(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155505
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】印刷システムにおける気流制御、並びに関連するデバイス、システム、及び方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
B41J2/01 303
B41J2/01 307
B41J2/01 305
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034743
(22)【出願日】2022-03-07
(31)【優先権主張番号】17/217,466
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】シーミット・プラハラジ
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス・ケイ.・ヘルマン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン・エム.・ルフェーヴル
(72)【発明者】
【氏名】チューホン・リョウ
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ジェイ.・マッコンビル
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB03
2C056EB13
2C056EB36
2C056EC03
2C056EC11
2C056EC12
2C056EC28
2C056FA13
2C056HA07
2C056HA29
2C056HA60
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ぼやけ問題に対処する。
【解決手段】印刷システムは、キャリアプレート内の開口部を通して、堆積領域にインクを吐出するための印刷ヘッドを備える。印刷媒体は、真空プラテンのプラテン穴を通して伝達される真空吸引によって可動支持表面に対して保持され、堆積領域を通して搬送される。気流制御システムは、印刷ヘッドに関連付けられた上流バルブ及び下流バルブ、真空プラテン用の個別にアドレス可能なチャネル、又はその両方を含む。上流バルブ及び下流バルブは、キャリアプレート内の開口部のそれぞれ上流側又は下流側を通る気流を選択的に遮断及び許容するように配置されている。上流バルブ及び下流バルブの作動は、印刷媒体の場所に基づいて制御され得る。チャネルは、プラテン穴のそれぞれ対応する列への真空吸引の供給を選択的に制御するように配置される。チャネルの作動は、印刷媒体のサイズに基づいて制御され得る。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷システムであって、
インク堆積アセンブリであって、キャリアプレートと、前記キャリアプレート内の印刷ヘッド開口部を通して印刷流体を前記インク堆積アセンブリの堆積領域に吐出するように配置された印刷ヘッドと、を含む、インク堆積アセンブリと、
可動支持表面を含む媒体搬送デバイスであって、前記媒体搬送デバイスは、前記媒体搬送デバイス内の穴を通る真空吸引によって印刷媒体を前記可動支持表面に対して保持し、前記印刷媒体をプロセス方向に沿って前記堆積領域を通して搬送するように構成されている、媒体搬送デバイスと、
気流制御システムであって、
前記印刷ヘッドに関連付けられた上流バルブと、前記印刷ヘッドに関連付けられた下流バルブと、を含み、
前記上流バルブ及び前記下流バルブのそれぞれは、開放状態と閉鎖状態との間で移行可能であり、
前記上流バルブは、前記閉鎖状態において、前記印刷ヘッド開口部の上流側を通る気流を遮断し、前記開放状態において、前記印刷ヘッド開口部の前記上流側を通る気流を許容し、上流及び下流は、前記プロセス方向に基づいて定義され、
前記下流バルブは、前記閉鎖状態において、前記印刷ヘッド開口部の下流側を通る気流を遮断し、前記開放状態において、前記印刷ヘッド開口部の前記下流側を通る気流を許容する、気流制御システムと、を備える、印刷システム。
【請求項2】
前記上流バルブ及び前記下流バルブは、前記可動支持表面に対して保持された隣接する印刷媒体間の媒体間ゾーンの位置に基づいて、前記開放状態と前記閉鎖状態との間で個別に移行可能である、請求項1に記載の印刷システム。
【請求項3】
前記開放状態と前記閉鎖状態との間で前記上流バルブを作動させるように構成された第1のアクチュエータと、
前記開放状態と前記閉鎖状態との間で前記下流バルブを作動させるように構成された第2のアクチュエータと、
前記可動支持表面に対して保持された隣接する印刷媒体間の媒体間ゾーンの位置に基づいて、前記第1のアクチュエータ及び前記第2のアクチュエータに、前記上流バルブ及び前記下流バルブを前記開放状態と前記閉鎖状態との間で選択的に作動させるように構成されたコントローラと、を更に備える、請求項2に記載の印刷システム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記第1のアクチュエータ及び前記第2のアクチュエータに、
前記媒体間ゾーンが第1の位置に到達したときに、前記上流バルブを前記開放状態に作動させ、
前記媒体間ゾーンが第2の位置に到達したときに、前記上流バルブを前記閉鎖状態に作動させ、
前記媒体間ゾーンが第3の位置に到達したときに、前記下流バルブを前記開放状態に作動させ、
前記媒体間ゾーンが第4の位置に到達したときに、前記下流バルブを前記閉鎖状態に作動させるように構成されている、請求項3に記載の印刷システム。
【請求項5】
前記第4の位置は、前記第3の位置の下流であり、前記第3の位置及び前記第2の位置は、前記第1の位置の下流である、請求項4に記載の印刷システム。
【請求項6】
前記第2の位置及び前記第3の位置は同じ位置である、請求項5に記載の印刷システム。
【請求項7】
前記コントローラは、印刷画像内の画像のぼやけの量を感知することによって、上流バルブ及び下流バルブのそれぞれを作動させるための各トリガ場所を動的に決定し、前記感知された画像のぼやけの量に基づいて、前記各トリガ場所を調整するように構成されている、請求項3に記載の印刷システム。
【請求項8】
前記上流バルブ及び前記下流バルブは閾値バルブを含む、請求項2に記載の印刷システム。
【請求項9】
前記媒体間ゾーンが前記各バルブの下にあるとき、前記媒体間ゾーンからの真空吸引が、前記上流バルブ及び前記下流バルブのそれぞれを前記開放状態に個別に作動させる、請求項8に記載の印刷システム。
【請求項10】
前記媒体間ゾーンが前記各バルブの下にないとき、前記上流バルブ及び前記下流バルブのそれぞれは前記閉鎖状態にある、請求項9に記載の印刷システム。
【請求項11】
前記上流バルブ及び前記下流バルブのそれぞれは、クロスプロセス方向に沿って、プロセス方向に垂直に延在し、前記開放状態と前記閉鎖状態との間で作動されている間、前記クロスプロセス方向に平行な回転軸を中心に回転する、請求項1に記載の印刷システム。
【請求項12】
前記媒体搬送デバイスは真空プラテンを含み、前記穴は前記真空プラテンを通って延在し、
前記可動支持表面は、前記真空プラテンの表面の上を移動するように構成されたベルトを含む、請求項1に記載の印刷システム。
【請求項13】
前記気流制御システムは、オン状態とオフ状態との間で個別に移行可能な複数のチャネルを含み、前記チャネルのそれぞれは、前記プロセス方向に延在する前記穴の少なくとも1列に関連付けられており、
