(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155377
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20221005BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20221005BHJP
H01L 21/304 20060101ALN20221005BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/306 K
H01L21/304 643A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058834
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】古矢 正明
(72)【発明者】
【氏名】土持 鷹彬
(72)【発明者】
【氏名】松下 淳
(72)【発明者】
【氏名】小林 浩秋
(72)【発明者】
【氏名】森 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】香川 友耶
【テーマコード(参考)】
5F043
5F131
5F157
【Fターム(参考)】
5F043DD13
5F043EE07
5F043EE08
5F043EE35
5F131AA02
5F131BA18
5F131CA06
5F131EA02
5F131EA24
5F131EB32
5F131EB35
5F131EB72
5F131EB85
5F157AA93
5F157AB02
5F157AB14
5F157AB33
5F157AB90
(57)【要約】 (修正有)
【課題】基板の周方向に亘る処理レートの均一性を向上可能な基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板処理装置は、基板Wの外周縁Weを保持する複数のチャックピン11を有する保持部10と、複数のチャックピン11を、基板Wから離れた開位置と、基板Wの外周縁Weに接して基板Wを保持する閉位置との間で移動させるチャック開閉機構50と、基板Wの外周縁Weに沿う形状の内周縁21と、内周縁21に設けられ、閉位置にあるチャックピン11が入る切欠23とを有し、全周に亘って一体的に形成されたリング部材20と、リング部材20の内周縁21が、基板Wの外周縁Weに近接して囲う接近位置と、リング部材20を基板Wの外周縁Weから退避させる退避位置との間で移動させるリング移動機構60と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の外周縁を保持する複数のチャックピンを有する保持部と、
複数の前記チャックピンを、前記基板から離れた開位置と、前記基板の外周縁に接して前記基板を保持する閉位置との間で移動させるチャック開閉機構と、
前記基板の外周縁に沿う形状の内周縁と、前記内周縁に設けられ、前記閉位置にあるチャックピンが入る切欠とを有し、全周に亘って一体的に形成されたリング部材と、
前記リング部材の内周縁が、前記基板の外周縁に近接して囲う接近位置と、前記リング部材を前記基板の外周縁から退避させる退避位置との間で移動させるリング移動機構と、
前記チャックピン及び前記リング部材を備えるとともに、前記チャックピンに保持された前記基板と、接近位置にあるリング部材とを回転させる回転体と、
前記チャックピンに保持され、前記回転体により回転する前記基板に処理液を供給する供給部と、
を有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記切欠は、前記リング部材を前記接近位置に位置づけたときに、前記チャックピンが入ることができる形状であることを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記リング部材の位置を検出するリング位置検出部と、
前記チャック開閉機構及び前記リング移動機構を制御する制御装置と、
を有し、
前記制御装置は、
前記リング位置検出部によって、前記リング部材が退避位置にあることが検出された状態で、前記チャック開閉機構に前記チャックピンを開位置に移動させることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記チャックピンの位置を検出する開閉検出部を有し、
前記制御装置は、
前記開閉検出部によって、前記チャックピンが閉位置にあることが検出された状態で、前記リング移動機構に前記リング部材を接近位置に移動させることを特徴とする請求項3記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置やフラットパネルディスプレイなどの製造工程においては、ウェーハやガラス基板などの基板の表面に設けられた膜に、エッチング液を供給して所望のパターンを形成している。この様なエッチング処理を行う装置として、回転させた基板の中心領域に、エッチング液を供給する基板処理装置が提案されている。この場合、基板の中心領域に供給されたエッチング液は、遠心力により基板の周縁に向けて広がるので、基板の表面が供給されたエッチング液でエッチング処理されることになる。
【0003】
このような基板処理において、基板の表面に、基板を支持した接触痕などが残ることは、基板の品質低下につながる。また、基板の表面のみならず、基板の裏面に接触痕などが残存することも、基板の品質に影響を与えるために好ましくない。このため、複数の保持部材によって、基板の表面や裏面ではなく外周縁を保持した状態で、基板を回転させながら処理することが行われている。このような保持部材としては、例えば、基板の外周縁に接離する方向に移動する複数のチャックピンが用いられている。
【0004】
ここで、エッチング処理は、エッチング液とエッチング対象となる除去部分との化学反応により行われるため、エッチング液が除去部分に接触している時間を確保する必要がある。この場合、基板の単位時間当たりの回転数を高くすると、エッチング液の排出速度が速くなるので、エッチング反応が進まない。そこで、エッチング処理を行う際には、リンス液などの洗浄液による洗浄処理などの場合に比べて、基板の回転数を低くしている。
【0005】
基板の回転数を低くすれば、エッチング液の排出速度が遅くなるので、エッチング液が除去部分に接触している時間を長くすることができる。これにより、エッチング対象物に対して、エッチング反応を促進することができる。ところが、基板の外周縁の近傍においては、表面張力により、エッチング液が外部に排出され難くなる。しかも、基板の回転数を低くすると、排出方向に働く遠心力が小さくなる。
【0006】
