(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155488
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】充電制御装置、充電装置、充電制御方法、および充電制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20221005BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20221005BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20221005BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
H02J7/00 B
H02J7/04 G
H01M10/48 P
H01M10/44 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018516
(22)【出願日】2022-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2021056491
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 岬
(72)【発明者】
【氏名】中西 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】船津 慶次
(72)【発明者】
【氏名】山根 一夫
(72)【発明者】
【氏名】道願 能宏
(72)【発明者】
【氏名】江田 典彦
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA05
5G503DA12
5G503FA06
5H030AS08
5H030BB01
5H030FF22
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】鉛蓄電池の使用環境と健全状態によって変動する鉛蓄電池のSOH変化に対応した充電方法を自動で切り替える。
【解決手段】充電制御装置20は、0以上の整数をXとし、1以上の整数をYとした場合に、X回の普通充電とY回の均等充電とを1セットとして繰り返し充電する場合における均等充電の頻度を制御する充電制御装置20であって、鉛蓄電池10の健全状態を表すSOHを検出するSOH検出部25と、鉛蓄電池10の積算放電量を検出する放電量積算部24と、積算放電量に応じてSOHの上限値および下限値を算出する算出部23と、SOHが上限値と下限値を超えたかどうかを判定する判定部22と、判定部22によりSOHが上限値と下限値を超えたと判定された場合に、1セットにおける、普通充電及び均等充電の少なくとも一方の回数を変化させる制御部21と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0以上の整数をXとし、1以上の整数をYとした場合に、X回の普通充電とY回の均等充電とを1セットとして繰り返し充電する場合における前記均等充電の頻度を制御する充電制御装置であって、
鉛蓄電池の健全状態を表すSOHを検出するSOH検出部と、
前記鉛蓄電池の積算放電量を検出する放電量積算部と、
前記積算放電量に応じて前記SOHの上限値および下限値を算出する算出部と、
前記SOHが前記上限値と前記下限値を超えたかどうかを判定する判定部と、
前記判定部により前記SOHが前記上限値と前記下限値を超えたと判定された場合に、前記1セットにおける、前記普通充電及び前記均等充電の少なくとも一方の回数を変化させる制御部と、を備える、充電制御装置。
【請求項2】
前記1セットにおける均等充電の回数は1回であり、
前記制御部は、前記1セットにおける普通充電の回数を変化させる、請求項1に記載の充電制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記SOHが前記上限値を超えた場合、前記普通充電の回数を増やし、前記SOHが前記下限値を超えた場合、前記普通充電の回数を減らす、請求項1または請求項2に記載の充電制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記判定部により前記SOHが前記上限値と前記下限値を超えたと判定された場合に、前記1セットにおける前記普通充電の回数を1回ずつ変化させる、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の充電制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記1セットにおける前記普通充電の回数が第1の所定回数より少ない回数から増加して前記第1の所定回数となり、かつ前記判定部により前記SOHが前記上限値を超えたと判定された場合、および前記1セットにおける前記普通充電の回数が第2の所定回数より多い回数から減少して前記第2の所定回数となり、かつ前記判定部により前記SOHが前記下限値を超えたと判定された場合に、前記均等充電の充電時間を変化させる、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の充電制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記1セットにおける前記普通充電の回数が前記第1の所定回数より少ない回数から増加して前記第1の所定回数となり、かつ前記判定部により前記SOHが前記上限値を超えたと判定された場合に、前記1セットにおける前記均等充電の充電時間を減算し、前記1セットにおける前記普通充電の回数が前記第2の所定回数より多い回数から減少して前記第2の所定回数となり、かつ前記判定部により前記SOHが前記下限値を超えたと判定された場合に、前記1セットにおける前記均等充電の充電時間を加算し、
上限充電時間と下限充電時間との間で前記充電時間を加算もしくは減算し、
減算時には加算時に加算した時間分だけ減算する、請求項5に記載の充電制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記1セットにおける前記普通充電の回数が前記第1の所定回数より少ない回数から増加して前記第1の所定回数となり、かつ前記判定部により前記SOHが前記上限値を超えたと判定された場合、および前記1セットにおける前記普通充電の回数が前記第2の所定回数より多い回数から減少して前記第2の所定回数となり、かつ前記判定部により前記下限値を超えたと判定された場合に、前記均等充電の充電時間を1回につき一定時間ずつ変化させる、請求項5または請求項6に記載の充電制御装置。
【請求項8】
前記算出部は、前記上限値および前記下限値を前記積算放電量に応じて設定可能である、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の充電制御装置。
