IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニック株式会社の特許一覧

特開2022-155391ランキンサイクル装置、熱発電システム及び停止方法
<>
  • 特開-ランキンサイクル装置、熱発電システム及び停止方法 図1
  • 特開-ランキンサイクル装置、熱発電システム及び停止方法 図2
  • 特開-ランキンサイクル装置、熱発電システム及び停止方法 図3
  • 特開-ランキンサイクル装置、熱発電システム及び停止方法 図4
  • 特開-ランキンサイクル装置、熱発電システム及び停止方法 図5
  • 特開-ランキンサイクル装置、熱発電システム及び停止方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155391
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】ランキンサイクル装置、熱発電システム及び停止方法
(51)【国際特許分類】
   F01D 21/00 20060101AFI20221005BHJP
   F01K 13/02 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
F01D21/00 M
F01D21/00 P
F01D21/00 W
F01D21/00 G
F01K13/02 A
F01D21/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058851
(22)【出願日】2021-03-30
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100202201
【弁理士】
【氏名又は名称】兒島 淳一郎
(72)【発明者】
【氏名】倉本 哲英
(72)【発明者】
【氏名】森本 篤史
【テーマコード(参考)】
3G071
【Fターム(参考)】
3G071CA02
3G071DA11
3G071FA02
3G071FA03
3G071FA06
3G071HA01
3G071HA02
3G071HA03
(57)【要約】
【課題】発電機の高い電力収支及び膨張機の高い信頼性を実現することに適した技術を提供する。
【解決手段】ランキンサイクル装置50は、膨張機3、発電機18及び制御装置20を備える。発電機18は、膨張機3に連結されている。ランキンサイクル装置50を停止させる停止運転は、第1運転と、第2運転と、第1運転から第2運転への切り替えと、を含む。第1運転では、制御装置20の制御下で膨張機3の回転数を低下させる。第2運転では、膨張機3をフリーランさせる。第1運転から第2運転への切り替えは、発電機18が回生駆動しているときに該切り替えを行うように、発電機18が発電した電力及び電流からなる群より選択される少なくとも1つに応じて行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張機と、
前記膨張機に連結された発電機と、
制御装置と、を備えたランキンサイクル装置であって、
前記ランキンサイクル装置を停止させる停止運転は、
前記制御装置の制御下で前記膨張機の回転数を低下させる第1運転と、
前記膨張機をフリーランさせる第2運転と、
前記第1運転から前記第2運転への切り替えであって、前記発電機が回生駆動しているときに前記切り替えを行うように、前記発電機が発電した電力及び電流からなる群より選択される少なくとも1つに応じて行う切り替えと、を含む、
ランキンサイクル装置。
【請求項2】
ポンプ、蒸発器及び凝縮器をさらに備え、
作動流体が循環する循環流路が設けられ、
前記循環流路は、前記ポンプから前記蒸発器を経由して前記膨張機に至る第1流路と、前記膨張機から前記凝縮器を経由して前記ポンプに至る第2流路と、を含み、
前記第1流路における前記作動流体の圧力と前記第2流路における前記作動流体の圧力との間の差分を膨張機差圧と定義したとき、
前記膨張機差圧に応じて、前記第1運転から前記第2運転に切り替える、
請求項1に記載のランキンサイクル装置。
【請求項3】
ポンプ及び蒸発器をさらに備え、
前記第1運転において、前記蒸発器から前記膨張機へと流れる作動流体の温度に応じて、前記ポンプの回転数を変化させる、
請求項1又は2に記載のランキンサイクル装置。
【請求項4】
ポンプをさらに備え、
前記ポンプの回転数に応じて、前記第1運転から前記第2運転に切り替える、
請求項1から3のいずれか一項に記載のランキンサイクル装置。
【請求項5】
少なくとも1つのセンサをさらに備え、
前記少なくとも1つのセンサの検出値に応じて、前記第1運転から前記第2運転に切り替える、
請求項1から4のいずれか一項に記載のランキンサイクル装置。
【請求項6】
前記ランキンサイクル装置の運転状況に応じて、前記第1運転から前記第2運転に切り替わる際の前記膨張機の回転数が変化する、
請求項1から5のいずれか一項に記載のランキンサイクル装置。
【請求項7】
弁をさらに備え、
前記膨張機が配置された循環流路と、
前記膨張機を迂回し、前記弁が配置されたバイパス流路と、が設けられている、
請求項1から6のいずれか一項に記載のランキンサイクル装置。
【請求項8】
前記第1運転の終了時点における前記弁の開度は、前記第1運転の開始時点における前記弁の開度よりも大きい、
請求項7に記載のランキンサイクル装置。
【請求項9】
前記停止運転において前記弁の開度の増加が開始されてから終了するまでの期間の長さを基準長さと定義し、
前記第1運転において前記制御装置の制御下で前記膨張機の回転数を低下させる期間の長さを第1長さと定義したとき、
前記第1長さは、前記基準長さよりも長い、
請求項7又は8に記載のランキンサイクル装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のランキンサイクル装置と、
熱源からの熱を前記ランキンサイクル装置に供給する熱流路と、を備える、
熱発電システム。
【請求項11】
膨張機と、前記膨張機に連結された発電機と、を備えたランキンサイクル装置の停止方法であって、
制御下で前記膨張機の回転数を低下させる第1運転を行うことと、
前記膨張機をフリーランさせる第2運転を行うことと、
前記第1運転から前記第2運転への切り替えであって、前記発電機が回生駆動しているときに前記切り替えを行うように、前記発電機が発電した電力及び電流からなる群より選択される少なくとも1つに応じて行う切り替えを行うことと、を含む、
停止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ランキンサイクル装置、熱発電システム及び停止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の発電装置は、膨張機、発電機、インバータ、電力検出器及び制御手段を備える。膨張機は、蒸気の膨張を回転力に変換する。発電機は、膨張機の回転軸に接続されている。電力検出器は、発電機の発電電力を検出する。制御手段は、発電電力と目標値との偏差に応じて、インバータの設定周波数を制御する。インバータの設定周波数に応じた回転数で、膨張機が動作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-172953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発電機は、電動機としても動作しうる。電動機として動作しているとき、発電機は、電力を消費する。特許文献1では、発電機の発電電力量から消費電力量を差し引いた電力収支については検討されていない。ここで、電力量は、電力の時間積分である。また、特許文献1では、膨張機の信頼性については検討されていない。
【0005】
本開示は、発電機の高い電力収支及び膨張機の高い信頼性を実現することに適した技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、
膨張機と、
前記膨張機に連結された発電機と、
制御装置と、を備えたランキンサイクル装置であって、
前記ランキンサイクル装置を停止させる停止運転は、
前記制御装置の制御下で前記膨張機の回転数を低下させる第1運転と、
前記膨張機をフリーランさせる第2運転と、
前記第1運転から前記第2運転への切り替えであって、前記発電機が回生駆動しているときに前記切り替えを行うように、前記発電機が発電した電力及び電流からなる群より選択される少なくとも1つに応じて行う切り替えと、を含む、
ランキンサイクル装置を提供する。
【0007】
本開示は、
膨張機と、前記膨張機に連結された発電機と、を備えたランキンサイクル装置の停止方法であって、
制御下で前記膨張機の回転数を低下させる第1運転を行うことと、
前記膨張機をフリーランさせる第2運転を行うことと、
