(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155445
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】ピストンとピストンリングの組合せ構造
(51)【国際特許分類】
F16J 9/16 20060101AFI20221005BHJP
F02F 3/00 20060101ALI20221005BHJP
F02F 5/00 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
F16J9/16
F02F3/00 B
F02F5/00 C
F02F5/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161528
(22)【出願日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2021056717
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000215785
【氏名又は名称】TPR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長倉 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】稲森 秀一
(72)【発明者】
【氏名】川合 清行
【テーマコード(参考)】
3J044
【Fターム(参考)】
3J044AA02
3J044CB03
3J044CB24
3J044CB32
3J044DA09
3J044DA20
(57)【要約】
【課題】内燃機関のピストンとピストンリングの組合せ構造において、ピストンリングとピストンのリング溝の内壁との直接接触による不具合を抑制可能な技術を提供する。
【解決手段】ピストンとピストンリングの組合せ構造は、1又は複数のピストンリングと共にピストンの軸方向に並んで前記リング溝に装着される1又は複数のパーティションリングを備え、パーティションリングは、リング溝の上溝壁面の側に面する上側隔壁面と、リング溝の下溝壁面の側に面する下側隔壁面と、リング溝の底溝壁面との間に接触状態を形成する内周嵌合面と、内燃機関のシリンダの内壁との間に所定の離間距離を確保する外周離間面と、合口を形成する一対の合口端部と、を有し、1又は複数のパーティションリングのうち少なくとも1本のパーティションリングの合口の少なくとも一部は、ピストンの軸方向に沿って流れるガス又はオイルに対して閉塞されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のピストンとピストンリングの組合せ構造であって、
前記ピストンの外周面に設けられたピストンリング装着用のリング溝と、
前記リング溝に装着される1又は複数のピストンリングと、
前記1又は複数のピストンリングと共に前記ピストンの軸方向に並んで前記リング溝に装着される1又は複数のパーティションリングと、を備え、
前記パーティションリングは、前記リング溝において対向配置された一対の内壁のうち前記内燃機関の燃焼室側の溝壁面である上溝壁面の側に面する上側隔壁面と、前記リング溝において対向配置された一対の内壁のうち前記内燃機関のクランク室側の溝壁面である下溝壁面の側に面する下側隔壁面と、前記パーティションリングの内周部に設けられ、前記リング溝の前記上溝壁面の内周縁と前記下溝壁面の内周縁とを接続する底溝壁面と嵌合することで前記底溝壁面との間に接触状態を形成する内周嵌合面と、前記パーティションリングの外周部に設けられ、前記内燃機関のシリンダの内壁との間に所定の離間距離を確保する外周離間面と、互いに対向することで合口を形成する、一対の合口端部と、を有し、
前記1又は複数の前記パーティションリングのうち少なくとも1本の前記パーティションリングの前記合口の少なくとも一部は、前記ピストンの軸方向に沿って流れるガス又はオイルに対して閉塞されている、
ピストンとピストンリングの組合せ構造。
【請求項2】
前記ピストンの軸方向において重なる複数の前記パーティションリングを備え、
前記複数の前記パーティションリングのうち、少なくとも2つの隣り合う前記パーティションリングは、互いの合口同士が軸方向において重ならないように、前記リング溝に装着されている、
請求項1に記載のピストンとピストンリングの組合せ構造。
【請求項3】
前記パーティションリングの前記一対の合口端部は、前記一対の合口端部の一方である第1合口端部の少なくとも一部と他方である第2合口端部の少なくとも一部とが前記ピストンの軸方向において重なるように、形成されている、
請求項1又は2に記載のピストンとピストンリングの組合せ構造。
【請求項4】
前記パーティションリングは、前記合口を埋めることによって前記合口を閉塞する閉塞部を更に有する、
請求項1から3の何れか一項に記載のピストンとピストンリングの組合せ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストンとピストンリングの組合せ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な自動車に搭載される内燃機関は、コンプレッションリング(圧力リング)とオイルリングとを含むピストンリングの組み合わせをピストンに形成されたリング溝に装着した構成を採用している。ピストンの軸方向において、コンプレッションリングが燃焼室側に設けられ、オイルリングがクランク室側に設けられ、これらがシリンダの内壁面を摺動することで能力を発揮する。燃焼室から最も遠いオイルリングは、シリンダの内壁面に付着した余分なエンジンオイル(潤滑油)をクランク側に掻き落とすことでオイルの燃焼室側への流出(オイル上がり)を抑制するオイルシール機能や、潤滑油膜がシリンダの内壁面に適切に保持されるようにオイル量を調整することで内燃機関の運転に伴うピストンの焼き付きを防止する機能を有する。コンプレッションリングは、気密を保持することで燃焼室側からクランク室側への燃焼ガスの流出(ブローバイ)を抑制するガスシール機能や、オイルリングが掻き落とし切れなかった余分なオイルを掻き落とすことでオイル上がりを抑制するオイルシール機能を有する。
【0003】
上述のように複数のピストンリングの組み合わせをピストンに組み付けるためのピストンリング構造は、通常、ピストンの外周面にピストンリングの本数と同数の複数のリング溝を形成し、夫々のリング溝にピストンリングを1本ずつ装着する構造を採用している。一方で、近年、内燃機関の軽量化に伴い、ピストンの軸方向における長さ(以下、軸方向長さ)を短くしてピストンの軽量化を図ることが進められている。また、ピストンリングの幅(即ち、軸方向における厚み)についても薄幅化が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平1-21852号公報
【特許文献2】実開昭63-9442号公報
【特許文献3】実公昭55-2290号公報
【特許文献4】実開平3-63745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、ピストンリングをピストンに組み付ける従来の内燃機関においては、ピストンリングとピストンのリング溝の内壁とが直接接触することになる。そのため、近年のエンジンの熱効率向上や高出力化に伴い、ピストンリングとリング溝の内壁との摺動によってピストンリングとリング溝との凝着やリング溝の内壁の摩耗などの不具合が生じる問題があった。従って、このような問題の対策が求められている。
【0006】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、内燃機関のピストンとピストンリングの組合せ構造において、ピストンリングとピストンのリング溝の内壁との直接接触による不具合を抑制可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の構成を採用した。即ち、本発明は、内燃機関のピストンとピストンリングの組合せ構造であって、前記ピストンの外周面に設けられたピストンリング装着用のリング溝と、前記リング溝に装着される1又は複数のピスト
ンリングと、前記1又は複数のピストンリングと共に前記ピストンの軸方向に並んで前記リング溝に装着されるパーティションリングと、を備え、前記パーティションリングは、前記リング溝において対向配置された一対の内壁のうち前記内燃機関の燃焼室側の溝壁面である上溝壁面の側に面する上側隔壁面と、前記リング溝において対向配置された一対の内壁のうち前記内燃機関のクランク室側の溝壁面である下溝壁面の側に面する下側隔壁面と、前記パーティションリングの内周部に設けられ、前記リング溝の前記上溝壁面の内周縁と前記下溝壁面の内周縁とを接続する底溝壁面と嵌合することで前記底溝壁面との間に接触状態を形成する内周嵌合面と、前記パーティションリングの外周部に設けられ、前記内燃機関のシリンダの内壁との間に所定の離間距離を確保する外周離間面と、を有する、ピストンとピストンリングの組合せ構造、ピストンとピストンリングの組合せ構造である。
【0008】
本発明において、リング溝の上溝壁または下溝壁とピストンリングの間にパーティションリングが装着される場合には、パーティションリングがピストンリングとリング溝の内壁とを隔てるピストンランドとして機能する。そのため、リング溝の上溝壁または下溝壁とピストンリングの間にパーティションリングを装着しない場合と比較して、ピストンリングとピストンのリング溝の内壁との接触箇所を減らすことができる。また、本発明において、ピストンリング同士の間にパーティションリングが装着される場合には、パーティションリングがピストンリング同士を隔てるピストンランドとして機能する。そのため、ピストンランドによりピストンリング同士を隔てる場合と比較して、ピストンリングとピストンのリング溝の内壁との接触箇所を減らすことができる。これにより、本発明によれば、ピストンリングとピストンのリング溝の内壁との直接接触による不具合を抑制することができる。
【0009】
更に、ピストンリング同士の間にパーティションリングが装着される場合には、パーティションリングがピストンリング同士を隔てるピストンランドの代わりとして機能することで、1つのリング溝に複数のピストンリングを装着することが可能となる。そのため、本発明によると、複数のピストンリングをピストンに対して組み付ける内燃機関において、ピストンリングごとにリング溝を形成する場合と比較して、リング溝の数量を減らすことができる。これにより、ピストンの軸方向長さを短くすることが容易となる。また、パーティションリングは、ピストンとは別体の部材であることから、軸方向における幅を薄肉とすることに対しての強度の観点からの制約はピストンランドと比較して小さい。そのため、ピストンランドに代えて当該ピストンランドよりも薄幅のパーティションリングを用いることができる。このことからも、ピストンの軸方向長さを短くすることが容易となる。その結果、ピストンの軽量化、ひいては内燃機関の軽量化に資することができる。また、ピストンの外周面に形成すべきリング溝の数量を低減することで、ピストンリングごとにリング溝を形成する場合と比較して、ピストンの強度を高めることができる。そのため、内燃機関の高出力化に資することができる。また、リング溝に装着するパーティションリングの幅を調整することで、リング溝の薄幅加工をしなくとも薄幅のピストンリングを装着することができ、設計の自由度を向上させることができる。
【0010】
また、本発明において、前記リング溝には、複数のピストンリングが装着され、前記複数のピストンリングは、前記リング溝の前記上溝壁面と前記パーティションリングの前記上側隔壁面との間に装着されるトップリングと、前記リング溝の前記下溝壁面と前記パーティションリングの前記下側隔壁面との間に装着されるセカンドリングと、を含んでもよい。
【0011】
また、本発明において、前記リング溝には、複数のピストンリングが装着され、前記複数のピストンリングは、前記リング溝の前記上溝壁面と前記パーティションリングの前記上側隔壁面との間に装着されるセカンドリングと、前記リング溝の前記下溝壁面と前記パ
ーティションリングの前記下側隔壁面との間に装着されるオイルリングと、を含んでもよい。
【0012】
