(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155299
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】検出装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20221005BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
G06F3/041 512
G06F3/044 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058730
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 孝明
(57)【要約】
【課題】より高感度で検出を行える検出装置を提供する。
【解決手段】検出装置100は、複数の駆動電極Txと、複数の駆動電極Txと対向する検出電極Rxと、駆動回路10と、検出部103と、を備える。駆動回路10は、駆動電極Txに駆動信号を与える。検出部103は、検出電極Rxの出力に基づいて検出領域SAに対する物体の近接を検出する。駆動回路10は、検出部103が一回検出を行う期間内に、複数の駆動電極Txに同時に駆動信号を与えるフェーズを駆動電極Txの数に対応した回数実施し、所定の行列に応じて、各フェーズで駆動電極Txに与える駆動信号を制御し、かつ、隣り合う二つの駆動電極Tx単位で同じ電位の駆動信号を与える束ね駆動を行う。束ね駆動では、フェーズの半分と残り半分とで同じ電位が与えられる駆動電極Txの組み合わせが第二方向Dxに駆動電極Tx一つ分ずれる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一方向に延出し、第二方向に並ぶ複数の駆動電極と、
前記第一方向及び前記第二方向に直交する方向に前記複数の駆動電極と対向する検出電極と、
前記複数の駆動電極に駆動信号を与える駆動回路と、
前記駆動信号に応じて前記駆動電極と前記検出電極との間に生じた静電容量に応じて生じた前記検出電極の出力に基づいて前記検出電極が設けられた検出領域に対する物体の近接を検出する検出部と、を備え、
前記駆動回路は、前記検出部が一回検出を行う期間内に、前記複数の駆動電極に同時に駆動信号を与えるフェーズを前記駆動信号が与えられる前記駆動電極の数に対応した所定回数実施し、所定の行列に含まれる値の正負に応じて、各フェーズで相対的に高い電位の駆動信号と相対的に低い電位の駆動信号のいずれかを前記駆動電極に与え、かつ、隣り合う二つの前記駆動電極単位で同じ電位の駆動信号を与える束ね駆動を行い、
前記所定回数のフェーズのうち半分を第一駆動期間とし、前記所定回数のフェーズのうち前記第一駆動期間に含まれない半分を第二駆動期間とすると、前記第二駆動期間における前記駆動信号の電位と前記駆動電極との関係は、前記第一駆動期間における前記駆動信号の電位と前記駆動電極との関係を前記第二方向に前記駆動電極1つ分スライドした関係である、
検出装置。
【請求項2】
前記所定の行列は、アダマール行列であり、
前記アダマール行列は、行列方向の要素数が前記駆動電極の数の1/2である、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記検出部は、
前記第一駆動期間における前記出力に対応した数値を前記第一駆動期間に含まれるフェーズの実施順に列方向に並べた行列に前記所定の行列を乗じる演算を含む演算処理で第一行列を算出し、
前記第二駆動期間における前記出力に対応した数値を前記第二駆動期間に含まれるフェーズの実施順に列方向に並べた行列に前記所定の行列を乗じる演算を含む演算処理で第二行列を算出し、
前記第一行列に含まれる列と前記第二行列に含まれる列を列方向に交互に並べた第三行列を導出し、
前記第三行列に基づいて検出領域に対する物体の近接を検出する、
請求項1又は2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記第一行列に含まれる列と前記第二行列に含まれる列のうち、前記束ね駆動において隣り合う駆動電極と同じ電位で駆動されない前記第二方向の両端に位置する前記駆動電極同士の組み合わせに対応する列を前記第三行列に含めない、
請求項3に記載の検出装置。
【請求項5】
前記駆動電極の数は、2nであり、
nは、2以上の自然数である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項6】
前記第二方向に延出し、前記第一方向に並ぶ複数の前記検出電極を備える、
請求項1から5のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項7】
第一方向に延出し、第二方向に並ぶ複数の駆動電極と、
前記第一方向及び前記第二方向に直交する方向に前記複数の駆動電極と対向する検出電極と、
前記複数の駆動電極に駆動信号を与える駆動回路と、を備え、
前記駆動回路は、前記複数の駆動電極に同時に駆動信号を与えるフェーズを前記駆動信号が与えられる前記駆動電極の数に対応した所定回数実施し、所定の行列に含まれる値の正負に応じて、各フェーズで相対的に高い電位の駆動信号と相対的に低い電位の駆動信号のいずれかを前記駆動電極に与え、かつ、隣り合う二つの前記駆動電極単位で同じ電位の駆動信号を与える束ね駆動を行い、
前記所定回数のフェーズのうち半分を第一駆動期間とし、前記所定回数のフェーズのうち前記第一駆動期間に含まれない半分を第二駆動期間とすると、前記第二駆動期間における前記駆動信号の電位と前記駆動電極との関係は、前記第一駆動期間における前記駆動信号の電位と前記駆動電極との関係を前記第二方向に前記駆動電極1つ分スライドした関係である、
検出装置。
【請求項8】
前記所定の行列は、アダマール行列であり、
前記アダマール行列は、行列方向の要素数が前記駆動電極の数の1/2である、
請求項7に記載の検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
符号分割選択(CDM:Code Division Multiplex)方式で検出を行うタッチ検出装置が知られている(例えば特許文献1)。CDM方式では、検出電極と対向する複数の駆動電極を同時に駆動することで、単一の駆動電極を個別に駆動する場合に比してタッチ検出時の感度を高めやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
検出装置の感度をさらに高めたいという需要があるが、従来のCDM方式をそのまま適用するだけではこの需要に応えることは困難であった。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたもので、より高感度で検出を行える検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による検出装置は、第一方向に延出し、第二方向に並ぶ複数の駆動電極と、前記第一方向及び前記第二方向に直交する方向に前記複数の駆動電極と対向する検出電極と、前記複数の駆動電極に駆動信号を与える駆動回路と、前記駆動信号に応じて前記駆動電極と前記検出電極との間に生じた静電容量に応じて生じた前記検出電極の出力に基づいて前記検出電極が設けられた検出領域に対する物体の近接を検出する検出部と、を備え、前記駆動回路は、前記検出部が一回検出を行う期間内に、前記複数の駆動電極に同時に駆動信号を与えるフェーズを前記駆動信号が与えられる前記駆動電極の数に対応した所定回数実施し、所定の行列に含まれる値の正負に応じて、各フェーズで相対的に高い電位の駆動信号と相対的に低い電位の駆動信号のいずれかを前記駆動電極に与え、かつ、隣り合う二つの前記駆動電極単位で同じ電位の駆動信号を与える束ね駆動を行い、前記所定回数のフェーズのうち半分を第一駆動期間とし、前記所定回数のフェーズのうち前記第一駆動期間に含まれない半分を第二駆動期間とすると、前記第二駆動期間における前記駆動信号の電位と前記駆動電極との関係は、前記第一駆動期間における前記駆動信号の電位と前記駆動電極との関係を前記第二方向に前記駆動電極1つ分スライドした関係である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、検出装置の主要構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、相互静電容量方式のタッチ検出の基本原理を説明するための説明図である。
【
図3】
図3は、タッチパネルに対する指の近接の一例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、複数の駆動電極及び複数の検出電極に付された個別の座標の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す複数の駆動電極及び複数の検出電極の各々の座標に対応した検出領域の座標の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、各検出電極からの出力を示す図である。
