(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155491
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】光電変換素子の製造方法、及び光学式センサ
(51)【国際特許分類】
H01L 51/42 20060101AFI20221005BHJP
H01L 31/0232 20140101ALI20221005BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20221005BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
H01L31/08 T
H01L31/02 D
C08G73/10
G06T1/00 400G
G06T1/00 420D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021332
(22)【出願日】2022-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2021058790
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 安
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 昭雄
【テーマコード(参考)】
4J043
5B047
5F849
【Fターム(参考)】
4J043PA02
4J043QB31
4J043RA35
4J043SA06
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4J043SB01
4J043TA14
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5F849XA66
(57)【要約】
【課題】光電効果の感度が高い活性層を有する光電変換素子の製造方法を提供する。活性層の光電効果の感度が高い光電変換素子を備えた光学式センサを提供する。
【解決手段】光電変換素子の製造方法は、化学式1に示される繰り返し単位を有する活性層を生成する活性層生成工程を有する。活性層生成工程は、ポリアミック酸を含む第1液を塗布し、第1層を形成する第1層形成工程と、第1層を120℃で20分から60分加熱する第1加熱工程と、第1層を230℃から280℃で10分加熱する第2加熱工程と、を有する。光学式センサは、基板と、基板に積層されるセンサ部と、を備え、センサ部は、検出電極、電子輸送層、活性層、正孔輸送層、及び対向電極を有し、かつ基板に積層される光電変換素子を有し、活性層は、下記の化学式5で表示される繰り返し単位を有するポリイミド系材料により成る。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1に示される繰り返し単位を有する活性層を生成する活性層生成工程を有し、
前記活性層生成工程は、
前駆体であるポリアミック酸を塗布し、第1層を形成する第1層形成工程と、
前記第1層を120℃で20分から60分加熱する第1加熱工程と、
前記第1層を230℃から280℃で10分加熱する第2加熱工程と、
を有する光電変換素子の製造方法。
【化1】
【請求項2】
下記の化学式2に示される繰り返し単位を有する活性層を生成する活性層生成工程を有し、
前記活性層生成工程は、
下記の化学式2の前駆体であるポリアミック酸溶液を塗布し、第1層を形成する第1層形成工程と、
前記第1層を120℃で20分から60分加熱する第1加熱工程と、
前記第1層を180℃から280℃で10分加熱する第2加熱工程と、
を有する光電変換素子の製造方法。
【化2】
【請求項3】
下記の化学式3に示される繰り返し単位を有する活性層を生成する活性層生成工程を有し、
前記活性層生成工程は、
前駆体であって下記の化学式4に示される繰り返し単位を有するポリアミド酸を塗布し、第1層を形成する第1層形成工程と、
前記第1層を120℃で20分から60分加熱する第1加熱工程と、
前記第1層を180℃から280℃で10分加熱する第2加熱工程と、
を有する光電変換素子の製造方法。
【化3】
【化4】
【請求項4】
可溶性ポルフィリン又はフタロシアニン化合物を塗布し、活性層の下地層を形成する下地層形成工程と、
前記下地層を150℃で加熱処理する下地層加熱工程と、
を有し、
前記第1層形成工程は、前記下地層加熱工程の後に、前記前駆体に前記下地層で選択した前記可溶性ポルフィリン又はフタロシアニン化合物を加えて混合したものを塗布し、前記第1層を形成する
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項5】
基板と、
前記基板に積層されるセンサ部と、
を備え、
前記センサ部は、検出電極、電子輸送層、活性層、正孔輸送層、及び対向電極を有し、かつ前記基板に積層される光電変換素子を有し、
前記活性層は、下記の化学式5で表示される繰り返し単位を有するポリイミド系材料により成る光学式センサ。
【化5】
【請求項6】
前記センサ部に積層される光フィルタを備え、
前記光フィルタは、前記センサ部に直接形成される
請求項5に記載の光学式センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光電変換素子の製造方法、及び光学式センサに関する。
【背景技術】
【0002】
光学式センサは、フォトダイオードなどの光電変換素子を有する。非特許文献1に開示される光電変換素子は、ポリイミドで製造された活性層(ポリイミド層)を有している。また、非特許文献1には、ポリイミドが結晶化し、光電効果を発揮する活性層(ポリイミド層)を製造するため、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を300℃で2時間加熱処理することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Akio Takimoto等著「Electrophotographic and structural studies on novel photoconductive polyimide films」 Journal of Applied Physics 1991年発行 第70巻(5号)、p2799
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1で得られる活性層は、光電効果の感度が低い。
【0005】
