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  • 特開-フラックス組成物及びはんだ組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155411
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】フラックス組成物及びはんだ組成物
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/363 20060101AFI20221005BHJP
   B23K 35/26 20060101ALI20221005BHJP
   C22C 13/00 20060101ALI20221005BHJP
   C22C 13/02 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
B23K35/363 C
B23K35/26 310A
C22C13/00
C22C13/02
B23K35/363 E
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058894
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100139996
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 洋子
(72)【発明者】
【氏名】辻 悟志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 岳仁
(57)【要約】
【課題】 はんだ接合時において、ぬれ性の低下及びボイドの発生を抑制し得るフラックス組成物及びはんだ組成物の提供。
【解決手段】 (A)ロジン系樹脂と、(B)活性剤と、(C)溶剤とを含有し、前記(A)ロジン系樹脂は、(A-1)軟化点が100℃以上150℃以下であって酸価が200mgKOH/g以上のロジン系樹脂と、(A-2)軟化点が100℃以下であって酸価が140mgKOH/g以上200mgKOH/g未満のロジン系樹脂と、(A-3)軟化点が100℃以下であって酸価が20mgKOH/g以下のロジン系樹脂とを含有するフラックス組成物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ロジン系樹脂と、(B)活性剤と、(C)溶剤とを含有するフラックス組成物であって、
前記(A)ロジン系樹脂は、
(A-1)軟化点が100℃以上150℃以下であって酸価が200mgKOH/g以上のロジン系樹脂と、
(A-2)軟化点が100℃以下であって酸価が140mgKOH/g以上200mgKOH/g未満のロジン系樹脂と、
(A-3)軟化点が100℃以下であって酸価が20mgKOH/g以下のロジン系樹脂とを含有し、
前記(A-1)ロジン系樹脂の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して10質量%以上15質量%以下であり、
前記(A-2)ロジン系樹脂の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して15質量%以上20質量%以下であり、
前記(A-3)ロジン系樹脂の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して10質量%以上15質量%以下であるフラックス組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のフラックス組成物と、(D)はんだ合金粉末を含むはんだ組成物であって、
前記(D)はんだ合金粉末を構成するはんだ合金の液相線温度は、225℃以上であるはんだ組成物。
【請求項3】
前記(D)はんだ合金粉末を構成するはんだ合金は、Agを1質量%以上4質量%以下と、Cuを1質量%以下と、Sbを3質量%以上5質量%以下とを含み、残部がSnからなる請求項2に記載のはんだ組成物。
【請求項4】
前記(D)はんだ合金粉末を構成するはんだ合金は、
(D-1)Niを0.01質量%以上0.25質量%以下、
(D-2)Coを0.001質量%以上0.25質量%以下、
(D-3)Inを6質量%以下、
(D-4)P、Ga及びGeの少なくとも1種を合計で0.001質量%以上0.05質量%以下及び
(D-5)Fe、Mn、Cr及びMoの少なくとも1種を合計で0.001質量%以上0.05質量%以下、
から選ばれる少なくともいずれかを更に含む請求項2または請求項3に記載のはんだ組成物。
【請求項5】
(A)ロジン系樹脂と(B)活性剤と(C)溶剤とを含有するフラックス組成物と、(D)はんだ合金粉末を含むはんだ組成物であって、
BGAはんだ接合に用いられるはんだ組成物であり、
前記(A)ロジン系樹脂は、
(A-1)軟化点が100℃以上150℃以下であって酸価が200mgKOH/g以上のロジン系樹脂と、
(A-2)軟化点が100℃以下であって酸価が140mgKOH/g以上200mgKOH/g未満のロジン系樹脂と、
(A-3)軟化点が100℃以下であって酸価が20mgKOH/g以下のロジン系樹脂とを含有し、
前記(A-1)ロジン系樹脂の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して10質量%以上15質量%以下であり、