【
図7】
図7は、タッチ検出期間中に生じる各フェーズで各駆動電極に与えられる駆動信号の電位の正負を値の正負で示した図である。
【
図8】
図8は、第一駆動期間において駆動電極に与えられる電位の正負を2つの駆動電極単位で示す図である。
【
図9】
図9は、第二駆動期間において駆動電極に与えられる電位の正負を2つの駆動電極単位で示す図である。
【
図10】
図10は、参考例で得られる信号強度と、Tx座標と、Rx座標と、の関係を示す図である。
【
図11】
図11は、フェーズP1で得られる検出電極の出力及び当該検出電極の出力に含まれる各座標の信号強度を示す図である。
【
図12】
図12は、フェーズP2で得られる検出電極の出力及び当該検出電極の出力に含まれる各座標の信号強度を示す図である。
【
図13】
図13は、フェーズP3で得られる検出電極の出力及び当該検出電極の出力に含まれる各座標の信号強度を示す図である。
【
図14】
図14は、フェーズP4で得られる検出電極の出力及び当該検出電極の出力に含まれる各座標の信号強度を示す図である。
【
図15】
図15は、フェーズP5で得られる検出電極の出力及び当該検出電極の出力に含まれる各座標の信号強度を示す図である。
【
図16】
図16は、フェーズP6で得られる検出電極の出力及び当該検出電極の出力に含まれる各座標の信号強度を示す図である。
【
図17】
図17は、フェーズP7で得られる検出電極の出力及び当該検出電極の出力に含まれる各座標の信号強度を示す図である。
【
図18】
図18は、フェーズP8で得られる検出電極の出力及び当該検出電極の出力に含まれる各座標の信号強度を示す図である。
【
図19】
図19は、第一駆動期間における検出電極の出力を示す行列を示す図である。
【
図20】
図20は、第二駆動期間における検出電極の出力を示す行列を示す図である。
【
図21】
図21は、
図19に示す行列に基づいて導出された検出領域の第一複合座標の信号強度を含む第一行列を示す図である。
【
図22】
図22は、
図20に示す行列に基づいて導出された検出領域の第一複合座標の信号強度を含む第二行列を示す図である。
【
図24】
図24は、n=4である場合のアダマール行列の一例を示す図である。
【
図25】
図25は、n=4である場合のアダマール行列の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本開示の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本開示の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
図1は、検出装置100の主要構成を示す模式図である。検出装置100は、タッチパネル102と、検出部103と、を備える。タッチパネル102は、複数の駆動電極Txと、複数の検出電極Rxと、が設けられた検出領域SAを有する。以下、検出領域SAに沿って互いに直交する二方向のうち一方を第一方向Dyとし、他方を第二方向Dxとする。また、第一方向Dy及び第二方向Dxに直交する方向を第三方向Dzとする。
【0010】
駆動電極Txは、第一方向Dyに沿って延出する電極である。複数の駆動電極Txは、第二方向Dxに並ぶ。第二方向Dxに隣り合う駆動電極Tx同士は、平行である。検出電極Rxは、第二方向Dxに沿って延出する電極である。複数の検出電極Rxは、第一方向Dyに並ぶ。第一方向Dyに隣り合う検出電極Rx同士は、平行である。駆動電極Txと検出電極Rxとは、離隔した位置関係で第三方向Dzに対向する。駆動電極Txと検出電極Rxとの距離は、駆動電極Txと検出電極Rxとの間に静電容量Cap(
図2参照)を蓄積することができる距離である。
【0011】
複数の駆動電極Txは、個別に駆動回路10と接続されている。駆動回路10は、複数の駆動電極Txに駆動信号を出力する回路である。当該駆動信号は、例えば後述する交流矩形波Sgである(
図2参照)。複数の検出電極Rxは、個別に検出回路20と接続されている。検出回路20は、駆動電極Txに対する駆動信号の出力に応じて駆動電極Txと検出電極Rxとの間に生じた静電容量Capの大きさに応じて生じる電気的信号を複数の検出電極Rxから個別に取得する回路である。当該電気的信号は、例えば後述する電圧信号である。
【0012】
検出装置100では、静電容量型のタッチ検出の基本原理に基づいたタッチ制御がなされる。ここで、
図2を参照して、本実施形態の検出装置1の相互静電容量方式によるタッチ検出の基本原理について説明する。
図2は、相互静電容量方式のタッチ検出の基本原理を説明するための説明図である。
【0013】
図2に示すように、タッチパネル102は、対向配置された一対の電極、すなわち、駆動電極Tx及び検出電極Rxを備えている。駆動電極Txは、交流信号源(駆動信号源)に接続されている。検出電極Rxは電圧検出器DETに接続されている。実施形態における当該駆動信号源は、駆動回路10である。電圧検出器DETは、例えば、
図1に示す検出回路20に含まれる回路である。
【0014】
交流信号源から駆動電極Txに所定の周波数(例えば数kHz~数百kHz程度)の交流矩形波Sgが印加される。電圧検出器DETには、駆動電極Txと検出電極Rxとの間の静電容量Capの容量値に応じた電流が流れる。電圧検出器DETは、交流矩形波Sgに応じた電流の変動を電圧の変動に変換する。
【0015】
指Finのようにタッチパネル102に対する近接に応じて静電容量Capに影響を与える外部の構成が、検出電極Rxと接触し、又は接触と同視し得るほど近傍に近づくにつれて、駆動電極Txと検出電極Rxとの間にあるフリンジ分の電気力線が当該構成により遮られる。このようにして、外部の構成が静電容量Capに影響を与える。
【0016】
電圧検出器DETから出力されるアナログ信号である電圧信号の振幅は、非接触状態に比べて指Finの凹凸等が接触状態に近づくにつれて小さくなる。この電圧差分の振幅の大小が、後述するデジタル信号の値の大小に対応する。検出回路20は、当該電圧信号を検出部103に出力する。
【0017】
検出部103は、上述の電圧信号に基づいて、被検出体が非接触状態であるか、接触状態又は近接状態であるかを判断する機能を有する。このようにして、検出装置100は、相互静電容量方式のタッチ検出の基本原理に基づいてタッチ検出が可能となる。なお、「接触状態」とは、指が検出面に接触した状態又は接触と同視し得るほど近接した状態を含む。また、「非接触状態」とは、指が検出面に接触していない状態又は接触と同視できるほどには近接していない状態を含む。
【0018】
図3は、タッチパネル102に対する指Finの近接の一例を示す模式図である。
図3に示すように、平面視点での駆動電極Txと検出電極Rxとの交差位置のうち1つに重なる位置で指Finがタッチパネル102に近接した場合、当該1つの交差位置の静電容量Capが指Finの近接時の容量値を示すようになる。一方、他の交差位置の静電容量Capは、非接触状態での容量値になる。検出装置100は、このような容量値の差に基づいて、指Finのような外部の物体の検出領域SAに対する近接を検出できる。なお、平面視点とは、第二方向Dx及び第一方向Dyが沿う平面を正面視する視点である。
【0019】
タッチパネル102は、例えばガラス基板であるが、これに限られるものでなく、複数の駆動電極Txと、複数の検出電極Rxと、を第三方向Dzに対向する位置関係で配置可能であり、かつ、駆動電極Txに駆動信号が与えられることに応じて駆動電極Txと検出電極Rxとの間に静電容量Capが生じる駆動電極Txと検出電極Rxとの間隔を実現可能な構成であればよい。
【0020】
図1に示すように、検出部103は、信号増幅部31と、A/D変換部32と、信号処理部33と、を有する。信号増幅部31は、検出回路20から出力された電圧信号を増幅する増幅回路である。A/D変換部32は、信号増幅部31で増幅されたアナログの電圧信号から、当該電圧信号の振幅に応じた値を示すデジタル信号を生成する回路である。A/D変換部32は、いわゆるアナログ/デジタル(A/D:Anarog/Digital)変換回路として機能する。信号処理部33は、A/D変換部32が生成したデジタル信号に基づいて、検出領域SAにおけるタッチ検出に関する各種の処理を行う回路である。以降の説明で、タッチ検出信号と記載した場合、A/D変換部32が生成したデジタル信号に基づいて信号処理部33が導出した検出領域SAにおけるタッチ検出結果を示す信号をさす。検出部103は、タッチパネル102に設けられてもよいし、検出回路20と接続された他の構成に設けられてもよい。当該他の構成として、例えば、タッチパネル102から延出するよう設けられたフレキシブルプリント基板が挙げられる。
【0021】
以下、信号処理部33の具体的な処理内容の説明に先立ち、実施形態における検出領域SAの座標について、
図4と
図5を参照して説明する。
【0022】