本開示は、活性層の光電効果の感度が高い光電変換素子の製造方法を提供することを目的とする。また、活性層の光電効果の感度が高い光電変換素子を備えた光学式センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様に係る光電変換素子の製造方法は、下記の化学式1に示される繰り返し単位を有する活性層を生成する活性層生成工程を有する。前記活性層生成工程は、前駆体であるポリアミック酸を塗布し、第1層を形成する第1層形成工程と、前記第1層を120℃で20分から60分加熱する第1加熱工程と、前記第1層を230℃から280℃で10分加熱する第2加熱工程と、を有する。
【0007】
【0008】
本開示の第2の態様に係る光電変換素子の製造方法は、下記の化学式2に示される繰り返し単位を有する活性層を生成する活性層生成工程を有する。前記活性層生成工程は、下記の化学式2の前駆体であるポリアミック酸溶液を塗布し、第1層を形成する第1層形成工程と、前記第1層を120℃で20分から60分加熱する第1加熱工程と、前記第1層を180℃から280℃で10分加熱する第2加熱工程と、を有する。
【0009】
【0010】
本開示の第3の態様に係る光電変換素子の製造方法は、下記の化学式3に示される繰り返し単位を有する活性層を生成する活性層生成工程を有する。前記活性層生成工程は、前駆体であり下記の化学式4に示される繰り返し単位を有するポリアミド酸を塗布し、第1層を形成する第1層形成工程と、前記第1層を120℃で20分から60分加熱する第1加熱工程と、前記第1層を180℃から280℃で10分加熱する第2加熱工程と、を有する。
【0011】
【0012】
【0013】
本開示の一態様に係る光学式センサは、基板と、前記基板に積層されるセンサ部と、を備える。前記センサ部は、検出電極、電子輸送層、活性層、正孔輸送層、及び対向電極を有し、かつ前記基板に積層される光電変換素子を有する。前記活性層は、下記の化学式5で表示される繰り返し単位を有するポリイミド系材料により成る。
【0014】
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】
図1Aは、実施形態1に係る光学式センサの断面図である。
【
図1B】
図1Bは、変形例1に係る光学式センサの断面図である。
【
図1C】
図1Cは、変形例2に係る光学式センサの断面図である。
【
図1D】
図1Dは、変形例3に係る光学式センサの断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係るセンサ基板を示す平面図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る検出装置の構成例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施形態1に係る検出装置を示す回路図である。
【
図5】
図5は、実施形態1の複数の部分検出領域を示す回路図である。
【
図6】
図6は、センサ部の概略断面構成を示す断面図である。
【
図7】
図7は、実施形態1に係るフォトダイオードの製造工程を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態1に係る活性層の製造工程を示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態2に係るセンサ部の概略断面構成を示す断面図である。
【
図10】
図10は、実施形態2に係る活性層の製造工程を示す図である。
【
図11】
図11は、実施形態3に係るセンサ部の概略断面構成を示す断面図である。
【
図12】
図12は、実施形態3に係る活性層の製造工程を示す図である。
【
図13】
図13は、実施形態4に係るセンサ部の概略断面構成を示す断面図である。
【
図14】
図14は、実施形態4に係る活性層の製造工程を示す図である。
【
図15】
図15は、実施形態4の活性層の変形例を示す断面図である。
【
図16】
図16は、光電変換素子の変形例を示す断面図である。
【
図17】
図17は、試料1から試料8のX線回折分析結果を示すチャートである。
【
図18】
図18は、試料2、試料3、試料4、試料5、試料6、試料7、試料8におけるX線スペクトルの半値幅と成膜時の基板温度との関係を示すグラフである。
【
図19】
図19は、試料11から試料16のX線回折分析結果を示すチャートである。
【
図20】
図20は、試料11から試料16におけるX線スペクトルの半値幅と成膜時の基板温度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本開示が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、本開示の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本開示の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本開示と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0017】
本明細書及び特許請求の範囲において、ある構造体の上に他の構造体を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある構造体に接するように、直上に他の構造体を配置する場合と、ある構造体の上方に、さらに別の構造体を介して他の構造体を配置する場合との両方を含むものとする。
【0018】
(実施形態1)
図1Aは、実施形態1に係る光学式センサの断面図である。
図1Bは、変形例1に係る光学式センサの断面図である。
図1Cは、変形例2に係る光学式センサの断面図である。
図1Dは、変形例3に係る光学式センサの断面図である。
【0019】
実施形態の説明では、光電変換素子(実施形態中においてフォトダイオード30と称する)を光学式センサ120に適用した場合を例に挙げて説明する。
図1Aに示すように、光学式センサ120は、検出装置1と、照明装置121と、を有する照明装置付き検出機器である。検出装置1は、センサ基板2と、光フィルタ7と、接着層125と、カバー部材122と、を有する。また、センサ基板2の表面に垂直な方向に、センサ基板2、光フィルタ7、接着層125、カバー部材122、照明装置121の順に積層される。
【0020】
接着層125は、光フィルタ7とカバー部材122を接着する。なお、接着層125は、光フィルタ7とカバー部材122の全面同士を接着する必要はない。例えば、検出領域AAに対応する領域を接着せず、周辺領域GAに対応する領域のみを接着する構造であってもよい。カバー部材122は、センサ基板2及び光フィルタ7を保護するための部材であり、センサ基板2及び光フィルタ7を覆っている。カバー部材122は、例えばガラス基板である。