【請求項9】
前記算出部は、前記上限値および前記下限値を前記普通充電の回数を更新する毎に設定する、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の充電制御装置。
【請求項10】
前記放電量積算部は、前記積算放電量として積算放電電気量または積算放電電力量を検出する、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の充電制御装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の充電制御装置と、充電器と、を備えた充電装置。
【請求項12】
0以上の整数をXとし、1以上の整数をYとした場合に、X回の普通充電とY回の均等充電とを1セットとして繰り返し充電する場合における前記均等充電の頻度を制御する充電制御方法であって、
鉛蓄電池の健全状態を表すSOHを検出するステップと、
前記鉛蓄電池の積算放電量を検出するステップと、
前記積算放電量に応じて前記SOHの上限値および下限値を算出するステップと、
前記SOHが前記上限値と前記下限値を超えたかどうかを判定するステップと、
前記SOHが前記上限値と前記下限値を超えたと判定された場合に、前記1セットにおける、前記普通充電及び前記均等充電の少なくとも一方の回数を変化させるステップと、を備える、充電制御方法。
【請求項13】
0以上の整数をXとし、1以上の整数をYとした場合に、X回の普通充電とY回の均等充電とを1セットとして繰り返し充電する場合における前記均等充電の頻度を制御する充電制御プログラムであって、
鉛蓄電池の健全状態を表すSOHを検出し、
前記鉛蓄電池の積算放電量を検出し、
前記積算放電量に応じて前記SOHの上限値および下限値を算出し、
前記SOHが前記上限値と前記下限値を超えたかどうかを判定し、
前記SOHが前記上限値と前記下限値を超えたと判定された場合に、前記1セットにおける、前記普通充電及び前記均等充電の少なくとも一方の回数を変化させることをコンピューターに実行させる、充電制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電制御装置、充電装置、充電制御方法、および充電制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電動フォークリフトなどの産業機械に用いられる鉛蓄電池は、充電器により充電して繰り返し使用できる二次電池である。鉛蓄電池は、充電量が少ない状態で使用を続けると、負極活物質に硫酸鉛が蓄積し粗大化するサルフェーションが発生し、充電量が多いと正極格子の酸化腐食が加速して劣化が進行することが知られている。さらに、鉛蓄電池の満充電容量は経年劣化によって低下してくるため、特開2014-193014号公報(下記特許文献1)に記載の充電制御装置では、普通充電を複数行った後、鉛蓄電池をリフレッシュ充電することにより、サルフェーションを解消し、満充電容量の低下を回避するようにしている。具体的には、SOC(State Of Charge)変化を計測することで、普通充電と充電量が多いリフレッシュ充電とを切り替えるように制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の充電制御装置では産業機械の使用方法によって変わる鉛蓄電池の健全状態(以下、SOHと記載する)の変化に対応できない。例えば、使用頻度が少なく、鉛蓄電池の放電深度が小さいと、SOC変化が少ない従来の充電方法では、サルフェーションの解消に必要な、満充電後の充電である押込み充電量が少なくなってしまう。一方、鉛蓄電池が必要とする充電量はSOC変化だけでなく、一時的にSOCを回復する補充電の実施有無や補充電前後の放電深度の違い、その他鉛蓄電池から供給する微小な待機電力(暗電流)などによって変わる。これらのことから、鉛蓄電池の劣化を抑制するためには、SOHに応じて充電電気量を切り替える方法が望ましい。
【0005】
本発明は上記のような課題に基づいて完成されたものであって、鉛蓄電池の使用環境と健全状態によって変動する鉛蓄電池のSOH変化に対応した充電方法を自動で切り替えすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
充電制御装置は、0以上の整数をXとし、1以上の整数をYとした場合に、X回の普通充電とY回の均等充電とを1セットとして繰り返し充電する場合における前記均等充電の頻度を制御する充電制御装置であって、鉛蓄電池の健全状態を表すSOHを検出するSOH検出部と、前記鉛蓄電池の積算放電量を検出する放電量積算部と、前記積算放電量に応じて前記SOHの上限値および下限値を算出する算出部と、前記SOHが前記上限値と前記下限値を超えたかどうかを判定する判定部と、前記判定部により前記SOHが前記上限値と前記下限値を超えたと判定された場合に、前記1セットにおける、前記普通充電及び前記均等充電の少なくとも一方の回数を変化させる制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本構成では、鉛蓄電池の使用環境と健全状態によって変動する鉛蓄電池のSOH変化に対応した充電方法を自動で切り替えできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、電動フォークリフトの側面図である。
【
図2】
図2は、実施形態1の充電制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態1の充電制御装置が普通充電回数を変更する方法を示すフロー図である。
【
図4】
図4は、実施形態1の積算放電電気量に対するSOHの推移を示すグラフである。
【
図5】
図5は、従来の積算放電電気量に対するSOHの推移を示すグラフである。
【
図6】
図6は、充電操作パネルの入力画面の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、一日のバッテリー容量の変化を示す図であり、(A)が実施形態1の電動式フォークリフトの場合、(B)が従来の電動式フォークリフトの場合を示す。
【
図8】
図8は、鉛蓄電池の使用環境による充放電量の変化を示す図である。
【
図9】
図9は、普通充電および均等充電の電流変化パターンを例示する図である。
【
図10】
図10は、実施形態2の充電制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図11】
図11は、実施形態2の充電制御装置が均等充電時間を変更する方法を示すフロー図である。
【
図12】
図12は、実施形態2の積算放電電気量に対するSOHの推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本実施形態の概要)