前記第1運転から前記第2運転への切り替えであって、前記発電機が回生駆動しているときに前記切り替えを行うように、前記発電機が発電した電力及び電流からなる群より選択される少なくとも1つに応じて行う切り替えを行うことと、を含む、
停止方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る技術は、発電機の高い電力収支及び膨張機の高い信頼性を実現することに適している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態における熱発電システムの構成図
図2】実施の形態に係るコンバータの構成図
図3】作動流体流路における作動流体の状態を示すモリエル線図
図4】実施の形態における制御を示すフローチャート
図5】実施の形態における停止運転を説明するためのフローチャート
図6】実施の形態における停止運転を説明するためのタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示の基礎となった知見等)
発明者らが本開示に想到するに至った当時、発電機が膨張機に連結されたランキンサイクル装置について、検討がなされていた。そのようなランキンサイクル装置を停止させる停止運転では、発電機が力行駆動しうる。
【0011】
第1に、発電機の力行駆動は、発電機の高い電力収支を実現する観点から不利である。なぜなら、発電機は、力行駆動時には、電力を消費するためである。
【0012】
第2に、発電機の駆動状態が回生駆動から力行駆動に切り替わることは、膨張機の高い信頼性を実現する観点から不利である。なぜなら、この切り替わりが生じると、膨張機に印加される荷重の方向が反転するためである。特に、発電機の駆動状態が回生駆動と力行駆動との間で交互に切り替わると、膨張機の高い信頼性を実現し難い。膨張機に印加される荷重は、例えば、膨張機の回転軸を支持する軸受に印加される荷重である。
【0013】
そこで、本開示は、発電機の高い電力収支及び膨張機の高い信頼性を実現することに適した技術を提供する。
【0014】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、又は、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0015】
添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0016】
(実施の形態1)
以下、図1から図6を用いて、実施の形態1を説明する。
【0017】
[1-1.構成]
図1は、本実施の形態における熱発電システム100の構成図である。熱発電システム100は、熱流路40及びランキンサイクル装置50を備えている。
【0018】
熱流路40は、熱源30で生成された加熱媒体Gをランキンサイクル装置50に供給する。熱流路40は、典型的には、ダクトである。本実施の形態では、熱源30は、工場等の設備である。加熱媒体Gは、設備から排出される排ガスである。ただし、熱源30として、ボイラ等の他の熱源を用いてもよい。また、熱源30が地中に存在し、地熱が熱流路40によりランキンサイクル装置50に供給される形態も採用されうる。加熱媒体Gは、気体であってもよく、液体であってもよい。
【0019】
ランキンサイクル装置50は、ポンプ1、蒸発器2、膨張機3及び凝縮器4を備えている。ポンプ1、蒸発器2、膨張機3及び凝縮器4は、配管によって環状に接続されて作動流体流路14を形成している。作動流体流路14には、作動流体が充填されている。蒸発器2が熱流路40に配置されている。蒸発器2において、加熱媒体Gの熱が作動流体に与えられる。
【0020】
作動流体の種類は特に限定されない。作動流体は、無機作動流体であってもよく、有機作動流体であってもよい。無機作動流体としては、水が例示される。有機作動流体は、例えば、加熱媒体Gの温度が比較的低温であるときに用いられる。有機作動流体としては、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)系の作動流体が例示される。HFO系の作動流体は、HFOを含む作動流体を意味する。作動流体におけるHFOの含有率は、例えば、50質量%以上であり、80質量%以上であってもよい。HFOとしては、HFO1336mzz(Z)、HFO1336mzz(E)、これらの混合物等が例示される。作動流体として、HFOを含まない公知の冷媒を採用することもできる。
【0021】
ポンプ1は、作動流体を搬送する役割を担う。ポンプ1において、作動流体は加圧される。本実施の形態では、ポンプ1は、回転数可変のポンプである。
【0022】
蒸発器2は、加熱媒体Gの熱を受け取って作動流体を蒸発させる。蒸発器2は、例えば、フィンアンドチューブ熱交換器である。蒸発器2は、加熱媒体Gの温度及び流量に応じて所定量の熱を回収して作動流体に付与する。
【0023】
熱源30としての設備の稼働中において、設備から排出される加熱媒体Gの温度及び流量は、経時的に大きく変動しない傾向にある。そのため、蒸発器2において、加熱媒体Gの温度及び流量は、概ね安定状態にある。
【0024】
一例では、熱源30は、製品を乾燥させる乾燥工程に用いられる。熱源30は、安定状態に維持される。このようにすれば、各製品の乾燥状態及び品質が均一に保たれうる。また、加熱媒体Gの温度及び流量が安定する。
【0025】
本実施の形態では、加熱媒体Gの温度及び流量が上記のような安定状態をとることを想定して、蒸発器2が設計されている。具体的には、この安定状態において加熱媒体Gから作動流体へと所定量の熱を移動させる熱交換がなされるように、蒸発器2が設計されている。より具体的には、ポンプ1は、外気温度に応じて予め設定された回転数で運転される。この運転がなされているときに、蒸発器2から流出する作動流体の温度が所定温度となり膨張機3に流入する作動流体の状態が所定状態となるように、蒸発器2が設計されている。
【0026】
本実施の形態の蒸発器2では、伝熱管の段数、伝熱管の列数、伝熱管の長さ、フィンのピッチ、フィンの枚数等が適切に設定されている。これらの設定を通じて、加熱媒体Gと作動流体との間の適切な熱交換が実現されうる。
【0027】
膨張機3は、作動流体を膨張させる。これにより、圧力エネルギーが機械エネルギーに変換される。膨張機3は、容積型の膨張機であってもよく、速度型の膨張機であってもよい。容積型の膨張機としては、ロータリ膨張機、スクロール膨張機等が例示される。速度型の膨張機としては、半径流タービン、斜流タービン、軸流タービン等が例示される。
【0028】
ランキンサイクル装置50は、コンバータ17、発電機18及び電力センサ19を備える。膨張機3には、発電機18が接続されている。発電機18のロータは、膨張機3によって回転させられる。これにより、発電機18において発電が行われる。つまり、機械エネルギーが電気エネルギーに変換される。発電機18には、コンバータ17が接続されている。コンバータ17により、発電機18の回転数及び膨張機3の回転数を制御できる。電力センサ19は、発電機18が発電している電力を検出する。
【0029】
本実施の形態では、コンバータ17は、PWM(Pulse Width Modulation)コンバータである。コンバータ17は、発電機18をPWM制御する。
【0030】
図2は、本実施の形態に係るコンバータ17の構成図である。コンバータ17は、コンバータ回路部22、コンバータ制御部23及び電流センサ24を備える。コンバータ回路部22は、複数のスイッチング素子21を有する。複数のスイッチング素子21は、スイッチング回路を構成している。図示の例では、スイッチング素子21の数は6個である。
【0031】
コンバータ回路部22は、3相配線26により、発電機18に結線されている。3相配線26は、U相配線27、V相配線28及びW相配線29を有する。U相配線27にはU相電流iuが流れる。V相配線28にはV相電流ivが流れる。W相配線29にはW相電流iwが流れる。
【0032】
コンバータ回路部22は、コンバータ制御部23から出力された制御信号25に基づいて駆動する。これにより、コンバータ回路部22において、3相交流電力と直流電力との間の電力変換がなされる。本実施の形態では、制御信号25は、PWM信号である。制御信号25に基づいて、スイッチング回路が駆動する。
【0033】
コンバータ制御部23は、発電機18の指令回転数ω*と、発電機18の電流と、に基づいて、制御信号25を出力する。具体的には、コンバータ制御部23は、発電機18の指令回転数ω*と、発電機18の電流と、に基づいて、発電機18の電圧が追従するべき電圧指令を生成する。コンバータ制御部23は、電圧指令に基づいて、制御信号25を生成し、出力する。発電機18の電流は、電流センサ24により検出される。図示の例では、電流センサ24が検出する電流は、U相電流iu及びV相電流ivである。
