(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155468
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】光デバイス及び光システム
(51)【国際特許分類】
G02B 6/12 20060101AFI20221005BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20221005BHJP
H01L 43/08 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
G02B6/12 301
G02B6/42
H01L43/08 Z
H01L43/08 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206032
(22)【出願日】2021-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2021056794
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100169694
【弁理士】
【氏名又は名称】荻野 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】柴田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】福澤 英明
(72)【発明者】
【氏名】水野 友人
(72)【発明者】
【氏名】新海 正博
【テーマコード(参考)】
2H137
2H147
5F092
【Fターム(参考)】
2H137AA05
2H137AB11
2H137AB12
2H137BA52
2H137BA53
2H137BA54
2H137BB02
2H137BB12
2H137BB25
2H137BC51
2H147AA04
2H147AB02
2H147AB06
2H147AB17
2H147AC01
2H147BG01
2H147EA05A
2H147EA13A
2H147EA14A
2H147EA14B
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2H147EA15C
5F092AA20
5F092AB10
5F092AC08
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5F092AD23
5F092BB10
5F092BB22
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5F092BB36
5F092BB37
5F092BB42
5F092BB43
5F092BB46
5F092BB53
5F092BB81
5F092BB82
5F092BC07
5F092BC13
5F092CA02
5F092CA07
5F092CA08
5F092CA20
(57)【要約】
【課題】新規な光デバイスを提供する。
【解決手段】この光デバイスは、第1強磁性層と、第2強磁性層と、前記第1強磁性層と前記第2強磁性層とに挟まれたスペーサ層と、を有する少なくとも一つの磁性素子と、レーザーダイオードと、導波路と、を備え、前記導波路は、前記レーザーダイオードと光学的に接続された少なくとも一つの入力導波路と、前記入力導波路と接続された出力導波路と、を有し、前記入力導波路と前記出力導波路とのうち少なくとも一方を伝搬する光の少なくとも一部が、前記磁性素子に照射される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1強磁性層と、第2強磁性層と、前記第1強磁性層と前記第2強磁性層とに挟まれたスペーサ層と、を有する少なくとも一つの磁性素子と、
レーザーダイオードと、
導波路と、を備え、
前記導波路は、前記レーザーダイオードと光学的に接続された少なくとも一つの入力導波路と、前記入力導波路と接続された出力導波路と、を有し、
前記入力導波路と前記出力導波路とのうち少なくとも一方を伝搬する光の少なくとも一部が、前記磁性素子に照射される、光デバイス。
【請求項2】
前記導波路は、主成分としてニオブ酸リチウムを含む、請求項1に記載の光デバイス。
【請求項3】
基板をさらに備え、
前記導波路は、前記基板上に形成され、
前記基板は、酸化アルミニウムを含む、請求項1又は2に記載の光デバイス。
【請求項4】
基板をさらに備え、
前記導波路は、前記基板上に形成され、
前記磁性素子は、前記基板の上又は上方にある、請求項1~3のいずれか一項に記載の光デバイス。
【請求項5】
リフレクタをさらに備え、
前記リフレクタは、前記光の少なくとも一部を前記磁性素子に向かって反射する、請求項1~4のいずれか一項に記載の光デバイス。
【請求項6】
前記光の少なくとも一部は、前記磁性素子の積層方向と交差する方向から前記磁性素子に照射される、請求項1~5のいずれか一項に記載の光デバイス。
【請求項7】
前記光の少なくとも一部は、前記磁性素子の積層方向から前記磁性素子に照射される、請求項1~5のいずれか一項に記載の光デバイス。
【請求項8】
前記導波路が形成された基板と別部材であり、前記磁性素子を支持する支持体をさらに備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の光デバイス。
【請求項9】
前記導波路は、モニタリング導波路をさらに備え、
前記モニタリング導波路は、前記入力導波路と前記出力導波路とのうち少なくとも一方に接続され、
前記光の少なくとも一部は、前記モニタリング導波路を伝搬する、請求項1~8のいずれか一項に記載の光デバイス。
【請求項10】
前記少なくとも1つの入力導波路は、複数の入力導波路であり、
前記少なくとも一つの磁性素子は、複数の磁性素子であり、 それぞれの前記入力導波路に接続された複数のモニタリング導波路をさらに有し、
それぞれの前記磁性素子には、前記複数のモニタリング導波路のそれぞれを伝搬する光がそれぞれ照射される、請求項1~9のいずれか一項に記載の光デバイス。
【請求項11】
前記少なくとも一つの磁性素子は、複数の磁性素子であり、
前記複数の磁性素子のうち第1磁性素子には、前記入力導波路と前記出力導波路とのうち少なくとも一方を、前記レーザーダイオードから前記入力導波路または前記出力導波路へ向かう方向に伝搬する光の少なくとも一部が照射され、
前記複数の磁性素子のうち第2磁性素子には、前記出力導波路から出力され、被照射体で反射された光の少なくとも一部が照射される、請求項1~10のいずれか一項に記載の光デバイス。
【請求項12】
請求項11に記載の光デバイスと、
前記光デバイスから出力された光を被照射体まで導光する光学系と、を備える、光システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイス及び光システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、拡張現実(AR)グラスや小型プロジェクタに注目が集まっており、レーザーダイオードを用いた小型の平面光波回路(Planar Lightwave Circuit:PLC)等への注目が高まっている。レーザーダイオードは、高エネルギー効率での映像の描画が可能である。
【0003】
例えば、特許文献1には、小型プロジェクタに用いることができるモニタリング機能付き光源が記載されている。特許文献1に記載のモニタリング機能付き光源は、半導体フォトダイオード(PD)を用いた検知素子を有する。半導体フォトダイオードは、光出力をモニタリングする。特許文献1に記載のモニタリング機能付き光源は、光出力のモニタリング結果に基づき、ホワイトバランスを調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
平面光波回路が形成された基板と別部材として作製された半導体フォトダイオードは、サイズが大きい。光デバイスの更なる発展のためには、新たなブレイクスルーが求められている。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、新規な光デバイス及び光システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0008】
(1)第1の態様にかかる光デバイスは、第1強磁性層と、第2強磁性層と、前記第1強磁性層と前記第2強磁性層とに挟まれたスペーサ層と、を有する少なくとも一つの磁性素子と、レーザーダイオードと、導波路と、を備え、前記導波路は、前記レーザーダイオードと光学的に接続された少なくとも一つの入力導波路と、前記入力導波路と接続された出力導波路と、を有し、前記入力導波路と前記出力導波路とのうち少なくとも一方を伝搬する光の少なくとも一部が、前記磁性素子に照射される。