(1)充電制御装置は、0以上の整数をXとし、1以上の整数をYとした場合に、X回の普通充電とY回の均等充電とを1セットとして繰り返し充電する場合における前記均等充電の頻度を制御する充電制御装置であって、鉛蓄電池の健全状態を表すSOHを検出するSOH検出部と、前記鉛蓄電池の積算放電量を検出する放電量積算部と、前記積算放電量に応じて前記SOHの上限値および下限値を算出する算出部と、前記SOHが前記上限値と前記下限値を超えたかどうかを判定する判定部と、前記判定部により前記SOHが前記上限値と前記下限値を超えたと判定された場合に、前記1セットにおける、前記普通充電及び前記均等充電の少なくとも一方の回数を変化させる制御部と、を備える。
【0010】
普通充電の繰り返しにより、押込み充電が少ない状態で繰り返し使用すると、サルフェーションを進めることにつながるため、充電不足の状態が長く続かないように、適切な頻度で均等充電を行う必要がある。一方、均等充電を頻繁に行い過ぎると、過充電によって正極格子の酸化腐食による劣化が進んでしまう。これに対し上記の充電制御装置によると、SOHが上限値と下限値を超えた場合に普通充電の回数を変化させて均等充電の頻度を調整できる。
【0011】
上限値と下限値は積算放電量によって算出されているため、鉛蓄電池の劣化を考慮した適切な上限値と下限値を算出できる。その上で電池使用時のSOCからではなく、鉛蓄電池の健全状態を表すSOHから均等充電の頻度を調整しているため、鉛蓄電池の使用環境によって変動する鉛蓄電池のSOH変化に対応した充電方法の切り替えを行うことができる。
【0012】
(2)前記1セットにおける均等充電の回数は1回であり、前記制御部は、前記1セットにおける普通充電の回数を変化させてもよい。
1セットにおける均等充電の回数が1回であるため、適切な頻度で均等充電を行うことができ、過充電による正極の劣化を抑制できる。
【0013】
(3)前記制御部は、前記SOHが前記上限値を超えた場合、前記普通充電の回数を増やし、前記SOHが前記下限値を超えた場合、前記普通充電の回数を減らしてもよい。
SOHが上限値を超えた場合には普通充電の回数を増やして過充電量を少なくすることで正極格子腐食を抑制し、鉛蓄電池の寿命を延ばすことができる。一方、SOHが下限値を超えた場合には普通充電の回数を減らして充電量を多くすることでサルフェーションを解消しSOHの回復を行うことができる。
【0014】
(4)前記制御部は、前記判定部により前記SOHが前記上限値と前記下限値を超えたと判定された場合に、前記1セットにおける前記普通充電の回数を1回ずつ変化させてもよい。
普通充電の回数を1回ずつ変化させることで均等充電の頻度を急激に変化させないようにできる。
【0015】
(5)前記制御部は、前記1セットにおける前記普通充電の回数が第1の所定回数より少ない回数から増加して前記第1の所定回数となり、かつ前記判定部により前記SOHが前記上限値を超えたと判定された場合、および前記1セットにおける前記普通充電の回数が第2の所定回数より多い回数から減少して前記第2の所定回数となり、かつ前記判定部により前記SOHが前記下限値を超えたと判定された場合に、前記均等充電の充電時間を変化させてもよい。
【0016】
1セットにおける普通充電の回数が第1の所定回数より少ない回数から増加して第1の所定回数となり、かつSOHが上限値を超えた場合、および1セットにおける普通充電の回数が第2の所定回数より多い回数から減少して第2の所定回数となり、かつSOHが下限値を超えた場合に、均等充電の充電時間を変化させて均等充電の効果を調整できる。
【0017】
(6)前記制御部は、前記1セットにおける前記普通充電の回数が前記第1の所定回数より少ない回数から増加して前記第1の所定回数となり、かつ前記判定部により前記SOHが前記上限値を超えたと判定された場合に、前記1セットにおける前記均等充電の充電時間を減算し、前記1セットにおける前記普通充電の回数が前記第2の所定回数より多い回数から減少して前記第2の所定回数となり、かつ前記判定部により前記SOHが前記下限値を超えたと判定された場合に、前記1セットにおける前記均等充電の充電時間を加算し、上限充電時間と下限充電時間との間で前記充電時間を加算もしくは減算し、減算時には加算時に加算した時間分だけ減算してもよい。
【0018】
1セットにおける普通充電の回数が第1の所定回数より少ない回数から増加して第1の所定回数となり、かつSOHが上限値を超えた場合には1セットにおける均等充電の充電時間を減算して過充電量を少なくすることで正極格子腐食を抑制し、鉛蓄電池の寿命を延ばすことができる。一方、1セットにおける普通充電の回数が第2の所定回数より多い回数から減少して第2の所定回数となり、かつSOHが下限値を超えた場合には1セットにおける均等充電の充電時間を加算して充電量を多くすることでサルフェーションを解消しSOHの回復を行うことができる。また、上限充電時間と下限充電時間との間で充電時間を加算もしくは減算するから、充電時間を急激に変化させないようにできる。さらに、加算時に加算した時間分だけ減算するから、一度加算した後に一度減算した場合に元の充電時間に戻すことができる。
【0019】
(7)前記制御部は、前記1セットにおける前記普通充電の回数が前記第1の所定回数より少ない回数から増加して前記第1の所定回数となり、かつ前記判定部により前記SOHが前記上限値を超えたと判定された場合、および前記1セットにおける前記普通充電の回数が前記第2の所定回数より多い回数から減少して前記第2の所定回数となり、かつ前記判定部により前記下限値を超えたと判定された場合に、前記均等充電の充電時間を1回につき一定時間ずつ変化させてもよい。
均等充電の充電時間を1回につき一定時間ずつ変化させることで均等充電の時間を急激に変化させないようにできる。
【0020】
(8)前記算出部は、前記上限値および前記下限値を前記積算放電量に応じて設定可能であるものとしてもよい。
積算放電量に応じて最適な上限値および下限値を設定できる。
【0021】
(9)前記算出部は、前記上限値および前記下限値を前記普通充電の回数を更新する毎に設定してもよい。
普通充電の回数を更新する毎に最適な上限値および下限値を設定できる。
【0022】
(10)前記放電量積算部は、前記積算放電量として積算放電電気量または積算放電電力量を検出してもよい。
積算放電電気量または積算放電電力量に応じた上限値および下限値を設定できる。
【0023】
(11)上記の充電制御装置と、充電器と、を備えた充電装置に適用してもよい。
【0024】
