(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155493
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】中鎖脂肪酸結合トリグリセリドを含むチョコレート類
(51)【国際特許分類】
A23G 1/36 20060101AFI20221005BHJP
A23G 1/46 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
A23G1/36
A23G1/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023376
(22)【出願日】2022-02-18
(62)【分割の表示】P 2021057951の分割
【原出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】315015162
【氏名又は名称】不二製油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鳥羽 由里菜
(72)【発明者】
【氏名】乾 佐知子
【テーマコード(参考)】
4B014
【Fターム(参考)】
4B014GB01
4B014GG11
4B014GG14
4B014GL07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】無脂乳固形分を15重量%以上含むチョコレート類に咀嚼、嚥下時のねちゃつき感が顕著に表れるので食感の改善が要望されている。
【解決手段】ランダム化された油脂由来の中鎖脂肪酸結合トリグリセリドを、0.85重量%以上含有させることで、ねちゃつき感を軽減でき、キレのある食感が得られる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランダム化された油脂由来の中鎖脂肪酸結合トリグリセリドを0.85重量%以上含み、
無脂乳固形分を15 重量%以上含むチョコレート類。
【請求項2】
粉乳を20~50重量%含む請求項1記載のチョコレート類。
【請求項3】
前記ランダム化された油脂がMCT油と長鎖脂肪酸油脂のランダムエステル交換油である
請求項1又は2に記載のチョコレート類。
【請求項4】
ランダム化により生成された中鎖脂肪酸結合トリグリセリドを、0.85重量%以上含有
させる、無脂乳固形分を15重量%以上含むチョコレート類の製造方法。
【請求項5】
ランダム化された油脂由来の中鎖脂肪酸結合トリグリセリドを0.85重量%以上含有さ
せる、乳固形分を含むチョコレート類の食感改善方法。
【請求項6】
ランダム化された油脂であって、中鎖脂肪酸結合トリグリセリドを15~28重量%含有
する、無脂乳固形分を含むチョコレート類用の食感改良油脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂を連続層とするチョコレート類に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にチョコレートの口どけは、チョコレート生地に含まれる油脂が体温付近でシャー
プに融解するという特性を有することに起因するが、同時に融解したチョコレートが口腔
壁にへばりつく高い粘着性を示し、呈味の後残り感の原因となる。本願ではこれを咀嚼、
嚥下時のねちゃつき感と表現する。
【0003】
特許文献1には、従来のチョコレートのシャープな口溶けを示しながら、唾液に溶出し
たチョコレートの粘着性を大幅に軽減させて、従来技術では困難であった口中で後残りが
少ないさっぱり感のあるチョコレートの提供を目的として、全脂肪酸組成中ラウリン酸が
25~50%であり、SOS型トリグリセリド(S:飽和脂肪酸,O:オレイン酸)を5
~30%含有する植物性油脂と親油性ソルビタン脂肪酸エステルを含有して成るテンパリ
ング型チョコレートの食感改良剤が開示されている。
【0004】
特許文献2には、ホワイトチョコレートやミルクチョコレートがココアバターと全粉乳
を主体とした成分組成からなるため、乳成分の味が強調され、非常に後味が悪くなるとい
う課題に対して、後を引くような呈味を改善し、まろやかでかつすっきりとした後味、味
のキレを出すことを目的として、ポリフェノール類を含有させる技術が開示されている。
