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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155469
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】光デバイス及び光システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 43/08 20060101AFI20221005BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20221005BHJP
   G02F 1/035 20060101ALN20221005BHJP
【FI】
H01L43/08 U
G02B6/12 301
H01L43/08 Z
G02F1/035
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206036
(22)【出願日】2021-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2021056795
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100169694
【弁理士】
【氏名又は名称】荻野 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】柴田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】福澤 英明
(72)【発明者】
【氏名】菊川 隆
(72)【発明者】
【氏名】水野 友人
【テーマコード(参考)】
2H147
2K102
5F092
【Fターム(参考)】
2H147AB02
2H147AB06
2H147AB16
2H147AB17
2H147AC01
2H147BA05
2H147BA15
2H147BD03
2H147BG01
2H147CA13
2H147CB03
2H147CB05
2H147EA05A
2H147EA10D
2H147EA12A
2H147EA13A
2H147EA13C
2H147EA14B
2H147EA15B
2H147EA15C
2K102AA21
2K102BA01
2K102BB01
2K102BB04
2K102BC04
2K102BD08
2K102CA00
2K102DA04
2K102DB04
2K102DD05
2K102EA02
2K102EB22
5F092AA20
5F092AB10
5F092AC08
5F092AC12
5F092AD23
5F092BB08
5F092BB10
5F092BB22
5F092BB23
5F092BB26
5F092BB31
5F092BB34
5F092BB35
5F092BB36
5F092BB37
5F092BB42
5F092BB43
5F092BB53
5F092BC04
5F092BC07
(57)【要約】
【課題】新規な光デバイスを提供する。
【解決手段】この光デバイスは、第1強磁性層と、第2強磁性層と、前記第1強磁性層と前記第2強磁性層とに挟まれたスペーサ層と、を有する少なくとも一つの磁性素子と、基板と、導波路と、を備え、前記導波路及び前記磁性素子は、前記基板の上又は上方にあり、前記導波路を伝搬する光の少なくとも一部は、前記磁性素子に照射される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1強磁性層と、第2強磁性層と、前記第1強磁性層と前記第2強磁性層とに挟まれたスペーサ層と、を有する少なくとも一つの磁性素子と、
基板と、
導波路と、を備え、
前記導波路及び前記磁性素子は、前記基板の上又は上方にあり、
前記導波路を伝搬する光の少なくとも一部は、前記磁性素子に照射される、光デバイス。
【請求項2】
電極をさらに備え、
前記電極から前記導波路の少なくとも一部に、前記磁性素子からの電気信号に基づいた電界を印加可能である、請求項1に記載の光デバイス。
【請求項3】
リフレクタをさらに備え、
前記リフレクタは、前記光の少なくとも一部を前記磁性素子に向かって反射する、請求項1又は2に記載の光デバイス。
【請求項4】
前記光の少なくとも一部は、前記磁性素子の積層方向と交差する方向から前記磁性素子に照射される、請求項1~3のいずれか一項に記載の光デバイス。
【請求項5】
前記光の少なくとも一部は、前記磁性素子の積層方向から前記磁性素子に照射される、請求項1~3のいずれか一項に記載の光デバイス。
【請求項6】
前記導波路は、モニタリング導波路をさらに備え、
前記光の少なくとも一部は、前記モニタリング導波路を伝搬する、請求項1~5のいずれか一項に記載の光デバイス。
【請求項7】
レーザーダイオードと光変調素子とをさらに備え、
前記レーザーダイオードは、前記導波路と光学的に接続され、
前記光変調素子は、前記レーザーダイオードと前記導波路との間にあり、前記導波路に至る光の強度を変調する、請求項1~6のいずれか一項に記載の光デバイス。
【請求項8】
前記少なくとも一つの磁性素子は、複数の磁性素子であり、
前記複数の磁性素子のうち第1磁性素子には、前記導波路を前記レーザーダイオードから前記導波路へ向かう方向に伝搬する光の少なくとも一部が照射され、
前記複数の磁性素子のうち第2磁性素子には、前記導波路から出力され、被照射体で反射された光の少なくとも一部が照射される、請求項7に記載の光デバイス。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の光デバイスと、前記光デバイスから出力された光を被照射体まで導光する光学系と、を備える、光システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイス及び光システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、導波路を用いた光デバイスに注目が集まっている。例えば、平面光波回路(Planar Lightwave Circuit:PLC)は光デバイスの一例であり、拡張現実(AR)グラスや小型プロジェクタに用いられている。また例えば、光変調器は光デバイスの一例であり、光通信に用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、光デバイスの一例である波長分割多重回路が記載されている。特許文献1に記載の波長分割多重回路は、半導体フォトダイオード(PD)を可変波長光源の波長モニタとして用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-223738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
別部材として作製された半導体フォトダイオードは、光デバイスの導波路に対して光軸の調整が必要である。また、別部材として作製された半導体フォトダイオードは、サイズが大きい。光デバイスの更なる発展のためには、新たなブレイクスルーが求められている。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、新規な光デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0008】
(1)第1の態様にかかる光デバイスは、第1強磁性層と、第2強磁性層と、前記第1強磁性層と前記第2強磁性層とに挟まれたスペーサ層と、を有する少なくとも一つの磁性素子と、基板と、導波路と、を備え、前記導波路及び前記磁性素子は、前記基板の上又は上方にあり、前記導波路を伝搬する光の少なくとも一部は、前記磁性素子に照射される。
【0009】
(2)上記態様にかかる光デバイスは、電極をさらに備え、前記電極から前記導波路の少なくとも一部に、前記磁性素子からの電気信号に基づいた電界を印加可能であってもよい。
【0010】
(3)上記態様にかかる光デバイスは、リフレクタをさらに備え、前記リフレクタは、前記光の少なくとも一部を前記磁性素子に向かって反射してもよい。
【0011】
(4)上記態様にかかる光デバイスにおいて、前記光の少なくとも一部は、前記磁性素子の積層方向と交差する方向から前記磁性素子に照射される構成でもよい。
【0012】
(5)上記態様にかかる光デバイスにおいて、前記光の少なくとも一部は、前記磁性素子の積層方向から前記磁性素子に照射される構成でもよい。
【0013】
(6)上記態様にかかる光デバイスにおいて、前記導波路は、モニタリング導波路をさらに備え、前記光の少なくとも一部は前記モニタリング導波路を伝搬してもよい。
【0014】
(7)上記態様にかかる光デバイスは、レーザーダイオードと光変調素子とをさらに備えてもよい。前記レーザーダイオードは、前記導波路と光学的に接続され、前記光変調素子は、前記レーザーダイオードと前記導波路との間にあり、前記導波路に至る光の強度を変調する。
【0015】
(8)上記態様にかかる光デバイスにおいて、前記少なくとも一つの磁性素子は、複数の磁性素子であり、前記複数の磁性素子のうち第1磁性素子には、前記導波路を前記レーザーダイオードから前記導波路へ向かう方向に伝搬する光の少なくとも一部が照射され、前記複数の磁性素子のうち第2磁性素子には、前記導波路から出力され、被照射体で反射された光の少なくとも一部が照射されてもよい。
【0016】
(9)第2の態様にかかる光システムは、上記態様にかかる光デバイスと、前記光デバイスから出力された光を被照射体まで導光する光学系と、を備える。
【発明の効果】
【0017】
上記態様にかかる光デバイス及び光システムは、新規な原理で光をモニタリングできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係る光デバイスのブロック図である。
図2】第1実施形態に係る光変調素子の平面図である。
図3】第1実施形態に係る光変調素子の断面図である。
図4】第1実施形態に係る光変調素子の磁性素子近傍の斜視図である。
図5】第1実施形態に係る光変調素子の磁性素子近傍の断面図である。
図6】第1実施形態に係る光変調素子のモニタリング回路の一例である。
図7】第1実施形態に係る光変調素子のモニタリング回路の別の例である。
図8】第1実施形態に係る磁性素子の断面図である。
図9】第1実施形態に係る磁性素子の第1メカニズムを説明するための図である。
図10】第1実施形態に係る磁性素子の第2メカニズムを説明するための図である。
図11】第2実施形態に係る光変調素子の磁性素子近傍の斜視図である。
図12】第2実施形態に係る光変調素子の磁性素子近傍の断面図である。
図13】第2実施形態に係る光変調素子の磁性素子近傍の別の断面図である。
図14】第3実施形態に係る光変調素子の平面図である。
図15】第3実施形態に係る光変調素子の磁性素子近傍の第1例の斜視図である。
図16】第3実施形態に係る光変調素子の磁性素子近傍の第2例の斜視図である。
図17】第1変形例に係る光変調素子の磁性素子近傍の断面図である。
