すじ通気部が、メッシュ地から成ることを特徴とした請求項1に記載の通気衣服。
【請求項3】
前記背すじ通気部が、前記翼片部間に開設された背すじ開口部と、前記背すじ開口部において前記翼片部同士を連結する連結部とから成ることを特徴とした請求項1に記載の通気衣服。
【請求項4】
前記空気流路に着用者の腰部に向けて前記空気を噴出させる腰開口部が開設されていることを特徴とした請求項1~請求項3の何れかに記載の通気衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気衣服、より詳しくは、衣服内へ送り込んだ空気を着用者の首部や脇部に向けて噴出させる通気衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、送風器により衣服内へ送り込んだ空気を着用者の首部や脇部に向けて噴出させて首部や脇部を空冷する衣服として、下記特許文献1に記載のものが知られている。この衣服は、衣服の外装体と内装体との間に内部空間部が形成されており、外装体に設けた送風器により内部空間部へ空気を送り込み、内装体に設けた誘導開口部から着用者の首部や脇部に向けて空気を噴出させるものである。この衣服によれば、外装体の下部に設けた送風器で送り込んだ空気を、内装体の上部に設けた誘導開口部へ確実に誘導することができ、着用者の首部や脇部を的確に空冷することができる。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の衣服は、着用者の首部や脇部を的確に空冷することができる反面、着用者の背中を有効に空冷することができず、作業中に背中が蒸れ易くなる難点があった。
【0004】
勿論、着用者の背中の蒸れを防ぐために、例えば特許文献1に記載の衣服において内装体の背面対向位置に更に誘導開口部を設け、着用者の背面に向けて空気を噴射させて空冷することが考えられる。ところが、この内部空間部には送風器の送風により所定の内圧がかかるため、内装体が着用者の背面側へ膨出して背面と接触し、背面に向けて空気をうまく噴射させることができない問題が生ずる。
【0005】
さらには、たとえスペーサー等により着用者の背面と内装体との隙間を確保して背面への円滑な空気噴射を実現したとしても、人体の背面は、首部や脇部に比べてその表面積が格段に大きいため、背面に対しては相当の空気噴射量が必要になるところ、この背面噴射によって内部空間部の空気内圧が大きく低下してしまい、首部や脇部に対する必要な空気噴射量が得られなくなる問題が生ずる。
【0006】
一方、従来、作業中の背中の蒸れを防ぐ衣服として、下記特許文献2及び下記特許文献3に記載のものが知られている。しかしながら、これらの衣服は、単に後身頃の一部をメッシュ地に切り替えたものに過ぎず、着用者の首部や脇部等に向けて空気を噴出させて首部や脇部等を積極的に空冷するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6502033号公報
【特許文献2】実開昭62-141015号公報
【特許文献3】実開平2-11113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の通気衣服に上記のような難点があったことに鑑みて為されたもので、着用者の首部や脇部を積極的に空冷すると同時に、背中の蒸れを効率よく防ぐことができる通気衣服を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、人体の背面の発汗量が、脊柱に近い背面中央部の背すじ付近において特に多いことに着目し、鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明は、前身頃と、送風器を取付け可能な取付開口部が開設された後身頃と、前記後身頃との間に空気流路を形成する裏地とを備え、前記後身頃の前記取付開口部に取り付けた前記送風器により前記空気流路内へ空気を送り込み、前記空気流路に開設された襟開口部及び脇開口部からそれぞれ、着用者の首部及び脇部に向けて前記空気を噴出させる通気衣服であって、
前記裏地が、着用者の背面の背すじに対向する背すじ通気部と、前記背面の左右側部に対向する左右一対の翼片部とを備え、前記背すじ通気部の通気性が前記翼片部の通気性よりも大きくされていることを特徴としている。
【0011】
また、本発明は、前記背すじ通気部が、メッシュ地から成ることを特徴としている。
【0012】
また、本発明は、前記背すじ通気部が、前記翼片部間に開設された背すじ開口部と、前記背すじ開口部において前記翼片部同士を連結する連結部とから成ることを特徴としている。
【0013】