図4は、複数の駆動電極Tx及び複数の検出電極Rxに付された個別の座標の一例を示す図である。
図4では、第二方向Dxに並ぶ複数の駆動電極Txに個別に付された座標A,B,C,D,E,F,G,Hを示している。駆動電極Txが第一方向Dyに延出することから、各駆動電極Txは、他の駆動電極Txが設けられている位置に延出しない。従って、
図4に示す例では、座標A,B,C,D,E,F,G,Hを、駆動電極Txが個別に配置されている第二方向Dxの座標(Tx座標)として利用できる。また、
図4では、第一方向Dyに並ぶ複数の検出電極Rxに個別に付された座標1,2,3,4,5,6,7,8を示している。検出電極Rxが第二方向Dxに延出することから、各検出電極Rxは、他の検出電極Rxが設けられている位置に延出しない。従って、
図4に示す例では、座標1,2,3,4,5,6,7,8を、複数の検出電極Rxが個別に配置された第一方向Dyの座標(Rx座標)として利用できる。
【0023】
上述のように、各駆動電極Txの位置は、第二方向Dxの座標(A,B,C,D,E,F,G,H)で表せる。また、各駆動電極Txは、平面視点で複数の検出電極Rxと交差する。各駆動電極Txが複数の検出電極Rxと交差する位置は、第二方向Dxの座標(1,2,3,4,5,6,7,8)で表せる。従って、複数の駆動電極Txのうち1つと、複数の検出電極Rxのうち1つと、が交差する位置を、第二方向Dxの座標と第一方向Dyの座標との組み合わせで表せる。
【0024】
図5は、
図4に示す複数の駆動電極Tx及び複数の検出電極Rxの各々の座標に対応した検出領域SAの座標の一例を示す図である。検出領域SAは、第二方向Dxの座標と第一方向Dyの座標との組み合わせで表せる複数の部分領域を含む。
図5では、部分領域の座標として、座標A1,A2,…,A8,B1,B2,…,B8,C1,C2,…,C8,D1,D2,…,D8,E1,E2,…,E8,F1,F2,…,F8,G1,G2,…,G8,H1,H2,…,H8を示している。各部分領域は、交差する駆動電極Txと検出電極Rxとの組み合わせが異なる。例えば、座標A1の部分領域は、
図4において座標Aが付された駆動電極Txと、座標1が付された検出電極Rxと、が交差する部分領域である。従って、座標A1は、Tx座標Aと、Rx座標1と、の組み合わせによる座標である。ここでは座標A1を例とした説明を行ったが、座標A1以外の座標A2,…,H8についても、同様の考え方で表されている。
【0025】
図4に示す駆動電極Txの数は、8=2
3である。また、
図4に示す検出電極Rxの数は、8=2
3である。そして、
図5に示す部分領域の数は、64=8×8=2
6である。このように、駆動電極Tx及び検出電極Rxの数が2
nである場合、部分領域の数は、2
(2n)である。
【0026】
以降、
図6から
図23を参照した説明は、
図4と
図5とを参照して説明した部分領域の座標A1,…,H8に基づいた説明であるが、これはあくまで駆動電極Tx及び検出電極Rxの数が8である場合の例示的な説明である。すなわち、実施形態における駆動電極Tx及び検出電極Rxの数は8に限定されるものでない。また、座標に採用されたアルファベット及び数値はあくまで一例であり、本開示における座標管理をこれに限定するものでない。
【0027】
実施形態では、複数の駆動電極Txに同時に駆動信号が与えられる。従って、各検出電極Rxは、複数の駆動電極Txの各々との間に静電容量Capを生じた状態になる。検出回路20が各検出電極Rxから得る電気的信号は、当該状態の検出電極Rxから得る電気的信号である。当該電気的信号は、検出回路20から見て、検出電極Rxの出力とみなせる。以下の説明における「検出電極Rxの出力」とは、検出回路20が検出電極Rxから得る電気的信号(アナログ信号)に基づいてA/D変換部32がデジタル化した信号をさす。
【0028】
図6は、各検出電極Rxからの出力を示す図である。以下の説明では、Rx座標1(
図4参照)の検出電極Rxの出力を出力Op1とする。実施形態では、上述のように複数の駆動電極Txに同時に駆動信号が与えられる。このため、出力Op1は、座標A1の静電容量Capと、座標B1の静電容量Capと、座標C1の静電容量Capと、座標D1の静電容量Capと、座標E1の静電容量Capと、座標F1の静電容量Capと、座標G1の静電容量Capと、座標H1の静電容量Capと、を合わせた出力になる。
図6では、このことを、「Op1=A1+B1+C1+D1+E1+F1+G1+H1」のように計算式の形式で記載している。このように、
図6は、各Rx座標の検出電極Rxの出力を、計算式の形式で記載している。
【0029】
同様の考え方で、以下の説明では、Rx座標2(
図4参照)の検出電極Rxの出力を出力Op2とする。また、Rx座標3(
図4参照)の検出電極Rxの出力を出力Op3とする。また、Rx座標4(
図4参照)の検出電極Rxの出力を出力Op4とする。また、Rx座標5(
図4参照)の検出電極Rxの出力を出力Op5とする。また、Rx座標6(
図4参照)の検出電極Rxの出力を出力Op6とする。また、Rx座標7(
図4参照)の検出電極Rxの出力を出力Op7とする。また、Rx座標8(
図4参照)の検出電極Rxの出力を出力Op8とする。
【0030】
Rx座標の値(1から8の自然数のうちいずれか)をrとすると、検出電極Rxの出力は、それぞれのRx座標r上にある8つの部分領域(Ar,Br,Cr,Dr,Er,Fr,Gr,Hr)の静電容量Capを合わせた出力になる。
図6では、このことを、「Opr=Ar+Br+Cr+Dr+Er+Fr+Gr+Hr」のように計算式の形式で記載している。
【0031】
図7は、タッチ検出期間中に生じる各フェーズで各駆動電極Txに与えられる駆動信号の電位の正負を値の正負で示した図である。タッチ検出期間は、検出領域SAに対する外部の物体(例えば、指Fin)の近接の検出のために各駆動電極Txに駆動信号が与えられる期間である。すなわち、タッチ検出期間に検出電極Rxの出力が生じ、当該出力に基づいてタッチ検出が行われる。実施形態のタッチ検出期間は、8つのフェーズを含む。
図7では、当該8つのフェーズを、フェーズP1,P2,P3,P4,P5,P6,P7,P8として示している。駆動回路10は、検出部103が一回検出を行う期間内に、前記複数の駆動電極に同時に駆動信号を与えるフェーズを前記駆動電極の数に対応した所定回数実施する。
【0032】
各フェーズで、駆動電極Txは、駆動信号として正の電位又は負の電位を与えられる。
図7では、正の電位を1で表している。また、
図7では、負の電位を-1で表している。以降、正(1)の電位と記載した場合、駆動回路10から駆動電極Txに与えられる駆動信号としての正の電位をさす。また、負(-1)の電位と記載した場合、駆動回路10から駆動電極Txに与えられる駆動信号としての負の電位をさす。
【0033】
なお、実施形態では、基準電位と、当該基準電位より高い正(1)の電位との電位差を基準として、当該基準電位よりも低い電位であって、電位差により生じる静電容量Capの観点で正(1)の電位と同等である電位を負(-1)の電位として扱っている。例えば、基準電位より所定の電位分高い電位を正(1)の電位とし、所定の電位分低い電位を負(-1)の電位とされる。より具体的には、駆動電極Txに駆動信号が与えられない状態での検出電極Rxを基準電位として、駆動電極Txに駆動信号が与えられた場合に検出電極Rxとの間に同等の静電容量Capが生じる2つの電位のうちより高い方が正(1)の電位であり、低い方が負(-1)の電位である。基準電位は、例えば接地電位であるが、これに限られるものでなく、適宜変更可能である。
【0034】
図7に示すように、フェーズP1,P5では、全ての駆動電極Txに正(1)の電位が与えられる。フェーズP2では、Tx座標A,B,E,Fの駆動電極Txに正(1)の電位が与えられ、Tx座標C,D,G,Hの駆動電極Txに負(-1)の電位が与えられる。フェーズP3では、Tx座標A,B,C,Dの駆動電極Txに正(1)の電位が与えられ、Tx座標E,F,G,Hの駆動電極Txに負(-1)の電位が与えられる。フェーズP4では、Tx座標A,B,G,Hの駆動電極Txに正(1)の電位が与えられ、Tx座標C,D,E,Fの駆動電極Txに負(-1)の電位が与えられる。フェーズP6では、Tx座標B,C,F,Gの駆動電極Txに正(1)の電位が与えられ、Tx座標A,D,E,Hの駆動電極Txに負(-1)の電位が与えられる。フェーズP7では、Tx座標B,C,D,Eの駆動電極Txに正(1)の電位が与えられ、Tx座標A,F,G,Hの駆動電極Txに負(-1)の電位が与えられる。フェーズP8では、Tx座標A,B,C,Hの駆動電極Txに正(1)の電位が与えられ、Tx座標D,E,F,Gの駆動電極Txに負(-1)の電位が与えられる。
【0035】
実施形態では、複数のフェーズ(例えば、フェーズP1,P2,P3,P4,P5,P6,P7,P8)のうち、半分のフェーズを第一駆動期間とし、残り半分のフェーズを第二駆動期間とする。第一駆動期間は、例えば、相対的に先に行われるフェーズ(例えば、フェーズP1,P2,P3,P4)を含む。第二駆動期間は、例えば、相対的に先に行われるフェーズ(例えば、フェーズP5,P6,P7,P8)を含む。なお、第一駆動期間と第2駆動期間の実施順の前後関係は逆でもよい。また、第一駆動期間と第二駆動期間の各々におけるフェーズの実施順は任意であり、適宜変更可能である。