図18】第2変形例に係る光変調素子の磁性素子近傍の断面図である。
図19】第3変形例に係る光変調素子の平面図である。
図20】第3変形例に係る光変調素子の断面図である。
図21】第4変形例に係る光変調素子の断面図である。
図22】第5変形例に係る光変調素子の平面図である。
図23】第5変形例に係る光変調素子の断面図である。
図24】第6変形例に係る光デバイスの平面図である。
図25】第6変形例に係る光変調素子の断面図である。
図26】第7変形例に係る光変調素子の平面図である。
図27】第7変形例に係る光変調素子の磁性素子近傍の断面図である。
図28】第7変形例の別の例に係る光変調素子の磁性素子近傍の断面図である。
図29】第7変形例の別の例に係る光変調素子の磁性素子近傍の断面図である。
図30】第7変形例の別の例に係る光変調素子の磁性素子近傍の斜視図である。
図31】第8変形例に係る光デバイスの平面図である。
図32】光デバイスを用いた光システムの概念図である。
図33】第9変形例に係る光システムの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0020】
方向について定義する。基板10(図3参照)が広がる面内の一方向をx方向、x方向と直交する面内の方向をy方向とする。基板10と直交する方向(x方向及びy方向と直交する方向)をz方向とする。以下、+z方向を「上」、-z方向を「下」と表現する場合がある。上下は、必ずしも重力が加わる方向とは一致しない。
【0021】
「第1実施形態」
図1は、第1実施形態に係る光デバイス200のブロック図である。光デバイス200は、光変調素子100と制御部150とを備える。制御部150は、例えば、駆動回路160と直流バイアス印加回路170と制御回路180とを有する。光デバイス200は、例えば、光変調器である。
【0022】
図1に示す光変調素子100は、電気信号を光信号に変換する。光変調素子100は、入力された入力光Linを変調信号Smに応じて出力光Loutに変換する。本明細書における光とは、可視光線に限らず、可視光線よりも波長の長い赤外線や、可視光線よりも波長の短い紫外線も含む。可視光線の波長は例えば、380nm以上800nm未満である。赤外線の波長は例えば、800nm以上1mm以下である。紫外線の波長は例えば、200nm以上380nm未満である。
【0023】
駆動回路160は、変調信号Smに応じた変調電圧Vmを光変調素子100の電極(後述する電極41および電極42)に印加する。直流バイアス印加回路170は、直流バイアス電圧Vdcを光変調素子100の電極(後述する電極43および電極44)に印加する。制御回路180は、光変調素子100が有する磁性素子30からの電気信号Sfを受信し、電気信号Sfに基づいた信号を直流バイアス印加回路170に送る。
【0024】
図2は、第1実施形態に係る光変調素子100の平面図である。図3は、第1実施形態に係る光変調素子100の断面図であり、図2におけるA-A’に沿って切断した断面である。図2には、電源161、171及び終端抵抗Rを合わせて図示している。
【0025】
光変調素子100は、基板10と導波路20と磁性素子30と電極41、42、43、44とを備える。
【0026】
電極41の第1端41a及び電極42の第1端42aは、例えば、電源161に接続されている。電極41の第2端41b及び電極42の第2端42bは、例えば、終端抵抗Rに接続されている。電源161は、駆動回路160の一部である。
【0027】
電極43の第1端43a及び電極44の第1端44aは、例えば、電源171に接続されている。電源171は、直流バイアス印加回路170の一部である。
【0028】
基板10は、例えば、酸化アルミニウムを含む。基板10は、例えば、サファイアである。基板10は、シリコン等の半導体基板でもよい。
【0029】
導波路20は、基板10上に形成されている。導波路20は、例えば、第1導波路21と第2導波路22と入力導波路23と出力導波路24と分岐部25と結合部26とモニタリング導波路27とを有する。
【0030】
入力導波路23は、入力光Linが入力される入力端を有し、分岐部25に繋がる。分岐部25は、入力導波路23と第1導波路21及び第2導波路22との間にある。
【0031】
第1導波路21及び第2導波路22は、例えば、x方向に延びる。第1導波路21と第2導波路22のx方向の長さは、例えば、略同一である。
【0032】
結合部26は、第1導波路21及び第2導波路22と出力導波路24との間にある。出力導波路24は、結合部26に繋がり、出力光Loutが出力される出力端を有する。
【0033】
モニタリング導波路27は、例えば、出力導波路24に接続されている。モニタリング導波路27には、出力導波路24を伝搬する光の少なくとも一部が伝搬する。以下、導波路20を伝搬する光の少なくとも一部をモニタリング光と称する場合がある。モニタリング導波路27は、光の状態をモニタリングしたい部分に合わせて、導波路20の出力導波路24以外の部分に接続されていてもよい。
【0034】
図3に示すように、第1導波路21及び第2導波路22は、スラブ20Sの一部とリッジ形状部20Tによって構成されている。スラブ20Sは、基板10上に広がる。リッジ形状部20Tは、スラブ20Sの上面から突出する。スラブ20Sは、導波路20に印加する電界強度を高める。
【0035】
スラブ20S及びリッジ形状部20Tは、主成分としてニオブ酸リチウムを含む。したがって、導波路20は、主成分としてニオブ酸リチウムを含む。ニオブ酸リチウムの一部元素は、他の元素に置換されていてもよい。導波路20は、例えば、クラッド28で被覆されている。クラッド28は、例えば、SiO、Al、MgF、La、ZnO、HfO、MgO、Y、CaF、In等又はこれらの混合物である。スラブ20S及びリッジ形状部20Tの材料およびクラッド28の材料はこの例に限られない。例えば、スラブ20S及びリッジ形状部20Tがシリコン又は酸化シリコンに酸化ゲルマニウムを添加したもので、クラッド28が酸化シリコンでもよい。入力導波路23、出力導波路24、分岐部25、結合部26、モニタリング導波路27も第1導波路21及び第2導波路22と同様の構成からなる。
【0036】
磁性素子30は、モニタリング光が照射される位置にある。磁性素子30は、例えば、モニタリング導波路27の出力端の先(モニタリング導波路27の延在方向)にある。磁性素子30は、第1磁性素子の一例である。
【0037】
図4は、第1実施形態に係る光変調素子100の磁性素子30の近傍の斜視図である。図5は、第1実施形態に係る光変調素子100の磁性素子30の近傍の断面図である。
【0038】
導波路20内を伝搬する光の少なくとも一部(モニタリング光)は、例えば、磁性素子30に対して磁性素子30の積層方向と交差する方向から照射される。モニタリング光は、例えば、磁性素子30の側面に照射される。磁性素子30は、導波路20が形成された基板10と同一の基板10上に形成されている。すなわち、磁性素子30と導波路20とは、一つの物品の中に組み込まれている。導波路20及び磁性素子30は、基板10の上又は基板10の上方にある。
【0039】
磁性素子30は、例えば、電極51、52と、ビア配線53、54と、入力端子55と、出力端子56と、電気的に接続されている。
【0040】
電極51は、磁性素子30の第1面に接続されている。電極52は、磁性素子30の第2面に接続されている。第1面と第2面とは、磁性素子30の積層方向において互いに対向する。
【0041】
電極51、52は、導電性を有する材料を含む。電極51、52は、例えば、Cu、Al、AuまたはRuなどの金属により構成される。これらの金属の上下にTaやTiを積層してもよい。また電極51、52として、CuとTaの積層膜、TaとCuとTiの積層膜、TaとCuとTaNの積層膜を用いてもよい。また電極51、52として、TiNやTaNを用いてもよい。
【0042】
電極51、52は、磁性素子30に照射される光の波長域に対して透過性を有してもよい。例えば、電極51、52は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)等の酸化物の透明電極材料を含む透明電極でもよい。また電極51、52は、こられの透明電極材料の中に複数の柱状金属を有する構成としてもよい。
【0043】
ビア配線53は、入力端子55と電極51又は電極52とを繋ぐ。入力端子55は、例えば2つある。入力端子55の一方には電流又は電圧が入力され、入力端子55の他方は基準電位に接続されている。入力端子55は、例えば、クラッド28の上面に露出している。ビア配線54は、出力端子56と電極51又は電極52とを繋ぐ。出力端子56は、例えば2つある。出力端子56の一方からは信号が出力され、出力端子56の他方は基準電位に接続されている。出力端子56は、例えば、クラッド28の上面に露出している。ビア配線53、54、入力端子55及び出力端子56は、導電性を有する材料を含む。ビア配線53、54、入力端子55及び出力端子56の材料としては、電極51、52の例として挙げたものと同じものを用いることができる。
【0044】
図6及び図7は、第1実施形態に係る光変調素子100の磁性素子30を用いた光のモニタリング回路の一例である。図6及び図7において、電極51は、例えば、入力端子Pin及び出力端子Poutに接続されている。図6及び図7において、電極52は、例えば、基準電位端子Pに接続されている。入力端子Pinは、図4及び図5における入力端子55の一方に対応する。出力端子Poutは、図4及び図5における出力端子56の一方に対応する。基準電位端子Pは、図4及び図5における入力端子55の他方及び出力端子56の他方に対応する。図6及び図7における基準電位は、グラウンドGである。グラウンドGは光変調素子100の外部に設けられてもよい。基準電位は、グラウンドG以外でもよい。
【0045】
磁性素子30は、照射される光(モニタリング光L)の状態の変化を電気信号に置き換える。磁性素子30からの出力電圧又は出力電流は、照射される光(モニタリング光L)の強度によって変化する。
【0046】
入力端子Pinは、電流源PS1又は電圧源PS2に接続されている。電流源PS1及び電圧源PS2は、例えば、光変調素子100の外部にある。入力端子Pinが電流源PS1に接続されている場合、出力端子Poutは、磁性素子30の積層方向の抵抗値を電圧として出力する。入力端子Pinが電圧源PS2に接続されている場合、出力端子Poutは、磁性素子30の積層方向の抵抗値を電流として出力する。磁性素子30に外部から電流または電圧を印加する必要が無い場合は、入力端子Pinおよび電流源PS1または電圧源PS2は無くてもよい。
【0047】
図8は、第1実施形態に係る磁性素子30の断面図である。図8では、電極51、52を同時に図示し、強磁性体の初期状態における磁化の向きを矢印で表している。
【0048】
磁性素子30は、少なくとも第1強磁性層31と第2強磁性層32とスペーサ層33とを有する。スペーサ層33は、第1強磁性層31と第2強磁性層32との間に位置する。磁性素子30は、これらの他に、第3強磁性層34、磁気結合層35、下地層36、垂直磁化誘起層37、キャップ層38、側壁絶縁層39等を有してもよい。磁性素子30は、積層方向からの平面視における最長幅が、例えば2000nm以下である。磁性素子30は、積層方向からの平面視における最長幅が、例えば10nm以上である。