また、本発明に係るピストンとピストンリングの組合せ構造は、前記パーティションリングとしての第1パーティションリングと、前記リング溝における前記第1パーティションリングよりも前記クランク室側の位置に装着される第2パーティションリングと、を備え、前記第1パーティションリングは、前記上側隔壁面としての第1上側隔壁面と、前記下側隔壁面としての第1下側隔壁面と、前記内周嵌合面としての第1内周嵌合面と、前記外周離間面としての第1外周離間面と、を有し、前記第2パーティションリングは、前記第1パーティションリングの前記第1下側隔壁面の側に面する第2上側隔壁面と、前記リング溝の前記下溝壁面の側に面する第2下側隔壁面と、前記第2パーティションリングの内周面に設けられ、前記底溝壁面と嵌合することで前記底溝壁面との間に接触状態を形成する第2内周嵌合面と、前記第2パーティションリングの外周面に設けられ、前記シリンダの内壁との間に所定の離間距離を確保する第2外周離間面と、を有し、前記リング溝には、複数のピストンリングが装着され、前記複数のピストンリングは、前記リング溝の前記上溝壁面と前記第1パーティションリングの前記第1上側隔壁面との間に装着されるトップリングと、前記第1パーティションリングの前記第1下側隔壁面と前記第2パーティションリングの前記第2上側隔壁面との間に装着されるセカンドリングと、前記リング溝の前記下溝壁面と前記第2パーティションリングの前記第2下側隔壁面との間に装着されるオイルリングと、を含んでもよい。
【0013】
また、本発明において、前記パーティションリングは、前記ピストンの径方向において前記上側隔壁面よりも内側に設けられると共に前記燃焼室側に突出することで前記ピストンの軸方向に支持される、上側突出部を有してもよい。これによると、パーティションリングの燃焼室側への移動を規制することができる。
【0014】
また、本発明において、前記パーティションリングは、前記ピストンの径方向において前記下側隔壁面よりも内側に設けられると共に前記クランク室側に突出することで前記ピストンの軸方向に支持される、下側突出部を有してもよい。これによると、パーティションリングのクランク室側への移動を規制することができる。
【0015】
また、本発明において、前記パーティションリングは、互いに対向することで合口を形成する、一対の合口端部を有してもよい。これによると、ピストンリングと同様に、合口を拡張することでパーティションリングをリング溝に対して着脱可能となる。また、熱膨張によるパーティションリングの体積膨張を周長方向の伸びで吸収できる。
【0016】
また、本発明は、1又は複数の前記パーティションリングを備え、前記1又は複数の前記パーティションリングのうち少なくとも1本の前記パーティションリングの前記合口の少なくとも一部は、前記ピストンの軸方向に沿って流れるガス又はオイルに対して閉塞されていてもよい。これによると、ガスのブローバイやオイル上がりを抑制し、ブローバイガスやオイル消費を低減できる。
【0017】
また、本発明に係るピストンとピストンリングの組合せ構造は、前記ピストンの軸方向において重なる複数の前記パーティションリングを備え、前記複数の前記パーティションリングのうち、少なくとも2つの隣り合う前記パーティションリングは、互いの合口同士が軸方向において重ならないように、前記リング溝に装着されてもよい。これによると、隣り合う2つのパーティションリングが、夫々の合口を互いに覆うこととなる。これにより、合口がガス又はオイルに対して閉塞される。その結果、ガスのブローバイやオイル上がりを抑制し、ブローバイガスやオイル消費を低減できる。
【0018】
また、本発明において、前記パーティションリングの前記一対の合口端部は、前記一対の合口端部の一方である第1合口端部の少なくとも一部と他方である第2合口端部の少なくとも一部とが前記ピストンの軸方向において重なるように、形成されてもよい。これによると、ガスやオイルがピストンの軸方向に沿って合口を通り抜けることが第1合口端部や第2合口端部によって阻害される。これにより、合口の少なくとも一部がピストンの軸方向に沿って流れるガス又はオイルに対して閉塞される。その結果、ガスのブローバイやオイル上がりを抑制し、ブローバイガスやオイル消費を低減できる。
【0019】
また、本発明において、前記パーティションリングは、前記合口を埋めることによって前記合口を閉塞する閉塞部を更に有してもよい。これにより、合口がガス又はオイルに対して閉塞される。その結果、ガスのブローバイやオイル上がりを抑制し、ブローバイガスやオイル消費を低減できる。
【0020】
また、本発明は、パーティションリングとしても特定できる。即ち、本発明は、内燃機関のピストンの外周面に設けられたピストンリング装着用のリング溝に1又は複数のピストンリングと共に軸方向に並んで装着されるパーティションリングであって、前記パーティションリングが前記リング溝に装着された使用状態において、前記リング溝において対向配置された一対の内壁のうち前記内燃機関の燃焼室側の溝壁面である上溝壁面の側に面する上側隔壁面と、前記使用状態において、前記リング溝において対向配置された一対の内壁のうち前記内燃機関のクランク室側の溝壁面である下溝壁面の側に面する下側隔壁面と、前記パーティションリングの内周部に設けられ、前記使用状態において、前記リング溝の前記上溝壁面の内周縁と前記下溝壁面の内周縁とを接続する底溝壁面と嵌合することで前記底溝壁面との間に接触状態を形成する内周嵌合面と、前記パーティションリングの外周部に設けられ、前記使用状態において、前記内燃機関のシリンダの内壁との間に所定の離間距離を確保する外周離間面と、を備える、パーティションリングであってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、内燃機関のピストンとピストンリングの組合せ構造において、ピストンリングとピストンのリング溝の内壁との直接接触による不具合を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態1に係るピストンリング構造を備える内燃機関の断面図である。
【
図2】実施形態1に係るピストンリング構造を備える内燃機関の部分断面図である。
【
図3】実施形態に係るパーティションリングの上面図である。
【
図4】実施形態1の変形例1に係るピストンリング構造を備える内燃機関の部分断面図である。
【
図5】実施形態1の変形例2に係るピストンリング構造を備える内燃機関の部分断面図である。
【
図6】実施形態1の変形例3に係るピストンリング構造を備える内燃機関の部分断面図である。
【
図7】実施形態2に係るピストンリング構造を備える内燃機関の部分断面図である。
【
図8】実施形態2の変形例1に係るピストンリング構造を備える内燃機関の部分断面図である。
【
図9】実施形態2の変形例2に係るピストンリング構造を備える内燃機関の部分断面図である。
【
図10】実施形態3に係るピストンリング構造を備える内燃機関の部分断面図である。
【
図11】実施形態4に係るピストンリング構造を備える内燃機関の部分断面図である。
【
図12】実施形態4における2つのパーティションリングの合口の位置関係を示す図である。
【
図13】実施形態5に係るパーティションリングの合口端部の形状を説明するための図である。
【
図14】実施形態5の変形例1に係るパーティションリングの合口端部の形状を説明するための図である。
【
図15】実施形態5の変形例2に係るパーティションリングの合口端部の形状を説明するための図である。
【
図16】実施形態5の変形例3に係るパーティションリングの合口端部の形状を説明するための図である。
【
図17】使用状態における実施形態5の変形例3に係るパーティションリングを軸方向に沿って視認した状態を示す図である。
【
図18】実施形態5の変形例4に係るパーティションリングの合口端部の形状を説明するための図である。
【
図19】使用状態における実施形態5の変形例4に係るパーティションリングを軸方向に沿って視認した状態を示す図である。
【
図20】実施形態6に係るパーティションリングの合口部分を説明するための図である。
【
図21】パーティションリングのバリエーションを示す断面図(1)である。
【
図22】パーティションリングのバリエーションを示す断面図(2)である。
【
図23】パーティションリングのバリエーションを示す断面図(3)である。
【
図24】パーティションリングのバリエーションを示す断面図(4)である。
【
図25】パーティションリングのバリエーションを示す断面図(5)である。
【
図26】パーティションリングのバリエーションを示す断面図(6)である。
【
図27】パーティションリングのバリエーションを示す断面図(7)である。
【
図28】パーティションリングのバリエーションを示す断面図(8)である。
【
図29】パーティションリングのバリエーションを示す断面図(9)である。
【
図30】パーティションリングのバリエーションを示す断面図(10)である。
【
図31】パーティションリングのバリエーションを示す断面図(11)である。
【
図32】パーティションリングのバリエーションを示す断面図(12)である。
【
図33】パーティションリングのバリエーションを示す断面図(13)である。
【
図34】パーティションリングのバリエーションを示す断面図(14)である。
【
図35】パーティションリングのバリエーションを示す断面図(15)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について説明する。なお、以下の実施形態に記載されている構成は、特に記載がない限りは発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0024】
<実施形態1>
図1は、実施形態1に係るピストンとピストンリングの組合せ構造(以下、ピストンリング構造)110を備える内燃機関100の断面図である。
図2は、実施形態1に係るピストンリング構造110を備える内燃機関100の部分断面図である。
図2では、ピストンリングの周長方向に直交する断面が図示されている。
図1に示すように、実施形態に係る内燃機関100は、シリンダ10と、シリンダ10に装着されたピストン20と、を有する。内燃機関100において、符号30で示す燃焼室側を上側とし、符号40で示すクランク室側を下側とする。
図2に示すように、内燃機関100は、トップリング1及びセカンドリング2を含む2本のコンプレッションリング(圧力リング)と1本のオイルリン
グ3とを含む計3本のピストンリングの組み合わせをピストン20に組み付けた構成を採用している。
【0025】
[全体構成]
図2に示すように、内燃機関100では、ピストン20の外周面20aとシリンダ10の内壁面10aとの間に所定の離間距離dが確保されることにより、ピストン隙間PC1が形成されている。また、ピストン20の外周面20aには、ピストン20の軸方向に所定の間隔を空けて上側(燃焼室30側)から順に第1リング溝201と第2リング溝202とが形成されている。ピストンリング構造110は、内燃機関100のピストン20にピストンリングを組み付ける構造である。ピストンリング構造110は、ピストン20の外周面20aに設けられたピストンリング装着用の第1リング溝201及び第2リング溝202と、トップリング1と、セカンドリング2と、オイルリング3と、パーティションリング4と、を含む。本明細書では、トップリング1、セカンドリング2、及びオイルリング3を区別しないで説明するときは、単に「ピストンリング」と称する。ピストンリングは、即ち、内燃機関のシリンダに装着されたピストンに組み付けられ、ピストンの往復運動に伴ってシリンダの内壁面を摺動する摺動部材である。また、
図2に示すように各ピストンリング及びパーティションリング4がシリンダ10に装着されたピストン20に組み付けられた状態を、「使用状態」と称する。また、
図2に示すように、ピストン20、ピストンリング、及びパーティションリング4の中心軸に沿う方向(軸方向)を「上下方向」と定義する。また、ピストンリングやパーティションリング4の軸方向のうち、内燃機関100における燃焼室30側(
図2における上側)を「上側」と定義し、その反対側、即ち、クランク室側(
図2における下側)を「下側」と定義する。
図2に示すように、ピストンリング構造110では、第1リング溝201にトップリング1、セカンドリング2、及びパーティションリング4が装着され、第2リング溝202にオイルリング3が装着されている。以下、ピストンリング構造110の各構成について説明する。