【0009】
(2)上記態様にかかる光デバイスにおいて、前記導波路は、主成分としてニオブ酸リチウムを含んでもよい。
【0010】
(3)上記態様にかかる光デバイスは、基板をさらに備え、前記導波路は、前記基板上に形成され、前記基板は、酸化アルミニウムを含んでもよい。
【0011】
(4)上記態様にかかる光デバイスは、基板をさらに備え、前記導波路は、前記基板上に形成され、前記磁性素子は、前記基板の上又は上方にあってもよい。
【0012】
(5)上記態様にかかる光デバイスは、リフレクタをさらに備え、前記リフレクタは、前記光の少なくとも一部を前記磁性素子に向かって反射してもよい。
【0013】
(6)上記態様にかかる光デバイスにおいて、前記光の少なくとも一部は、前記磁性素子の積層方向と交差する方向から前記磁性素子に照射される構成でもよい。
【0014】
(7)上記態様にかかる光デバイスにおいて、前記光の少なくとも一部は、前記磁性素子の積層方向から前記磁性素子に照射される構成でもよい。
【0015】
(8)上記態様にかかる光デバイスは、前記導波路が形成された基板と別部材であり、前記磁性素子を支持する支持体をさらに備えてもよい。
【0016】
(9)上記態様にかかる光デバイスにおいて、前記導波路は、モニタリング導波路をさらに備え、前記モニタリング導波路は、前記入力導波路と前記出力導波路とのうち少なくとも一方に接続され、前記光の少なくとも一部は、前記モニタリング導波路を伝搬してもよい。
【0017】
(10)上記態様にかかる光デバイスにおいて、前記少なくとも一つの入力導波路は、複数の入力導波路であり、前記少なくとも一つの磁性素子は、複数の磁性素子であり、それぞれの前記入力導波路に接続された複数のモニタリング導波路をさらに有し、それぞれの前記磁性素子には、前記複数のモニタリング導波路のそれぞれを伝搬する光がそれぞれ照射されてもよい。
【0018】
(11)上記態様にかかる光デバイスにおいて、前記少なくとも一つの磁性素子は、複数の磁性素子であり、前記複数の磁性素子のうち第1磁性素子には、前記入力導波路と前記出力導波路とのうち少なくとも一方を、前記レーザーダイオードから前記入力導波路または前記出力導波路へ向かう方向に伝搬する光の少なくとも一部が照射され、前記複数の磁性素子のうち第2磁性素子には、前記出力導波路から出力され、被照射体で反射された光の少なくとも一部が照射されてもよい。
【0019】
(12)第2の態様にかかる光システムは、上記態様にかかる光デバイスと、前記光デバイスから出力された光を被照射体まで導光する光学系と、を備える。
【発明の効果】
【0020】
上記態様にかかる光デバイス及び光システムは、新規な原理で光をモニタリングできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態に係る光デバイスの平面図である。
【
図2】第1実施形態に係る光デバイスの導波路の断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る光デバイスの磁性素子近傍の斜視図である。
【
図4】第1実施形態に係る光デバイスの磁性素子近傍の断面図である。
【
図5】第1実施形態に係る光デバイスのモニタリング回路の一例である。
【
図6】第1実施形態に係る光デバイスのモニタリング回路の別の例である。
【
図7】第1実施形態に係る磁性素子近傍の断面図である。
【
図8】第1実施形態に係る磁性素子の第1メカニズムを説明するための図である。
【
図9】第1実施形態に係る磁性素子の第2メカニズムを説明するための図である。
【
図10】第1実施形態に係る光デバイスの別の例の磁性素子近傍の断面図である。
【
図11】第2実施形態に係る光デバイスの磁性素子近傍の斜視図である。
【
図12】第2実施形態に係る光デバイスの磁性素子近傍の断面図である。
【
図13】第2実施形態に係る光デバイスの磁性素子近傍の別の断面図である。
【
図14】第3実施形態に係る光デバイスの平面図である。
【
図15】第3実施形態に係る光デバイスの磁性素子近傍の断面図である。
【
図16】第4実施形態に係る光デバイスの磁性素子近傍の断面図である。
【
図17】第5実施形態に係る光デバイスの磁性素子近傍の断面図である。
【
図18】第5実施形態に係る光デバイスの磁性素子近傍の斜視図である。
【
図19】第6実施形態に係る光デバイスの平面図である。
【
図20】第7実施形態に係る光デバイスの平面図である。
【
図21】第8実施形態に係る光デバイスの平面図である。
【
図22】第8実施形態に係る光デバイスの磁性素子近傍の第1例の斜視図である。
【
図23】第8実施形態に係る光デバイスの磁性素子近傍の第2例の斜視図である。
【
図24】第9実施形態に係る光デバイスの磁性素子近傍の断面図である。
【
図25】第10実施形態に係る光デバイスの平面図である。
【
図26】光デバイスを用いた光システムの概念図である。
【
図27】第10実施形態の変形例にかかる光デバイスの平面図である。
【
図29】アイトラッキング専用のシステムに用いることができる光デバイスの一例の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0023】
方向について定義する。基板27(
図2参照)が広がる面内の一方向をx方向、x方向と直交する面内の方向をy方向とする。基板27と直交する方向(x方向及びy方向と直交する方向)をz方向とする。以下、+z方向を「上」、-z方向を「下」と表現する場合がある。上下は、必ずしも重力が加わる方向とは一致しない。
【0024】
「第1実施形態」
図1は、第1実施形態に係る光デバイス100の平面図である。光デバイス100は、複数のレーザーダイオード11、12、13と導波路20と磁性素子30とを有する。
【0025】
複数のレーザーダイオード11、12、13のそれぞれは、レーザー光を出力する。例えば、レーザーダイオード11は、590nm以上800nm以下の波長域の光を出力する赤色レーザーである。例えば、レーザーダイオード12は、490nm以上590nm未満の波長域の光を出力する緑色レーザーである。例えば、レーザーダイオード13は、380nm以上490nm未満の波長域の光を出力する緑色レーザーである。以下、一例として赤、緑、青の3色のレーザーを用いる例を基に説明するが、レーザーダイオードの数、出力する波長域等はこの場合に限られない。
【0026】
導波路20は、例えば、入力導波路21、22、23と合波路24と出力導波路25とモニタリング導波路26とを有する。
【0027】
入力導波路21、22、23のそれぞれは、レーザーダイオード11、12、13のそれぞれと光学的に接続されている。例えば、レーザーダイオード11から出力された光は、入力導波路21を伝搬する。例えば、レーザーダイオード12から出力された光は、入力導波路22を伝搬する。例えば、レーザーダイオード13から出力された光は、入力導波路23を伝搬する。
【0028】
合波路24は、入力導波路21、22、23と出力導波路25との間にある。入力導波路21、22、23のそれぞれを伝搬する光は、合波路24で合流する。出力導波路25は、合波路24に接続されている。出力導波路25は、合波路24を介して入力導波路21、22、23と接続され、出力導波路25には、入力導波路21、22、23からの光が伝搬する。
【0029】
モニタリング導波路26は、入力導波路21、22、23と出力導波路25とのうち少なくとも一方に接続される。モニタリング導波路26には、入力導波路21、22、23と出力導波路25とのうち少なくとも一方を伝搬する光の少なくとも一部が伝搬する。以下、入力導波路21、22、23と出力導波路25とのうち少なくとも一方を伝搬する光の少なくとも一部をモニタリング光と称する場合がある。
図1に示すモニタリング導波路26は、出力導波路25に接続されている。モニタリング光は、出力導波路25から分岐し、モニタリング導波路26を伝搬する。
【0030】
図2は、第1実施形態に係る光デバイスの導波路20の断面図である。
図2は、
図1のA-A線に沿った断面である。
図2は、導波路20のうちの入力導波路21、22、23の断面である。
【0031】
入力導波路21、22、23は、基板27上にある。基板27は、例えば、酸化アルミニウムを含む。基板27は、例えば、サファイアである。入力導波路21、22、23のそれぞれは、基板27からz方向に突出する。入力導波路21、22、23のそれぞれは、例えば、主成分としてニオブ酸リチウムを含む。ニオブ酸リチウムの一部元素は、他の元素に置換されていてもよい。入力導波路21、22、23のそれぞれは、例えば、クラッド28で被覆されている。クラッド28は、例えば、SiO2、Al2O3、MgF2、La2O3、ZnO、HfO2、MgO、Y2O3、CaF2、In2O3等又はこれらの混合物である。入力導波路21、22、23の材料およびクラッド28の材料はこの例に限られない。例えば、入力導波路21、22、23を構成するコアがシリコン又は酸化シリコンに酸化ゲルマニウムを添加したもので、クラッドが酸化シリコンでもよい。合波路24、出力導波路25も入力導波路21、22、23と同様の構成からなる。