【0049】
磁性素子30は、例えば、スペーサ層33が絶縁材料で構成されたMTJ(Magnetic Tunnel Junction)素子である。この場合、磁性素子30は、第1強磁性層31の磁化M31の状態と第2強磁性層32の磁化M32の状態との相対的な変化に応じて、積層方向の抵抗値(積層方向に電流を流した場合の抵抗値)が変化する。このような素子は磁気抵抗効果素子とも呼ばれる。
【0050】
第1強磁性層31は、外部から光が照射されると磁化の状態が変化する光検知層である。第1強磁性層31は、磁化自由層とも呼ばれる。磁化自由層は、所定の外部からのエネルギーが印加された際に磁化の状態が変化する磁性体を含む層である。所定の外部からのエネルギーは、例えば、外部から照射される光(モニタリング光L)、磁性素子30の積層方向に流れる電流、外部磁場である。第1強磁性層31の磁化M31は、第1強磁性層31に照射される光(モニタリング光L)の強度に応じて、状態が変化する。
【0051】
第1強磁性層31は、強磁性体を含む。第1強磁性層31は、例えば、Co、FeまたはNi等の磁性元素のいずれかを少なくとも含む。第1強磁性層31は、上述のような磁性元素と共に、B、Mg、Hf、Gd等の非磁性元素を含んでもよい。第1強磁性層31は、例えば、磁性元素と非磁性元素とを含む合金でもよい。第1強磁性層31は、複数の層から構成されていてもよい。第1強磁性層31は、例えば、CoFeB合金、CoFeB合金層をFe層で挟んだ積層体、CoFeB合金層をCoFe層で挟んだ積層体である。
【0052】
第1強磁性層31は、膜面内方向に磁化容易軸を有する面内磁化膜でも、膜面直方向(磁性素子30の積層方向)に磁化容易軸を有する垂直磁化膜でもよい。
【0053】
第1強磁性層31の膜厚は、例えば、1nm以上5nm以下である。第1強磁性層31の膜厚は、例えば、1nm以上2nm以下であることが好ましい。第1強磁性層31が垂直磁化膜の場合、第1強磁性層31の膜厚が薄いと、第1強磁性層31の上下にある層からの垂直磁気異方性印加効果が強まり、第1強磁性層31の垂直磁気異方性が高まる。つまり、第1強磁性層31の垂直磁気異方性が高いと、磁化M31が膜面直方向に(元の状態に)戻ろうとする力が強まる。一方、第1強磁性層31の膜厚が厚いと、第1強磁性層31の上下にある層からの垂直磁気異方性印加効果が相対的に弱まり、第1強磁性層31の垂直磁気異方性が弱まる。
【0054】
第1強磁性層31の膜厚が薄くなると強磁性体としての体積は小さくなり、厚くなると強磁性体としての体積は大きくなる。外部からのエネルギーが加わったときの第1強磁性層31の磁化M31の反応しやすさは、第1強磁性層31の磁気異方性(Ku)と体積(V)との積(KuV)に反比例する。つまり、第1強磁性層31の磁気異方性と体積との積が小さくなると、光に対する反応性が高まる。このような観点から、光に対する反応を高めるためには、第1強磁性層31の磁気異方性を適切に設計したうえで第1強磁性層31の体積を小さくすることが好ましい。
【0055】
第1強磁性層31の膜厚が2nmより厚い場合は、例えばMo,Wからなる挿入層を第1強磁性層31内に設けてもよい。すなわち、強磁性層、挿入層、強磁性層が順に積層された積層体を第1強磁性層31としてもよい。挿入層と強磁性層との界面における界面磁気異方性により第1強磁性層31全体の垂直磁気異方性が高まる。挿入層の膜厚は、例えば、0.1nm~0.6nmである。
【0056】
第2強磁性層32は、磁化固定層である。磁化固定層は、所定の外部からのエネルギーが印加された際に磁化の状態が磁化自由層よりも変化しにくい磁性体からなる層である。例えば、磁化固定層は、所定の外部からのエネルギーが印加された際に磁化の向きが磁化自由層よりも変化しにくい。また、例えば、磁化固定層は、所定の外部からのエネルギーが印加された際に磁化の大きさが磁化自由層よりも変化しにくい。第2強磁性層32の保磁力は、例えば、第1強磁性層31の保磁力よりも大きい。第2強磁性層32は、例えば第1強磁性層31と同じ方向に磁化容易軸を有する。第2強磁性層32は、面内磁化膜でも、垂直磁化膜でもよい。
【0057】
第2強磁性層32を構成する材料は、例えば、第1強磁性層31と同様である。第2強磁性層32は、例えば、0.4nm~1.0nmの厚みのCo、0.1nm~0.5nmの厚みのMo、0.3nm~1.0nmの厚みのCoFeB合金、0.3nm~1.0nmの厚みのFeが順に積層された積層体でもよい。
【0058】
第2強磁性層32の磁化M32は、例えば、磁気結合層35を介した第3強磁性層34との磁気結合によって固定してもよい。この場合、第2強磁性層32、磁気結合層35及び第3強磁性層34を合わせたものを磁化固定層と称する場合もある。
【0059】
第3強磁性層34は、例えば、第2強磁性層32と磁気結合する。磁気結合は、例えば、反強磁性的な結合であり、RKKY相互作用により生じる。第3強磁性層34を構成する材料は、例えば、第1強磁性層31と同様である。磁気結合層35は、例えば、Ru、Ir等である。
【0060】
スペーサ層33は、第1強磁性層31と第2強磁性層32との間に配置される非磁性層である。スペーサ層33は、導電体、絶縁体もしくは半導体によって構成される層、又は、絶縁体中に導体によって構成される通電点を含む層で構成される。スペーサ層33の膜厚は、後述する初期状態における第1強磁性層31の磁化M31と第2強磁性層32の磁化M32の配向方向に応じて調整できる。
【0061】
例えば、スペーサ層33が絶縁体からなる場合は、磁性素子30は、第1強磁性層31とスペーサ層33と第2強磁性層32とからなる磁気トンネル接合(MTJ:Magnetic Tunnel Junction)を有する。このような素子はMTJ素子と呼ばれる。この場合、磁性素子30はトンネル磁気抵抗(TMR:Tunnel Magnetoresistance)効果を発現することができる。スペーサ層33が金属からなる場合は、磁性素子30は、巨大磁気抵抗(GMR:Giant Magnetoresistance)効果を発現することができる。このような素子はGMR素子と呼ばれる。磁性素子30は、スペーサ層3の構成材料によって、MTJ素子、GMR素子などと呼び名が異なることがあるが、総称して磁気抵抗効果素子とも呼ばれる。
【0062】
スペーサ層33が絶縁材料で構成される場合、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン又は酸化ケイ素等を含む材料を用いることができる。また、これら絶縁材料に、Al、B、Si、Mgなどの元素や、Co、Fe、Niなどの磁性元素を含んでもよい。第1強磁性層31と第2強磁性層32との間に高いTMR効果が発現するようにスペーサ層33の膜厚を調整することで、高い磁気抵抗変化率が得られる。TMR効果を効率よく利用するためには、スペーサ層33の膜厚は、0.5~5.0nm程度としてもよく、1.0~2.5nm程度としてもよい。
【0063】
スペーサ層33を非磁性導電材料で構成する場合、Cu、Ag、Au又はRu等の導電材料を用いることができる。GMR効果を効率よく利用するためには、スペーサ層33の膜厚は、0.5~5.0nm程度としてもよく、2.0~3.0nm程度としてもよい。
【0064】
スペーサ層33を非磁性半導体材料で構成する場合、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫、酸化ゲルマニウム、酸化ガリウム又はITO等の材料を用いることができる。この場合、スペーサ層33の膜厚は1.0~4.0nm程度としてもよい。
【0065】
スペーサ層33として非磁性絶縁体中の導体によって構成される通電点を含む層を適用する場合、酸化アルミニウムまたは酸化マグネシウムによって構成される非磁性絶縁体中に、Cu、Au、Alなどの非磁性の導体によって構成される通電点を含む構造としてもよい。また、Co、Fe、Niなどの磁性元素によって導体を構成してもよい。この場合、スペーサ層33の膜厚は、1.0~2.5nm程度としてもよい。通電点は、例えば、膜面に垂直な方向からみたときの直径が1nm以上5nm以下の柱状体である。
【0066】
下地層36は、第2強磁性層32と電極52との間にある。下地層36は、シード層又はバッファ層である。シード層は、シード層上に積層される層の結晶性を高める。シード層は、例えば、Pt、Ru、Hf、Zr、NiFeCrである。シード層の膜厚は、例えば1nm以上5nm以下である。バッファ層は、異なる結晶間の格子不整合を緩和する層である。バッファ層は、例えば、Ta、Ti、W、Zr、Hf又はこれらの元素の窒化物である。バッファ層の膜厚は、例えば、1nm以上5nm以下である。
【0067】
キャップ層38は、第1強磁性層31と電極51との間にある。キャップ層38は、プロセス過程で下層へのダメージを防ぐと共に、アニール時に下層の結晶性を高める。キャップ層38の膜厚は、第1強磁性層31に十分な光が照射されるように、例えば3nm以下である。キャップ層38は、例えば、MgO、W、Mo、Ru、Ta、Cu、Crまたはこれらの積層膜などである。
【0068】
垂直磁化誘起層37は、第1強磁性層31が垂直磁化膜の場合に形成される。垂直磁化誘起層37は、第1強磁性層31上に積層される。垂直磁化誘起層37は、第1強磁性層31の垂直磁気異方性を誘起する。垂直磁化誘起層37は、例えば酸化マグネシウム、W、Ta、Mo等である。垂直磁化誘起層37が酸化マグネシウムの場合は、導電性を高めるために、酸化マグネシウムが酸素欠損していることが好ましい。垂直磁化誘起層37の膜厚は、例えば、0.5nm以上2.0nm以下である。
【0069】
側壁絶縁層39は、第1強磁性層31及び第2強磁性層32を含む積層体の周囲を覆う。側壁絶縁層39は、例えば、Si、Al、Mgの酸化物、窒化物、酸窒化物である。
【0070】
磁性素子30は、各層の積層工程、アニール工程、加工工程によって作製される。まず基板10上(クラッド28の一部の上)に、電極52、下地層36、第3強磁性層34、磁気結合層35、第2強磁性層32、スペーサ層33、第1強磁性層31、垂直磁化誘起層37、キャップ層38の順に積層する。基板10は、導波路20が形成されている基板と同一である。各層は、例えば、スパッタリングにより成膜される。
【0071】
次いで、積層膜をアニールする。アニール温度は、例えば、250℃から450℃である。その後、積層膜をフォトリソグラフィ及びエッチングにより所定の柱状体に加工する。柱状体は、円柱でも角柱でもよい。例えば、柱状体を積層方向から見た際の最短幅は、10nm以上2000nm以下としてもよく、30nm以上500nm以下としてもよい。
【0072】