【0036】
図8は、示す第一駆動期間において駆動電極Txに与えられる電位の正負を2つの駆動電極Tx単位で示す図である。
図7を参照して説明したフェーズP1からフェーズP4において駆動電極Txに与えられる電位の正負は、
図8に示すように、2つの駆動電極Tx単位で示すことができる。
【0037】
具体的には、Tx座標Aの駆動電極Tx及びTx座標Bの駆動電極Txには、フェーズP1,P2,P3,P4で正(1)の電位が与えられる。Tx座標Cの駆動電極Tx及びTx座標Dの駆動電極Txには、フェーズP1,P3で正(1)の電位が与えられ、フェーズP2,P4で負(-1)の電位が与えられる。Tx座標Eの駆動電極Tx及びTx座標Fの駆動電極Txには、フェーズP1,P2で正(1)の電位が与えられ、フェーズP3,P4で負(-1)の電位が与えられる。Tx座標Gの駆動電極Tx及びTx座標Hの駆動電極Txには、フェーズP1,P4で正(1)の電位が与えられ、フェーズP2,P3で負(-1)の電位が与えられる。
【0038】
ここで、フェーズP1からフェーズP4において駆動電極Txに与えられる電位の正負を2つの駆動電極Tx単位で示した場合、駆動電極Txの組み合わせの数は、
図8に示すように、Tx座標Aの駆動電極TxとTx座標Bの駆動電極Txとの組み合わせと、Tx座標Cの駆動電極TxとTx座標Dの駆動電極Txとの組み合わせと、Tx座標Eの駆動電極TxとTx座標Fの駆動電極Txとの組み合わせと、Tx座標Gの駆動電極TxとTx座標Hの駆動電極Txとの組み合わせと、の4つである。各組み合わせによる2つの駆動電極Tx同士は、同じ電位の駆動信号で束ね駆動を適用される。従って、
図9に示すTx座標「A,B」、「C,D」、「E,F」、「G,H」は、束ね駆動を適用される2つの駆動電極Txの組み合わせによるTx座標を示す。また、
図8に示すフェーズは、フェーズP1,P2,P3,P4の4つである。従って、
図8に示すように、駆動電極Txの組み合わせを行とし、フェーズを列とした場合、各駆動電極Txの組み合わせ毎に与えられる電位の正負を示す行列は、アダマール行列Hadになる。なお、アダマール行列とは、要素が1または-1のいずれかであり、かつ各行が互いに直交であるような正方行列である。
図8に示すアダマール行列Hadは、行要素(駆動電極Txの組み合わせ)の数及び列要素(フェーズ)の数がともに4=2
2=2
(n-1)のアダマール行列である。
【0039】
図9は、第二駆動期間において駆動電極Txに与えられる電位の正負を2つの駆動電極Tx単位で示す図である。
図7を参照して説明したフェーズP5からフェーズP8において駆動電極Txに与えられる電位の正負は、
図9に示すように、2つの駆動電極Tx単位で示すことができる。
【0040】
具体的には、Tx座標Bの駆動電極Tx及びTx座標Cの駆動電極Txには、フェーズP5,P6,P7,P8で正(1)の電位が与えられる。Tx座標Dの駆動電極Tx及びTx座標Eの駆動電極Txには、フェーズP5,P7で正(1)の電位が与えられ、フェーズP6,P8で負(-1)の電位が与えられる。Tx座標Fの駆動電極Tx及びTx座標Gの駆動電極Txには、フェーズP5,P6で正(1)の電位が与えられ、フェーズP7,P8で負(-1)の電位が与えられる。Tx座標Hの駆動電極Tx及びTx座標Aの駆動電極Txには、フェーズP5,P8で正(1)の電位が与えられ、フェーズP6,P7で負(-1)の電位が与えられる。
【0041】
ここで、第一駆動期間で各駆動電極Txに与えられる電位の正負と、第二駆動期間で各駆動電極Txに与えられる電位の正負と、を対比する。まず、フェーズP1からフェーズP4でTx座標Aの駆動電極Tx及びTx座標Bの駆動電極Txに与えられる電位と、フェーズP5からフェーズP8でTx座標Bの駆動電極Tx及びTx座標Cの駆動電極Txに与えられる電位と、は正(1)の電位で維持されている点で同じである。また、フェーズP1からフェーズP4でTx座標Cの駆動電極Tx及びTx座標Dの駆動電極Txに与えられる電位の正負の遷移パターンと、フェーズP5からフェーズP8でTx座標Dの駆動電極Tx及びTx座標Eの駆動電極Txに与えられる電位の正負の遷移パターンと、は同じである。また、フェーズP1からフェーズP4でTx座標Eの駆動電極Tx及びTx座標Fの駆動電極Txに与えられる電位の正負の遷移パターンと、フェーズP5からフェーズP8でTx座標Fの駆動電極Tx及びTx座標Gの駆動電極Txに与えられる電位の正負の遷移パターンと、は同じである。また、フェーズP1からフェーズP4でTx座標Gの駆動電極Tx及びTx座標Hの駆動電極Txに与えられる電位の正負の遷移パターンと、フェーズP5からフェーズP8でTx座標Hの駆動電極Tx及びTx座標Aの駆動電極Txに与えられる電位の正負の遷移パターンと、は同じである。
【0042】
言い換えれば、第一駆動期間において各駆動電極Txに与えられていた電位の正負の遷移パターンが、第二駆動期間においてTx座標を1つずらして適用されている。このTx座標のずれ方向は、駆動電極Txの並びの一端側(Tx座標A)から他端側(Tx座標H)に向かう方向である。また、このTx座標のずれに伴い、第二駆動期間における駆動電極Txの組み合わせは、駆動電極Txの並びの一端に位置するTx座標Aの駆動電極Txと他端に位置するTx座標Hの駆動電極Txとの組み合わせを含む。これは、このTx座標のずれによって、第二駆動期間における駆動電極Txの組み合わせが、Tx座標Bの駆動電極TxとTx座標Cの駆動電極Txとの組み合わせと、Tx座標Dの駆動電極TxとTx座標Eの駆動電極Txとの組み合わせと、Tx座標Fの駆動電極TxとTx座標Gの駆動電極Txとの組み合わせと、を含むことになるため、駆動電極Txの並び方向の両端の駆動電極Txは、隣り合う駆動電極Txと組み合わせられなくなることによる。
【0043】
上述のように、フェーズP5からフェーズP8において駆動電極Txに与えられる電位の正負を2つの駆動電極Tx単位で示した場合、駆動電極Txの組み合わせの数は、Tx座標Bの駆動電極TxとTx座標Cの駆動電極Txとの組み合わせと、Tx座標Dの駆動電極TxとTx座標Eの駆動電極Txとの組み合わせと、Tx座標Fの駆動電極TxとTx座標Gの駆動電極Txとの組み合わせと、Tx座標Hの駆動電極TxとTx座標Aの駆動電極Txとの組み合わせと、の4つである。各組み合わせによる2つの駆動電極Tx同士は、同じ電位の駆動信号で束ね駆動を適用される。従って、
図9に示すTx座標「B,C」、「D,E」、「F,G」、「H,A」は、束ね駆動を適用される2つの駆動電極Txの組み合わせによるTx座標を示す。また、
図9に示すフェーズは、フェーズP5,P6,P7,P8の4つである。従って、
図9に示すように、駆動電極Txの組み合わせを行とし、フェーズを列とした場合、各駆動電極Txの組み合わせ毎に与えられる電位の正負を示す行列は、アダマール行列Hadになる。
図9に示すアダマール行列Hadは、
図8に示すアダマール行列Hadと同様、行要素(駆動電極Txの組み合わせ)の数及び列要素(フェーズ)の数がともに4=2
2のアダマール行列である。すなわち、
図8を参照して説明したアダマール行列Hadと、
図9を参照して説明したアダマール行列Hadとは、第一駆動期間(
図8参照)と、第二駆動期間(
図9参照)と、で駆動電極Txの組み合わせが駆動電極Txの並び方向に1つずれている点を除いて、同様である。
【0044】
なお、2つの駆動電極Tx単位でアダマール行列Hadが適用されているということは、駆動電極Txの並び方向にアダマール行列Hadの行要素を2倍にして適用する、とも解釈できる。ここで、アダマール行列Hadの行要素を2倍にする、とは、2倍にした後のアダマール行列Hadにおいて「束ね駆動が適用される2つの駆動電極Tx」の位置に対応する2行を「各列の値(1又は-1)の並びが同じである2行」にすることをさす。
【0045】
次に、
図7から
図9を参照して説明した駆動信号が与えられることによって得られるタッチ検出信号について、
図11から
図23を参照して説明する。当該説明に先立ち、参考例について、
図10を参照して説明する。
【0046】
図10は、参考例で得られる信号強度と、Tx座標と、Rx座標と、の関係を示す図である。参考例では、実施形態と異なり全ての駆動電極Txを一括駆動せず、各駆動電極Txにそれぞれ異なるタイミングで正(1)の電位の駆動信号を与えている。そして、参考例では、各駆動電極Txに駆動信号が与えられているタイミング毎に各検出電極Rxからタッチ検出信号を得ている。
図10における座標A1,A2,…,H8の数値は、タッチ検出信号の信号強度を示す。
【0047】
