(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155428
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】液体誘導具
(51)【国際特許分類】
B65D 25/48 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
B65D25/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100505
(22)【出願日】2021-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2021057048
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】521133942
【氏名又は名称】有限会社ウィステリアインターナショナル
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】小林 和紀
【テーマコード(参考)】
3E062
【Fターム(参考)】
3E062AB01
3E062DA02
3E062KA02
3E062KC01
3E062KC03
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で取り扱いやすく、内部の液体を溢さずに少量ずつ外部に吐出可能な液体誘導具を提供することを目的とする。
【解決手段】上記課題を解決する本願発明は、内部に液体を充填した容器3の開口部31に取り付けられる液体誘導具であって、容器3内部の液体を外部に誘導する液体誘導部1と、液体誘導部1に連接して設けられ、開口部31に係止される係止部2と、を備え、前記液体誘導部は、板状部材であって、縁辺が曲線状に形成された曲線部分Bを含む液体誘導具である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に液体を充填した容器の開口部に取り付けられる液体誘導具であって、
前記容器の内部の液体を外部に誘導する液体誘導部と、
前記液体誘導部に連接して設けられ、前記開口部に係止される係止部と、を備え、
前記液体誘導部は、板状部材であって、縁辺が曲線状に形成された曲線部分を含む液体誘導具。
【請求項2】
前記液体誘導部は、前記液体誘導具が前記開口部に取り付けられた際に、
平面視で前記開口部の端面の一部を覆うように設けられる請求項1に記載の液体誘導具。
【請求項3】
前記液体誘導部には、穴部が設けられており、
前記穴部は、前記液体誘導具が前記開口部に取り付けられた際に、平面視で前記開口部の縁辺より内側に位置するように設けられている請求項2に記載の液体誘導具。
【請求項4】
前記液体誘導部は、円盤形状である請求項1~3の何れかに記載の液体誘導具。
【請求項5】
前記液体誘導部は、前記係止部から前記開口部の外側方向に向かって伸びる複数の誘導部本体を有し、
前記複数の誘導部本体同士は、前記係止部から前記液体誘導部の端部に至るまで互いに近接して設けられることで、前記液体を誘導する空隙部を形成する請求項1~4の何れかに記載の液体誘導具。
【請求項6】
前記係止部は、弾性を持つ弾性部を有し、前記開口部の内周面に嵌め込まれることで係止される請求項1~4の何れかに記載の液体誘導具。
【請求項7】
前記係止部は、前記開口部に取り付けられた際に前記開口部の外側に向かって突出する突出部を有する請求項1~6の何れかに記載の液体誘導具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を収容する容器の開口部に設けられ、外部に吐出する液体を注ぎやすくするための用具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばドリップコーヒーの抽出時や液体調味料の使用時など、液体を収容する容器から内部の液体を別の場所へ移すときには、その容器を傾けることによって開口部から液体を吐出させる。このとき、狙いが定まらず液体がこぼれてしまうことや、容器開口部の外周を伝って容器の外部に液体が付着してしまうことがあり、また、勢い余って液体を多量に移しすぎてしまうことなど、種々の不便な点があった。