【0021】
照明装置121は、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)などの光源又は表示パネルが挙げられる。表示パネルは、例えば、有機ELディスプレイパネル(OLED:Organic Light Emitting Diode)や無機ELディスプレイ(マイクロLED、ミニLED)であってもよい。或いは、表示パネルは、表示素子として液晶素子を用いた液晶表示パネル(LCD:Liquid Crystal Display)や、表示素子として電気泳動素子を用いた電気泳動型表示パネル(EPD:Electrophoretic Display)であってもよい。
【0022】
このような光学式センサ120において、照明装置121から照射された光L1は、指Fgで反射する。検出装置1は、指Fgで反射した光L2を検出し、指Fgの表面の凹凸(例えば、指紋)を検出する。検出装置1は、指紋の検出に加え、指Fgの内部で反射した光L2を検出し、生体に関する情報を検出してもよい。生体に関する情報は、例えば、静脈等の血管像や脈拍、脈波等である。照明装置121から照射される光L1の色は、検出対象に応じて異ならせてもよい。
【0023】
なお、光学式センサ120は、
図1Aに示す例に限定されない。
図1Bに示すように、照明装置121は、例えば、カバー部材122を検出装置1の検出領域AAに対応する位置に設けられた導光板として用い、カバー部材122の一方端又は両端に並ぶ複数の光源123を有する、いわゆるサイドライト型のフロントライトであってもよい。つまり、カバー部材122は、光を照射する光照射面121aを有し、照明装置121の一構成要素となっている。この照明装置121によれば、カバー部材122の光照射面121aから検出対象である指Fgに向けて光L1を照射する。光源として、例えば、所定の色の光を発するLEDが用いられる。
【0024】
また、
図1Cに示すように、照明装置121をカバー部材122の側方や上方に設け、指Fgの側方や上方から指Fgに光L1を照射するようにしてもよい。
【0025】
また、
図1Dに示すように、照明装置121は、検出装置1の背面に設けられた、いわゆる直下型のバックライトであってもよい。
【0026】
そのほか、特に図示しないが、照明装置121そのものが、カバー部材122となっていてもよい。または、照明装置121を備えず、指Fgから反射した太陽光を検出してもよい。
【0027】
図2は、実施形態1に係るセンサ基板を示す平面図である。なお、
図2以下で示す、第1方向Dxは、基板21と平行な面内の一方向である。第2方向Dyは、基板21と平行な面内の一方向であり、第1方向Dxと直交する方向である。なお、第2方向Dyは、第1方向Dxと直交しないで交差してもよい。第3方向Dzは、第1方向Dx及び第2方向Dyと直交する方向であり、基板21の法線方向である。
【0028】
図2に示すように、センサ基板2は、基板21と、センサ部10と、走査線駆動回路15と、信号線選択回路16と、検出回路48と、制御回路102と、電源回路103と、を有する。
【0029】
基板21は、スイッチング素子Tr等のTFT(Thin Film Transistor)や、ゲート線GCL、信号線SGL等の各種配線を有し、センサ部10を駆動する駆動回路基板である。基板21は、バックプレーン又はアレイ基板とも呼ばれる。基板21には、配線基板110を介して制御基板101が電気的に接続される。配線基板110は、例えば、フレキシブルプリント基板やリジット基板である。配線基板110には、検出回路48が設けられている。制御基板101には、制御回路102及び電源回路103が設けられている。制御回路102は、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)である。制御回路102は、センサ部10、走査線駆動回路15及び信号線選択回路16に制御信号を供給する。電源回路103は、センサ電源信号VDDSNS(
図5参照)等の電圧信号をセンサ部10、走査線駆動回路15及び信号線選択回路16に供給する。なお、本実施形態においては、検出回路48が配線基板110に配置される場合を例示したが、検出回路48は基板21の上に配置されてもよい。
【0030】
基板21は、検出領域AAと周辺領域GAとを有する。検出領域AA内には、センサ部10の各素子(検出素子3)が設けられている。周辺領域GAは、検出領域AAの外側の領域であり、各素子(検出素子3)が設けられない領域である。周辺領域GA内には、走査線駆動回路15及び信号線選択回路16が設けられる。
【0031】
センサ部10は、光センサとして、複数の検出素子3を備える。検出素子3は、フォトダイオード30である。フォトダイオード30は、光電変換素子であり、それぞれに照射される光に応じた電気信号を出力する。より具体的には、フォトダイオード30は、OPD(Organic Photo Diode)である。検出素子3(フォトダイオード30)は、検出領域AAにマトリクス状に配列される。フォトダイオード30は、走査線駆動回路15から供給されるゲート駆動信号(例えば、リセット制御信号RST、読出制御信号RD)に従って検出を行う。複数のフォトダイオード30は、それぞれに照射される光に応じた電気信号を、検出信号Vdetとして信号線選択回路16に出力する。検出装置1は、複数のフォトダイオード30からの検出信号Vdetに基づいて生体に関する情報を検出する。
【0032】
図3は、実施形態1に係る検出装置の構成例を示すブロック図である。
図3に示すように、検出装置1は、さらに検出制御回路11と検出部40と、を有する。検出制御回路11の機能の一部又は全部は、制御回路102に含まれる。また、検出部40のうち、検出回路48以外の機能の一部又は全部は、制御回路102に含まれる。
【0033】
検出制御回路11は、走査線駆動回路15、信号線選択回路16及び検出部40にそれぞれ制御信号を供給し、これらの動作を制御する回路である。検出制御回路11は、スタート信号STV、クロック信号CK等の各種制御信号を走査線駆動回路15に供給する。また、検出制御回路11は、選択信号ASW等の各種制御信号を信号線選択回路16に供給する。
【0034】
走査線駆動回路15は、各種制御信号に基づいて複数の走査線(ゲート線GCL(
図4参照))を駆動する回路である。走査線駆動回路15は、複数の走査線を順次又は同時に選択し、選択された走査線にゲート駆動信号を供給する。これにより、走査線駆動回路15は、走査線に接続された複数のフォトダイオード30を選択する。
【0035】
信号線選択回路16は、複数の信号線SGL(