次いで、柱状体の側面を被覆するように、絶縁層を形成する。絶縁層は、側壁絶縁層39となる。側壁絶縁層39は、複数回に亘って積層してもよい。次いで、化学機械研磨(CMP)により側壁絶縁層39からキャップ層38の上面を露出し、キャップ層38上に、電極51を作製する。上記工程により、磁性素子30が得られる。磁性素子30は、下地を構成する材料によらず作製できる。そのため、磁性素子30は、接着層等を介さずに、導波路20が形成された基板10上に直接作製できる。磁性素子30は、導波路20と共に同じ基板10上のプロセスにより形成することができる。例えば、導波路20及び磁性素子30は、同一の基板10上に、真空成膜プロセスにより形成することが可能である。
【0073】
電極41、42、43、44は、導波路20の少なくとも一部に電界を印加できる位置にある(図2図3参照)。第1導波路21には、電極41、43のそれぞれから電界を印加できる。電極41、43はそれぞれ、例えば、第1導波路21とz方向からの平面視で重なる位置にある。電極41、43はそれぞれ、第1導波路21の上方にある。第2導波路22には、電極42、44のそれぞれから電界を印加できる。電極42、44はそれぞれ、例えば、第2導波路22とz方向からの平面視で重なる位置にある。電極42、44はそれぞれ、第2導波路22の上方にある。
【0074】
次いで、光デバイス200の動作について説明する。光デバイス200の動作には、電気信号を光信号に変換する光変調動作と、光変調状態をモニタリングし光変調状態を調整する調整動作とがある。
【0075】
まず光変調動作について説明する。光デバイス200は、電気信号を光信号に変換する。光変調素子100は、入力光Linを出力光Loutに変調する。
【0076】
入力導波路23から入力された入力光Linは、第1導波路21と第2導波路22に分岐して伝搬する。第1導波路21を伝搬する光と第2導波路22を伝搬する光との位相差は、分岐した時点ではゼロである。
【0077】
電極41と電極42との間に電圧を印加すると、第1導波路21及び第2導波路22に電界が印加され、電気光学効果により第1導波路21及び第2導波路22の屈折率は変化する。電極41及び42には、変調信号Smに応じた変調電圧Vmが印加される。変調信号Smに応じた変調電圧Vmは、例えば、電源161によって印加される。例えば、第1導波路21の屈折率は、基準の屈折率nから+Δn変化し、第2導波路22の屈折率は、基準の屈折率nから-Δn変化する。電極41と電極42とに印加する電圧は、例えば、絶対値が同じで、正負が反対であり、位相が互いにずれていない差動電圧である。
【0078】
第1導波路21と第2導波路22との屈折率が異なると、第1導波路21を伝搬する光と第2導波路22を伝搬する光との間に位相差が生じる。第1導波路21及び第2導波路22を伝搬した光は、出力導波路24で合流し、出力光Loutとして出力される。
【0079】
出力光Loutは、第1導波路21を伝搬する光と第2導波路22を伝搬する光とを重ね合わせたものである。出力光Loutの強度は、第1導波路21を伝搬する光と第2導波路22を伝搬する光の位相差に応じて変化する。例えば、位相差がπの偶数倍の場合は光が強め合い、πの奇数倍の場合は光が弱め合う。このような手順で、光変調素子100は、電気信号に応じて、入力光Linを出力光Loutに変調する。
【0080】
次いで、調整動作について説明する。調整動作では、例えば、光変調素子100の動作点を調整する。動作点は、変調電圧振幅の中心となる電圧である。動作点は、使用環境の温度等で変動する場合がある。使用中に動作点が変動した場合は、直流バイアス印加回路170及び制御回路180で補正する。制御回路180は、例えば、モニタリング光の状態に応じて、動作点の変動を補正する。モニタリング光の状態は、磁性素子30で検出する。
【0081】
磁性素子30からの出力電圧又は出力電流は、第1強磁性層31に照射される光(モニタリング光)の強度により変化する。モニタリング光は、出力光Loutの一部が分岐したものであり、出力光Loutと同様の状態である。
【0082】
磁性素子30からの出力電圧又は出力電流が光の照射によって変化する厳密なメカニズムはまだ明確になっていないが、例えば、以下の2つのメカニズムが考えられる。
【0083】
図9は、第1実施形態に係る磁性素子30の動作の第1メカニズムを説明するための図である。図9の上のグラフは、縦軸が第1強磁性層31に照射される光の強度であり、横軸が時間である。図9の下のグラフは、縦軸が磁性素子30の積層方向の抵抗値であり、横軸が時間である。
【0084】
まず第1強磁性層31に第1強度の光が照射された状態(以下、初期状態と称する)において、第1強磁性層31の磁化M31と第2強磁性層32の磁化M32とは平行の関係にあり、磁性素子30の積層方向の抵抗値は第1抵抗値Rを示し、磁性素子30からの出力電圧又は出力電流の大きさは第1の値を示す。第1強度は、第1強磁性層31に照射される光の強度がゼロの場合でもよい。
【0085】
磁性素子30の積層方向の抵抗値は、例えば、磁性素子30の積層方向にセンス電流を流すと、磁性素子30の積層方向の両端に電圧が発生し、その電圧値からオームの法則を用いて求められる。磁性素子30からの出力電圧は、電極51と電極52との間に発生する。図9に示す例の場合、センス電流を第1強磁性層31から第2強磁性層32に向かって流すことが好ましい。この方向にセンス電流を流すことで、第1強磁性層31の磁化M31に対して、第2強磁性層32の磁化M32と同じ方向のスピントランスファートルクが作用し、初期状態において磁化M31と磁化M32とが平行になる。また、この方向にセンス電流を流すことで、第1強磁性層31の磁化M31が動作時に反転することを防止することができる。
【0086】
次いで、第1強磁性層31に照射される光の強度が変化する。光の照射による外部からのエネルギーによって第1強磁性層31の磁化M31は初期状態から傾く。第1強磁性層31に光が照射されていない状態における第1強磁性層31の磁化M31の方向と、光が照射された状態における磁化M31の方向との角度は、いずれも0°より大きく90°より小さい。
【0087】
第1強磁性層31の磁化M31が初期状態から傾くと、磁気抵抗効果素子30の積層方向の抵抗値は変化する。そして、磁性素子30からの出力電圧又は出力電流は変化する。例えば、磁性素子30に照射される光(モニタリング光L)の強度が大きくなるほど、磁化M31の初期状態に対する傾きは大きくなる。例えば、第1強磁性層31の磁化M31の傾きに応じて、磁性素子30の積層方向の抵抗値は、第2抵抗値R、第3抵抗値R、第4抵抗値Rと変化し、磁性素子30からの出力電圧又は出力電流は第2の値、第3の値、第4の値と変化する。第1抵抗値R、第2抵抗値R、第3抵抗値R、第4抵抗値Rの順に抵抗値は大きくなる。第1の値、第2の値、第3の値、第4の値の順に磁性素子30からの出力電圧は大きくなる。磁性素子30が定電圧源に接続されている場合、第1の値、第2の値、第3の値、第4の値の順に磁性素子30からの出力電流は小さくなる。
【0088】
磁性素子30は、磁性素子30に照射される光(モニタリング光L)の強度が変化した際に、磁性素子30からの出力電圧又は出力電流(磁性素子30の積層方向の抵抗値)が変化する。したがって、磁性素子30は、モニタリング光Lの強度を磁性素子30からの出力電圧又は出力電流(磁性素子30の抵抗値)として検出できる。
【0089】
第1強磁性層31の磁化M31には第2強磁性層32の磁化M32と同じ方向のスピントランスファートルクが作用するので、第1強磁性層31に照射される光の強度が第1強度に戻ると、初期状態から傾いた磁化M31は、初期状態に戻る。磁化M31が初期状態に戻ると、磁性素子30の積層方向の抵抗値は、第1抵抗値Rに戻り、磁性素子30からの出力電圧又は出力電流は第1の値に戻る。
【0090】
ここでは初期状態において磁化M31と磁化M32とが平行な場合を例に説明したが、初期状態において磁化M31と磁化M32とが反平行でもよい。この場合、磁性素子30の積層方向の抵抗値は、磁化M31が傾くほど(磁化M31の初期状態からの角度変化が大きくなるほど)小さくなる。磁化M31と磁化M32とが反平行な場合を初期状態とする場合は、センス電流は第2強磁性層32から第1強磁性層31に向かって流すことが好ましい。この方向にセンス電流を流すことで、第1強磁性層31の磁化M31に対して、第2強磁性層32の磁化M32と反対方向のスピントランスファートルクが作用し、初期状態において磁化M31と磁化M32とが反平行になる。
【0091】
図10は、第1実施形態に係る磁性素子30の動作の第2メカニズムを説明するための図である。図10の上のグラフは、縦軸が第1強磁性層31に照射される光の強度であり、横軸が時間である。図10の下のグラフは、縦軸が磁性素子30の積層方向の抵抗値であり、横軸が時間である。
【0092】
図10に示す初期状態は、図9に示す初期状態と同様である。図10に示す例の場合も、センス電流を第1強磁性層31から第2強磁性層32に向かって流すことが好ましい。この方向にセンス電流を流すことで、第1強磁性層31の磁化M31に対して、第2強磁性層32の磁化M32と同じ方向のスピントランスファートルクが作用し、初期状態が維持される。
【0093】
次いで、第1強磁性層31に照射される光(モニタリング光)の強度が変化する。光の照射による外部からのエネルギーによって第1強磁性層31の磁化M31の大きさは初期状態から小さくなる。第1強磁性層31の磁化M31が初期状態から小さくなると、磁気抵抗効果素子30の積層方向の抵抗値は変化する。そして、磁性素子30からの出力電圧又は出力電流は変化する。例えば、磁性素子30に照射される光(モニタリング光L)の強度が大きくなるほど、磁化M31の大きさは小さくなる。例えば、第1強磁性層31の磁化M31の大きさに応じて、磁性素子30の積層方向の抵抗値は、第2抵抗値R、第3抵抗値R、第4抵抗値Rと変化し、磁性素子30からの出力電圧又は出力電流は第2の値、第3の値、第4の値と変化する。第1抵抗値R、第2抵抗値R、第3抵抗値R、第4抵抗値Rの順に抵抗値は大きくなる。第1の値、第2の値、第3の値、第4の値の順に磁性素子30からの出力電圧は大きくなる。磁性素子30が定電圧源に接続されている場合、第1の値、第2の値、第3の値、第4の値の順に磁性素子30からの出力電流は小さくなる。
【0094】
第1強磁性層31に照射される光の強度が第1強度に戻ると、第1強磁性層31の磁化M31の大きさは元に戻り、磁性素子30は初期状態に戻る。すなわち、磁性素子30の積層方向の抵抗値は、第1抵抗値Rに戻り、磁性素子30からの出力電圧又は出力電流は第1の値に戻る。
【0095】
図10においても、初期状態において磁化M31と磁化M32とが反平行としてもよい。この場合、磁性素子30の積層方向の抵抗値は、磁化M31の大きさが小さくなるほど、小さくなる。磁化M31と磁化M32とが反平行な場合を初期状態とする場合は、センス電流は第2強磁性層32から第1強磁性層31に向かって流すことが好ましい。
【0096】
上述の手順を経て、出力光Loutの状態を磁性素子30からの出力電圧又は出力電流(磁性素子30の積層方向の抵抗値)として読み取ることができる。
【0097】