前記オン状態において、それぞれのチャネルは、前記少なくとも1列の穴に真空吸引を供給し、
前記オフ状態において、それぞれのチャネルは、前記少なくとも1列の穴に真空吸引を供給しない、請求項1に記載の印刷システム。
【請求項14】
前記気流制御システムは、前記チャネルを真空プレナムにそれぞれ連結する複数のチャネルバルブを更に含み、
前記チャネルバルブはそれぞれ、前記対応するチャネルをそれぞれ前記オン状態及び前記オフ状態にするために、開放状態と閉鎖状態との間で個別に作動可能である、請求項13に記載の印刷システム。
【請求項15】
前記印刷媒体のサイズに基づいて、前記チャネルのうちの個々のチャネルを選択的に前記オン状態及び前記オフ状態にするように構成されたコントローラを更に備える、請求項13に記載の印刷システム。
【請求項16】
印刷システムであって、
インク堆積アセンブリであって、キャリアプレートと、前記キャリアプレート内の印刷ヘッド開口部を通して印刷流体を前記インク堆積アセンブリの堆積領域に吐出するように配置された印刷ヘッドと、を含む、インク堆積アセンブリと、
可動支持表面を含む媒体搬送デバイスであって、前記媒体搬送デバイスは、前記媒体搬送デバイス内の穴を通る真空吸引によって印刷媒体を前記可動支持表面に対して保持し、前記印刷媒体をプロセス方向に沿って前記堆積領域を通して搬送するように構成されている、媒体搬送デバイスと、
オン状態とオフ状態との間で個別に移行可能である複数のチャネルを含む気流制御システムであって、前記チャネルのそれぞれは、前記穴の少なくとも1つの列に関連付けられている、気流制御システムと、を備え、
それぞれのチャネルは、前記オン状態において、前記少なくとも1列の穴に真空吸引を供給し、
それぞれのチャネルは、前記オフ状態において、前記少なくとも1列の穴に真空吸引を供給しない、印刷システム。
【請求項17】
前記印刷媒体のサイズに基づいて、前記チャネルのうちの個々のチャネルを選択的に前記オン状態及び前記オフ状態にするように構成されたコントローラを更に備える、請求項16に記載の印刷システム。
【請求項18】
前記気流制御システムは、前記チャネルを真空プレナムにそれぞれ連結する複数のバルブを更に含み、
前記バルブはそれぞれ、前記対応するチャネルをそれぞれ前記オン状態及び前記オフ状態にするために、開放状態と閉鎖状態との間で個別に作動可能である、請求項16に記載の印刷システム。
【請求項19】
印刷システムであって、
インク堆積アセンブリであって、キャリアプレートと、前記キャリアプレート内の印刷ヘッド開口部を通して印刷流体を前記インク堆積アセンブリの堆積領域に吐出するように配置された印刷ヘッドと、を含む、インク堆積アセンブリと、
可動支持表面を含む媒体搬送デバイスであって、前記媒体搬送デバイスは、前記媒体搬送デバイス内の穴を通る真空吸引によって印刷媒体を前記可動支持表面に対して保持し、前記印刷媒体をプロセス方向に沿って前記堆積領域を通して搬送するように構成されている、媒体搬送デバイスと、
気流制御システムであって、
前記印刷ヘッドに関連付けられた上流バルブ及び前記印刷ヘッドに関連付けられた下流バルブであって、
前記上流バルブ及び前記下流バルブのそれぞれは、開放状態と閉鎖状態との間で移行可能である、上流バルブ及び下流バルブと、
オン状態とオフ状態との間で個別に移行可能な複数のチャネルであって、前記チャネルのそれぞれは、前記プロセス方向に延在する前記穴の少なくとも1列に関連付けられている、複数のチャネルと、を含む、気流制御システムと、を備え、
前記上流バルブは、前記閉鎖状態において、前記印刷ヘッド開口部の上流側を通る気流を遮断し、前記開放状態において、前記印刷ヘッド開口部の前記上流側を通る気流を許容し、上流及び下流は、前記プロセス方向に基づいて定義され、
前記下流バルブは、前記閉鎖状態において、前記印刷ヘッド開口部の下流側を通る気流を遮断し、前記開放状態において、前記印刷ヘッド開口部の前記下流側を通る気流を許容し、
それぞれのチャネルは、前記オン状態において、前記関連する列の穴に真空吸引を供給し、
それぞれのチャネルは、前記オフ状態において、前記関連する列の穴に真空吸引を供給しない、印刷システム。
【請求項20】
コントローラであって、
前記印刷媒体のサイズに基づいて、前記チャネルの個々のチャネルを選択的に前記オン状態及び前記オフ状態にし、
前記可動支持表面に対して保持された隣接する印刷媒体間の媒体間ゾーンの位置に基づいて、前記開放状態と前記閉鎖状態との間で前記バルブを個別に作動させるように構成されている、コントローラを更に備える、請求項19に記載の印刷システム。
【請求項21】
方法であって、
印刷システムの印刷ヘッドの堆積領域を通して印刷媒体を搬送することであって、前記印刷媒体は、前記搬送中に、前記媒体搬送デバイス内の穴を通る真空吸引を介して媒体搬送デバイスの可動支持表面に対して保持され、前記真空吸引は、真空プレナムを介して真空源から前記穴に伝達される、ことと、
前記印刷ヘッドからキャリアプレート内の印刷ヘッド開口部を通して印刷流体を吐出して、前記堆積領域内の前記印刷媒体に前記インクを堆積させることと、
開放状態と閉鎖状態との間で上流バルブ及び下流バルブを選択的に作動させることによって、前記印刷ヘッド開口部の上流側及び下流側を通る気流を選択的に遮断するように、気流制御システムを制御することであって、上流及び下流は、前記プロセス方向に基づいて定義され、
前記上流バルブは、前記閉鎖状態において、前記印刷ヘッド開口部の前記上流側を通る気流を遮断し、前記開放状態において、前記印刷ヘッド開口部の前記上流側を通る気流を許容し、
前記下流バルブは、前記閉鎖状態において、前記印刷ヘッド開口部の下流側を通る気流を遮断し、前記開放状態において、前記印刷ヘッド開口部の前記下流側を通る気流を許容する、ことと、
複数のチャネルのうちの個々のチャネルを選択的にオン状態及びオフ状態にするように、前記気流制御システムを制御することであって、
前記チャネルのそれぞれは、前記プロセス方向に延在する少なくとも1列の前記穴と関連付けられ、
それぞれのチャネルは、前記オン状態において、前記関連する列の穴に真空吸引を供給し、
それぞれのチャネルは、前記オフ状態において、前記関連する列の穴に真空吸引を供給しない、ことと、を含む、方法。
【請求項22】
前記開放状態と前記閉鎖状態との間で前記上流バルブ及び前記下流バルブを選択的に作動させることは、前記可動支持表面に対して保持された隣接する印刷媒体間の媒体間ゾーンの位置に基づいて、前記バルブを選択的に作動させることを含み、
前記複数のチャネルのうちの個々のチャネルを選択的に前記オン状態及び前記オフ状態にすることは、前記印刷媒体のサイズに基づいて、前記チャネルのうちの個々のチャネルを選択的に前記オン状態及び前記オフ状態にすることを含む、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の態様は、一般にインクジェット印刷に関し、より具体的には、印刷媒体を保持及び搬送するために真空吸引を利用する媒体搬送デバイスを有するインクジェット印刷システムに関する。関連するデバイス、システム、及び方法も開示される。
【背景技術】
【0002】
序論