【0032】
図3は、第1実施形態に係る光デバイス100の磁性素子30の近傍の斜視図である。
図4は、第1実施形態に係る光デバイス100の磁性素子30の近傍の断面図である。
【0033】
磁性素子30は、モニタリング光が照射される位置にある。磁性素子30は、例えば、モニタリング導波路26の出力端の先にある。モニタリング光は、例えば、磁性素子30に対して磁性素子30の積層方向と交差する方向から照射される。モニタリング光は、例えば、磁性素子30の側面に照射される。磁性素子30は、導波路20が形成された基板27と同一基板上に形成されている。すなわち、磁性素子30と導波路20とは、一つの物品の中に組み込まれ、分離できない。磁性素子30は、基板27上又は基板27の上方にある。
【0034】
磁性素子30は、例えば、電極41、42と、ビア配線43、44と、入力端子45と、出力端子46と、電気的に接続されている。
【0035】
電極41は、磁性素子30の第1面に接続されている。電極42は、磁性素子30の第2面に接続されている。第1面と第2面とは、磁性素子30の積層方向において互いに対向する。
【0036】
電極41、42は、導電性を有する材料を含む。電極41、42は、例えば、Cu、Al、AuまたはRuなどの金属により構成される。これらの金属の上下にTaやTiを積層してもよい。また電極41、42として、CuとTaの積層膜、TaとCuとTiの積層膜、TaとCuとTaNの積層膜を用いてもよい。また電極41、42として、TiNやTaNを用いてもよい。
【0037】
電極41、42は、磁性素子30に照射される光の波長域に対して透過性を有してもよい。例えば、電極41、42は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)等の酸化物の透明電極材料を含む透明電極でもよい。また電極41、42は、こられの透明電極材料の中に複数の柱状金属を有する構成としてもよい。
【0038】
ビア配線43は、入力端子45と電極41又は電極42とを繋ぐ。入力端子45は、例えば2つある。入力端子45の一方には電流又は電圧が入力され、入力端子45の他方は基準電位に接続されている。入力端子45は、例えば、クラッド28の上面に露出している。ビア配線44は、出力端子46と電極41又は電極42とを繋ぐ。出力端子46は、例えば2つある。出力端子46の一方からは信号が出力され、出力端子46の他方は基準電位に接続されている。出力端子46は、例えば、クラッド28の上面に露出している。ビア配線43、44、入力端子45及び出力端子46は、導電性を有する材料を含む。ビア配線43、44、入力端子45及び出力端子46の材料としては、電極41、42の例として挙げたものと同じものを用いることができる。
【0039】
図5及び
図6は、第1実施形態に係る光デバイス100の磁性素子30を用いた光のモニタリング回路の一例である。
図5及び
図6において、電極41は、例えば、入力端子P
in及び出力端子P
outに接続されている。
図5及び
図6において、電極42は、例えば、基準電位端子P
Gに接続されている。入力端子P
inは、
図3及び
図4における入力端子45の一方に対応する。出力端子P
outは、
図3及び
図4における出力端子46の一方に対応する。基準電位端子P
Gは、
図3及び
図4における入力端子45の他方及び出力端子46の他方に対応する。
図5及び
図6における基準電位は、グラウンドGである。グラウンドGは光デバイス100の外部に設けられてもよい。基準電位は、グラウンドG以外でもよい。
【0040】
磁性素子30は、照射される光(モニタリング光L)の状態の変化を電気信号に置き換える。磁性素子30からの出力電圧又は出力電流は、照射される光(モニタリング光L)の強度によって変化する。
【0041】
入力端子Pinは、電流源PS1又は電圧源PS2に接続されている。電流源PS1及び電圧源PS2は、光デバイス100の外部にあってもよい。入力端子Pinが電流源PS1に接続されている場合、出力端子Poutは、磁性素子30の積層方向の抵抗値を電圧として出力する。入力端子Pinが電圧源PS2に接続されている場合、出力端子Poutは、磁性素子30の積層方向の抵抗値を電流として出力する。磁性素子30に外部から電流または電圧を印加する必要が無い場合は、入力端子Pinおよび電流源PS1または電圧源PS2は無くてもよい。
【0042】
図7は、第1実施形態に係る磁性素子30の断面図である。
図7では、電極41、42を同時に図示し、強磁性体の初期状態における磁化の向きを矢印で表している。
【0043】
磁性素子30は、少なくとも第1強磁性層31と第2強磁性層32とスペーサ層33とを有する。スペーサ層33は、第1強磁性層31と第2強磁性層32との間に位置する。磁性素子30は、これらの他に、第3強磁性層34、磁気結合層35、下地層36、垂直磁化誘起層37、キャップ層38、側壁絶縁層39等を有してもよい。磁性素子30は、積層方向からの平面視における最長幅が、例えば2000nm以下である。磁性素子30は、積層方向からの平面視における最長幅が、例えば10nm以上である。
【0044】
磁性素子30は、例えば、スペーサ層33が絶縁材料で構成されたMTJ(Magnetic Tunnel Junction)素子である。この場合、磁性素子30は、第1強磁性層31の磁化M31の状態と第2強磁性層32の磁化M32の状態との相対的な変化に応じて、積層方向の抵抗値(積層方向に電流を流した場合の抵抗値)が変化する。このような素子は磁気抵抗効果素子とも呼ばれる。
【0045】
第1強磁性層31は、外部から光が照射されると磁化の状態が変化する光検知層である。第1強磁性層31は、磁化自由層とも呼ばれる。磁化自由層は、所定の外部からのエネルギーが印加された際に磁化の状態が変化する磁性体を含む層である。所定の外部からのエネルギーは、例えば、外部から照射される光(モニタリング光L)、磁性素子30の積層方向に流れる電流、外部磁場である。第1強磁性層31の磁化M31は、第1強磁性層31に照射される光(モニタリング光L)の強度に応じて、状態が変化する。
【0046】
第1強磁性層31は、強磁性体を含む。第1強磁性層31は、例えば、Co、FeまたはNi等の磁性元素のいずれかを少なくとも含む。第1強磁性層31は、上述のような磁性元素と共に、B、Mg、Hf、Gd等の非磁性元素を含んでもよい。第1強磁性層31は、例えば、磁性元素と非磁性元素とを含む合金でもよい。第1強磁性層31は、複数の層から構成されていてもよい。第1強磁性層31は、例えば、CoFeB合金、CoFeB合金層をFe層で挟んだ積層体、CoFeB合金層をCoFe層で挟んだ積層体である。
【0047】
第1強磁性層31は、膜面内方向に磁化容易軸を有する面内磁化膜でも、膜面直方向(磁性素子30の積層方向)に磁化容易軸を有する垂直磁化膜でもよい。
【0048】
第1強磁性層31の膜厚は、例えば、1nm以上5nm以下である。第1強磁性層31の膜厚は、例えば、1nm以上2nm以下であることが好ましい。第1強磁性層31が垂直磁化膜の場合、第1強磁性層31の膜厚が薄いと、第1強磁性層31の上下にある層からの垂直磁気異方性印加効果が強まり、第1強磁性層31の垂直磁気異方性が高まる。つまり、第1強磁性層31の垂直磁気異方性が高いと、磁化M31が膜面直方向に(元の状態に)戻ろうとする力が強まる。一方、第1強磁性層31の膜厚が厚いと、第1強磁性層31の上下にある層からの垂直磁気異方性印加効果が相対的に弱まり、第1強磁性層31の垂直磁気異方性が弱まる。
【0049】
第1強磁性層31の膜厚が薄くなると強磁性体としての体積は小さくなり、厚くなると強磁性体としての体積は大きくなる。外部からのエネルギーが加わったときの第1強磁性層31の磁化M31の反応しやすさは、第1強磁性層31の磁気異方性(Ku)と体積(V)との積(KuV)に反比例する。つまり、第1強磁性層31の磁気異方性と体積との積が小さくなると、光に対する反応性が高まる。このような観点から、光に対する反応を高めるためには、第1強磁性層31の磁気異方性を適切に設計したうえで第1強磁性層31の体積を小さくすることが好ましい。
【0050】