【0034】
電力センサ19は、例えば、電流センサ24と図示しない電圧センサとを用いて構成できる。電圧センサは、3相配線26に配置されうる。この場合、電流センサ24の検出値と電圧センサの検出値とから、発電機18が発電している電力が特定されうる。本明細書では、このように特定された値は、検出値であると扱うこととする。電力センサ19を、コンバータ制御部23及び電流センサ24を用いて構成することも可能である。具体的には、コンバータ制御部23が生成する電圧指令と、電流センサ24の検出値とによって、発電機18が発電している電力が特定されうる。本明細書では、このように電圧指令及び電流検出値から特定された値は、検出値であると扱うこととする。その他、電力センサ19は、発電装置18あるいはその周辺機器が有する公知のセンサであってもよい。
【0035】
図1に戻って、凝縮器4は、作動流体を凝縮させる。具体的には、凝縮器4は、冷却媒体によって作動流体を冷却して作動流体を凝縮させる。凝縮器4としては、フィンアンドチューブ熱交換器、プレート熱交換器、二重管式熱交換器等が例示される。冷却媒体は、液体であってもよく、気体であってもよい。凝縮器4は、典型的には、フィンアンドチューブ熱交換器である。気体の冷却媒体の一例は、空気である。凝縮器4に空気を供給するためのファン7が設けられていてもよい。液体の冷却媒体の一例は、水である。液体の冷却媒体の別例は、ブライン等の不凍液である。
【0036】
作動流体流路14は、循環流路15及びバイパス流路16を有する。
【0037】
循環流路15は、第1流路15a及び第2流路15bを含む。第1流路15aは、ポンプ1から蒸発器2を経由して膨張機3に至る流路である。第2流路15bは、膨張機3から凝縮器4を経由してポンプ1に至る流路である。
【0038】
バイパス流路16は、循環流路15における蒸発器2よりも下流側かつ膨張機3よりも上流側の部分と、循環流路15における膨張機3よりも下流側かつ凝縮器4よりも上流側の部分と、を接続している。バイパス流路16には、弁5が設けられている。以下では、弁5を、バイパス弁5と称することがある。本実施の形態では、バイパス弁5は、流量調整弁である。流量調整弁は、0%(全閉)及び100%(全開)のみならず、0%よりも大きく100%よりも小さい開度をとりうる。バイパス弁5は、膨張機3を流れる作動流体の流量とバイパス流路16を流れる作動流体の流量との比率を調整する。
【0039】
ランキンサイクル装置50は、再熱器6をさらに備えている。再熱器6は、第1部分6a及び第2部分6bを含む。第1部分6aは、循環流路15におけるポンプ1よりも下流側かつ蒸発器2よりも上流側の部分である。第2部分6bは、循環流路15における膨張機3よりも下流側かつ凝縮器4よりも上流側の部分である。再熱器6において、第1部分6aを流れる作動流体と第2部分6bを流れる作動流体との間で熱交換が行われる。この熱交換によって、第1部分6aを流れる作動流体の温度が上昇し、第2部分6bを流れる作動流体の温度が低下する。
【0040】
ランキンサイクル装置50は、第1圧力センサ8a及び第2圧力センサ8bをさらに備えている。第1圧力センサ8aは、第1流路15aに設けられている。第2圧力センサ8bは、第2流路15bに設けられている。本実施の形態では、第1圧力センサ8aは、循環流路15における蒸発器2よりも下流側かつ膨張機3よりも上流側の部分に設けられている。第2圧力センサ8bは、循環流路15における凝縮器4よりも下流側かつポンプ1よりも上流側の部分に設けられている。
【0041】
第1圧力センサ8aは、第1流路15aにおける作動流体の圧力を検出する。第2圧力センサ8bは、第2流路15bにおける作動流体の圧力を検出する。第1圧力センサ8aは、膨張機3の入口における作動流体の圧力である入口圧力を検出しうる。第2圧力センサ8bは、膨張機3の出口における作動流体の圧力である出口圧力を検出しうる。入口圧力及び出口圧力から、サイクルの高圧とサイクルの低圧との圧力差を把握することができる。
【0042】
第1圧力センサ8aは、循環流路15におけるポンプ1よりも下流側かつ蒸発器2よりも上流側の部分に設けられていてもよい。第1圧力センサ8aは、バイパス流路16におけるバイパス弁5よりも上流側の部分に設けられていてもよい。バイパス流路16におけるバイパス弁5よりも上流側の部分に設けられた第1圧力センサ8aも、第1流路15aにおける作動流体の圧力を検出しうる。
【0043】
第2圧力センサ8bは、循環流路15における膨張機3よりも下流側かつ凝縮器4よりも上流側の部分に設けられていてもよい。第2圧力センサ8bは、バイパス流路16におけるバイパス弁5よりも下流側の部分に設けられていてもよい。バイパス流路16におけるバイパス弁5よりも下流側の部分に設けられた第2圧力センサ8bも、第2流路15bにおける作動流体の圧力を検出しうる。
【0044】
ランキンサイクル装置50は、第1温度センサ9a、第2温度センサ9b、第3温度センサ9c及び第4温度センサ9dをさらに備えている。
【0045】
第1温度センサ9aは、循環流路15における蒸発器2よりも下流側かつ膨張機3よりも上流側の部分における作動流体の温度を検出する。本実施の形態では、第1温度センサ9aは、この部分に設けられている。第1温度センサ9aは、膨張機3の入口における作動流体の温度を検出しうる。
【0046】
第2温度センサ9bは、循環流路15における凝縮器4よりも下流側かつポンプ1よりも上流側の部分における作動流体の温度を検出する。本実施の形態では、第2温度センサ9bは、この部分に設けられている。第2温度センサ9bは、凝縮器4の出口における作動流体の温度を検出しうる。
【0047】
第3温度センサ9cは、凝縮器4に供給されるべき冷却媒体の温度を検出する。典型的には、第3温度センサ9cは、外気温度を検出する。このため、第3温度センサ9cを、外気温度センサ9cと称することができる。本実施の形態では、第3温度センサ9cは、凝縮器4における冷却媒体の吸い込み部に配置されている。
【0048】
第4温度センサ9dは、蒸発器2に供給されるべき加熱媒体Gの温度を検出する。本実施の形態では、第4温度センサ9dは、蒸発器2における加熱媒体Gの吸い込み部に配置されている。図示の例では、第4温度センサ9dは、熱流路40に配置されており、熱流路40において、蒸発器2よりも上流側に位置している。
【0049】
ランキンサイクル装置50は、制御装置20をさらに備えている。制御装置20は、各センサから取得した信号に基づき、ポンプ1、膨張機3、コンバータ17、発電機18、ファン7、バイパス弁5等の制御対象を制御する。
【0050】
制御装置20は、図示しない演算処理部及び記憶部を備える。演算処理部としては、MPU、CPUが例示される。記憶部は、制御プログラムを記憶する。記憶部としては、メモリが例示される。
【0051】
[1-2.動作]
図3は、作動流体流路14における作動流体の状態を示すモリエル線図である。ランキンサイクル装置50が定常運転を行っているとき、作動流体の状態は、図3に示すモリエル線図に沿って変化する。定常運転は、後述の通常運転に対応しうる。
【0052】
図3において、横軸は、比エンタルピである。縦軸は、圧力である。一点鎖線L1は、飽和液線である。二点鎖線L2は、飽和蒸気線である。
【0053】
矢印PUMは、ポンプ1による昇圧を表す。矢印RH1は、再熱器6による加熱を表す。矢印EVは、蒸発器2による加熱を表す。矢印EXは、膨張機3による膨張を表す。矢印RH2は、再熱器6による冷却を表す。矢印CONは、凝縮器4による冷却を表す。これらの矢印が表す作用によって、作動流体の状態は、状態(1)、状態(2)、状態(3)、状態(4)、状態(5)及び状態(6)の順に変化する。
【0054】
状態(1)は、循環流路15における凝縮器4よりも下流側かつポンプ1よりも上流側の部分における作動流体の状態である。状態(1)は、過冷却液の状態である。ブロック矢印SCは、作動流体の過冷却度を模式的に表している。状態(1)は、状態(6)に比べ、エンタルピが低い。
【0055】
状態(2)は、循環流路15におけるポンプ1よりも下流側かつ再熱器6の第1部分6aよりも上流側の部分における作動流体の状態である。状態(2)は、過冷却液の状態である。状態(2)は、状態(1)に比べ、圧力が高い。
【0056】
状態(3)は、循環流路15における再熱器6の第1部分6aよりも下流側かつ蒸発器2よりも上流側の部分における作動流体の状態である。状態(3)は、過冷却液の状態である。状態(3)は、状態(2)に比べ、エンタルピが高い。再熱器6における熱交換量が大きい変形例では、状態(3)は、気液2相の状態である。この変形例では、図3とは異なり、状態(3)の位置は、飽和液線L1の右側となる。
【0057】