制御回路180は、磁性素子30からの出力電圧又は出力電流(磁性素子30の積層方向の抵抗値)、すなわち磁性素子30からの電気信号を受信し、その結果に基づいた信号を直流バイアス印加回路170に送る。直流バイアス印加回路170は、制御回路180からの信号に基づき、電極43と電極44との間に直流バイアス電圧Vdcを印加し、第1導波路21および第2導波路22に電界を印加して光変調素子100の動作点を調整する。直流バイアス電圧Vdcは、例えば、電源171によって印加される。このように、制御部150は、磁性素子30からの電気信号に基づいて大きさを調整した電界を、電極43と電極44から第1導波路21および第2導波路22に印加する。
【0098】
上述のように、第1実施形態に係る光デバイス200では、電極43と電極44とから、導波路20(第1導波路21および第2導波路22)の少なくとも一部に磁性素子30からの電気信号に基づいた電界を印加できる。上述のようなフィードバック動作により、光デバイス200から出力される信号(出力光Lout)の状態を調整できる。
【0099】
また第1強磁性層31の磁化M31は、第1強磁性層31の体積が小さいほど光の照射に対して変化しやすくなる。つまり、第1強磁性層31の磁化M31は、第1強磁性層31の体積が小さいほど光の照射により傾きやすい、又は、光の照射により小さくなりやすい。換言すると、第1強磁性層31の体積を小さくすると、わずかな光量の光でも磁化M31を変化させることができる。すなわち、第1実施形態に係る磁性素子30は、高感度に光を検知できる。
【0100】
より正確には、磁化M31の変化しやすさは、第1強磁性層31の磁気異方性(Ku)と体積(V)との積(KuV)の大きさで決定される。KuVが小さいほどより微小な光量でも磁化M31は変化し、KuVが大きいほどより大きな光量でないと磁化M31は変化しない。つまり、アプリケーションで使用する外部から照射する光の光量に応じて、第1強磁性層31のKuVを設計することになる。極めて微小な光量検出のようなことを想定した場合には、第1強磁性層31のKuVを小さくすることで、これらの微小な光量の光の検出が可能となる。このような微小な光量の光の検出は、従来のpn接合の半導体では素子サイズを小さくすると難しくなるため、大きなメリットである。第1強磁性層31の体積を小さくすることで、KuVを小さくできる。
【0101】
「第2実施形態」
図11は、第2実施形態に係る光変調素子101の磁性素子30近傍の斜視図である。図12は、第2実施形態に係る光変調素子101の磁性素子30近傍の断面図である。図13は、第2実施形態に係る光変調素子101の磁性素子30近傍の別の断面図である。第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成は同様の符号を付し、説明を省く。
【0102】
光変調素子101は、リフレクタ60を有する。リフレクタ60は、導波路20を伝搬する光の少なくとも一部を磁性素子30に向かって反射する。例えば、リフレクタ60は、モニタリング導波路27から出力されるモニタリング光を磁性素子30に向かって反射する。リフレクタ60は、モニタリング導波路27の出力端からモニタリング光の進行方向の位置にある。リフレクタ60は、モニタリング光の進行方向に対して傾斜する傾斜面を有する。
【0103】
リフレクタ60は、光を反射するものである。リフレクタ60は、例えば、反射鏡である。
【0104】
磁性素子30は、クラッド28上に形成された絶縁層61内に形成されている。絶縁層61は、例えば、側壁絶縁層39と同様の材料である。磁性素子30は、基板10の上方にある。磁性素子30は、導波路20と異なる高さ位置にあり、導波路20より基板10から離れた位置にある。磁性素子30は、例えば、リフレクタ60の上方にある。
【0105】
リフレクタ60で反射された光(モニタリング光)は、例えば、磁性素子30に、磁性素子30の積層方向から照射される。この場合、電極52は、磁性素子30に照射される光の波長域に対して透過性を有する。電極52がモニタリング光の一部を透過することで、磁性素子30にモニタリング光が照射される。ここでは、電極52が電極51よりリフレクタ60側に配置される例を例示したが、電極51が電極52よりリフレクタ60側に配置されてもよい(第1強磁性層31が第2強磁性層32よりリフレクタ60側に配置されてもよい)。この場合、電極51は、磁性素子30に照射される光の波長域に対して透過性を有する。電極51が電極52よりリフレクタ60側に配置されると、第1強磁性層31へのモニタリング光の照射効率が高まる。
【0106】
第2実施形態にかかる光デバイスは、光デバイス200と同様の効果を奏する。またリフレクタ60により磁性素子30に対するモニタリング光の照射方向を自由に設計できる。例えば、磁性素子30に対して積層方向からモニタリング光が照射されると、磁性素子30の受光面積を広く確保できる。
【0107】
「第3実施形態」
図14は、第3実施形態に係る光変調素子102の平面図である。図14には、電源161、171及び終端抵抗Rを合わせて図示している。第3実施形態において、第1実施形態及び第2実施形態と同様の構成は同様の符号を付し、説明を省く。
【0108】
導波路20Aは、例えば、第1導波路21と第2導波路22と入力導波路23と出力導波路24と分岐部25と結合部26とを有する。導波路20Aは、モニタリング導波路27を有さない。
【0109】
図15は、第3実施形態に係る光変調素子102の磁性素子30近傍の第1例の斜視図である。図15では、出力導波路24は、2つに分かれた出力端24t1、24t2を有している。出力端24t1は、出力端24t2とx方向の異なる位置にある。
【0110】
出力端24t1からの光の進行方向の先には、リフレクタ60がある。リフレクタ60で反射した光は、モニタリング光として磁性素子30に照射される。すなわち、出力導波路24の出力端から出力される光の一部が、モニタリング光として磁性素子30に照射される。出力端24t2は、外部に露出する。出力端24t2から出力光Loutが出力される。
【0111】
図16は、第3実施形態に係る光変調素子102の磁性素子30近傍の第2例の斜視図である。図16では、出力導波路24は、2つに分かれた出力端24t3、24t4を有している。出力端24t3は、出力端24t4とz方向の異なる位置にある。
【0112】
出力端24t3からの光の進行方向の先には、リフレクタ60がある。リフレクタ60で反射した光は、モニタリング光として磁性素子30に照射される。すなわち、出力導波路24の出力端から出力される光の一部が、モニタリング光として磁性素子30に照射される。出力端24t4は、外部に露出する。出力端24t4から出力光Loutが出力される。
【0113】
第3実施形態にかかる光デバイスは、光デバイス200と同様の効果を奏する。また光変調素子102は、出力導波路24からの出力光Loutの一部を直接モニタリング光として計測するため、ノイズ等の影響を受けにくい。
【0114】
ここまで、第1実施形態から第3実施形態についての一例を、図面を参照して詳述したが、第1実施形態はこの例に限られるものではない。
【0115】
「第1変形例」
図17は、第1変形例に係る光変調素子の磁性素子近傍の断面図である。図17に示すように、磁性素子30の積層方向がz方向に対して傾斜していてもよい。この場合、モニタリング光は、磁性素子30の側面及び磁性素子30の電極51側の第1面に照射される。
【0116】
「第2変形例」
図18は、第2変形例に係る光変調素子の磁性素子近傍の断面図である。例えば、図18に示すように、磁性素子30に対する入力端子と出力端子とが共通になっていてもよい。図18に示す磁性素子30は、例えば、電極51、52と、ビア配線58と、入出力端子57と、電気的に接続されている。
【0117】
ビア配線58は、入出力端子57と電極51又は電極52とを繋ぐ。入出力端子57は、例えば2つある。入出力端子57の一方には電流又は電圧が入力されるとともに、入出力端子57の一方からは信号が出力される。入出力端子57の他方は基準電位に接続される。
【0118】
「第3変形例」
図19は、第3変形例に係る光変調素子103の平面図である。図20は、第3変形例に係る光変調素子103の断面図である。図20は、図19のC-C’に沿った断面である。図19には、電源161A、171A、161B、171B、制御回路181A、181B、182A、182B及び終端抵抗Rを合わせて図示している。第3変形例において、第1実施形態および第2実施形態と同様の構成は同様の符号を付し、説明を省く。
【0119】
光変調素子103は、基板10と導波路20と磁性素子30と電極45、46、47とを備える。導波路20と磁性素子30は、基板10の上又は基板10の上方にある。光変調素子103においては、第1実施形態または第2実施形態と同様に、モニタリング導波路27内を伝搬するモニタリング光は、磁性素子30に照射される。図19に示すように、電極45、46、47の形状、接続関係は、第1実施形態から第3実施形態に係る電極41、42、43、44と異なっていてもよい。
【0120】
光変調素子103における導波路20は、基板10上に形成されたスラブ70の一部と、スラブ70から突出するリッジ形状部71とからなる。
【0121】
電極45、46は、導波路20の少なくとも一部に電界を印加できる位置にある。第1導波路21には、電極45から電界を印加できる。第2導波路22には、電極46から電界を印加できる。電極45は、例えば、第1導波路21の上方にある。電極46は、例えば、第2導波路22の上方にある。電極47は、例えば、電極45、46の側方にある。
【0122】
電極45の第1端は、例えば、電源161A、171Aに接続され、第2端は終端抵抗Rに接続されている。電極46の第1端は、例えば、電源161B、171Bに接続され、第2端は終端抵抗Rに接続されている。電極47は、電源161A、171A、161B、171Bの基準電位と終端抵抗Rに接続されている。基準電位は、例えば、グラウンドである。
【0123】
電源161A、161Bは、駆動回路160の一部である。電源171A、171Bは、直流バイアス印加回路170の一部である。制御回路181A、181B、182A、182Bは、制御回路180の一部である。この場合、図1に示す制御回路180は、駆動回路160にも接続される。制御回路181A、181B、182A、182Bのそれぞれは、磁性素子30からの電気信号を受信できる。
【0124】
電極45には、電源161A及び電源171Aから電圧が印加される。電源161Aは、電極45に変調電圧を印加する。電源161Aは、制御回路181Aで制御される。電源171Aは、電極45に直流バイアス電圧を印加する。電源171Aは、制御回路182Aで制御される。電極46には、電源161B及び電源171Bから電圧が印加される。電源161Bは、電極46に変調電圧を印加する。電源161Bは、制御回路181Bで制御される。電源171Bは、電極46に直流バイアス電圧を印加する。電源171Bは、制御回路182Bで制御される。すなわち、電極45に印加される電圧と電極46に印加される電圧とは個別に制御できる。電極45と電極47との間に電圧を印加すると、第1導波路21に電界が印加され、電気光学効果により第1導波路の屈折率が変化する。電極46と電極47との間に電圧を印加すると、第2導波路22に電界が印加され、電気光学効果により第1導波路の屈折率が変化する。