このため、基板からのエッチング液の排出がし難くなり、基板の外周縁の近傍にエッチング液が滞留しやすくなる。つまり、基板の中心領域から外周縁に拡散されるエッチング液は、基板の外周近傍に流れて行くほど、エッチング液の流速が低下してくことになる。これにより、基板の周縁近傍のエッチング液の流速の変化が起きる。この場合、基板の中心領域に供給されたエッチング液は、除去部分との化学反応を行いつつ基板の周縁に向けて流れる。基板の周縁近傍に流れてきたエッチング液は、既に使用されたエッチング液、すなわち、除去部分との反応性能が低下したエッチング液となる。反応性能が低下したエッチング液が、基板の周縁近傍に滞留すると、基板の周縁近傍におけるエッチングレートが低下して、基板の表面におけるエッチングレートの均一性が損なわれることになる。
【0007】
そのため、基板を載置する載置部に凹部を設け、凹部の内部に基板を収納した際に、載置部の凹部が開口する面と、基板の表面(エッチング処理を行う面)とが面一となるようにした基板処理装置が提案されている。載置部の面と基板の表面とが面一となっていれば、基板の表面が実質的に延長されたことになるので、基板の周縁近傍におけるエッチング液の流速の変化を小さくすることができる。そのため、基板の周縁近傍に流れてきたエッチング液を載置部の面に排出するのが容易となる。このようにすれば、反応性能が低下したエッチング液が、基板の周縁近傍に滞留するのを抑制することができるので、基板の表面におけるエッチングレートの均一性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、一般的には、エッチング処理に続けて、リンス液などの洗浄液による洗浄処理が行われる。例えば、前述した基板処理装置においては、凹部となっている内部を有する載置部に基板を収納した状態で、基板の中心領域にリンス液などの洗浄液が供給されて、基板の処理が行われる。
【0010】
この基板処理では、基板の裏面が載置部に接地した状態で行われるため、基板の裏面の洗浄度が損なわれることが考えらえる。さらに、ロボットハンドで基板を載置部に搬入する時や載置部から基板を搬出するためには、載置部に基板を昇降させる機構が必要となってしまう。すると、基板の裏面に対して、基板を昇降させるための昇降ピン等を接触させて基板を昇降させる必要があるため、基板の裏面に対しての洗浄度に影響を及ぼすことになる。
【0011】
このため、エッチングレートの均一性を向上させることができ、且つ、基板の裏面の清浄度を向上させることができる基板処理装置の開発が望まれていた。
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、基板の周方向に亘る処理レートの均一性を向上させることができる基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の基板処理装置は、基板の外周縁を保持する複数のチャックピンを有する保持部と、複数の前記チャックピンを、前記基板から離れた開位置と、前記基板の外周縁に接して前記基板を保持する閉位置との間で移動させるチャック開閉機構と、前記基板の外周縁に沿う形状の内周縁と、前記内周縁に設けられ、前記閉位置にあるチャックピンが入る切欠とを有し、全周に亘って一体的に形成されたリング部材と、前記リング部材の内周縁が、前記基板の外周縁に近接して囲う接近位置と、前記リング部材を前記基板の外周縁から退避させる退避位置との間で移動させるリング移動機構と、前記チャックピン及び前記リング部材を備えるとともに、前記チャックピンに保持された前記基板と、接近位置にあるリング部材とを回転させる回転体と、前記チャックピンに保持され、前記回転体により回転する前記基板に処理液を供給する供給部と、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、基板の周方向に亘る処理レートの均一性を向上可能な基板処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態の基板処理装置の構成を示す図である。
【
図2】
図1の基板処理装置の内部構造を示す斜視図である。
【
図4】基板の外周縁近傍の処理液の流れを示す説明図である。
【
図5】チャックピンが開位置、リング部材が退避位置にある場合の回転カバー内の垂直断面図である。
【
図6】チャックピンが閉位置、リング部材が退避位置にある場合の回転カバー内の垂直断面図である。
【
図7】チャックピンが閉位置、リング部材が接近位置にある場合の回転カバー内の垂直断面図である。
【
図8】チャックピンが閉位置にある場合の開閉機構を示す斜視図である。
【
図9】リング部材が接近位置にある場合のリング移動機構を示す斜視図である。
【
図11】開閉検出部を示す斜視図(A)、検出位置を示す説明図(B)である。
【
図12】基板処理の手順を示すフローチャートである。
【
図13】リング部材の切欠と保持部の溝の位置を示す斜視図である。
【
図14】偏心旋回型の保持部材の動作を示す平面図である。
【
図15】偏心旋回型の保持部材のチャックピンとリング部材の切欠の位置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
[概要]
図1に示すように、本実施形態の基板処理装置1は、基板Wを保持して回転させながら処理する装置である。処理対象となる基板Wは、例えば、半導体装置やフラットパネルディスプレイなどの微細構造体の製造工程において使用されるウェーハやガラス基板などである。基板処理装置1による処理は、例えば、基板Wを回転させながら処理液を供給して処理するウェット処理である。このように基板Wの処理対象となる面を表面とし、その反対側の面を裏面とする。本実施形態のウェット処理は、基板Wの表面に設けられた膜を、薬液によりエッチングするエッチング処理、洗浄液により洗浄する洗浄処理を含む。
【0017】
基板処理装置1は、保持部10、リング部材20を有する。保持部10は、基板Wの外周縁Weを保持するチャックピン11を有する複数の部材である。リング部材20は、全周に亘って一体的に形成された環状であり、
図2に示すように、基板Wの外周縁Weに沿う形状の内周縁21を有する。つまり円形の基板Wに対して円形の内周縁21を有する。基板Wの外周縁Weが描く円の径よりも、リング部材20の内周縁21が描く円の径が僅かに大きい。つまり、内周縁21に外周縁Weが入った時に、両者の間に若干の隙間ができる。内周縁21には、
図3に示すように、基板Wを保持しているチャックピン11が入る切欠23が設けられている。リング部材20における基板Wの表面側の面を、リング部材20の表面として、その反対側の面を裏面とする。
【0018】
また、
図1~