前記(A-2)ロジン系樹脂の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して15質量%以上20質量%以下であり、
前記(A-3)ロジン系樹脂の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して10質量%以上15質量%以下であり、
前記(D)はんだ合金粉末を構成するはんだ合金の液相線温度は、BGAはんだ接合に用いるBGAを構成するはんだボールの液相線温度よりも高いはんだ組成物。
【請求項6】
前記(D)はんだ合金粉末を構成するはんだ合金の液相線温度は、225℃以上である請求項5に記載のはんだ組成物。
【請求項7】
前記(D)はんだ合金粉末を構成するはんだ合金は、Agを1質量%以上4質量%以下と、Cuを1質量%以下と、Sbを3質量%以上5質量%以下とを含み、残部がSnからなる請求項5または請求項6に記載のはんだ組成物。
【請求項8】
前記(D)はんだ合金粉末を構成するはんだ合金は、
(D-1)Niを0.01質量%以上0.25質量%以下、
(D-2)Coを0.001質量%以上0.25質量%以下、
(D-3)Inを6質量%以下、
(D-4)P、Ga及びGeの少なくとも1種を合計で0.001質量%以上0.05質量%以下及び
(D-5)Fe、Mn、Cr及びMoの少なくとも1種を合計で0.001質量%以上0.05質量%以下、
から選ばれる少なくともいずれかを更に含む請求項5から請求項7のいずれか1項に記載のはんだ組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラックス組成物及びはんだ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリント配線板やシリコンウエハといった基板上に形成される電子回路と電子部品とを接合する接合材料として、はんだ合金が広く用いられている。はんだ合金を用いた接合方法としては、例えば、はんだ合金からなる成形はんだを用いる方法、はんだ合金粉末とフラックス組成物とを混合したはんだ組成物を用いる方法、はんだ合金からなるはんだバンプを用いる方法等が存在する。
なお、成形はんだやはんだバンプを用いる場合においても、成形はんだやはんだバンプ表面にフラックス組成物やはんだ組成物を塗布し、はんだ接合を行うことも少なくない。
【0003】
そして上述したはんだ接合方法にてはんだ接合を行う場合、例えばはんだ組成物を用いてはんだ接合を行う場合においては、一般的には、基板上にはんだ組成物を所定のパターンとなるように印刷し、これを所定の温度にて加熱する(プリヒート及びリフロー)ことにより行われる。
【0004】
しかしこの場合、加熱時において、はんだ組成物に含まれるフラックスやフラックスの揮発により発生するガスが、溶融したはんだ合金内に取り込まれたまま排出されないことがある。排出されないままはんだ接合部内に取り残されたフラックスやガスはボイドと呼ばれ、はんだ接合部の信頼性を低下させる虞がある。またボイドの存在は、半導体や電子機器の信頼性の低下にも繋がる虞がある。
【0005】
このようなボイドの発生を抑制する方法として、樹脂成分を選択するソルダペーストやフラックス組成物、例えばアクリル系樹脂と共に酸価及び軟化点の両方において低水準と高水準であって当該両方に一致点がない2種類のロジン系樹脂を含有する回路基板のリフローはんだ付用ソルダーペースト(特許文献1参照)や、集中的ガス放出防止剤として変性ロジンを含有するフラックス組成物(特許文献2参照)、ロジン系ベース樹脂としてロジンテトラオールエステルを含み、活性剤及び溶剤が所定の成分である鉛フリーはんだペースト用フラックス(特許文献3参照)、ロジン系樹脂として軟化点が120℃以上であり酸価が220mgKOH/g以上であるロジン系樹脂を所定量と、軟化点が100℃以下であり酸価が20mgKOH/g以下であるロジン系樹脂とを含み、所定の溶剤を含むフラックス組成物(特許文献4参照)、ロジン系樹脂として、酸価が200mgKOH/g以上であるロジン系樹脂と、酸価が50mgKOH/g以下であるロジンエステルを所定量含むフラックス組成物(特許文献5参照)が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-264367号公報
【特許文献2】特開2012-16737号公報
【特許文献3】特開2017-35731号公報
【特許文献4】特開2019-42805号公報
【特許文献5】特開2019-130566号公報
【0007】
そして、はんだ接合部内でのボイド発生の抑制及びはんだ接合部の信頼性低下の抑制は、今後もフラックス組成物及びはんだ組成物に求められる課題の1つである。