いくつかの用途では、インクジェット印刷システムは、1つ以上の印刷ヘッドを有するインク堆積アセンブリと、インク堆積アセンブリのインク堆積領域(例えば、印刷ヘッドの下の領域)を通して印刷媒体(例えば、数枚の紙、封筒などの基材、又はインクで印刷されるのに適した他の基材)を移動させるための媒体搬送デバイスと、を使用する。インクジェット印刷システムは、媒体が堆積領域を通過するときに印刷ヘッドから媒体上にインクを吐出することによって、印刷媒体上に印刷画像を形成する。いくつかのインクジェット印刷システムでは、媒体搬送デバイスは、真空吸引を利用して、印刷媒体を搬送デバイスの可動支持表面(例えば、コンベヤベルト、回転ドラムなど)に対して保持するのを支援する。印刷媒体を支持表面に対して保持するための真空吸引は、真空源(例えば、ファン)と、真空源を、印刷媒体を支持する側面とは反対側の可動支持表面の側面に流体的に連結する真空プレナムと、を使用して達成され得る。真空源は真空プレナム内に真空状態を作り、真空プレナムに流体的に連結された可動支持表面内の穴を通る真空吸引を引き起こす。印刷媒体が可動支持表面上に導入されると、真空吸引は、印刷媒体を可動支持表面に対して保持する吸引力を生成する。真空吸引を利用する媒体搬送デバイスは、可動支持表面上の印刷媒体が、インク堆積アセンブリの下のインク堆積領域を通って搬送される間に、所定の場所に滑りなくしっかり保持されることを可能にし得、それによって、印刷ヘッドに対する印刷媒体の正確な配置及びより正確な印刷画像を確実にするのを助ける。真空吸引はまた、印刷媒体が、インク堆積領域を通過するときに平坦に保持されることを可能にし得、これはまた、印刷画像の精度を高めるのに役立ち、同時に印刷媒体の一部がインク堆積アセンブリの一部を上昇させて衝突し、潜在的に詰まり又は破損を引き起こすことを防止するのに役立ち得る。
【0003】
真空吸引を利用する媒体搬送デバイスを含むインクジェット印刷システムで生じ得る1つの問題は、真空吸引によって誘発される空気流から生じる画像の意図しないぼやけである。いくつかのシステムでは、そのようなぼやけは、印刷媒体の縁部に近い印刷画像の部分で生じ得る。このぼやけは、印刷媒体の縁部のうちの1つ以上に隣接する媒体搬送デバイス内の被覆されない穴に起因して生じ得る。特に、印刷ジョブ中、印刷媒体は、インク堆積アセンブリの堆積領域を介して処理方向に搬送されるときに、可動支持表面上で互いに離間しており、したがって隣接する印刷媒体間の可動支持表面の部分は、いずれの印刷媒体にも被覆されない。隣接する印刷媒体間のこの領域は、本明細書では、媒体間ゾーンと称される。したがって、媒体間ゾーン内のそれぞれの印刷媒体の前縁部及び後縁部の両方に隣接して、可動支持表面に被覆されない穴が存在する。
【0004】
更に、印刷媒体の内側縁部に沿って延在する被覆されない穴の領域も存在し得る。印刷媒体の1つの縁部は、印刷媒体をクロスプロセス方向に位置合わせするために使用され(すなわち、縁部は、位置合わせ基準線とクロスプロセス方向に整列される)、この縁部は、本明細書では外側縁部と称される。外側縁部の反対側の縁部は、本明細書では内側縁部と称される。クロスプロセス方向の外側縁部の場所が固定されているため、クロスプロセス方向の内側縁部の場所は、印刷媒体のサイズに応じて変化する。真空吸引のための穴は、一般に、最小サイズから最大サイズまで、システムが使用するように設計されている印刷媒体の任意のサイズを保持することができるように、クロスプロセス方向の堆積領域のおおよそ全幅にわたって延在するように配置される。その結果、現在印刷されている印刷媒体が最大サイズより小さい場合、その内側縁部は、全ての穴を被覆するほど十分にクロスプロセス方向に延在することはできない。したがって、より小さい印刷媒体が使用されるとき、被覆されない穴の領域が、印刷媒体の内側縁部に隣接して現れる。
【0005】
前縁部、後縁部、及び内側縁部近くの上述の穴は被覆されないため、真空プレナムの真空は、それらの被覆されない穴を通って流れる空気を誘発する。この気流は、例えば、サテライト滴などのインク滴を、印刷ヘッドから基板に移動する際に偏向させ、それにより、それらの縁部近くの画像のぼやけを引き起こし得る。
【0006】
インクジェット印刷システムにおける液滴の配置の精度を改善し、最終的な印刷媒体製品のぼやけの外観を低減する必要性が存在する。効率的なインクジェット印刷システムを提供するために、印刷及び搬送の速度を維持しながら、信頼できる方法でぼやけ問題に対処する必要性が更に存在する。
【発明の概要】
【0007】
本開示の実施形態は、上述の問題のうちの1つ以上を解決することができ、かつ/又は上述の望ましい特徴のうちの1つ以上を実証することができる。他の特徴及び/又は利点は、以下の説明から明らかになり得る。
【0008】
本開示の少なくとも1つの実施形態によれば、印刷システムは、キャリアプレートと、キャリアプレート内の印刷ヘッド開口部を通して印刷流体をインク堆積アセンブリの堆積領域に吐出するように配置された印刷ヘッドと、を含むインク堆積アセンブリと、可動支持表面を含む媒体搬送デバイスであって、媒体搬送デバイスは、媒体搬送デバイス内の穴を通る真空吸引によって印刷媒体を可動支持表面に対して保持し、印刷媒体をプロセス方向に沿って堆積領域を通して搬送するように構成されている、媒体搬送デバイスと、気流制御システムと、を備える。気流制御システムは、印刷ヘッドに関連付けられた上流バルブと、印刷ヘッドに関連付けられた下流バルブと、を含む。上流バルブ及び下流バルブのそれぞれは、開放状態と閉鎖状態との間で移行可能である。上流バルブは、閉鎖状態では、印刷ヘッド開口部の上流側を通る気流を遮断し、開放状態では、印刷ヘッド開口部の上流側を通る気流を許容し、上流及び下流は、プロセス方向に基づいて定義される。下流バルブは、閉鎖状態では、印刷ヘッド開口部の下流側を通る気流を遮断し、開放状態では、印刷ヘッド開口部の下流側を通る気流を許容する。
【0009】
本開示の少なくとも1つの実施形態によれば、印刷システムは、キャリアプレートと、キャリアプレート内の印刷ヘッド開口部を通して印刷流体をインク堆積アセンブリの堆積領域に吐出するように配置された印刷ヘッドと、を含むインク堆積アセンブリと、可動支持表面を含む媒体搬送デバイスであって、媒体搬送デバイスは、媒体搬送デバイス内の穴を通る真空吸引によって印刷媒体を可動支持表面に対して保持し、印刷媒体をプロセス方向に沿って堆積領域を通して搬送するように構成されている、媒体搬送デバイスと、気流制御システムと、を備える。気流制御システムは、オン状態とオフ状態との間で個別に移行可能な複数のチャネルを含み、チャネルのそれぞれは、少なくとも1列の穴に関連付けられる。それぞれのチャネルは、オン状態では、少なくとも1列の穴に真空吸引を供給し、それぞれのチャネルは、オフ状態では、少なくとも1列の穴に真空吸引を供給しない。
【0010】
本開示の少なくとも1つの実施形態によれば、印刷システムは、キャリアプレートと、キャリアプレート内の印刷ヘッド開口部を通して印刷流体をインク堆積アセンブリの堆積領域に吐出するように配置された印刷ヘッドと、を含むインク堆積アセンブリと、可動支持表面を含む媒体搬送デバイスであって、媒体搬送デバイスは、媒体搬送デバイス内の穴を通る真空吸引によって印刷媒体を可動支持表面に対して保持し、印刷媒体をプロセス方向に沿って堆積領域を通して搬送するように構成されている、媒体搬送デバイスと、気流制御システムと、を備える。気流制御システムは、印刷ヘッドに関連付けられた上流バルブと、印刷ヘッドに関連付けられた下流バルブと、を含む。上流バルブ及び下流バルブのそれぞれは、開放状態と閉鎖状態との間で移行可能である。上流バルブは、閉鎖状態では、印刷ヘッド開口部の上流側を通る気流を遮断し、開放状態では、印刷ヘッド開口部の上流側を通る気流を許容し、上流及び下流は、プロセス方向に基づいて定義される。下流バルブは、閉鎖状態では、印刷ヘッド開口部の下流側を通る気流を遮断し、開放状態では、印刷ヘッド開口部の下流側を通る気流を許容する。気流制御システムはまた、オン状態とオフ状態との間で個別に移行可能な複数のチャネルを含む。チャネルのそれぞれは、プロセス方向に延在する少なくとも1列の穴と関連付けられている。それぞれのチャネルは、オン状態にあるときには、関連付けられた列の穴に真空吸引を供給し、それぞれのチャネルは、オフ状態にあるときには、関連付けられた列の穴に真空吸引を供給しない。