また、本発明は、前記空気流路に着用者の腰部に向けて前記空気を噴出させる腰開口部が開設されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る通気衣服によれば、空気流路を形成する裏地が、着用者の背面中央部の背すじに対向して設けられた通気性の大きい背すじ通気部と、着用者の背面の左右側部に対向して設けられた通気性の小さい左右一対の翼片部とから構成されているので、各翼片部を着用者の背面の左右側部に当接させることによって、空気流路内の必要な空気内圧を維持することができる。したがって、背すじ通気部における通気によって着用者の背すじ付近の汗の蒸発を促進して背中の蒸れを効率よく防ぎながらも、着用者の首部や脇部等に対する必要な空気噴射量を確保することができ、首部や脇部等を積極的に空冷することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】本実施形態の通気衣服の前身頃を開いた状態の概略正面図である。
【
図4】本実施形態の通気衣服を着用した状態における
図2中のA-B-C線組合せ矢視拡大断面図である。
【
図5】本発明に係る他の実施形態の通気衣服の前身頃を開いた状態の概略正面図である。
【
図6】本発明に係る更に他の実施形態の通気衣服の前身頃を開いた状態の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1~
図4に示すように、本実施形態の通気衣服10は、前身頃1と、後身頃2と、この後身頃2との間に空気流路3を形成する裏地4と、襟部5とを備えた袖なし上衣として構成されている。
【0017】
図1に示すように、前身頃1には、衣服の前面を開閉するための公知のファスナー11が設けられ、
図2に示すように、後身頃2の下部には、バッテリーで駆動する公知の送付器Fを着脱自在に取り付け可能な円形状の取付開口部21が計二つ開設されている。また、これら前身頃1及び後身頃2の袖ぐり部6と裾部7とには、着用者の腕付根部や腰部をそれぞれ締める不図示のゴム紐が内装されている。
【0018】
裏地4は、
図3及び
図4に示すように、着用者Mの背面中央部の背すじBSに対向する背すじ通気部41と、着用者Mの背面の左右側部に対向する左右一対の翼片部42・42とから構成されている。
【0019】
背すじ通気部41は、その左右の側縁411が各翼片部42の内側縁421に接合されており、その下縁412が後身頃2の裾部7に接合されている。そして、各翼片部42は、その上部外側縁422が後身頃2の上部に接合され、その下部外側縁423が前身頃1と後身頃2との脇接合部に接合され、その下縁424が後身頃2の裾部7に接合されている。こうして、
図4に示すように、裏地4と後身頃2との間に空気流路3が形成されている。
【0020】
一方、各翼片部42の上縁425、上部外側縁422と下部外側縁423との間の外側縁426、及び下部外側縁423と下縁424との間の角部427はいずれも、後身頃2や前身頃1とは接合されておらず、開口している。こうして空気流路3における着用者Mの首部、脇部、及び腰部に対向する位置にそれぞれ、襟開口部31、脇開口部32、及び腰開口部33が開設されている。
【0021】
なお、本実施形態では、左右一対の翼片部42の内側縁421の上部同士を互いに接合しているが、この内側縁421の上部は、背すじ通気部41の側縁411と接合されていても良い。また、各翼片部42の上部外側縁422が、前身頃1と後身頃2との肩接合部に接合されていても良く、前身頃1に接合されていても良い。また、各翼片部42の下部外側縁423が、後身頃2や前身頃1の途中に接合されていても良い。これら前身頃1、後身頃2、及び裏地4の接合は、縫着の他、接着剤等による接着や熱融着等の各種の接合手段を適宜採用することができる。
【0022】
裏地4の背すじ通気部41は、その通気性が各翼片部42の通気性よりも大きくされている。本実施形態では、背すじ通気部41がメッシュ地から構成されている。メッシュ地としては、ニットメッシュ、ネット、レースの他、低密度の織編地や多数の貫通孔を有する布地を採用することができる。裏地4の翼片部42、前身頃1、及び後身頃2は、背すじ通気部41よりも通気性が小さければ良く、その構成材料として、例えば、綿、羊毛、絹等の天然繊維やナイロン、ポリエステル等の合成繊維やこれらの混紡繊維等から成る布地の他、合成樹脂シートを採用することができる。
【0023】
以上のように構成された本実施形態の通気衣服10を使用する際には、まず、予め通気衣服10の後身頃2の取付開口部21に送風器Fを作動可能な状態で取り付けておく。
【0024】
そして、本実施形態の通気衣服10を着用し、送風器Fを作動させて外気を空気流路3内へ送り込む。空気流路3内へ送り込まれた空気は、空気流路3内を流れ、襟開口部31、脇開口部32、及び腰開口部33からそれぞれ、着用者Mの首部、脇部、及び腰部に向けて噴射される。このことで、着用者Mの首部、脇部、及び腰部が積極的に空冷される。そして、着用者Mの背面においては、発汗量の特に多い背すじBSに対向して設けられた通気性の大きい背すじ通気部41において、主に空気流路3の空気流により背すじBS付近が換気され、背すじBS付近の汗の蒸発が促進されて着用者Mの背面の蒸れが抑制される。なお、