図3に示すように、基板処理装置1は、回転体30、回転機構40、チャック開閉機構50、リング移動機構60、供給部70、検出部80、制御装置90を有する。回転体30は、保持部10及びリング部材20を備えるとともに、チャックピン11に保持された基板Wと、リング部材20とを回転させる。回転機構40は、回転体30を回転させる機構である。
【0019】
チャック開閉機構50は、複数のチャックピン11を、基板Wから離れた開位置と、基板Wの外周縁Weに接して基板Wを保持する閉位置との間で移動させる。リング移動機構60は、リング部材20の内周縁21が、基板Wの外周縁Weに近接して囲う接近位置と、リング部材20を基板Wの外周縁Weから退避させる退避位置に移動させる。
図4(A)、(B)に示すように、接近位置は、処理液Lの多くが落下しない程度まで、基板Wの外周縁Weとリング部材20の内周縁21とが非接触で接近していることをいう。つまり、リング部材20が接近位置にあることにより、その内周縁21に基板Wの外周縁Weが入った時にできる若干の隙間は、基板Wの表面上で外周縁Weに到達した処理液Lが、リング部材20の内周縁21に容易に到達(接触)できる隙間である。本実施形態では、リング部材20の上面と、接近位置にある基板Wの表面とが面一になるように設定されている。なお、基板Wの表面上で外周縁Weに到達した処理液Lが、リング部材20の内周縁21に容易に到達(接触)できる隙間があればよいため、必ずしも、面一でなくてもよい。例えば、リング部材20が基板Wより低い位置に位置づけられても良い。
【0020】
基板Wによって外周縁Weの形状が異なるため、基板Wの上面とリング部材20の上面との間に溝や段差が生じていてもよい。例えば、ベベル加工による面取りの形状や傾斜角度等が異なるので、僅かな溝は生じる。
図4(B)に示すように、このような溝が処理液Lによって埋まる状態が生じることにより、液漏れが防止できるとともに、連続した液面が形成されて外側へ流れる。
【0021】
図1に示すように、供給部70は、チャックピン11に保持され、回転体30により回転する基板Wに処理液を供給する。検出部80は、リング部材20及びチャックピン11の位置を検出する(
図2、
図10、
図11参照)。制御装置90は、検出部80によりリング部材20が退避位置にあることが検出された状態で、チャック開閉機構50にチャックピン11を移動させる。
【0022】
[構成]
(回転体)
回転体30は、
図1、
図5~
図7に示すように、回転カバー31、回転ベース32、接続筒33を有する。回転カバー31は、一端がテーブル31aによって塞がれた円筒形状である。テーブル31aは、基板Wよりも大きな径の円形の面である。
図1に示すように、回転カバー31の側面31bには、処理液を排出する貫通孔である排出口31cが形成されている。なお、
図5~
図7は、回転カバー31内について回転軸Aを含む垂直面で切断した断面図である。各図の右側がチャック開閉機構50の断面を示し、左側がリング移動機構60の断面を示す。チャック開閉機構50は、後述するようにチャックピン11が6つ設けられる場合、6か所で同じ断面となり、リング移動機構60は、後述するように昇降軸68が3つ設けられる場合、3か所で同じ断面となる。
【0023】
また、テーブル31aには、貫通孔31dが、基板Wの周囲に沿って等間隔で複数設けられている。貫通孔31dの周縁には、上方に向かって突出した筒状の環状壁31eが立設されている。本実施形態では、貫通孔31dが60度間隔で6つ設けられている。貫通孔31dには、それぞれ保持部10が配設されているため、保持部10は基板Wの周囲に沿って等間隔で配置される。
【0024】
また、テーブル31aには、貫通孔31fが、基板Wの周囲に沿って複数設けられている。貫通孔31fの周縁には、上方に向かって突出した筒状の環状壁31gが立設されている。本実施形態では、貫通孔31fは120度間隔で3つ設けられている。貫通孔31fには、それぞれリング部材20を昇降させる昇降軸68が配置される。
【0025】
回転ベース32は、テーブル31aの下面に取り付けられ、テーブル31aと同軸の円板形状の部材である。回転カバー31、回転ベース32は同軸に設けられている。この軸は、回転の中心となる回転軸Aである。なお、
図1及び
図2に示すように、回転体30は、図示しない設置面に設置された架台に固定されたベース部B上(
図2参照)に、回転機構40によって回転可能に設けられている。
【0026】
(回転機構)
回転機構40は、回転体30を回転させる機構である。回転機構40は、
図1、
図2、
図5~
図7に示すように、駆動源41、接続筒33を有する。駆動源41は、中空の回転子とこれを回転させる固定子を有する中空モータであり、ベース部Bに固定されている。接続筒33は、回転ベース32のテーブル31aの反対側に同軸に接続された筒状体である。接続筒33の下端は、駆動源41の回転子に接続されている。駆動源41は、固定子のコイルに通電することにより、回転子とともに接続筒33が回転するので、回転ベース32とともに回転カバー31が、回転軸Aを中心に回転する。
【0027】
(保持部)
保持部10は、
図1に示すように、テーブル31aと平行に且つ間隔を空けて、基板Wを保持する。保持部10は、
図5~
図7に示すように、チャックピン11に加えて、カバー12、チャック部13、回動軸14、アーム15を有する。カバー12は、テーブル31aの貫通孔31dを覆う位置に、それぞれ配置された円柱形状の部材である。カバー12は、環状壁31eを、隙間を空けて覆うように収容する環状溝12aを有している。これにより、環状壁31eと環状溝12aとの間に、屈曲した経路であるラビリンス構造が形成され、処理液が、貫通孔31dを通って回転体30の内部に流入することが抑制される。
【0028】
図3に示すように、チャック部13は楔形であり、カバー12の上面に、それぞれの楔形の先鋭化した先端が、回転軸Aに向かうように立ち上げられている。チャック部13の上面に、チャックピン11が設けられている。チャックピン11は、下方が縮径した円錐台形状である。
【0029】
チャックピン11は、保持部10の回動に従って、基板Wの外周縁Weから離れた開位置(
図5参照)と、基板Wの外周縁Weに接して基板Wを保持する閉位置(
図6及び
図8参照)との間で移動する。これにより、等間隔で複数のチャックピン11が基板Wの周囲に沿って配置される。本実施形態では、60度間隔で6つのチャックピン11が配置される。
【0030】
なお、チャックピン11は、保持部10の一部であって、基板Wの外周縁Weに接して基板Wを保持できる面を有する部分であればよい。このため、回転対称性を有する円柱、角柱、錐体を含むが、これらの形状には限定されない。閉位置において、基板Wの表面及び裏面に非接触で影響を与えず、処理液の流動に対する影響を抑えた高さとなる好ましい。