【0011】
本開示の少なくとも1つの実施形態によれば、方法は、印刷システムの印刷ヘッドの堆積領域を通して印刷媒体を搬送することと、印刷流体を、キャリアプレート内の印刷ヘッド開口を通して印刷ヘッドから吐出して、堆積領域内の印刷媒体にインクを堆積させることと、を含む。印刷媒体は、搬送中、媒体搬送デバイス内の穴を通る真空吸引を介して媒体搬送デバイスの可動支持表面に対して保持され、真空吸引は、真空プレナムを介して真空源から穴に伝達される。この方法は、開放状態と閉鎖状態との間で上流バルブ及び下流バルブを選択的に作動させることによって、印刷ヘッド開口部の上流側及び下流側を通る気流を選択的に遮断するように、気流制御システムを制御することを更に含み、上流及び下流は、プロセス方向に基づいて定義される。上流バルブは、閉鎖状態では、印刷ヘッド開口部の上流側を通る気流を遮断し、開放状態では、印刷ヘッド開口部の上流側を通る気流を許容する。下流バルブは、閉鎖状態では、印刷ヘッド開口部の下流側を通る気流を遮断し、開放状態では、印刷ヘッド開口部の下流側を通る気流を許容する。この方法はまた、複数のチャネルのうちの個々のチャネルを選択的にオン状態及びオフ状態にするように、気流制御システムを制御することを含んでもよく、チャネルのそれぞれは、プロセス方向に延在する少なくとも1列の穴に関連付けられている。それぞれのチャネルは、オン状態では、関連付けられた列の穴に真空吸引を供給し、それぞれのチャネルは、オフ状態では、関連付けられた列の穴に真空吸引を供給しない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本開示は、単独又は添付の図面と一緒のいずれかで、以下の詳細な説明から理解され得る。図面は、本開示の更なる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する。図面は、本教示の1つ以上の実施形態を示し、説明とともに、特定の原理及び動作を明白にする。図面において:
【0013】
【
図1A】従来のインクジェット印刷システムのインク堆積領域を通る印刷媒体搬送の異なる段階における印刷ヘッドアセンブリ、搬送デバイス、及び印刷媒体に対する気流パターンと、結果として生じる印刷媒体製品でのぼやけ効果と、を概略的に示す。
【
図1B】従来のインクジェット印刷システムのインク堆積領域を通る印刷媒体搬送の異なる段階における印刷ヘッドアセンブリ、搬送デバイス、及び印刷媒体に対する気流パターンと、結果として生じる印刷媒体製品でのぼやけ効果と、を概略的に示す。
【
図1C】従来のインクジェット印刷システムのインク堆積領域を通る印刷媒体搬送の異なる段階における印刷ヘッドアセンブリ、搬送デバイス、及び印刷媒体に対する気流パターンと、結果として生じる印刷媒体製品でのぼやけ効果と、を概略的に示す。
【
図1D】従来のインクジェット印刷システムのインク堆積領域を通る印刷媒体搬送の異なる段階における印刷ヘッドアセンブリ、搬送デバイス、及び印刷媒体に対する気流パターンと、結果として生じる印刷媒体製品でのぼやけ効果と、を概略的に示す。
【
図1E】従来のインクジェット印刷システムのインク堆積領域を通る印刷媒体搬送の異なる段階における印刷ヘッドアセンブリ、搬送デバイス、及び印刷媒体に対する気流パターンと、結果として生じる印刷媒体製品でのぼやけ効果と、を概略的に示す。
【
図1F】従来のインクジェット印刷システムのインク堆積領域を通る印刷媒体搬送の異なる段階における印刷ヘッドアセンブリ、搬送デバイス、及び印刷媒体に対する気流パターンと、結果として生じる印刷媒体製品でのぼやけ効果と、を概略的に示す。
【
図1G】従来のインクジェット印刷システムのインク堆積領域を通る印刷媒体搬送の異なる段階における印刷ヘッドアセンブリ、搬送デバイス、及び印刷媒体に対する気流パターンと、結果として生じる印刷媒体製品でのぼやけ効果と、を概略的に示す。
【
図1H】従来のインクジェット印刷システムのインク堆積領域を通る印刷媒体搬送の異なる段階における印刷ヘッドアセンブリ、搬送デバイス、及び印刷媒体に対する気流パターンと、結果として生じる印刷媒体製品でのぼやけ効果と、を概略的に示す。
【
図1I】従来のインクジェット印刷システムのインク堆積領域を通る印刷媒体搬送の異なる段階における印刷ヘッドアセンブリ、搬送デバイス、及び印刷媒体に対する気流パターンと、結果として生じる印刷媒体製品でのぼやけ効果と、を概略的に示す。
【
図1J】従来のインクジェット印刷システムのインク堆積領域を通る印刷媒体搬送の異なる段階における印刷ヘッドアセンブリ、搬送デバイス、及び印刷媒体に対する気流パターンと、結果として生じる印刷媒体製品でのぼやけ効果と、を概略的に示す。
【
図1K】従来のインクジェット印刷システムのインク堆積領域を通る印刷媒体搬送の異なる段階における印刷ヘッドアセンブリ、搬送デバイス、及び印刷媒体に対する気流パターンと、結果として生じる印刷媒体製品でのぼやけ効果と、を概略的に示す。
【
図1L】従来のインクジェット印刷システムのインク堆積領域を通る印刷媒体搬送の異なる段階における印刷ヘッドアセンブリ、搬送デバイス、及び印刷媒体に対する気流パターンと、結果として生じる印刷媒体製品でのぼやけ効果と、を概略的に示す。
【0014】
【
図2】気流制御システムを含むインクジェット印刷システムの一実施形態の構成要素を示すブロック図である。
【0015】
【
図3】インクジェット印刷システムの一実施形態のインク堆積アセンブリ、媒体搬送デバイス、及び気流制御気流制御システムの概略図である。
【0016】
【
図4A】
図3のインクジェット印刷システムの印刷ヘッドアセンブリの上方からの平面図である。
【
図4B】
図3のインクジェット印刷システムの一部分の平面図である。
【0017】
【
図5A】断面が
図4AのDに沿って取られた、
図4Aのインクジェット印刷システムの断面図である。
【
図5B】断面が
図4AのDに沿って取られた、
図4Aのインクジェット印刷システムの断面図である。
【
図5C】断面が
図4AのDに沿って取られた、
図4Aのインクジェット印刷システムの断面図である。
【
図5D】断面が
図4AのDに沿って取られた、
図4Aのインクジェット印刷システムの断面図である。
【
図5E】断面が
図4AのDに沿って取られた、
図4Aのインクジェット印刷システムの断面図である。
【
図5F】断面が
図4AのDに沿って取られた、
図4Aのインクジェット印刷システムの断面図である。
【0018】
【
図6A】断面がプロセス方向に沿って取られた、インクジェット印刷システムの断面図である。
【
図6B】断面がプロセス方向に沿って取られた、インクジェット印刷システムの断面図である。
【
図6C】断面がプロセス方向に沿って取られた、インクジェット印刷システムの断面図である。
【
図6D】断面がプロセス方向に沿って取られた、インクジェット印刷システムの断面図である。