第1強磁性層31の膜厚が2nmより厚い場合は、例えばMo,Wからなる挿入層を第1強磁性層31内に設けてもよい。すなわち、強磁性層、挿入層、強磁性層が順に積層された積層体を第1強磁性層31としてもよい。挿入層と強磁性層との界面における界面磁気異方性により第1強磁性層31全体の垂直磁気異方性が高まる。挿入層の膜厚は、例えば、0.1nm~0.6nmである。
【0051】
第2強磁性層32は、磁化固定層である。磁化固定層は、所定の外部からのエネルギーが印加された際に磁化の状態が磁化自由層よりも変化しにくい磁性体からなる層である。例えば、磁化固定層は、所定の外部からのエネルギーが印加された際に磁化の向きが磁化自由層よりも変化しにくい。また、例えば、磁化固定層は、所定の外部からのエネルギーが印加された際に磁化の大きさが磁化自由層よりも変化しにくい。第2強磁性層32の保磁力は、例えば、第1強磁性層31の保磁力よりも大きい。第2強磁性層32は、例えば第1強磁性層31と同じ方向に磁化容易軸を有する。第2強磁性層32は、面内磁化膜でも、垂直磁化膜でもよい。
【0052】
第2強磁性層32を構成する材料は、例えば、第1強磁性層31と同様である。第2強磁性層32は、例えば、0.4nm~1.0nmの厚みのCo、0.1nm~0.5nmの厚みのMo、0.3nm~1.0nmの厚みのCoFeB合金、0.3nm~1.0nmの厚みのFeが順に積層された積層体でもよい。
【0053】
第2強磁性層32の磁化M32は、例えば、磁気結合層35を介した第3強磁性層34との磁気結合によって固定してもよい。この場合、第2強磁性層32、磁気結合層35及び第3強磁性層34を合わせたものを磁化固定層と称する場合もある。
【0054】
第3強磁性層34は、例えば、第2強磁性層32と磁気結合する。磁気結合は、例えば、反強磁性的な結合であり、RKKY相互作用により生じる。第3強磁性層34を構成する材料は、例えば、第1強磁性層31と同様である。磁気結合層35は、例えば、Ru、Ir等である。
【0055】
スペーサ層33は、第1強磁性層31と第2強磁性層32との間に配置される非磁性層である。スペーサ層33は、導電体、絶縁体もしくは半導体によって構成される層、又は、絶縁体中に導体によって構成される通電点を含む層で構成される。スペーサ層33の膜厚は、後述する初期状態における第1強磁性層31の磁化M31と第2強磁性層32の磁化M32の配向方向に応じて調整できる。
【0056】
例えば、スペーサ層33が絶縁体からなる場合は、磁性素子30は、第1強磁性層31とスペーサ層33と第2強磁性層32とからなる磁気トンネル接合(MTJ:Magnetic Tunnel Junction)を有する。このような素子はMTJ素子と呼ばれる。この場合、磁性素子30はトンネル磁気抵抗(TMR:Tunnel Magnetoresistance)効果を発現することができる。スペーサ層33が金属からなる場合は、磁性素子30は、巨大磁気抵抗(GMR:Giant Magnetoresistance)効果を発現することができる。このような素子はGMR素子と呼ばれる。磁性素子30は、スペーサ層3の構成材料によって、MTJ素子、GMR素子などと呼び名が異なることがあるが、総称して磁気抵抗効果素子とも呼ばれる。
【0057】
スペーサ層33が絶縁材料で構成される場合、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン又は酸化ケイ素等を含む材料をスペーサ層33に用いることができる。また、スペーサ層33は、これら絶縁材料に、Al、B、Si、Mgなどの元素や、Co、Fe、Niなどの磁性元素を含んだものでもよい。第1強磁性層31と第2強磁性層32との間に高いTMR効果が発現するようにスペーサ層33の膜厚を調整することで、高い磁気抵抗変化率が得られる。TMR効果を効率よく利用するためには、スペーサ層33の膜厚は、0.5~5.0nm程度としてもよく、1.0~2.5nm程度としてもよい。
【0058】
スペーサ層33を非磁性導電材料で構成する場合、Cu、Ag、Au又はRu等の導電材料を用いることができる。GMR効果を効率よく利用するためには、スペーサ層33の膜厚は、0.5~5.0nm程度としてもよく、2.0~3.0nm程度としてもよい。
【0059】
スペーサ層33を非磁性半導体材料で構成する場合、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫、酸化ゲルマニウム、酸化ガリウム又はITO等の材料を用いることができる。この場合、スペーサ層33の膜厚は1.0~4.0nm程度としてもよい。
【0060】
スペーサ層33として非磁性絶縁体中の導体によって構成される通電点を含む層を適用する場合、酸化アルミニウムまたは酸化マグネシウムによって構成される非磁性絶縁体中に、Cu、Au、Alなどの非磁性の導体によって構成される通電点を含む構造としてもよい。また、Co、Fe、Niなどの磁性元素によって導体を構成してもよい。この場合、スペーサ層33の膜厚は、1.0~2.5nm程度としてもよい。通電点は、例えば、膜面に垂直な方向からみたときの直径が1nm以上5nm以下の柱状体である。
【0061】
下地層36は、第2強磁性層32と電極42との間にある。下地層36は、シード層又はバッファ層である。シード層は、シード層上に積層される層の結晶性を高める。シード層は、例えば、Pt、Ru、Hf、Zr、NiFeCrである。シード層の膜厚は、例えば1nm以上5nm以下である。バッファ層は、異なる結晶間の格子不整合を緩和する層である。バッファ層は、例えば、Ta、Ti、W、Zr、Hf又はこれらの元素の窒化物である。バッファ層の膜厚は、例えば、1nm以上5nm以下である。
【0062】
キャップ層38は、第1強磁性層31と電極41との間にある。キャップ層38は、プロセス過程で下層へのダメージを防ぐと共に、アニール時に下層の結晶性を高める。キャップ層38の膜厚は、第1強磁性層31に十分な光が照射されるように、例えば3nm以下である。キャップ層38は、例えば、MgO、W、Mo、Ru、Ta、Cu、Crまたはこれらの積層膜などである。
【0063】
垂直磁化誘起層37は、第1強磁性層31が垂直磁化膜の場合に形成される。垂直磁化誘起層37は、第1強磁性層31上に積層される。垂直磁化誘起層37は、第1強磁性層31の垂直磁気異方性を誘起する。垂直磁化誘起層37は、例えば酸化マグネシウム、W、Ta、Mo等である。垂直磁化誘起層37が酸化マグネシウムの場合は、導電性を高めるために、酸化マグネシウムが酸素欠損していることが好ましい。垂直磁化誘起層37の膜厚は、例えば、0.5nm以上2.0nm以下である。
【0064】
側壁絶縁層39は、第1強磁性層31及び第2強磁性層32を含む積層体の周囲を覆う。側壁絶縁層39は、例えば、Si、Al、Mgの酸化物、窒化物、酸窒化物である。
【0065】
磁性素子30は、各層の積層工程、アニール工程、加工工程によって作製される。まず基板27上(クラッド28の一部の上)に、電極42、下地層36、第3強磁性層34、磁気結合層35、第2強磁性層32、スペーサ層33、第1強磁性層31、垂直磁化誘起層37、キャップ層38の順に積層する。基板27は、導波路20が形成されている基板と同一である。各層は、例えば、スパッタリングにより成膜される。
【0066】
次いで、積層膜をアニールする。アニール温度は、例えば、250℃から450℃である。その後、積層膜をフォトリソグラフィ及びエッチングにより所定の柱状体に加工する。柱状体は、円柱でも角柱でもよい。例えば、柱状体を積層方向から見た際の最短幅は、10nm以上2000nm以下としてもよく、30nm以上500nm以下としてもよい。
【0067】
次いで、柱状体の側面を被覆するように、絶縁層を形成する。絶縁層は、側壁絶縁層39となる。側壁絶縁層39は、複数回に亘って積層してもよい。次いで、化学機械研磨(CMP)により側壁絶縁層39からキャップ層38の上面を露出し、キャップ層38上に、電極41を作製する。上記工程により、磁性素子30が得られる。磁性素子30は、下地を構成する材料によらず作製できる。そのため、磁性素子30は、接着層等を介さずに、導波路20が形成された基板27上に直接作製できる。磁性素子30は、導波路20と共に同じ基板27上のプロセスにより形成することができる。例えば、導波路20及び磁性素子30は、同一の基板27上に、真空成膜プロセスにより形成することが可能である。
【0068】
次いで、光デバイス100の動作のいくつかの例について説明する。光デバイス100が行う動作には、レーザーダイオード11、12、13のそれぞれから出射された光を合波し、出力する出力動作と、レーザーダイオード11、12、13のそれぞれから出射された光をモニタリングするモニタリング動作とがある。
【0069】