【0026】
[リング溝]
第1リング溝201及び第2リング溝202は、ピストン20の軸回りに環状に延びる断面矩形状の溝として外周面20aの全周に形成されている。
図2に示すように、第2リング溝202は、ピストン20の外周面20aにおける第1リング溝201よりも下側の位置に形成されている。第1リング溝201と第2リング溝202は、夫々、上下に対向配置された一対の溝壁(内壁)を含んで形成されている。一対の溝壁のうち、上側の溝壁を上溝壁W1と称し、下側の溝壁を下溝壁W2と称する。また、第1リング溝201と第2リング溝202の夫々における、上溝壁W1の内周縁と下溝壁W2の内周縁とを接続する溝壁を底溝壁W3と称する。本例では、第1リング溝201が本発明に係る「リング溝」に相当する。なお、上溝壁W1と底溝壁W3との接続部分(コーナー)や下溝壁W2と底溝壁W3との接続部分(コーナー)は、R面形状やC面形状であってもよい。
【0027】
[トップリング]
トップリング1は、3本のピストンリングのうちピストン20の軸方向において最も上側に組み付けられるコンプレッションリングである。本例のトップリング1は、いわゆるレクタンギュラ形状に形成されており、断面が矩形状となっている。このトップリング1は、外周面11と内周面12と上面13と下面14とを有する。上面13と下面14とによって、トップリング1の軸方向における幅が規定される。外周面11は、径方向外側に突出するように湾曲したバレルフェースに形成されている。トップリング1は、内燃機関100において、その軸方向における両端面の一方である上面13が上側に面すると共に他方である下面14が下側に面し、外周面11がシリンダ10の内壁面10aに摺接するように、ピストン20に組み付けられる。また、トップリング1は、使用状態において外周面11がシリンダ10の内壁面10aを押圧するように自己張力を有している。これにより、ガスシール機能やオイルシール機能が得られる。なお、本発明に係るトップリング
の形状は上記に限定されない。トップリングとしては、種々の形状を採用できる。例えば、トップリングは、その外周面がストレートフェースやテーパ形状であってもよい。また、トップリングは、その断面形状がキーストンやハーフキーストン、インターナルベベルであってもよい。
【0028】
[セカンドリング]
セカンドリング2は、ピストン20の軸方向においてトップリング1の下側に組み付けられるコンプレッションリングである。つまり、セカンドリング2は、トップリング1とオイルリング3との間に組付けられる。このセカンドリング2は、外周面21と内周面22と上面23と下面24とを有する。上面23と下面24とによって、セカンドリング2の軸方向における幅が規定される。セカンドリング2は、いわゆるレクタンギュラ形状に形成されており、セカンドリング2の外周面21は、下側に向かうに従って拡径するように傾斜したテーパ形状を有している。セカンドリング2は、内燃機関100において、その軸方向における両端面の一方である上面23が上側に面すると共に他方である下面24が下側に面し、外周面21がシリンダ10の内壁面10aに摺接するように、ピストン20に組み付けられる。また、セカンドリング2は、使用状態において外周面21がシリンダ10の内壁面10aを押圧するように自己張力を有している。これにより、ガスシール機能やオイルシール機能が得られる。なお、本発明に係るセカンドリングの形状は上記に限定されない。セカンドリングとしては、種々の形状を採用できる。例えば、セカンドリングは、その外周面がバレルフェースであってもよいし、ストレートフェースであってもよい。また、セカンドリングは、アンダーカットを有するスクレーパリングであってもよいし、ナピアリングであってもよい。また、セカンドリングは、その断面形状がキーストンやハーフキーストン、インターナルベベルであってもよい。
【0029】
[オイルリング]
オイルリング3は、3本のピストンリングのうちピストン20の軸方向において最も下側に組み付けられるピストンリングである。オイルリング3は、いわゆる3ピース型の組合せオイルリングであり、
図2に示すように、一対のセグメント31,31(一対の摺動部の一例)とスペーサエキスパンダ32(エキスパンダの一例)とを備える。
【0030】
一対のセグメント31,31は、オイルリング3の軸回りに環状に形成されており、互いに独立して軸方向に並んで設けられている。本例に係るオイルリング3は、一対のセグメント31,31を、同一の形状としている。但し、本発明は、一対のセグメントの形状が異なっていてもよい。以下、一対のセグメント31,31を区別して称する場合には、上側(燃焼室30側)に設けられたセグメント31を上側セグメント31Uと称し、下側(クランク室40側)に設けられたセグメント31を下側セグメント31Lと称する。これらを区別しないときは、単にセグメント31と称する。
図2に示すように、セグメント31は、外周面311、内周面312、上面313、及び下面314を有する。上面313と下面314とによって、セグメント31の軸方向における幅が規定される。セグメント31は、内燃機関100において、その軸方向における両端面の一方である上面313が上側に面すると共に他方である下面314が下側に面し、外周面311がシリンダ10の内壁面10aに摺接するように、ピストン20に組み付けられる。スペーサエキスパンダ32は、一対のセグメント31,31の間に設けられており、使用状態において拡径するように自己張力を有している。これにより、上側セグメント31U及び下側セグメント31Lがスペーサエキスパンダ32によって径方向の外側へ付勢され、外周面311がシリンダ10の内壁面10aを押圧する。これにより、オイルシール機能が得られる。なお、本発明に係るオイルリングの形状は上記に限定されない。オイルリングは、例えば、所謂2ピースのオイルリングであってもよい。2ピースのオイルリングとは、軸回りに環状に形成されたオイルリング本体と、オイルリング本体を径方向外側へ付勢するコイルエキスパンダ(エキスパンダの一例)と、を有し、オイルリング本体には、径方向外側に突出
する一対のレール(一対の摺動部の一例)がオイルリングの軸方向に並んで形成されたオイルリングのことをいう。また、オイルリングは、スペーサエキスパンダやコイルエキスパンダを有さず、単体で機能する形態であってもよい。
【0031】
[パーティションリング]
パーティションリング4は、1又は複数のピストンリング(本例ではトップリング1及びセカンドリング2)と共にリング溝(本例では第1リング溝201)に装着されることでピストンランドの代わりとして機能する、リング状の部材である。本例のパーティションリング4は、いわゆるレクタンギュラ形状に形成されており、周長方向に直交する断面が矩形状となっている。但し、本発明はこれに限定されない。パーティションリング4は、外周離間面41と内周嵌合面42と上側隔壁面43と下側隔壁面44とを有する。なお、パーティションリングの上側隔壁面は、リング溝の上溝壁と平行であってもよいし、上溝壁に対して傾斜していてもよい。同様に、パーティションリングの下側隔壁面は、リング溝の下溝壁と平行であってもよいし、下溝壁に対して傾斜していてもよい。また、パーティションリングの各角部には、面取りやステップカット等が形成されていてもよい。
【0032】
図2に示すように、上側隔壁面43は、使用状態において第1リング溝201の上溝壁W1の側に面している。これにより、上溝壁W1と上側隔壁面43の間には、トップリング1を装着可能な空間が画定されている。また、下側隔壁面44は、使用状態において第1リング溝201の下溝壁W2の側に面している。これにより、下溝壁W2と下側隔壁面44の間には、セカンドリング2を装着可能な空間が画定されている。内周嵌合面42は、パーティションリング4の内周部に設けられている。内周嵌合面42は、使用状態において底溝壁W3と嵌合することで底溝壁W3との間に接触状態を形成する。本例の内周嵌合面42は、全周に亘って底溝壁W3と接触している。但し、本発明はこれに限定されず、内周嵌合面は、その少なくとも一部が底溝壁と接触していればよい。また、本例の内周嵌合面42は、パーティションリング4が軸方向に沿って底溝壁W3を摺動可能となるように底溝壁W3と嵌合している。そのため、パーティションリング4は、トップリング1及びセカンドリング2と共に軸方向に沿って移動可能となっている。但し、本発明はこれに限定されない。パーティションリングが軸方向に沿って移動できない程度に内周嵌合面が底溝壁と嵌合してもよい。外周離間面41は、パーティションリング4の外周部に設けられており、上側隔壁面43の外周縁と下側隔壁面44の外周縁とを接続している。また、外周離間面41は、使用状態においてシリンダ10の内壁面10aとの間に所定の離間距離d1を確保する。つまり、パーティションリング4は、シリンダ10の内壁面10aと離れている。ここで、
図3は、実施形態1に係るパーティションリング4の上面図(軸方向の上側から視認した図)である。
図3に示すように、パーティションリング4は、互いに対向することで合口G1を形成する一対の合口端部410,420を含む。
【0033】
パーティションリング4の材質は特に限定されないが、たとえば、鋼鉄製、鋳鉄製、Cu合金製、アルミニウム合金製のものを用いることができる。また、パーティションリング4の表面には、樹脂被膜、窒化処理被膜、Ni-Pめっき処理被膜、クロムめっき処理被
膜、PVD処理被膜、及びDLC処理被膜のうち少なくとも何れか1つの層を含む被膜が形成されてもよい。なお、「樹脂被膜」とは、樹脂材料により形成された被膜のことを指す。また、「窒化処理被膜」とは、窒化処理により金属表面に窒素を浸透させることで形成される被膜のことを指す。また、「Ni-Pめっき処理被膜」とは、無電解Ni-Pめっきにより形成された被膜のことを指す。また、「クロムめっき処理被膜」とは、クロムめっきにより形成された被膜のことを指す。クロムめっきは工業用クロムめっきとも呼ばれる。また、「PVD(physical vapor deposition)処理被膜」とは、PVD法により形成さ
れた被膜のことを指す。また、「DLC(Diamond Like Carbon)処理被膜」とは、主と
して炭化水素や炭素の同素体により構成される非晶質の硬質炭素膜のことを指す。このような被膜は、パーティションリング4と他の部材との接触部分である内周嵌合面42、上
側隔壁面43、及び下側隔壁面44に形成することが好ましい。このような被膜を形成することで、パーティションリング4の耐摩耗性等を高めることができ、パーティションリング4と他の部材との凝着など、母材同士の直接接触による不具合を防止できる。
【0034】
図2に示すように、ピストンリング構造110では、トップリング1が第1リング溝201の上溝壁W1とパーティションリング4の上側隔壁面43との間に装着され、セカンドリング2が第1リング溝201の下溝壁W2とパーティションリング4の下側隔壁面44との間に装着され、オイルリング3が第2リング溝202に装着されている。ピストンリング構造110では、パーティションリング4の上側隔壁面43にトップリング1の下面14が対向し、パーティションリング4の下側隔壁面44にセカンドリング2の上面23が対向している。そのため、トップリング1が下側に移動するとパーティションリング4がトップリング1に当接し、セカンドリング2が上側に移動するとパーティションリング4がセカンドリング2に当接することとなる。つまり、トップリング1とセカンドリング2との間にパーティションリング4が介装されており、パーティションリング4によってトップリング1とセカンドリング2とが隔てられている。このように、ピストンリング構造110では、パーティションリング4がトップリング1とセカンドリング2とを隔てるピストンランドの代わりとして機能することで、トップリング1の下面14とセカンドリング2の上面23とパーティションリング4の外周離間面41とシリンダ10の内壁面10aとによって囲まれた空間が形成され、トップリング1とセカンドリング2との間の圧力の調整機能や、オイル溜りとしての機能を発揮できる。
【0035】
[作用・効果]