図10に示す例では、座標C3,C6,F3,F6で「7」の信号強度を示す信号が得られている。また、座標C4,C5,D3,D6,E3,E6,F4,F5で「8」の信号強度を示す信号が得られている。また、座標D4,D5,E4,E5で「10」の信号強度を示す信号が得られている。また、他の座標で「5」の信号強度を示す信号が得られている。当該他の座標は、第一座標群は、座標A1,A2,A3,A4,A5,A6,A7,A8と、第二座標群は、座標B1,B2,B3,B4,B5,B6,B7,B8と、座標C1,C2,C7,C8と、座標D1,D2,D7,D8と、座標E1,E2,E7,E8と、座標F1,F2,F7,F8と、座標G1,G2,G3,G4,G5,G6,G7,G8と、座標H1,H2,H3,H4,H5,H6,H7,H8と、である。
【0048】
図10で示す信号強度の値は、参考例において座標A1,A2,…,H8の各々で生じる静電容量Capに対応する。すなわち、
図10で示す信号強度の値は、参考例における検出領域SAの状態を反映している。以下、
図11から
図23を参照した説明では、参考例において
図10に示すタッチ検出信号が得られる検出領域SAの状態と同じ検出領域SAの状態で実施形態を実施した場合に得られるタッチ検出信号の導出について説明する。
【0049】
図11は、フェーズP1で得られる検出電極Rxの出力及び当該検出電極Rxの出力に含まれる各座標の信号強度を示す図である。
図7及び
図8を参照して説明したように、フェーズP1では、全ての駆動電極Txに正(1)の電位が与えられる。言い換えれば、実施形態のフェーズP1で各駆動電極Txに与えられる駆動信号の正負は、参考例で各駆動電極Txに与えられる駆動信号の正負と同様である。従って、フェーズP1で座標A1,A2,…,H8の各々に生じる静電容量Capは、
図10を参照して説明した静電容量Capと同様になる。よって、
図11に示すように、フェーズP1における座標A1,A2,…,H8の信号強度は、
図10を参照して説明した参考例における座標A1,A2,…,H8の信号強度と同様になる。
【0050】
一方、各駆動電極Txに異なるタイミングで駆動信号が与えられた参考例と異なり、実施形態では、各フェーズで全ての駆動電極Txに同一タイミングで駆動信号が与えられる。従って、各検出電極Rxは、平面視点で交差する全ての駆動電極Txが駆動された状態で各駆動電極Txとの間に生じる静電容量Capを足し合わせた出力を生じる。すなわち、各フェーズにおける検出電極Rxの出力は、検出領域SAの座標(例えば、A1,A2,…,H8)であってRx座標が共通する複数の座標の信号強度を足し合わせた信号強度を示す。
【0051】
例えば、フェーズP1における出力Op1は、
図11に示す座標A1,B1,C1,D1,E1,F1,G1,H1の各々の信号強度「5」を全て足し合わせた「40」の信号強度を示す。すなわち、Op1=A1+B1+C1+D1+E1+F1+G1+H1=5+5+5+5+5+5+5+5=40である。同様の考え方で、フェーズP1における出力Op2,Op7,Op8は、「40」の信号強度を示す。また、フェーズP2における出力Op3,Op6は、「50」の信号強度を示す。また、フェーズP1における出力Op4,Op5は、「56」の信号強度を示す。
【0052】
図12は、フェーズP2で得られる検出電極Rxの出力及び当該検出電極Rxの出力に含まれる各座標の信号強度を示す図である。
図7及び
図8を参照して説明したように、フェーズP2では、Tx座標A,B,E,Fの駆動電極Txに正(1)の電位が与えられ、Tx座標C,D,G,Hの駆動電極Txに負(-1)の電位が与えられる。
【0053】
言い換えれば、フェーズP2では、Tx座標A,B,E,Fの駆動電極Txに与えられる駆動信号の正負がフェーズP1と同じである。従って、フェーズP2で座標A1,A2,…,H8の各々に生じる信号強度のうち、Tx座標A,B,E,Fに対応する座標(座標A1,A2,…A8,B1,B2,…,B8,E1,E2,…,E8,F1,F2,…,F8)の信号強度は、フェーズP1と同様である。
【0054】
一方、フェーズP2では、Tx座標C,D,G,Hの駆動電極Txに与えられる駆動信号の正負がフェーズP1の逆である。このため、フェーズP2のTx座標C,D,G,Hに対応する座標(座標C1,C2,…C8,D1,D2,…,D8,G1,G2,…,G8,H1,H2,…,H8)では、静電容量Capの正負が逆転する。すなわち、Tx座標C,D,G,Hに対応する座標では、フェーズP1とフェーズP2で駆動電極Txと検出電極Rxとの電位の高低関係が逆になるため、静電容量Capの正負が逆転する。
【0055】
1つの検出電極Rxで、信号強度が同じであって静電容量Capの正負が逆である信号同士は互いに打ち消し合うように作用する。従って、静電容量Capが逆転した場合の信号強度は、逆転前の信号強度(正の数値)を負の数値としたものとして表す。従って、フェーズP2で座標A1,A2,…,H8の各々に生じる信号強度のうち、Tx座標C,D,G,Hに対応する座標の信号強度は、フェーズP1におけるこれらの座標の信号強度の正負を逆転したものになる。
【0056】
以上のことから、フェーズP2における出力Op1は、
図12に示す座標A1,B1,E1,F1の各々の信号強度「5」と、座標C1,D1,G1,H1の各々の信号強度「-5」と、を全て足し合わせた「0」の信号強度を示す。すなわち、Op1=A1+B1+C1+D1+E1+F1+G1+H1=5+5+(-5)+(-5)+5+5+(-5)+(-5)=0である。同様の考え方で、フェーズP2における出力Op2,Op3,Op4,Op5,Op6,Op7,Op8は、「0」の信号強度を示す。
【0057】
図13は、フェーズP3で得られる検出電極Rxの出力及び当該検出電極Rxの出力に含まれる各座標の信号強度を示す図である。
図7及び
図8を参照して説明したように、フェーズP3では、Tx座標A,B,C,Dの駆動電極Txに正(1)の電位が与えられ、Tx座標E,F,G,Hの駆動電極Txに負(-1)の電位が与えられる。
【0058】
言い換えれば、フェーズP3では、Tx座標A,B,C,Dの駆動電極Txに与えられる駆動信号の正負がフェーズP1と同じである。従って、フェーズP3で座標A1,A2,…,H8の各々に生じる信号強度のうち、Tx座標A,B,C,Dに対応する座標(座標A1,A2,…A8,B1,B2,…,B8,C1,C2,…,C8,D1,D2,…,D8)の信号強度は、フェーズP1と同様である。
【0059】
一方、フェーズP3では、Tx座標E,F,G,Hの駆動電極Txに与えられる駆動信号の正負がフェーズP1の逆である。従って、フェーズP3で座標A1,A2,…,H8の各々に生じる信号強度のうち、Tx座標E,F,G,Hに対応する座標(座標E1,E2,…,E8,F1,F2,…,F8,G1,G2,…,G8,H1,H2,…,H8)の信号強度は、フェーズP1におけるこれらの座標の信号強度の正負を逆転したものになる。
【0060】
以上のことから、フェーズP3における出力Op1は、
図13に示す座標A1,B1,C1,D1の各々の信号強度「5」と、座標E1,F1,G1,H1の各々の信号強度「-5」と、を全て足し合わせた「0」の信号強度を示す。すなわち、Op1=A1+B1+C1+D1+E1+F1+G1+H1=5+5+5+5+(-5)+(-5)+(-5)+(-5)=0である。同様の考え方で、フェーズP3における出力Op2,Op3,Op4,Op5,Op6,Op7,Op8は、「0」の信号強度を示す。
【0061】
図14は、フェーズP4で得られる検出電極Rxの出力及び当該検出電極Rxの出力に含まれる各座標の信号強度を示す図である。
図7及び
図8を参照して説明したように、フェーズP3では、Tx座標A,B,G,Hの駆動電極Txに正(1)の電位が与えられ、Tx座標C,D,E,Fの駆動電極Txに負(-1)の電位が与えられる。
【0062】
言い換えれば、フェーズP4では、Tx座標A,B,G,Hの駆動電極Txに与えられる駆動信号の正負がフェーズP1と同じである。従って、フェーズP4で座標A1,A2,…,H8の各々に生じる信号強度のうち、Tx座標A,B,G,Hに対応する座標(座標A1,A2,…A8,B1,B2,…,B8,G1,G2,…,G8,H1,H2,…,H8)の信号強度は、フェーズP1と同様である。
【0063】
一方、フェーズP4では、Tx座標C,D,E,Fの駆動電極Txに与えられる駆動信号の正負がフェーズP1の逆である。従って、フェーズP4で座標A1,A2,…,H8の各々に生じる信号強度のうち、Tx座標C,D,E,Fに対応する座標(座標C1,C2,…,C8,D1,D2,…,D8,E1,E2,…,E8,F1,F2,…,F8)の信号強度は、フェーズP1におけるこれらの座標の信号強度の正負を逆転したものになる。
【0064】
以上のことから、フェーズP4における出力Op1は、
図14に示す座標A1,B1,G1,H1の各々の信号強度「5」と、座標C1,D1,E1,F1の各々の信号強度「-5」と、を全て足し合わせた「0」の信号強度を示す。すなわち、Op1=A1+B1+C1+D1+E1+F1+G1+H1=5+5+(-5)+(-5)+(-5)+(-5)+5+5=0である。同様の考え方で、フェーズP4における出力Op2,Op7,Op8は、「0」の信号強度を示す。また、フェーズP4における出力Op3,Op6は、「-10」の信号強度を示す。また、フェーズP4における出力Op4,Op5は、「-16」の信号強度を示す。