【0031】
回動軸14は、保持部10の回動の軸である。回動軸14は、貫通孔31dの内部に、回転体30の回転円の接線方向に設けられている。この回動軸14を軸に保持部10が回動することにより、チャックピン11は、基板Wの外周縁Weに直交する方向に移動する。つまり、チャックピン11は、基板Wの外周縁Weに対して接したり、離れたりするように移動可能とする。アーム15は、回転体30の内部に、回動軸14の下方から回転軸Aに向かって延びた部材である。アーム15の下端は、チャック開閉機構50に連結されている。
【0032】
(チャック開閉機構)
チャック開閉機構50は、
図2、
図5~
図7に示すように、開閉シリンダ51、開閉レバー52、開閉リフタ53、開閉カムフォロア54、開閉シャフト55、開閉リング56を有する。開閉シリンダ51は、駆動ロッドが鉛直方向の下方に向かうように、ベース部Bの下部に固定されている。開閉レバー52は、ベース部Bに支点52aを中心に回動可能に設けられた部材である。開閉レバー52の端部は、開閉シリンダ51の駆動ロッドに回動可能に連結されている。開閉レバー52は、駆動源41を囲うようにコの字形状になっている。開閉レバー52は、2つを1対とする開閉リフタ53と連結されている。
【0033】
1対の開閉リフタ53は、ベース部Bに昇降可能に設けられている。各開閉リフタ53は、コの字状の開閉レバー52の両端が回動可能に連結されている。このため、開閉シリンダ51の駆動ロッドの移動に従って、開閉レバー52が回動し、1対の開閉リフタ53が昇降する。開閉カムフォロア54は、開閉リフタ53の上部に設けられ、ベース部Bの上部に突出している。開閉カムフォロア54は、水平方向の軸を中心に回動するローラを有し、開閉リフタ53によって昇降する。つまり、1つの開閉シリンダ51で、2つの開閉リフタ53、2つの開閉カムフォロア54を昇降させる。
【0034】
開閉シャフト55は、回転体30の内部において、接続筒33の周囲に固定された固定リング55aに、鉛直方向に固定された棒状の部材である。開閉リング56は、回転体30の内部に、昇降可能に設けられたリング状の部材である。開閉リング56は、
図8に示すように、スライダ56a、連結部56b、バネ56cを有する。スライダ56aは、円柱形状で、中が空洞になっている。このスライダ56aの空洞に、開閉シャフト55が挿通され、開閉シャフト55に沿ってスライダ56aが昇降する。開閉リング56は、スライダ56aに連結部56bを介して固定されているため、スライダ56aと一体で上下に移動する。連結部56bは、その上端が、アーム15の下端に連結されている。つまり、アーム15の下端には横長の孔15aが形成されており、この孔15aに連結部56bの軸56dが挿通されることにより、連結部56bとアーム15が連結されている。バネ56cは、スライダ56aを下方に付勢する付勢部材である。つまり、バネ56cによって、スライダ56aを介して開閉リング56自体も、下方に付勢される。
【0035】
開閉リング56は、昇降する開閉カムフォロア54に接離する。このため、
図5に示すように、開閉カムフォロア54が開閉リング56に接して上昇するときには、バネ56cの付勢力に抗して開閉リング56が上昇して、保持部10が回動軸14を中心に回動して、チャックピン11が開位置に移動する。
図6及び
図7に示すように、開閉カムフォロア54が下降して開閉リング56から離れると、バネ56cの付勢力によって開閉リング56が下降して、保持部10が回動軸14を中心に回動して、チャックピン11が閉位置に移動する。
【0036】
(リング部材)
リング部材20は、上記のように、一体的に形成された環状の部材である。一体的に形成されているとは、周方向に亘って隙間なく連続していることをいう。例えば、共通の材料により継ぎ目なく形成されていてもよいし、複数の部材を固定的に接続することにより形成されていてもよい。
図4に示すように、リング部材20の表面は、接近位置において、基板Wの表面と面一となっている。
【0037】
図2に示すように、リング部材20の外径は、基板Wの外径よりも大きい。この場合、リング部材20の内径は、内周縁21に基板Wの外周縁Weが入り込んで互いが近接する程度の径である。リング部材20は、後述する昇降軸68によって支持され、回転体30の回転軸Aと同軸に配置されている。
【0038】
図3に示すように、リング部材20の内周縁21には、複数のチャックピン11に対応して、複数の切欠23が設けられている。つまり、リング部材20の内周縁21には、基板Wの外周縁Weに沿って等間隔に、6つの切欠23が設けられている。この切欠23には、
図3に示すように、閉位置にあるチャックピン11が非接触で入ることにより、チャックピン11とリング部材20との干渉を避ける逃げ部として機能する。切欠23は、リング部材20を接近位置に位置づけたときに、チャックピン11が入ることができる形状である。本実施形態では、切欠23がU字形の例を示すが、このような形状には限定されない。
【0039】
本実施形態の切欠23は、内周縁21側が外周縁縁側よりも狭くなっている。これにより、切欠23とチャックピン11との隙間が狭くなるので、基板W上を処理液が流れてリング部材20の表面に流出するときに、チャックピン11と切欠23との間に処理液が入り込むことを極力少なくすることができるため、チャックピン11の周辺の流れを、他の箇所の流れと同様にすることができ、処理の不均一を低減できる。
【0040】
(リング移動機構)
リング移動機構60は、
図2、
図5~
図7に示すように、昇降シリンダ61、昇降レバー62、昇降リフタ63、昇降カムフォロア64、昇降シャフト65、第1昇降リング66、第2昇降リング67、昇降軸68、昇降リンク69を有する。
【0041】
昇降シリンダ61は、駆動ロッドが鉛直方向の下方に向かうように、ベース部Bの下部に固定されている。昇降レバー62は、ベース部Bに支点(図示せず)を中心に回動可能に設けられたプレートである。昇降レバー62の端部は、昇降シリンダ61の駆動ロッドに回動可能に連結されている。昇降レバー62は、駆動源41を囲うようにコの字形状になっている。昇降レバー62は、2つを一対とする昇降リフタ63と連結されている。
【0042】
1対の昇降リフタ63は、
図2に示す1対の開閉リフタ53の隣に、開閉リフタ53と同様にベース部Bに昇降可能に設けられている。各昇降リフタ63は、コの字状の昇降レバー62の両端が回動可能に連結されている。このため、昇降シリンダ61の駆動ロッドの移動に従って、昇降レバー62が回動し、1対の昇降リフタ63が昇降する。昇降カムフォロア64は、昇降リフタ63の上部に設けられ、ベース部Bの上部に突出している。昇降カムフォロア64は、水平方向の軸を中心に回動するローラを有し、昇降リフタ63によって昇降する。つまり、1つの昇降シリンダ61で、2つの昇降リフタ63、2つの昇降カムフォロア64を昇降させる。