以上のように、実施形態1に係るピストンリング構造110は、ピストン20の外周面20aに形成された第1リング溝201と、第1リング溝201に装着される複数のピストンリング(トップリング1及びセカンドリング2)と、トップリング1及びセカンドリング2と共にピストン20の軸方向に並んで第1リング溝201に装着されるパーティションリング4と、を備える。そして、パーティションリング4は、第1リング溝201の上溝壁W1の側に面する上側隔壁面43と、第1リング溝201の下溝壁W2の側に面する下側隔壁面44と、第1リング溝201の底溝壁W3と嵌合することで底溝壁W3との間に接触状態を形成する内周嵌合面42と、シリンダ10の内壁面10aとの間に所定の離間距離d1を確保する外周離間面41と、を有する。
【0036】
ここで、複数のピストンリングをピストンに組み付ける内燃機関において、ピストンリングごとにリング溝を形成した場合、ピストンの軸方向長さを短くするためには、リング溝の間隔を短くする必要がある。しかしながら、リング溝の間隔を短くすると、軸方向に隣り合うリング溝間のピストンランドが薄肉となるため、ピストンの強度維持が困難であった。また、リング溝の加工精度の観点でも、ピストンの軸方向長さを短くするのは困難であった。
【0037】
ピストンリング構造110によると、パーティションリング4がトップリング1とセカンドリング2とを隔てるピストンランドの代わりとして機能することで、第1リング溝201にトップリング1とセカンドリング2とを装着することが可能となる。そのため、トップリング1を装着するためのリング溝とセカンドリング2を装着するためのリング溝とを別個にピストン20の外周面20aに形成する必要がない。つまり、ピストンリング構造110によると、1つのリング溝に複数のピストンリング(本例ではトップリング1及びセカンドリング2)を装着することができる。これにより、複数のピストンリングをピストンに対して組み付ける内燃機関において、ピストンリングごとにリング溝を形成する場合と比較して、リング溝の数量を減らすことができる。これにより、ピストン20の軸方向長さを短くすることが容易となる。その結果、ピストンリング構造110によると、ピストンの軽量化、ひいては内燃機関の軽量化に資することができる。また、ピストンリ
ングやパーティションリングを薄幅化することで、ピストン20の軸方向長さを短くすることができる。また、ピストン20の外周面20aに形成すべきリング溝の数量を低減することで、ピストンリングごとにリング溝を形成する場合と比較して、ピストンの強度を高めることができる。そのため、内燃機関の高出力化に資することができる。
【0038】
更に、ピストンリング構造110によると、ランド容積に対する設計の制約を緩和することができる。ここで、「ランド容積」とは、軸方向において隣接するピストンリングとピストンの外周面とシリンダの内壁面とによって囲まれた空間の容積のことを指す。本例では、パーティションリング4がピストンランドの代わりとして機能するため、トップリング1の下面14とセカンドリング2の上面23とピストン20の外周面20aとによって囲まれた空間の容積がランド容積に相当する。パーティションリング4は、ピストン20とは別体の部材として形成されていることから、軸方向における幅を薄肉とすることに対しての強度の観点からの制約はピストンランドと比較して小さい。そのため、ピストンリング構造110によると、ランド容積に対する設計の自由度を高めることができる。これにより、圧力の調整機能やオイル溜りとしての機能に対する設計の自由度を向上させることができる。
【0039】
また、通常、ピストンはアルミニウム合金製であるため、ピストンリングとリング溝の内壁との接触箇所にはアルミニウム凝着が生じる可能性がある。また、ピストンリングとリング溝の内壁との間の摺動によりリング溝の内壁が摩耗する可能性がある。この点、ピストンリング構造110では、トップリング1とセカンドリング2との間にはピストンランドに代えてパーティションリング4が介在するため、ピストンランドによりピストンリング同士を隔てる場合と比較して、トップリング1とリング溝の内壁との接触箇所、及びセカンドリング2とリング溝の内壁との接触箇所を減らすことができる。そのため、アルミニウム凝着など、ピストンリングとピストンのリング溝の内壁との直接接触による不具合を抑制できる。また、パーティションリング4の材質や表面処理を適宜選択することで、トップリング1やセカンドリング2とパーティションリング4との接触箇所にアルミニウム凝着などの不具合の発生を防止することや、パーティションリング4の耐摩耗性を向上することができる。
【0040】
また、ピストンリング構造110では、第1リング溝201の底溝壁W3とパーティションリング4の内周嵌合面42との間に接触状態が形成されるため、第1リング溝201の底溝壁W3とパーティションリング4の内周嵌合面42との間を通過するオイルやガスの量を低減できる。つまり、パーティションリング4の内周側からのオイル上がりやガス流出を抑制できる。また、第1リング溝201の底溝壁W3とパーティションリング4の内周嵌合面42とが接触しているため、ピストン20の熱を底溝壁W3からパーティションリング4の内周嵌合面42を介してピストンリングへ伝え、ピストンリングが摺接するシリンダ10へ熱を逃がすことができる。なお、本発明は、内周嵌合面の少なくとも一部が底溝壁と接触していればよい。
【0041】
更に、パーティションリング4は、互いに対向することで合口G1を形成する、一対の合口端部410,420を備える。パーティションリング4に合口G1が形成されていることで、パーティションリング4をリング溝に対して脱着可能となり、パーティションリング4の交換も可能となる。また、合口G1により熱膨張によるパーティションリング4の体積膨張を周長方向の伸びで吸収できる。そのため、熱膨張によりパーティションリング4の体積膨張が径方向内側へ進んでパーティションリング4の内周嵌合面42が第1リング溝201の底溝壁W3に食い込むことやパーティションリング4の体積膨張が径方向外側へ進んでランド容積が変化することを抑制できる。また、ピストン20の熱膨張によりパーティションリング4に過大な力が加わることやパーティションリング4がピストンに食い込むことを抑制できる。また、適度な合口隙間が形成されることで、パーティショ
ンリング4の熱膨張時に合口端部410,420同士が突き当たることが抑制され、結果、パーティションリング4の内周側に隙間ができることが防止される。
【0042】
なお、本発明に係るピストンリングの本数は3本に限定されるものではなく、ピストンリングの種類は上述のトップリング、セカンドリング、及びオイルリングに限定されるものではない。例えば、複数のピストンリングは、1本のコンプレッションリングと1本のオイルリングからなり、1つのリング溝に該コンプレッションリングと該オイルリングとパーティションリングとが装着される構成であってもよい。また、ピストンに組付けられるコンプレッションリングが3本以上であってもよく、例えば、オイルリングよりクランク室側の位置にコンプレッションリングを配置してもよい。その場合、1つのリング溝にオイルリングとコンプレッションリングとパーティションリングを装着し、オイルリングとコンプレッションリングの間にパーティションリングを介装してもよい。また、オイルリングが2本以上であってもよく、オイルリング同士の間にパーティションリングを介装してもよい。
【0043】
[実施形態1の変形例]
以下、実施形態1の変形例について説明する。以下の説明では、上述のピストンリング構造110との相違点を中心に説明し、同様の構成については同一の符号を付すことにより詳細な説明は割愛する。
【0044】
[変形例1]
図4は、実施形態1の変形例1に係るピストンリング構造110Aを備える内燃機関100Aの部分断面図である。変形例1に係るピストンリング構造110Aは、パーティションリング4がセカンドリング2及びオイルリング3と共にピストン20の軸方向に並んで第2リング溝202に装着されている点で、ピストンリング構造110と異なる。本例では、第2リング溝202が本発明に係る「リング溝」に相当する。
【0045】
図4に示すように、ピストンリング構造110Aでは、パーティションリング4の上側隔壁面43が第2リング溝202の上溝壁W1の側に面することで、上溝壁W1と上側隔壁面43との間には、セカンドリング2を装着可能な空間が画定されている。また、パーティションリング4の下側隔壁面44が下溝壁W2の側に面することで、下溝壁W2と下側隔壁面44との間には、オイルリング3を装着可能な空間が画定されている。そして、
図4に示すように、ピストンリング構造110Aでは、トップリング1が第1リング溝201に装着され、セカンドリング2が第2リング溝202の上溝壁W1とパーティションリング4の上側隔壁面43との間に装着され、オイルリング3が第2リング溝202の下溝壁W2とパーティションリング4の下側隔壁面44との間に装着されている。ピストンリング構造110Aでは、パーティションリング4の上側隔壁面43にセカンドリング2の下面24が対向し、パーティションリング4の下側隔壁面44に上側セグメント31Uの上面313が対向している。そのため、セカンドリング2が下側に移動するとパーティションリング4がセカンドリング2に当接し、オイルリング3が上側に移動するとパーティションリング4がオイルリング3に当接することとなる。つまり、セカンドリング2とオイルリング3との間にパーティションリング4が介装されている。
【0046】
変形例1に係るピストンリング構造110Aにおいても、上述のピストンリング構造110と同様の効果を得ることができる。つまり、ピストンリング構造110Aによると、1つのリング溝に複数のピストンリング(本例ではセカンドリング2及びオイルリング3)を装着することができ、リング溝の数量を減らすことができる。これにより、ピストン20の軸方向長さを短くすることが容易となる。その結果、ピストンリング構造110Aによると、ピストンの軽量化、ひいては内燃機関の軽量化に資することができる。また、パーティションリング4がピストンリング同士を隔てるピストンランドの代わりとして機
能することで、ピストンランドによりピストンリング同士を隔てる場合と比較して、ピストンリングとピストンのリング溝の内壁との接触箇所を減らすことができる。これにより、ピストンリングとピストンのリング溝の内壁との直接接触による不具合を抑制することができる。
【0047】
[変形例2]
図5は、実施形態1の変形例2に係るピストンリング構造110Bを備える内燃機関100Bの部分断面図である。変形例2に係るピストンリング構造110Bは、ピストン20の外周面20aに第1リング溝201のみが形成されている点、第1リング溝201にトップリング1、セカンドリング2、及びオイルリング3が装着されている点、パーティションリング4に加えて符号5で示すパーティションリングが第1リング溝201に装着されている点で、ピストンリング構造110と相違する。変形例2では、第1リング溝201が本発明に係る「リング溝」に相当する。また、変形例2では、パーティションリング4、外周離間面41、内周嵌合面42、上側隔壁面43、及び下側隔壁面44が、夫々、本発明に係る「第1パーティションリング」、「第1外周離間面」、「第1内周嵌合面」、「第1上側隔壁面」、及び「第1下側隔壁面」に相当する。パーティションリング5は、外周離間面51と内周嵌合面52と上側隔壁面53と下側隔壁面54とを有する。変形例2では、パーティションリング5、外周離間面51、内周嵌合面52、上側隔壁面53、及び下側隔壁面54が、夫々、本発明に係る「第2パーティションリング」、「第2外周離間面」、「第2内周嵌合面」、「第2上側隔壁面」、及び「第2下側隔壁面」に相当する。また、パーティションリング5は、本発明に係る「パーティションリング」にも相当する。
【0048】
図5に示すように、ピストンリング構造110Bでは、パーティションリング4及びパーティションリング5がトップリング1、セカンドリング2、及びオイルリング3と共にピストン20の軸方向に並んで第1リング溝201に装着されている。パーティションリング4の上側隔壁面43が第1リング溝201の上溝壁W1の側に面することで、上溝壁W1と上側隔壁面43との間には、トップリング1を装着可能な空間が画定されている。また、パーティションリング4の下側隔壁面44が下溝壁W2の側に面することで、下溝壁W2と下側隔壁面44との間には、セカンドリング2及びオイルリング3を装着可能な空間が画定されている。