図4参照)を順次又は同時に選択するスイッチ回路である。信号線選択回路16は、例えばマルチプレクサである。信号線選択回路16は、検出制御回路11から供給される選択信号ASWに基づいて、選択された出力信号線SLと検出回路48とを接続する。これにより、信号線選択回路16は、フォトダイオード30の検出信号Vdetを検出部40に出力する。
【0036】
検出部40は、検出回路48と、信号処理回路44と、座標抽出回路45と、記憶回路46と、検出タイミング制御回路47と、を備える。検出タイミング制御回路47は、検出制御回路11から供給される制御信号に基づいて、検出回路48と、信号処理回路44と、座標抽出回路45と、が同期して動作するように制御する。
【0037】
検出回路48は、例えばアナログフロントエンド回路(AFE:Analog Front End)である。検出回路48は、少なくとも検出信号増幅回路42及びA/D変換回路43の機能を有する信号処理回路である。検出信号増幅回路42は、検出信号Vdetを増幅する回路であり、例えば、積分回路である。A/D変換回路43は、検出信号増幅回路42から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0038】
信号処理回路44は、検出回路48の出力信号に基づいて、センサ部10に入力された所定の物理量を検出する論理回路である。信号処理回路44は、指Fgが検出面に接触又は近接した場合に、検出回路48からの信号に基づいて指Fgや掌の表面の凹凸を検出できる。また、信号処理回路44は、検出回路48からの信号に基づいて生体に関する情報を検出してもよい。生体に関する情報は、例えば、指Fgや掌の血管像、脈波、脈拍、血中酸素飽和度等である。
【0039】
記憶回路46は、信号処理回路44で演算された信号を一時的に保存する。記憶回路46は、例えばRAM(Random Access Memory)、レジスタ回路等であってもよい。
【0040】
座標抽出回路45は、信号処理回路44において指Fgの接触又は近接が検出されたときに、指Fg等の表面の凹凸の検出座標を求める論理回路である。また、座標抽出回路45は、指Fgや掌の血管の検出座標を求める論理回路である。座標抽出回路45は、センサ部10の各検出素子3から出力される検出信号Vdetを組み合わせて、指Fg等の表面の凹凸の形状を示す二次元情報を生成する。なお、座標抽出回路45は、検出座標を算出せずにセンサ出力Voとして検出信号Vdetを出力してもよい。
【0041】
次に、検出装置1の回路構成例について説明する。
図4は、実施形態1に係る検出装置を示す回路図である。
図4に示すように、センサ部10は、マトリクス状に配列された複数の部分検出領域PAAを有する。複数の部分検出領域PAAには、それぞれフォトダイオード30が設けられている。
【0042】
ゲート線GCLは、第1方向Dxに延在し、第1方向Dxに配列する複数の部分検出領域PAAと接続される。また、複数のゲート線GCL(1)、GCL(2)、…、GCL(8)は、第2方向Dyに配列され、それぞれ走査線駆動回路15に接続される。なお、以下の説明において、複数のゲート線GCL(1)、GCL(2)、…、GCL(8)を区別して説明する必要がない場合、単にゲート線GCLと表す。また、
図4では説明を分かりやすくするために、8本のゲート線GCLを示しているが、あくまで一例であり、ゲート線GCLは、M本(Mは8以上、例えばM=256)配列されていてもよい。
【0043】
信号線SGLは、第2方向Dyに延在し、第2方向Dyに配列された複数の部分検出領域PAAのフォトダイオード30に接続される。また、複数の信号線SGL(1)、SGL(2)、…、SGL(12)は、第1方向Dxに配列されて、それぞれ信号線選択回路16及びリセット回路17に接続される。なお、以下の説明において、複数の信号線SGL(1)、SGL(2)、…、SGL(12)を区別して説明する必要がない場合には、単に信号線SGLと表す。
【0044】
また、説明を分かりやすくするために、12本の信号線SGLを示しているが、あくまで一例であり、信号線SGLは、N本(Nは12以上、例えばN=252)配列されていてもよい。また、
図4では、信号線選択回路16とリセット回路17との間にセンサ部10が設けられている。これに限定されず、信号線選択回路16とリセット回路17とは、信号線SGLの同じ方向の端部にそれぞれ接続されていてもよい。また、1つのセンサの実質的な面積は例えば実質50×50um
2とされ、検出領域AAの解像度は例えば実質508ppiとされ、検出領域AAに配置されるセンサ数は例えば252セル×256セルとされ、検出領域AAの面積は例えば12.6×12.8mm
2とされる。
【0045】
走査線駆動回路15は、スタート信号STV、クロック信号CK、リセット信号RST1等の各種制御信号を、制御回路102(
図2参照)から受け取る。走査線駆動回路15は、各種制御信号に基づいて、複数のゲート線GCL(1)、GCL(2)、…、GCL(8)を時分割的に順次選択する。走査線駆動回路15は、選択されたゲート線GCLにゲート駆動信号Vgclを供給する。これにより、ゲート線GCLに接続された複数の第1スイッチング素子Trにゲート駆動信号が供給され、第1方向Dxに配列された複数の部分検出領域PAAが、検出対象として選択される。
【0046】
なお、走査線駆動回路15は、指紋の検出及び異なる複数の生体に関する情報(脈波、脈拍、血管像、血中酸素濃度等)のそれぞれの検出モードごとに、異なる駆動を実行してもよい。例えば、走査線駆動回路15は、複数のゲート線GCLを束ねて駆動してもよい。
【0047】
信号線選択回路16は、複数の選択信号線Lselと、複数の出力信号線Loutと、第3スイッチング素子TrSと、を有する。複数の第3スイッチング素子TrSは、それぞれ複数の信号線SGLに対応して設けられている。6本の信号線SGL(1)、SGL(2)、…、SGL(6)は、共通の出力信号線Lout1に接続される。6本の信号線SGL(7)、SGL(8)、…、SGL(12)は、共通の出力信号線Lout2に接続される。出力信号線Lout1、Lout2は、それぞれ検出回路48に接続される。
【0048】
ここで、信号線SGL(1)、SGL(2)、…、SGL(6)を第1信号線ブロックとし、信号線SGL(7)、SGL(8)、…、SGL(12)を第2信号線ブロックとする。複数の選択信号線Lselは、1つの信号線ブロックに含まれる第3スイッチング素子TrSのゲートにそれぞれ接続される。また、1本の選択信号線Lselは、複数の信号線ブロックの第3スイッチング素子TrSのゲートに接続される。
【0049】
制御回路102(