【0065】
図15は、フェーズP5で得られる検出電極Rxの出力及び当該検出電極Rxの出力に含まれる各座標の信号強度を示す図である。フェーズP5では、
図11を参照して説明したフェーズP1と同様、全ての駆動電極Txに正(1)の電位が与えられる。従って、フェーズP5における検出電極Rxの出力は、フェーズP1における検出電極Rxの出力と同じである。
【0066】
図16は、フェーズP6で得られる検出電極Rxの出力及び当該検出電極Rxの出力に含まれる各座標の信号強度を示す図である。
図7及び
図9を参照して説明したように、フェーズP6では、Tx座標B,C,F,Gの駆動電極Txに正(1)の電位が与えられ、Tx座標A,D,E,Hの駆動電極Txに負(-1)の電位が与えられる。
【0067】
言い換えれば、フェーズP6では、Tx座標B,C,F,Gの駆動電極Txに与えられる駆動信号の正負がフェーズP1と同じである。従って、フェーズP6で座標A1,A2,…,H8の各々に生じる信号強度のうち、Tx座標B,C,F,Gに対応する座標(座標B1,B2,…,B8,C1,C2,…,C8,F1,F2,…,F8,G1,G2,…,G8)の信号強度は、フェーズP1と同様である。
【0068】
一方、フェーズP6では、Tx座標A,D,E,Hの駆動電極Txに与えられる駆動信号の正負がフェーズP1の逆である。従って、フェーズP4で座標A1,A2,…,H8の各々に生じる信号強度のうち、Tx座標A,D,E,Hに対応する座標(座標A1,A2,…A8,D1,D2,…,D8,E1,E2,…,E8,H1,H2,…,H8)の信号強度は、フェーズP1におけるこれらの座標の信号強度の正負を逆転したものになる。
【0069】
以上のことから、フェーズP6における出力Op1は、
図16に示す座標B1,C1,F1,G1の各々の信号強度「5」と、座標A1,D1,E1,H1の各々の信号強度「-5」と、を全て足し合わせた「0」の信号強度を示す。すなわち、Op1=A1+B1+C1+D1+E1+F1+G1+H1=(-5)+5+5+(-5)+(-5)+5+5+(-5)=0である。同様の考え方で、フェーズP6における出力Op2,Op7,Op8は、「0」の信号強度を示す。また、フェーズP6における出力Op3,Op6は、「-2」の信号強度を示す。また、フェーズP6における出力Op4,Op5は、「-4」の信号強度を示す。
【0070】
図17は、フェーズP7で得られる検出電極Rxの出力及び当該検出電極Rxの出力に含まれる各座標の信号強度を示す図である。フェーズP7では、Tx座標B,C,D,Eの駆動電極Txに正(1)の電位が与えられ、Tx座標A,F,G,Hの駆動電極Txに負(-1)の電位が与えられる。
【0071】
言い換えれば、フェーズP7では、Tx座標B,C,D,Eの駆動電極Txに与えられる駆動信号の正負がフェーズP1と同じである。従って、フェーズP7で座標A1,A2,…,H8の各々に生じる信号強度のうち、Tx座標B,C,D,Eに対応する座標(座標B1,B2,…,B8,C1,C2,…,C8,D1,D2,…,D8,E1,E2,…,E8)の信号強度は、フェーズP1と同様である。
【0072】
一方、フェーズP7では、Tx座標A,F,G,Hの駆動電極Txに与えられる駆動信号の正負がフェーズP1の逆である。従って、フェーズP7で座標A1,A2,…,H8の各々に生じる信号強度のうち、Tx座標A,F,G,Hに対応する座標(座標A1,A2,…A8,F1,F2,…,F8,G1,G2,…,G8,H1,H2,…,H8)の信号強度は、フェーズP1におけるこれらの座標の信号強度の正負を逆転したものになる。
【0073】
以上のことから、フェーズP7における出力Op1は、
図17に示す座標B1,C1,D1,E1の各々の信号強度「5」と、座標A1,F1,G1,H1の各々の信号強度「-5」と、を全て足し合わせた「0」の信号強度を示す。すなわち、Op1=A1+B1+C1+D1+E1+F1+G1+H1=(-5)+5+5+5+5+(-5)+(-5)+(-5)=0である。同様の考え方で、フェーズP7における出力Op2,Op7,Op8は、「0」の信号強度を示す。また、フェーズP7における出力Op3,Op6は、「6」の信号強度を示す。また、フェーズP7における出力Op4,Op5は、「10」の信号強度を示す。
【0074】
図18は、フェーズP8で得られる検出電極Rxの出力及び当該検出電極Rxの出力に含まれる各座標の信号強度を示す図である。フェーズP8では、Tx座標A,B,C,Hの駆動電極Txに正(1)の電位が与えられ、Tx座標D,E,F,Gの駆動電極Txに負(-1)の電位が与えられる。
【0075】
言い換えれば、フェーズP8では、Tx座標A,B,C,Hの駆動電極Txに与えられる駆動信号の正負がフェーズP1と同じである。従って、フェーズP8で座標A1,A2,…,H8の各々に生じる信号強度のうち、Tx座標A,B,C,Hに対応する座標(座標A1,A2,…A8,B1,B2,…,B8,C1,C2,…,C8,H1,H2,…,H8)の信号強度は、フェーズP1と同様である。
【0076】
一方、フェーズP8では、Tx座標D,E,F,Gの駆動電極Txに与えられる駆動信号の正負がフェーズP1の逆である。従って、フェーズP8で座標A1,A2,…,H8の各々に生じる信号強度のうち、Tx座標D,E,F,Gに対応する座標(座標D1,D2,…,D8,E1,E2,…,E8,F1,F2,…,F8,G1,G2,…,G8)の信号強度は、フェーズP1におけるこれらの座標の信号強度の正負を逆転したものになる。
【0077】
以上のことから、フェーズP7における出力Op1は、
図17に示す座標A1,B1,C1,H1の各々の信号強度「5」と、座標D1,E1,F1,G1の各々の信号強度「-5」と、を全て足し合わせた「0」の信号強度を示す。すなわち、Op1=A1+B1+C1+D1+E1+F1+G1+H1=5+5+5+(-5)+(-5)+(-5)+(-5)+5=0である。同様の考え方で、フェーズP7における出力Op2,Op7,Op8は、「0」の信号強度を示す。また、フェーズP7における出力Op3,Op6は、「-6」の信号強度を示す。また、フェーズP7における出力Op4,Op5は、「-10」の信号強度を示す。
【0078】
図19は、第一駆動期間における検出電極Rxの出力を示す行列MaAを示す図である。
図20は、第二駆動期間における検出電極Rxの出力を示す行列MaBを示す図である。行列MaA,MaBの行方向の要素は、検出電極Rxの出力をRx座標順に並べたもの(出力Op1,Op2,Op3,Op4,Op5,Op6,Op7,Op8)である。行列MaAの列方向の要素は、フェーズP1からフェーズP4を実施順に並べたもの(フェーズP1,P2,P3,P4)である。行列MaBの列方向の要素は、フェーズP5からフェーズP8を実施順に並べたもの(フェーズP5,P6,P7,P8)である。
図19に示すように、第一駆動期間における検出電極Rxの出力は、行列MaAとして扱える。また、
図20に示すように、第二駆動期間における検出電極Rxの出力は、行列MaBとして扱える。
【0079】
検出回路20は、上述のような信号強度を示す各検出電極Rxの出力を各フェーズで得る。信号増幅部31は、検出回路20から出力された各検出電極Rxの出力を各フェーズで個別に増幅する。A/D変換部32は、信号増幅部31によって増幅された検出電極Rxの出力を各フェーズで個別にA/D変換する。信号処理部33は、A/D変換された検出電極Rxの出力を得る。
【0080】
ここで、
図19に示す行列MaAは、
図10に示す駆動電極Txと検出電極Rxとの静電容量Capに対応した信号強度を、
図8に示すアダマール行列Hadでエンコードしたものとみなせる。また、
図20に示す行列MaBは、
図10に示す駆動電極Txと検出電極Rxとの静電容量Capに対応した信号強度を、
図9に示すアダマール行列Hadでエンコードしたものとみなせる。
【0081】
図21は、
図19に示す行列MaAに基づいて導出された検出領域SAの第一複合座標の信号強度を含む第一行列Ma1を示す図である。信号処理部33は、行列MaAをデコードする。具体的には、信号処理部33は、行列MaAをデコードする演算として、行列MaAとアダマール行列Hadとの積を求め、当該積の解を列要素の数で除算する演算処理を行う。
図19に示す行列MaAの列要素の数は4である。従って、信号処理部33は、(MaA×Had)/4を求めることで、第一行列Ma1を導出する。第一行列Ma1は、行列MaAのデコード結果である。
【0082】
第一行列Ma1は、
図21に示すように、Rx座標を行要素とし、Tx座標の第一複合座標を列要素とした座標系における各座標の信号強度を示す行列とみなせる。ここで、Tx座標の第一複合座標とは、
図8を参照して説明したアダマール行列Hadにおいて駆動信号の正負とタッチ検出におけるフェーズの前半(フェーズP1,P2,P3,P4)との対応関係が同じである駆動電極Txの組み合わせに対応する。
