(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155405
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】静電容量タッチパネルおよび表示装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20221005BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
G06F3/041 422
G06F3/041 490
G06F3/044 128
G06F3/044 122
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058877
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
(71)【出願人】
【識別番号】000117940
【氏名又は名称】ノリタケ伊勢電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 光
(74)【代理人】
【識別番号】100205383
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 諭史
(74)【代理人】
【識別番号】100100251
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 操
(72)【発明者】
【氏名】岡井 正典
(72)【発明者】
【氏名】中尾 剛啓
(57)【要約】
【課題】ダイヤモンドパターンで形成されたセンサー部を有するタッチパネルにおいて、モアレの発生が抑制された静電容量タッチパネルを提供する。
【解決手段】静電容量タッチパネル11は、タッチ面を有するガラス基板と、ダイヤモンド形状のX軸格子をX軸方向に複数並べたパターンが、複数列、平行に設けられたX軸センサー部と、Y軸格子をY軸方向に複数並べたパターンが、複数列、平行に設けられたY軸センサー部と、絶縁層とが積層され、タッチ面から見た平面視において、X軸格子17A、17BとY軸格子18A、18Bとは重ならずマトリックス状に配置され、X軸格子17A、17BおよびY軸格子18A、18Bはそれぞれ微細格子からなる金属薄膜で形成されており、X軸格子17A、17Bの微細格子およびY軸格子18A、18Bの微細格子は、X軸方向に対してそれぞれ鋭角に傾斜している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチ面を有するガラス基板と、ダイヤモンド形状のX軸格子をX軸方向に複数並べたパターンが、複数列、平行に設けられたX軸センサー部と、Y軸格子を前記X軸方向と直交するY軸方向に複数並べたパターンが、複数列、平行に設けられたY軸センサー部と、前記X軸センサー部と前記Y軸センサー部との間に設けた絶縁層とが積層された静電容量タッチパネルであって、
前記タッチ面から見た平面視において、前記X軸格子と前記Y軸格子とは重ならずマトリックス状に配置され、
前記X軸格子および前記Y軸格子はそれぞれ微細格子からなる金属薄膜で形成されており、前記X軸格子の前記微細格子および前記Y軸格子の前記微細格子は、前記X軸方向に対してそれぞれ鋭角に傾斜していることを特徴とする静電容量タッチパネル。
【請求項2】
前記X軸格子の前記微細格子および前記Y軸格子の前記微細格子の内角が60°~120°の範囲であり、
前記X軸格子の前記微細格子および前記Y軸格子の前記微細格子が10°~30°および60°~80°の範囲の角度で傾斜していることを特徴とする請求項1記載の静電容量タッチパネル。
【請求項3】
前記X軸センサー部において、前記X軸方向で隣接するX軸格子同士は、互いに近接した箇所で前記微細格子の格子辺と平行な金属薄膜で接続され、
前記Y軸センサー部において、前記Y軸方向で隣接するY軸格子同士は、互いに近接した箇所で前記微細格子の格子辺と平行な金属薄膜で接続されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の静電容量タッチパネル。
【請求項4】
前記X軸格子には該X軸格子の外郭を構成する前記金属薄膜からなる枠線が形成されておらず、かつ、前記Y軸格子には該Y軸格子の外郭を構成する前記金属薄膜からなる枠線が形成されていないことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項記載の静電容量タッチパネル。
【請求項5】