【0043】
昇降シャフト65は、回転体30の内部において、固定リング55aに、鉛直方向に固定された棒状の部材である。第1昇降リング66は、回転体30の内部に、昇降可能に設けられたリング状の部材である。第1昇降リング66は、
図9に示すように、スライダ66a、バネ66bを有する。スライダ66aは、円柱形状で、中が空洞になっている。このスライダ66aの空洞に、昇降シャフト65が挿入され、昇降シャフト65に沿ってスライダ66aが昇降する。バネ66bは、スライダ66aを下方に付勢する付勢部材である。
【0044】
第2昇降リング67は、基板Wよりも大きな径のリング状の部材である。昇降軸68は、鉛直方向のシャフトであり、その下端は、第2昇降リング67に連結されている。昇降軸68の上端は、貫通孔31fに挿通されて、テーブル31aの上部に突出し、リング部材20の下面を支持している。これにより、等間隔で複数の昇降軸68が、基板Wの周囲に沿って配置されることで、リング部材20と第2昇降リング67は一体で昇降移動する。本実施形態では、120度間隔で3つの昇降軸68が配置される。また、3つの昇降軸68が常に平行を保って、回転軸Aに平行な方向に沿って移動するように、テーブル31aにスライド可能に取り付けられている。
【0045】
昇降軸68の上端は、貫通孔31fを覆う円柱形状となっていて、その内部には、環状壁31gに対して隙間を空けて覆うように収容する環状溝68aを有している。これにより、環状壁31gと環状溝68aとの間に、屈曲した経路であるラビリンス構造が形成され、処理液が、貫通孔31fを通って回転体30の内部に流入することが抑制される。
【0046】
昇降リンク69は、回転体30の内部に、回転ベース32から拡張された支持部材に回動可能に設けられている。昇降リンク69は、その中心に支点軸69cが設けられている。この支点軸69cを軸として、昇降リンク69が回動可能に設けられている。支点軸69cは、回転ベース32の底面から下方に延びるように設けられた支柱32aに設けられている。昇降リンク69の一端は、昇降軸68の下端にピン69aを介して回動可能に連結され、他端は、第1昇降リング66のスライダ66aに、ピン69bを介して回動可能に連結されている。
【0047】
第1昇降リング66は、昇降カムフォロア64に接離する。このため、
図5及び
図6に示すように、昇降カムフォロア64が第1昇降リング66に接して上昇するときには、バネ66bの付勢力に抗して第1昇降リング66が上昇して、昇降リンク69が回動して、昇降軸68が下降するので、リング部材20が下降して退避位置に移動する。
図7に示すように、昇降カムフォロア64が下降して第1昇降リング66から離れると、バネ66bの付勢力によって第1昇降リング66が下降して、昇降リンク69が回動して、昇降軸68が上昇するので、リング部材20が上昇して接近位置に移動する。
【0048】
リング部材20が接近位置にある場合には、
図3に示すように、チャックピン11が切欠23に入るので、チャックピン11との干渉が回避できる。また、
図5に示すように、リング部材20が退避位置にある場合には、リング部材20と基板Wとの間に、搬送ロボットのロボットハンドが挿入可能な隙間hが形成されるように、昇降軸68の高さが設定されている。この隙間hが形成されることにより、ロボットハンドを挿入して、基板Wをセットする動作と、ロボットハンドを抜き取る動作が可能となる。
【0049】
なお、開閉カムフォロア54、昇降カムフォロア64よりも上方の機構と接続筒33が、駆動源41の回転子によって回転する構造となっている。回転体30の回転時には、開閉カムフォロア54と開閉リング56、昇降カムフォロア64と第1昇降リング66とは非接触となる。
【0050】
(供給部)
供給部70は、
図1に示すように、基板Wの表面、つまり保持部10に保持された基板Wのテーブル31aと反対側の面に、処理液を供給する。供給部70は、処理液供給機構71、処理液保持部72、昇降機構73、加熱部74を有する。
【0051】
処理液供給機構71は、複数種の処理液を供給する機構である。本実施形態では、例えば、処理液として純水(H2О)、リン酸(H3PO4)を含む水溶液(以下、リン酸溶液とする)、フッ化水素(HF)を含む水溶液(以下、フッ酸溶液とする)を供給する。処理液供給機構71は、それぞれの処理液を貯留する処理液槽71aを有している。
【0052】
各処理液槽71aからは、個別送通管71bが並列的に処理液供給管71cに結合されている。処理液供給管71cは、その先端部が保持部10に保持された基板Wに対向している。これにより、各処理液槽71aからの処理液は、個別送通管71b及び処理液供給管71cを介して、基板Wの表面に供給される。各個別送通管71bには、それぞれ流量調整バルブ71d、流量計71eが設けられている。
【0053】
処理液保持部72は、基板Wよりも大径の円形であり、周縁部に回転体30と反対側に立ち上がった壁が形成されることにより、盆形状をなしている。処理液保持部72の外底面は、基板Wに対向している。処理液保持部72には、処理液供給管71cの先端が挿通されて、基板W側に露出する吐出口72aが形成されている。
【0054】
昇降機構73は、処理液保持部72を、基板Wに対して接離する方向に移動させる機構である。昇降機構73としては、例えば、シリンダ、ボールねじ機構など、回転体30の軸に平行な方向に処理液保持部72を移動させる種々の機構を適用可能であるが、詳細は省略する。
【0055】
加熱部74は、供給部70により基板Wの表面上に供給された処理液を加熱する。加熱部74は、処理液保持部72の基板Wに対向する面と反対側の面に設けられたヒータ741を有する。ヒータ741は、円形のシート状である。ヒータ741には、処理液供給管71cが挿通された貫通孔741aが形成されている。
【0056】
(検出部)
検出部80は、
図10に示すように、開閉検出部81、リング位置検出部82を有する。開閉検出部81は、ベース部B上における開閉リング56の近傍に設けられている。リング位置検出部82は、ベース部B上における第1昇降リング66の近傍に設けられている。開閉検出部81、リング位置検出部82は、それぞれ対向する透光部と受光部を有する透過型の光センサである。開閉検出部81、リング位置検出部82は、受光部の受光窓における透過光検出エリア83(
図11(B)参照)に対する光量に比例した電気信号を出力することによって、透光部と受光部との間の部材の位置を検出できる。
【0057】
開閉検出部81は、