(12)充電制御方法は、0以上の整数をXとし、1以上の整数をYとした場合に、X回の普通充電とY回の均等充電とを1セットとして繰り返し充電する場合における前記均等充電の頻度を制御する充電制御方法であって、鉛蓄電池の健全状態を表すSOHを検出するステップと、前記鉛蓄電池の積算放電量を検出するステップと、前記積算放電量に応じて前記SOHの上限値および下限値を算出するステップと、前記SOHが前記上限値と前記下限値を超えたかどうかを判定するステップと、前記SOHが前記上限値と前記下限値を超えたと判定された場合に、前記1セットにおける、前記普通充電及び前記均等充電の少なくとも一方の回数を変化させるステップと、を備えるものでもよい。
【0025】
(13)充電制御プログラムは、0以上の整数をXとし、1以上の整数をYとした場合に、X回の普通充電とY回の均等充電とを1セットとして繰り返し充電する場合における前記均等充電の頻度を制御する充電制御プログラムであって、鉛蓄電池の健全状態を表すSOHを検出し、前記鉛蓄電池の積算放電量を検出し、前記積算放電量に応じて前記SOHの上限値および下限値を算出し、前記SOHが前記上限値と前記下限値を超えたかどうかを判定し、前記SOHが前記上限値と前記下限値を超えたと判定された場合に、前記1セットにおける、前記普通充電及び前記均等充電の少なくとも一方の回数を変化させることをコンピューターに実行させるものでもよい。
【0026】
<実施形態1>
(1)電動式フォークリフトの構成
図1は、産業車両として電動式フォークリフト1の側面図を示す。電動式フォークリフト1は、図示しない走行用電動モータによって駆動輪2が回転駆動されるとともに、図示しない作業機用電動モータによって作業機3が作動される。
【0027】
電動式フォークリフト1の運転席4の下方には、鉛蓄電池10と、充電制御装置20と、が設けられている。運転席4の前方にあって運転者に視認される場所、例えばフロントコンソール5には、充電操作パネル40が設けられている。
【0028】
電動式フォークリフト1は、鉛蓄電池10を主たる駆動源として走行用電動モータおよび作業機用電動モータが駆動される。したがって、鉛蓄電池10にかかる電力負荷が大きいため、走行および作業の電力負荷に適合した容量の鉛蓄電池10が搭載されている。
【0029】
図2は、鉛蓄電池10と、充電制御装置20と、負荷30と、充電器7と、の電気的な構成をブロック図で示したものである。鉛蓄電池10は、例えば公称電圧2Vの蓄電素子を6セル直列に接続して構成した12Vの単電池を1単位として、6個直列に接続したモジュールを、6個並列接続した構成である。1モジュールの定格容量を例えば60Ahとすると、鉛蓄電池10は、72V-360Ahの容量を有している。
【0030】
(2)充電制御装置の構成
充電制御装置20は、
図1に示す外部電源6に接続された充電器7に対して、充電コード8を介して接続可能とされている。外部電源6は交流電源であり、充電器7は交流電力を直流電力に変換し、さらに充電用の直流電圧まで降圧させて充電用の電流を供給する。
【0031】
充電器7は、
図2に示すように、鉛蓄電池10に電力を供給し、鉛蓄電池10は、負荷30に電力を供給する。負荷30とは、上記した走行用電動モータや作業機用モータである。なお、充電器7と充電制御装置20により充電装置9が構成されている(
図1参照)。
【0032】
充電制御装置20は、
図2に示すように、制御部21と、判定部22と、算出部23と、放電量積算部24と、SOH検出部25と、入力部26と、を備える。
【0033】
制御部21は、例えばCPUやROM、RAM等により構成され、図示しない記憶部から読み出したコンピュータプログラムを実行することにより、充電制御装置20の動作を制御する。例えば、制御部21は、充電制御プログラムを読み出して実行することにより、
図3に示す充電制御方法を実行する処理部として機能する。
【0034】
SOH検出部25は、鉛蓄電池10の健全状態を表すSOH(State Of Health)を検出する。以下、鉛蓄電池10の健全状態をSOH(%)といい、SOHは定格容量を100%とした際の、劣化時の満充電時の電池容量の割合を示す。鉛蓄電池10の現在のSOHは、新品時の満充電時の電池容量から、サルフェーション容量低下量と格子腐食容量低下量とを減算することによって検出してもよい。鉛蓄電池10の現在のSOHは、新品時の満充電時の電池容量と現在の満充電時の電池容量から検出してもよい。
【0035】
放電量積算部24は、鉛蓄電池10の使用量として積算放電量を検出する。積算放電量としては、積算放電電気量(Ah)や積算放電電力量(Wh)などを使用できる。算出部23は、鉛蓄電池10の積算放電量に応じてSOH上限値およびSOH下限値を算出する。
図4および
図5において上側の一点鎖線がSOH上限値を示し、同じく下側の一点鎖線がSOH下限値を示す。判定部22は、SOHがSOH上限値とSOH下限値を超えたかどうかを判定する。入力部26は、普通充電回数、バッテリー電圧V、充電電流I、鉛蓄電池10の温度Tm等の情報を制御部21に入力する。
【0036】
SOH上限値とSOH下限値は、積算放電量に応じて算出部23が算出する。SOH上限値とSOH下限値は、普通充電回数を更新する度に算出部23により設定される。普通充電回数の更新とは、普通充電回数を減少、増加する場合だけでなく、普通充電回数を維持する場合も含む。
【0037】
(3)電動式フォークリフトの充電機能
本実施形態の電動式フォークリフト1は、3つの標準充電機能と、急速補充電機能と、を有している。3つの標準充電機能とは、普通充電、均等充電、およびリフレッシュ充電のことである。普通充電は3つの標準充電機能の中で最も充電量が少なく、リフレッシュ充電は最も充電量が多い。均等充電は普通充電の充電量とリフレッシュ充電の充電量との間の充電量を有する。
【0038】
普通充電は、通常の作業終了時、または容量低下の警告が表示されたときに行う充電である。普通充電の充電時間は約5から8時間である。普通充電の目標充電量は放電量の105%である。
【0039】
均等充電は、普通充電が所定回数行われた後に行われる充電である。均等充電の充電時間は約8時間から10時間である。均等充電の目標充電量は放電量の110%である。
【0040】
リフレッシュ充電は、満充電量に所定の充電量を加算したリフレッシュ充電量まで行う充電である。リフレッシュ充電は充電の途中停止が継続した場合などに、サルフェーションの進行を防止するために行われる。
【0041】
急速補充電は、昼休みなどの休憩時間を利用して、短時間で鉛蓄電池の充電量を回復させる場合に行う充電である。急速補充電の充電時間は最大1時間である。
【0042】
図6は、充電操作パネル40の画面の一例を示す。充電の指示は、充電操作パネル40のボタン操作によって行われる。充電操作パネル40には、普通充電ボタン41と、急速補充電ボタン42と、が設けられている。普通充電が所定回数行われた後、自動的に均等充電に切り替わるため、充電操作パネル40に均等充電ボタンは設けられていない。
【0043】