図4に示すように、空気流路3の脇開口部32から噴射された空気の一部は、着用者Mと前身頃1との間へ流れ、着用者Mの身体前面側の換気が同時に行われる。
【0025】
このように本実施形態の通気衣服10は、空気流路3を形成する裏地4において、着用者Mの背面中央部の背すじBSに対向する位置に、通気性の大きい背すじ通気部41を設けているが、着用者Mの背面の左右側部に対向する位置に、通気性の小さい左右一対の翼片部42・42を設けているので、各翼片部42を着用者Mの背面の左右側部に当接させることによって、空気流路3内の必要な空気内圧を維持することができる。したがって、背すじ通気部41における通気によって着用者Mの背すじBS付近の汗の蒸発を促進して背中の蒸れを効率よく防ぎながらも、着用者Mの首部や脇部等に対する必要な空気噴射量を確保して首部や脇部等を積極的に空冷することができる。
【0026】
しかも、本実施形態の通気衣服10は、各翼片部42の内側縁421同士が、メッシュ地から成る背すじ通気部41によって連結されているので、着用者Mの背面の左右側部に対する各翼片部42の当接状態を確実に維持することができる。したがって、着用者Mが作業中に各種の動作を行なっても、空気流路3の内圧を確実に保つことができ、着用者Mの動作により空気流路3が潰れてしまい首部や脇部等への空気噴出が滞るような問題もない。
【0027】
特に、着用者Mが前屈姿勢を採った際には、着用者Mの背面と後身頃2との間隔が狭まる結果、空気流路3の内圧が一時的に上昇することになるが、本実施形態の通気衣服10によれば、このような内圧上昇によっても、各翼片部42が外方へ開くように位置ずれすることもなく、着用者Mの背すじBS付近の汗の蒸発促進と首部や脇部等への空気噴射を確実に行うことができる。このように本実施形態の通気衣服10は、前屈姿勢を採ることの多い作業時にも好適に使用することができる。
【0028】
以上、本実施形態の通気衣服10について説明したが、本発明は他の実施形態でも実施することができる。
【0029】
例えば、上記実施形態では、裏地4の背すじ通気部41として、二等辺三角形状のメッシュ地を採用しているが、この背すじ通気部41の形状は、決してこれに限定されるものではなく、例えば、
図5に示す通気衣服20のように、背すじ通気部41の側縁411が曲線形状であっても良く、また、背すじ通気部41の上下方向の中央部分が、その上部及び下部よりも幅広に形成されていても良い。背すじ通気部41及び翼片部42の通気性や、送風器Fを取り付ける取付開口部21の位置や、送風器Fの送風能力等を考慮して種々の設計変更が可能である。
【0030】
また、
図6に示す通気衣服30のように、背すじ通気部41を、左右一対の翼片部42・42間に開設された背すじ開口部43と、この背すじ開口部43において翼片部42の内側縁421同士を連結する帯状の連結部44とから構成しても良い。これら背すじ開口部43と連結部44とから成る背すじ通気部41全体としての通気性が、各翼片部42の通気性よりも大きくされていれば良く、連結部44それ自体の通気性は、各翼片部42の通気性よりも小さくても良く、同程度であっても良い。背すじ開口部43の形状、連結部44の材質、形状、配置位置等についても種々の設計変更が可能である。
【0031】
また、上記実施形態の通気衣服は、袖なし上衣として構成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、袖部を備えた上衣や、上衣と下衣が連続するつなぎ服として構成されていても良い。
【0032】
以上、本実施形態の通気衣服について説明したが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づいて種々の改良、修正、変形を加えた態様で実施し得るものである。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内でいずれかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施してもよく、また、一体に構成されている発明特定事項を複数の部材から構成したり、複数の部材から構成されている発明特定事項を一体に構成した形態で実施したりしても良い。
【符号の説明】
【0033】
10、20、30 通気衣服
1 前身頃
2 後身頃
21 取付開口部
3 空気流路
31 襟開口部
32 脇開口部
33 腰開口部
4 裏地
41 背すじ通気部
42 翼片部
43 背すじ開口部
44 連結部
F 送風器
M 着用者
BS 背すじ