まず出力動作について説明する。レーザーダイオード11、12、13のそれぞれから光を出射する。レーザーダイオード11、12、13のそれぞれから出射された光は、入力導波路21、22、23のそれぞれに入力される。入力導波路21は、レーザーダイオード11から出力された光が伝搬する。入力導波路22は、レーザーダイオード12から出力された光が伝搬する。入力導波路23は、レーザーダイオード13から出力された光が伝搬する。
【0070】
入力導波路21、22、23のそれぞれを伝搬する光は、合波路24で合流する。合波路24で合流した光は、出力導波路25を伝搬する。出力導波路25の一端からは、合波路24で合流した光が出力される。
【0071】
次いで、モニタリング動作について説明する。モニタリング動作では、レーザーダイオード11、12、13のうちの一つから光を出射する。例えば、レーザーダイオード11から光を出射する。この場合、レーザーダイオード11から出射された光は、入力導波路21、合波路24、出力導波路25の順に伝搬する。出力導波路25を伝搬する光の少なくとも一部は、モニタリング導波路26に分岐する。分岐した光は、モニタリング光として、モニタリング導波路26内を伝搬する。
【0072】
モニタリング導波路26内を伝搬する光(モニタリング光)は、磁性素子30に照射される。モニタリング光は、例えば、磁性素子30に対して磁性素子30の積層方向(
図3ではz方向)と交差する方向から照射される。モニタリング光は、例えば、y方向から磁性素子30の側面に照射される。
【0073】
磁性素子30からの出力電圧又は出力電流は、第1強磁性層31に照射される光(モニタリング光L)の強度により変化する。磁性素子30からの出力電圧又は出力電流が光の照射によって変化する厳密なメカニズムはまだ明確になっていないが、例えば、以下の2つのメカニズムが考えられる。
【0074】
図8は、第1実施形態に係る磁性素子30の動作の第1メカニズムを説明するための図である。
図8の上のグラフは、縦軸が第1強磁性層31に照射される光の強度であり、横軸が時間である。
図8の下のグラフは、縦軸が磁性素子30の積層方向の抵抗値であり、横軸が時間である。
【0075】
まず第1強磁性層31に第1強度の光が照射された状態(以下、初期状態と称する)において、第1強磁性層31の磁化M31と第2強磁性層32の磁化M32とは平行の関係にあり、磁性素子30の積層方向の抵抗値は第1抵抗値R1を示し、磁性素子30からの出力電圧又は出力電流の大きさは第1の値を示す。第1強度は、第1強磁性層31に照射される光の強度がゼロの場合でもよい。
【0076】
磁性素子30の積層方向の抵抗値は、例えば、磁性素子30の積層方向にセンス電流を流すと、磁性素子30の積層方向の両端に電圧が発生し、その電圧値からオームの法則を用いて求められる。磁性素子30からの出力電圧は、電極41と電極42との間に発生する。
図8に示す例の場合、センス電流を第1強磁性層31から第2強磁性層32に向かって流すことが好ましい。この方向にセンス電流を流すことで、第1強磁性層31の磁化M31に対して、第2強磁性層32の磁化M32と同じ方向のスピントランスファートルクが作用し、初期状態において磁化M31と磁化M32とが平行になる。また、この方向にセンス電流を流すことで、第1強磁性層31の磁化M31が動作時に反転することを防止することができる。
【0077】
次いで、第1強磁性層31に照射される光の強度が変化する。光の照射による外部からのエネルギーによって第1強磁性層31の磁化M31は初期状態から傾く。第1強磁性層31に光が照射されていない状態における第1強磁性層31の磁化M31の方向と、光が照射された状態における磁化M31の方向との角度は、いずれも0°より大きく90°より小さい。
【0078】
第1強磁性層31の磁化M31が初期状態から傾くと、磁気抵抗効果素子30の積層方向の抵抗値は変化する。そして、磁性素子30からの出力電圧又は出力電流は変化する。例えば、磁性素子30に照射される光(モニタリング光L)の強度が大きくなるほど、磁化M31の初期状態に対する傾きは大きくなる。例えば、第1強磁性層31の磁化M31の傾きに応じて、磁性素子30の積層方向の抵抗値は、第2抵抗値R2、第3抵抗値R3、第4抵抗値R4と変化し、磁性素子30からの出力電圧又は出力電流は第2の値、第3の値、第4の値と変化する。第1抵抗値R1、第2抵抗値R2、第3抵抗値R3、第4抵抗値R4の順に抵抗値は大きくなる。第1の値、第2の値、第3の値、第4の値の順に磁性素子30からの出力電圧は大きくなる。磁性素子30が定電圧源に接続されている場合、第1の値、第2の値、第3の値、第4の値の順に磁性素子30からの出力電流は小さくなる。
【0079】
磁性素子30は、磁性素子30に照射される光(モニタリング光L)の強度が変化した際に、磁性素子30からの出力電圧又は出力電流(磁性素子30の積層方向の抵抗値)が変化する。したがって、磁性素子30は、モニタリング光Lの強度を磁性素子30からの出力電圧又は出力電流(磁性素子30の抵抗値)として検出できる。
【0080】
第1強磁性層31の磁化M31には第2強磁性層32の磁化M32と同じ方向のスピントランスファートルクが作用するので、第1強磁性層31に照射される光の強度が第1強度に戻ると、初期状態から傾いた磁化M31は、初期状態に戻る。磁化M31が初期状態に戻ると、磁性素子30の積層方向の抵抗値は、第1抵抗値R1に戻り、磁性素子30からの出力電圧又は出力電流は第1の値に戻る。
【0081】
ここでは初期状態において磁化M31と磁化M32とが平行な場合を例に説明したが、初期状態において磁化M31と磁化M32とが反平行でもよい。この場合、磁性素子30の積層方向の抵抗値は、磁化M31が傾くほど(磁化M31の初期状態からの角度変化が大きくなるほど)小さくなる。磁化M31と磁化M32とが反平行な場合を初期状態とする場合は、センス電流は第2強磁性層32から第1強磁性層31に向かって流すことが好ましい。この方向にセンス電流を流すことで、第1強磁性層31の磁化M31に対して、第2強磁性層32の磁化M32と反対方向のスピントランスファートルクが作用し、初期状態において磁化M31と磁化M32とが反平行になる。
【0082】
図9は、第1実施形態に係る磁性素子30の動作の第2メカニズムを説明するための図である。
図9の上のグラフは、縦軸が第1強磁性層31に照射される光の強度であり、横軸が時間である。
図9の下のグラフは、縦軸が磁性素子30の積層方向の抵抗値であり、横軸が時間である。
【0083】
図9に示す初期状態は、
図8に示す初期状態と同様である。
図9に示す例の場合も、センス電流を第1強磁性層31から第2強磁性層32に向かって流すことが好ましい。この方向にセンス電流を流すことで、第1強磁性層31の磁化M31に対して、第2強磁性層32の磁化M32と同じ方向のスピントランスファートルクが作用し、初期状態が維持される。
【0084】
次いで、第1強磁性層31に照射される光(モニタリング光)の強度が変化する。光の照射による外部からのエネルギーによって第1強磁性層31の磁化M31の大きさは初期状態から小さくなる。第1強磁性層31の磁化M31が初期状態から小さくなると、磁気抵抗効果素子30の積層方向の抵抗値は変化する。そして、磁性素子30からの出力電圧又は出力電流は変化する。例えば、磁性素子30に照射される光(モニタリング光L)の強度が大きくなるほど、磁化M31の大きさは小さくなる。例えば、第1強磁性層31の磁化M31の大きさに応じて、磁性素子30の積層方向の抵抗値は、第2抵抗値R2、第3抵抗値R3、第4抵抗値R4と変化し、磁性素子30からの出力電圧又は出力電流は第2の値、第3の値、第4の値と変化する。第1抵抗値R1、第2抵抗値R2、第3抵抗値R3、第4抵抗値R4の順に抵抗値は大きくなる。第1の値、第2の値、第3の値、第4の値の順に磁性素子30からの出力電圧は大きくなる。磁性素子30が定電圧源に接続されている場合、第1の値、第2の値、第3の値、第4の値の順に磁性素子30からの出力電流は小さくなる。
【0085】
第1強磁性層31に照射される光の強度が第1強度に戻ると、第1強磁性層31の磁化M31の大きさは元に戻り、磁性素子30は初期状態に戻る。すなわち、磁性素子30の積層方向の抵抗値は、第1抵抗値R1に戻り、磁性素子30からの出力電圧又は出力電流は第1の値に戻る。
【0086】
図9においても、初期状態において磁化M31と磁化M32とが反平行としてもよい。この場合、磁性素子30の積層方向の抵抗値は、磁化M31の大きさが小さくなるほど、小さくなる。磁化M31と磁化M32とが反平行な場合を初期状態とする場合は、センス電流は第2強磁性層32から第1強磁性層31に向かって流すことが好ましい。
【0087】
上述の手順を経て、レーザーダイオード11から出力される光の強度を、磁性素子30からの出力電圧又は出力電流(磁性素子30の積層方向の抵抗値)として読み取ることができる。そして、同様の手順で、レーザーダイオード12から出力される光の強度及びレーザーダイオード13から出力される光の強度を順次測定する。