図11(A)に示すように、透光部と受光部との間に、開閉リング56が介在する位置に配置されている。開閉リング56の高さが変化すると、遮蔽される光量が変化するので、開閉検出部81の出力が変化する。開閉リング56の高さによって、チャックピン11が閉位置と開位置のいずれにあるかが決まるので、開閉検出部81の出力によって、チャックピン11の位置が検出できる。
【0058】
リング位置検出部82は、透光部と受光部との間に、第1昇降リング66が介在する位置に配置されている。第1昇降リング66の高さが変化すると、遮蔽される光量が変化するので、リング位置検出部82の出力が変化する。第1昇降リング66の高さによって、リング部材20が接近位置と退避位置のいずれにあるかが決まるので、リング位置検出部82の出力によって、リング部材20の位置が検出できる。
【0059】
例えば、
図11(B)に示すように、受光部の透過光検出エリア83に対して、開閉リング56の底部がaの実線の位置にある場合には、チャックピン11は開位置にあることを示す。開閉リング56の底部がbの点線の位置にある場合には、チャックピン11は閉位置にあり、正常に基板Wを保持していることを示す。なお、bの位置は所定の幅w(許容範囲)を有する。開閉リング56の底部がcの一点鎖線の位置にある場合には、チャックピン11は閉位置を超えて移動しているので、基板Wを保持できていない空振り状態であることを示す。
【0060】
(制御装置)
制御装置90は、基板処理装置1の各部を制御する。制御装置90は、基板処理装置1の各種の機能を実現するべく、プログラムを実行するプロセッサと、プログラムや動作条件などの各種情報を記憶するメモリ、各要素を駆動する駆動回路を有する。つまり、制御装置90は、回転機構40、チャック開閉機構50、リング移動機構60、処理液供給機構71、昇降機構73、加熱部74などを制御する。また、制御装置90は、情報を入力する入力装置、情報を表示する表示装置を有している。
【0061】
本実施形態では、制御装置90は、開閉検出部81によってチャックピン11が閉位置にあることが検出された状態で、リング移動機構60にリング部材20を接近位置に移動させる。また、制御装置90は、リング位置検出部82によって、リング部材20が退避位置にあることが検出された状態で、チャック開閉機構50にチャックピン11を開位置に移動させる。
【0062】
[動作]
以上のような本実施形態の基板処理装置1の動作を、上記の
図1~
図11に加えて、
図12のフローチャートを参照して説明する。なお、以下のような手順により基板を処理する基板処理方法も、本実施形態の一態様である。
【0063】
まず、
図1に示すように、供給部70の処理液保持部72は上方の待機位置にあり、チャックピン11は開位置にあり、リング部材20は退避位置にある(
図5の状態)。この状態で、搬送ロボットのロボットハンドに搭載された基板Wが、処理液保持部72と回転体30との間に搬入されると(ステップS01)、開閉シリンダ51が作動して、開閉カムフォロア54を下降させることにより、バネ56cの付勢力によって保持部10を回動させて、複数のチャックピン11を閉位置に移動させる(ステップS02)。
【0064】
開閉検出部81によって、チャックピン11が、基板Wの外周縁Weを正常に保持する閉位置にあると検出された場合には(ステップS03のYES)(
図6の状態)、昇降シリンダ61が作動して、昇降カムフォロア64を下降させることにより、バネ66bの付勢力によって昇降軸68を上昇させて、リング部材20を接近位置に移動させる(ステップS04)(
図7の状態)。チャックピン11が正常位置にないことが検出された場合には(ステップS03のNO)、異常があったとして装置を停止する。例えば、チャックピン11が、基板Wの外周縁Weに接することができず、内周側に行き過ぎてしまった場合を検出して停止する。
【0065】
リング位置検出部82によって、リング部材20が接近位置にあると検出された場合には(ステップS05のYES)、駆動源41が作動して回転体30が回転を開始する(ステップS06)。回転体30は、比較的低速な所定速度(例えば、50rpm程度)し、基板Wが保持部10とともに前記所定速度にて回転する。リング部材20が正常位置にないことが検出された場合には(ステップS05のNO)、異常があったとして装置を停止する。例えば、リング部材20が、基板Wの外周縁Weに接してしまって、正常な高さまで上昇できなかった場合を検出して停止する。
【0066】
処理液保持部72の吐出口72aから、エッチング液が、処理液保持部72と基板Wの表面との間の隙間に供給される(ステップS07)。つまり、回転する基板Wの表面にフッ酸溶液が供給されると、そのエッチング液が基板Wの外周縁Weに向けて順次移動するため、基板Wの表面がエッチングされて、酸化膜、有機物が除去される。なお、基板Wの外周縁Weに向かって流れ出す処理液は、
図4(A)、(B)に示すように、基板Wの外周縁Weからリング部材20の表面を流れて、チャックピン11の隙間から外部に排出される。
【0067】
このとき、基板Wの表面が実質的に延長されることになり、基板Wの周縁近傍における流速の変化が小さくなるので、エッチング液が、基板Wの周辺近傍に滞留し難くなり、エッチング液の排出が促進される。さらに、
図3に示すように、チャックピン11が切欠23に入っているので、チャックピン11の周囲を囲むように、基板Wの表面とリング部材20の表面が存在することによって、チャックピン11の周囲の隙間が低減されるので、基板Wの周縁端からチャックピン11に流れる液体は、チャックピン11の周囲のリング部材20の表面へ排出される。このため、チャックピン11による液流れのせき止め効果が低減される。
【0068】
次に、処理液保持部72は、エッチング液の供給を停止して(ステップS08)、吐出口72aから、純水を処理液保持部72と基板Wの表面との間の隙間に供給する(ステップS09)。回転する基板Wの表面に純水が供給されると、その純水が基板Wの外周縁Weに向けて順次移動することにより、基板Wの表面のフッ酸が洗い流される。リング部材20によって流れが促進される作用は、上記と同様である。そして、処理液保持部72は、純水の供給を停止する(ステップS10)。
【0069】
処理液保持部72は下降してヒータ741を基板Wに近づけて(ステップS11)、リン酸溶液を処理液保持部72と基板Wの表面との間の隙間に供給する(ステップS12)。このように、処理液保持部72と基板Wの表面との間に供給されるリン酸溶液は、ヒータ741によって加熱される処理液保持部72によって加熱されて高温となっている。
【0070】
この状態で、リン酸溶液が処理液保持部72の吐出口72aから連続的に供給されると、基板Wの表面に、リン酸溶液が基板Wの外周縁Weに向けて順次移動することにより、基板Wの表面の純水がリン酸によって置換されつつ、エッチングにより窒化膜が除去される。リング部材20によって流れが促進される作用は、上記と同様である。