図2参照)は、選択信号ASWを順次選択信号線Lselに供給する。これにより、信号線選択回路16は、第3スイッチング素子TrSの動作により、1つの信号線ブロックにおいて信号線SGLを時分割的に順次選択する。また、信号線選択回路16は、複数の信号線ブロックでそれぞれ1本ずつ信号線SGLを選択する。このような構成により、検出装置1は、検出回路48を含むIC(Integrated Circuit)の数、又はICの端子数を少なくすることができる。なお、信号線選択回路16は、複数の信号線SGLを束ねて検出回路48に接続してもよい。
【0050】
図4に示すように、リセット回路17は、基準信号線Lvr、リセット信号線Lrst及び第4スイッチング素子TrRを有する。第4スイッチング素子TrRは、複数の信号線SGLに対応して設けられている。基準信号線Lvrは、複数の第4スイッチング素子TrRのソース又はドレインの一方に接続される。リセット信号線Lrstは、複数の第4スイッチング素子TrRのゲートに接続される。
【0051】
制御回路102は、リセット信号RST2をリセット信号線Lrstに供給する。これにより、複数の第4スイッチング素子TrRがオンになり、複数の信号線SGLは基準信号線Lvrと電気的に接続される。電源回路103は、基準信号COMを基準信号線Lvrに供給する。これにより、複数の部分検出領域PAAに含まれる容量素子Ca(
図5参照)に基準信号COMが供給される。
【0052】
図5は、実施形態1の複数の部分検出領域を示す回路図である。なお、
図5では、検出回路48の回路構成も併せて示している。
図5に示すように、部分検出領域PAAは、フォトダイオード30と、容量素子Caと、第1スイッチング素子Trとを含む。容量素子Caは、フォトダイオード30に形成される容量(センサ容量)であり、等価的にフォトダイオード30と並列に接続される。
【0053】
図5では、複数のゲート線GCLのうち、第2方向Dyに並ぶ2つのゲート線GCL(m)、GCL(m+1)を示す。また、複数の信号線SGLのうち、第1方向Dxに並ぶ2つの信号線SGL(n)、SGL(n+1)を示す。部分検出領域PAAは、ゲート線GCLと信号線SGLとで囲まれた領域である。
【0054】
第1スイッチング素子Trは、フォトダイオード30に対応して設けられる。第1スイッチング素子Trは、薄膜トランジスタにより構成されるものであり、この例では、nチャネルのMOS(Metal Oxide Semiconductor)型のTFT(Thin Film Transistor)で構成されている。
【0055】
第1方向Dxに並ぶ複数の部分検出領域PAAに属する第1スイッチング素子Trのゲートは、ゲート線GCLに接続される。第2方向Dyに並ぶ複数の部分検出領域PAAに属する第1スイッチング素子Trのソースは、信号線SGLに接続される。第1スイッチング素子Trのドレインは、フォトダイオード30のカソード及び容量素子Caに接続される。
【0056】
フォトダイオード30のアノードには、電源回路103からセンサ電源信号VDDSNSが供給される。また、信号線SGL及び容量素子Caには、電源回路103から、信号線SGL及び容量素子Caの初期電位となる基準信号COMが供給される。
【0057】
部分検出領域PAAに光が照射されると、フォトダイオード30には光量に応じた電流が流れ、これにより容量素子Caに電荷が蓄積される。第1スイッチング素子Trがオンになると、容量素子Caに蓄積された電荷に応じて、信号線SGLに電流が流れる。信号線SGLは、信号線選択回路16の第3スイッチング素子TrSを介して検出回路48に接続される。これにより、検出装置1は、部分検出領域PAAごとに、又はブロック単位PAGごとにフォトダイオード30に照射される光の光量に応じた信号を検出できる。
【0058】
検出回路48は、読み出し期間にスイッチSSWがオンになり、信号線SGLと接続される。検出回路48の検出信号増幅回路42は、信号線SGLから供給された電流の変動を電圧の変動に変換して増幅する。検出信号増幅回路42の非反転入力部(+)には、固定された電位を有する基準電位(Vref)が入力され、反転入力端子(-)には、信号線SGLが接続される。実施形態では、基準電位(Vref)電圧として基準信号COMと同じ信号が入力される。信号処理回路44(
図2参照)は、光が照射された場合の検出信号Vdetと、光が照射されていない場合の検出信号Vdetとの差分をセンサ出力電圧Voとして演算する。また、検出信号増幅回路42は、容量素子Cb及びリセットスイッチRSWを有する。リセット期間において、リセットスイッチRSWがオンになり、容量素子Cbの電荷がリセットされる。
【0059】
次に、フォトダイオード30及び光フィルタ7の構成について説明する。
図6は、センサ部の概略断面構成を示す断面図である。
図6に示すように、センサ部10は、フォトダイオード30(光電変換素子)30と、封止層25と、を備える。そして、封止層25の上に、光フィルタ7が設けられる。
【0060】
フォトダイオード30は、検出電極31と、電子輸送層32と、活性層33と、正孔輸送層34と、対向電極35とを有する。センサ基板2の上に、検出電極31、電子輸送層32、活性層33、正孔輸送層34、対向電極35の順で積層されている。
【0061】
検出電極31は、コンタクトホール(図示しない)を介してセンサ基板2の第1スイッチング素子Tr(
図5参照)と電気的に接続される。検出電極31は、フォトダイオード30のカソードであり、検出信号Vdetを読み出すための電極である。検出電極31は、例えば、銀(Ag)又はチタン(Ti)が用いられる。または、検出電極31は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)等の透光性を有する導電材料により製造されてもよい。
【0062】
電子輸送層32及び正孔輸送層34は、活性層33で発生した正孔及び電子を対向電極35又は検出電極31に到達しやすくするために設けられる。電子輸送層32及び正孔輸送層34は、例えば酸化亜鉛(ZnO)およびポリチオフェン系導電性ポリマー(PEDOT:PSS)が用いられる。
【0063】
活性層33は、下記の化学式6で表示される繰り返し単位を有するポリイミドにより製造された薄膜である。また、活性層33は、ポリイミドが結晶構造となっており、光電変換機能を有する。よって、活性層33に光が照射されると、活性層33内に正孔及び電子が発生する。活性層33で発生した正孔及び電子は、それぞれ電子輸送層32及び正孔輸送層34を移動し検出電極31又は対向電極35の方向に移動する。
【0064】
【0065】