【0019】
【
図7】インクジェット印刷システムの一実施形態の真空プラテンの下からの平面図である。
【0020】
【
図8A】断面が
図7のEに沿って取られた、
図7のインクジェット印刷システムの断面図である。
【
図8B】断面が
図7のEに沿って取られた、
図7のインクジェット印刷システムの断面図である。
【
図8C】断面が
図7のEに沿って取られた、
図7のインクジェット印刷システムの断面図である。
【0021】
【
図9】方法の一実施形態を示すプロセスフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
上述のように、媒体間ゾーンが印刷ヘッドの近く又はその下にあるとき、媒体間ゾーン内の被覆されない穴は、印刷ヘッドからの吐出時に形成されるより小さなサテライト滴などのインク滴を進路から吹き飛ばし、画像のぼやけを引き起こし得る交差流を生成し得る。同様に、印刷媒体の内側側部又は外側側部沿いの被覆されない穴もまた、画像のぼやけを引き起こす交差流を生成し得る。ぼやけ問題を引き起こす現象のいくつかをよりよく例示するために、
図1A~
図1Lを参照する。
図1A、
図1D、
図1G、及び
図1Jは、それぞれ印刷媒体5の後縁部TE、前縁部LE、内側縁部IE、及び中間部分の近くで、印刷媒体5上に印刷する印刷ヘッド10を概略的に示す。
図1A、
図1D、及び
図1Jは、プロセス方向P(可動表面が印刷ヘッドの下の印刷媒体を、堆積領域を通して移動させる方向であり、図中のy軸方向)に沿って印刷ヘッド10のうちの1つを通して取られた断面であり、
図1Gは、プロセス方向Pに垂直なクロスプロセス方向(図中のx軸方向)に沿って同じ印刷ヘッド10を通して取られた断面図である。
図1B、
図1E、
図1H、及び
図1Kは、それぞれ
図1A、
図1D、
図1G、及び
図1Jの領域A、B、C、及びDの拡大図を示す。
図1C、
図1F、
図1I、及び
図1Lは、印刷画像の拡大写真を示し、印刷画像は、1枚の紙の後縁部TE、前縁部LE、内側縁部IE、及び中間部の近くに印刷された線を含む。
【0023】
図1A、
図1D、
図1G、及び
図1Jに示すように、インクジェット印刷システムは、キャリアプレート11内の印刷ヘッド開口部19を介して印刷媒体5にインクを吐出するための1つ以上の印刷ヘッド10と、図中の正のy軸方向に対応するプロセス方向Pに印刷媒体5を搬送するための可動支持表面20と、を備える。可動支持表面20は、真空プラテン26の上部にわたって移動し(例えば、上部に沿って摺動する)、プラテン26の底部側に真空環境が提供される。可動支持表面20は穴21を有し、真空プラテン26は穴27を有し、穴21及び27は、可動支持表面20の上方の領域をプラテン26の下の真空に露出させるように、可動支持表面20が移動するときに周期的に整列する。印刷媒体5が穴21を被覆する領域では、整列した穴21及び27を通る真空吸引は、印刷媒体5を可動支持表面20に対して保持する力を生成する。しかしながら、これらの覆われた穴21及び27は、印刷媒体5によって遮断されるため、これらの穴を流れる空気はほとんど又は全くない。一方、
図1A、
図1D、及び
図1Gに示されるように、媒体間ゾーン22及びプラテン26の内側側部IB近くの非被覆領域24では、穴21及び27は、印刷媒体5によって被覆されず、したがって、真空吸引は、空気を引き込み、これらの穴21及び27から流下させる。これによって、
図1A、
図1D、及び
図1Gの破線矢印によって示される、印刷ヘッド10の周りの領域から媒体間ゾーン22及び非被覆領域24の被覆されない穴21及び27に向かって流れる気流が生まれ、気流の一部は、印刷ヘッド10の下を通過する。
【0024】
図1Aでは、印刷媒体5aは、その後縁部TEの近くで印刷されているため、インクが現在吐出されている領域(例えば、
図1Aのインク吐出領域A)は、媒体間ゾーン22の下流に位置し、媒体間ゾーンは、印刷媒体5bに続く、印刷媒体5aと印刷媒体5bとの間の領域である。上流及び下流は、プロセス方向Pに対して定義されている。したがって、媒体間ゾーン22に向かって吸引される空気の一部は、インク吐出領域Aを通って上流に流れる。より具体的には、媒体間ゾーン22からの真空吸引は、媒体間ゾーン22のすぐ上の領域、例えば
図1Aの領域R
1の圧力を低下させる一方、印刷ヘッド10の下流にある領域、例えば
図1Aの領域R
2は、より高圧のままである。この圧力勾配により、空気は領域R
2から領域R
1へ上流方向に流れ、気流は、領域R
1と領域R
2との間にある
図1Aのインク吐出領域Aを通って交差する。インク吐出領域を通って交差するこれらのような気流は、本明細書では交差流15と称される。
図1Aでは、交差流15は、インク吐出領域Aに対する媒体間ゾーン22の相対的な場所に起因して上流に流れるが、媒体間ゾーン22が他の場所にある場合、交差流15は異なって流れ得る。加えて、一部の交差流は、媒体間ゾーン22以外のソースに起因して生じる場合があり、これらの交差流は様々な方向に流れ得る。このように、例示された交差流15は例示に過ぎず、印刷ヘッド10の近くで発生し得る全ての交差流を網羅することを意味するものではない。
【0025】
領域Aの拡大図を含む
図1Bの拡大
図A’に示されるように、インクが印刷ヘッド10から媒体5に向かって吐出されるときに、メイン滴12及びサテライト滴13が形成される。サテライト滴13は、メイン滴12よりはるかに小さく、質量及び運動量は少なく、したがって、上流の交差流15は、メイン滴12よりサテライト滴13に影響を及ぼす傾向がある。このように、メイン滴12は、交差流15に関係なく、それらの意図された堆積場所16の近くで印刷媒体5上に着弾し得るが、交差流15は、サテライト滴13が媒体5上の意図されない場所17に着弾するように、サテライト滴13を意図された軌道から離れる方向に押し得、意図されない場所17は、意図された場所16から変位している。これは、
図1Cに示されるように、実際の印刷画像で見ることができ、ここで、より濃密な/より暗い線状部分は、意図された場所16に主体となって堆積されたメイン滴12によって形成されるが、線から離れる方向に分散されるより小さいドットは、意図されない場所17に着弾するように、意図された場所16から離れる方向に吹き飛ばされたサテライト滴13によって形成され、その結果、印刷された線は、ぼやけた又はにじんだ外観になる。特に、
図1Cのぼやけは、主に上流方向に吹く後縁部TE付近の交差流15により、後縁部TEに向かって非対称に付勢される。媒体間ゾーン22はまた、印刷ヘッド10の上流側から下流の気流などの他の方向に流れる他の気流を誘発し得るが、これらの他の気流は、
図1A及び
図1Bの例示のシナリオではインク吐出領域Aを通過しないため、画像のぼやけに寄与しない。インク吐出領域を横切るこれらの気流のみが、本明細書では交差流と称される。
【0026】
図1D~
図1Fは、そのようなぼやけが生じる更なる状況を示すが、このときは、印刷媒体5bの前縁部LEに近い。前縁部LEの近くがぼやける原因は、前縁部LEの近くで印刷する場合、インク吐出領域Bがこの時点で媒体間ゾーン22の上流に位置することを除き、後縁部TEに関連して上述したものと同様である。結果として、インク吐出領域Bを横切っている交差流15は、印刷ヘッド10の上流側から、例えば領域R
3から発生し、下流に流れる。このように、領域Bの拡大図を含む
図1Eの拡大
図B’に示されるように、前縁部LEの近くで印刷する場合、サテライト滴13は、印刷媒体5bの前縁部LEに向かって下流に(正のy軸方向に)吹き飛ばされる。