またボイドの発生を抑制するために、フラックス組成物に配合させる樹脂や活性剤の含有量を減少させる方法もあるが、この場合はフラックス組成物を用いたはんだ組成物や、はんだ接合に使用するはんだボール等のぬれ性が低下する虞があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は、はんだ接合時において、ぬれ性の低下及びボイドの発生を抑制し得るフラックス組成物及びはんだ組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係るフラックス組成物は、(A)ロジン系樹脂と、(B)活性剤と、(C)溶剤とを含有し、前記(A)ロジン系樹脂は、(A-1)軟化点が100℃以上150℃以下であって酸価が200mgKOH/g以上のロジン系樹脂と、(A-2)軟化点が100℃以下であって酸価が140mgKOH/g以上200mgKOH/g未満のロジン系樹脂と、(A-3)軟化点が100℃以下であって酸価が20mgKOH/g以下のロジン系樹脂とを含有し、前記(A-1)ロジン系樹脂の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して10質量%以上15質量%以下であり、前記(A-2)ロジン系樹脂の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して15質量%以上20質量%以下であり、前記(A-3)ロジン系樹脂の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して10質量%以上15質量%以下である。
【0010】
本発明の一態様に係るはんだ組成物は、上記フラックス組成物と、(D)はんだ合金粉末を含み、前記(D)はんだ合金粉末を構成するはんだ合金の液相線温度は、225℃以上である。
【0011】
前記(D)はんだ合金粉末を構成するはんだ合金は、Agを1質量%以上4質量%以下と、Cuを1質量%以下と、Sbを3質量%以上5質量%以下とを含み、残部がSnからなることが好ましい。
【0012】
前記(D)はんだ合金粉末を構成するはんだ合金は、(D-1)Niを0.01質量%以上0.25質量%以下、(D-2)Coを0.001質量%以上0.25質量%以下、(D-3)Inを6質量%以下、(D-4)P、Ga及びGeの少なくとも1種を合計で0.001質量%以上0.05質量%以下及び(D-5)Fe、Mn、Cr及びMoの少なくとも1種を合計で0.001質量%以上0.05質量%以下、から選ばれる少なくともいずれかを更に含むことが好ましい。
【0013】
また本発明の他の態様に係るはんだ組成物は、(A)ロジン系樹脂と(B)活性剤と(C)溶剤とを含有するフラックス組成物と、(D)はんだ合金粉末を含むはんだ組成物であって、BGAはんだ接合に用いられるはんだ組成物であり、前記(A)ロジン系樹脂は、(A-1)軟化点が100℃以上150℃以下であって酸価が200mgKOH/g以上のロジン系樹脂と、(A-2)軟化点が100℃以下であって酸価が140mgKOH/g以上200mgKOH/g未満のロジン系樹脂と、(A-3)軟化点が100℃以下であって酸価が20mgKOH/g以下のロジン系樹脂とを含有し、前記(A-1)ロジン系樹脂の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して10質量%以上15質量%以下であり、前記(A-2)ロジン系樹脂の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して15質量%以上20質量%以下であり、前記(A-3)ロジン系樹脂の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して10質量%以上15質量%以下であり、前記(D)はんだ合金粉末を構成するはんだ合金の液相線温度は、BGAはんだ接合に用いるBGAを構成するはんだボールの液相線温度よりも高い。
【0014】
前記(D)はんだ合金粉末を構成するはんだ合金の液相線温度は、225℃以上であることが好ましい。
【0015】
前記(D)はんだ合金粉末を構成するはんだ合金は、Agを1質量%以上4質量%以下と、Cuを1質量%以下と、Sbを3質量%以上5質量%以下とを含み、残部がSnからなることが好ましい。
【0016】
前記(D)はんだ合金粉末を構成するはんだ合金は、(D-1)Niを0.01質量%以上0.25質量%以下、(D-2)Coを0.001質量%以上0.25質量%以下、(D-3)Inを6質量%以下、(D-4)P、Ga及びGeの少なくとも1種を合計で0.001質量%以上0.05質量%以下及び(D-5)Fe、Mn、Cr及びMoの少なくとも1種を合計で0.001質量%以上0.05質量%以下、から選ばれる少なくともいずれかを更に含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のフラックス組成物及びはんだ組成物は、はんだ接合時におけるぬれ性の低下及びボイドの発生を抑制し得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】基板上へのBGAの実装(はんだ接合)において、形成されるはんだ接合部にボイドが発生するメカニズムの一例を表わした模式図。
図2】本発明の実施例及び比較例に係る「ボイド試験」において、ボイドの面積率を求める際の一例を示す図。
図3】本発明の実施例及び比較例に係る「ぬれ性確認試験」において、BGA不濡れ箇所の一例を表す写真。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のフラックス組成物及びはんだ組成物の一実施形態を詳述する。なお、本発明が以下の実施形態に限定されるものではないことはもとよりである。
【0020】
1.フラックス組成物
本実施形態のフラックス組成物は、(A)ロジン系樹脂と、(B)活性剤と、(C)溶剤とを含有する。
【0021】
(A)ロジン系樹脂
前記(A)ロジン系樹脂としては、例えばトール油ロジン、ガムロジン、ウッドロジン等のロジン類;水添ロジン(部分水添、完全水添)、重合ロジン、不均一化ロジン、アクリル酸変性ロジン、マレイン酸変性ロジン、ホルミル化ロジン等のロジン系変性樹脂;並びにこれらの誘導体等が挙げられる。これらは単独でまたは複数を組合せて使用することができる。