【0005】
特許文献3には、無脂カカオ固形分を豊富に含むチョコレートの粉っぽい食感を低減す
るために中鎖脂肪酸結合トリグリセリドを特定量以上含有させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9-121771号公報
【特許文献2】特開2005-6503号公報
【特許文献3】特開2018-191637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された技術は、唾液中に溶出したチョコレートの口中粘着性を軽減さ
せるためにチョコレートの粘着特性を変更しなければならず、チョコレートの自由な物性
調整が困難になる問題があった。
【0008】
特許文献2には、チョコレートやホワイトチョコレートに緑茶茶葉からのポリフェノー
ル含有抽出組成物を配合することで、後味の改善に効果があることが記載されているが、
渋味成分であるポリフェノールの添加によってチョコレート風味の改変につながることが
懸念されるものであった。
【0009】
特許文献3には、チョコレートの食感改善技術として中鎖脂肪酸結合トリグリセリドが
用いられているが、無脂乳固形分を含むチョコレートは記載されていないし、本願とは課
題も相違する。
【0010】
すなわち本発明の目的は、粉乳などに由来する無脂乳固形分を多く含むチョコレート類
に特有の問題点である咀嚼、嚥下時のねちゃつき感を軽減する方法を提供することにある
。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、無脂乳固形分を15重量%以上含むチョコレート類に咀嚼、嚥下時のね
ちゃつき感が顕著に表れること。さらにエステル交換又はエステル合成などのランダム化
工程により生成された中鎖脂肪酸結合トリグリセリドを、0.85重量%以上含有させる
ことで、ねちゃつき感を軽減でき、キレのある食感が得られることを見出し、本発明を完
成させた。
【0012】
即ち、本発明は、
(1)ランダム化された油脂由来の中鎖脂肪酸結合トリグリセリドを0.85重量%以上
含み、無脂乳固形分を15 重量%以上含むチョコレート類、
(2)粉乳を20~50重量%含む(1)のチョコレート類、
(3)前記ランダム化された油脂がMCT油と長鎖脂肪酸油脂のランダムエステル交換油
である(1)又は(2)のチョコレート類、
(4)ランダム化により生成された中鎖脂肪酸結合トリグリセリドを、0.85重量%以
上含有させる、無脂乳固形分を15重量%以上含むチョコレート類の製造方法、
(5)ランダム化された油脂由来の中鎖脂肪酸結合トリグリセリドを0.85重量%以上
含有させる、乳固形分を含むチョコレート類の食感改善方法、
(6)ランダム化された油脂であって、中鎖脂肪酸結合トリグリセリドを15~28重量
%含有する、無脂乳固形分を含むチョコレート類用の食感改良油脂、
に関するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、ホワイトチョコレートやミルクチョコレート等の無脂乳固形分を多く含
むチョコレート類の、ねちゃつき感を軽減することができるので、キレのあるさっぱりし
た食感が好まれる最近の消費者の嗜好にあった製品となりえる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0015】
本願において、チョコレート類とは、油脂が連続相をなす油脂加工食品であり全国チョ
コレート業公正取引協議会、チョコレート利用食品公正取引協議会で規定されるチョコレ
ート、準チョコレート、チョコレート利用食品だけでなく、油脂類及び粉乳類を必須成分
とし、必要により糖類、カカオ原料(カカオマス、ココア、ココアバター)、果汁粉末、
果実粉末、呈味材、乳化剤、香料、着色料等の副原料を任意の割合で配合したものを言う
。
チョコレート類の代表的な例としては、ミルクチョコレート、またホワイトチョコレー
トを列挙できる。また、これらに果実成分を加えたような、イチゴチョコレート等も含ま
れる。
【0016】
本発明のチョコレート類は、無脂乳固形分を15重量%以上含有する必要があり、好ま
しくは16重量%以上、より好ましくは17重量%以上、更に好ましくは18重量%以上
、最も好ましくは19重量%以上、更に最も好ましくは20重量%以上である。無脂乳固