図1Fに示されるように、この結果、前縁部LEに向かって付勢される非対称のぼやけが生じる。
【0027】
図1G~
図1Iは、そのようなぼやけが生じ得る別の状況を示すが、このときは、印刷媒体5aの内側縁部IEに近い。上記のように、本明細書で使用されるとき、内側縁部は、印刷媒体のいずれかの、外側縁部と反対側の縁部であり、外側縁部は、印刷媒体をクロスプロセス方向に位置合わせするために使用される縁部である。
図1Gに示すように、外側縁部OEは、位置合わせ基準線(REG)に位置合わせ(整列)される。印刷媒体5aは、可動支持表面20によって収容される最大サイズよりクロスプロセス方向に小さいため、印刷媒体の内側縁部IEに沿った穴21は被覆されない。被覆されない穴を含む内側縁部IE沿いの領域は、本明細書では非被覆領域24と称される。内側縁部IEの近くがぼやける原因は、内側縁部IEの近くで印刷する場合、交差流15が媒体間ゾーン22ではなく非被覆領域24によって誘発され、インク吐出領域が非被覆領域24の外側に位置することを除いて、後縁部TE及び前縁部LEに関連して上述したものと同様である。結果として、インク吐出領域Cを横切っている交差流15は、この時点で印刷ヘッド10の外側側部から、例えば領域R
5から発生し、領域R
4に向かって内側方向に流れる。このように、領域Cの拡大図を含む
図1Hの拡大
図C’に示されるように、内側縁部IEの近くで印刷する場合、サテライト滴13は、印刷媒体5bの内側縁部IEに向かって内側に(正のy軸方向に)吹き飛ばされる。
図1Iに示されるように、この結果、内側縁部LEに向かって付勢される非対称のぼやけが生じる。
【0028】
対照的に、
図1J、及び領域Dの拡大図に対応する
図1Kの拡大
図D’に示されるように、印刷媒体105の縁部から離れた場所に印刷するとき、媒体間ゾーン22及び非被覆領域24は離れすぎて気流をあまり誘発することができないため、交差流15はほとんど又は全く存在しない場合がある。交差流15は、可動支持表面20内の被覆されない穴の近くにある印刷媒体5の縁部から離れると、存在しないか又は弱くなるため、この領域のサテライト滴13は、進路から吹き飛ばされる可能性が低くなる。このように、
図1K及び
図1Lに示すように、印刷媒体5bの縁部から離れた場所に印刷するとき、印刷媒体5bの「中央部分」では、サテライト滴13は、意図された場所16にはるかに近い場所18に着弾する傾向があり、目立った画像のぼやけは、あるとしても、はるかに少なくなる。サテライト滴13の堆積場所18は、サテライト滴13に影響を与える他の要因に起因して、依然として意図された場所16から幾分異なり得るが、偏差は、前縁部、後縁部、又は内側縁部に近い場合より小さい。
【0029】
本明細書に開示される実施形態は、とりわけ、許容できない画像のぼやけをもたらす傾向がある、望ましくない交差流を低減又は排除する気流制御システムを利用することによって、そのような画像のぼやけを低減又は排除し得る。交差流が低減又は排除された状態では、サテライト滴は、それらの意図された堆積場所のより近くに又は意図された堆積場所に着弾する可能性が高くなり、したがって、ぼやけの量は減少する。様々な実施形態による気流制御システムは、媒体間ゾーンの位置に基づき、キャリアプレート内の印刷ヘッド開口部の上流部分及び下流部分を通る気流を選択的に遮断することによって、及び/又は真空プラテン内のプロセス方向に沿って延びる、個別にアドレス可能なチャネルを通る気流を選択的に遮断することによって、交差流を低減又は排除する。
【0030】
様々な実施形態では、キャリアプレート内の印刷ヘッドと印刷ヘッド開口部のリムとの間の間隙を選択的に遮断するために、バルブがそれぞれの印刷ヘッドに対して提供される。上流バルブは、印刷ヘッドと印刷ヘッド開口部のリムとの間の上流の間隙を遮断するために、印刷ヘッドの上流側に提供され、下流バルブは、印刷ヘッドと印刷ヘッド開口部のリムとの間の下流の間隙を遮断するために、印刷ヘッドの下流側に提供される(上流及び下流はプロセス方向に基づいて定義される)。それぞれのバルブは、媒体間ゾーンの場所に応じたタイミングで、間隙を通る気流を許容する開放状態と、間隙を通る気流を遮断する閉鎖状態との間で移動可能である。様々な実施形態では、バルブは能動的に制御され、例えば、開放状態と閉鎖状態との間を移動するためにアクチュエータによって作動される。様々な他の実施形態では、バルブは、受動的に制御され、例えば、バルブの近くにあるときの媒体間ゾーンの吸引によって開放状態と閉鎖状態との間で移動させられる。
【0031】
様々な実施形態では、バルブは、バルブが、キャリアプレート内の印刷ヘッド開口部のいずれの側であっても、現在の動作状況下で交差流に寄与する傾向がある側を通る気流を遮断し、媒体間ゾーンの上方の低圧を緩和するために印刷ヘッド開口部の他方の側を通る気流を許容するように、媒体間ゾーンの場所に基づいて開放状態と閉鎖状態との間で移動する。各前縁部及び後縁部で交差流に寄与する傾向がある印刷ヘッド開口部の側は、媒体間ゾーンが印刷ヘッドを通り過ぎると変わるため、上流バルブ及び下流バルブは、媒体間ゾーンがそれらを通り過ぎるときの媒体間ゾーンの位置に基づいて交互に開閉する。例えば、媒体間ゾーンの下流縁部(すなわち、印刷媒体の後縁部TE)が
図1Aのように印刷ヘッドの下にあるとき、対応するキャリアプレート開口部の下流側を通る気流は、インク吐出領域を通って上流に流れる傾向があるため、この気流は交差流に寄与する傾向がある。一方、この同じ状況において、印刷ヘッド開口部の上流側を通る気流は、媒体間ゾーンの上方の負圧を打ち消すのに役立つため、実際には交差流を緩和するのに役立つことになる。このように、印刷ヘッド開口部の上流側を通る有益な気流を許容しながら、印刷ヘッド開口部の下流側からの交差流を防止するために、下流バルブは閉鎖状態にされ、上流バルブは開放状態にされる。媒体間ゾーンが下流に移動し続けると、最終的に、媒体間ゾーンの上流縁部(すなわち、後続の印刷媒体の前縁部LE)は、
図1Dにあるように、印刷ヘッドの下を通過し始め、この時点で、印刷ヘッド開口部の上流側は、交差流に寄与する側になり、下流側を通る気流は有益になる。したがって、下流バルブは開放状態に変わり、上流バルブは閉鎖状態に変わる。このように、バルブは、そうでなければ交差流に寄与する印刷ヘッドの一方の側からの気流を遮断すると同時に、交差流を軽減するのに役立つ印刷ヘッドの他方の側からの気流を許容することによって、交差流を低減又は排除する。媒体間ゾーンによって誘発される交差流が低減又は排除された状態では、サテライト滴は、印刷媒体の前縁部及び後縁部の近くのそれらの意図された堆積場所に又は意図された堆積場所のより近くに着弾する可能性が高くなり、したがって、ぼやけの量が減少する。
【0032】
様々な実施形態では、本開示は、媒体搬送デバイスの真空プラテンに提供される個別にアドレス可能なチャネルの使用を更に企図し、チャネルは、プロセス方向に延在する。チャネルは、印刷媒体のサイズに応じて現れ得る可動支持表面の潜在的な非被覆領域と整列されるように、少なくとも真空プラテンの内側側部の領域に提供され得る。それぞれのチャネルは、真空プレナムの真空吸引を真空プラテン内のプラテン穴の対応する列に伝達する。1つ以上のバルブが、対応するチャネルを通る気流を遮断する(本明細書では参照を容易にするためにチャネルをオフにするとも称される)、又は対応するチャネルを通る気流を許容する(本明細書では参照を容易にするためにチャネルをオンにするとも称される)ために、チャネルごとに提供される。したがって、対応するチャネルのバルブを作動させることによって、個々の列の穴を通る吸引を独立してオン又はオフにすることができる。様々な実施形態では、個別にアドレス可能なチャネルは、現在使用されている印刷媒体のサイズに基づいて制御され、その結果、非被覆領域内に位置するそれぞれのチャネルはオフになり、それによって、非被覆領域内の被覆されないプラテン穴のそれぞれを通る吸引を防止する。非被覆領域で吸引が遮断された状態では、そうでなければ非被覆領域によって引き起こされる交差流が低減又は排除されるため、ぼやけの量が減少する。