【0022】
また本実施形態のフラックス組成物は、前記(A)ロジン系樹脂として、(A-1)軟化点が100℃以上150℃以下であって酸価が200mgKOH/g以上のロジン系樹脂と、(A-2)軟化点が100℃以下であって酸価が140mgKOH/g以上200mgKOH/g未満のロジン系樹脂と、(A-3)軟化点が100℃以下であって酸価が20mgKOH/g以下のロジン系樹脂とを含有する。
なお、これらのロジン系樹脂の軟化点は、環球法を用いて測定し得る。
【0023】
(A-1)軟化点が100℃以上150℃以下であって酸価が200mgKOH/g以上のロジン系樹脂
前記(A-1)ロジン系樹脂としては、例えばα,β不飽和カルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等)で変性したα,β不飽和カルボン酸変性ロジン系樹脂が好ましく用いられ、その中でもアクリル酸変性ロジンに水素添加したアクリル酸変性水添ロジンが好ましく用いられる。なお前記(A-1)ロジン系樹脂は、単独でまたは複数を組合せて使用することができる。
前記(A-1)ロジン系樹脂の軟化点は、100℃以上150℃以下である。また好ましいその軟化点は、120℃以上140℃以下である。この軟化点は、例えばロジン類の重合度の調整、α,β不飽和カルボン酸の種類や変性の方法の調整、ロジン類の分子量の調整等、公知の方法にて調整することができる。
前記(A-1)ロジン系樹脂の酸価は、200mgKOH/g以上である。この酸価は、例えばα,β不飽和カルボン酸の種類や変性の方法の調整等、公知の方法にて調整することができる。
前記(A-1)ロジン系樹脂の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して10質量%以上15質量%以下である。好ましいその配合量は、フラックス組成物100質量%に対して11質量%以上14質量%以下であり、12質量%以上13質量%以下であることがより好ましい。
【0024】
(A-2)軟化点が100℃以下であって酸価が140mgKOH/g以上200mgKOH/g未満のロジン系樹脂
前記(A-2)ロジン系樹脂としては、例えばロジン類に水素添加した水添ロジンが好ましく用いられ、その中でも完全水添ロジンが好ましく用いられる。なお前記(A-2)ロジン系樹脂は、単独でまたは複数を組合せて使用することができる。
前記(A-2)ロジン系樹脂の軟化点は、100℃以下である。また好ましいその軟化点は、90℃以下である。この軟化点は、例えばロジン類の重合度の調整、ロジン類の分子量の調整等、公知の方法にて調整することができる。
前記(A-2)ロジン系樹脂の酸価は、140mgKOH/g以上200mgKOH/g未満である。また好ましいその酸価は、150mgKOH/g以上200mgKOH/g未満であり、160mgKOH/g以上180mgKOH/g以下であることがより好ましい。この酸価は、公知の方法にて調整することができる。
前記(A-2)ロジン系樹脂の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して15質量%以上20質量%以下である。好ましいその配合量は、フラックス組成物100質量%に対して17質量%以上20質量%以下であり、17質量%以上19質量%以下であることがより好ましい。
【0025】
(A-3)軟化点が100℃以下であって酸価が20mgKOH/g以下のロジン系樹脂
前記(A-3)ロジン系樹脂は、例えばロジン類と各種アルコールとを脱水縮合して得られるロジンエステルが好ましく用いられる。なお前記(A-3)ロジン系樹脂は、単独でまたは複数を組合せて使用することができる。
前記(A-3)ロジン系樹脂の軟化点は、100℃以下である。また好ましいその軟化点は、90℃以下である。この軟化点は、例えばロジン類の重合度の調整、ロジン類の分子量の調整等、公知の方法にて調整することができる。
前記(A-3)ロジン系樹脂の酸価は、20mgKOH/g以下である。また好ましいその酸価は、10mgKOH/g以下である。この酸価は、公知の方法にて調整することができる。
前記(A-3)ロジン系樹脂の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して10質量%以上15質量%以下である。好ましいその配合量は、フラックス組成物100質量%に対して11質量%以上15質量%以下であり、12質量%以上14質量%以下であることがより好ましい。
【0026】
その他のロジン系樹脂
本実施形態のフラックス組成物には、前記(A)ロジン系樹脂として、前記(A-1)ロジン系樹脂、前記(A-2)ロジン系樹脂及び前記(A-3)ロジン系樹脂以外のロジン系樹脂を適宜添加することもできるが、(A-1)ロジン系樹脂、前記(A-2)ロジン系樹脂及び前記(A-3)ロジン系樹脂の使用が好ましい。なおその他のロジン系樹脂は、単独でまたは複数を組合せて使用することができる。
【0027】
前記(A)ロジン系樹脂全体の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して35質量%以上50質量%以下であることが好ましい。より好ましいその配合量は、フラックス組成物100質量%に対して39質量%以上49質量%以下であり、41質量%以上46質量%以下であることが特に好ましい。
【0028】