対向電極35は、フォトダイオード30のアノードであり、電源信号VDDSNSを活性層33に供給するための電極である。対向電極35と、検出電極31とは、活性層33を挟んで対向する。対向電極35は、例えばITOが用いられる。
【0066】
封止層25は、フォトダイオード30を覆い、センサ部10の平坦化するための層である。より具体的には、封止層25は、フォトダイオード30間に充填されるとともに、各フォトダイオード30の対向電極35の上を覆っている。封止層25の材料は、酸化アルミニウム(Al2O3)である。
【0067】
光フィルタ7は、第3方向Dzに沿って光を透過させて、第3方向Dz以外の迷光を抑制する光学要素である。光フィルタ7は、基部70と、複数のアパーチャ71と、を備える。基部70は、光を透過しない遮光性の部材として機能する。アパーチャ71は、基部70に形成された円筒状の貫通孔である。また、基部70は、封止層25の上に直接形成されている。複数のアパーチャ71は、基部70の第1方向Dx-第2方向Dy平面に沿って配置される。なお、本開示の光フィルタは、これに限定されない。複数の穴(ピンホール)が設けられた層と透明樹脂層を交互に複数重ねて成る多層ピンホール式であってもよい。又は、ピンホールが設けられた層と透明樹脂層とを交互に重ね、光が入射してくる面のピンホールにマイクロレンズが重ねられたマイクロレンズ式であってもよい。
【0068】
次に、フォトダイオード30の製造方法について説明する。
図7は、実施形態1に係るフォトダイオードの製造工程を示す図である。
図8は、実施形態1に係る活性層の製造工程を示す図である。フォトダイオード30の製造方法は、検出電極31を生成する工程S1、電子輸送層32を生成する工程S2、活性層33を生成する工程S3、正孔輸送層34を生成する工程S4、対向電極35を生成する工程S5と、を備える。
【0069】
工程S1は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、及びめっき法により、ITO等の導電性材料をセンサ基板2上にし、検出電極31を生成する。
【0070】
工程S2は、酢酸亜鉛エタノール溶液を検出電極31上に塗布し、酢酸亜鉛ゾルゲルの薄膜を作る。次に、薄膜を加熱し、ZnOからなる電子輸送層32を生成する。
【0071】
活性層を生成する工程S3は、
図8に示すように、第1層形成工程S11と、第1加熱工程S12と、第2加熱工程S13と、を有する。活性層を生成する工程S3は、活性層生成工程と呼ばれることがある。
【0072】
第1層形成工程S11は、電子輸送層32の上にポリイミドの前駆体であるポリアミック酸の溶液を塗布し、第1層51を形成する工程である。
【0073】
第1加熱工程S12は、第1層51を120℃で60分加熱する工程である。加熱方法としては、例えば、
図8に示すように、センサ基板2ごとオーブン50に入れて加熱するよう法が挙げられる。なお、ポリアミック酸は、200℃以上の加熱により、イミド化反応する。よって、第1加熱工程S12において、第1層51は、イミド化反応せず、溶媒の残存量が減り、粘性が高くなる。
【0074】
第2加熱工程S13は、例えばオーブン50などで、第1層51を230℃から280℃で10分加熱する工程である。この第2加熱工程S13により、第1層51がイミド化反応し、活性層33となる。なお、本開示の第1加熱工程S12及び第2加熱工程S13は、オーブン50以外の加熱手段を用いてもよい。
【0075】
次に
図7に示すように、工程S4において、PEDOT:PSSを活性層33上に塗布し、さらに加熱する。これにより、正孔輸送層34が成膜される。
【0076】
工程S5は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、及びめっき法により、ITO、IZO等の導電性材料を正孔輸送層34の上に成膜する。これにより、対向電極35を生成する工程である。
【0077】
以上、実施形態1の製造方法で製造されたフォトダイオード(光電変換素子)30は、従来のものよりも結晶性が高く、光電変換の感度に優れる。また、活性層33は、ポリイミドにより形成され、320℃までは熱劣化がない。なお、PCBM(フェニルC61酪酸メチルエステル:Phenyl C61-butyric acid methyl ester)と、P3HT(poly(3-hexylthiophene))、F8BT(F8-alt-benzothiadiazole)とが混合するバルクヘテロ構造の活性層の場合、耐熱温度は100℃である。よって、実施形態1の製造方法で製造されたフォトダイオード(光電変換素子)30は、従来の物よりも耐熱温度が高い。よって、従来、フォトダイオード30を覆う封止層25の上に光フィルタ7を生成する場合、活性層33に熱影響を与える可能性があった。そして、光フィルタ7を別途に製造し、粘着テープでセンサ部10の上に粘着していた。しかしながら、実施形態1の活性層33によれば、例えばフォトリソプロセスによって封止層25の上に直接、光フィルタ7を形成したとしても、活性層33に与える影響が低い。つまり、光フィルタ7を粘着させるための粘着テープが不要となり、検出装置1が薄くなる。
【0078】
以上、実施形態1に係る光電変換素子について説明したが、本開示の光電変換素子は上記したものに限定されない。以下、他の実施形態について説明するが、実施形態1に係る光電変換素子との相違点に絞って説明する。
【0079】
(実施形態2)
図9は、実施形態2に係るセンサ部の概略断面構成を示す断面図である。実施形態2に係るフォトダイオード30Aは、活性層33に代えて活性層33Aを備える点で、実施形態1に係るフォトダイオード30と相違する。
【0080】
実施形態2に係る活性層33Aは、下記の化学式7で表示される繰り返し単位を有するポリイミドにより形成された薄膜である。また、活性層33Aは、結晶構造を有し、光電変換機能を有する。
【0081】
【0082】
図10は、実施形態2に係る活性層の製造工程を示す図である。フォトダイオード30Aの製造方法は、実施形態1と同様に、検出電極31を生成する工程S1、電子輸送層32を生成する工程S2、活性層33Aを生成する工程S3、正孔輸送層34を生成する工程S4、対向電極35を生成する工程S5と、を備える(
図7参照)。また、活性層33Aを生成する工程は、
図10に示すように、第1層形成工程S21と、第1加熱工程S22と、第2加熱工程S23と、を有する。
【0083】
第1層形成工程S21は、電子輸送層32の上に前駆体であるポリアミック酸溶液を塗布し第1層52を形成する。
【0084】
第1加熱工程S22は、センサ基板2ごとオーブン50に入れ、第1層52を120℃で20分から60分加熱する工程である。なお、ポリアミック酸(前駆体)は、200℃以上の加熱により、イミド化反応する。よって、第1加熱工程S22において、第1層52は、イミド化反応せず、溶媒の残存量が減る。