【0049】
また、ピストンリング構造110Bでは、第1リング溝201におけるパーティションリング4よりも下側の位置にパーティションリング5が装着されている。ピストンリング構造110Bでは、パーティションリング5の上側隔壁面53がパーティションリング4の下側隔壁面44の側に面することで、パーティションリング4の下側隔壁面44とパーティションリング5の上側隔壁面53との間には、セカンドリング2を装着可能な空間が画定されている。また、パーティションリング5の下側隔壁面54が下溝壁W2の側に面することで、下溝壁W2と下側隔壁面54との間には、オイルリング3を装着可能な空間が画定されている。
【0050】
また、パーティションリング5の内周部に設けられた内周嵌合面52は、使用状態において底溝壁W3と嵌合することで底溝壁W3との間に接触状態を形成する。本例の内周嵌合面52は、全周に亘って底溝壁W3と接触している。但し、本発明はこれに限定されず、第2内周嵌合面は、その少なくとも一部が底溝壁と接触していればよい。また、本例の内周嵌合面42は、パーティションリング4が軸方向に沿って底溝壁W3を摺動可能となるように底溝壁W3と嵌合している。そのため、パーティションリング4は、トップリング1及びセカンドリング2と共に軸方向に沿って移動可能となっている。但し、本発明はこれに限定されない。また、パーティションリング5の外周部に設けられた外周離間面51は、使用状態においてシリンダ10の内壁面10aとの間に所定の離間距離d2を確保
する。
【0051】
そして、
図5に示すように、ピストンリング構造110Bでは、トップリング1が第1リング溝201の上溝壁W1とパーティションリング4の上側隔壁面43との間に装着され、セカンドリング2がパーティションリング4の下側隔壁面44とパーティションリング5の上側隔壁面53との間に装着され、オイルリング3が第1リング溝201の下溝壁W2とパーティションリング5の下側隔壁面54との間に装着されている。つまり、ピストンリング構造110Bでは、トップリング1とセカンドリング2との間にパーティションリング4が介装されており、セカンドリング2とオイルリング3との間にパーティションリング5が介装されている。このように、ピストンリング構造110Bでは、パーティションリング4及びパーティションリング5がピストンランドの代わりとして機能している。
【0052】
変形例2に係るピストンリング構造110Bにおいても、上述のピストンリング構造110と同様の効果を得ることができる。つまり、ピストンリング構造110Bによると、1つのリング溝に複数のピストンリング(本例ではトップリング1、セカンドリング2、及びオイルリング3)を装着することができ、リング溝の数量を減らすことができる。これにより、ピストン20の軸方向長さを短くすることが容易となる。特に、変形例2では、1つのリング溝に3本のピストンリングを装着可能となることから、ピストン20の構造を一層単純化でき、ピストン20の軸方向長さを短くすることが一層容易となる。また、パーティションリング4及びパーティションリング5がピストンリング同士を隔てるピストンランドの代わりとして機能することで、ピストンリングとピストンのリング溝の内壁との直接接触による不具合を抑制することができる。
【0053】
[変形例3]
図6は、実施形態1の変形例3に係るピストンリング構造110Cを備える内燃機関100Cの部分断面図である。変形例3に係るピストンリング構造110Cは、第1リング溝201の底溝壁W3に保持部H1が形成されている点で、ピストンリング構造110と相違する。
【0054】
図6に示すように、ピストンリング構造110Cでは、第1リング溝201の底溝壁W3の一部が径方向の内側に凹むことで、パーティションリング4を保持する保持部H1が形成されている。保持部H1は、底溝壁W3の全周に亘って形成された溝の内壁として形成されており、パーティションリング4を保持することでパーティションリング4の軸方向に沿う移動を規制する。保持部H1は、上下に対向配置された上側規制壁W31及び下側規制壁W32と、上側規制壁W31の内周縁と下側規制壁W32の内周縁とを接続する嵌合壁W33と、を含んで形成されている。上側規制壁W31は、パーティションリング4の上側隔壁面43に当接することでパーティションリング4の上側への移動を規制する。下側規制壁W32は、パーティションリング4の下側隔壁面44に当接することでパーティションリング4の下側への移動を規制する。嵌合壁W33は、パーティションリング4の内周嵌合面42と嵌合する。ここで、ピストンリング構造110Cでは、軸方向における上側規制壁W31と上溝壁W1との距離d3がトップリング1の軸方向における幅t1よりも大きくなるように設定されている。これにより、トップリング1と上溝壁W1との間やトップリング1と上側隔壁面43との間にクリアランスを形成することができる。但し、本発明はこれに限定されない。例えば、d3=t1であってもよい。また、ピストンリング構造110Cでは、軸方向における下側規制壁W32と下溝壁W2との距離d4がセカンドリング2の軸方向における幅t2よりも大きくなるように設定されている。これにより、セカンドリング2と下側隔壁面44との間やセカンドリング2と下溝壁W2との間にもクリアランスを形成することができる。但し、本発明はこれに限定されない。例えば、d4=t2であってもよい。
【0055】
なお、保持部H1は、本発明の他の態様とも組み合わせることができる。例えば、ピストンリング構造110Aにおいて、パーティションリング4を保持部H1によって保持してもよい。また、ピストンリング構造110Bにおいて、パーティションリング4とパーティションリング5の何れか一方を保持部H1によって保持してもよいし、保持部H1を2つ形成し、パーティションリング4とパーティションリング5の両方を保持部H1によって夫々保持してもよい。
【0056】
<実施形態2>
図7は、実施形態2に係るピストンリング構造120を備える内燃機関200の部分断面図である。以下、実施形態2に係るピストンリング構造120について、実施形態1に係るピストンリング構造110との相違点を中心に説明し、同様の構成については同一の符号を付すことにより詳細な説明は割愛する。
【0057】
図7に示すように、ピストンリング構造120は、パーティションリング4に代えてパーティションリング6が第1リング溝201に装着されている点で、ピストンリング構造110と相違する。パーティションリング6は、周長方向に直交する断面がT字状に形成されている点で、パーティションリング4と相違する。本例では、第1リング溝201が本発明に係る「リング溝」に相当する。
【0058】
パーティションリング6は、外周離間面61と内周嵌合面62と上側隔壁面63と下側隔壁面64と上側突出部65と下側突出部66とを有する。本例では、パーティションリング6が本発明に係る「パーティションリング」に相当する。
【0059】
図7に示すように、ピストンリング構造120では、パーティションリング6がトップリング1及びセカンドリング2と共にピストン20の軸方向に並んで第1リング溝201に装着されている。パーティションリング6の上側隔壁面63が第1リング溝201の上溝壁W1の側に面することで、上溝壁W1と上側隔壁面63との間には、トップリング1を装着可能な空間が画定されている。また、パーティションリング6の下側隔壁面64が下溝壁W2の側に面することで、下溝壁W2と下側隔壁面64との間には、セカンドリング2を装着可能な空間が画定されている。
【0060】
また、パーティションリング6の内周部に設けられた内周嵌合面62は、使用状態において底溝壁W3と嵌合することで底溝壁W3との間に接触状態を形成する。本例の内周嵌合面62は、全周に亘って底溝壁W3と接触している。但し、本発明はこれに限定されず、第2内周嵌合面は、その少なくとも一部が底溝壁と接触していればよい。また、パーティションリング6の外周部に設けられた外周離間面61は、使用状態においてシリンダ10の内壁面10aとの間に所定の離間距離d5を確保する。
【0061】
そして、
図7に示すように、ピストンリング構造120では、トップリング1が第1リング溝201の上溝壁W1とパーティションリング6の上側隔壁面63との間に装着され、セカンドリング2が第1リング溝201の下溝壁W2とパーティションリング6の下側隔壁面64との間に装着され、オイルリング3が第2リング溝202に装着されている。
【0062】
実施形態2に係るピストンリング構造120においても、実施形態1に係るピストンリング構造110と同様の効果を得ることができる。つまり、ピストンリング構造120によると、1つのリング溝に複数のピストンリング(本例ではトップリング1及びセカンドリング2)を装着することができ、リング溝の数量を減らすことができる。これにより、ピストン20の軸方向長さを短くすることが容易となる。
【0063】
更に、ピストンリング構造120では、パーティションリング6が上側突出部65と下側突出部66とを有している。
図7に示すように、上側突出部65は、ピストン20の径方向において上側隔壁面63よりも内側に設けられており、上側隔壁面63に対して燃焼室30側に突出している。上側突出部65は、ピストン20の径方向においてトップリング1よりも内側、つまり、トップリング1の内周面12側に設けられている。上側突出部65は、第1リング溝201の上溝壁W1に当接することで、ピストン20の軸方向に支持される。これにより、パーティションリング6の上側への移動が規制される。ここで、ピストンリング構造120では、上側突出部65の上側隔壁面63に対する突出量、つまり、軸方向における上側突出部65の頂部と上側隔壁面63との距離h1がトップリング1の軸方向における幅t1よりも大きくなるように設定されている。これにより、トップリング1と上溝壁W1との間やトップリング1と上側隔壁面63との間にクリアランスを形成することができる。但し、本発明はこれに限定されない。上側突出部65は、第1リング溝201の内壁に当接して軸方向に支持されることでトップリング1と上側隔壁面63との間にクリアランスを形成できるように構成されていればよく、クリアランスを確保するためにリング溝の内周縁の形状に応じてh1がt1よりも小さく設定されてもよい。また、上側突出部65の頂部は、上側隔壁面63と平行な平坦面であってもよいし、平坦面でなくともよい。頂部は、湾曲したR面や傾斜面などであってもよい。また、縁部に面取りが形成されていてもよい。また、下側突出部66は、ピストン20の径方向において下側隔壁面64よりも内側に設けられており、下側隔壁面64に対してクランク室40側に突出している。下側突出部66は、ピストン20の径方向においてセカンドリング2よりも内側、つまり、セカンドリング2の内周面22側に設けられている。下側突出部66は、第1リング溝201の下溝壁W2に当接することで、ピストン20の軸方向に支持される。これにより、パーティションリング6の下側への移動が規制される。ここで、ピストンリング構造120では、下側突出部66の下側隔壁面64に対する突出量、つまり、軸方向における下側突出部66の頂部と下側隔壁面64との距離h2がセカンドリング2の軸方向における幅t2よりも大きくなるように設定されている。これにより、セカンドリング2と下側隔壁面64との間やセカンドリング2と下溝壁W2との間にクリアランスを形成することができる。但し、本発明はこれに限定されない。下側突出部66は、第1リング溝201の内壁に当接して軸方向に支持されることでトップリング1と下側隔壁面64との間にクリアランスを形成できるように構成されていればよく、クリアランスを確保するためにリング溝の内周縁の形状に応じてh2がt2よりも小さく設定されてもよい。また、下側突出部66の頂部は、下側隔壁面64と平行な平坦面であってもよいし、平坦面でなくともよい。頂部は、湾曲したR面や傾斜面などであってもよい。また、縁部に面取りが形成されていてもよい。また、パーティションリング6は、軸方向に移動可能であってもよいし、軸方向への移動が規制されていてもよい。
【0064】
また、