本実施形態のフラックス組成物は、上述のように前記(A)ロジン系樹脂として前記(A-1)ロジン系樹脂、前記(A-2)ロジン系樹脂及び前記(A-3)ロジン系樹脂をそれぞれ所定量含有する。そしてこれにより、本実施形態のフラックス組成物を含むはんだ組成物を用いたはんだ接合時や、はんだボール上にフラックス組成物を塗布して行うはんだ接合時において、そのぬれ性の低下を抑制し、また形成されるはんだ接合部内でのボイドの発生を抑制することができる。
これは、本実施形態のフラックス組成物が、前記(A)ロジン系樹脂として前記(A-1)ロジン系樹脂、前記(A-2)ロジン系樹脂及び前記(A-3)ロジン系樹脂をそれぞれ所定量含有することにより、はんだ接合時におけるフラックス組成物の流動性を確保でき、これにより溶融したはんだ合金内からフラックス組成物が排出され易くなると共に、はんだぬれ性の低下を抑制することができるものと考えられる。
【0029】
(B)活性剤
前記(B)活性剤としては、例えば有機酸、ハロゲンを含む化合物、アミン系活性剤等が挙げられる。これらは単独でまたは複数を組合せて使用することができる。
【0030】
有機酸としては、モノカルボン酸、ジカルボン酸、その他の有機酸が挙げられる。
【0031】
モノカルボン酸としては、例えばプロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、グリコール酸等が挙げられる。
【0032】
ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、エイコサン二酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、ジグリコール酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
【0033】
その他の有機酸としては、ダイマー酸、レブリン酸、乳酸、アクリル酸、安息香酸、サリチル酸、アニス酸、クエン酸、ピコリン酸、アントラニル酸等が挙げられる。
【0034】
ハロゲンを含む化合物としては、例えば非解離性のハロゲン化合物(非解離型活性剤)及び解離性のハロゲン化合物(解離型活性剤)が挙げられる。
非解離型活性剤としては、ハロゲン原子が共有結合により結合した非塩系の有機化合物が挙げられる。当該有機化合物は、例えば塩素化物、臭素化物、ヨウ素化物、フッ化物のように塩素、臭素、ヨウ素、フッ素の各単独元素が共有結合した化合物でもよく、また2以上の異なるハロゲン原子が共有結合で結合した化合物でもよい。また当該有機化合物は水性溶媒に対する溶解性を向上させるために、例えばハロゲン化アルコールのように水酸基等の極性基を有することが好ましい。
【0035】
アミン系活性剤としては、例えば有機アミン、有機アミンのハロゲン化水素塩等のアミン塩(無機酸塩や有機酸塩)、有機酸塩、有機アミン塩等が挙げられる。
【0036】
前記(B)活性剤の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して5質量%以上15質量%以下であることが好ましい。好ましいその配合量は、フラックス組成物100質量%に対して7質量%以上13質量%以下であり、9質量%以上11質量%以下であることがより好ましい。
【0037】
(C)溶剤
前記(C)溶剤としては、例えばアルコール系、エタノール系、アセトン系、トルエン系、キシレン系、酢酸エチル系、エチルセロソルブ系、ブチルセロソルブ系、グリコールエーテル系、エステル系等が挙げられる。これらは単独でまたは複数を組合せて使用することができる。
前記(C)溶剤の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して20質量%以上50質量%以下であることが好ましい。より好ましいその配合量は、フラックス組成物100質量%に対して20質量%以上40質量%以下であり、35質量%以上40質量%以下であることが特に好ましい。
【0038】
チクソ剤
本実施形態に係るフラックス組成物には、チクソ剤を配合することができる。前記チクソ剤としては、例えば硬化ひまし油、ビスアマイド系チクソ剤(飽和脂肪酸ビスアマイド、不飽和脂肪酸ビスアマイド、芳香族ビスアマイド等)、ジメチルジベンジリデンソルビトール等が挙げられる。これらは単独でまたは複数を組合せて使用することができる。
【0039】
前記チクソ剤の配合量はフラックス組成物100質量%に対して3質量%以上15質量%以下であることが好ましく、5質量%以上10質量%以下であることが更に好ましい。
【0040】
本実施形態のフラックス組成物には、酸化防止剤を配合することができる。
前記酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、ポリマー型酸化防止剤等が挙げられる。これらの中でも特にヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく用いられる。
前記酸化防止剤はこれらに限定されるものではなく、またその配合量は特に限定されるものではない。その一般的な配合量は、フラックス組成物100質量%に対して0.5質量%から5質量%程度である。
【0041】
本実施形態のフラックス組成物には、更につや消し剤、消泡剤等の添加剤を加えてもよい。前記添加剤の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して10質量%以下であることが好ましく、更に好ましい配合量は5質量%以下である。