前記X軸格子の前記微細格子および前記Y軸格子の前記微細格子の前記X軸方向に対する傾斜角度が互いに等しいことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項記載の静電容量タッチパネル。
【請求項6】
所定の画素配列パターンで構成された表示領域を有する表示ユニットと、該表示ユニット上に設置される静電容量タッチパネルとを備える表示装置であって、
前記静電容量タッチパネルが請求項1から請求項5までのいずれか1項記載の静電容量タッチパネルであることを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチ面(XY平面)の任意の位置にユーザーの指などが接近したことを静電容量の変化により検出する静電容量タッチパネル、および該静電容量タッチパネルを備える表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
家電機器、AV機器、PC/OA機器、産業機械、その他の電子デバイスにおいて、各機器への入力手段の1つとして投影型静電容量方式のタッチパネルが使用されている。投影型静電容量方式は、X軸方向とY軸方向にそれぞれ所定パターンで配列された複数のセンサー電極を有している。このタッチパネルは、電極パターンによって、静電容量の変化を読み取り、タッチポジションを検出するものである。
【0003】
従来のタッチパネルの具体的な構造として、一方のガラス基板にX軸方向の検知用のセンサー電極が形成され、他方のガラス基板にY軸方向の検知用のセンサー電極が形成され、X軸のセンサー電極およびY軸のセンサー電極が、2つのガラス基板間において、対向して挟み込まれた構造が知られている。X軸およびY軸のセンサー電極は金属薄膜で形成されている。また、センサー電極のパターンとしては、ダイヤモンド形の格子を縦(Y)横(X)に並べた形状のパターン(以下、ダイヤモンドパターンとも言う。)が知られている(特許文献1参照)。具体的には、X軸方向に複数のX軸格子が並べられ、Y軸方向に複数のY軸格子が並べられている。さらに、各格子はそれぞれ、より微細な格子(微細格子)で形成されている。
【0004】
このように、センサー電極のパターンを金属薄膜で形成する場合、抵抗値が低く感度に優れるという利点がある。しかし一方で、タッチパネルを液晶ディスプレイなどの表示ユニットに貼り合わせると、電極パターンと表示ユニットの画素パターンとが重畳して、タッチ面上にモアレ(干渉縞)が発生する場合がある。モアレの発生により、タッチ面が見えにくくなり、操作性の低下を招くおそれがある。
【0005】
従来、モアレの発生を抑制する手法として、例えばメッシュの形状をランダムにする技術が知られている(特許文献2参照)。特許文献2では、並進対称性を有さず、回転対称性を有するように電極パターンを形成することで、モアレの発生の抑制を図っている。しかし、ランダムな形状がタッチ感度や表示などに悪影響を及ぼす懸念もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2015/137477号
【特許文献2】特許第5406320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、ダイヤモンドパターンで形成されたセンサー部を有するタッチパネルにおいて、モアレの発生が抑制された静電容量タッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の静電容量タッチパネルは、タッチ面を有するガラス基板と、ダイヤモンド形状のX軸格子をX軸方向に複数並べたパターンが、複数列、平行に設けられたX軸センサー部と、Y軸格子を上記X軸方向と直交するY軸方向に複数並べたパターンが、複数列、平行に設けられたY軸センサー部と、上記X軸センサー部と上記Y軸センサー部との間に設けた絶縁層とが積層された静電容量タッチパネルであって、上記タッチ面から見た平面視において、上記X軸格子と上記Y軸格子とは重ならずマトリックス状に配置され、上記X軸格子および上記Y軸格子はそれぞれ微細格子からなる金属薄膜で形成されており、上記X軸格子の上記微細格子および上記Y軸格子の上記微細格子は、上記X軸方向に対してそれぞれ鋭角に傾斜していることを特徴とする。
【0009】
本発明において、X軸格子の微細格子がX軸方向に対して鋭角に傾斜しているとは、X軸格子の微細格子における対角線とX軸方向とのなす角度が、鋭角(0°を超えて90°未満の角度)であることをいう。また、Y軸格子の微細格子がX軸方向に対して鋭角に傾斜しているとは、Y軸格子の微細格子における対角線とX軸方向とのなす角度が鋭角(0°を超えて90°未満の角度)であることをいう。