このような問題を解決するために、例えば特許文献1には、容器の開口に篏合して設けられ、内容物の注出を案内することができる注口部材が考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方特許文献1に記載の注口部材では、開口部から出た液体は注出案内部によって案内され、ヘラ状の注口ベラにおいて収束するため、注口ベラに集中した液体があふれてしまうことがある。少量の液体を吐出するためには繊細な操作が必要であるので、ここに改良点があった。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑み、簡単な構成で取り扱いやすく、内部の液体を溢さずに少量ずつ外部に吐出可能な液体誘導具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本願発明は、内部に液体を充填した容器の開口部に取り付けられる液体誘導具であって、前記容器の内部の液体を外部に誘導する液体誘導部と、前記液体誘導部に連接して設けられ、前記開口部に係止される係止部と、を備え、前記液体誘導部は、板状部材であって、縁辺が曲線状に形成された曲線部分を含む液体誘導具である。
このような構成によって、前記開口部に容易に係止することが可能であり、液体が板状部材上を二次元的に伝うことで、液体を外部に少量ずつ吐出する用具となる。さらに縁辺に設けられた前記曲線部分を液体が伝うことによって、液体を溢さず効率的な誘導を行う液体誘導具を提供することができる。
【0007】
本発明の好ましい形態では、前記液体誘導部は、前記液体誘導具が前記開口部に取り付けられた際に、平面視で前記開口部の端面の一部を覆うように設けられる。
このような構成によって、液体の勢いを弱めてから前記液体誘導部に液体を伝わせることができるようになるため、前記開口部から液体が勢いよく飛び出すことを防止することができる。
【0008】
本発明の好ましい形態では、前記液体誘導部には、穴部が設けられており、前記穴部は、前記液体誘導具が前記開口部に取り付けられた際に、平面視で前記開口部の縁辺より内側に位置するように設けられている。
このような構成によって、前記液体誘導具を前記開口部に取り付けた際に、前記開口部を一定角度以上傾けると前記穴部から液体が吐出するようになるため、液体の吐出速度を段階的に調整できるようになる。
【0009】
本発明の好ましい形態では、前記液体誘導部は、円盤形状である。
このような構成によって、前記液体誘導部の全周が前記曲線部分となり、前記容器を持つ部位や傾ける方向によらず、前記曲線部分の一点に滴下する点を形成することができる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記液体誘導部は、前記係止部から前記開口部の外側方向に向かって伸びる複数の誘導部本体を有し、前記複数の誘導部本体同士は、前記係止部から前記液体誘導部の端部に至るまで互いに近接して設けられることで、前記液体を誘導する空隙部を形成する。
このような構成によって、前記開口部に容易に係止することが可能であり、近接して設けられている前記複数の誘導部本体の間に液体を誘導して、外部に少量ずつ吐出することができる液体誘導具を提供することができ、前記液体誘導部の端部において毛管力が発生し、液体を懸滴の状態にしてから吐出させることができるようになる。そのため、外部に少量ずつ吐出することが容易になる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記係止部は、弾性を有し、前記開口部の内周面に嵌め込まれることで係止される。
このような構成によって、様々な形状の開口部に、前記係止部を取り付けることができるようになるとともに、前記開口部の一部を覆うことになるため、前記液体誘導部に伝う液体の量を抑制することができるようになる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記係止部は、前記開口部に取り付けられた際に前記開口部の外側に向かって突出する突出部を有する。
このような構成によって、前記開口部に取り付けられた前記液体誘導具の取り外しを容易にすることができるようになる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記係止部及び前記液体誘導部は、一枚の平板部材を加工することによって形成されている。
このような構成によって、構成が簡単になり、容易に大量生産を行うことができるようになる。
【発明の効果】
【0014】
上記課題を解決する本発明によって、簡単な構成で取り扱いやすく、内部の液体を溢さずに少量ずつ外部に吐出可能な液体誘導具を提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第一の実施形態に係る、液体誘導具の斜視図である。
【
図2】本発明の第一の実施形態に係る、液体誘導具の六面図である。
【
図3】本発明の第一の実施形態に係る、液体誘導具の使用の態様を表す模式図である。
【
図4】本発明の第一の実施形態に係る、液体誘導具の変更例を表す斜視図である。