充電操作パネル40の普通充電ボタン41が押されると、制御部21に普通充電が指示され、その指示に応じて、制御部21は外部電源6から鉛蓄電池10に供給される電流を制御し、満充電量に至るまで充電を行う。この普通充電の制御は、検出されたバッテリー電圧Vと検出された鉛蓄電池10の温度Tmをフィードバックして、普通充電の電流変化パターンで行う。
図9に普通充電の電流変化パターン50を例示する。
【0044】
鉛蓄電池10は、最初に比較的高い充電電流値で所定の切替電圧まで充電され、必要に応じて電流値を小さくして所定の切替電圧まで再度充電する。ここまでの所定の切替電圧まで充電を行う領域は比較的充電効率の良い領域である。この充電と放電を繰り返している間は、総放電電気量に見合うだけの総充電電気量を供給することができない「不足充電領域」である。さらに所定の切替電圧を超えて充電を行うと、不足分、つまり総放電電気量と総充電電気量との差分に相当する電気量(放電量に対して105%から110%の充電量)が供給され「満充電」となる。さらに満充電量を超えてなお追加して充電することで、「リフレッシュ充電」が完了する。
【0045】
普通充電の電流変化パターン50を具体的に説明すると、
図9は、横軸を時間(h)とし左縦軸を充電電圧(V)とし右縦軸を充電電流(A)とした普通充電の充電動作の一例を示す。単電池の切替電圧V1は、下記の式(1)によって算出される。
式(1):V1=14.4+0.03(25-Tm)
【0046】
電流変化パターン50のうち1段目のステップ51では、充電電流I=72(A)で切替電圧V1=86.4(V)になるまで鉛蓄電池10を定電流で充電する。2段目のステップ52では、充電電流I=36(A)で切替電圧V1=86.4(V)になるまで鉛蓄電池10を定電流で充電する。3段目のステップ53では、充電電流I=18(A)で切替電圧V1=86.4(V)になるまで鉛蓄電池10を定電流で充電する。
【0047】
4段目+押込みのステップ54、55では、充電電流9(A)で切替電圧V1=86.4(V)を超えてからさらに定電流により鉛蓄電池10に対して押込み充電(5段目のステップ55)を行う。押込み充電の時間Tは、1段目のステップ51の充電時間と、1段目のステップ51の終了時の鉛蓄電池10の温度Tmと、に基づいて決定される。例えば、1段目のステップ51の充電時間と、1段目のステップ51の終了時の鉛蓄電池10の温度Tmと、に対応する押込み充電時間Tのマップを作成し、マップから押込み充電時間Tを読み出すようにしてもよい。
【0048】
均等充電の電流変化パターンと普通充電の電流変化パターン50とは、押込み充電時間Tの長さが異なる点を除いて、同じである。均等充電の押込み充電時間Tは、普通充電の押込み充電時間Tよりも2、3時間長いものとされている。
【0049】
(4)鉛蓄電池の使用環境による充放電量の変化
次に、
図7を参照して急速補充電の使用方法について説明する。
図7(A)は急速補充電を使用した電動式フォークリフト1の運用例を示し、
図7(B)は急速補充電を使用しない従来の電動式フォークリフト1の運用例を示す。昼休みや休憩時間などを利用して急速補充電を行うことにより1時間でバッテリー容量の最大60%を回復できる。したがって、急速補充電の使用により電動式フォークリフト1の長時間稼働を実現できる。一方、急速補充電を使用しない場合には、午後の稼働の途中にバッテリーの充電(またはバッテリー交換)が必要になるため、作業を中断せざるを得ず、作業効率が低下してしまう。
【0050】
次に、
図8を参照して急速補充電を行う場合に満充電時の充放電量が小さくなる現象について説明する。
図8の例1は急速補充電を使用しない場合の充放電量の推移を示したものである。午前中に100%から40%まで放電し、昼休みの間、停止させた後、午後から放電を再開したところ、40%から20%に低下したところで充電を開始した様子を示す。この場合、DOD(放電深度)は80%である。
【0051】
図8の例2と例3は、いずれも昼休みに急速補充電を行った場合の充放電量の推移を示したものであるが、例2は普通充電を開始する直前のDODが70%であるのに対して、例3は普通充電を開始する直前のDODが20%である点で両者は相違している。普通充電では充電直前のDODによって押込み充電量が設定されるため、例2の場合には押込み充電を十分行うことができる。しかしながら、例3の場合には充電直前のDODが例2の場合よりも小さく、その分押込み充電量が小さくなるため、例2の場合よりも満充電時の充放電量が小さくなる。
【0052】
(5)鉛蓄電池のSOH変化に対応した充電方法
急速補充電を行うと、充電直前のDODは急速補充電を行わない場合よりも低下し、押込み充電量が小さくなる場合がある。押込み充電量が小さくなると、SOHは徐々に低下してしまうため、普通充電が複数回行われた後、均等充電が自動的に行われるようにすることでSOHの低下を抑制できる。
図5は、1回の均等充電とその後に続く複数回の普通充電とを1セットとして繰り返し充電する場合における、積算放電電気量(Ah)に対するSOH(%)の推移を示したものであり、大きい三角は均等充電の満充電後のSOHを示し、小さい三角は普通充電の満充電後のSOHを示している。
図5において上下の一点鎖線のうち上側のものはSOH上限値を示し、下側のものはSOH下限値を示している。
【0053】
図5において左側から順に、1つ目の1セットを第1セットFS1といい、2つ目以降の1セットをそれぞれ第2セットFS2、第3セットFS3、…というものとする。第1セットFS1は4回の普通充電と1回の均等充電とで構成され、第2セットFS2以降も全て4回の普通充電と1回の均等充電とで構成されている。すなわち、全て5回に1回の頻度で均等充電が行われる。
【0054】
均等充電が行われると、SOHは一時的に上昇するが、均等充電後のSOHは積算放電電気量の増加に伴って徐々に減少していき、85%をやや下回ったところでSOHはほぼ一定になることがわかる。すなわち、5回に1回の頻度で均等充電を行っているだけではSOHは回復せず、85%をやや下回ったところでSOHの減少がなくなり、その後一定の水準で推移することがわかる。
【0055】
そこで、本実施形態の充電制御装置20ではSOH上限値とSOH下限値を設定し、制御部21は、SOHがSOH下限値を超えたら(SOH下限値より小さくなったら)、均等充電の頻度を上げることでSOHを増加させ、SOHがSOH上限値を超えたら(SOH上限値より大きくなったら)、均等充電の頻度を下げることでSOHを減少させるように制御している。
【0056】
次に、
図3のフローチャートを参照しながら、本実施形態の充電制御方法を説明する。制御部21は、入力部26からの情報を蓄積するとともに、所定の処理を実行する。CPUが搭載されたコンピューターを充電制御装置20または充電器7に接続し、このコンピューターにインストールされたプログラムを通じて上記所定の処理を実行してもよい。
【0057】