図7に示すように、上側突出部65及び下側突出部66は、内周嵌合面62の一部を含んで形成されている。そのため、内周嵌合面62の軸方向における長さは、外周離間面61の軸方向における長さよりも長くなっている。これによると、第1リング溝201の底溝壁W3に接触する内周嵌合面62を軸方向において長くすることで、ピストン20の熱が底溝壁W3からパーティションリング6に伝わり易くなり、パーティションリング6からピストンリングを介してシリンダ10へ熱を逃がし易くすることができる。なお、パーティションリング6は、上側突出部65と下側突出部66の一方のみを有してもよい。つまり、パーティションリング6の周長方向に直交する断面がL字状に形成されていてもよい。
【0065】
[実施形態2の変形例]
以下、実施形態2の変形例について説明する。以下の説明では、上述のピストンリング構造120との相違点を中心に説明し、同様の構成については同一の符号を付すことにより詳細な説明は割愛する。
【0066】
[変形例1]
図8は、実施形態2の変形例1に係るピストンリング構造120Aを備える内燃機関200Aの部分断面図である。変形例1に係るピストンリング構造120Aは、パーティションリング6がセカンドリング2及びオイルリング3と共にピストン20の軸方向に並んで第2リング溝202に装着されている点で、ピストンリング構造120と異なる。本例では、第2リング溝202が本発明に係る「リング溝」に相当する。
【0067】
図8に示すように、ピストンリング構造120Aでは、パーティションリング6の上側隔壁面63が第2リング溝202の上溝壁W1の側に面することで、上溝壁W1と上側隔壁面63との間には、セカンドリング2を装着可能な空間が画定されている。また、パーティションリング6の下側隔壁面64が下溝壁W2の側に面することで、下溝壁W2と下側隔壁面64との間には、オイルリング3を装着可能な空間が画定されている。そして、
図8に示すように、ピストンリング構造120Aでは、トップリング1が第1リング溝201に装着され、セカンドリング2が第2リング溝202の上溝壁W1とパーティションリング6の上側隔壁面63との間に装着され、オイルリング3が第2リング溝202の下溝壁W2とパーティションリング6の下側隔壁面64との間に装着されている。
【0068】
更に、ピストンリング構造120Aでは、上側突出部65が第2リング溝202の上溝壁W1に当接することでピストン20の軸方向に支持される。これにより、パーティションリング6の上側への移動が規制される。ここで、ピストンリング構造120Aでは、上側突出部65の上側隔壁面63に対する突出量h1がセカンドリング2の軸方向における幅t2よりも大きくなるように設定されている。これにより、セカンドリング2と上溝壁W1との間やセカンドリング2と上側隔壁面63との間にクリアランスを形成することができる。但し、本発明はこれに限定されない。クリアランスを確保するためにリング溝の内周縁の形状に応じてh1がt2よりも小さく設定されてもよい。また、ピストンリング構造120Aでは、下側突出部66が第2リング溝202の下溝壁W2に当接することでピストン20の軸方向に支持される。これにより、パーティションリング6の下側への移動が規制される。ここで、ピストンリング構造120Aでは、下側突出部66の下側隔壁面64に対する突出量h2がオイルリング3の軸方向における幅t3よりも大きくなるように設定されている。これにより、オイルリング3と下側隔壁面64との間やオイルリング3と下溝壁W2との間にクリアランスを形成することができる。但し、本発明はこれに限定されない。クリアランスを確保するためにリング溝の内周縁の形状に応じてh2がt3よりも小さく設定されてもよい。
【0069】
[変形例2]
図9は、実施形態2の変形例2に係るピストンリング構造120Bを備える内燃機関200Bの部分断面図である。変形例2に係るピストンリング構造120Bは、ピストン20の外周面20aに第1リング溝201のみが形成されている点、第1リング溝201にトップリング1、セカンドリング2、及びオイルリング3が装着されている点、パーティションリング6に加えて符号7で示すパーティションリングが第1リング溝201に装着されている点で、ピストンリング構造120と相違する。変形例2では、第1リング溝201が本発明に係る「リング溝」に相当する。また、変形例2では、パーティションリング6、外周離間面61、内周嵌合面62、上側隔壁面63、及び下側隔壁面64が、夫々、本発明に係る「第1パーティションリング」、「第1外周離間面」、「第1内周嵌合面」、「第1上側隔壁面」、及び「第1下側隔壁面」に相当する。パーティションリング7は、外周離間面71と内周嵌合面72と上側隔壁面73と下側隔壁面74と上側突出部75と下側突出部76を有する。変形例2では、パーティションリング7、外周離間面71、内周嵌合面72、上側隔壁面73、及び下側隔壁面74が、夫々、本発明に係る「第2パーティションリング」、「第2外周離間面」、「第2内周嵌合面」、「第2上側隔壁面
」、及び「第2下側隔壁面」に相当する。また、パーティションリング7は、本発明に係る「パーティションリング」にも相当する。
【0070】
図9に示すように、ピストンリング構造120Bでは、パーティションリング6及びパーティションリング7がトップリング1、セカンドリング2、及びオイルリング3と共にピストン20の軸方向に並んで第1リング溝201に装着されている。第1リング溝201におけるパーティションリング6よりも下側の位置にパーティションリング7が装着されている。パーティションリング6の上側隔壁面63が第1リング溝201の上溝壁W1の側に面することで、上溝壁W1と上側隔壁面63との間には、トップリング1を装着可能な空間が画定されている。また、パーティションリング7の上側隔壁面73がパーティションリング6の下側隔壁面64の側に面することで、パーティションリング6の下側隔壁面64とパーティションリング7の上側隔壁面73との間には、セカンドリング2を装着可能な空間が画定されている。また、パーティションリング7の下側隔壁面74が下溝壁W2の側に面することで、下溝壁W2と下側隔壁面74との間には、オイルリング3を装着可能な空間が画定されている。これにより、1つのリング溝に3本のピストンリングを装着可能となっている。
【0071】
また、パーティションリング7の内周部に設けられた内周嵌合面72は、使用状態において底溝壁W3と嵌合することで底溝壁W3との間に接触状態を形成する。本例の内周嵌合面72は、全周に亘って底溝壁W3と接触している。但し、本発明はこれに限定されず、第2内周嵌合面は、その少なくとも一部が底溝壁と接触していればよい。また、パーティションリング7の外周部に設けられた外周離間面71は、使用状態においてシリンダ10の内壁面10aとの間に所定の離間距離d6を確保する。
【0072】
また、
図9に示すように、パーティションリング7の上側突出部75は、ピストン20の径方向において上側隔壁面73よりも内側に設けられており、上側隔壁面73に対して燃焼室30側に突出している。また、下側突出部76は、ピストン20の径方向において下側隔壁面74よりも内側に設けられており、下側隔壁面74に対してクランク室40側に突出している。
【0073】
ピストンリング構造120Bでは、パーティションリング6の上側突出部65が第1リング溝201の上溝壁W1に当接することでピストン20の軸方向に支持される。これにより、パーティションリング6の上側への移動が規制される。ピストンリング構造120Bでは、上側突出部65の突出量h1がトップリング1の軸方向における幅t1よりも大きくなるように設定されており、トップリング1と上溝壁W1との間やトップリング1と上側隔壁面63との間にクリアランスを形成することができる。但し、本発明はこれに限定されない。クリアランスを確保するためにリング溝の内周縁の形状に応じてh1がt1よりも小さく設定されてもよい。また、ピストンリング構造120Bでは、パーティションリング6の下側突出部66がパーティションリング7の上側突出部75に当接することで下側突出部66及び上側突出部75がピストン20の軸方向に支持される。これにより、パーティションリング6の下側への移動及びパーティションリング7の上側への移動が規制される。ここで、ピストンリング構造120Bでは、下側突出部66の突出量h2と上側突出部75の突出量h3との合算値がセカンドリング2の軸方向における幅t2よりも大きくなるように設定されている。これにより、セカンドリング2と下側隔壁面64との間やセカンドリング2と上側隔壁面73との間にクリアランスを形成することができる。但し、本発明はこれに限定されない。また、ピストンリング構造120Bでは、パーティションリング7の下側突出部76が第1リング溝201の下溝壁W2に当接することでピストン20の軸方向に支持される。これにより、パーティションリング7の下側への移動が規制される。ここで、ピストンリング構造120Bでは、下側突出部76の突出量h4がオイルリング3の軸方向における幅t3よりも大きくなるように設定されている。こ
れにより、オイルリング3と下側突出部76との間やオイルリング3と下溝壁W2との間にクリアランスを形成することができる。但し、本発明はこれに限定されない。クリアランスを確保するためにリング溝の内周縁の形状に応じてh4がt3よりも小さく設定されてもよい。
【0074】
なお、実施形態2は、上述の他の実施形態と組み合わせることができる。例えば、上述のピストンリング構造120Bにおいて、パーティションリング6に代えてピストンリング構造110Bのパーティションリング4を用いてもよい。また、パーティションリング7に代えてピストンリング構造110Bのパーティションリング5を用いてもよい。また、パーティションリング4やパーティションリング6を適用する場合、ピストンリング構造110Cの保持部H1によってこれらを保持してもよい。
【0075】
<実施形態3>
図10は、実施形態3に係るピストンリング構造130を備える内燃機関300の部分断面図である。以下、実施形態3に係るピストンリング構造130について、実施形態1に係るピストンリング構造110との相違点を中心に説明し、同様の構成については同一の符号を付すことにより詳細な説明は割愛する。
【0076】
ピストンリング構造130は、ピストン20の外周面20aに設けられたピストンリング装着用の第1リング溝201、第2リング溝202、及び第3リング溝203と、トップリング1と、セカンドリング2と、オイルリング3と、パーティションリング4と、を含む。
図10に示すように、第3リング溝203は、ピストン20の外周面20aにおける第2リング溝202よりも下側の位置に形成されている。ピストンリング構造130では、第1リング溝201にトップリング1及びパーティションリング4が装着され、第2リング溝202にセカンドリング2が装着され、第3リング溝203にオイルリング3が装着されている。本例では、第1リング溝201が本発明に係る「リング溝」に相当する。
【0077】
図10に示すように、ピストンリング構造130では、パーティションリング4がトップリング1と共にピストン20の軸方向に並んで第1リング溝201に装着されている。パーティションリング4の上側隔壁面43が第1リング溝201の上溝壁W1の側に面することで、上側隔壁面43が上溝壁W1と接触している。また、パーティションリング4の下側隔壁面44が下溝壁W2の側に面することで、下溝壁W2と下側隔壁面44との間には、トップリング1を装着可能な空間が画定されている。そして、
図10に示すように、ピストンリング構造130では、トップリング1が第1リング溝201の下溝壁W2とパーティションリング4の下側隔壁面44との間に装着されている。そのため、トップリング1が上側に移動するとパーティションリング4がトップリング1に当接することとなる。つまり、第1リング溝201の上溝壁W1とトップリング1との間にパーティションリング4が介装されている。
【0078】
実施形態3に係るピストンリング構造130においても、上述のピストンリング構造110と同様の効果を得ることができる。つまり、パーティションリング4が第1リング溝201の上溝壁W1とトップリング1とを隔てるピストンランドの代わりとして機能することで、トップリング1とリング溝の内壁との接触箇所を減らすことができる。これにより、ピストンリングとピストンのリング溝の内壁との直接接触による不具合を抑制することができる。
【0079】
なお、実施形態3は、適宜変更することができる。例えば、第1リング溝201の下溝壁W2とトップリング1との間にパーティションリング4を介装してもよい。また、第2リング溝202の上溝壁W1とセカンドリング2との間や下溝壁W2とセカンドリング2