【
図5】本発明の第二の実施形態に係る、液体誘導具の斜視図である。
【
図6】本発明の第二の実施形態に係る、液体誘導具の六面図である。
【
図7】本発明の第二の実施形態に係る、容器に装着された液体誘導具の模式図である。
【
図8】本発明の第二の実施形態に係る、液体誘導具の製造方法を表す模式図である。
【
図9】本発明の第二の実施形態に係る、液体誘導具の使用の態様を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を用いて、本発明の各実施形態に係る液量調整具について説明する。説明では、まず液体誘導具の構成について詳述し、次に製造方法、実施の方法について詳述し、最後に他の実施例について詳述する。
なお、以下に示す各実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の各実施形態に限定するものではない。
【0017】
《第一の実施形態》
以下、
図1~
図4を用いて、本発明の第一の実施形態に係る液体誘導具の構成について詳述を行う。図面において符号Xは液体誘導具を表す。
ここで、
図1は本実施形態に係る液体誘導具Xの斜視図であり、
図2は液体誘導具Xを様々な角度から見た図を表している。詳述すると、
図2(a)は平面図であり、
図2(b)は正面図であり、
図2(c)は側面図であり、
図2(d)は背面図であり、
図2(e)は底面図である。なお、
図2(c)に示す側面図は、左側側面図を表しているが、右側側面図も略同一の形状である。
【0018】
図1及び
図2に示すように、液体誘導具Xは、平面板状に形成された液体誘導部1と、容器の開口部分に係止される係止部2と、が、後述する結合部23において支持固定されることで構成されている。
【0019】
液体誘導部1は、直径10~50mm、厚み2~10mmのコイン状の円盤部材であり、液体誘導部1の周縁の全域が曲線部分Bとなる。これにより、曲線部分Bを長尺に取ることができるようになるとともに、液体誘導部1の意匠性が向上する。
なお、液体誘導部1は平面視で楕円形状であってもよく、このようにした場合、液体誘導部1の曲率が大きい部位と後述する結合部23は対向位置に設けられていることが好ましい。これにより、係止部2の対向位置が後述する滴下点B1となり、取り扱い性能が向上する。
【0020】
また、液体誘導部1は、厚み方向に穿たれて設けられた穴部Hを有する。穴部Hは、液体誘導部1の中央部の近辺に設けられた第一穴部H1と、結合部23の近接位置に設けられた第二穴部H2と、を有し、それぞれの径は異なるように設けられることが好ましい。
また、第一穴部H1と第二穴部H2は同一の軸線上に設けられており、その軸線は係止部2の中心軸と平面視で一致することが好ましい。
【0021】
第二穴部H2は、結合部23上に設けられていてもよい。そのようにした場合、結合部23にも第二穴部H2と略同一形状の穴が設けられ、第二穴部H2から液体が挿通することが好ましい。
【0022】
係止部2は、略直線状の平板として設けられる垂直部21と、垂直部21に連接し、くの字状に曲げられて板バネの作用を奏する弾性部22と、垂直部21に対して側面視で直角に設けられ、液体誘導部1と結合される結合部23と、弾性部22の端部に連接して設けられ、垂直部21の方向へ屈曲する液体遮蔽部24と、を有する。
【0023】
図3は、液体誘導具Xが容器3の開口部31に取り付けられている様子を表す模式図である。詳述すると、
図3(a)は、液体誘導具Xが取り付けられている様子を表す断面図であり、
図3(b)は、液体誘導具Xが容器3内部の液体を誘導している様子を表す模式断面図であり、
図3(c)は、液体誘導部1が液体を誘導している様子を表す正面模式図である。
【0024】
図3(a)に示すように、垂直部21は、開口部31に当接しており、弾性部22との作用によって、開口部31を内側から外側方向へ押圧する。これによって係止部2が開口部31に係止される。
なお、垂直部21に対して、弾性部22は垂直部21と当接する向きに弾性力を有し、垂直部21と弾性部22との間に開口部31の開口端挟み込むことによって係止されていてもよい。
【0025】
本実施形態において、結合部23は、垂直部21に対して垂直に設けられ、その上面部において液体誘導部1を支持固定する。これにより、液体誘導部1は、垂直部21に対して略垂直に設けられることとなる。結合の方法は溶接によって固着する方法や接着剤により張り付ける方法などがあるが、どのような方法でもよい。
【0026】
図3(b)に示すように、液体遮蔽部24は、開口部31の内部を流れる液体を遮蔽し、開口部31から吐出される液体の勢いを弱める役割を持つ。