形分を15重量%以上含むと喫食時に明らかにねちゃつきを感じるため食感の改良が必要
となる。
また本発明のチョコレート類は、粉乳を20~50重量%含むことが好ましく、より好
ましくは23~40重量%である。
ここで無脂乳固形分とは、全脂粉乳や脱脂粉乳などの粉乳に由来する成分から乳脂肪を
除いた固形分である。
【0017】
本発明のチョコレート類は、ランダム化された油脂由来の中鎖脂肪酸結合トリグリセリ
ドを0.85重量%以上含有する必要があり、好ましくは0.9重量%以上、より好まし
くは0.95重量%以上、更に好ましくは1重量%以上、最も好ましくは1.5重量%以
上、更に最も好ましくは5重量%以上、次に好ましくは10重量%以上である。また好ま
しくは30重量%以下である。
中鎖脂肪酸結合トリグリセリドを0.85重量%以上含有すると喫食時のねちゃつきが改
善される。
【0018】
本願の中鎖脂肪酸結合トリグリセリドは、構成脂肪酸の少なくとも一つが中鎖脂肪酸の
トリグリセリドである。すなわち本願の中鎖脂肪酸結合トリグリセリドは、3中鎖トリグ
リセリドと中鎖・長鎖の混酸基トリグリセリド(2中鎖1長鎖及び1中鎖2長鎖トリグリ
セリド)を含む。
ここで中鎖脂肪酸は炭素数6~10の脂肪酸、長鎖脂肪酸は炭素数12~22の脂肪酸で
ある。
【0019】
本願の中鎖脂肪酸結合トリグリセリドのうち、中鎖・長鎖の混酸基トリグリセリドの方
が3中鎖トリグリセリドよりも喫食時のねちゃつきの改善効果が高い。
【0020】
上記混酸基トリグリセリドの長鎖脂肪酸における、不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸の比率(
長鎖不飽和/飽和)は好ましくは2.5以上より好ましくは3.0以上、さらに好ましく
は3.5以上である。
不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸の比率が2.5以上であると喫食時のねちゃつきがよりよく改
善されるため好ましい。
【0021】
本発明の中鎖脂肪酸結合トリグリセリドの由来元である、ランダム化された油脂は、ラ
ンダムエステル交換やエステル合成により調製できる。通常、ランダムエステル交換油や
エステル合成油は、トリグリセリド分子上で、脂肪酸がランダムな分布となっている。
【0022】
油脂のランダムエステル交換反応は、触媒にナトリウムメチラート、ナトリウムエチラ
ート、ナトリウム等のアルカリ金属、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を用いる方法
が知られているが、反応温度や反応時間、扱い易さの点からナトリウムメチラートを使用
するのが好ましい。また、酵素法として、触媒に油脂分解酵素(リパーゼ)を用いた方法
も知られており、いずれで行っても良い。
油脂のエステル合成反応は、脂肪酸とグリセリンを減圧条件下で脱水縮合させる油脂の
製造法であり、例えばMCT油(中鎖脂肪酸油脂)の製造に用いられている。
【0023】
本願の中鎖脂肪酸結合トリグリセリドは、ランダム化された油脂由来であるので、トリ
グリセリド分子上で、脂肪酸がランダムな分布となっており、例えば2中鎖1長鎖トリグ
リセリドを例にとると、MLMとMMLの存在比が1:2となっている(M:中鎖、L:
長鎖)。また例えば炭素数8の脂肪酸2つ、炭素数10の脂肪酸一つが結合した3中鎖ト
リグリセリドではC8C10C8とC8C8C10 の存在比が1:2となっている。
このように本願の中鎖結合トリグリセリドはランダム分布になっている必要がある。
【0024】
本願の中鎖脂肪酸結合トリグリセリドのうち、中鎖・長鎖の混酸基トリグリセリドは、
MCT油と長鎖脂肪酸油脂とのランダムエステル交換により生成される。ここで長鎖脂肪
酸油脂としては、炭素数18の不飽和脂肪酸を主体として含む液状油が好ましい。
上記液状油としては、構成脂肪酸中に炭素数18の不飽和脂肪酸を主体として含む常温
で液状の油脂である。液状油として、例えば、菜種油、大豆油、コーン油、紅花油、綿実
油、ヒマワリ油、パーム油等が挙げられる。また、これらの油脂に水素添加、分別、エス
テル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した常温で液状の加工