の間にパーティションリング4を介装してもよい。また、第3リング溝203の上溝壁W1とオイルリング3との間や下溝壁W2とオイルリング3の間にパーティションリング4を介装してもよい。また、実施形態3は、上述の他の実施形態と組み合わせることができる。例えば、上述のピストンリング構造110において、第1リング溝201の上溝壁W1とトップリング1との間や下溝壁W2とセカンドリング2の間にパーティションリング4を介装してもよい。また、上述のピストンリング構造110Aにおいて、第2リング溝202の上溝壁W1とセカンドリング2との間や下溝壁W2とオイルリング3の間にパーティションリング4を介装してもよい。また、上述のピストンリング構造110Bにおいて、第1リング溝201の上溝壁W1とトップリング1との間や下溝壁W2とオイルリング3の間にパーティションリング4を介装してもよい。
【0080】
<実施形態4>
図11は、実施形態4に係るピストンリング構造140を備える内燃機関400の部分断面図である。以下、実施形態4に係るピストンリング構造140について、実施形態1に係るピストンリング構造110との相違点を中心に説明し、同様の構成については同一の符号を付すことにより詳細な説明は割愛する。
【0081】
図11に示すように、実施形態4に係るピストンリング構造140は、第1リング溝201に2つのパーティションリング(パーティションリング4,5)がピストン20の軸方向に重なって装着されている点でピストンリング構造110と相違する。本例では、第1リング溝201が本発明に係る「リング溝」に相当する。
【0082】
図11に示すように、ピストンリング構造140では、パーティションリング4及びパーティションリング5がトップリング1及びセカンドリング2と共にピストン20の軸方向に並んで第1リング溝201に装着されている。パーティションリング5は、第1リング溝201におけるパーティションリング4よりも下側の位置に装着されている。更に、パーティションリング4とパーティションリング5は、軸方向において重なっている。具体的には、パーティションリング4の下側隔壁面44とパーティションリング5の上側隔壁面53とが当接している。そのため、パーティションリング4とパーティションリング5との間には、ピストンリングが介在しない状態となっている。そして、
図11に示すように、ピストンリング構造140では、トップリング1が第1リング溝201の上溝壁W1とパーティションリング4の上側隔壁面43との間に装着され、セカンドリング2が第1リング溝201の下溝壁W2とパーティションリング5の下側隔壁面54との間に装着されている。つまり、ピストンリング構造140では、トップリング1とセカンドリング2との間に2つのパーティションリング4,5が重なって介装されている。このように、ピストンリング構造140では、パーティションリング4とパーティションリング5とが協働して、1つのピストンランドの代わりとして機能している。
【0083】
実施形態4に係るピストンリング構造140においても、実施形態1に係るピストンリング構造110と同様の効果を得ることができる。つまり、ピストンリング構造140によると、1つのリング溝に複数のピストンリング(本例ではトップリング1及びセカンドリング2)を装着することができ、リング溝の数量を減らすことができる。これにより、ピストン20の軸方向長さを短くすることが容易となる。
【0084】
また、実施形態4に係るピストンリング構造110では、パーティションリング4,5の合口G1がガス又はオイルに対して閉塞されている。
図12は、実施形態4における2つのパーティションリング4,5の合口G1の位置関係を示す図である。
図12では、ピストンリング構造140におけるパーティションリング4,5を径方向の外側から視認した状態が図示されている。
図12に示すように、実施形態4では、2つのパーティションリング4,5は、互いの合口G1同士が軸方向において重ならないように、第1リング溝
201に装着されている。つまり、2つのパーティションリング4,5は、互いの合口G1を覆うように配置されている。パーティションリング4の合口G1はパーティションリング5によって下側から覆われ、パーティションリング5の合口G1はパーティションリング4によって上側から覆われている。
【0085】
このようなピストンリング構造140によると、パーティションリング4,5の夫々の合口が覆われているため、ガスがパーティションリング4,5の合口G1を通り抜けてセカンドリング2の背面側(径方向内側)に流れることや、オイルがパーティションリング4,5の合口G1を通り抜けてトップリング1の背面側(径方向内側)に流れることが阻害される。つまり、ガスがクランク室40側に流出すること(ブローバイ)やオイルが燃焼室30側へ流出すること(オイル上がり)を抑制し、ブローバイガスやオイル消費を低減できる。
【0086】
なお、ピストンリング構造140では、パーティションリング4,5が第1リング溝201におけるトップリング1とセカンドリング2との間に介装されているが、2つのパーティションリングが装着される位置はこれに限定されない。例えば、
図4に示すピストンリング構造110Aにおいて、第2リング溝202におけるセカンドリング2とオイルリング3との間に2つのパーティションリング4,5が重なって介装されてもよい。また、重なって装着されるパーティションリングの数量は2つに限定されず、2を超える数量であってもよい。軸方向において重なる複数のパーティションリングのうち、少なくとも2つの隣り合うパーティションリングが、互いの合口が軸方向において重ならないようにリング溝に装着されていればよい。
【0087】
<実施形態5>
以下、実施形態5に係るパーティションリングについて説明する。実施形態5に係るパーティションリングは、合口が特殊形状を有する点で、実施形態1~4に係るパーティションリングと異なる。実施形態5に係るパーティションリングは、実施形態1~4に係るピストンリング構造にも適用可能である。つまり、以下に説明する合口の特殊形状は、上述のパーティションリング4,5,6,7の何れにも適用可能である。以下、実施形態5に係るパーティションリングについて、実施形態1に係るパーティションリング4との相違点を中心に説明し、同様の構成については同一の符号を付すことにより詳細な説明は割愛する。
【0088】
図13は、実施形態5に係るパーティションリング4Aの合口端部の形状を説明するための図である。
図13(A)では、使用状態におけるパーティションリング4Aを径方向の外側から視認した状態を図示し、
図13(B)では、使用状態におけるパーティションリング4Aを軸方向に沿って視認した状態を図示している。以下、一対の合口端部410,420の一方を第1合口端部410と称し、他方を第2合口端部420と称する。また、第1合口端部410の端面を第1端面410aと称し、第2合口端部420の端面を第2端面420aと称する。
【0089】
図13(A)に示すように、パーティションリング4Aの合口G1は、パーティションリング4Aの軸方向に対して傾斜したアングル形状(斜め合口)となっている。具体的には、互いに対向することで合口G1を形成する第1端面410a及び第2端面420aが軸方向に対して傾斜しているため、合口G1がアングル形状となっている。合口G1をアングル形状とすることで、
図13(B)に示すように、パーティションリング4Aの軸方向視において、第1合口端部410の一部と第2合口端部420の一部とが重複している。
【0090】
実施形態5に係るパーティションリング4Aによると、合口G1を形成する第1合口端
部410の一部と第2合口端部420の一部とが軸方向視において重複しているため、ピストン20の軸方向に沿って流れるガスやオイルが合口G1を通り抜けることが第1合口端部410や第2合口端部420によって阻害される。つまり、合口G1は、ピストン20の軸方向に沿って流れるガス又はオイルに対して閉塞されている。また、合口G1を軸方向に対して傾斜したアングル形状とすることで、合口G1を軸方向に平行なストレート形状とした場合と比較して、合口G1の端面410a,420a間の隙間を小さくすることができる。このようなパーティションリング4Aによると、ガスのブローバイやオイル上がりを抑制し、ブローバイガスやオイル消費を低減できる。なお、合口G1は、
図13(A)に示すものと逆向きに傾斜してもよい。つまり、
図13(A)に示す態様では、第1合口端部410が第2合口端部420の下側に配置されているが、第2合口端部420が第1合口端部410の下側に配置されるように、合口G1が傾斜してもよい。
【0091】
[実施形態5の変形例]
以下、実施形態5の変形例について説明する。以下の説明では、上述のパーティションリング4Aとの相違点を中心に説明し、同様の構成については同一の符号を付すことにより詳細な説明は割愛する。
【0092】
[変形例1]
図14は、実施形態5の変形例1に係るパーティションリング4Bの合口端部の形状を説明するための図である。
図14(A)では、使用状態におけるパーティションリング4Bを径方向の外側から視認した状態を図示し、
図14(B)では、使用状態におけるパーティションリング4Bを軸方向に沿って視認した状態を図示している。
【0093】
図14(A)に示すように、パーティションリング4Bの合口G1は、ステップ形状(段付き合口)となっている。具体的には、第1合口端部410は、周長方向において第2合口端部420に向かって突出した第1凸部411を有し、第2合口端部420は、周長方向において第1合口端部410に向かって突出した第2凸部421を有し、使用状態では、軸方向において第1凸部411が第2凸部421の上に重なっている。つまり、第1凸部411の下面411aと第2凸部421の上面421aとが当接している。第1凸部411と第2凸部421とが軸方向において重なることで、
図14(B)に示すように、パーティションリング4Bの軸方向視において、第1合口端部410の一部と第2合口端部420の一部とが重複している。
【0094】
実施形態5の変形例1に係るパーティションリング4Bによると、合口G1を形成する第1合口端部410の一部である第1凸部411と第2合口端部420の一部である第2凸部421とが軸方向視において重複しているため、ピストン20の軸方向に沿って流れるガスやオイルが合口G1を通り抜けることが第1凸部411や第2凸部421によって阻害される。つまり、合口G1は、ピストン20の軸方向に沿って流れるガス又はオイルに対して閉塞されている。更に、第1凸部411の下面411aと第2凸部421の上面421aとが当接することで、ガスやオイルが第1凸部411と第2凸部421との間を通り抜けることが抑制される。このようなパーティションリング4Bによっても、ブローバイガスやオイル消費を低減できる。なお、合口形状は、
図14(A)に示すものと上下逆であってもよい。つまり、
図14(A)に示す態様では、第1合口端部410の第1凸部411が第2合口端部420の第2凸部421の上側に配置されているが、第2凸部421が第1凸部411の上側に配置されてもよい。
【0095】
[変形例2]
図15は、実施形態5の変形例2に係るパーティションリング4Cの合口端部の形状を説明するための図である。
図15(A)では、使用状態におけるパーティションリング4Cを径方向の外側から視認した状態を図示し、
図15(B)では、使用状態におけるパー
ティションリング4Cを軸方向に沿って視認した状態を図示している。
【0096】
図15(A)に示すように、パーティションリング4Cの合口G1は、所謂カギステップ形状となっている。パーティションリング4Cは、第1合口端部410の第1凸部411の下面411aに第1突起412が設けられ、第2合口端部420の第2凸部421の上面421aに第2突起422が設けられている点で、変形例1に係るパーティションリング4Bと相違する。使用状態では、第1凸部411の下面411aに第2突起422が当接し、第2凸部421の上面421aに第1突起412が当接している。
図15(B)に示すように、パーティションリング4Cの軸方向視において、第1合口端部410の一部と第2合口端部420の一部とが重複している。
【0097】
実施形態5の変形例2に係るパーティションリング4Cによると、変形例1に係るパーティションリング4Bと同様に、ブローバイガスやオイル消費を低減できる。なお、変形例1と同様に、合口形状は、