好ましくは、液体遮蔽部24は、穴部Hが削孔される方向と同一の直線上に設けられており、これにより穴部Hから液体の流れる勢いを効率的に弱めることができる。
【0027】
以下、
図3を用いて、本実施形態に係る発明の使用方法について説明する。なお、使用方法は以下の記載によらず、その順番は前後してもよい。本発明は、容器3の内部の液体を滴下する目的を持つ使用者によって使用される。
【0028】
まず、使用者は、係止部2を液体が入った容器3の開口部31に係止する。この際、液体誘導部1は、開口部31の端面の一部または全部を覆う。
本実施形態において、使用者は、垂直部21と弾性部22との接続部分から、係止部2を開口部31に入れ込む。その後、開口部31の開口端が液体誘導部1に当接される位置まで押し込み、その位置で係止を行う。
【0029】
次に、使用者は、容器3を傾斜させ開口部31へ液体を流し込み、液体誘導部1に懸滴を形成する。
【0030】
最後に、使用者は、懸滴の状態を見ながら、容器3の傾斜具合を操作し、液滴の滴下を行う。
【0031】
ここで、開口部31に流し込まれた液体は、液体遮蔽部24によって勢いが弱められてから液体誘導部1に到達する。液体誘導部1に到達した液体は、液体誘導部1の周縁まで至ると、
図3(c)に示すように、曲線部分Bを伝って滴下点B1に収束し、懸滴となる。なお、滴下点B1は、液体誘導部1の重力方向の最下端部である。
【0032】
これにおいて、曲線部分Bが設けられることによって、滴下点B1までの液体の誘導をスムーズに行うことができる。
また、液体誘導部1が円盤状に構成されることによって、容器3をどのように傾斜させても曲線部分Bの一部が滴下点B1となるため、使用者は容器を持つ部分や傾ける向きを気にせずに液体を吐出させることができるようになる。
【0033】
また、
図3(c)に示すように、液体誘導部1に到達した液体の一部は、第一穴部H1を通って液体誘導部1の表面側に至り、その後、液体誘導部1の表面を伝って滴下点B1に至る。これにより、曲線部分Bに伝わらない液体も吐出させることができるため、傾斜具合によって滴下速度を速めることが容易にできる。
【0034】
好ましくは、穴部Hは、液体誘導具Xが取り付けられた際に、開口部31の中心軸から離間するように設けられる。本実施形態においては、係止部2を平面視した際の中心から離間した位置に設けられる。
これにより使用者は、容器3の角度を中心軸方向に回転させることで、開口部31の重力方向下端に対する穴部Hの距離を変更することができるため、穴部Hからの液体の吐出量の調整手段が増え、操作性が向上する。
【0035】
また、好ましくは、穴部Hは、液体誘導部1の中心位置から離間して設けられている。これにより使用者は、容器3の角度を中心軸方向に回転させることで、滴下点B1に対する穴部Hの距離を変更することができるため、穴部Hからの液体の吐出量の調整手段が増え、操作性が向上する。
【0036】
また、好ましくは、液体誘導部1には、複数の穴部Hが離間して設けられる。これにより使用者は、穴部Hから吐出される液体の量を、容器3の傾斜角度によって段階的に調整することができるようになる。
また、開口部31の開口面が液体誘導部1によって完全に覆われた場合でも、一方の穴部が空気を吸入することで開口部31内部の気圧を保持することができる。
【0037】
なお、本実施形態では開口部31が円筒形であることを想定しているが、開口部31の開口端は斜め方向に切り取られる竹槍形状となっていてもよい。このような場合、竹槍形状の先端部分と液体誘導部1とが当接され、当接部分から液体の誘導を行うことができる。
【0038】
図4は、
図1に記載している液体誘導部1を結合部23に対して垂直に固定した変更例を表している。
変更例の実施形態においては、結合部23は途中部分から二股に分かれて形成されており、円盤状の液体誘導部1が二股の部分に挟み込まれるようにして固定されている。
【0039】
変更例の実施形態に係る液体誘導具Xは、前述の実施形態と同様に、係止部2を開口部31に取り付けた状態で使用される。
使用者は、容器3を傾け、液体を曲線部分Bに伝えることで、液滴を形成し、液体の滴下を行う。
【0040】
《第二の実施形態》
以下、
図5~
図9を用いて、本発明の第二の実施形態に係る液体誘導具の構成について詳述する。なお、以下の図面において符号Xは液体誘導具を表す。
図5は、本実施形態に係る液体誘導具Xの斜視図を表し、
図6は、本実施形態に係る液体誘導具Xを様々な角度から見た図を表している。詳述すると、
図6(a)は平面図であり、
図6(b)は正面図であり、
図6(c)は側面図であり、
図6(d)は背面図であり、
図6(e)は底面図である。なお、
図6(c)に示す側面図は、左側側面図を表しているが、右側側面図も略同一の形状である。