【0083】
図8では、駆動信号の正負とフェーズP1,P2,P3,P4との対応関係が同じである駆動電極Txの組み合わせは、Tx座標Aの駆動電極TxとTx座標Bの駆動電極Txとの組み合わせと、Tx座標Cの駆動電極TxとTx座標Dの駆動電極Txとの組み合わせと、Tx座標Eの駆動電極TxとTx座標Fの駆動電極Txとの組み合わせと、Tx座標Gの駆動電極TxとTx座標Hの駆動電極Txとの組み合わせと、の4つである。従って、
図21に示すTx座標の第一複合座標は、Tx座標AとTx座標Bとを合わせて1つの座標とみなしたTx座標(A+B)と、Tx座標CとTx座標Dとを合わせて1つの座標とみなしたTx座標(C+D)と、Tx座標EとTx座標Fとを合わせて1つの座標とみなしたTx座標(E+F)と、Tx座標GとTx座標Hとを合わせて1つの座標とみなしたTx座標(G+H)と、の4つになる。
【0084】
信号処理部33は、第一行列Ma1を、
図21に示すように、Rx座標を行要素とし、Tx座標の第一複合座標を列要素とし、検出領域SAの第一複合座標の信号強度を示す行列として扱う。信号処理部33は、第一行列Ma1が示す信号強度を、当該第一複合座標の各々におけるタッチ検出信号として扱う。
【0085】
以下の説明では、Tx座標の第一複合座標を用いて検出領域SAの座標を表す場合、括弧()内にTx座標の第一複合座標を記載し、当該括弧の直後にRx座標を示す数値を記載する。例えば、座標(A+B)1とした場合、Tx座標(A+B)と、Rx座標1と、の組み合わせによる座標を示す。
【0086】
図21では、座標(C+D)3,(C+D)6,(E+F)3,(E+F)6における信号強度が15であり、座標(C+D)4,(C+D)5,(E+F)4,(E+F)5における信号強度が15であり、他の座標における信号強度が10であるタッチ検出信号が導出されている。当該他の座標とは、座標(A+B)1,(A+B)2,…,(A+B)8,(C+D)1,(C+D)2,(C+D)7,(C+D)8,(E+F)1,(E+F)2,(E+F)7,(E+F)8,(G+H)1,(G+H)2,…,(G+H)8である。
【0087】
図22は、
図20に示す行列MaBに基づいて導出された検出領域SAの第二複合座標の信号強度を含む第二行列Ma2を示す図である。信号処理部33は、行列MaBをデコードする。具体的には、信号処理部33は、行列MaBをデコードする演算として、行列MaBとアダマール行列Hadとの積を求め、当該積の解を列要素の数で除算する演算処理を行う。
図20に示す行列MaBの列要素の数は4である。従って、信号処理部33は、(MaB×Had)/4を求めることで、第二行列Ma2を導出する。第二行列Ma2は、行列MaBのデコード結果である。
【0088】
第二行列Ma2は、
図22に示すように、Rx座標を行要素とし、Tx座標の第二複合座標を列要素とした座標系における各座標の信号強度を示す行列とみなせる。ここで、Tx座標の第二複合座標とは、
図9を参照して説明したアダマール行列Hadにおいて駆動信号の正負とタッチ検出におけるフェーズの後半(フェーズP5,P6,P7,P8)との対応関係が同じである駆動電極Txの組み合わせに対応する。
【0089】
図9では、駆動信号の正負とフェーズP5,P6,P7,P8との対応関係が同じである駆動電極Txの組み合わせは、Tx座標Bの駆動電極TxとTx座標Cの駆動電極Txとの組み合わせと、Tx座標Dの駆動電極TxとTx座標Eの駆動電極Txとの組み合わせと、Tx座標Fの駆動電極TxとTx座標Gの駆動電極Txとの組み合わせと、Tx座標Hの駆動電極TxとTx座標Aの駆動電極Txとの組み合わせと、の4つである。従って、
図22に示すTx座標の第二複合座標は、Tx座標BとTx座標Cとを合わせて1つの座標とみなしたTx座標(B+C)と、Tx座標DとTx座標Eとを合わせて1つの座標とみなしたTx座標(D+E)と、Tx座標FとTx座標Gとを合わせて1つの座標とみなしたTx座標(F+G)と、Tx座標HとTx座標Aとを合わせて1つの座標とみなしたTx座標(H+A)と、の4つになる。
【0090】
信号処理部33は、第二行列Ma2を、
図22に示すように、Rx座標を行要素とし、Tx座標の第二複合座標を列要素とし、検出領域SAの第二複合座標の信号強度を示す行列として扱う。信号処理部33は、第二行列Ma2が示す信号強度を、当該第二複合座標の各々におけるタッチ検出信号として扱う。
【0091】
以下の説明では、Tx座標の第二複合座標を用いて検出領域SAの座標を表す場合、括弧()内にTx座標の第二複合座標を記載し、当該括弧の直後にRx座標を示す数値を記載する。例えば、座標(B+C)1とした場合、Tx座標(B+C)と、Rx座標1と、の組み合わせによる座標を示す。
【0092】
図22では、座標(B+C)3,(B+C)6,(F+G)3,(F+G)6における信号強度が12であるタッチ検出信号が導出されている。また、座標(B+C)4,(B+C)5,(F+G)4,(F+G)5における信号強度が13であるタッチ検出信号が導出されている。また、座標(D+E)3,(D+E)6における信号強度が16であるタッチ検出信号が導出されている。また、座標(D+E)4,(D+E)5における信号強度が20であるタッチ検出信号が導出されている。そして、他の座標における信号強度が10であるタッチ検出信号が導出されている。当該他の座標とは、座標(B+C)1,(B+C)2,(B+C)7,(B+C)8,(D+E)1,(D+E)2,(D+E)7,(D+E)8,(F+G)1,(F+G)2,(F+G)7,(F+G)8,(H+A)1,(H+A)2,…,(H+A)8である。
【0093】
図23は、
図21及び
図22に基づいて求められた検出領域SAのタッチ検出結果を示す図である。信号処理部33は、第一行列Ma1(
図21参照)と、第二行列Ma2(
図22参照)と、を組み合わせ、検出領域SAのタッチ検出結果を導出する。具体的には、信号処理部33は、
図21を参照して説明した第一複合座標の各々におけるタッチ検出信号と、
図22を参照して説明した第二複合座標の各々におけるタッチ検出信号と、を、Tx座標の並び順に従って列方向に並び替えた行列Ma3を導出する。
【0094】
より具体的には、信号処理部33は、
図23の行列Ma3で示すように、座標(A+B)の列と座標(C+D)の列との間に座標(B+C)の列を挿入する。ここで、座標(A+B)の列及び座標(C+D)の列は、第一行列Ma1(
図21参照)に含まれる。また、座標(B+C)の列は、第二行列Ma2(
図22参照)に含まれる。
【0095】
また、信号処理部33は、
図23の行列Ma3で示すように、座標(C+D)の列と座標(E+F)の列との間に座標(D+E)の列を挿入する。ここで、座標(C+D)の列及び座標(E+F)の列は、第一行列Ma1(
図21参照)に含まれる。また、座標(D+E)の列は、第二行列Ma2(
図22参照)に含まれる。
【0096】
また、信号処理部33は、
図23の行列Ma3で示すように、座標(E+F)の列と座標(G+H)の列との間に座標(F+G)の列を挿入する。ここで、座標(E+F)の列及び座標(G+H)の列は、第一行列Ma1(
図21参照)に含まれる。また、座標(F+G)の列は、第二行列Ma2(
図22参照)に含まれる。
【0097】
このようにして導出された第三行列Ma3が示す検出領域SAのタッチ検出結果に含まれる各座標の信号強度は、
図10に示す参考例における各座標の信号強度に比してより高まっている。より具体的には、実施形態では、第一複合座標系及び第二複合座標系で組み合わせられている駆動電極Tx同士が同じ電位の駆動信号で駆動されていることで、駆動信号の信号強度が2倍になっている。また、検出電極Rxの出力に生じ得るノイズは、行列MaA及び行列MaBの各々の導出のために実施されるフェーズの数、すなわち、一回のタッチ検出期間に含まれるフェーズの数の平方根(1/√)に応じて減少する。具体的には、検出電極Rxの出力に生じ得るノイズは、参考例に比して1/αになる。αは、2
(n-1)の平方根である。従って、実施形態で検出領域SAのタッチ検出結果として得られる各座標の信号強度は、2α倍になっている。これは、駆動電極Txの数が同じであるCDM方式のタッチ検出装置に比して、2の平方根(1.414156・・・)倍の信号強度である。これによって、実施形態では、参考例及びCDM方式に比して、より高感度で検出を行える。
【0098】
なお、第二行列Ma2(
図22参照)に含まれる列のうち、座標(H+A)の列は第三行列Ma3に含まれない。すなわち、信号処理部33は、検出領域SAのタッチ検出結果の導出に際して、複数の駆動電極Txのうち駆動電極Txの並び方向の両端に位置する駆動電極Tx同士の組み合わせによる座標をタッチ検出信号の導出に際して採用せず、破棄する。
【0099】