図15(A)に示すものと上下逆であってもよい。
【0098】
[変形例3]
図16は、実施形態5の変形例3に係るパーティションリング4Dの合口端部の形状を説明するための図である。
図16(A)は、使用状態におけるパーティションリング4Dの斜視図であり、
図16(B)は、自由状態におけるパーティションリング4Dの斜視図である。また、
図17は、使用状態におけるパーティションリング4Dを軸方向に沿って視認した状態を示す図である。
【0099】
図16(A)及び
図16(B)に示すように、第1合口端部410は、周長方向において第2合口端部420に向かって突出した第1凸部411を有し、第2合口端部420は、周長方向において第1合口端部410に向かって突出した第2凸部421を有し、使用状態では、径方向において第1凸部411が第2凸部421の外側に位置している。ここで、第1凸部411において径方向内側に向いた面を第1内側面411bとし、第2凸部421において径方向外側に向いた面を第2外側面421bとする。第1内側面411b及び第2外側面421bは、軸方向に対して傾斜しており、使用状態において互いに当接している。これにより、使用状態では、軸方向において第2凸部421の一部が第1凸部411の一部の上に重なっている。そのため、
図17に示すように、パーティションリング4Dの軸方向視において、第1合口端部410の一部である第1凸部411と第2合口端部420の一部である第2凸部421とが重複している。そのため、ピストン20の軸方向に沿って流れるガスやオイルが合口G1を通り抜けることが第1凸部411や第2凸部421によって阻害される。つまり、合口G1の一部は、ピストン20の軸方向に沿って流れるガス又はオイルに対して閉塞されている。更に、第1凸部411の第1内側面411bと第2凸部421の第2外側面421bとが当接することで、ガスやオイルが第1凸部411と第2凸部421との間を通り抜けることが抑制される。
【0100】
実施形態5の変形例3に係るパーティションリング4Dによると、変形例1に係るパーティションリング4Bと同様に、ブローバイガスやオイル消費を低減できる。なお、
図16に示す合口形状は、第1凸部411の断面形状が略三角形の所謂アングルジョイントであるが、合口形状は、第1凸部411の断面形状が略四角形の所謂レクタンギュラジョイントであってもよい。また、合口形状は、
図16に示すものと上下逆であってもよい。つまり、第1内側面411b及び第2外側面421bが、
図16と逆向きに傾斜してもよい。また、合口形状は、
図16に示すものと周長方向において逆であってもよい。つまり、第1凸部411が第2合口端部420に設けられ、第2凸部421が第1合口端部410に設けられてもよい。
【0101】
[変形例4]
図18は、実施形態5の変形例4に係るパーティションリング4Eの合口端部の形状を説明するための図である。
図18(A)は、使用状態におけるパーティションリング4Eの斜視図であり、
図18(B)は、自由状態におけるパーティションリング4Eの斜視図である。また、
図19は、使用状態におけるパーティションリング4Eを軸方向に沿って視認した状態を示す図である。
【0102】
図18(A)及び
図18(B)に示すように、第1合口端部410の外周側の下部には、周長方向において第2合口端部420に向かって突出した第1凸部411が形成されている。また、第2合口端部420には、第2合口端部420の外周側の下部が切り欠かれることによって、使用状態において第1凸部411が嵌め込まれる第2凹部423が形成されている。ここで、第2凹部423において使用状態で第1凸部411の上面411cに対向する面を対向面423cとする。上面411c及び対向面423cは、軸方向に対して傾斜しており、使用状態において互いに当接している。これにより、使用状態では、軸方向において第2合口端部420の一部が第1合口端部410の一部の上に重なっている。そのため、
図19に示すように、パーティションリング4Eの軸方向視において、第1合口端部410の一部と第2合口端部420の一部とが重複している。そのため、ピストン20の軸方向に沿って流れるガスやオイルが合口G1を通り抜けることが第1合口端部410や第2合口端部420によって阻害される。つまり、合口G1は、ピストン20の軸方向に沿って流れるガス又はオイルに対して閉塞されている。更に、第1凸部411の上面411cと第2凹部423の対向面423cとが当接することで、ガスやオイルが第1凸部411と合口端部420との間を通り抜けることが抑制される。
【0103】
実施形態5の変形例4に係るパーティションリング4Eによると、変形例1に係るパーティションリング4Bと同様に、ブローバイガスやオイル消費を低減できる。なお、
図18に示す合口形状は、第1凸部411の断面形状が略三角形の所謂アングルジョイントであるが、合口形状は、第1凸部411の断面形状が略四角形の所謂レクタンギュラジョイントであってもよい。また、合口形状は、
図18に示すものと上下逆であってもよい。つまり、第1合口端部410の外周側の上部に第1凸部411が形成され、第2合口端部420の外周側の上部に第2凹部423が形成されてもよい。また、合口形状は、
図18に示すものと周長方向において逆であってもよい。つまり、第1凸部411が第2合口端部420に設けられ、第2凹部423が第1合口端部410に設けられてもよい。
【0104】
以上のように、実施形態5では、パーティションリングの合口を特殊形状とすることで、合口の少なくとも一部が、ピストンの軸方向に沿って流れるガス又はオイルに対して閉塞されている。なお、本発明に係るパーティションリングの合口形状は、実施形態5で説明した形状に限定されない。特殊形状は、第1合口端部の少なくとも一部と第2合口端部の少なくとも一部とが軸方向視において重複する形状であればよい。このような特殊形状としては、パーティションリング4A~4Eの形状以外にも、例えば、ダブルステップ形状やダブルアングル形状、ダブルラウンド形状も採用できる。また、本発明において、合口形状は特殊形状でなくてもよく、軸方向に平行なストレート形状であってもよい。
【0105】
<実施形態6>
次に、実施形態6に係るパーティションリングについて説明する。実施形態6に係るパーティションリングは、合口が閉塞部材により閉塞されている点で、実施形態1~5に係るパーティションリングと異なる。実施形態6に係るパーティションリングは、実施形態1~4に係るピストンリング構造にも適用可能である。以下、実施形態6に係るパーティションリングについて、実施形態1に係るパーティションリング4との相違点を中心に説明し、同様の構成については同一の符号を付すことにより詳細な説明は割愛する。
【0106】
図20は、実施形態6に係るパーティションリング4Fの合口部分を説明するための図
である。
図20では、使用状態におけるパーティションリング4Fを軸方向に沿って視認した状態を図示している。
【0107】
図20に示すように、パーティションリング4Fは、合口G1を埋めることによって合口G1を閉塞する、閉塞部50を有する。これにより、合口G1は、ガス又はオイルに対して閉塞されている。閉塞部50は、シール材によって形成されている。閉塞部50を形成するシール材としては、例えば、PI(Polyimide)系樹脂やPAI(Polyamide-imide)系樹脂、シリコーン(珪素樹脂)、フッ素樹脂等の耐熱性の高い樹脂の他、銅系の軟質金属等、耐熱性に優れた種々の材料を用いることができる。
【0108】
実施形態6に係るパーティションリング4Fによると、閉塞部50によって合口G1を塞ぐことで、ガスやオイルが合口G1を通り抜けることを抑制できる。その結果、ガスのブローバイやオイル上がりを抑制し、ブローバイガスやオイル消費を低減できる。このようなパーティションリング4Fによると、ブローバイガスやオイル消費を低減できる。
【0109】
<その他>
図21~
図35は、パーティションリングのバリエーションを示す断面図である。
図21~
図35では、パーティションリングの周長方向に直交する断面が図示されている。
図21に示すパーティションリング4aの外周離間面41は、上側隔壁面43から下側に向かうに従って拡幅するように傾斜したテーパ面と、下側隔壁面44から上側に向かうに従って拡幅するように傾斜したテーパ面とが接続されて形成されている。
図22に示すパーティションリング4bの外周離間面41は、下側に向かうに従って拡幅するように傾斜したテーパ面により形成されている。
図23に示すパーティションリング4cの外周離間面41は、上側隔壁面43から下側に向かうに従って縮幅するように傾斜したテーパ面と、下側隔壁面44から上側に向かうに従って縮幅するように傾斜したテーパ面とが接続されて形成されている。
図24に示すパーティションリング4dの内周嵌合面42は、径方向の内側に凹むように湾曲して形成されている。
図25に示すパーティションリング4eの内周嵌合面42は、上側隔壁面43から下側に向かうに従って拡幅するように傾斜したテーパ面と、下側隔壁面44から上側に向かうに従って拡幅するように傾斜したテーパ面とが接続されて形成されている。
図26に示すパーティションリング4fの上側隔壁面43は、上側に膨らむように湾曲して形成されている。また、パーティションリング4fの下側隔壁面44は、下側に膨らむように湾曲して形成されている。
図27に示すパーティションリング4gの下側隔壁面44には、パーティションリング4gの周長方向に沿って延びる溝45が形成されている。
図28に示すパーティションリング4hでは、上側隔壁面43に溝45が形成されている。
図29に示すパーティションリング4iでは、外周離間面41に溝45が形成されている。
図30に示すパーティションリング4jでは、内周嵌合面42に溝45が形成されている。また、パーティションリング4jには、溝45に連通する孔46がパーティションリング4jの外周側から内周側へ径方向に貫通している。
図31に示すパーティションリング4kでは、外周離間面41と内周嵌合面42の両方に溝45が形成されている。また、パーティションリング4kには、孔46が外周側の溝45から内周側の溝45へ径方向に貫通している。
図32に示すパーティションリング4lの上側隔壁面43は、径方向外側に向かうに従って下がるように傾斜している。
図33に示すパーティションリング4mの下側隔壁面44は、径方向外側に向かうに従って上がるように傾斜している。パーティションリング4lやパーティションリング4mは、キーストン形状のコンプレッションリングと組み合わせることができる。なお、上側隔壁面43が径方向外側に向かうに従って上がるように傾斜してもよいし、下側隔壁面44が径方向外側に向かうに従って下がるように傾斜してもよい。また、上側隔壁面43と下側隔壁面44の何れもが傾斜してもよい。
図34に示すパーティションリング4nの外周側の下角部には、面取り47が形成されている。面取り47は、外周側の上角部に形成されてもよい。また、面取り47は、内周側の上角部や下角部に形成されてもよい。
図35に示すパ
ーティションリング4oの外周側の下角部には、面取りステップ48が形成されている。面取りステップ48は、外周側の上角部に形成されてもよい。また、面取りステップ48は、内周側の上角部や下角部に形成されてもよい。
【0110】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、上述した種々の形態は、可能な限り組み合わせることができる。なお、実施形態4~6では、合口を閉塞する手段について説明したが、本発明における合口を閉塞する手段は、実施形態4~6の範囲に限定されず、これらと同様の合口閉塞(または封止)機能を持つ合口形状や合口の閉塞(または封止)方法であってもよい。また、本発明において、複数のパーティションリングがリング溝に装着される場合、少なくとも1本のパーティションリングの合口の少なくとも一部がピストンの軸方向に沿って流れるガス又はオイルに対して閉塞されていればよい。
【符号の説明】
【0111】
100,200,300,400:内燃機関
110,120,130,140:ピストンとピストンリングの組み合わせ構造
10 :シリンダ
20 :ピストン
201,202 :リング溝
30 :燃焼室
40 :クランク室
1 :トップリング
2 :セカンドリング
3 :オイルリング
4,4A,4B,4C,4D,4E,4F,5,6,7 :パーティションリング