状態(4)は、循環流路15における蒸発器2よりも下流側かつ膨張機3よりも上流側の部分における作動流体の状態である。状態(4)は、過熱蒸気の状態である。ブロック矢印SHは、作動流体の過熱度を模式的に表している。状態(4)は、状態(3)に比べ、エンタルピが高い。
【0058】
状態(5)は、循環流路15における膨張機3よりも下流側かつ再熱器6の第2部分6bよりも上流側の部分における作動流体の状態である。状態(5)は、過熱蒸気の状態である。状態(5)は、状態(4)に比べ、圧力及びエンタルピが低い。
【0059】
状態(6)は、循環流路15における再熱器6の第2部分6bよりも下流側かつ凝縮器4よりも上流側の部分における作動流体の状態である。状態(6)は、気液2相の状態である。状態(6)は、状態(5)に比べ、エンタルピが低い。再熱器6における熱交換量が小さい変形例では、状態(6)は、過熱蒸気の状態である。この変形例では、図3とは異なり、状態(6)の位置は、飽和蒸気線L2の右側となる。
【0060】
状態(2)、状態(3)及び状態(4)は、第1流路15aにおける作動流体の状態であり、相対的に高圧の状態である。状態(5)、状態(6)及び状態(1)は、第2流路15bにおける作動流体の状態であり、相対的に低圧の状態である。ブロック矢印PDは、第1流路15aにおける作動流体と第2流路15bにおける作動流体との圧力差を表す。以下、第1流路15aにおける作動流体の圧力を、高圧PHと称することがある。第2流路15bにおける作動流体の圧力を、低圧PLと称することがある。高圧PHと低圧PLの圧力差を、圧力差PDと称することがある。
【0061】
上述の通り、本実施の形態では、ランキンサイクル装置50の構成要素が、制御装置20によって制御される。具体的には、ランキンサイクル装置50は、起動運転、通常運転及び停止運転を行う。起動運転は、ランキンサイクル装置50を起動させるための運転である。通常運転は、ランキンサイクル装置50のサイクルの安定時に行われる運転である。通常運転は、出力最大化運転を含む。出力最大化運転は、発電機18の発電出力を最大化するための運転である。停止運転は、ランキンサイクル装置50を停止させるための運転である。
【0062】
以下、ランキンサイクル装置50が行う制御について、図4及び表1から表4を参照しながら説明する。以下の説明では、各アクチュエータの起動運転における目標回転数を初期目標回転数と称することがある。
【0063】
図4は、ランキンサイクル装置50の制御を示すフローチャートである。
【0064】
ステップS1において、制御装置20は、ランキンサイクル装置50に運転信号が入力されたか否かを判断する。運転信号が入力されている場合、ステップS2に進む。運転信号が入力されていない場合、再度ステップS1が行われる。
【0065】
ステップS2において、制御装置20は、ファン7を所定回転数で所定時間だけ運転する。
【0066】
ステップS2の後、ステップS3において、制御装置20は、第3温度センサ9cの検出値Tcを取得する。検出値Tcは、外気温度Tairに対応する。
【0067】
ステップS3の後、ステップS4において、制御装置20は、各アクチュエータの初期目標回転数を設定する。
【0068】
具体的には、制御装置20には、表1に示すテーブルデータが格納されている。このテーブルデータでは、ポンプ1の初期目標回転数Rp0と外気温度Tairとが対応付けられている。制御装置20は、このテーブルデータから、外気温度Tairに対応付けられた初期目標回転数Rp0を選択する。
【表1】
【0069】
また、制御装置20には、表2に示すテーブルデータが格納されている。このテーブルデータでは、ファン7の初期目標回転数Rf0と外気温度Tairとが対応付けられている。制御装置20は、このテーブルデータから、外気温度Tairに対応付けられた初期目標回転数Rf0を選択する。
【表2】
【0070】
また、制御装置20には、表3に示すテーブルデータが格納されている。このテーブルデータでは、膨張機3の初期目標回転数Re0と外気温度Tairとが対応付けられている。制御装置20は、このテーブルデータから、外気温度Tairに対応付けられた初期目標回転数Re0を選択する。
【表3】
【0071】
ステップS4の後、ステップS5において、制御装置20は、ランキンサイクル装置50の起動運転を実行する。
【0072】
起動運転において、制御装置20は、バイパス弁5の開度を小さくする。具体的には、制御装置20は、バイパス弁5の開度を全開(100%)から全閉(0%)まで、徐々に変更する。
【0073】
起動運転において、制御装置20は、ポンプ1の回転数を、ゼロから初期目標回転数Rp0へと制御する。具体的には、制御装置20は、ポンプ1の回転数を、徐々に上昇させる。初期目標回転数Rp0は、ステップS4で設定された値であり、具体的にはステップS4で選択された値である。
【0074】
起動運転において、制御装置20は、膨張機3の回転数を、ゼロから初期目標回転数Re0へと制御する。具体的には、制御装置20は、膨張機3の回転数を、徐々に上昇させる。初期目標回転数Re0は、ステップS4で設定された値であり、具体的にはステップS4で選択された値である。
【0075】
起動運転において、制御装置20は、ファン7の回転数を、ゼロから初期目標回転数Rf0へと制御する。初期目標回転数Rf0は、ステップS4で設定された値であり、具体的にはステップS4で選択された値である。
【0076】
制御装置20は、バイパス弁5の開度の制御が完了し、かつ、ポンプ1、ファン7及び膨張機3の回転数が初期目標値に達すると、起動運転を終了させる。
【0077】
起動運転の終了後、ステップS6において、制御装置20は、通常運転を実行する。
【0078】
通常運転において、制御装置20は、バイパス弁5の開度を、起動運転で小さくした値に維持する。具体的には、制御装置20は、バイパス弁5の開度を全閉に維持する。
【0079】
通常運転において、制御装置20は、第1温度センサ9aの検出値Taを取得する。先の説明から理解されるように、検出値Taから、膨張機3の入口における作動流体の温度を把握できる。
【0080】
通常運転において、制御装置20は、検出値Taが所定の目標値となるように、ポンプ1の回転数を制御する。
【0081】
通常運転において、制御装置20は、第1圧力センサ8aの検出値を取得する。この検出値から、膨張機3の入口における作動流体の圧力である入口圧力を把握できる。
【0082】
通常運転において、制御装置20は、第2圧力センサ8bの検出値を取得する。この検出値から、膨張機3の出口における作動流体の圧力である出口圧力を把握できる。
【0083】
通常運転において、制御装置20は、第1圧力センサ8aの検出値から第2圧力センサ8bの検出値を差し引いた差分を計算する。以下では、この差分を、圧力差ΔP1と称することがある。圧力差ΔP1から、高圧と低圧との圧力差PDを把握できる。
【0084】
通常運転において、制御装置20は、膨張機3の目標圧力差ΔP0を設定する。
【0085】
具体的には、制御装置20には、表4に示すテーブルデータが格納されている。このテーブルデータでは、膨張機3の目標圧力差ΔP0と外気温度Tairとが対応付けられている。制御装置20は、このテーブルデータから、外気温度Tairに対応付けられた目標圧力差ΔP0を選択する。例えば、第3温度センサ9cの検出値Tcが25℃のとき、対応する目標圧力差ΔP0は1.3MPaである。
【表4】
【0086】
通常運転において、制御装置20は、圧力差ΔP1が目標圧力差ΔP0に追従するように、膨張機3の回転数を制御する。具体的には、圧力差ΔP1が目標圧力差ΔP0よりも大きい場合、膨張機3の回転数を増加させる。制御装置20は、圧力差ΔP1が目標圧力差ΔP0よりも小さい場合、膨張機3の回転数を減少させる。
【0087】
ステップS7において、制御装置20は、ランキンサイクル装置50に停止信号が入力されたか否かを判断する。停止信号が入力されている場合、ステップS8に進む。停止信号が入力されていない場合、再度ステップS7が行われる。
【0088】
ステップS8において、ランキンサイクル装置50は、ランキンサイクル装置50の停止運転を実行する。停止運転により、各アクチュエータが停止し、ランキンサイクル装置50が停止する。
【0089】
図5は、本実施の形態における停止運転を説明するためのフローチャートである。図6は、本実施の形態における停止運転を説明するためのタイミングチャートである。図6は、4つのグラフを含む。図6の4つのグラフは、模式的なものである。
【0090】