【0010】
上記X軸格子の上記微細格子および上記Y軸格子の上記微細格子の内角が60°~120°の範囲であり、上記X軸格子の上記微細格子および上記Y軸格子の上記微細格子が10°~30°および60°~80°の範囲の角度で傾斜していることを特徴とする。
【0011】
上記X軸センサー部において、上記X軸方向で隣接するX軸格子同士は、互いに近接した箇所で上記微細格子の格子辺と平行な金属薄膜で接続され、上記Y軸センサー部において、上記Y軸方向で隣接するY軸格子同士は、互いに近接した箇所で上記微細格子の格子辺と平行な金属薄膜で接続されることを特徴とする。
【0012】
上記X軸格子には該X軸格子の外郭を構成する上記金属薄膜からなる枠線が形成されておらず、かつ、上記Y軸格子には該Y軸格子の外郭を構成する上記金属薄膜からなる枠線が形成されていないことを特徴とする。
【0013】
上記X軸格子の上記微細格子および上記Y軸格子の上記微細格子の上記X軸方向に対する傾斜角度が互いに等しいことを特徴とする。
【0014】
本発明の表示装置は、所定の画素配列パターンで構成された表示領域を有する表示ユニットと、該表示ユニット上に設置される静電容量タッチパネルとを備える表示装置であって、上記静電容量タッチパネルが本発明の静電容量タッチパネルであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の静電容量タッチパネルは、X軸方向に沿って配列したダイヤモンド形状のX軸格子と、Y軸方向に沿って配列したダイヤモンド形状のY軸格子とがマトリックス状に配列されたタッチパネルであり、タッチ面から見た平面視において、X軸格子とY軸格子とは重ならずマトリックス状に配置され、X軸格子およびY軸格子はそれぞれ微細格子からなる金属薄膜で形成されており、X軸格子の微細格子およびY軸格子の微細格子は、X軸方向に対してそれぞれ傾斜しているので、微細格子の交点がX軸方向およびY軸方向に規則的に配列されにくくなり、モアレの発生を抑制できる。
【0016】
本発明の表示装置は、所定の画素配列パターンで構成された表示領域を有する表示ユニットと、該表示ユニット上に設置される静電容量タッチパネルとを備え、該静電容量タッチパネルとして本発明の静電容量タッチパネルを有するので、表示ユニットの画素配列パターンとタッチパネルのセンサー部の配線パターンとの干渉を抑制でき、モアレの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の表示装置の一例を示す展開図である。
【
図2】
図1のタッチパネルの拡大断面を示す模式図である。
【
図3】本発明のタッチパネルの一例を示す平面図である。
【
図4】
図3のX軸格子およびY軸格子の境界を示す拡大図である。
【
図6】本発明のタッチパネルの他の例を示す平面図の拡大図である。
【
図7】表示ユニットの画素配列パターンの一例を表す概略図である。
【
図8】表示ユニットの画素配列パターンの他の例を表す概略図である。
【
図9】実施例におけるモアレの発生の評価方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の表示装置の一例を
図1に基づいて説明する。
図1に示すように、表示装置1は、液晶ディスプレイ(LCD)などの表示ユニット21と、表示ユニット21の表示画面側に配置される静電容量タッチパネル11とを組み合わせて構成される。表示ユニット21は、後述するように所定の画素配列パターンで構成された表示領域22を有している。静電容量タッチパネル11は、X方向およびY方向に広がる任意のタッチ位置を検出できるタッチスイッチパネルである。
【0019】
図1に示すように、静電容量タッチパネル11は、X軸方向検知用のX軸センサー部13(
図2参照)を有する透光性の第1のガラス基板12と、Y軸方向検知用のY軸センサー部15を有する透光性の第2のガラス基板14とを備えてなり、第1のガラス基板12および第2のガラス基板14とが貼り合わされた積層構造を有する。第1のガラス基板12の表面がタッチ面12aとなり、このタッチ面12aの反対面12bにX軸センサー部13が設けられている。また、第2のガラス基板14の片面にY軸センサー部15が設けられている。X軸センサー部13およびY軸センサー部15は、2つのガラス基板間において、絶縁層16を介して対向して挟み込まれている。
【0020】