【0125】
光デバイスは、出力光Loutの状態を磁性素子30からの出力電圧又は出力電流(磁性素子30の積層方向の抵抗値)、すなわち磁性素子30からの電気信号に基づいて検出する。磁性素子30からの電気信号は、制御回路181A、182A、181B、182Bに送られる。制御回路181A、182A、181B、182Bのそれぞれは、磁性素子30からの電気信号を受信し、その結果に基づいた信号を、電源161A、電源171A、電源161Bまたは電源171Bに送る。
【0126】
電源161Aは、制御回路181Aからの信号に基づき、電極45に変調電圧を印加する。電源161Bは、制御回路181Bからの信号に基づき、電極46に変調電圧を印加する。電源171Aは、制御回路182Aからの信号に基づき、電極45に直流バイアス電圧を印加する。電源171Bは、制御回路182Bからの信号に基づき、電極46に直流バイアス電圧を印加する。
【0127】
制御回路181A及び制御回路181Bは、電極45及び電極46に印加される変調電圧を調整することで、第1導波路21を伝搬する光と第2導波路22を伝搬する光の位相差がπ(180°)となるように調整する。制御回路182A及び制御回路182Bは、電極45及び電極46に印加される直流バイアス電圧を調整することで、第1導波路21を伝搬する光と第2導波路22を伝搬する光の位相差が0(0°)となるように調整する。
【0128】
光変調素子103は、第1導波路21を伝搬する光と第2導波路22を伝搬する光の位相差が0(0°)の場合に出力される出力光Loutが最大となり、第1導波路21を伝搬する光と第2導波路22を伝搬する光の位相差がπ(180°)の場合に出力される出力光Loutが最小となる。
【0129】
理想的な条件下において、電極45及び電極46に電圧を印加しない場合、第1導波路21を伝搬する光と第2導波路22を伝搬する光の位相差は0(0°)となる。この際、光変調素子103から出力される出力光Loutは最大となる。理想的な条件とは、温度、ノイズ、DCドリフト等の第1導波路21及び第2導波路22の屈折率に影響を及ぼすパラメータを除いた条件である。
【0130】
また理想的な条件下において、例えば、電極45に第1導波路21を伝搬する光の位相が+π/2(+90°)変化する電圧を印加し、電極46に第2導波路22を伝搬する光の位相が-π/2(-90°)変化する電圧を印加した場合、第1導波路21を伝搬する光と第2導波路22を伝搬する光の位相差はπ(180°)となる。この際、光変調素子103から出力される出力光Loutは最小となる。なお、電極45に第1導波路21を伝搬する光の位相が-π/2(-90°)変化する電圧を印加し、電極46に第2導波路22を伝搬する光の位相が+π/2(+90°)変化する電圧を印加してもよい。
【0131】
実条件下では、温度、ノイズ、DCドリフト等の影響を受けて、第1導波路21及び第2導波路22を伝搬する光の位相変化が理想通りにならず、シフトする場合がある。
【0132】
例えば、電極45及び電極46に電圧を印加しない場合において、第1導波路21を伝搬する光と第2導波路22を伝搬する光の位相差が0(0°)からずれる場合がある。また例えば、理想条件下において第1導波路21を伝搬する光と第2導波路22を伝搬する光の位相差がπ(180°)となるように電極45及び電極46に電圧を印加した場合において、第1導波路21を伝搬する光と第2導波路22を伝搬する光の位相差がπ(180°)からずれる場合がある。
【0133】
第1導波路21を伝搬する光と第2導波路22を伝搬する光の位相差が0(0°)からずれる場合は、磁性素子30からの電気信号に基づいて、制御回路182A、182Bが電源171A、171Bを制御することにより、電源171A、171Bは、出力光Loutが最大となるように、電極45と電極46とのうち少なくとも一方に、直流バイアス電圧を印加する。
【0134】
例えば、第1導波路21を伝搬する光の位相が、第2導波路22を伝搬する光の位相よりプラス側にシフトしている場合は、第1導波路21を伝搬する光の位相がマイナス側に変化するように電極45にマイナスの電圧を印加し、第2導波路22を伝搬する光の位相がプラス側に変化するように電極46にプラスの電圧を印加する。この逆に、例えば、第1導波路21を伝搬する光の位相が、第2導波路22を伝搬する光の位相よりマイナス側にシフトしている場合は、第1導波路21を伝搬する光の位相がプラス側に変化するように電極45にプラスの電圧を印加し、第2導波路22を伝搬する光の位相がマイナス側に変化するように電極46にマイナスの電圧を印加する。
【0135】
第1導波路21を伝搬する光と第2導波路22を伝搬する光の位相差がπ(180°)からずれる場合は、磁性素子30からの電気信号に基づいて、制御回路181A、181Bが電源161A、161Bを制御することにより、電源161A、161Bは、出力光Loutが最小となるように、電極45と電極46とのうち少なくとも一方に変調電圧を印加する。
【0136】
このように、電源161A、171A、161B、171Bおよび制御回路181A、181B、182A、182Bを有する制御部150は、磁性素子30からの電気信号に基づいて大きさを調整した電界を、電極45から第1導波路21に印加し、電極46から第2導波路22に印加する。
【0137】
上記動作により第3変形例にかかる光デバイスは、実条件下において、第1導波路21を伝搬する光と第2導波路22を伝搬する光の位相差を0(0°)又はπ(180°)とすることができ、出力光Loutを最大又は最小とすることができる。その結果、第3変形例にかかる光デバイスは、出力光Loutが最大から最小となる範囲を利用することができる。また第3変形例にかかる光デバイスは、実条件下における温度、ノイズ、DCドリフト等の影響を補償することができ、シグナルとノイズの比(S/N比)を改善できる。
【0138】
上述のように、第3変形例に係る光変調素子103を有する光デバイスでは、電極45又は電極46から、導波路20(第1導波路21又は第2導波路22)の少なくとも一部に磁性素子30からの電気信号に基づいた電界を印加できる。上述のようなフィードバック動作により、光変調素子103を有する光デバイスから出力される信号(出力光Lout)の状態を調整できる。
【0139】
第3変形例では、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、導波路20がモニタリング導波路27を有し、モニタリング導波路27内を伝搬するモニタリング光が磁性素子30に照射される場合を例示した。第3変形例は、この場合に限られるものではなく、第3実施形態と同様に、出力導波路24の出力端から出力される光の一部が、モニタリング光として磁性素子30に照射される構成でもよい。
【0140】
「第4変形例」
図21は、第4変形例に係る光変調素子104の断面図である。第4変形例において、第3変形例の構成と同様の構成は同様の符号を付し、説明を省く。
【0141】
図21に示すように、光導波路の断面構成は上述の構成と異なっていてもよい。図21に示す光変調素子104は、半導体量子井戸における屈折率変化を利用した光変調素子である。
【0142】
光変調素子104は、第1クラッド層73とコア75と第2クラッド層76と誘電体77と電極45、46、47とを有する。第1クラッド73層は、例えば、n型半導体であり、n型InPである。第1クラッド層73は、z方向に突出するリッジ形状部74を有する。
【0143】
コア75は、リッジ形状部74上にある。コア75は、例えば、半導体多重量子井戸を形成する。コア75は、例えば、InGaAsとInAlAsとの多層膜又はInGaAsPとInPとの多層膜である。コア75が導波路20である。
【0144】
第2クラッド76は、コア75上にある。第2クラッド76は、例えば、p型半導体であり、p型InPである。第2クラッド76上に電極45、46がある。電極45、46に電圧が印加されると、半導体多重量子井戸を有するコア75の屈折率が変化する。誘電体77は、例えば、有機誘電体材料、セラミック誘電体材料等である。有機誘電体材料は、例えば、ベンゾシクロブテン系樹脂等である。セラミック誘電体材料は、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等である。
【0145】
第3変形例と同様に、第4変形例に係る光変調素子104において、電極45又は電極46は、導波路20(第1導波路21又は第2導波路22)の少なくとも一部に電界を印加できる位置にある。第1導波路21には、電極45から電界を印加できる。第2導波路22には、電極46から電界を印加できる。磁性素子30からの電気信号に基づいて大きさを調整した電界を、電極45から第1導波路21に印加し、電極46から第2導波路22に印加する動作は、第3変形例と同様である。
【0146】
光変調素子104は、出力光Loutの状態を磁性素子30からの出力電圧又は出力電流(磁性素子30の積層方向の抵抗値)、すなわち磁性素子30からの電気信号に基づいて検出できる。
【0147】
「第5変形例」
図22は、第5変形例に係る光変調素子105の平面図である。図22には、電源161C及び制御回路181Cを合わせて図示している。図23は、第5変形例に係る光変調素子105の断面図である。図23は、図22のD-D’に沿った断面である。第5変形例において、第1実施形態および第2実施形態の構成と同様の構成は同様の符号を付し、説明を省く。
【0148】
図22に示す光変調素子105は、リング共振器80を用いたリング変調素子である。図22に示すように、光変調素子の構成は上述の構成と異なっていてもよい。
【0149】
光変調素子105は、リング共振器80と導波路20Bと磁性素子30とを有する。リング共振器80、導波路20B及び磁性素子30は、いずれも基板10の上又は基板10の上方にある。
【0150】
導波路20Bは、第1導波路29とモニタリング導波路27とを有する。第1導波路29の第1端に入力した光は、第1導波路29の第2端から出力される。モニタリング導波路27は、第1導波路29のリング共振器80に対応する位置と第2端との間の位置で第1導波路29に接続されている。モニタリング導波路27には、第1導波路29を伝搬する光の一部が伝搬する。第1実施形態または第2実施形態と同様に、モニタリング導波路27内を伝搬するモニタリング光は、磁性素子30に照射される。導波路20Bは、例えば、半導体であり、例えばシリコン、シリコンゲルマニウム、インジウムリン、ガリウムヒ素等である。導波路20Bは、SiO2等のクラッドで被覆されている。
【0151】
リング共振器80は、リング状の導波路81と、導波路81の内側と外側にあるドープ領域82、83とを有する。導波路81は、半導体であり、例えばシリコン、シリコンゲルマニウム、インジウムリン、ガリウムヒ素等である。ドープ領域82、83は、キャリアがドープされた半導体である。ドープ領域82、83のうちの一方はn型半導体であり、他方はp型半導体である。電極48は、ドープ領域82に接続され、電極49はドープ領域83に接続されている。導波路81、ドープ領域82、83及び電極48、49は、SiO2等のクラッド85で覆われている。