【0042】
また本実施形態のフラックス組成物には、前記(A)ロジン系樹脂以外の樹脂として、例えばアクリル樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂等を配合してもよいが、前記(A)ロジン系樹脂の使用が好ましい。これらのその他の樹脂は単独でまたは複数を組合せて用いることができる。前記(A)ロジン系樹脂以外の樹脂の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して10質量%以下であることが好ましく、更に好ましい配合量は5質量%以下である。
【0043】
本実施形態のフラックス組成物は、後述するはんだ組成物に使用し得る他に、例えば、はんだ接合時においてはんだボールや成形はんだの表面に塗布する用途、ヤニ入りはんだ等の用途にも使用することができる。またはんだ組成物を用いたはんだボールの作製にも使用することができる。
【0044】
2.はんだ組成物
本実施形態のはんだ組成物は、前記フラックス組成物と、(D)はんだ合金粉末とを含む。
【0045】
(D)はんだ合金粉末
前記(D)はんだ合金粉末を構成するはんだ合金(以下、単に「はんだ合金」という。)の液相線温度は、225℃以上であることが好ましい。
前記はんだ合金としては、Agを1質量%以上4質量%以下と、Cuを1質量%以下と、Sbを3質量%以上5質量%以下とを含み、残部がSnからなるはんだ合金が好ましく用いられる。
【0046】
Agの含有量は、2質量%以上3.8質量%以下であることが好ましく、2.5質量%以上3.8質量%以下であることがより好ましい。
【0047】
Cuの含有量は、0.5質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上0.7質量%以下であることがより好ましい。
【0048】
Sbの含有量は、3.5質量%以上5質量%以下であることが好ましい。
【0049】
前記はんだ合金は、以下の(D-1)、(D-2)、(D-3)、(D-4)及び(D-5)から選ばれる少なくともいずれかを更に含むことが好ましい。
(D-1)Niを0.01質量%以上0.25質量%以下
(D-2)Coを0.001重量%以上0.25重量%以下
(D-3)Inを6重量%以下
(D-4)P、Ga及びGeの少なくとも1種を合計で0.001重量%以上0.05重量%以下
(D-5)Fe、Mn、Cr及びMoの少なくとも1種を合計で0.001重量%以上0.05重量%以下
【0050】
前記(D-1)のNiの含有量は、0.01質量%以上0.15質量%以下であることが好ましい。
また前記(D-2)のCoの含有量は、0.001質量%以上0.15質量%以下であることが好ましい。
また前記(D-3)のInの含有量は、4質量%以下であることが好ましく、1質量%以上2質量%以下であることがより好ましい。
【0051】
なお、前記はんだ合金には、その効果を阻害しない範囲において、他の成分(元素)、例えばCd、Tl、Se、Au、Ti、Si、Al、Mg、Zn、Bi等を含有させることができる。また前記はんだ合金には、当然ながら不可避不純物も含まれるものである。
【0052】
本実施形態のはんだ組成物は、例えば粉末状にした前記はんだ合金(即ち、前記(D)はんだ合金粉末)と前記フラックス組成物とを混練しペースト状にすることにより作製される。
【0053】
前記(D)はんだ合金粉末とフラックス組成物との配合比率は、前記(D)はんだ合金粉末:フラックス組成物の比率で65:35から95:5であることが好ましい。より好ましい配合比率は85:15から93:7であり、特に好ましい配合比率は87:13から92:8である。
【0054】
本実施形態のはんだ組成物は、前記はんだ合金、即ち前記(D)はんだ合金粉末を構成するはんだ合金の液相線温度が225℃以上であることが好ましい。ここで、このようなはんだ合金からなるはんだ合金粉末を用いたはんだ組成物は、はんだ接合時の加熱温度のピークを225℃以上とする必要がある。このような加熱条件においては、フラックス組成物の流動性が下がり(粘度が上昇し)易いため、溶融したはんだ合金内からフラックス組成物が排出され難くなる虞があり、形成されるはんだ接合部内にボイドが発生し易くなる。
【0055】
しかし本実施形態のはんだ組成物は、上述のように、これに使用するフラックス組成物が前記(A)ロジン系樹脂として前記(A-1)ロジン系樹脂、前記(A-2)ロジン系樹脂及び前記(A-3)ロジン系樹脂をそれぞれ所定量含有することから、前記(D)はんだ合金粉末を構成するはんだ合金の液相線温度が225℃以上である場合にも、はんだ接合時におけるフラックス組成物の流動性を確保できる。そのため、溶融したはんだ合金内からフラックス組成物が排出され易くなり、形成されるはんだ接合部内のボイドの発生が抑制され得る。またこのようなはんだ組成物は、そのぬれ性の低下を抑制することができるため、信頼性の高いはんだ接合部を提供し得る。
【0056】
また本実施形態のはんだ組成物は、BGAはんだ接合にも好適に用いることができる。特に本実施形態のはんだ組成物は、前記(D)はんだ合金粉末を構成するはんだ合金の液相線温度が、BGAはんだ接合に用いるBGAを構成するはんだボールの液相線温度よりも高い場合のBGAはんだ接合にも好適に用いることができる。
【0057】