各センサー部のセンサー電極と配線で接続された外部接続端子にフレキシブルプリント配線板(FPC)が接続されている。FPCを介してタッチ検出を行なうコントロール部(図示省略)が接続される。また、耐環境特性を向上させるために、FPCに替えて金属製のリードフレームを設けてもよい。本発明の静電容量タッチパネルは、センサー電極と指との間で静電結合が起きて電極の静電容量が変化することを利用するものであり、コントロール部における具体的な検出手順などは公知の手順を採用できる。
【0021】
図2にパネルの拡大断面の模式図を示す。
図2に示すように、X軸センサー部13は、第1のガラス基板12のタッチ面12aの反対面に形成された中間層13bと、その上に形成された金属薄膜からなるセンサー電極13aとを有する。また、Y軸センサー部15は、第2のガラス基板14の片面(第1のガラス基板側)に形成された金属薄膜からなるセンサー電極15aと、その上に形成された中間層15bとを有する。タッチ面12aから見ると、いずれのセンサー部においても、中間層の下に金属薄膜が位置するように形成されている。これにより、可視光の反射率を低減させて視認性を確保している。
【0022】
センサー電極13a、15aを構成する金属薄膜は、アルミニウム(Al)、Al合金、ニオビウム、モリブデン、金、銀、銅などの材料を用いて、公知の薄膜成形方法により形成される。これらの中でも、耐環境特性に優れ、低コストであることから、Al薄膜を採用することが好ましい。
【0023】
中間層13b、15bは、(1)Cr、Mo、Wから選ばれる少なくとも1つの金属を含む薄膜である。また、中間層13b、15bは、可視光の干渉により入射光を吸収して黒色に見える層(黒色層)である。タッチ面12aからは、スイッチ部は黒色に見え、反射を抑制できる。中間層は、上述のAl薄膜などの形成と同様に、スパッタリングなどにより形成できる。また、中間層には、(2)Alの酸化物(Al2O3など)およびTiの酸化物(TiO2など)から選ばれる少なくとも1つの酸化物を所定量含むことが好ましい。これら酸化物を所定量含むことで、反射率の更なる低減が図れる。中間層として、より好ましくはMoとAl2O3の混合層である。また、中間層の膜厚は、5nm~500nmが適当であり、より好ましくは20nm~200nmである。
【0024】
第1のガラス基板12および第2のガラス基板14は、透光性の絶縁基板であり、ソーダライムガラス、石英ガラス、硼珪酸ガラス、アルカリ成分を含まない無アルカリガラスなどを採用できる。高い透過率を有し、かつ、一般建材の窓ガラスに使用され非常に安価であることから、ソーダライムガラスを用いることが好ましい。 また、各ガラス基板の厚みは、それぞれ0.5~5mm程度、好ましくは0.5~3.0mm程度である。
【0025】
図2において、X軸センサー部13とY軸センサー部15との間、厳密にはX側のセンサー電極13aとY側の中間層15bとの間には、各センサー電極を絶縁するために絶縁層16が形成されている。絶縁層の厚みは、50μm~500μmが適当である。絶縁層の厚みが500μmをこえると、センサー電極間のギャップが大きくなり、X軸センサー部とY軸センサー部に感度差が生じる。
【0026】
また、
図1および
図2ではタッチ面側の第1のガラス基板にX軸センサー部を設けているが、第1のガラス基板にY軸センサー部を設け、第2のガラス基板にX軸センサー部を設ける形態としてもよい。
【0027】
次に、本発明のタッチパネルのX軸センサー部とY軸センサー部の配線パターンについて
図3を用いて説明する。
図3に示すように、タッチパネル1の各センサー部は、ダイヤモンドパターンでパターニングされている。具体的には、X軸センサー部は、ダイヤモンド形のX軸格子(例えば17A、17B、17C)をX軸方向に一直線上に複数並べたパターンが、複数列、平行に配列されて構成される。また、Y軸センサー部は、ダイヤモンド形のY軸格子(例えば18A、18B、18C、18D)をX軸方向と直交するY軸方向に一直線上に複数並べたパターンが、複数列、平行に配列されて構成される。X軸センサー部とY軸センサー部とは、XY平面で見ると(平面視で)重ならない位置に配置され、X軸格子およびY軸格子がマトリックス状に配列されている。また、X軸格子およびY軸格子の内部は、より微細なダイヤモンド形の格子(微細格子)で形成されている。
【0028】
ここでまず、従来のタッチパネルの配線パターンについて
図10を用いて説明する。
図10(a)は配線パターンを示す平面図であり、
図10(b)はその一部拡大図である。