【0152】
電源161Cは、電極48及び電極49に接続されている。電源161Cは、駆動回路160の一部である。制御回路181Cは、制御回路180の一部である。この場合、図1に示す制御回路180は、駆動回路160にも接続される。制御回路181Cは、磁性素子30からの電気信号を受信できる。制御回路181Cは、磁性素子30からの電気信号に基づいて、電源161Cを制御する。
【0153】
リング共振器80は、第1導波路29を伝搬する光信号の周波数と、リング共振器80の共振周波数が一致する場合に、その周波数の光信号の光をリング共振器80内に閉じ込める。そのため、第1導波路29を伝搬する光信号の周波数が、この共振周波数の近傍の場合に、光の吸収が大きくなり、出力光の強度が小さくなる。リング共振器80の共振周波数は、導波路81の円周に沿った光路長に応じて決定される。またリング共振器80の共振周波数は、電極48と電極49との間に電圧を印加して導波路81に電界を印加し、導波路81内にキャリアを注入し、導波路81の屈折率を変えることで変化させることができる。例えば、光変調素子105では、電極48と電極49との間に電圧を印加して、リング共振器80の共振周波数と第1導波路29を伝搬する光信号の周波数とを異ならせることにより、出力光の強度を大きくすることができる。このように、光変調素子105では、特定の周波数の光信号の出力光の強度を変化させることが出来るため、光を変調することが可能である。
【0154】
第5変形例にかかる光デバイスは、出力光Loutの状態を磁性素子30からの出力電圧又は出力電流(磁性素子30の積層方向の抵抗値)、すなわち磁性素子30からの電気信号に基づいて検出できる。磁性素子30からの電気信号は、制御回路181Cに送られる。制御回路181Cは、磁性素子30からの電気信号を受信し、その結果に基づいた信号を、電源161Cに送る。
【0155】
光変調素子105は、リング共振器80の共振周波数と第1導波路29を伝搬する光信号の周波数とが一致する場合に、出力される出力光Loutが最小となる。電極48及び電極49に電圧を印加しない場合のリング共振器80の共振周波数と、第1導波路29を伝搬する光信号の周波数とが一致するような設計の場合、理想的な条件下において、電極48及び電極49に電圧を印加しない場合、導波路20Bから出力される出力光Loutは最小となる。
【0156】
しかしながら、実条件下では、温度、ノイズ、DCドリフト等の影響を受けて、電極48及び電極49に電圧を印加しない場合においても、導波路20Bから出力される出力光Loutは最小とならない場合がある。
【0157】
導波路20Bから出力される出力光Loutが最小とならない場合は、磁性素子30からの電気信号に基づいて、制御回路181Cが電源161Cを制御し、電源161Cは、出力光Loutが最小となるように、電極48と電極49と間に電圧を印加する。
【0158】
このように、電源161Cおよび制御回路181Cを有する制御部150は、磁性素子30からの電気信号に基づいて大きさを調整した電界を、電極48および電極49から導波路81に印加する。
【0159】
上記動作により第5変形例にかかる光デバイスは、実条件下において、出力光Loutを最小とすることができる。その結果、第5変形例にかかる光デバイスは、出力光Loutの変調において出力光Loutの変化幅を大きくできる。また第5変形例にかかる光デバイスは、実条件下における温度、ノイズ、DCドリフト等の影響を補償することができ、シグナルとノイズの比(S/N比)を改善できる。
【0160】
上述のように、第5変形例に係る光変調素子105を有する光デバイスでは、電極48および電極49から、導波路81の少なくとも一部に磁性素子30からの電気信号に基づいた電界を印加できる。上述のようなフィードバック動作により、光変調素子105を有する光デバイスから出力される信号(出力光Lout)の状態を調整できる。
【0161】
第5変形例では、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、導波路20Bがモニタリング導波路27を有し、モニタリング導波路27内を伝搬するモニタリング光が磁性素子30に照射される場合を例示した。第5変形例は、この場合に限られるものではなく、第3実施形態と同様に、第1導波路29の出力端から出力される光の一部が、モニタリング光として磁性素子30に照射される構成でもよい。
【0162】
「第6変形例」
図24は、第6変形例に係る光デバイス201の平面図である。第6変形例において、第1実施形態および第2実施形態の構成と同様の構成は同様の符号を付し、説明を省く。
【0163】
光デバイス201は、複数のレーザーダイオード91、92、93と導波路20Cと磁性素子30とを有する。光デバイス201は、拡張現実(AR)グラスや小型プロジェクタに用いられる平面光波回路である。第6変形例に示す光デバイス201のように、光デバイスは光変調器に限られない。
【0164】
複数のレーザーダイオード91、92、93のそれぞれは、レーザー光を出力する。レーザーダイオード91、92、93のそれぞれは、一例として赤、緑、青の3色のレーザーである。レーザーダイオードの数、出力する波長域等はこの場合に限られない。
【0165】
導波路20Cは、例えば、入力導波路21C、22C、23Cと合波路24Cと出力導波路25Cとモニタリング導波路27とを有する。図25は、第6変形例に係る光デバイス201の導波路20Cの断面図であり、図24におけるE-E’に沿って切断した断面である。入力導波路21C、22C、23Cは、基板10上にあり、例えば、クラッド28で被覆されている。導波路20Cと磁性素子30は、同じ基板の上又は同じ基板の上方にある。磁性素子30は、モニタリング光が照射される位置にある。第1実施形態または第2実施形態と同様に、モニタリング導波路27内を伝搬するモニタリング光は、磁性素子30に照射される。
【0166】
レーザーダイオード91、92、93のそれぞれから出射された光は、入力導波路21C、22C、23Cのそれぞれに入力される。入力導波路21C、22C、23Cのそれぞれを伝搬する光は、合波路24Cで合流する。合波路24Cで合流した光は、出力導波路25Cを伝搬する。出力導波路25Cの一端からは、合波路24Cで合流した光が出力される。
【0167】
出力導波路25Cを伝搬する光の少なくとも一部は、モニタリング導波路27に分岐する。分岐した光は、モニタリング光として、モニタリング導波路27内を伝搬し、磁性素子30に照射される。
【0168】
磁性素子30からの出力電圧又は出力電流(磁性素子30の積層方向の抵抗値)は、第1強磁性層31に照射されるモニタリング光の強度により変化する。光デバイス201は、モニタリング光の強度を磁性素子30からの出力電圧又は出力電流(磁性素子30の抵抗値)、すなわち磁性素子30からの電気信号に基づいて読み出すことができる。
【0169】
光デバイス201は、磁性素子30からの出力電圧又は出力電流(磁性素子30の積層方向の抵抗値)、すなわち磁性素子30からの電気信号に基づいて、レーザーダイオード91、92、93のそれぞれから出力される光の強度を測定できる。
【0170】
出力導波路25Cの一端から出力される光は、それぞれのレーザーダイオード91、92、93から出力される光を合わせたものである。それぞれのレーザーダイオード91、92、93から出力される光の強度を調整することで、光デバイス201は出力光のホワイトバランスを調整できる。それぞれのレーザーダイオード91、92、93から出力される光の強度は、磁性素子30からの出力の測定結果を、それぞれのレーザーダイオード11、12、13にフィードバックすることで調整できる。
【0171】
第6変形例では、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、導波路20Cがモニタリング導波路27を有し、モニタリング導波路27内を伝搬するモニタリング光が磁性素子30に照射される場合を例示した。第6変形例は、この場合に限られるものではなく、第3実施形態と同様に、出力導波路25Cの出力端から出力される光の一部が、モニタリング光として磁性素子30に照射される構成でもよい。
【0172】
「第7変形例」
図26は、第7変形例に係る光変調素子110の平面図である。図27は、第7変形例に係る光変調素子110の磁性素子30近傍の断面図である。第7変形例において、第1実施形態の構成と同様の構成は同様の符号を付し、説明を省く。
【0173】
光変調素子110は、磁性素子30を支持する支持体95を有する。支持体95は、導波路20Dが形成された基板10とは別の部材である。支持体95と基板10とは、例えば、共通の支持体上に固定されている。磁性素子30は支持体95の上又は上方にある。ここまで導波路20と磁性素子30とが同一基板の上又は同一基板の上方に形成されている例を示したが、第7変形例では導波路20Dと磁性素子30とが異なる部材上に形成されている。
【0174】
支持体95は、例えば、基板10と同様の材料である。磁性素子30は、支持体95上に形成された絶縁層96内にある。絶縁層96は、例えば、側壁絶縁層39と同様の材料である。
【0175】
図27に示す例では、磁性素子30のz方向の高さ位置は、モニタリング導波路27の出力端のz方向の高さ位置に合わせている。
【0176】
また図28に示すように、支持体95は、基板10の上にあってもよい。磁性素子30は、基板10の上面S2の上方、かつ、支持体95上にある。導波路20(モニタリング導波路27)は、基板10の上面S1上にある。
【0177】
また図29に示すように、モニタリング導波路27の出力端からのモニタリング光の進行方向と、磁性素子30の積層方向とが一致していてもよい。支持体95は、例えば、磁性素子30を積層する際の支持体95の側面が、基板10の上面S2と対向するように設置されている。モニタリング光は、例えば、磁性素子30に磁性素子30の積層方向から照射される。この場合、電極51は、磁性素子30に照射される光の波長域に対して透過性を有する。電極51がモニタリング光の一部を透過することで、磁性素子30にモニタリング光が照射される。
【0178】
図30に示すように、電極51は、入力端子55A及び出力端子56Aと接続されている。電極52は、ビア配線53を介して入力端子55Aに、ビア配線54を介して出力端子56Aに接続されている。入力端子55A及び出力端子56は、支持体95の側面に形成されている。
【0179】
導波路20と磁性素子30とが異なる部材上に形成されている場合でも、光変調素子110は導波路20Dを伝搬する光の少なくとも一部を、磁性素子30を用いてモニタリングできる。
【0180】
「第8変形例」
図31は、第8変形例に係る光デバイス202の平面図である。図31において、図24に示す光デバイス201と同様の構成は同様の符号を付し、説明を省く。
【0181】
光デバイス202は、複数のレーザーダイオード91、92、93、94と導波路20Dと複数の磁性素子30と光変調素子100とを有する。