【0085】
第2加熱工程S23は、オーブン50で第1層52を180℃から260℃で10分加熱する工程である。これによれば、第1層52のポリアミック酸(前駆体)がイミド化反応し、活性層33Aが成膜される。
【0086】
実施形態2の製造方法によっても、活性層33Aの結晶性が高く、光電変換の感度に優れたフォトダイオード30を製造できる。また、活性層33Aの耐熱温度が300℃以上であり高く、封止層25の上に直接、光フィルタ7を形成することができ、検出装置1の薄くすることができる。
【0087】
(実施形態3)
図11は、実施形態3に係るセンサ部の概略断面構成を示す断面図である。実施形態3に係るフォトダイオード30Bは、活性層33に代えて活性層33Bを備える点で、実施形態1に係るフォトダイオード30と相違する。
【0088】
実施形態3に係る活性層33Bは、下記の化学式8で表示される繰り返し単位を有するポリイミドにより形成された薄膜である。また、活性層33Bは、結晶構造を有し、光電変換機能を有する。
【0089】
【0090】
図12は、実施形態3に係る活性層の製造工程を示す図である。フォトダイオード30Bの製造方法は、実施形態1と同様に、検出電極31を生成する工程S1、電子輸送層32を生成する工程S2、活性層33Bを生成する工程S3、正孔輸送層34を生成する工程S4、対向電極35を生成する工程S5と、を備える(
図7参照)。また、活性層33Bを生成する工程は、
図12に示すように、第1層形成工程S31と、第1加熱工程S32と、第2加熱工程S33と、を有する。
【0091】
第1層形成工程S31は、電子輸送層32の上に前駆体であってポリアミド酸を塗布し、第1層53を形成する工程である。また、ポリアミド酸は、下記の化学式9で表示される繰り返し単位を有している。なお、下記式のポリアミド酸は、酸無水物とジアミン化合物とを脱水縮合反応させることで得られる。
【0092】
【0093】
第1加熱工程S32は、オーブン50に入れて第1層53を120℃で20分加熱する工程である。また、下記式のポリアミド酸は、200℃以上の加熱により、イミド化反応する。よって、第1加熱工程S32において、第1層53はイミド化反応しない。
【0094】
第2加熱工程S33は、オーブン50で第1層53を200℃から240℃で10分加熱する工程である。これによれば、第1層53のポリアミド酸がイミド化反応し、活性層33Bが成膜される。
【0095】
以上、実施形態3の製造方法であっても、活性層33Bの結晶性が高く、光電変換の感度に優れたフォトダイオード30Bを製造することができる。活性層33Bの耐熱温度が300℃であり高く、封止層25(センサ部10)の上に直接、光フィルタ7を形成することができる。このため、検出装置1の薄くすることができる。
【0096】
(実施形態4)
図13は、実施形態4に係るセンサ部の概略断面構成を示す断面図である。実施形態4に係るフォトダイオード30Cは、活性層33に代えて活性層33Cを備える点で、実施形態1に係るフォトダイオード30と相違する。
【0097】
実施形態3に係る活性層33Cは、n型半導体38とp型半導体37とをヘテロ接合して成る。p型半導体37は、実施形態1から実施形態3で説明した化学式5、化学式6、化学式7で示したポリイミドのうちの1つであり、結晶構造を有している。よって、p型半導体37の単体で光電変換機能を有している。
【0098】
また、n型半導体38は、可溶性ポルフィリン又はフタロシアン化合物を加熱処理し、結晶化したものである。n型半導体38は、正孔輸送層34の方に延びる柱状の柱部38aを複数有しており、n型半導体38と、p型半導体37と、三次元的なp-n接合を成している。よって、n型半導体38とp型半導体37との界面から多くの電流を取り出すことができる。よって、p型半導体37単層よりも、言い換えると、実施形態1から実施形態3の活性層33、33A、33Bよりも、活性層33Dの方が光電効果の感度が向上している。次に、実施形態4の活性層33Cの製造方法について説明する。
【0099】
図14は、実施形態4に係る活性層の製造工程を示す図である。活性層33Cを生成する工程は、
図14に示すように、下地層形成工程S41と、下地層加熱工程S42と、第1層形成工程S43と、第1加熱工程S44と、第2加熱工程S45と、を有する。
【0100】
下地層形成工程S41は、電子輸送層32の上に可溶性ポルフィリン又はフタロシアニン化合物を塗布し、下地層54を形成する工程である。
【0101】
下地層加熱工程S42は、オーブン50で下地層54を150℃で30分加熱する工程である。これにより、下地層54が硬化し、n型半導体38の一部となる。
【0102】
第1層形成工程S43は、化学式5、化学式6、化学式7で示したポリイミドのうちの1つと、下地層54で用いた可溶性ポルフィリン又はフタロシアニン化合物と、を混合したものを、n型半導体38の一部に上方に塗布し、第1層55を形成する工程である。
【0103】
第1加熱工程S44は、センサ基板2ごとオーブン50に入れ、第1層55を120℃で60分加熱する。
【0104】
続いて、第2加熱工程S45において、第1層55を120℃から180℃で10分加熱する。これによれば、
図14に示すように、第1層55に含まれる可溶性ポルフィリン又はフタロシアニン化合物は、n型半導体38を基材として、正孔輸送層34の方に向かうように延びる柱部38a(
図13参照)が形成される。また、ポリイミドもイミド化反応し、結晶化したp型半導体37が生成される。
【0105】
図15は、実施形態4の活性層の変形例を示す断面図である。なお、本開示において、ヘテロ接合している活性層33Cは、第2加熱工程S45において、第1層55の可溶性ポルフィリン又はフタロシアニン化合物が柱状とならなくてもよい。例えば、
図15に示すように、n型半導体38とp型半導体37とが混在した状態となってもよい。
【0106】
以上、実施形態4の製造方法によれば、光電効果の感度をさらに向上したフォトダイオード30D(光電変換素子)を製造できる。
【0107】
図16は、光電変換素子の変形例を示す断面図である。以上、実施形態について説明したが、本開示のフォトダイオード(光電変換素子)は、
図16に示すように、検出電極31、電子輸送層32、活性層33、正孔輸送層34、及び対向電極35の積層順が、実施形態1から実施形態4で説明したものと逆になっているフォトダイオード30Dであってもよい。
【0108】
(実施例)