油脂を挙げることができる。本発明の液状油として、コーン油、ヒマワリ油を用いるのが
好ましく、より好ましくはコーン油を用いるのが良い。
【0025】
MCT油と長鎖脂肪酸油脂とのランダムエステル交換においては、原料に占めるMCT
油を2~20重量%とすることが好ましく、より好ましくは3~15重量%、さらに好ま
しくは3.5~10重量%、さらにより好ましくは4.0~7重量%である。
【0026】
本発明の中鎖脂肪酸結合トリグリセリドの由来元である、ランダム化された油脂はチョ
コレート類用の食感改良油脂と捉えることもできる。本発明の食感改良剤は中鎖脂肪酸結
合トリグリセリドを15~28重量%含有する必要があり、好ましくは17~25重量%
である。また構成脂肪酸中、中鎖脂肪酸を4~7重量%含有が好ましく、また20℃のS
FCが3%以下が好ましい。
【0027】
本発明のチョコレート類は、テンパリングタイプであっても、ノーテンパリングタイプ
であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明により、ホワイトチョコレートやミルクチョコレート等の無脂乳固形分を多く含
むチョコレート類の食感が改善されるので消費の拡大が期待できる。
【実施例0029】
以下に実施例を記載するが、この発明の技術思想がこれらの例示によって限定されるも
のではない。なお、例中、部及び%は何れも重量基準を意味する。
【0030】
●チョコレート配合用油脂の調製
(エステル交換油1)
コーン油95部、MCT油(不二製油株式会社 商品名:MCT-64)を5部混合し
た油脂を原料に、ナトリウムメチラートを用いてエステル交換を行い、得られた油脂を常
法に従い精製を行いエステル交換油1を得た。
(エステル交換油2)
コーン油82部、MCT油(不二製油株式会社 商品名:MCT-64)を5部、ハイ
オレイックひまわり油5部、ハイオレイックひまわり油の極度硬化油8部を混合した油脂
を原料に、ナトリウムメチラートを用いてエステル交換を行いエステル交換油2を得た。
(コーン油)
コーン油を用いた。
(MCT油)
MCT油(不二製油株式会社 商品名:MCT-64)を用いた。
(パームスーパーオレイン)
パームスーパーオレイン(ヨウ素価67、不二製油株式会社 商品名:パームエース10
)を用いた。
上記各油脂組成物のトリグリセリド組成を表1に示す。
・3中鎖トリグリセリド(C24-30の和)
・2中鎖1長鎖トリグリセリド(C32-38の和)
・1中鎖2長鎖トリグリセリド(C40-46の和)
・上記三者の合計量である中鎖脂肪酸結合トリグリセリド(C24-46の和)
構成脂肪酸中の中鎖及び長鎖脂肪酸含量並びに固体脂指数(SFC)を表2に示す。
【0031】
【0032】
【0033】
●テストA
・上記にて調製した配合用油脂を用いて、表3の配合を基に常法に従いホワイトチョコレ
ート生地を得た。
・上記チョコレート生地を50℃以上で溶解後、13℃の冷水で冷却しながら31℃まで
温度を下げた。
・シード剤(不二製油株式会社製/商品名「チョコシードA」)をチョコレートに対し0
.2重量%加えてテンパリング処理し、モールドに流しいれた。
・10℃で30分冷却、デモールドした。
・20℃にて1週間エージングして、各チョコレートを作成した。
・各チョコレート中の無脂乳固形分及び配合用油脂由来の中鎖脂肪酸結合トリグリセリド
含量を表3に示す。
・チョコレート油脂の開発業務に携わり、よく訓練された7人のパネラーにより、下記評
価基準に従い作成したチョコレートの咀嚼、嚥下時のねちゃつき感を評価した。官能評価
結果を表3に示す。
咀嚼、嚥下時のねちゃつき感評価(3点以上を合格とした)
1点 咀嚼時にねちゃつき感を強く感じる。
2点 咀嚼時にねちゃつき感を若干感じる。
3点 咀嚼時にねちゃつき感を若干感じるが許容範囲である。
4点 咀嚼時にねちゃつき感は感じられない。
5点 咀嚼時にねちゃつき感は感じられず、嚥下時にキレ感あり。
【0034】
【0035】
無脂乳固形分が17.6重量%のホワイトチョコレートにおいて、中鎖脂肪酸結合トリ
グリセリドを含まない比較例2や比較例3はともに、官能評価は1点又は2点であり不合
格であった。
一方コーン油とMCT油のエステル交換油1を用いた実施例1のチョコレートは、中鎖
脂肪酸結合トリグリセリドを3.2重量%含んでおり、5点と良好な食感を示した。