BGAは、一定間隔ではんだボールが並列された外部電極端子を有する電子部品であり、このはんだボールは例えばSn-3.0Ag-0.5Cuはんだ合金(液相線温度:220℃)からなるものが一般的である。
例えば、Sn-3.0Ag-0.5Cuはんだ合金からなるはんだボールを有するBGAを、その液相線温度が220℃を超えるはんだ合金からなるはんだ合金粉末を含むはんだ組成物を用いてはんだ接合する場合、図1に示すような現象が生じ得る。
【0058】
即ち、BGAのはんだ接合においては、まず絶縁層21、電極22を有する基板20の電極22上にはんだ組成物を任意の方法にて塗布し、BGA10に設けられるはんだボール11がはんだ組成物30と接するようにBGA10を基板20上に載置する(図1(a)参照)。
なお、この例においては、はんだボール11は、Sn-3.0Ag-0.5Cuはんだ合金からなり、はんだ組成物30に含まれるはんだ合金粉末を構成するはんだ合金の液相線温度は、220℃を超えるものとする。
【0059】
次いで、BGA10が載置された基板20を加熱する。上述のようにはんだ組成物30に含まれるはんだ合金粉末(はんだ合金)の液相線温度は、はんだボール11の液相線温度よりも高い。そのため加熱時においては、はんだ組成物30に含まれるはんだ合金粉末よりもはんだボール11が先に溶融する(図1(b)参照)。またこの際、はんだボール11の溶融により、BGA10はその自重によって基板20側に下降し易くなる。
【0060】
その後、はんだ組成物30に含まれるはんだ合金粉末が溶融する(図1(c)参照)。この際、上述したようにBGA10はその自重によって基板20側に下降し易くなるため、はんだ組成物30に含まれるフラックス組成物や、フラックス組成物の揮発により発生したガスは、先に溶融したはんだボール11側、即ち図1(c)に示す矢印Nの方向に流入し易くなり、外部に排出され難くなる。そのため、溶融したはんだボール11側に流入したフラックス組成物やガスはそのまま内部に残り易く、形成されるはんだ接合部にはボイドが発生し易くなる。
【0061】
しかし本実施形態のはんだ組成物は、上述のように、これに使用するフラックス組成物が前記(A)ロジン系樹脂として前記(A-1)ロジン系樹脂、前記(A-2)ロジン系樹脂及び前記(A-3)ロジン系樹脂をそれぞれ所定量含有する。そのため本実施形態のはんだ組成物は、BGAはんだ接合時おいてもフラックス組成物の流動性を確保し得る。よって、はんだ接合時(加熱時)においてもフラックス組成物は図1(c)に示す矢印N側に流入され難く、またいったんこれに取り込まれた場合であっても外側に排出され易い。またこの流動性により、本実施形態のはんだ組成物は、そのぬれ性の低下を抑制することができる。
そのため本実施形態のはんだ組成物は、上述のような特にボイドが発生し易い条件下でのはんだ接合においても、形成されるはんだ接合部内のボイドの発生を抑制し、また信頼性の高いはんだ接合部を提供し得る。
このように本実施形態のはんだ組成物は、前記(D)はんだ合金粉末を構成するはんだ合金の液相線温度が、BGAはんだ接合に用いるBGAを構成するはんだボールの液相線温度よりも高い場合のBGAはんだ接合にも好適に用いることができる。
【実施例0062】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を詳述する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0063】
フラックス組成物の作製
表1に示す組成及び配合にて各成分を混練し、実施例及び比較例に係る各フラックス組成物を作製した。なお、表1のうち、組成を表すものに係る数値の単位は、特に断り書きがない限り質量部である。
【0064】

【表1】
【0065】
※1 アクリル変性水添ロジン 荒川化学工業(株)製(軟化点:124℃~134℃、酸価:237.5mgKOH/g)
※2 完全水添ロジン イーストマン・ケミカル社製(軟化点:79℃~88℃、酸価:165mgKOH/g)
※3 ロジンエステル ハリマ化成(株)製(軟化点:80℃~90℃、酸価:8mgKOH/g)
※4 ダイマー酸 クレイトンコーポレーション社製
※5 12-ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド ケイエフ・トレーディング(株)製
※6 ヒンダードフェノール系酸化防止剤 BASFジャパン(株)製
【0066】
はんだ組成物の作製
表1に記載の各フラックス組成物10.7質量%と、Sn-4.0Ag―0.9Cu-3.1Sb-0.05Niはんだ合金(液相線温度:225℃)の粉末(粉末粒径20μmから36μm)89.3質量%とを混合し、実施例及び比較例に係る各はんだ組成物を作製した。
【0067】
(1)ボイド試験
以下の用具を準備した。
・ガラスエポキシ基板(FR-4基板)
以下のBGAに対応する電極パターン(Cuランド:Φ0.41mm)と絶縁層を備える。
・メタルマスク
上記電極パターンに対応する開口部を備える(厚み:150μm)
・BGA
0.8mmピッチ(はんだボール(ピン)数:257個)、はんだボール組成:Sn-3.0Ag-0.5Cuはんだ合金(液相線温度:220℃)
【0068】
前記メタルマスクを用い、以下の印刷条件にて、各はんだ組成物を印刷機(製品名:SP60P-L、パナソニック(株)製)を用いて前記各ガラスエポキシ基板上に印刷した。そして前記BGAを表面実装機(製品名:YV100Xg-S、ヤマハ発動機(株)製、押し込み量:0.0mmに設定)を用いて前記各ガラスエポキシ基板上に載置した。