図10(a)に示すように、タッチパネル51において、X軸センサー部は、ダイヤモンド形のX軸格子(例えば52A、52B)をX軸方向に一直線上に複数並べたパターンが、複数列、平行に配列されて構成される。また、Y軸センサー部は、ダイヤモンド形のY軸格子(例えば53A、53B)をX軸方向と直交するY軸方向に一直線上に複数並べたパターンが、複数列、平行に配列されて構成される。X軸センサー部とY軸センサー部とは、XY平面で見ると(平面視で)重ならない位置に配置され、X軸格子およびY軸格子がマトリックス状に配列されている。
【0029】
図10(a)に示すように、X軸方向で隣接するX軸格子52A、52Bは、X軸方向と平行に延びた接続部54によって接続されている。また、Y軸方向で隣接するY軸格子53A、53Bは、Y軸方向と平行に延びた接続部55によって接続されている。接続部54と接続部55は、X軸格子およびY軸格子の格子辺の方向とは異なる方向で結線され、
図10(a)に示すように、直交して交差している。
【0030】
また、
図10(a)において、X軸格子およびY軸格子の内部は、より微細なダイヤモンド形の格子(微細格子)で形成されている。これら微細格子は、
図10(b)に示すようにX軸方向に平行に配列されている。言い換えると、微細格子において対向する頂点を結んだ対角線LとX軸がなす角度は0°になっている。このような従来構成では、複数の微細格子の各交点は、X軸方向に平行に、かつ、Y軸方向に平行に並ぶことになる。この規則的な配列が、タッチパネルの裏側に配置される表示パネルの画素配列パターンと干渉してモアレが生じるおそれがある。
【0031】
これに対して、本発明のタッチパネルでは、
図3に示すように、X軸格子の微細格子およびY軸格子の微細格子が、X軸方向に対してそれぞれ鋭角に傾斜している。この点について、
図3のA部拡大図である
図4を用いて説明する。
図4に示すように、X軸格子17Bにおける微細格子の対角線L
xは、X軸方向に対して角度α
x傾斜している。また、Y軸格子18Bにおける微細格子の対角線L
yは、X軸方向に対して角度α
y傾斜している。角度α
xおよび角度α
yは、それぞれ鋭角、つまり0度より大きく90度より小さい角度になっている。
【0032】
角度α
xおよび角度α
yはそれぞれ、好ましくは10°~30°および60°~80°の範囲の角度であり、より好ましくは10°~25°および65°~80°の範囲の角度である。特に、上記角度が10°~30°および60°~80°の範囲の角度の場合、後述の実施例で示すように、メッシュピッチP(
図5参照)や画素配列パターンが異なる場合であってもモアレの発生を好適に抑制できる。
【0033】
また、角度α
xおよび角度α
yは、互いに等しい角度であってもよく、異なる角度であってもよい。
図4に示すように、角度α
xと角度α
yを等しい角度にすることで、X軸格子とY軸格子の内部が互いに等しい角度で傾斜した微細格子からなり、タッチパネルにおいてセンサー部を目立ちにくくすることができる。また、センサー部を目立ちにくくするため、X軸格子の微細格子とY軸格子の微細格子は、互いに同一のメッシュピッチおよび同一の線幅で形成されることが好ましい。
【0034】
図5には、微細格子の部分拡大図を示す。この格子状部分は、例えば
図2に示したような、センサー電極と中間層が上記順序で重なったものである。格子間が開口部であり、この部分にはセンサー電極や中間層は形成されていない。格子状部分は、非常に微細な格子状であることから、一見して目視で透明に見える透光部となる。格子状部分は、通常、線幅Wとして3μm~100μm、メッシュピッチPとして0.2mm~1mm程度とする。例えば、線幅WやメッシュピッチPは、表示パネルの画素配列パターンのピッチに応じて選択してもよい。なお、メッシュピッチPの好ましい範囲は0.2mm~0.5mmである。
【0035】
図5に示すように、各微細格子は1組の平行な格子辺を2つ組み合わせて構成されている。微細格子の4つの内角のうち、少なくとも2つは同じ角度である。
図5において、互いに隣接した内角βおよび内角γは、それぞれ60°~120°の範囲であることが好ましい。特に、内角βおよび内角γは80°~110°の範囲であることがより好ましく、85°~95°の範囲であることがさらに好ましい。なお、内角βおよび内角γは、同じ角度(β=γ=90°)であってもよいが、微細格子の交点をより不規則に配置できることから、内角βと内角γは異なる角度であることが好ましい。
【0036】
図4に戻り、X軸格子およびY軸格子についてさらに説明する。