図6において上から数えて1段目のグラフは、膨張機3の指令回転数の時間変化を模式的に示している。このグラフの横軸は、時間である。このグラフの縦軸は、膨張機3の指令回転数であり、その単位はrpmである。膨張機3の指令回転数は、発電機18の指令回転数ω*に対応する。指令回転数ω*は、発電機18の回転数が追従するべき回転数である。一具体例では、図示しない上位制御装置から制御装置20に、発電機18の指令回転数ω*が入力される。制御装置20は、図2を参照して説明したコンバータ制御部23に指令回転数ω*を送信する。コンバータ制御部23は、指令回転数ω*が反映された電圧指令を生成する。コンバータ制御部23は、電圧指令に基づいて、制御信号25を生成し、出力する。こうして、指令回転数ω*が、制御信号25に反映され、スイッチング回路のスイッチング周波数に反映され、発電機18に印加される電圧の周波数に反映される。このようにして、発電機18の指令回転数ω*に、発電機18の回転数及び膨張機3の回転数が追従する。
【0091】
2段目のグラフは、バイパス弁5の開度の時間変化を模式的に示している。このグラフの横軸は、時間である。このグラフの縦軸は、バイパス弁5の開度であり、その単位は%である。
【0092】
3段目のグラフは、膨張機差圧ΔPの時間変化を模式的に示している。このグラフの横軸は、時間である。このグラフの縦軸は、膨張機差圧ΔPであり、その単位はMpaである。膨張機差圧ΔPは、第1流路15aにおける作動流体の圧力と第2流路15bにおける作動流体の圧力との間の差分である。
【0093】
4段目のグラフは、発電機18の発電電力Wの時間変化を模式的に示している。このグラフの横軸は、時間である。このグラフの縦軸は、発電機18の発電電力Wであり、その単位はkWである。
【0094】
図4を参照した上述の説明から理解されるように、ランキンサイクル装置50に停止信号が入力されることにより、停止運転が実行される。具体的には、ランキンサイクル装置50は、通常運転を行っている際に、停止信号の入力の有無を監視する。そして、ランキンサイクル装置50は、停止信号の入力を検知したときに、停止運転を開始する。
【0095】
第1の例では、加熱媒体Gの温度が閾値温度よりも低いときに、ランキンサイクル装置50に停止信号が入力される。第2の例では、加熱媒体Gの流量が閾値流量よりも小さいときに、ランキンサイクル装置50に停止信号が入力される。第3の例では、加熱媒体Gの温度が閾値温度よりも低くかつ加熱媒体Gの流量が閾値流量よりも小さいときに、ランキンサイクル装置50に停止信号が入力される。第1の例から第3の例によれば、蒸発器2において十分な熱量を加熱媒体Gから回収して作動流体に与えることができず、発電機18からの所定の発電電力の出力を維持できなくなったときに、ランキンサイクル装置50に停止信号が入力されうる。第4の例では、ランキンサイクル装置50は、停止ボタンを有する。ランキンサイクル装置50のオペレータが人為的に停止ボタンを操作したときに、ランキンサイクル装置50に停止信号が入力される。
【0096】
上述のとおり、ランキンサイクル装置50が停止信号の入力を検出すると、停止運転が開始される。この検出のタイミングは、図4ではステップS7の「Yes」に対応し、図5では「START」に対応し、図6では時刻T2に対応する。
【0097】
図5に示すように、ステップSS1において、制御装置20は、バイパス弁5の開度を大きくする。具体的には、制御装置20は、バイパス弁5の開度を全閉(0%から)全開(100%)まで変更する。
【0098】
ステップSS2において、制御装置20の制御下で、膨張機3の回転数を、回転数N1から回転数N2まで低下させる。具体的には、制御装置20は、コンバータ17を用いて、発電機18の回転数を制御する。発電機18及び膨張機3は互いに連結されているため、発電機18の回転数が制御されることにより、膨張機3の回転数も制御される。
【0099】
以下、第1運転という用語を用いることがある。第1運転は、ステップSS2の、制御下で膨張機3の回転数を低下させる運転を含む。第1運転は、さらに他の運転を含みうる。本実施の形態では、第1運転は、ステップSS1の、バイパス弁5の開度を大きくする運転を含む。
【0100】
本実施の形態では、第1運転において、発電機18及び膨張機3の回転数は、所定回転数低下する。また、第1運転において、発電機18及び膨張機3の回転数は、所定の速度で低下する。第1運転では、いわゆる減速停止と同じ態様で、回転数が制御下で低下する。ただし、第1運転では、回転数をゼロまで低下させるのではなく、回転数を非ゼロの値である回転数N2まで低下させる。
【0101】
本実施の形態では、第1運転において、制御装置20は、ポンプ1の回転数を制御する。具体的には、熱源30の状況によっては、熱流路40における加熱媒体Gの温度及び流量が変動する場合がある。この変動は、蒸発器2から流出する作動流体の温度を変動させる。そこで、本実施の形態では、第1運転において、制御装置20は、第1温度センサ9aの検出値が所定の目標値に追従するように、ポンプ1の回転数を制御する。このようにすることで、蒸発器2から流出する作動流体の温度を安定させることができる。本実施の形態では、制御装置20は、加熱媒体Gの温度及び流量が大きい場合、ポンプ1の回転数を増加させうる。制御装置20は、加熱媒体Gの温度及び流量が小さい場合、ポンプ1の回転数を減少させうる。
【0102】
本実施の形態では、第1運転において、発電機18が回生駆動している。具体的には、十分な熱エネルギーが蒸発器2において加熱媒体Gから作動流体に与えられ、膨張機差圧ΔP及び膨張機3における作動流体の流量が十分に大きい条件で、ランキンサイクル装置50が運転しうる。このため、作動流体により発電機18のロータが回転し、発電機18が発電しうる。
【0103】
本実施の形態では、ステップSS1のバイパス弁5の開度を大きくする運転は、時刻T2から時刻T3までの期間にわたって実行される。ステップSS2の制御下で膨張機3の回転数を低下させる運転は、時刻T2から時刻T4までの期間にわたって実行される。これらの期間は、部分的に重複している。
【0104】
時刻T2から時刻T4までの期間において、膨張機差圧ΔPは低下する。この低下は、バイパス弁5の開度が大きくなることにより生じうる。膨張機差圧ΔPが低下すると、発電機18の発電電力Wも低下する。
【0105】
仮に、膨張機差圧ΔP及び発電電力Wの低下が長期間にわたって継続されたとする。この場合、発電電力Wが“負の発電電力”になる場合がある。つまり、発電機18で電力が消費されるようになる場合がある。この状態では、発電機18が力行駆動している。具体的には、この状態では、発電機18のロータを回転させるに足りる熱エネルギーが蒸発器2において加熱媒体Gから作動流体に与えられないため、コンバータ17を介して発電機18に電力を投入することによって、発電機18のロータが強制的に回転させられる。これに対し、本実施の形態では、ステップSS3及びSS4により、発電機18の力行駆動が回避されうる。
【0106】
ステップSS3において、制御装置20は、発電機18の発電電力Wが閾値電力以下であるか否かを判断する。発電電力Wが閾値電力以下である場合、ステップSS4に進む。発電電力Wが閾値電力よりも大きい場合、ステップSS2に進む。
【0107】
発電電力Wが閾値電力よりも大きい場合、所定の制御周期でステップSS2及びSS3が繰り返される。本実施の形態では、閾値電力はゼロよりも大きく、かつ、制御周期は十分に小さい。このため、発電機18が回生駆動しているときに、ステップSS3で「Yes」と判断され、ステップSS4に進みうる。
【0108】
ステップSS4において、ランキンサイクル装置50は、膨張機3をフリーランさせる。これにより、膨張機3の回転数をゼロまで低下させる。図6において、時刻T4は、制御下で膨張機3の回転数を低下させる運転から膨張機3をフリーランさせる運転への切り替わりの時刻である。
【0109】
発電機18がフリーランしているときには、発電機18の回転数はコンバータ17の制御下にはない。このため、発電機18の力行駆動を回避できる。
【0110】
以下、第2運転という用語を用いることがある。第2運転は、ステップSS4の膨張機3をフリーランさせる運転を含む。
【0111】
加熱媒体Gの温度及び流量が十分に大きく、膨張機3における作動流体の流量及び膨張機差圧ΔPが十分に大きい状況を考える。この状況では、制御装置20の制御下で発電機18のロータを作動流体により回転させ、発電機18で発電を行うことができる。つまり、発電機18を回生駆動させることができる。
【0112】
一方、加熱媒体Gの温度及び流量が不十分であり、膨張機3における作動流体の流量及び膨張機差圧ΔPが不十分である状況を考える。この状況では、制御装置20の制御下で発電機18のロータを回転させ続けようとすると、発電機18に電力が投入されうる。つまり、発電機18が力行駆動しうる。
【0113】
トルクという言葉を用いた説明も可能である。すなわち、膨張機差圧ΔP及び膨張機3を流れる作動流体の流量の両方が、膨張機3のトルクに影響を与える。膨張機3のトルクが十分に大きい状況では、発電機18を回生駆動させることができる。膨張機3のトルクが不十分である状況では、発電機18の駆動状態は力行駆動となりうる。