【0033】
図2は、本開示の1つ以上の実施形態による、気流制御システムを利用する印刷システム100を概略的に示すブロック図である。印刷システム100は、インク堆積アセンブリ101、媒体搬送デバイス103、気流制御システム150、及び制御システム130を含む。印刷システム100のこれらの構成要素については、以下でより詳細に説明する。
【0034】
インク堆積アセンブリ101は、1つ以上の印刷ヘッドモジュール102を含む。簡略化のために、
図2には1つの印刷ヘッドモジュール102が示されているが、任意の数の印刷ヘッドモジュール102がインク堆積アセンブリ101に含まれてもよい。いくつかの実施形態では、それぞれの印刷ヘッドモジュール102は、例えば、シアン、マゼンタ、黄色、及び黒などの特定のインク色に対応し得る。それぞれの印刷ヘッドモジュール102は、インクなどの印刷流体を印刷媒体上に吐出して画像を形成するように構成された、1つ以上の印刷ヘッド110を含む。
図2では、簡略化のために、1つの印刷ヘッド110が印刷ヘッドモジュール102に示されているが、印刷ヘッドモジュール102ごとに任意の数の印刷ヘッド110が含まれてもよい。印刷ヘッドモジュール102は、本明細書ではキャリアプレート111と称され得る底壁を含む、1つ以上の壁を含み得る。キャリアプレート111は、印刷ヘッド開口部119を含み、印刷ヘッド110は、印刷ヘッド開口部119を通してインクを吐出するように配置されている。いくつかの実施形態では、キャリアプレート111は、印刷ヘッド110を支持する。他の実施形態では、印刷ヘッド110は、他の構造によって支持される。印刷ヘッドモジュール102はまた、当技術分野において既知であるように、インク供給ライン、インクリザーバ、電気接続(図示せず)などのような、印刷ヘッド110の動作を支持及び促進するための追加の構造及びデバイスを含んでもよい。
【0035】
図2に示すように、媒体搬送デバイス103は、可動支持表面120、真空プレナム125、及び真空源128を含む。可動支持表面120は、インク堆積アセンブリ101の堆積領域を通して印刷媒体を搬送する。真空プレナム125は、可動支持表面120の一方の側(例えば、底部側)に真空吸引を供給し、印刷媒体は、可動支持表面120の反対側(例えば、上部側)で支持される。可動支持表面120を通る穴121は、真空吸引が印刷媒体を表面120に対して保持するように、表面120を通して真空吸引を伝達する。可動支持表面120は、インク堆積アセンブリ101に対して移動可能であり、したがって、可動支持表面120が移動するときに、可動支持表面120に対して保持された印刷媒体は、インク堆積アセンブリ101に対して搬送される。具体的には、可動支持表面120は、インク堆積アセンブリ101の堆積領域を通して印刷媒体を搬送し、堆積領域は、印刷ヘッド(複数可)110の下の領域など、印刷流体(例えば、インク)が印刷媒体上に吐出される領域である。可動支持表面120は、インク堆積アセンブリ101に対して移動するように駆動されることが可能な任意の構造を含み得、この構造は、真空吸引が、ベルト、ドラムなどの印刷媒体を保持することを可能にするための穴121を有する。真空プレナム125は、バルブ、壁、又は真空状態(例えば、低圧状態)が真空源128によって維持される環境を囲い込む又は画定するように配置された任意の他の構造を含み、プレナム125は、可動支持表面120が真空プレナム125内の真空状態に露出されるように、真空源128を可動支持表面120に流体的に連結する。いくつかの実施形態では、可動支持表面120は、真空プレナム125の頂壁であり得る真空プラテン126によって支持される。そのような実施形態では、可動支持表面120は、真空プラテン126を通る穴127を介してプレナム125内の真空に流体的に連結される。いくつかの実施形態では、可動支持表面120はそれ自体、真空プレナム125の壁のうちの1つであり、したがって、プレナム125内の真空に直接露出される。真空源128は、ファン、ポンプなど、プレナム125から空気を除去してプレナム125内の低圧状態を作るように構成された、任意のデバイスであってもよい。
【0036】
気流制御システム150は、(a)印刷ヘッド110の周りの気流を制御するためのバルブ151、(b)真空プラテン126内の穴127の列を通る気流を制御するためのチャネル160及びチャネルバルブ161、又は(c)バルブ151と、チャネル160及びチャネルバルブ161との両方を含む。バルブ151が使用されるいくつかの実施形態では、バルブ151を開放状態と閉鎖状態との間で移動させるために、アクチュエータ159も提供される。本明細書では、バルブ(バルブ151など)を開放状態と閉鎖状態との間で移動させることを、概して、バルブを作動させると称する場合があり、バルブを具体的に開放状態から閉鎖状態に移動させることを、バルブを閉じると称する場合があり、バルブを具体的に閉鎖状態から開放状態に移動させることを、バルブを開くと称する場合がある。チャネルバルブ161が提供されるいくつかの実施形態では、チャネルバルブ161を作動させるためにアクチュエータ169も提供される。例示を容易にするために、
図2及び以下の説明では、気流制御システム150は、バルブ151と、チャネル160及びチャネルバルブ161との両方を有するものとして図示/説明されるが、いくつかの実施形態では、バルブ151を省略することができ、他の実施形態では、チャネル160及びチャネルバルブ161を省略することができることを理解されたい。
【0037】
それぞれのバルブ151は、1つ以上の印刷ヘッド110に関連付けられ、1つのバルブ151は、それぞれの印刷ヘッド110の上流面に隣接して配置され、別のバルブ151は、それぞれの印刷ヘッド110の下流面に隣接して配置される。バルブ151は、印刷ヘッド110の上流面又は下流面とキャリアプレート111内の対応する印刷ヘッド開口部119のリムとの間の間隙を通る気流を遮断するように配置される。それぞれのバルブ151は、上記のように、開放状態と閉鎖状態との間で独立して移動可能である。閉鎖状態では、バルブ151は、間隙を通る気流を遮断するように、印刷ヘッド110と印刷ヘッド開口部119のリムとの間の関連する間隙を横切って又は間隙の上に延在する。開放状態では、バルブ151は、間隙を通る気流をもはや遮断しないように回転される。印刷ヘッド110と印刷ヘッド開口部119のリムとの間の上流間隙を通る気流を遮断するために、印刷ヘッド110の上流側に位置付けられたバルブ151は、本明細書では、それらの位置付けを強調することが望ましいとき、上流バルブ151と称され、下流間隙を遮断するために印刷ヘッド110の下流側に位置付けられたバルブ151は、本明細書では、それらの位置付けを強調することが望ましいとき、下流バルブ151と称される。それらの位置が強調されていない場合、上流バルブ及び下流のバルブは、単にバルブと称される。