【0041】
図5及び
図6に示すように、液体誘導具Xは、液体誘導部1と、係止部2と、が一体に構成されている。
液体誘導具Xは、全体が金属材料やプラスチック材によって形成されている。後述するように、本実施形態に係る発明の適切な実施にあたっては毛管力が必要となるため、表面が親水性であることや、ざらつきを有することが好ましく、撥水加工を施した材料や、表面が非常に滑らかな材料は選択しないことが好ましい。
【0042】
液体誘導部1は、液体を誘導するための2枚の近接した平板部材である誘導部本体11と、2枚の近接した誘導部本体11の間に形成される空隙である空隙部12と、係止部2の付近に設けられ、空隙部12の幅よりも大きな円形の空隙である大径空隙部13と、を有する。
【0043】
本実施形態において、液体誘導部1に導入された液体は、液体と誘導部本体11の間に生じる表面張力によって空隙部12に誘導・保持される。
【0044】
誘導部本体11は、空隙部12を形成するために設けられる板状部材であり、係止部2から、外部に向けて設けられる突出部分である先端部Tに向けて先細り形状となるように形成されている。これによって、吐出先への液体の狙いがつきやすくなり、例えば液体の吐出先が細い口でも溢さずに吐出することができるようになる。
さらに、先端部Tには、空隙部12の周辺にある液体を収束させる効果もある。
【0045】
空隙部12は、液体誘導部1の中心軸の近辺において、大径空隙部13から、先端部Tに至るまで設けられる略四角形状の空隙部分であって、その幅は0.3~3mm程度であることが好ましい。
【0046】
また、本実施形態においては、空隙部12の幅が、大径空隙部13から先端部Tにかけて次第に狭まる台形状になるように構成されている。このような構成にすることによって、係止部2の付近で多くの液体を保持しつつ、先端部Tでの毛管力を高め適切な懸滴を発生させることができる。
【0047】
特に、先端部Tにおいては、空隙部12の幅を0.3~1.5mm程度にすることが好ましい。
このような構成にすることによって、先端部Tにおいて液体の懸滴を形成しやすくなり、繊細な操作をしなくとも液体を一滴ずつ滴下することができるようになる。
なお、先端部Tにおける空隙部12の幅を小さくすると、発生する液滴が小さくなり、毛管力の増加によって滴下量や滴下速度の調整が容易になる。また、空隙部12の幅を大きくすると、発生する液滴が大きくなり、毛管力の減少により一度に多くの液滴を投下することができるようになる。
【0048】
上記空隙部12の幅は、用いる液体の表面張力や使用態様によって変更できるようにすることが好ましい。
例えば、誘導部本体11を可逆的に変形可能であるような材料(例えば形状記憶合金など)で構成することによって、空隙部12の幅を調整することができるようにすることによれば、一種類の液体誘導具によって、様々な液体に対応した液量を調整できるようになる。
【0049】
大径空隙部13は、後述する直角部Rにおいて、略球形状となるように設けられている空隙であって、空隙部12と連接されるように設けられている、空隙部12の幅の1.5~3倍の直径を有している。
【0050】
図7は、本実施形態に係る液体誘導具Xが、容器3に係止されている様子を示す。
図7(a)は、液体誘導具Xを平面視した模式図を表しており、
図7(b)は、
図7(A)のA-A’から見た断面図を表している。
図7に示すように、係止部2は、帯状の平板部材が折り曲げられて設けられた部材であって、平板状の垂直部21と、ノの字状の弾性部22と、によって構成されており、垂直部21および弾性部22が開口部31の内周面に当接されることによって、取り外し可能に係止される。
【0051】
垂直部21は、誘導部本体11に対して略垂直に設けられている帯状の部材であり、この構成によって誘導部本体11と垂直部21との間に、直角部Rを形成する。
直角部Rを開口部31の端部に係止することによって、開口部31に液体誘導具Xが落下することを防ぐことができるようになる。
【0052】
弾性部22は、垂直部21の下端に連接して設けられており、上方に向かうにつれて垂直部21との水平距離が広がるノの字状に曲げられた弾性部材であって、弾性変形によって開口部31に篏合し、復元力によって開口部31に支持される。
すなわち、
図7(a)に示すように、液体誘導具Xは、開口部31の内周面の4点において支持され、さらに開口部31の内周面から外周面に向かって復元力を発生させているため、容易に外れることがなくなる。
【0053】
また、
図7(a)に示すように、弾性部22の一部は、開口部31の一部を塞ぐように設けられている。このような構成にすることによって、開口部31からの液体の流れを抑制し、容器3から液体が勢いよく流れ出すことを防ぎ、液体誘導部1に適正な量の液体が流れるように調整することができるようになる。