【0088】
出力導波路25の一端から出力される光は、それぞれのレーザーダイオード11、12、13から出力される光を合わせたものである。それぞれのレーザーダイオード11、12、13から出力される光の強度を調整することで、光デバイス100からの出力光のホワイトバランスを調整できる。それぞれのレーザーダイオード11、12、13から出力される光の強度は、例えば、磁性素子30からの出力の測定結果を、それぞれのレーザーダイオード11、12、13にフィードバックすることで調整できる。
【0089】
また第1強磁性層31の磁化M31は、第1強磁性層31の体積が小さいほど光の照射に対して変化しやすくなる。つまり、第1強磁性層31の磁化M31は、第1強磁性層31の体積が小さいほど光の照射により傾きやすい、又は、光の照射により小さくなりやすい。換言すると、第1強磁性層31の体積を小さくすると、わずかな光量の光でも磁化M31を変化させることができる。すなわち、第1実施形態に係る磁性素子30は、高感度に光を検知できる。
【0090】
より正確には、磁化M31の変化しやすさは、第1強磁性層31の磁気異方性(Ku)と体積(V)との積(KuV)の大きさで決定される。KuVが小さいほどより微小な光量でも磁化M31は変化し、KuVが大きいほどより大きな光量でないと磁化M31は変化しない。つまり、アプリケーションで使用する外部から照射する光の光量に応じて、第1強磁性層31のKuVを設計することになる。極めて微小な光量検出のようなことを想定した場合には、第1強磁性層31のKuVを小さくすることで、これらの微小な光量の光の検出が可能となる。このような微小な光量の光の検出は、従来のpn接合の半導体では素子サイズを小さくすると難しくなるため、大きなメリットである。第1強磁性層31の体積を小さくすることで、KuVを小さくできる。
【0091】
上述のように、第1実施形態に係る光デバイス100は、磁性素子30の出力電圧又は出力電流(磁性素子30の積層方向の抵抗値)からレーザーダイオード11、12、13のそれぞれから出力される光の強度を読み取ることができる。第1実施形態に係る光デバイス100は、それぞれのレーザーダイオード11、12、13から出力される光の強度を調整することで、出力導波路25から出力される光のホワイトバランスを調整できる。
【0092】
以上、第1実施形態について図面を参照して詳述したが、第1実施形態はこの例に限られるものではない。
【0093】
例えば、
図10に示すように、磁性素子30の積層方向がz方向に対して傾斜していてもよい。この場合、モニタリング光は、磁性素子30の側面及び磁性素子30の電極41側の第1面に照射される。
【0094】
「第2実施形態」
図11は、第2実施形態に係る光デバイス101の磁性素子30近傍の斜視図である。
図12は、第2実施形態に係る光デバイス101の磁性素子30近傍の断面図である。
図13は、第2実施形態に係る光デバイス101の磁性素子30近傍の別の断面図である。第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成は同様の符号を付し、説明を省く。
【0095】
光デバイス101は、リフレクタ50を有する。リフレクタ50は、モニタリング導波路26から出力される光(モニタリング光)を磁性素子30に向かって反射する。リフレクタ50は、モニタリング導波路26の出力端からモニタリング光の進行方向の位置にある。リフレクタ50は、モニタリング光の進行方向に対して傾斜する傾斜面を有する。
【0096】
リフレクタ50は、光を反射するものである。リフレクタ50は、例えば、反射鏡である。
【0097】
磁性素子30は、クラッド28上に形成された絶縁層29内に形成されている。絶縁層29は、例えば、側壁絶縁層39と同様の材料である。磁性素子30は、基板27の上方にある。磁性素子30は、導波路20と異なる高さ位置にあり、導波路20より基板27から離れた位置にある。磁性素子30は、例えば、リフレクタ50の上方にある。
【0098】
リフレクタ50で反射された光(モニタリング光)は、例えば、磁性素子30に磁性素子30の積層方向から照射される。この場合、電極42は、磁性素子30に照射される光の波長域に対して透過性を有する。電極42がモニタリング光の一部を透過することで、磁性素子30にモニタリング光が照射される。ここでは、電極42が電極41よりリフレクタ50側に配置される例を例示したが、電極41が電極42よりリフレクタ50側に配置されてもよい(第1強磁性層31が第2強磁性層32よりリフレクタ50側に配置されてもよい)。この場合、電極41は、磁性素子30に照射される光の波長域に対して透過性を有する。電極41が電極42よりリフレクタ50側に配置されると、第1強磁性層31へのモニタリング光の照射効率が高まる。
【0099】
第2実施形態にかかる光デバイス101は、光デバイス100と同様の効果を奏する。またリフレクタ50により磁性素子30に対するモニタリング光の照射方向を自由に設計できる。例えば、磁性素子30に対して積層方向からモニタリング光が照射されると、磁性素子30の受光面積を広く確保できる。
【0100】
「第3実施形態」
図14は、第3実施形態に係る光デバイス102のz方向から見た平面図である。
図15は、第3実施形態に係る光デバイス102の磁性素子30近傍の断面図である。
図15は、
図14のC-C線に沿った断面である。第3実施形態において、第1実施形態と同様の構成は同様の符号を付し、説明を省く。
【0101】
光デバイス102は、磁性素子30を支持する支持体60を有する。支持体60は、導波路20が形成された基板27とは別の部材である。支持体60と基板27とは、例えば、共通の支持体上に固定されている。支持体60は、例えば、基板27と同様の材料である。光デバイス102において、磁性素子30は支持体60の上又は上方にある。磁性素子30は、支持体60上に形成された絶縁層61内にある。絶縁層61は、例えば、側壁絶縁層39と同様の材料である。
【0102】
図14、15に示す例では、磁性素子30のz方向の高さ位置は、モニタリング導波路26の出力端のz方向の高さ位置に合わせている。
【0103】
第3実施形態にかかる光デバイス102は、光デバイス100と同様の効果を奏する。また磁性素子30と導波路20とをそれぞれ別々に作製することが可能であり、製造時の制限が少なくなる。
【0104】
「第4実施形態」
図16は、第4実施形態に係る光デバイス103の磁性素子30の近傍の断面図である。第4実施形態において、第3実施形態と同様の構成は同様の符号を付し、説明を省く。
【0105】
基板27Aは、上面に段差が形成されている点が基板27と異なる。上面S1と上面S2とはz方向の高さ位置が異なる。上面S1は、z方向から見て導波路20と重なる位置における基板27の上面である。導波路20は上面S1上に形成されている。上面S2は、z方向から見て磁性素子30と重なる位置における基板27の上面である。
【0106】
支持体60は、上面S2に載置されている。磁性素子30は、基板27の上方、かつ、支持体60上に形成されている。
【0107】
第4実施形態にかかる光デバイス103は、光デバイス102と同様の効果を奏する。
【0108】
「第5実施形態」
図17は、第5実施形態に係る光デバイス104の磁性素子30近傍の断面図である。
図18は、第5実施形態に係る光デバイス104の磁性素子30近傍の斜視図である。第5実施形態において、第4実施形態と同様の構成は同様の符号を付し、説明を省く。
【0109】
光デバイス104において、モニタリング導波路26の出力端からのモニタリング光の進行方向と、磁性素子30の積層方向とが一致している。支持体60は、例えば、磁性素子30を積層する際の支持体60の側面が、基板27Aの上面S2と対向するように設置されている。モニタリング光は、例えば、磁性素子30に磁性素子30の積層方向から照射される。この場合、電極41は、磁性素子30に照射される光の波長域に対して透過性を有する。電極41がモニタリング光の一部を透過することで、磁性素子30にモニタリング光が照射される。
【0110】
図18に示すように、電極41は、入力端子45A及び出力端子46Aと接続されている。電極42は、ビア配線43を介して入力端子45Aに、ビア配線44を介して出力端子46Aに接続されている。入力端子45A及び出力端子46は、支持体60の側面に形成されている。
【0111】
第5実施形態にかかる光デバイス104は、光デバイス103と同様の効果を奏する。またモニタリング光が磁性素子30に対して積層方向から照射されることで、磁性素子30の受光面積を広く確保できる。
【0112】
「第6実施形態」