【0071】
次に、処理液保持部72はリン酸溶液の供給を停止して上昇し(ステップS13)、純水を、吐出口72aから処理液保持部72と基板Wの表面との間の隙間に供給する(ステップS14)。回転する基板Wの表面に純水が供給されると、その純水が基板Wの外周縁Weに向けて順次移動することにより、基板Wの表面のリン酸が洗い流される。リング部材20によって流れが促進される作用は、上記と同様である。そして、所定の洗浄時間が経過すると、処理液保持部72は、純水の供給を停止する(ステップS15)。そして、処理液保持部72が上昇して(ステップS16)、駆動源41が停止して回転体30が回転を停止することにより、基板Wが停止する(ステップS17)。
【0072】
その後、昇降シリンダ61が作動して、バネ66bの付勢力に抗して昇降カムフォロア64を上昇させることにより、昇降軸68を下降させて、リング部材20を退避位置に移動させる(ステップS18)。
【0073】
リング位置検出部82によって、リング部材20が退避位置にあると検出された場合には(ステップS19のYES)、ロボットハンドを基板Wの下部に挿入するとともに、開閉シリンダ51が作動して、バネ56cの付勢力に抗して開閉カムフォロア54を上昇させることにより、保持部10を回動させて、複数のチャックピン11を開位置に移動させる(ステップS20)。
【0074】
そして、開閉検出部81によって、チャックピン11が正常な開位置にあることが検出された場合に(ステップS21のYES)、ロボットハンドによって基板Wを搬出する(ステップS22)。リング部材20が退避位置にないことが検出された場合には(ステップS19のNO)、チャックピン11を開位置に移動させることなく、装置を停止する。チャックピン11が正常な開位置にないことが検出された場合に(ステップS21のNO)、装置を停止する。
【0075】
なお、開閉検出部81、リング位置検出部82は、常時検出を行うことにより、シーケンス動作中(ステップS05~S09)に異常が生じた場合、制御装置90は基板処理を中止する。つまり、制御装置90は、チャックピン11の閉位置とリング部材20の接近位置とがともに正常範囲の場合にのみ、基板Wの回転を開始して処理を実施する。さらに、処理中に開閉検出部81、リング位置検出部82からの出力が正常範囲から外れた場合には、制御装置90は、即座に装置の停止などの対応を行う。
【0076】
[効果]
(1)以上のような本実施形態の基板処理装置1は、基板Wの外周縁Weを保持する複数のチャックピン11を有する保持部10と、複数のチャックピン11を、基板Wから離れた開位置と、基板Wの外周縁Weに接して基板Wを保持する閉位置との間で移動させるチャック開閉機構50と、基板Wの外周縁Weに沿う形状の内周縁21と、内周縁21に設けられ、閉位置にあるチャックピン11が入る切欠23とを有し、全周に亘って一体的に形成されたリング部材20と、基板処理装置1は、リング部材20の内周縁21が、基板Wの外周縁Weに近接して囲う接近位置と、リング部材20を基板Wの外周縁Weから退避させる退避位置との間で移動させるリング移動機構60とを有する。
【0077】
さらに、基板処理装置1は、チャックピン11及びリング部材20を備えるとともに、チャックピン11に保持された基板Wと、接近位置にあるリング部材20とを回転させる回転体30と、チャックピン11に保持され、回転体30により回転する基板Wに処理液を供給する供給部70とを有する。
【0078】
このため、基板Wの裏面を載置面や昇降ピンに接触させることなく、基板Wの外周縁Weをチャックピン11で保持しながら処理することにより、基板Wの面の清浄度を保ちつつ、基板Wの周縁近傍における処理液の流量の変化を小さくして処理レートの均一性を向上させることができる。接近位置において、チャックピン11は切欠23に入るので、チャックピン11の周囲が、基板Wの表面とこれを拡張したリング部材20の表面に囲まれることになる。このため、チャックピン11の周辺部と周辺部以外の部分との相違を低減することができ、基板Wの周縁近傍における処理液の流れが促進される。このため、チャックピン11の影響を受け難くなり、周方向の処理レートとの均一性を改善できる。
【0079】
また、リング移動機構60は一体的なリング部材20を移動させればよいため、分割された制御体を独立に駆動する場合に比べて、基板Wに対するリング部材20の位置合わせが容易となり、複数の部分を同期させる必要もない。さらに、ロボットハンドが基板Wの下部の隙間に侵入することができるので、基板Wの搬出入も容易となる。
【0080】
(2)チャックピン11は、基板Wの外周縁Weに直交する方向に移動することにより、開位置と閉位置との間を移動可能に設けられている。チャックピン11が、基板Wの外周縁Weに直交する場合に、閉位置のチャックピン11が切欠23に入るため、リング部材20の昇降と干渉しない。
【0081】
(3)リング部材20の位置を検出するリング位置検出部82と、チャック開閉機構50及びリング移動機構60を制御する制御装置90と、を有し、制御装置90は、リング位置検出部82によって、リング部材20が退避位置にあることが検出された状態で、チャック開閉機構50にチャックピン11を開位置に移動させる。チャックピン11の開位置への動作に、リング部材20が干渉することを防止できる。
【0082】
(4)チャックピン11の位置を検出する開閉検出部81を有し、制御装置90は、開閉検出部81によって、チャックピン11が閉位置にあることが検出された状態で、リング移動機構60にリング部材20を接近位置に移動させる。このため、リング部材20の接近位置への移動に、保持部10が干渉することを防止できる。また、基板Wの保持の異常を検出して、安全に停止させることができる。
【0083】
[変形例]
(1)保持部10に、チャックピン11が開位置にある場合に、退避位置にあるリング部材20の切欠23に入り込む溝13aが設けられていてもよい。例えば、
図13(A)に示すように、チャック部13の外周側に、窪んだ溝13aが形成されている。これにより、
図13(B)、(C)に示すように、チャックピン11が開位置に移動するために保持部10が回動した際に、溝13aはリング部材20との干渉を回避する逃げ部として機能する。これにより切欠23の湾曲した部分を浅くしても、チャックピン11の開位置への移動量を確保して、搬入搬出時の基板Wとチャックピン11の干渉を防止できる。したがって、切欠23により発生するチャックピン11とリング部材20との隙間を小さくすることができ、処理液の流れに対する影響を抑えることができる。つまり、なるべくチャックピン11とリング部材20との隙間を小さくすることで、処理液が、リング部材20の裏面に回り込まないようにすることができる。このため、リング部材20の裏面側及び基板Wの裏面側に対して、処理液が落下することを最小限にして、基板Wの裏面側の清浄度を担保することができる。