以上、実施形態によれば、検出装置100は、第一方向Dyに延出し、第二方向Dxに並ぶ複数の駆動電極Txと、複数の駆動電極Txと第三方向Dzに対向する検出電極Rxと、駆動回路10と、検出部103と、を備える。駆動回路10は、複数の駆動電極Txに駆動信号を与える。検出部103は、当該駆動信号に応じて駆動電極Txと検出電極Rxとの間に生じた静電容量Capに応じて生じた検出電極Rxの出力に基づいて検出電極Rxが設けられた検出領域SAに対する物体(例えば、指Fin)の近接を検出する。駆動回路10は、検出部103が一回検出を行う期間内に、複数の駆動電極Txに同時に駆動信号を与えるフェーズ(例えば、フェーズP1,P2,P3,P4,P5,P6,P7,P8)を駆動信号が与えられる駆動電極Txの数に対応した所定回数実施する。所定回数の値は、駆動電極Txの数と同値である。駆動回路10は、所定の行列(例えば、アダマール行列Had)に含まれる値の正負に応じて、各フェーズで相対的に高い電位(例えば、正(1)の電位)の駆動信号と相対的に低い電位(例えば、負(-1)の電位)の駆動信号のいずれかを駆動電極Txに与える。ここで、駆動回路10は、隣り合う二つの駆動電極Tx単位で同じ電位の駆動信号を与える束ね駆動を行う。当該所定回数のフェーズのうち半分を第一駆動期間とし、当該所定回数のフェーズのうち当該第一駆動期間に含まれない半分を第二駆動期間とすると、当該第二駆動期間における駆動信号の電位と駆動電極Txとの関係は、当該第一駆動期間における駆動信号の電位と駆動電極Txとの関係を第二方向Dxに駆動電極Tx1つ分スライドした関係である。ここで、当該第一駆動期間における駆動信号の電位と駆動電極Txとの関係とは、例えば
図8に示すような、複数の駆動電極Txに与えられる駆動信号の電位の正負の組み合わせをさす。また、当該第二駆動期間における駆動信号の電位と駆動電極Txとの関係とは、例えば
図9に示すような、複数の駆動電極Txに与えられる駆動信号の電位の正負の組み合わせをさす。束ね駆動によって、2つの駆動電極Txを1つの駆動電極Txとみなして検出電極Rxとの間に静電容量Capを生じさせることができる。ここで、1つの駆動電極Txとみなされる2つの駆動電極Txには同じ駆動信号が与えられることから、信号強度が二倍になる。従って、より高感度で検出を行える。また、第一駆動期間と第二駆動期間で束ね駆動の対象として同じ電位が与えられる駆動電極Txの組み合わせが第二方向Dxに駆動電極Tx一つ分ずれる。これによって、束ね駆動によって2つの駆動電極Txが1つの駆動電極Txとみなされることによる分解能の低下を補える。従って、信号強度をより高めることによるより高感度な検出と、分解能の低下の抑制とを両立できる。
【0100】
また、所定の行列は、アダマール行列(例えば、アダマール行列Had)であり、当該アダマール行列は、行列方向の要素数が駆動電極Txの数の1/2である。これによって、駆動電極Txの数に応じたアダマール行列を利用して、上述の駆動回路10による駆動電極Txの駆動をより容易に実現できる。
【0101】
また、検出部103が有する信号処理部33は、第一駆動期間における検出電極Rxの出力に対応した数値を第一駆動期間に含まれるフェーズの実施順に列方向に並べた行列(例えば、行列MaA)に上述の所定の行列(例えば、アダマール行列Had)を乗じる演算を含む演算処理で第一行列(例えば、第一行列Ma1)を算出する。また、信号処理部33は、第二駆動期間における検出電極Rxの出力に対応した数値を第二駆動期間に含まれるフェーズの実施順に列方向に並べた行列(例えば、行列MaB)に当該所定の行列を乗じる演算を含む演算処理で第二行列(例えば、第二行列Ma2)を算出する。また、信号処理部33は、当該第一行列に含まれる列と当該第二行列に含まれる列を列方向に交互に並べた第三行列(例えば、第三行列Ma3)を導出し、当該第三行列に基づいて検出領域SAに対する物体の近接を検出する。これによって、第一駆動期間における検出電極Rxの出力に基づいた検出領域SAにおける検出の分解能と、第二駆動期間における検出電極Rxの出力に基づいた検出領域SAにおける検出の分解能と、の組み合わせによる検出の分解能の確保を行える。従って、検出精度を確保できる。
【0102】
また、第一行列(例えば、第一行列Ma1)に含まれる列と第二行列(例えば、第二行列Ma2)に含まれる列のうち、上述の束ね駆動において、隣り合う駆動電極Txと同じ電位で駆動されない第二方向Dxの両端に位置する駆動電極Tx同士の組み合わせ(例えば、Tx座標Aの駆動電極TxとTx座標Hの駆動電極Txとの組み合わせ)に対応する列を第三行列(例えば、第三行列Ma3)に含めない。当該組み合わせは、検出精度の確保に実質的に寄与しないため、当該組み合わせを含めないことによって、信号処理部33の処理負荷を低減できる。
【0103】
また、駆動電極Txの数は、2nである。nは、2以上の自然数である。これによって、駆動電極Txの数に対応したアダマール行列を容易に導出できる。
【0104】
また、第二方向Dxに延出し、第一方向Dyに並ぶ複数の検出電極Rxを備える。これによって、平面視点で駆動電極Txと検出電極Rxとの交差点がマトリクス状に配置された検出領域SAを形成できる。従って、二次元的な検出をより高い感度でより高精度に行える。
【0105】
なお、タッチ検出期間に含まれるフェーズの数は、駆動電極Txの数である。駆動電極Txの数及び検出電極Rxの数は、8に限られるものでない。駆動電極Txの数は、行要素(駆動電極Txの組み合わせ)の数及び列要素(フェーズ)の数がともに2(n-1)のアダマール行列Hadが成立する数(2n)であればよい。検出電極Rxの数は、1以上の自然数であればよい。また、検出電極Rxは、駆動電極Txに対して平面視点で直交する方向に延出していなくてもよい。検出電極Rxは、平面視点で駆動電極Txと交差していればよい。また、複数の検出電極Rxの並び方向は、駆動電極Txの延出方向に限られるものでなく、適宜変更可能である。
【0106】
以下、n=4である場合に、
図8及び
図9を参照して説明したアダマール行列Hadとして採用されるアダマール行列の一例を、
図24及び
図25を参照して説明する。
【0107】
図24及び
図25は、n=4である場合のアダマール行列の一例を示す図である。
図24及び
図25に示すアダマール行列は、行方向が駆動電極Txの並び方向に沿った束ね駆動を適用される2つの駆動電極Txの組み合わせによるTx座標を示し、列方向が第一駆動期間及び第二駆動期間のフェーズ数を示す。
【0108】
図24に示す行列及び
図25に示す行列は、一列目の値の和が2
(n-1)=2
3=8である。また、
図24に示す行列及び
図25に示す行列は、一列目以外の列の値の列単位の和が0である。また、
図24に示す行列及び
図25に示す行列は、行列積が単位行列に8を乗じた行列になる。一般化すると、2以上の自然数のnに基づいた2
(n-1)のアダマール行列は、一列目の値の和が2
(n-1)=2
3=8であり、一列目以外の列の値の列単位の和が0である。また、2
(n-1)のアダマール行列は、行列積が単位行列に2
(n-1)を乗じた行列になる。言い換えれば、このような各列の和と行列積の条件を満たす2
(n-1)のアダマール行列であれば、駆動電極Txの数が2
nである場合のアダマール行列Hadとして採用できる。従って、そのような2
(n-1)のアダマール行列を具体的に生成するためのアルゴリズムは特に限定されるものでない。例えば、
図24に示すアダマール行列は、いわゆるシルベスターの生成法に則ったアダマール行列である。また、
図25に示すアダマール行列は、ペイリーの生成法に則ったアダマール行列(Paley行列)である。
【0109】
また、検出装置100は、平面視点での駆動電極Txと検出電極Rxとの交差位置が形成するマトリクスの精細度に応じた分解能を示す。例えば、当該精細度が指紋の凸凹を十分に検出可能なものであれば、単純な指Finの近接の有無に留まらず、検出装置100で指Finの指紋を検出することもできる。
【0110】
また、上記では、検出装置100が備える複数の駆動電極Txの全てを駆動信号の出力対象としているが、これに限られるものではない。例えば、検出領域SAに設けられた複数の駆動電極Txのうち、一部の駆動電極Txを駆動信号の出力対象とし、当該一部の駆動電極Txと平面視点で交差する検出電極Rxが位置する検出領域SAの一部分を動作させるようにしてもよい。すなわち、物理的に設けられている複数の駆動電極Txの全てを駆動しなければならないわけではなく、フェーズの数を、駆動信号が与えられる駆動電極Txの数に対応した所定回数にすればよい。
【0111】
また、本実施形態において述べた態様によりもたらされる他の作用効果について本明細書記載から明らかなもの、又は当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本開示によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0112】
10 駆動回路
33 信号処理部
100 検出装置
103 検出部
Cap 静電容量
Had アダマール行列
Ma1 第一行列
Ma2 第二行列
Ma3 第三行列
Rx 検出電極
SA 検出領域
Tx 駆動電極