図19は、第6実施形態に係る光デバイス105のz方向からの平面図である。第6実施形態において、第1実施形態と同様の構成は同様の符号を付し、説明を省く。
【0113】
光デバイス105の導波路20Aの形状は、光デバイス100の導波路20と異なる。導波路20Aは、例えば、入力導波路21、22、23と合波路24と出力導波路25と複数のモニタリング導波路26A、26B、26Cとを有する。
【0114】
モニタリング導波路26Aは、入力導波路21に接続される。モニタリング導波路26Bは、入力導波路22に接続される。モニタリング導波路26Cは、入力導波路23に接続される。モニタリング導波路26Aには、入力導波路21を伝搬する光の少なくとも一部がモニタリング光として伝搬する。モニタリング導波路26Bには、入力導波路22を伝搬する光の少なくとも一部がモニタリング光として伝搬する。モニタリング導波路26Cには、入力導波路23を伝搬する光の少なくとも一部がモニタリング光として伝搬する。
【0115】
光デバイス105は、複数の磁性素子30を有する。それぞれの磁性素子30には、モニタリング導波路26A、26B、26Cのそれぞれを伝搬する光(モニタリング光)がそれぞれ照射される。
【0116】
第6実施形態にかかる光デバイス105は、光デバイス100と同様の効果を奏する。
【0117】
第1実施形態に係る光デバイス100は、モニタリング動作において、レーザーダイオード11、12、13から出力される光を順次測定していた。これに対し、第6実施形態に係る光デバイス105は、モニタリング動作において、レーザーダイオード11、12、13から出力される光を複数の磁性素子30のそれぞれで同時に測定できる。
【0118】
「第7実施形態」
図20は、第7実施形態に係る光デバイス106のz方向からの平面図である。第7実施形態において、第6実施形態と同様の構成は同様の符号を付し、説明を省く。
【0119】
光デバイス106の導波路20Bの形状は、光デバイス105の導波路20Aと異なる。導波路20Bは、例えば、複数の入力導波路21、22、23と、複数の出力導波路25A、25B、25Cと、複数のモニタリング導波路26A、26B、26Cと、を有する。導波路20Bは、合波路24を有さない。出力導波路25Aは、入力導波路21と接続されている。出力導波路25Bは、入力導波路22と接続されている。出力導波路25Cは、入力導波路23と接続されている。
【0120】
光デバイス106は、出力動作において、入力導波路21、22、23のそれぞれを伝搬する光が合波路24で合流しない。出力導波路25A、25B、25Cの出力端が十分近接すれば、人の目には出力導波路25A、25B、25Cのそれぞれから出力された光が合波して見える。
【0121】
第7実施形態にかかる光デバイス106は、光デバイス105と同様の効果を奏する。ここでは、複数のモニタリング導波路26A、26B、26Cが入力導波路21、22、23に接続されている例を示したが、モニタリング導波路26Aが出力導波路25Aに接続され、モニタリング導波路26Bが出力導波路25Bに接続され、モニタリング導波路26Cが出力導波路25Cに接続されていてもよい。
【0122】
「第8実施形態」
図21は、第8実施形態に係る光デバイス107のz方向からの平面図である。第8実施形態において、第1実施形態と同様の構成は同様の符号を付し、説明を省く。
【0123】
光デバイス107の導波路20Cの形状は、光デバイス100の導波路20と異なる。光デバイス107は、モニタリング導波路26を有さない。光デバイス107は、出力導波路25の出力端から出力される光の一部が、モニタリング光として磁性素子30に照射される。
【0124】
図22は、第8実施形態に係る光デバイス107の磁性素子30近傍の第1例の斜視図である。
図22では、出力導波路25は、2つに分かれた出力端25t1、25t2を有している。出力端25t1は、出力端25t2とx方向の異なる位置にある。
【0125】
出力端25t1からの光の進行方向の先には、リフレクタ50がある。リフレクタ50で反射した光は、モニタリング光として磁性素子30に照射される。すなわち、出力導波路25の出力端から出力される光の一部が、モニタリング光として磁性素子30に照射される。出力端25t2は、外部に露出する。出力端25t2から出力光Loutが出力される。
【0126】
図23は、第8実施形態に係る光デバイス107の磁性素子30近傍の第2例の斜視図である。
図23では、出力導波路25は、2つに分かれた出力端25t3、25t4を有している。出力端25t3は、出力端25t4とz方向の異なる位置にある。
【0127】
出力端25t3からの光の進行方向の先には、リフレクタ50がある。リフレクタ50で反射した光は、モニタリング光として磁性素子30に照射される。すなわち、出力導波路25の出力端から出力される光の一部が、モニタリング光として磁性素子30に照射される。出力端25t4は、外部に露出する。出力端25t4から出力光Loutが出力される。
【0128】
第8実施形態にかかる光デバイス107は、光デバイス100と同様の効果を奏する。
【0129】
「第9実施形態」
図24は、第9実施形態に係る光デバイス108の磁性素子30近傍の断面図である。第9実施形態において、第1実施形態と同様の構成は同様の符号を付し、説明を省く。
【0130】
磁性素子30は、例えば、電極41、42と、ビア配線48と、入出力端子47と、電気的に接続されている。第9実施形態に係る光デバイス108は、磁性素子30に対する入力端子と出力端子が共通になっている。
【0131】
ビア配線48は、入出力端子47と電極41又は電極42とを繋ぐ。入出力端子47は、例えば2つある。入出力端子47の一方には電流又は電圧が入力されるとともに、入出力端子47の一方からは信号が出力される。入出力端子47の他方は基準電位に接続される。
【0132】
第9実施形態にかかる光デバイス108は、光デバイス100と同様の効果を奏する。
【0133】
「第10実施形態」
図25は、第10実施形態に係る光デバイス109のz方向からの平面図である。第10実施形態において、第1実施形態と同様の構成は同様の符号を付し、説明を省く。
【0134】
光デバイス109は、複数のレーザーダイオード11、12、13、14と導波路20Dと複数の磁性素子30とを有する。
【0135】
レーザーダイオード14は、レーザー光を出力する。例えば、レーザーダイオード14は、780nm以上2500nm以下の波長域の光(近赤外線)を出力する近赤外レーザーである。
【0136】
光デバイス109の導波路20Dの形状は、光デバイス100の導波路20と異なる。光デバイス109は、入力導波路21、22、23、21Aと合波路24Aと出力導波路25と複数のモニタリング導波路26D、26Eとを有する。
【0137】
入力導波路21Aは、レーザーダイオード14と光学的に接続されている。例えば、レーザーダイオード14から出力された光は、入力導波路21Aを伝搬する。合波路24Aは、入力導波路21、22、23、21Aと出力導波路25との間にある。入力導波路21、22、23、21Aのそれぞれを伝搬する光は、合波路24Aで合流する。出力導波路25は、合波路24Aに接続されている。出力導波路25は、合波路24Aを介して入力導波路21、22、23、21Aと接続され、出力導波路25には、入力導波路21、22、23、21Aからの光が伝搬する。
【0138】
複数のモニタリング導波路26D、26Eのそれぞれは、出力導波路25に接続されている。モニタリング導波路26Dを複数有し、第6実施形態と同様に、それぞれのモニタリング導波路26Dが入力導波路21、22、23、21Aのそれぞれに個別に接続されるようにしてもよい。モニタリング導波路26Dには、入力導波路21、22、23、21Aと出力導波路25とのうち少なくとも一方を伝搬する光の少なくとも一部が伝搬する。モニタリング導波路26Eには、出力導波路25を伝搬する光の少なくとも一部が伝搬する。
【0139】
第1モニタリング導波路26Dと出力導波路25との接続部において、第1モニタリング導波路26Dが+x方向に対してなす角は、例えば、90°より小さい。第2モニタリング導波路26Eと出力導波路25との接続部において、第2モニタリング導波路26Eが+x方向に対してなす角は、例えば、90°より大きい。+x方向は、例えば、出力導波路25において、レーザーダイオード11、12、13、14から出力された光が出力導波路25の出力端に向かう方向である。
【0140】