【0054】
また、
図7(b)に示すように、液体誘導具Xが取り付けられた際、弾性部22は、開口部31の上端よりも上部に突出する突出部22Aを有する。これにより、垂直部21を開口部31に完全に沈み込ませて係止された状態であっても、突出部22Aに垂直部21の方向へ力を加えることによって、弾性部22が変形可能であるため、液体誘導具Xの取り外しを容易に行うことができる。
【0055】
以下、
図8を用いて本実施形態に係る液体誘導具Xの製造方法について解説する。なお製造方法はこれに限られず、その順番は前後してもよい。液体誘導具Xは、製造者によって製造される。
【0056】
本実施形態に係る液体誘導具Xは、
図8(a)に示すような、一枚の平板部材によって形成される。なお、平板部材の板厚は、0.5~3mmの範囲であることが好ましい。
【0057】
まず、製造者は、
図8(a)に示す平板を打ち抜きプレス加工する。詳述すると、先細り形状となるように先端部Tを形成し、先端部Tから略台形状に打ち抜くことで空隙部12を形成し、空隙部12と連続するように、径が空隙部12の幅よりも大きい円形となるように打ち抜くことで大径空隙部13を形成する。
【0058】
最後に、製造者は、直角部Rを直角に曲げ、垂直部21と弾性部22の境界部分を曲げ加工し、弾性部22の曲げ具合の調整を行うことで液体誘導具Xを製造する。
【0059】
なお、製造者は、液体誘導具Xを熱可塑性プラスチックで構成し、射出成型によって形成してもよい。
【0060】
以下、
図5~
図9を用いて本実施形態に係る液体誘導具Xの使用方法について解説する。液体誘導具Xの使用方法はこれに限られず、順番は前後してもよい。
本発明は、容器3の内部の液体を吐出させる目的を持つ使用者によって使用される。
【0061】
まず、使用者は、
図3に示すように、液体誘導具Xを容器3の開口部に係止させる。この際、直角部Rが、開口部31の上端に位置するまで篏合させることが好ましい。
【0062】
次に、使用者は、
図9に示すように、液体誘導具Xを取り付けた容器3を傾けることで、液体を液体誘導部1に伝わせる。このようにすることで、容器内部の液体を適量ずつ液体誘導部1に送り込むことができる。
この際、液体は空隙部12によって先端部Tまで誘導される。液体が先端部Tに到達した際には、近接した2つの誘導部本体11によって、液体に上向きの毛管力が発生し、液体は先端部Tに垂れ下がる懸滴となる。
【0063】
最後に、使用者は、容器3の傾きを操作し、懸滴を狙ったところに吐出する。
【0064】
上記の構成によって、簡単な構成で、内部の液体を溢さずに少量ずつ外部に吐出しやすい液体誘導具を提供することができるようになる。
また、使用者は、容器3を大きく傾けることで液体を一気に吐出することもできる。
【0065】
また、本実施形態の液体誘導具は、一枚の平板部材によって構成されているため、凹凸がほとんどなく、不使用時に液体をふき取ることも容易にできるため、メンテナンス性が向上する。
【0066】
より好ましくは、液体誘導部1は、抗菌性の高い金属で形成する。容器3の内部の液体が食用であった場合、液体内部に混入した人体に有害な菌の量を減少させることができる。また、液体誘導具Xに人体に有害な菌が付着することを防ぐことができる。抗菌性の金属には、例えば銅や、銀などが挙げられる。
【0067】
また、より好ましくは、液体誘導部1を、耐熱性を持つ部材によって構成する。このように構成することによって、内部の液体が高温であっても、誘導部本体11が変形することなく液体の誘導を行うことができる。
【0068】
また、液体誘導部1を、酸やアルカリ等の化学薬品に耐性をもつ素材によって構成することによれば、化学実験を行う際の実験器具としても使用することができる。
【0069】
また、誘導部本体11の縁辺において、先端部Tに向かって曲線部分Bが設けられることによって、液体誘導部本体11に伝わった液体を先端部Tへ収束させることができる。
【0070】
なお、係止部2は容器3の縁の上端を挟み込むことによって係止できるようにしてもよい。このように構成することによれば、鍋などの開口部31が広い容器3であっても液体誘導具Xを係止することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 液体誘導部
11 誘導部本体
12 空隙部
13 大径空隙部
2 係止部
21 垂直部
22 弾性部
23 結合部
24 液体遮蔽部
22A 突出部
3 容器
31 開口部
32 開口端
B 曲線部分
B1 滴下点
X 液体誘導具
T 先端部
R 直角部