【0114】
仮に、停止運転において、発電機18の駆動状態が回生駆動から力行駆動に切り替わるとする。この切り替えが生じると、膨張機3の機構部に印加される荷重の方向が反転する。このような反転が生じるな運転条件で膨張機3を運転することは、膨張機3の機械的な信頼性を実現する観点から不利である。
【0115】
この点、本実施の形態の停止運転では、第1運転を実行し、その後、第2運転を実行する。第1運転では、膨張機3の回転数が制御装置20の制御下で低下する。第2運転では、発電機18をフリーランさせ、これにより膨張機3の回転数が低下しうる。第1運転から第2運転への切り替えは、発電機18の発電電力Wに応じて行う。発電電力Wは、発電機18が力行駆動ではなく回生駆動していることを直接的に把握可能な情報である。その発電機18の発電電力Wに応じて第1運転から第2運転に切り替えるため、本実施の形態によれば、高い信頼性で、この切り替えが行われるタイミングを、発電機18が回生駆動を行っている期間に属するタイミングとすることができる。そして、切り替え後には、発電機18をフリーランさせることにより、発電機18の力行駆動を防止できる。本実施の形態の停止運転によれば、発電機18が力行駆動する事態を回避しつつ、発電機18及び膨張機3の回転数を低下させることができる。このようにすることは、膨張機3の信頼性を確保する観点から有利である。
【0116】
また、本実施の形態の停止運転では、第1運転において発電機18が回生駆動し、第2運転において発電機18の力行駆動が回避される。このことは、発電機18の発電電力量から消費電力量を差し引いた電力収支を確保する観点から有利である。ここで、電力量は、電力の時間積分である。
【0117】
[1-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、ランキンサイクル装置50は、膨張機3、発電機18及び制御装置20を備える。発電機18は、膨張機3に連結されている。ランキンサイクル装置50の停止運転は、第1運転と、第2運転と、第1運転から第2運転への切り替えと、を含む。第1運転では、制御装置20の制御下で膨張機3の回転数を低下させる。第2運転では、膨張機3をフリーランさせる。第1運転から第2運転への切り替えは、発電機18が回生駆動しているときに該切り替えを行うように、発電機18が発電した電力及び電流からなる群より選択される少なくとも1つに応じて行う。この構成は、発電機18の高い電力収支及び膨張機3の高い信頼性を実現することに適している。なお、停止運転は、ランキンサイクル装置50を停止させる運転である。
【0118】
具体的には、上記の構成によれば、停止運転中に、発電機18が力行駆動することを回避できる。このことは、膨張機3に印加される荷重の方向が反転することを回避し、膨張機3の高い信頼性を実現することを可能にする。この文脈において、膨張機3に印加される荷重は、例えば、膨張機3の回転軸を支持する軸受に印加される荷重である。また、この構成によれば、第1運転において発電機18が回生駆動し、第2運転において発電機18の力行駆動が回避されうる。このため、発電機18の高い電力収支を実現できる。
【0119】
第2運転における膨張機3のフリーランによれば、膨張機3の回転数は、非制御下で低下しうる。具体的には、膨張機3の回転数は、膨張機3及び発電機18の機械摩擦等により低下しうる。
【0120】
本実施の形態において、第1運転から第2運転への切り替えは、制御装置20によって行われる。
【0121】
本実施の形態において、第1運転では、発電機18を回生駆動させる。典型的には、第1運転が行われる期間の全期間において、発電機18を回生駆動させる。ただし、第1運転が行われる期間の一部の期間のみにおいて、発電機18を回生駆動させてもよい。
【0122】
本実施の形態において、第1運転では、膨張機3の回転数は、一定の速度で低下する。この構成によれば、第1運転を安定させることができる。ただし、第1運転では、膨張機3の回転数が低下する速度を変化させてもよい。例えば、回転数が大きいときには低下速度を大きくし、回転数が小さいときには低下速度を小さくすることができる。
【0123】
本実施の形態において、発電機18が発電している電力がゼロよりも大きく閾値電力以下であるときに、第1運転から第2運転に切り替える。発電機18が発電している電力として、電力センサ19の検出値を用いることができる。
【0124】
発電機18の定格発電電力に対する閾値電力の比率は、例えば、0.1以上0.5以下である。この比率は、0.1以上0.3以下であってもよい。発電機18の定格発電電力は、典型的には、通常運転における発電機18の発電電力の目標値である。
【0125】
発電機18が発電している電流がゼロよりも大きく閾値電流以下であるときに、第1運転から第2運転に切り替えてもよい。発電機18が発電している電流として、電流センサ24の検出値を用いることができる。
【0126】
発電機18の定格発電電流に対する閾値電流の比率は、例えば、0.1以上0.5以下である。この比率は、0.1以上0.3以下であってもよい。発電機18の定格発電電流は、典型的には、通常運転における発電機18の発電電流の目標値である。
【0127】
より一般的には、発電機18が発電している電力がゼロよりも大きく閾値電力以下であるという条件及び発電機18が発電している電流がゼロよりも大きく閾値電流以下であるという条件からなる群より選択される少なくとも1つが成立しているときに、第1運転から第2運転に切り替えることが可能である。
【0128】
本実施の形態において、ランキンサイクル装置50は、ポンプ1及び蒸発器2を備える。ポンプ1により、蒸発器2から膨張機3へと流れる作動流体の流れが形成される。
【0129】
本実施の形態において、第1運転において、蒸発器2から膨張機3へと流れる作動流体の温度に応じて、ポンプ1の回転数を変化させる。このようにすれば、作動流体の温度に応じて、蒸発器2における加熱媒体Gと作動流体との間の熱交換量を調整し、作動流体の温度を調整できる。
【0130】
具体的には、本実施の形態では、第1運転において、制御装置20は、第1温度センサ9aの検出値が所定の目標値に追従するように、ポンプ1の回転数を制御する。
【0131】
より具体的には、本実施の形態では、制御装置20は、第1温度センサ9aの検出値が低下した場合、ポンプ1の回転数を低下させる。このことは、蒸発器2から流出する作動流体の温度を上昇させるように作用しうる。また、制御装置20は、第1温度センサ9aの検出値が上昇した場合、ポンプ1の回転数を上昇させる。このことは、蒸発器2から流出する作動流体の温度を低下させるように作用しうる。このようにして、制御装置20は、第1温度センサ9aの検出値を上記目標値に追従させる。
【0132】
ここで、ポンプ1を上記のように制御しているときに、加熱媒体Gの温度及び流量が低下した場合を考える。この場合、蒸発器2における加熱媒体Gと作動流体との間の熱交換量が低下し、蒸発器2から流出する作動流体の温度が低下し、第1温度センサ9aの検出値が低下する。制御装置20は、第1温度センサ9aの検出値が上記目標値に追従するように、ポンプ1の回転数を低下させる。加熱媒体Gの温度及び流量の低下幅が小さい場合、ポンプ1の回転数をこのように制御しつつ制御装置20の制御下で発電機18のロータを回転させ続けても、発電機18の回生駆動を継続することができる。しかし、加熱媒体Gの温度及び流量の低下幅が大きい場合、ポンプ1の回転数をこのように制御しつつ制御装置20の制御下で発電機18のロータを回転させ続けると、ポンプ1の回転数の非常に小さくなり、膨張機差圧ΔP及び膨張機3を流れる作動流体の流量が非常に小さくなりうる。この場合、作動流体のみでは発電機18のロータを回転させ続けることができなくなり、発電機18の駆動状態が力行駆動に切り替わりうる。この点、本実施の形態では、発電機18の駆動状態が力行駆動に切り替わる前に、第2運転を開始することができる。これにより、発電機18の力行駆動を回避できる。加熱媒体Gの温度及び流量が低下する状況の例は、加熱媒体Gが排ガスであるような、蒸発器2で排熱と作動流体とが熱交換する状況である。
【0133】
本発明者らのより具体的な検討によれば、膨張機差圧ΔPが小さいこと、膨張機3を流れる作動流体の流量が小さいこと、及び、膨張機3の回転数が大きいことは、発電機18を力行駆動させる原因となりうる。一方、膨張機差圧ΔPが大きいときに膨張機3のフリーランを開始すると、膨張機3の回転機構が高速で空転し膨張機3が故障するおそれがある。膨張機3を流れる作動流体の流量が大きいときに膨張機3のフリーランを開始すると、同様のおそれがある。また、ポンプ1の回転数は、膨張機差圧ΔP及び膨張機3を流れる作動流体の流量に影響を与える。これらを踏まえると、ランキンサイクル装置50に、膨張機差圧ΔP及びポンプ1の回転数に関する以下のような特徴を与えることが考えられる。