【0182】
レーザーダイオード94は、レーザー光を出力する。レーザーダイオード94は、導波路20Dと光学的に接続されている。例えば、レーザーダイオード94は、780nm以上2500nm以下の波長域の光(近赤外線)を出力する近赤外レーザーである。
【0183】
光デバイス202の導波路20Dの形状は、光デバイス201の導波路20Cと異なる。導波路20Dの断面構造は、導波路20Cの断面構造と同様である。導波路20Dは、入力導波路21C、22C、23C、21Dと合波路24Dと出力導波路25Cと複数のモニタリング導波路27A、27Bとを有する。
【0184】
入力導波路21Dは、レーザーダイオード94と光学的に接続されている。例えば、レーザーダイオード94から出力された光は、入力導波路21Dを伝搬する。合波路24Dは、入力導波路21C、22C、23C、21Dと出力導波路25Cとの間にある。入力導波路21C、22C、23C、21Dのそれぞれを伝搬する光は、合波路24Dで合流する。出力導波路25Cは、合波路24Dに接続されている。出力導波路25Cは、合波路24Dを介して入力導波路21C、22C、23C、21Dと接続され、出力導波路25Cには、入力導波路21C、22C、23C、21Dからの光が伝搬する。
【0185】
複数のモニタリング導波路27A、27Bのそれぞれは、出力導波路25Cに接続されている。モニタリング導波路27Aを複数有し、それぞれのモニタリング導波路26Dが入力導波路21C、22C、23C、21Dのそれぞれに個別に接続されるようにしてもよい。モニタリング導波路27Aには、入力導波路21C、22C、23C、21Dと出力導波路25Cとのうち少なくとも一方を伝搬する光の少なくとも一部が伝搬する。モニタリング導波路27Bには、出力導波路25Cを伝搬する光の少なくとも一部が伝搬する。
【0186】
第1モニタリング導波路27Aと出力導波路25Cとの接続部において、第1モニタリング導波路27Aが+x方向に対してなす角は、例えば、90°より小さい。第2モニタリング導波路27Bと出力導波路25Cとの接続部において、第2モニタリング導波路27Bが+x方向に対してなす角は、例えば、90°より大きい。+x方向は、例えば、出力導波路25Cにおいて、レーザーダイオード91、92、93、94から出力された光が出力導波路25Cの出力端に向かう方向である。
【0187】
第1モニタリング導波路27Aと、第2モニタリング導波路27Bのそれぞれには、モニタリング光が伝搬する。第1モニタリング導波路27Aには、レーザーダイオード91、92、93、94から出力され、入力導波路21C、22C、23C、21Dと出力導波路25Cとのうち少なくとも一方を、レーザーダイオード91、92、93、94から入力導波路21C、22C、23C、21Dまたは出力導波路25Cへ向かう方向に伝搬する光の少なくとも一部が伝搬する。第2モニタリング導波路27Bには、出力導波路25Cから外部に出力され、被照射体で反射された光の少なくとも一部が伝搬する。以下、モニタリング光のうちレーザーダイオード91、92、93、94から出力され、入力導波路21C、22C、23C、21Dと出力導波路25Cとのうち少なくとも一方を、レーザーダイオード91、92、93、94から入力導波路21C、22C、23C、21Dまたは出力導波路25Cへ向かう方向に伝搬する光の少なくとも一部を第1モニタリング光と称し、出力導波路25Cから外部に出力され、被照射体で反射された光の少なくとも一部を第2モニタリング光と称する場合がある。
【0188】
複数の磁性素子30のそれぞれは、上述の磁性素子30である。磁性素子30の内の一つを第1磁性素子30Aと称し、別の一つを第2磁性素子30Bと称する。第1磁性素子30Aは、第1モニタリング光が照射される位置にある。第1磁性素子30Aは、第1モニタリング導波路27Aの出力端の先にある。第2磁性素子30Bは、第2モニタリング光が照射される位置にある。第2磁性素子30Bは、第2モニタリング導波路27Bの出力端の先にある。第1磁性素子30Aには第1モニタリング光が照射され、第2磁性素子30Bには第2モニタリング光が照射される。
【0189】
光変調素子100は、例えば、入力導波路21C、22C、23Cのそれぞれと光学的に接続されている。光変調素子100は、例えば、図2に示す光変調素子である。光変調素子100は、その他の光変調素子と置き換えることもできる。また光変調素子100から磁性素子30及びモニタリング導波路27を除いてもよい。
【0190】
光変調素子100は、レーザーダイオード91、92、93の出力を一定に保ったまま、合波路24Dに至るそれぞれの光の強度を調整できる。光変調素子100を用いて光の強度を調整する構成は、レーザーダイオード91、92、93の出力をダイレクトに調整する構成より消費電力を抑えることができる。
【0191】
光デバイス202は、第2磁性素子30Bを用いて被照射体からの反射光の強度を測定することで、被照射体の状態変化を測定できる。
【0192】
図32は、光デバイス202を用いた光システム300の概念図である。光システム300は、例えば、メガネ1000に実装できる。
【0193】
光システム300は、光デバイス202と光学系210とドライバ220、221とコントローラー230とを有する。光学系210は、例えば、コリメータレンズ211、スリット212、NDフィルター213、光走査ミラー214を有する。光学系210は、光デバイス202から出力された光を被照射体(この例では目)まで導光する。光走査ミラー214は、例えば、レーザー光の反射方向を水平方向及び垂直方向に変える2軸MEMSミラーである。光学系210は、一例であり、この例に限られない。ドライバ220は、レーザーダイオード91、92、93、94それぞれの出力を制御する。ドライバ221は、光走査ミラー214を動かす制御系である。コントローラー230は、ドライバ220、221を制御する。
【0194】
光デバイス202のレーザーダイオード91、92、93、94から出力された光Lは、光学系210を伝搬し、メガネ1000のレンズで反射し、目に入射する。ここでは、光をメガネ1000のレンズで反射する例を示したが、直接、目に照射してもよい。
【0195】
レーザーダイオード91、92、93のそれぞれから出射した赤色、緑色、青色の光Lは、画像を表示する。画像は、レーザーダイオード91、92、93のそれぞれの出力強度を光変調素子100で調整することで自由に制御できる。レーザーダイオード91、92、93のそれぞれの出力強度は、レーザーダイオード91、92、93のそれぞれから出力される可視光線が照射される第1磁性素子30Aからの出力の測定結果に基づいて調整することができる。なお、光変調素子100を用いず、ダイレクトにレーザーダイオード91、92、93の出力を調整してもよい。
【0196】
光デバイス202のレーザーダイオード94から出射した近赤外線は、目の瞳孔で反射する。目の瞳孔で反射した反射光Lは、光Lと同じ光軸を通過して、光デバイス202に至る。光デバイス202において、近赤外線である反射光Lの少なくとも一部は、出力導波路25Cの出力端から第2モニタリング導波路27Bを伝搬し、第2磁性素子30Bに照射される。第2磁性素子30Bは、反射光Lの強度を測定する。光システム300は、光走査ミラー214で調整された近赤外線の照射位置と反射光Lの強度から視線の場所(注視点)の動きを特定できる。反射光Lは、目の瞳孔で反射した光に限られず、目の角膜で反射した光、または目の強膜で反射した光でもよい。
【0197】
ここでは、光システムの一例として、画像表示とアイトラッキングの両方を行うことができるシステムを例示したが、この例に限られない。
【0198】
例えば、上記の光システムからアイトラッキング用のレーザーダイオード94を除いてもよい。この場合、光システムは、画像表示用のシステムとなる。この場合、光デバイス202からレーザーダイオード94、入力導波路21D、第2モニタリング導波路27B、第2磁性素子30Bを除くことができる。
【0199】
「第9変形例」
図33は、第9変形例に係る光システム500の概念図である。光システム500は、送信側デバイス510と受信側デバイス520とを有する。送信側デバイス510と受信側デバイス520とは、例えば、光ファイバーFBで接続され、光ファイバーFBを介して信号を送受信する。光システム500は、例えば、光通信システムである。
【0200】
送信側デバイス510は、複数のドライバ511と複数の光変調素子103と複数のフィルター512と合波器513とを有する。合波器513には、例えば、ドライバ511と光変調素子103とフィルター512とからなるユニットが2つ接続されている。
【0201】
光変調素子103は一例であり、光変調素子103に代えて他の光変調素子100~102、104、105、110と置き換えてもよい。ドライバ511は、例えば、光変調素子103の電源161A、161Bに接続され、電極45、46、47の電位を変更する。フィルター512のそれぞれは、例えば、バンドパスフィルター、バンドエリミネートフィルターである。それぞれのフィルター512を通過できる光信号の周波数帯域は異なる。合波器513は、フィルター512のそれぞれを通過した光を合波する。合波された光は、光ファイバーFBを介して、受信側デバイス520に伝搬する。
【0202】
受信側デバイス520は、分波器521と複数のフィルター522と複数の受信機523とを有する。分波器521には、例えば、フィルター522と受信機523からなるユニットが2つ接続されている。
【0203】
分波器521は、光ファイバーFBを介して伝搬した光信号を周波数帯域毎に分離する。分波器521は、例えば、フィルター512のそれぞれを通過した周波数帯域ごとに、光信号を分離する。分波器521で分離された光信号は、フィルター522を介し、受信機523のそれぞれで復調される。フィルター522は、フィルター512と同様のものを用いることができる。
【0204】
第9変形例にかかる光システム500は、周波数多重方式の光通信システムであり、多くの情報を一度に送信することができる。
【0205】
以上、本発明は上記の実施形態及び変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、上記の実施形態及び変形例の特徴的な構成をそれぞれ組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0206】
10…基板、20、20A、20B、20C、20D、20E…導波路、27…モニタリング導波路、30…磁性素子、30A…第1磁性素子、30B…第2磁性素子、41、42、43、44、45、46、47、48、49…電極、60…リフレクタ、100、101、102、103、104、105、110…光変調素子、150…制御部、200、201,202…光デバイス、210…光学系、300,500…光システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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