まず、リフレッシュ充電しないかどうかを判断する(ステップS1)。リフレッシュ充電する場合には(ステップS1でNo)、処理を終了し、リフレッシュ充電しない場合には(ステップS1でYes)、普通充電回数を入力する(ステップS2)。普通充電回数とは、0以上の整数をXとし、1以上の整数をYとした場合に、X回の普通充電とY回の均等充電とを1セットとして繰り返し充電する場合のXのことである。
【0058】
次に、鉛蓄電池10の満充電後のSOHを入力し(ステップS3)、積算放電量を入力し(ステップS4)、SOH上限値とSOH下限値を算出する(ステップS5)。次に、SOHがSOH下限値より小さいか否かを判断する(ステップS6)。SOHがSOH下限値より小さい場合(ステップS6でYes)、普通充電回数をデクリメントさせて(減らして)(ステップS7)処理を終了する。一方、SOHがSOH下限値以上の場合には(ステップS6でNo)、SOHがSOH上限値より大きいか否かを判断する(ステップS8)。SOHがSOH上限値より大きい場合(ステップS8でYes)、普通充電回数をインクリメントさせて(増やして)(ステップS9)処理を終了する。一方、SOHがSOH上限値以下の場合には(ステップS8でNo)、普通充電回数を維持して(ステップS10)処理を終了する。
【0059】
図4を参照しながら、普通充電回数を変更する処理を具体的に説明する。
図4において左側から順に、1つ目の1セットを第1セットNS1といい、2つ目以降の1セットをそれぞれ第2セットNS2、第3セットNS3、…というものとする。第1セットNS1から第3セットNS3までは4回の普通充電と1回の均等充電とで構成されている。大きい丸は均等充電の満充電後のSOHを示し、小さい丸は普通充電の満充電後のSOHを示している。
図4において上下の一点鎖線のうち上側のものはSOH上限値を示し、下側のものはSOH下限値を示している。
【0060】
第3セットNS3では、普通充電の最終回の(4回目の)SOHがSOH下限値より小さいため、第4セットNS4では、普通充電の回数が4回から3回にデクリメントされている。第4セットNS4では、普通充電の最終回の(3回面の)SOHがSOH下限値より小さいため、第5セットNS5では、普通充電の回数が3回から2回にデクリメントされている。第5セットNS5では、普通充電の最終回の(2回目の)SOHがSOH下限値より小さいため、第6セットNS6では、普通充電の回数が2回から1回にデクリメントされている。第6セットNS6では、普通充電のSOHがSOH下限値より小さいが、普通充電の回数(X回)は1回のままである。本実施形態では穏やかにSOHを回復するためXの最小値を1に制限したが、Xの最小値を0とした場合は、連続して均等充電が実施され、急速にSOHを回復することもできる。
【0061】
図4のグラフでは第4セットNS4の普通充電の最小SOHが最下限となっており、第5セットNS5の普通充電の最小SOHは、第4セットNS4の普通充電の最小SOHより大きい。その後、第4セットNS4以降、普通充電のSOHは上昇に転じ、第7セットNS7の普通充電のSOHはSOH下限値より大きくなり、第25セットNS25の普通充電のSOHはSOH上限値より大きくなっている。したがって、第26セットNS26では、普通充電の回数が1回から2回にインクリメントされている。第26セットNS26では、普通充電の最終回の(2回目の)SOHがSOH上限値より小さくなっている。その後、普通充電の最終回の(2回目の)SOHはSOH上限値以下かつ、SOH下限値以上のため、普通充電回数は2回のまま維持され、均等充電のSOHはほぼ一定の値となっている。
【0062】
(6)実施形態1の効果
充電制御装置20は、0以上の整数をXとし、1以上の整数をYとした場合に、X回の普通充電とY回の均等充電とを1セットとして繰り返し充電する場合における均等充電の頻度を制御する充電制御装置20であって、鉛蓄電池10の健全状態を表すSOHを検出するSOH検出部25と、鉛蓄電池10の積算放電量を検出する放電量積算部24と、積算放電量に応じてSOHの上限値および下限値を算出する算出部23と、SOHが上限値と下限値を超えたかどうかを判定する判定部22と、判定部22によりSOHが上限値と下限値を超えたと判定された場合に、1セットにおける、普通充電及び均等充電の少なくとも一方の回数を変化させる制御部21と、を備える。
【0063】
普通充電の繰り返しにより、押込み充電が少ない状態で繰り返し使用すると、サルフェーションを進めることにつながるため、充電不足の状態が長く続かないように、適切な頻度で均等充電を行う必要がある。一方、均等充電を頻繁に行い過ぎると、過充電によって正極格子の酸化腐食による劣化が進んでしまう。これに対し上記の充電制御装置20によると、SOHが上限値と下限値を超えた場合に普通充電の回数を変化させて均等充電の頻度を調整できる。
【0064】
上限値と下限値は積算放電量によって算出されているため、鉛蓄電池10の劣化を考慮した適切な上限値と下限値を算出できる。その上で電池使用時のSOCからではなく、鉛蓄電池10の健全状態を表すSOHから均等充電の頻度を調整しているため、鉛蓄電池10の使用環境によって変動する鉛蓄電池10のSOH変化に対応した充電方法の切り替えを行うことができる。
【0065】
1セットにおける均等充電の回数は1回であり、制御部21は、1セットにおける普通充電の回数を変化させてもよい。
1セットにおける均等充電の回数が1回であるため、適切な頻度で均等充電を行うことができ、過充電による正極の劣化を抑制できる。
【0066】
制御部21は、SOHが上限値を超えた場合、普通充電の回数を増やし、SOHが下限値を超えた場合、普通充電の回数を減らしてもよい。
SOHが上限値を超えた場合には普通充電の回数を増やして過充電量を少なくすることで正極格子腐食を抑制し、鉛蓄電池10の寿命を延ばすことができる。一方、SOHが下限値を超えた場合には普通充電の回数を減らして充電量を多くすることでサルフェーションを解消しSOHの回復を行うことができる。
【0067】
制御部21は、判定部22によりSOHが上限値と下限値を超えたと判定された場合に、1セットにおける普通充電の回数を1回ずつ変化させてもよい。
普通充電の回数を1回ずつ変化させることで均等充電の頻度を急激に変化させないようにできる。
【0068】
算出部23は、上限値および下限値を積算放電量に応じて設定可能であるものとしてもよい。
積算放電量に応じて最適な上限値および下限値を設定できる。
【0069】
算出部23は、上限値および下限値を普通充電の回数を更新する毎に設定してもよい。
普通充電の回数を更新する毎に最適な上限値および下限値を設定できる。
【0070】
放電量積算部24は、積算放電量として積算放電電気量または積算放電電力量を検出してもよい。
積算放電電気量または積算放電電力量に応じた上限値および下限値を設定できる。
【0071】
上記の充電制御装置20と、充電器7と、を備えた充電装置9に適用してもよい。