・スキージ速度:30mm/s
・スキージ長さ:350mm
・印圧:35×10-2N/mm
・スキージ角度:60°
・版離れ速度:3mm/s
・印刷機内条件:室温(20℃から25℃)
次いで、前記BGAを載置した前記各ガラスエポキシ基板を以下の条件下でリフローし、はんだ接合部を有する各試験基板を作製した。
リフロー炉:TNV30-508EM2-X、(株)タムラ製作所製
酸素濃度:100ppm
150℃から200℃:90秒から120秒
227℃以上:70秒
ピーク温度:240℃
【0069】
次いで前記各試験基板の表面状態をX線検査装置(製品名:NLX-5000、名古屋電機工業(株)製)で観察し、前記各試験基板の各はんだ接合部(257箇所)に発生したボイドの面積を測定した。そして前記試験基板毎に、1)ボイド面積率が最大となったはんだ接合部のボイド面積率(最大ボイド面積率)、2)平均ボイド面積率を算出した。なお、ボイド面積率及び平均ボイド面積率は以下の方法にて求めた。
【0070】
・ボイド面積率
1つのはんだ接合部に発生したボイドの面積の合計(ボイド面積)と、そのはんだ接合部の面積とを測定し、以下の式に基づき算出した。
ボイド面積率(%):100×((ボイド面積)/(はんだ接合部の面積))
【0071】
なお、はんだ接合部のボイド面積率の算出例を図2を用いて説明する。
図2に示すように、はんだ接合部Aの面積を「はんだ接合部の面積」とし、はんだ接合部Aに発生した3つのボイド1から3の各面積(ボイド1の面積S1、ボイド2の面積S2及びボイド3の面積S3)の合計を「ボイド面積」とする。
例えばはんだ接合部Aの面積が0.13mm、面積S1が0.02mm、面積S2が0.01mm、面積S3が0.005mmである場合、ボイド面積は0.035mmとなる。従って、はんだ接合部Aにおけるボイド面積率は、100×(0.035/0.13)=26.9%(小数点第2位切り捨て)となる。
【0072】
1)最大ボイド面積率
そして、各試験基板について、そのはんだ接合部のうちボイド面積率が最大となったものの値を最大ボイド面積率とし、以下の基準に従い評価した。その結果を表2に示す。
○:最大ボイド面積率が15%以下
×:最大ボイド面積率が15%超え
【0073】
2)平均ボイド面積率
試験基板毎に、全てのはんだ接合部(257個)の面積の合計(はんだ接合部の合計面積)と、全てのはんだ接合部に発生した全てのボイドの面積の合計(ボイド総面積)を測定し、以下の式に基づき算出した。
平均ボイド面積率(%):100×((ボイド総面積)/(はんだ接合部の合計面積))/257
そして、各試験基板の平均ボイド面積率について、以下の基準に従い評価した。その結果を表2に示す。
○:平均ボイド面積率が7%以下
×:平均ボイド面積率が7%超え
【0074】
(2)ぬれ性確認試験
以下の用具を準備した。
・ガラスエポキシ基板(FR-4基板)
以下のBGAに対応する電極パターン(Cuランド:Φ0.40mm)と絶縁層を備える。
・メタルマスク
上記電極パターンに対応する開口部を備える(厚み:150μm)
・BGA
0.8mmピッチ(はんだボール(ピン)数:208個)、はんだボール組成:Sn-3.0Ag-0.5Cuはんだ合金(液相線温度:220℃)。85℃/85%RHの条件下で24時間劣化処理を施したもの。
【0075】
前記メタルマスクを用い、以下の印刷条件にて、各はんだ組成物を印刷機(製品名:SP60P-L、パナソニック(株)製)を用いて前記各ガラスエポキシ基板上に印刷した。そして前記BGAを表面実装機(製品名:YV100Xg-S、(ヤマハ発動機(株)製、押し込み量:0.0mmに設定)を用いて前記各ガラスエポキシ基板上に載置した。
・スキージ速度:30mm/s
・スキージ長さ:350mm
・印圧:35×10-2N/mm
・スキージ角度:60°
・版離れ速度:3mm/s
・印刷機内条件:室温(20℃から25℃)
次いで、前記BGAを載置した前記各ガラスエポキシ基板を以下の条件下でリフローし、各試験基板を作製した。
リフロー炉:TNV30-508EM2-X、(株)タムラ製作所製
酸素濃度:100ppm
200℃から220℃:160秒
227℃以上:60秒
ピーク温度:240℃
【0076】
作製した前記各試験基板から実装したBGAを手で剥がし、BGA不濡れ箇所の確認を行った。
即ち、前記各試験基板上のCuランド上に塗布された各はんだ組成物とBGAのはんだボールとが、上記リフロー条件にて加熱を行ったが融合できず、はんだボールがBGA側に残ったままの状態となった箇所(BGA不濡れ箇所という。)の有無を目視にて確認し、以下の基準に従い評価した。図3にBGA不濡れ箇所の一例を示す(丸で囲った部分)。なお、上記リフロー条件にて加熱を行い、各はんだ組成物とBGAのはんだボールが確実に融合しているにもかかわらず、BGAを剥がした際に加わった力によってはんだボールが各試験基板上から剥がれた箇所は除くものとする。
またその結果を表2に示す。
○:BGA不濡れ箇所がない
×:BGA不濡れ箇所が1つ以上ある
【0077】
【表2】
【0078】
以上に示す通り、実施例に係るはんだ組成物は、はんだ接合部内にボイドが発生し易い条件下においても、そのボイドの発生を抑制でき、また信頼性の高いはんだ接合部を提供することができる。
【符号の説明】
【0079】
10 BGA
11 はんだボール
20 基板
21 絶縁層
22 電極
30 はんだ組成物
図1
図2
図3