図4に示すように、タッチパネル1のX軸センサー部において、X軸方向で隣接するX軸格子17Aおよび17Bは、互いに近接した箇所で微細格子の格子辺と平行に延びた接続部19で接続されている。また、Y軸センサー部において、Y軸方向で隣接するY軸格子18Aおよび18Bは、互いに近接した箇所で微細格子の格子辺と平行に延びた接続部20で接続されている。
図4では、接続部19および接続部20はそれぞれ1線分で形成されている。
図4において、互いに近接した箇所とは、互いに対向するダイヤモンド形のX軸格子(またはY軸格子)同士の頂点付近の箇所である。このように、X軸格子(またはY軸格子)同士を近接した箇所で接続することで、可能な限り配線を短くでき、抵抗値を小さくした構造にすることができる。また、接続部19および接続部20は、
図6に示すように、微細格子の格子辺と平行に延びた2線分を接続することでも形成できる。この場合も、隣接するX軸格子(またはY軸格子)同士は、互いに近接した箇所で接続されている。
なお、
図4および
図6に示す接続部19および接続部20は、微細格子を構成する金属薄膜と同じ金属薄膜で構成される。また、接続部19および接続部20を、微細格子の格子辺と平行に延びるように形成することで、微細格子の格子辺の方向と異なる方向で結線される場合(
図10参照)に比べて、接続部の存在を目立ちにくくすることができる。
【0037】
また、
図4のタッチパネル11において、X軸格子17A、17Bには該X軸格子の外郭を構成する金属薄膜からなる枠線が形成されていない。また、Y軸格子18A、18Bにも該Y軸格子の外郭を構成する金属薄膜からなる枠線が形成されていない。
図4では、これら枠線を仮想線として一点鎖線で示している。タッチパネル1において、仮にこのような枠線を形成した場合には、枠線のX軸方向に対する角度と、微細格子の格子辺のX軸方向に対する角度が異なるようになり、X軸格子とY軸格子の存在が際立ってしまうと考えられる。そのため、枠線を形成せずに、電極をランダムに切断したような形状にすることで、ダイヤモンド形を維持しつつ、センサー部をより目立ちにくくすることができる。
【0038】
また、XY平面において、X軸格子とY軸格子の間には隙間が形成されている。この隙間の幅d(つまりX軸格子の枠線(仮想線)とY軸格子の枠線(仮想線)の距離)は、センサー部全体において略一定となるように形成されることが好ましい。幅dは、例えば10μm~100μmの範囲に設定され、好ましくは20μm~50μmに設定される。これにより、X軸格子とY軸格子の間の隙間が小さくなり、センサー部をより目立ちにくくすることができる。
【0039】
各センサー部のセンサー電極は、金属薄膜から構成される。例えば、金属薄膜がAl薄膜である場合、Al薄膜は、Alの固体ターゲット(蒸着材)を用いて、真空プロセスである、スパッタリングまたは真空蒸着により形成される。また、配線もセンサー電極と同時に一体に形成することができる。真空プロセスとしては、均一な膜の形成が可能であることからスパッタリングを採用することがより好ましい。スパッタリングは、固体ターゲットに加速したアルゴンイオンを衝突させて、ターゲット表面から飛び出した原子または分子をガラス基板上に付着させて形成する方法である。
【0040】
Al薄膜を格子状などの所定形状に加工する方法は特に限定されないが、センサー電極に接続される配線や、上述の微細格子部分を精度よく形成可能であることから、公知のフォト解像技術を用いることが好ましい。例えば、Al薄膜をスパッタリングまたは真空蒸着で形成した後、エッチングパタンのマスク層をレジスト材料を用いてスクリーン印刷により形成し、所定のエッチング液を用いて湿式エッチングにより湿式エッチングして微細配線を形成する。なお、Al薄膜の膜厚は、100nm~5000nmが適当である。
【0041】
図1~
図6の形態では、静電容量タッチパネルを、2つのガラス基板を重ね合わせてその間に各センサー部が挟み込まれた構造としたが、これに限らず、ガラス基板1枚の構造としてもよい。
【0042】
続いて、上述したタッチパネルが重ね合わされる表示ユニットについて説明する。
図7には表示ユニットの画素配列パターンの一例の概略を示す。
図7に示すように、表示ユニット21の表示領域22には、複数の画素23がX軸方向およびY軸方向に沿ってマトリックス状に配列されて構成されている。画素23は、3つの副画素(赤色副画素R、緑色副画素G、および青色副画素B)がX軸方向に沿って配列されている。
図7において、各副画素は、Y軸方向に縦長の矩形状になっている。副画素の短辺の長さ(X軸方向長さ)および副画素の長辺の長さ(Y軸方向長さ)は、解像度などによって適宜設定される。