【0134】
本実施の形態において、ランキンサイクル装置50は、ポンプ1、蒸発器2及び凝縮器4を備える。ランキンサイクル装置50には、作動流体が循環する循環流路15が設けられている。循環流路15は、第1流路15a及び第2流路15bを含む。第1流路15aは、ポンプ1から蒸発器2を経由して膨張機3に至る流路である。第2流路15bは、膨張機3から凝縮器4を経由してポンプ1に至る流路である。ここで、第1流路15aにおける作動流体の圧力と第2流路15bにおける作動流体の圧力との間の差分を、膨張機差圧ΔPと定義する。このとき、膨張機差圧ΔPに応じて、第1運転から第2運転に切り替えてもよい。この構成によれば、膨張機差圧ΔPが適切な値であるときに、第1運転から第2運転に切り替えることができる。例えば、膨張機差圧ΔPが過度に高いときに第2運転のフリーランが開始されることで膨張機3の回転機構が高速で空転し膨張機3が故障することを回避できる。このことは、膨張機3の信頼性向上に貢献しうる。以上の説明から理解されるように、第1運転から第2運転への切り替えを、発電機18が発電した電力のみならず膨張機差圧ΔPにも応じて行うと、力行駆動を回避し、かつ、フリーラン開始後における膨張機構の高速空転を回避し易い。力行駆動の回避は、発電機18の高い電力収支を実現しうる。力行駆動の回避及びフリーラン開始後における膨張機構の高速空転の回避は、膨張機3の高い信頼性を実現しうる。第1運転から第2運転への切り替えを、発電機18が発電した電流のみならず膨張機差圧ΔPにも応じて行う場合についても同様である。膨張機差圧ΔPとして、第1圧力センサ8aの検出値及び第2圧力センサ8bの検出値の差分を用いることができる。
【0135】
第1運転から第2運転への切り替えを、発電機18が発電した電力及び電流からなる群より選択される少なくとも1つのみならず、膨張機差圧ΔPにも応じて行う形態の具体例ついて説明する。一具体例では、発電機18が発電している電力がゼロよりも大きく閾値電力以下であるという条件及び発電機18が発電している電流がゼロよりも大きく閾値電流以下であるという条件からなる群より選択される少なくとも1つが成立し、かつ、膨張機差圧ΔPがゼロよりも大きく閾値圧力以下であるという条件が成立しているときに、第1運転から第2運転に切り替える。
【0136】
膨張機差圧ΔPの定格値に対する閾値圧力の比率は、例えば、0.1以上0.5以下である。この比率は、0.1以上0.3以下であってもよい。膨張機差圧ΔPの定格値は、典型的には、通常運転における膨張機差圧ΔPの目標値である。この目標値は、表4の目標圧力差ΔP0でありうる。
【0137】
ポンプ1の回転数に応じて、第1運転から第2運転に切り替えてもよい。このようにすれば、膨張機3を流れる作動流体の流量が適切な値であるときに、第1運転から第2運転に切り替えることができる。例えば、ポンプ1の回転数が過度に大きいときに第2運転のフリーランが開始されることで膨張機3の回転機構が高速で空転し膨張機3が故障することを回避できる。このことは、膨張機3の信頼性向上に貢献しうる。以上の説明から理解されるように、第1運転から第2運転への切り替えを、発電機18が発電した電力のみならずポンプ1の回転数にも応じて行うと、力行駆動を回避し、かつ、フリーラン開始後における膨張機構の高速空転を回避し易い。力行駆動の回避は、発電機18の高い電力収支を実現しうる。力行駆動の回避及びフリーラン開始後における膨張機構の高速空転の回避は、膨張機3の高い信頼性を実現しうる。第1運転から第2運転への切り替えを、発電機18が発電した電流のみならずポンプ1の回転数にも応じて行う場合についても同様である。
【0138】
第1運転から第2運転への切り替えを、発電機18が発電した電力及び電流からなる群より選択される少なくとも1つのみならず、ポンプ1の回転数にも応じて行う形態の具体例について説明する。一具体例では、発電機18が発電している電力がゼロよりも大きく閾値電力以下であるという条件及び発電機18が発電している電流がゼロよりも大きく閾値電流以下であるという条件からなる群より選択される少なくとも1つが成立し、かつ、ポンプ1の回転数がゼロよりも大きく閾値回転数以下であるという条件が成立しているときに、第1運転から第2運転に切り替える。
【0139】
ポンプ1の回転数の定格値に対する閾値回転数の比率は、例えば、0.3以上0.8以下である。この比率は、0.3以上0.5以下であってもよい。
【0140】
本実施の形態において、ランキンサイクル装置50は、少なくとも1つのセンサを備える。少なくとも1つのセンサの検出値に応じて、第1運転から第2運転に切り替える。この構成によれば、ランキンサイクル装置50の状態に応じた適切なタイミングで第2運転が開始されうる。少なくとも1つのセンサは、例えば、第1圧力センサ8aを含む。少なくとも1つのセンサは、例えば、第2圧力センサ8bを含む。少なくとも1つのセンサは、例えば、第1温度センサ9aを含む。少なくとも1つのセンサは、例えば、第2温度センサ9bを含む。少なくとも1つのセンサは、例えば、第3温度センサ9cを含む。少なくとも1つのセンサは、例えば、第4温度センサ9dを含む。少なくとも1つのセンサは、例えば、電力センサ19を含む。少なくとも1つのセンサは、例えば、電流センサ24を含む。
【0141】
本実施の形態において、ランキンサイクル装置50の運転状況に応じて、第1運転から第2運転に切り替わる際の膨張機3の回転数が変化する。本発明者らの検討によれば、膨張機3の回転数が所定の閾値であるときに第1運転から第2運転に切り替える構成を採用すると、回転数が所定の閾値まで低下する前に発電機18の駆動状態が回生駆動から力行駆動に切り替わることがある。これに対し、本実施の形態のこの構成によれば、第1運転から第2運転に切り替わる際の膨張機3の回転数を固定値とすることによるこのような弊害を解消できる。この文脈において、運転状況は、例えば、蒸発器2に供給される加熱媒体Gの温度を含む。運転状況は、例えば、蒸発器2に供給される加熱媒体Gの流量を含む。運転状況は、例えば、蒸発器2で加熱媒体Gから作動流体に与えられる熱量を含む。運転状況は、例えば、蒸発器2から流出する作動流体の温度を含む。なお、第1運転から第2運転への切り替えを、発電機18が発電した電力及び電流からなる群より選択される少なくとも1つとともに、膨張機3の回転数にも応じて行うことは可能である。
【0142】
本実施の形態において、ランキンサイクル装置50は、コンバータ17を備える。コンバータ17は、発電機18に接続されている。コンバータ17は、複数のスイッチング素子21を有する。
【0143】
本実施の形態において、制御装置20は、コンバータ17から出力される出力周波数を制御することによって、発電機18の回転数及び膨張機3の回転数を制御する。この構成によれば、膨張機3の回転数を制御し易い。第1運転では、発電機18の現在の回転数よりも低い指令回転数ω*が生成され、その指令回転数ω*に応じた出力周波数がコンバータ17から出力される。なお、出力周波数は、電圧の周波数であってもよく、電流の周波数であってもよい。また、出力周波数は、PMW制御等に基づく疑似的な交流波の周波数であってもよい。
【0144】
具体的には、本実施の形態において、出力周波数は、複数のスイッチング素子21のスイッチング周波数により規定される周波数である。制御装置20は、第1運転において、コンバータ17の複数のスイッチング素子21のスイッチングを実行する。制御装置20は、第2運転において、コンバータ17の複数のスイッチング素子21のスイッチングを停止する。より具体的には、第2運転では、複数のスイッチング素子21はオフ状態に維持される。
【0145】
本実施の形態において、ランキンサイクル装置50は、弁を備える。ランキンサイクル装置50では、循環流路15及びバイパス流路16が設けられている。循環流路15には、膨張機3が配置されている。バイパス流路16は、膨張機3を迂回している。バイパス流路16には、弁5が配置されている。
【0146】
本実施の形態において、第1運転の終了時点における弁5の開度は、第1運転の開始時点における弁5の開度よりも大きい。この構成によれば、第1運転により、膨張機差圧ΔPを小さくし易い。
【0147】
ここで、停止運転において弁5の開度の増加が開始されてから終了するまでの期間の長さを基準長さと定義する。第1運転において制御装置20の制御下で膨張機3の回転数を低下させる期間の長さを第1長さと定義する。このとき、第1長さは、基準長さよりも長い。この構成によれば、第1長さを確保し、膨張機3の回転数をゆっくりと低下させ易い。このようにすれば、発電機18に過電圧が印加されたり過電流が印加されたりする事態を回避し易い。
【0148】