【0072】
充電制御方法は、0以上の整数をXとし、1以上の整数をYとした場合に、X回の普通充電とY回の均等充電とを1セットとして繰り返し充電する場合における均等充電の頻度を制御する充電制御方法であって、鉛蓄電池10の健全状態を表すSOHを検出するステップと、鉛蓄電池10の積算放電量を検出するステップと、積算放電量に応じてSOHの上限値および下限値を算出するステップと、SOHが上限値と下限値を超えたかどうかを判定するステップと、SOHが上限値と下限値を超えたと判定された場合に、1セットにおける、普通充電及び均等充電の少なくとも一方の回数を変化させるステップと、を備える充電制御方法としてもよい。
【0073】
充電制御プログラムは、0以上の整数をXとし、1以上の整数をYとした場合に、X回の普通充電とY回の均等充電とを1セットとして繰り返し充電する場合における均等充電の頻度を制御する充電制御プログラムであって、鉛蓄電池の健全状態を表すSOHを検出し、鉛蓄電池の積算放電量を検出し、積算放電量に応じてSOHの上限値および下限値を算出し、SOHが上限値と下限値を超えたかどうかを判定し、SOHが上限値と下限値を超えたと判定された場合に、1セットにおける、普通充電及び均等充電の少なくとも一方の回数を変化させることをコンピューターに実行させる充電制御プログラムとしてもよい。
【0074】
<実施形態2>
(1)充電制御装置の構成
次に、実施形態2を
図10から
図12によって説明する。実施形態2の充電制御装置220は、実施形態1の充電制御装置20に均等充電時間変更機能を追加したものであり、構成としては
図2に示すブロック図と同じであるため、判定部222、算出部223、放電量積算部224、SOH検出部225、入力部226についての説明は省略する。
【0075】
均等充電時間の変更は制御部221から充電器7に送信される信号に基づいて行われる。制御部221は、均等充電時間を加算する信号を充電器7に送信し、制御部221からの信号に基づいて充電器7は現在の均等充電時間を加算された均等充電時間に変更する。制御部221は、均等充電時間を減算する信号を充電器7に送信し、制御部221からの信号に基づいて充電器7は現在の均等充電時間を減算された均等充電時間に変更する。充電器7は、制御部221から均等充電時間を加算または減算する信号を受信しなかった場合、現在の均等充電時間を維持する。
【0076】
(2)鉛蓄電池のSOH変化に対応した充電方法
次に、
図11のフローチャートを参照しながら、本実施形態の充電制御方法を説明する。制御部221は、入力部226からの情報を蓄積するとともに、所定の処理を実行する。CPUが搭載されたコンピューターを充電制御装置220または充電器7に接続し、このコンピューターにインストールされたプログラムを通じて上記所定の処理を実行してもよい。
【0077】
まず、普通充電または均等充電が終了したかどうかを判断する(ステップS21)。普通充電または均等充電が終了していない場合には(ステップS21でNo)、処理を終了する。一方、普通充電または均等充電が終了している場合には(ステップS21でYes)、入力部226によって鉛蓄電池10の満充電後のSOHを入力し(ステップS22)、積算放電量を入力し(ステップS23)、SOH上限値とSOH下限値を算出する(ステップS24)。
【0078】
次に、SOHがSOH下限値より小さいか否かを判断する(ステップS25)。SOHがSOH下限値より小さい場合(ステップS25でYes)、均等充電時間を所定時間だけ加算して(ステップS26)処理を終了する。一方、SOHがSOH下限値以上の場合には(ステップS25でNo)、SOHがSOH上限値より大きいか否かを判断する(ステップS27)。SOHがSOH上限値より大きい場合(ステップS27でYes)、均等充電時間を減算して(ステップS28)処理を終了する。一方、SOHがSOH上限値以下の場合には(ステップS28でNo)、均等充電時間を維持して(ステップS29)処理を終了する。
【0079】
図12を参照しながら、普通充電回数を変更しつつ均等充電時間を変更する処理を具体的に説明する。
図12は、1回の均等充電とその後に続くX回(Xは0以上4以下の整数)の普通充電とを1セットとして繰り返し充電する場合における、積算放電電気量(Ah)に対するSOH(%)の推移を示したものである。大きい丸と大きい二重丸とは均等充電の満充電後のSOHを示し、小さい丸は普通充電の満充電後のSOHを示している。大きい二重丸の充電時間は大きい丸の充電時間より15分長い。
図12において上下の一点鎖線のうち上側のものはSOH上限値を示し、下側のものはSOH下限値を示している。
【0080】
図12において左側から順に、1つ目の1セットを第1セットBS1といい、2つ目以降の1セットをそれぞれ第2セットBS2、第3セットBS3、…というものとする。第1セットBS1から第3セットBS3までは4回の普通充電とその後に続く1回の均等充電とで構成されている。第4セットBS4は3回の普通充電とその後に続く1回の均等充電とで構成され、第5セットBS5は2回の普通充電とその後に続く1回の均等充電とで構成され、第6セットBS6は1回の普通充電とその後に続く1回の均等充電とで構成されている。
【0081】
第3セットBS3では、普通充電の3回目と4回目のSOHがSOH下限値より小さいため、第4セットBS4では、普通充電回数が4回から3回にデクリメントされている。第4セットBS4では、普通充電の2回目と3回目のSOHがSOH下限値より小さいため、第5セットBS5では、普通充電回数が3回から2回にデクリメントされている。第5セットBS5では、普通充電の全てのSOHがSOH下限値より小さいため、第6セットBS6では、普通充電回数が2回から1回にデクリメントされている。
【0082】
第6セットBS6では、普通充電のSOHと均等充電のSOHとがいずれもSOH下限値より小さいため、第7セットBS7では、普通充電回数が1回から0回にデクリメントされている。さらに、第7セットBS7では、普通充電回数が第2の所定回数である0回になると同時に均等充電時間がt分から15分加算されてt+15分に変更されている。
【0083】
第7セットBS7から第11セットBS11までは、普通充電回数が0回でかつ均等充電時間がt+15分のまま推移している。すなわち、第7セットBS7から第11セットBS11までは、t+15分の均等充電時間を維持したまま5回連続で均等充電が行われている。
【0084】