【0043】
各副画素R、G、Bはブラックマトリックス24によって囲われており、画素配列パターンは、ブラックマトリックス24のパターン(BMパターン)25によって規定されている。この場合、BMパターン25は、画素配列パターンを反転させたパターンであり、同様のパターンとして扱うことができる。
【0044】
表示ユニット21と上述のタッチパネルとを重ね合わせた際には、表示ユニット21のBMパターン25とタッチパネルの配線パターンとが干渉することによってモアレが発生するが、上記のように配線パターンを構成する微細格子をX軸方向に対して鋭角に傾斜させることで、BMパターン25とタッチパネルの配線パターンの干渉を抑制できる。
【0045】
BMパターン25(画素配列パターン)は、副画素のX軸方向の配列ピッチp1と副画素のY軸方向の配列ピッチp2で表すことができる。
図7では、配列ピッチp1よりも配列ピッチp2の方が長くなっている。また、配列ピッチp1および配列ピッチp2は、解像度などによって適宜設定される。具体的なサイズとして、配列ピッチp1は、例えば0.04mm~0.08mmである。また、配列ピッチp2は、例えば0.12mm~0.2mmである。
【0046】
本発明に用いられる表示ユニットの画素配列パターンは
図7の構成に限らない。例えば、
図8の表示ユニット21’のように、画素配列パターンを、X軸方向に配列された副画素が交互にY軸方向に所定距離オフセットされたパターンとしてもよい。また、画素については、互いに異なる少なくとも3色の複数色の光を射出する複数の副画素を含む構成であればよい。
【0047】
なお、表示ユニット21、21’は、液晶ディスプレイに限らず、プラズマパネル、有機ELパネル、無機ELパネルなどの表示パネルで構成されてもよい。
【実施例0048】
以下の実験により、モアレ対策の効果について検討した。まず、メッシュピッチPを0.353mmまたは0.41mmに調整した2種類のタッチパネル(TP)を作製した。該タッチパネルのX軸格子の幅、Y軸格子の幅、微細格子の内角βおよび内角γ、線幅は表1に示すとおりである。なお、このタッチパネルの電極パターンは、
図10に示すような従来構成のダイヤモンドパターンであり、X軸格子の微細格子およびY軸格子の微細格子のX軸方向に対する傾斜角度は0°である。
【0049】
【0050】
次に、画素数が異なる液晶ディスプレイ(LCD)を2種類準備した。各LCDのサイズ、副画素のX軸方向の配列ピッチp1、副画素のY軸方向の配列ピッチp2は表2に示すとおりである。
【0051】
【0052】
続いて
図9に示すように、LCD32を点灯させた状態で、その上にタッチパネル31を角度α=0°になるように重ね合わせた。そこから、5°刻みでタッチパネル31を回転させ各角度においてモアレの発生の程度を目視で評価した。モアレがほぼ見えない場合を「◎」とし、モアレが少し見える場合を「○」とし、モアレが見える場合を「△」とし、モアレがかなり見える場合を「×」と評価した。なお、この試験において角度αは、微細格子のX軸方向に対する傾斜角度と等しいといえる。結果を表3に示す。
【0053】
【0054】
表3に示すように、角度αを鋭角に傾斜させることで、概ねモアレの改善を図ることができた。特に、角度αが10°~30°および60°~80°の範囲で傾斜している場合に、モアレの改善に優れることが分かった。また、同じタッチパネル(TP)を用いた場合でも、液晶ディスプレイ(LCD)のBMパターンによって、モアレが影響を受けることが分かった。また、同じ液晶ディスプレイ(LCD)を用いた場合でも、タッチパネル(TP)のメッシュピッチPによって、モアレが影響を受けることが分かった。一般に、高解像になるほど、BMパターンが細かく、つまり配列ピッチが小さくなることから、モアレが発生しやすいと考えられるが、例えばメッシュピッチPが0.353mmのTP-1は、LCD-2を用いた場合でも広範な角度範囲でモアレの発生を抑制する結果となった。
【0055】
上記のように、X軸センサー部およびY軸センサー部において、各軸格子のダイヤモンド形状を維持しつつ、各軸格子を構成する微細格子のX軸方向に対する傾斜角度を調整することで、モアレの発生を改善できる。また、メッシュピッチや表示ユニットのBMパターンの配列ピッチを組み合わせることで、モアレの発生をより改善できる。
本発明の投影型静電容量タッチスイッチパネルは、モアレの発生が抑制されているので、家電機器、AV機器、PC/OA機器、産業機械、その他の電子デバイスなどにおける各機器への入力手段として好適に利用できる。