次に実施例について説明する。実施例1では、実施形態1の製造方法によりフォトダイオード(光電変換素子)を製造し、その結晶性を確認した。実施例2では、実施形態1の製造方法によりフォトダイオード(光電変換素子)を製造し、その結晶性を確認した。以下、実施例1、実施例2について説明する。
【0109】
(実施例1)
図17は、試料1から試料8のX線回折分析結果を示すチャートである。
図18は、試料2、試料3、試料4、試料5、試料6、試料7、試料8におけるX線スペクトルの半値幅と成膜時の基板温度との関係を示すグラフである。実施例1では、合計で8個のフォトダイオード(以下、試料1、試料2、・・・、試料8と呼ぶ)を製造した。試料の一部は、実施形態1の製造方法によるものであり、残りは実施形態1の製造方法以外の製造方法(比較例)によるものである。
【0110】
詳細に説明すると、試料1から試料8は、第1層形成工程S11において、ポリアミック酸からなる第1液で第1層51を生成した。試料1から試料6は、第1加熱工程S12で第1層51を120℃で60分加熱した。一方で、試料7、8は、第1加熱工程S12を実施していない。したがって、試料7、8は比較例である。
【0111】
また、試料1から試料8において、第2加熱工程S13で、加熱温度と時間をそれぞれ変えた。具体的に、試料1は120℃で20分から60分加熱した。試料2は200℃で10分加熱した。試料3は220℃で10分加熱した。試料4は240℃で10分加熱した。試料5は260℃で10分加熱した。試料6は280℃で10分加熱した。試料7は280℃で60分加熱した。試料8は290℃で60分加熱したものである。以上から、試料1、試料2、試料3、試料7、試料8は、実施形態で示した230℃から280℃で10分加熱する、という条件を満たさない比較例である。
【0112】
次に、X線回折装置を用いて試料1から試料8の結晶性を分析した。その分析結果を
図17に示す。
【0113】
図17に示すように、試料1から試料3及び試料7は、明瞭なピークが見当たらなかった。つまり、試料1から試料3及び試料7のポリイミド(活性層33)は、第2加熱工程S13で結晶化せずに主にアモルファス状態となっていることがわかった。試料4から試料6は、2θ=18.5°と2θ=22.3°に、明瞭な回折ピークがあった。また、回折ピーク値も高い。したがって、ポリイミド(活性層33)は、十分に結晶化していることがわかった。また、試料8においては、2θ=22.3°に、回折ピークがあるものの、ピーク値が小さく、結晶性が十分でなかった。
【0114】
続いて、試料2、試料3、試料4、試料5、試料6、試料7、試料8について、X線回折時(試料2、試料3、試料4、試料5、試料6は2θ=18.5°、試料7、8は、2θ=22.3°)のX線スペクトルの半値幅を求め、結晶子のサイズを求めた。なお、試料8は、試料7と同様に第1加熱工程S12を経ずに生成されたフォトダイオードであり、第2加熱工程S13の加熱温度は、280、290℃である。X線スペクトルの半値幅を
図18に示す。
【0115】
図18に示すように、試料2、試料3、試料4、試料5、試料6の順で半値幅が小さくなった。よって、第2加熱工程の加熱温度が200℃から260℃の範囲においては、加熱温度が高くなるにつれて結晶子のサイズが大きくなり、結晶性が向上することがわかった。一方、試料7、試料8は、半値幅の値が0.7以上となっており、多結晶性が高い結果となった。以上から、第2加熱工程S13での加熱温度が230℃から280℃に含まれる試料4、試料5、試料6は、試料7、8よりも結晶性が高く、光電変換の感度に優れる結果となった。
【0116】
(実施例2)
図19は、試料11から試料16のX線回折分析結果を示すチャートである。
図20は、実施例2に係る試料11から試料16におけるX線スペクトルの半値幅と成膜時の基板温度との関係を示すグラフである。次に実施例2について説明する。実施例2では、合計で6個のフォトダイオード(以下、試料11、試料12、・・・、試料16と呼ぶ)を製造した。試料の一部は、実施形態2の製造方法によるものであり、残りは実施形態2の製造方法以外の製造方法(比較例)によるものである。
【0117】
詳細に説明すると、試料11から試料16は、第1層形成工程S21において、化学式2の前駆体であるアミック酸溶液を塗布して第1層52を形成した。試料11から試料16は、第1加熱工程S12で第1層52を120℃で20分から60分加熱した。
【0118】
また、試料11から試料16において、第2加熱工程S13で、加熱温度をそれぞれ変えた。具体的に、試料11は180℃で加熱した。試料12は200℃で加熱した。試料13は220℃で加熱した。試料14は240℃で加熱した。試料15は260℃で加熱した。試料16は280℃で加熱した。以上から、試料11から試料15までは、実施形態2で示した180℃から260℃で10分加熱する、という条件を満たし、試料16のみが実施形態の条件を満たさない比較例である。なお、加熱時間は、試料11から試料16の全てで10分とした。
【0119】
次に、X線回折装置を用いて試料11から試料16の結晶性を分析した。その分析結果を
図19に示す。また、X線回折時(2θ=18.6°と2θ=22.0°)のX線スペクトルの半値幅を求め、結晶子のサイズを求めた。そのX線スペクトルの半値幅について
図20に示す。
【0120】
図19に示すように、試料11から試料16は、2θ=18.6°と2θ=22.0°に、回折ピークがあった。また、試料11から試料15は、回折ピーク値も高く、ポリイミド膜は十分に結晶化していた。試料16は、ピーク値が小さく、結晶性が十分でなかった。よって、第2加熱工程S23において、180℃から260℃で10分加熱する、という条件を満たした場合、十分に結晶化することがわかった。
【0121】
また、
図20に示すように、試料11から試料15のうち、試料13(加熱温度が220℃)とき、半値幅の値が0.4以下を示し、最も結晶の単一性が強くなった。よって、試料11から試料15のうち試料13が最も結晶性が高く、光電変換の感度に優れることがわかった。
【符号の説明】
【0122】
120 光学式センサ
121 照明装置
1 検出装置
2 センサ基板
3 検出素子
7 光フィルタ
10 センサ部
15 走査線駆動回路
16 信号線選択回路
21 基板
25 封止層
30 フォトダイオード(光電変換素子)
31 検出電極
32 電子輸送層
33 活性層
34 正孔輸送層
35 対向電極
51、52、53、55 第1層
70 基部
71 アパーチャ
102 制御回路
103 電源回路
S11、S21、S31、S43 第1層形成工程
S12、S22、S32、S44 第1加熱工程
S13、S23、S33、S45 第2加熱工程
S41 下地層形成工程
S42 下地層加熱工程