本実施の形態において、弁5の開度の増加が開始されるタイミングと、制御装置20の制御下での膨張機3の回転数の低下が開始されるタイミングとは、同じである。このようにすれば、停止運転に要する時間を短縮できる。ただし、これらのタイミングは、ずれていてもよい。具体的には、弁5の開度の増加が開始されるタイミングは、制御装置20の制御下での膨張機3の回転数の低下が開始されるタイミングよりも後であってもよい。また、弁5の開度の増加が開始されるタイミングは、制御装置20の制御下での膨張機3の回転数の低下が開始されるタイミングよりも前であってもよい。
【0149】
本実施の形態において、熱発電システム100は、上記ランキンサイクル装置50及び熱流路40を備える。熱流路40は、熱源30からの熱をランキンサイクル装置50に供給する。
【0150】
本実施の形態において、熱源30からの熱は、排熱である。この構成では、ランキンサイクル装置50に与えられる熱量が不安定になりうる。例えば、熱源30を構成する設備において火力が一時的に低下し、加熱媒体Gの温度及び流量が一時的に低下することがある。この場合、膨張機差圧ΔPが小さく、膨張機3を流れる作動流体の流量が小さく、かつ、膨張機3の回転数が大きいという状況が生じうる。この状況において、仮に膨張機3の減速停止を実行すると、発電機18が力行駆動しうる。これに対し、本実施の形態では、停止運転において第1運転と第2運転とをこの順に行うことにより、発電機18の力行駆動を回避できる。このため、この構成は、本実施の形態に係る停止運転を採用する利益を享受し易い構成であるといえる。
【0151】
本実施の形態において、ランキンサイクル装置50は、膨張機3及び発電機18を備える。発電機18は、膨張機3に連結されている。ランキンサイクル装置50の停止方法は、第1工程、第2工程及び切替工程を含む。第1工程では、制御下で膨張機3の回転数を低下させる第1運転を行う。第2工程では、膨張機3をフリーランさせる第2運転を行う。切替工程では、第1運転から第2運転への切り替えを行う。この切り替えは、発電機18が回生駆動しているときに該切り替えを行うように、発電機18が発電した電力及び電流からなる群より選択される少なくとも1つに応じて行う。
【0152】
コンピュータによる実行時において、上記停止方法をコンピュータに実行させる指示を備えた、コンピュータプログラムを実現可能である。上記コンピュータプログラムが記録された、コンピュータ読出可能な非一過性の記録媒体を実現可能である。記録媒体は、オフラインの記録媒体であってもよく、オンライン上の記録媒体であってもよい。オフラインの記録媒体は、例えば、HDD、SDカード、USBメモリ等の半導体記録媒体、フレキシブルディスク等の磁気記録媒体、MO等の光磁気記録媒体、CD、DVD等の光学記録媒体、等である。オンライン上の記録媒体は、例えば、クラウドサーバー、FTPサーバー、ネットワークストレージ等である。
【0153】
本開示において採用可能な技術について、さらに説明する。
【0154】
上述の説明から理解されるように、停止運転において、第1運転から第2運転に切り替えるか否かを、1つの条件に基づいて決定してもよく、複数の条件に基づいて決定してもよい。例えば、第1運転から第2運転に切り替えるか否かを、膨張機差圧ΔP及び発電機18が発電している電力の両方に基づいて決定してもよく、これらの一方のみに基づいて決定してもよい。また、第1運転から第2運転に切り替えるか否かを、膨張機差圧ΔP及び発電機18が発電している電流の両方に基づいて決定してもよく、これらの一方のみに基づいて決定してもよい。また、第1運転から第2運転に切り替えるか否かを、発電機18が発電している電力及び電流の両方に基づいて決定してもよく、これらの一方のみに基づいて決定してもよい。
【0155】
第1の運転例では、第1運転から第2運転への切り替えを行うか否かの判断に用いる条件の数は、1つである。1つの条件の一例は、発電機18が発電している電力がゼロよりも大きく閾値電力以下であるという条件である。1つの条件の別例は、発電機18が発電している電流がゼロよりも大きく閾値電流以下であるという条件である。具体的には、第1の運転例では、第1運転から第2運転への切り替えは、1つの条件が成立していることを制御装置20が検出したときに行われる。
【0156】
第2の運転例では、第1運転から第2運転への切り替えを行うか否かの判断に用いる条件の数は、複数である。複数の条件は、発電機18が発電している電力がゼロよりも大きく閾値電力以下であるという条件を含みうる。複数の条件は、発電機18が発電している電流がゼロよりも大きく閾値電流以下であるという条件を含みうる。複数の条件は、膨張機差圧ΔPがゼロよりも大きく閾値圧力以下であるという条件を含みうる。複数の条件は、ポンプ1の回転数がゼロよりも大きく閾値回転数以下であるという条件を含みうる。具体的には、第2の運転例では、第1運転から第2運転への切り替えは、複数の条件が成立していることを制御装置20が検出したときに行われる。
【0157】
高圧PHを、温度センサを用いて推定してもよい。例えば、第1流路15aにおける気液2相の状態の作動流体の温度を温度センサで検出し、その検出値に基づいて高圧PHを推定できる。図2の状態(3)が気液2相の状態である例では、第1温度センサ9aの検出値から高圧PHを推定できる。低圧PLを、温度センサを用いて推定してもよい。例えば、第2流路15bにおける気液2相の状態の作動流体の温度を温度センサで検出し、その検出値に基づいて低圧PLを推定できる。温度センサによる高圧PHの推定値と温度センサによる低圧PLの推定値とから、圧力差PDを推定することも可能である。
【0158】
バイパス弁5は、電磁弁のような開閉弁であってもよい。開閉弁は、開度が0%及び100%の2値のいずれかに設定される弁を指す。
【0159】
バイパス弁5として、電動ボールバルブを採用可能である。電動ボールバルブは、弁の部分と弁前後の配管とで流路断面積の変化が小さい。このため、電動ボールバルブによれば、作動流体を循環させる際の流路抵抗を小さくすることができる。
【0160】
ランキンサイクルの状態変化は、図3に示す態様のものに限定されない。図3では、配管における圧力損失、配管における放熱損失等の各種の損失が無視されている。現実には、モリエル線図はこれらが反映された形状をとる。
【0161】
表1から表4の外気温度の区間の分割の仕方は、一例に過ぎず、本開示を限定するものではない。表1から表4の数値は、ポンプ1、ファン7及び膨張機3の仕様によって変化しうる。
【0162】
表1から表4のRp0、Rf0、Re0及びΔP0を、外気温度及び別のパラメータに依存させることも可能である。別のパラメータの例は、蒸発器2に流入する加熱媒体Gの温度の検出値である。この検出値は、第4温度センサ9dによって得られる。Rp0、Rf0、Re0及びΔP0を第4温度センサ9dの検出値に応じて細かく設定することにより、ランキンサイクル装置50の運転効率が向上しうる。
【0163】
ランキンサイクルにおけるエンタルピの変化幅が適切となるように蒸発器2を構成することは必須ではない。そのように蒸発器2が構成されていない場合であっても、ランキンサイクルにおける圧力の変化幅が適切となるようにランキンサイクル装置50を制御することによって、ランキンサイクルが安定するという効果が得られる。
【0164】
ランキンサイクル装置が、図示した要素の全てを有していることは必須ではない。例えば、バイパス弁5は、省略可能である。また、再熱器6は省略可能である。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本開示に係る技術は、直接接触型ランキンサイクル装置にもバイナリ式ランキンサイクル装置にも適用されうる。直接接触型ランキンサイクル装置は、蒸発器が加熱媒体に直接接触するものである。バイナリ式ランキンサイクル装置は、蒸発器と加熱媒体との間に水冷媒回路等の別のサイクルを有するものである。
【符号の説明】
【0166】
1 ポンプ
2 蒸発器
3 膨張機
4 凝縮器
5 バイパス弁
6 再熱器
6a 第1部分
6b 第2部分
7 ファン
8a 第1圧力センサ
8b 第2圧力センサ
9a 第1温度センサ
9b 第2温度センサ
9c 第3温度センサ
9d 第4温度センサ
14 作動流体流路
15 循環流路
15a 第1流路
15b 第2流路
16 バイパス流路
17 コンバータ
18 発電機
20 制御装置
21 スイッチング素子
22 コンバータ回路部
23 コンバータ制御部
24 電流センサ
25 制御信号
26 3相配線
27 U相配線
28 V相配線
29 W相配線
30 熱源
40 熱流路
50 ランキンサイクル装置
100 熱発電システム
G 加熱媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6