【0084】
(2)チャックピン11は、回転体30の回転軸Aに平行な軸回りに回動することにより、開位置と閉位置との間を移動可能に設けられた偏心旋回型であってもよい。例えば、
図14に示すように、カバー12の回動に従って、チャックピン11が、基板Wの縁部に接することにより基板Wを保持する閉位置(
図14(A)参照)と、基板Wの縁部から離れることにより基板Wを開放する開位置(
図14(B)参照)との間を移動する構成としてもよい。
【0085】
このようなチャック開閉機構50は、例えば、駆動軸531、小ギヤ532、大ギヤ533を有する。駆動軸531は、カバー12の天面と反対側に、カバー12の回動の軸と同軸に設けられた円柱形状の部材である。
【0086】
小ギヤ532は、駆動軸531のカバー12と反対側の端部に設けられたセクタギヤである。大ギヤ533は、小ギヤ532に対応して、ギヤ溝が間欠的に形成されたギヤである。大ギヤ533は、回転体30を回転させる回転機構40によって、回転体30と同軸に回転自在に設けられている。大ギヤ533は、小ギヤ532と対応する間隔で、6つの凸部が周方向に所定間隔で形成されてなり、各凸部の先端外周面に、小ギヤ532に噛合するギヤ溝が形成されている。
【0087】
大ギヤ533は、図示しないバネ等の付勢部材によって、
図14(A)に矢印αで示す回転方向(反時計方向)に付勢されている。これにより、小ギヤ532は、矢印β1で示す時計方向に付勢されるため、小ギヤ532の回動にカバー12が連動し、チャックピン11が回転体30の中心方向へ移動して、基板Wに当接する閉位置に維持される。なお、基板処理時には、この閉位置を維持した状態で、カバー12、駆動軸531、チャックピン11、小ギヤ532、大ギヤ533は、回転体30とともに回転する。
【0088】
また、大ギヤ533は、図示しないストッパ機構によって、回転が阻止される。大ギヤ533の回転が阻止された状態で、
図14(B)に示すように、回転体30を矢印γ方向へ回転させると、回転が阻止された大ギヤ533に噛合している小ギヤ532が、矢印β2で示す反時計方向に回動する。これにより、回転カバー31が回動するので、チャックピン11が基板Wの縁部から離れる方向に移動して、開位置に来る。
【0089】
さらに、より詳細には、
図15に示すように、チャックピン11は、カバー12に立設されたチャック部13に設けられている。チャック部13には、上記と同様の溝13aが設けられている。
【0090】
このような態様においても、
図15(A)に示すように、チャックピン11が閉位置にある場合に、リング部材20の切欠23にチャックピン11が入るため、チャックピン11との干渉を避けることができる。また、このようにチャックピン11が軸回りに水平に移動する場合には、リング部材20が退避位置にあるときにも、開位置に移動するチャックピン11との干渉を避けるために、切欠23をチャックピン11の移動範囲分深くする必要がある。すると、処理液の流れが、切欠23が拡大した部分で変化してしまう。この場合、特に、チャックピン11と切欠23との隙間が拡大してしまうため、その隙間から処理液がリング部材20の裏面側もしくは、基板Wの裏面側に回り込んで、その箇所に対する洗浄度を損なうことになる。これに対処するため、本態様では、
図15(B)に示すように、チャックピン11が開位置に移動するためにカバー12が回動した際に、溝13aに切欠23が入る構造としている。これにより、切欠23の拡大を防ぎつつ、チャックピン11の開位置への移動量を確保して、搬入搬出時の基板Wとチャックピン11の干渉を防止できる。したがって、切欠23により発生するチャックピン11とリング部材20との隙間を小さくすることができ、処理液の流れに対する影響を抑えることができる。
【0091】
(3)チャック開閉機構50、リング移動機構60を駆動する構成は、上記の態様には限定されない。例えば、カムフォロアではなく、磁石の反発力を利用して非接触で昇降させる構成としてもよい。
【0092】
(4)接近位置にあるリング部材20の表面は、処理液を受けて隙間からの流出を防ぐことができれば、基板Wの表面と面一でなくてもよい。リング部材20の表面が、基板Wの表面よりも低くてもよい。なお、リング部材20の形状は、リング部材20と基板Wとの隙間において、基板Wの裏面側に液が回り込まない形状とすることが好ましい。
【0093】
(5)基板処理装置1の処理の内容及び処理液は、上記で例示したものには限定されない。処理対象となる基板W及び膜についても、上記で例示したものには限定されない。
【0094】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態及び各部の変形例を説明したが、この実施形態や各部の変形例は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述したこれら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明に含まれる。
【符号の説明】
【0095】
1 基板処理装置
10 保持部
11 チャックピン
12 カバー
12a 環状溝
13 チャック部
13a 溝
14 回動軸
15 アーム
15a 孔
20 リング部材
21 内周縁
23 切欠
30 回転体
31 回転カバー
31a テーブル
31b 側面
31c 排出口
31d 貫通孔
31e 環状壁
31f 貫通孔
31g 環状壁
32 回転ベース
32a 支柱
33 接続筒
40 回転機構
41 駆動源
42 接続筒
50 チャック開閉機構
51 開閉シリンダ
52 開閉レバー
52a 支点
53 開閉リフタ
54 開閉カムフォロア
55 開閉シャフト
55a 固定リング
56 開閉リング
56a スライダ
56b 連結部
56c バネ
56d 軸
60 リング移動機構
61 昇降シリンダ
62 昇降レバー
63 昇降リフタ
64 昇降カムフォロア
65 昇降シャフト
66 第1昇降リング
66a スライダ
66b バネ
67 第2昇降リング
68 昇降軸
68a 環状溝
69 昇降リンク
69a、69b ピン
69c 支点軸
70 供給部
71 処理液供給機構
71a 処理液槽
71b 個別送通管
71c 処理液供給管
71d 流量調整バルブ
71e 流量計
72 処理液保持部
72a 吐出口
73 昇降機構
74 加熱部
80 検出部
81 開閉検出部
82 リング位置検出部
83 透過光検出エリア
90 制御装置
531 駆動軸
532 小ギヤ
533 大ギヤ
741 ヒータ
741a 貫通孔