第1モニタリング導波路26Dと、第2モニタリング導波路26Eのそれぞれには、モニタリング光が伝搬する。第1モニタリング導波路26Dには、レーザーダイオード11、12、13、14から出力され、入力導波路21、22、23、21Aと出力導波路25とのうち少なくとも一方を、レーザーダイオード11、12、13、14から入力導波路21、22、23、21Aまたは出力導波路25へ向かう方向に伝搬する光の少なくとも一部が伝搬する。第2モニタリング導波路26Eには、出力導波路25から外部に出力され、被照射体で反射された光の少なくとも一部が伝搬する。以下、モニタリング光のうち、レーザーダイオード11、12、13、14から出力され、入力導波路21、22、23、21Aと出力導波路25とのうち少なくとも一方を、レーザーダイオード11、12、13、14から入力導波路21、22、23、21Aまたは出力導波路25へ向かう方向に伝搬する光の少なくとも一部を第1モニタリング光と称し、出力導波路25から外部に出力され、被照射体で反射された光の少なくとも一部を第2モニタリング光と称する場合がある。
【0141】
複数の磁性素子30のそれぞれは、上述の磁性素子30である。磁性素子30の内の一つを第1磁性素子30Aと称し、別の一つを第2磁性素子30Bと称する。第1磁性素子30Aは、第1モニタリング光が照射される位置にある。第1磁性素子30Aは、第1モニタリング導波路26Dの出力端の先にある。第2磁性素子30Bは、第2モニタリング光が照射される位置にある。第2磁性素子30Bは、第2モニタリング導波路26Eの出力端の先にある。第1磁性素子30Aには第1モニタリング光が照射され、第2磁性素子30Bには第2モニタリング光が照射される。
【0142】
第10実施形態にかかる光デバイス109は、第1実施形態光デバイス100と同様の効果を奏する。また光デバイス109は、第2磁性素子30Bを用いて被照射体からの反射光の強度を測定することで、被照射体の状態変化を測定できる。
【0143】
図26は、光デバイス109を用いた光システム200の概念図である。光システム200は、例えば、メガネ1000に実装できる。
【0144】
光システム200は、光デバイス109と光学系210とドライバ220、221とコントローラー230とを有する。光学系210は、例えば、コリメータレンズ211、スリット212、NDフィルター213、光走査ミラー214を有する。光学系210は、光デバイス109から出力された光を被照射体(この例では目)まで導光する。光走査ミラー214は、例えば、レーザー光の反射方向を水平方向及び垂直方向に変える2軸MEMSミラーである。光学系210は、一例であり、この例に限られない。ドライバ220は、レーザーダイオード11、12、13、14それぞれの出力を制御する。ドライバ221は、光走査ミラー214を動かす制御系である。コントローラー230は、ドライバ220、221を制御する。
【0145】
光デバイス109のレーザーダイオード11、12、13、14から出力された光LGは、光学系210を伝搬し、メガネ1000のレンズで反射し、目に入射する。ここでは、光をメガネ1000のレンズで反射する例を示したが、直接、目に照射してもよい。
【0146】
レーザーダイオード11、12、13のそれぞれから出射した赤色、緑色、青色の光LGは、画像を表示する。画像は、レーザーダイオード11、12、13のそれぞれの出力強度を調整することで自由に制御できる。レーザーダイオード11、12、13のそれぞれの出力強度は、レーザーダイオード11、12、13のそれぞれから出力される可視光線が照射される第1磁性素子30Aからの出力の測定結果に基づいて調整することができる。またレーザーダイオード11、12、13の出力を一定に保ち、光変調素子を用いて合波路24Aに至るそれぞれの光の強度を調整してもよい。
【0147】
図27は、変形例にかかる光デバイスのz方向からの平面図である。光デバイス109Aは、入力導波路21、22、23のそれぞれが光変調素子90を有する。
【0148】
図28は、光変調素子90の平面図である。
図28には、電源91、92及び終端抵抗Rを合わせて図示している。光変調素子90は、導波路70と電極81、82、83、84とを備える。
図28に示す光変調素子90は、光変調素子の一例であり、この例に限られるものではない。
【0149】
導波路73から入力された入力光は、分岐部75で第1導波路71と第2導波路772に分岐して伝搬する。第1導波路71を伝搬する光と第2導波路72を伝搬する光との位相差は、分岐した時点ではゼロである。
【0150】
電極81と電極82との間に電圧を印加すると、第1導波路71及び第2導波路72に電界が印加され、電気光学効果により第1導波路71及び第2導波路72の屈折率は変化する。第1導波路71と第2導波路72との屈折率が異なると、第1導波路71を伝搬する光と第2導波路72を伝搬する光との間に位相差が生じる。第1導波路71及び第2導波路72を伝搬した光は、結合部76で合流し、導波路74から出力される。
【0151】
出力光は、第1導波路71を伝搬する光と第2導波路72を伝搬する光とを重ね合わせたものである。出力光の強度は、第1導波路71を伝搬する光と第2導波路72を伝搬する光の位相差に応じて変化する。例えば、位相差がπの偶数倍の場合は光が強め合い、πの奇数倍の場合は光が弱め合う。このように、光変調素子90を用いることで、レーザーダイオード11、12、13の出力を一定に保ったまま、合波路24に至るそれぞれの光の強度を調整することもできる。光変調素子90を用いて光の強度を調整する構成は、レーザーダイオード11、12、13の出力をダイレクトに調整する構成より消費電力を抑えることができる。入力導波路21、22、23に光変調素子90を適用する構成は、第1実施形態から第9実施形態に係る光デバイスにも適用可能である。
【0152】
光変調素子90において、導波路70は、導波路74に接続されたモニタリング導波路と、モニタリング導波路の出力端の先に磁性素子とをさらに備えてもよい。この磁性素子は、上述の磁性素子30と同様である。磁性素子30を用いることで、導波路74を伝搬する光の強度をモニターすることができる。
【0153】
光デバイス109のレーザーダイオード14から出射した近赤外線は、目の瞳孔で反射する。目の瞳孔で反射した反射光LRは、光LGと同じ光軸を通過して、光デバイス109に至る。光デバイス109において、近赤外線である反射光LRの少なくとも一部は、出力導波路25の出力端から第2モニタリング導波路26Eを伝搬し、第2磁性素子30Bに照射される。第2磁性素子30Bは、反射光LRの強度を測定する。光システム200は、光走査ミラー214で調整された近赤外線の照射位置と反射光LRの強度から視線の場所(注視点)の動きを特定できる。反射光LRは、目の瞳孔で反射した光に限られず、目の角膜で反射した光、または目の強膜で反射した光でもよい。
【0154】
ここでは、光システムの一例として、画像表示とアイトラッキングの両方を行うことができるシステムを例示したが、この例に限られない。
【0155】
例えば、上記の光システムからアイトラッキング用のレーザーダイオード14を除いてもよい。この場合、光システムは、画像表示用のシステムとなる。この場合、光デバイス109に代えて、第1実施形態から第9実施形態に係る光デバイス100~108を用いることができる。
【0156】
また例えば、上記の光システムから画像表示用のレーザーダイオード11、12、13を除いてもよい。この場合、光システムは、アイトラッキング専用のシステムとなる。
図29は、アイトラッキング専用のシステムに用いることができる光デバイス110の一例を示す平面図である。光デバイス110は、レーザーダイオード14と光導波路20Eと磁性素子30とを有する。光導波路20Eは、入力導波路21Aと出力導波路25と第2モニタリング導波路26Eを有する。出力導波路25を伝搬する光の少なくとも一部は、第2モニタリング導波路26Eを介して磁性素子30に照射される。出力導波路25から外部に出力され、被照射体で反射された光の少なくとも一部が第2モニタリング導波路26Eを介して磁性素子30に照射される。
【0157】
以上、本発明は上記の実施形態及び変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、上記の実施形態及び変形例の特徴的な構成をそれぞれ組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0158】
11,12,13,14…レーザーダイオード
20,20A,20B,20C,20D,20E…導波路
21,22,23,21A…入力導波路
24…合波路
25,25A,25B,25C…出力導波路
26,26A,26B,26C,26D,26E…モニタリング導波路
27,27A…基板
30…磁性素子
30A…第1磁性素子
30B…第2磁性素子
50…リフレクタ
60…支持体
100,101,102,103,104,105,106,107,108,109、10…光デバイス
200…光システム
L…モニタリング光