またMCT油を用いた実施例2のチョコレートは中鎖脂肪酸結合トリグリセリドを15
重量%と多量含んでおり、5点と良好であった。但し実施例1に比べ多量の中鎖脂肪酸結
合トリグリセリドを含むにもかかわらず、食感評価は同等であり、ねちゃつき感改善に対
する力価はMCT油よりもエステル交換油1の方が優れていると考えられた。
比較例1のチョコレートは、コーン油とMCT油を用いている。一方実施例1に用い
たエステル交換油1の反応前の原料は同量のコーン油とMCT油である。両者の違いはラ
ンダム化されているか否かの点のみであるが、実施例1のチョコレートは5点で合格、比
較例1のチョコレートは2点で不合格であった。同じ原料油脂であってもランダム化によ
り、ねちゃつき感改善効果に明確に差があることが判る。
【0036】
●テストB
・エステル交換油1を配合用油脂に用いて、表4の配合を基に常法に従いチョコレート生
地(油分45%)を得る以外はテストAと同様にして実施例3のホワイトチョコレートを
作成し食感を評価した。
【0037】
表4
エステル交換油1を用いた実施例3のチョコレートは、咀嚼時にねちゃつき感は感じられ
ず良好であった。
【0038】
●テストC
・エステル交換油1及びエステル交換油2を配合用油脂に用いて、表5の配合を基に常法
に従いイチゴチョコレート生地(油分41.1%)を得る以外はテストAと同様にしてチ
ョコレートを作成し食感を評価した。
【0039】
【0040】
エステル交換油1を用いた実施例4のイチゴチョコレートは咀嚼時にねちゃつき感は感じ
られず良好であった。エステル交換油2を用いた実施例5のイチゴチョコレートも同様で
あったが実施例4より若干劣る食感を示した。
実施例5に用いたエステル交換油2の炭素数16~22の(不飽和/飽和)比率は3.8
であり、エステル交換油1の5.7に比べ低く、炭素数16~22の不飽和脂肪酸が少な
いことが原因である可能性が示唆された。
【0041】
●テストD
中鎖脂肪酸結合トリグリセリドをどれだけ含有すればチョコレートに所期の効果が得ら
れるかを検討する。
パームスーパーオレイン及びエステル交換油1を配合用油脂に用いて、表6の配合を基に
常法に従い実施例6,7及び比較例6,7のホワイトチョコレート生地を得る以外はテス
トAと同様にしてチョコレートを作成し食感を評価した。
【0042】
表6
テンパリングタイプハードバターとして不二製油株式会社製「メラノSS600」を用い
た。メラノSS600はStOStトリグリセリドを主成分として含む油脂である。
【0043】
中鎖脂肪酸結合トリグリセリドを0.0,0.5重量%それぞれ含む比較例6、7のチョ
コレートはともに、官能評価は1点であり不合格であった。
一方中鎖脂肪酸結合トリグリセリドを1.1重量%含む実施例7のチョコレートは5点と
良好な食感を示し、合格であった。中鎖脂肪酸結合トリグリセリドを0.9重量%含む実
施例6のチョコレートは3点と許容範囲の食感を示し、合格であった。
【0044】
●テストE
中鎖脂肪酸結合トリグリセリドによる後味のキレ付与効果とチョコレート中の無脂乳固
形分との関係を検討する。
パームスーパーオレイン及びエステル交換油1を配合用油脂に用いて、種々の無脂乳固形
分のホワイトチョコレート又はミルクチョコレートを表7の配合を基に常法に従い、テス
トAと同様にして作成し食感を評価した。結果を表7に示す。
【0045】
表7
テンパリングタイプハードバターとして不二製油株式会社製「メラノSS600」を用い
た。
中鎖脂肪酸結合トリグリセリドを含まない比較例8,9,10,12,14のチョコレ
ートの評価結果から、無脂乳固形分が多ければねちゃつきを強く感じることが判る。また
無脂乳固形分が18.7重量%,16.4重量%の比較例8、9に対して中鎖脂肪酸結合
トリグリセリドを1.1重量%含む実施例8、9はねちゃつき感が改善されていた。
【0046】
●テストF
比較例8のチョコレートにおいてパームスパーオレインに代えて乳脂を配合して、比較例
15のチョコレートを作成した。評価の結果、比較例8と同じく咀嚼、嚥下時のねちゃつ
き感は1点であり不合格であった。
乳脂は構成脂肪酸中に数重量%の中鎖脂肪酸を含んでいるので、中鎖脂肪酸結合トリグ
リセリドを含む可能性があるが、ねちゃつき感改善効果は見られなかった。ちなみに乳脂
の構成脂肪酸はランダム分布しておらず、ランダム化された油脂ではない。