第11セットBS11では、均等充電のSOHがSOH上限値より大きいため、第12セットBS12では、普通充電回数が0回から1回にインクリメントされている。第12セットBS12では、普通充電のSOHと均等充電のSOHがいずれもSOH上限値より大きいため、第13セットBS13では、普通充電回数が1回から2回にインクリメントされている。第13セットBS13では、普通充電の全てのSOHがいずれもSOH上限値より大きいため、第14セットBS14では、普通充電回数が2回から3回にインクリメントされている。第14セットBS14では、普通充電の全てのSOHがいずれもSOH上限値より大きいため、第15セットBS15では、普通充電回数が3回から4回にインクリメントされている。第15セットBS15では、普通充電の全てのSOHがいずれもSOH上限値より大きいが、普通充電回数の上限が4回に設定されているため、普通充電回数をインクリメントすることなく4回のまま維持する。さらに、普通充電回数が第1の所定回数である4回になると同時に均等充電時間がt+15分から15分減算されてt分に変更されている。第15セットBS15では、普通充電の全てのSOHがいずれもSOH上限値より大きいため、第16セットBS16では、普通充電回数を4回のまま維持する。第16セットBS16では、普通充電の1回目と2回目のSOHがSOH上限値より大きいため、普通充電回数を4回のまま維持する。
【0085】
(3)実施形態の効果
制御部221は、1セットにおける普通充電の回数が第1の所定回数(4回)より少ない回数(0回)から増加して第1の所定回数となり、かつ判定部222によりSOHがSOH上限値を超えたと判定された場合、および1セットにおける普通充電の回数が第2の所定回数(0回)より多い回数(4回)から減少して第2の所定回数となり、かつ判定部222によりSOHがSOH下限値を超えたと判定された場合に、均等充電の充電時間を変化させてもよい。
【0086】
1セットにおける普通充電の回数が第1の所定回数(4回)より少ない回数(0回)から増加して第1の所定回数となり、かつSOHがSOH上限値を超えた場合、および1セットにおける普通充電の回数が第2の所定回数(0回)より多い回数(4回)から減少して第2の所定回数となり、かつSOHがSOH下限値を超えた場合に、均等充電の充電時間を変化させて均等充電の効果を調整できる。
【0087】
制御部221は、1セットにおける普通充電の回数が第1の所定回数(4回)より少ない回数(0回)から増加して第1の所定回数となり、かつ判定部222によりSOHがSOH上限値を超えたと判定された場合に、1セットにおける均等充電の充電時間を減算し、1セットにおける普通充電の回数が第2の所定回数(0回)より多い回数(4回)から減少して第2の所定回数となり、かつ判定部222によりSOHがSOH下限値を超えたと判定された場合に、1セットにおける均等充電の充電時間を加算し、上限充電時間(t+15分)と下限充電時間(t分)との間で充電時間を加算もしくは減算し、減算時には加算時に加算した時間分(15分)だけ減算してもよい。
【0088】
1セットにおける普通充電の回数が第1の所定回数(4回)より少ない回数(0回)から増加して第1の所定回数となり、かつSOHが上限値を超えた場合には1セットにおける均等充電の充電時間を減算して過充電量を少なくすることで正極格子腐食を抑制し、鉛蓄電池の寿命を延ばすことができる。一方、1セットにおける普通充電の回数が第2の所定回数(0回)より多い回数(4回)から減少して第2の所定回数となり、かつSOHが下限値を超えた場合には1セットにおける均等充電の充電時間を加算して充電量を多くすることでサルフェーションを解消しSOHの回復を行うことができる。また、上限充電時間(t+15分)と下限充電時間(t分)との間で充電時間を加算もしくは減算するから、充電時間を急激に変化させないようにできる。さらに、加算時に加算した時間分(15分)だけ減算するから、一度加算した後に一度減算した場合に元の充電時間に戻すことができる。
【0089】
制御部221は、1セットにおける普通充電の回数が第1の所定回数(4回)より少ない回数(0回)から増加して第1の所定回数となり、かつ判定部222によりSOHがSOH上限値を超えたと判定された場合、および1セットにおける普通充電の回数が第2の所定回数(0回)より多い回数(4回)から減少して第2の所定回数となり、かつ判定部222によりSOH下限値を超えたと判定された場合に、均等充電の充電時間を1回につき一定時間(15分)ずつ変化させてもよい。
【0090】
均等充電の充電時間を1回につき一定時間(15分)ずつ変化させることで均等充電の時間を急激に変化させないようにできる。
<他の実施形態>
本明細書によって開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態1、2に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書によって開示される技術的範囲に含まれる。
【0091】
(1)上記実施形態1では1回から4回の普通充電と1回の均等充電とを1セットとして普通充電回数を制御しているが、普通充電回数は0回でもよいし、5回以上でもよい。
【0092】
(2)上記実施形態1、2では1セットにおける均等充電回数を1回としているが、均等充電回数を2回以上にしてもよい。
【0093】
(3)上記実施形態1、2では1セットにおける普通充電回数を変化させているが、1セットにおける均等充電回数を変化させてもよい。
【0094】
(4)上記実施形態1ではSOHがSOH下限値を超えた場合、普通充電回数を減らすようにしているが、SOHがSOH下限値を超えた場合でも普通充電回数を減らさないようにしてもよい(例えば、
図4の第6セットNS6と第7セットNS7を参照)。
【0095】
(5)上記実施形態1、2では1セットにおける普通充電回数を一度に4回から3回、3回から2回、2回から1回という具合に1回ずつ変化させているが、普通充電回数を一度に4回から1回に変化させてもよい。
【0096】
(6)上記実施形態2では第1の所定回数を4回に設定していたが、第1の所定回数を5回以上に設定してもよく、3回以下に設定してもよい。また、上記実施形態2では第2の所定回数を0回に設定していたが、第2の所定回数を1回以上に設定してもよい。
【0097】
(7)上記実施形態2では均等充電時間を一度に15分加減算しているが、一度に5分ずつ3回に分けて加減算してもよい。
【0098】
(8)上記実施形態2では均等充電時間をt分からt+15分に変化させた場合、t分に戻しているが、必ずしもt分に戻す必要はなく、現在のSOHに基づいて均等充電時間を適宜決定してもよい。
【符号の説明】
【0099】
1:電動式フォークリフト 2:駆動輪 3:作業機 4:運転席 5:フロントコンソール 6:外部電源 7:充電器 8:充電コード 9:充電装置
10:鉛蓄電池
20:充電制御装置 21:制御部 22:判定部 23:算出部 24:放電量積算部 25:SOH検出部 26:入力部
30:負荷
40:充電操作パネル 41:普通充電ボタン 42:急速補充電ボタン
50:電流パターン
220:充電制御装置 221:制御部 222:判定部 223:算出部 224:放電量積算部 225:SOH検出部 226:入力部