【0038】
上述のように、いくつかの実施形態では、気流制御システム150は、バルブ151を能動的に作動させるアクチュエータ159を含む。それぞれのアクチュエータ159は、開放状態と閉鎖状態との間でバルブ151の動きを駆動するように構成されたデバイスである。アクチュエータ159は、限定するものではないが、例えば、油圧又は空気圧ピストン、ソレノイド、線形アクチュエータ、油圧式若しくは空気圧式回転アクチュエータ、電気モータ、回転アクチュエータなどを含む様々なタイプのものであり得る。アクチュエータ159は、電動力、油圧動力、空気圧動力、又は任意の他の所望の動力を利用してもよい。アクチュエータ159はまた、線形から回転への変換機構、回転から線形への変換機構、又はアクチュエータ159の運動をバルブ151の所望の運動に移行及び/又は変換するための任意の他の連結部など、様々な運動/力変換機構又は連結部を含んでもよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、アクチュエータ159を利用してバルブ151を能動的に作動させるのではなく、バルブ151は受動的に作動する。例えば、バルブ151は、特定の閾値を超える圧力差を受けたときに自動的に開放状態に移行し、圧力差が閾値を下回ったときに自動的に閉鎖状態に移行するように構成された閾値バルブであってもよい。そのような実施形態では、バルブ151の近くの媒体間ゾーンの存在は、バルブ151を開放状態に作動させる圧力差を生じさせるが、媒体間ゾーンがバルブ151から離れるほど圧力差が低下し、バルブ151は自動的に閉鎖状態に戻る。
【0040】
バルブ151が能動的に作動するか又は受動的に作動するかどうかに関係なく、気流制御システム150は、媒体間ゾーンの場所に基づいて、バルブ151を(すなわち、閉鎖状態と開放状態との間で)作動させる。媒体間ゾーンの場所に基づくバルブ151の作動は、アクチュエータ159及びコントローラ131を介して能動的に制御されてもよく(以下に更に記載される)、又は上記のように閾値バルブを使用して受動的に制御されてもよい。印刷媒体の前縁部LE及び後縁部TEは、媒体間ゾーンの境界を画定するため、本明細書における媒体間ゾーンの場所への言及は、印刷媒体105の前縁部LE及び後縁部TEの対応する場所への言及と同等である。したがって、本明細書では、気流制御システム150が、媒体間ゾーンの場所に基づいてバルブ151を作動させると言われる場合、これは、気流制御システム150が印刷媒体の前縁部LE及び後縁部TEの場所に基づいてバルブ151を作動させることと同等である。
【0041】
バルブ151の能動的作動が使用される実施形態では、コントローラ131は、所定の位置又は動的に決定された位置であり得る媒体間ゾーンの特定の位置に対応するタイミングでバルブ151を作動させるように、アクチュエータ159を制御し得る。これらの位置は、印刷ヘッド開口部(又はその一部)、印刷ヘッド110(又はその一部)、バルブ151(又はその一部)などの基準場所又は物体に対して定義されてもよく、以下、トリガ場所と称され得る。一般に、それぞれの下流バルブ151は、少なくとも印刷媒体の後縁部TE(すなわち、媒体間ゾーンの下流縁部)がバルブ151に関連付けられた印刷ヘッド110の下に位置している間は閉鎖されるように制御される。逆に、それぞれの上流バルブ151は、少なくとも印刷媒体の前縁部LE(すなわち、媒体間ゾーンの上流縁部)がバルブ151に関連付けられた印刷ヘッド110の下に位置している間は閉鎖されるように制御される。印刷ヘッドモジュール102ごとに複数の印刷ヘッド110が存在し、印刷ヘッド110がプロセス方向にオフセットされる実施形態では、上記の制御に加えて、下流バルブ151dは、印刷媒体の後縁部LEが、バルブ151に関連付けられた印刷ヘッド110の下流にある近接する印刷ヘッド110の下に位置している間は閉鎖されるように制御され得、上流バルブ151は、印刷媒体の後縁部TEが、バルブ151に関連付けられた印刷ヘッド110の上流にある近接する印刷ヘッド110の下に位置している間は閉鎖されるように制御され得る。
【0042】
より具体的には、いくつかの実施形態では、それぞれの下流バルブ151は、媒体間ゾーンの下流縁部(すなわち、印刷媒体の後縁部TE)が、バルブ151に関連付けられた上流のトリガ場所に到達したときに(又はその前に)、閉鎖状態に作動される。下流バルブ151は、媒体間ゾーンの下流縁部がバルブ151に関連付けられた下流トリガ場所に到達したときに、開放状態に作動され得る。逆に、上流バルブ151は、媒体間ゾーン122の上流縁部(すなわち、印刷媒体の前縁部LE)が、バルブ151に関連付けられた上流トリガ場所に到達したときに、又は媒体間ゾーンの下流縁部が、バルブ151に関連付けられた下流トリガ場所に到達したときに、閉鎖状態に作動される。下流バルブ151は、媒体間ゾーン122の下流縁部(すなわち、印刷媒体の後縁部TE)がバルブ151に関連付けられた下流トリガ場所に到達したときに、開放状態に作動され得る。バルブ151に関連付けられた上流トリガ場所は、バルブ151に関連付けられた印刷ヘッド110の堆積領域の上流側にある任意の所定の場所、例えば、キャリアプレート111の上流縁部、印刷ヘッド開口部119の上流縁部、印刷ヘッドの上流縁部、及び印刷ヘッド110のインク堆積領域の上流縁部などであってもよい。下流トリガ場所は、バルブ151に関連付けられた印刷ヘッド110の堆積領域の下流側の任意の所定の場所、例えば、印刷ヘッド110のインク堆積領域の下流縁部、印刷ヘッド110の下流縁部、印刷ヘッド開口部119の下流縁部などであってもよい。バルブ151が開放状態と閉鎖状態との間で移行する正確なタイミングは、アクチュエータ159の作動速度、媒体間ゾーンの幅(すなわち、隣接する印刷媒体間の間隙距離)、可動支持表面120の速度などの要因によって異なり得る。実施形態によるバルブの位置決め及び作動は、
図4A~
図9に関連して以下でより詳細に考察される。
【0043】
気流制御システム150は、独立してアドレス可能なチャネル160(チャネル160)を含んでもよい。チャネル160はそれぞれ、プラテン126内の穴127の1つ以上の列に対応し、チャネル及び穴127の列はプロセス方向に延在する。チャネル160は、真空プレナム125の真空吸引が対応する穴127に伝達される通路を画定する構造を含む。チャネルバルブ161は、チャネル160を通る気流を制御するために、それぞれにチャネル160に連結される。チャネルバルブ161が開放されているとき、対応するチャネル160を通る気流は許容され、それによって対応する穴127を通る真空吸引は有効になる。この状態は、本明細書では、チャネル160がオンであると称される。チャネルバルブ161が閉鎖されているとき、チャネル160を通る気流は停止され、それによって、対応する穴127を通る真空吸引は停止される。この状態は、本明細書では、チャネル160がオフであると称される。アクチュエータ169は、チャネルバルブ161を開放状態と閉鎖状態との間で移動させるために、チャネルバルブ161に動作可能に連結される。
【0044】
いくつかの実施形態では、チャネル160は、プラテン126内の穴127の列ごとに提供される。他の実施形態では、チャネルは、列のサブセットのみに提供される。チャネル160が全ての穴127より少なく提供される場合、チャネル160は、真空プラテン126の内側側部に沿って位置する穴127の列に提供され得るが、これは、より小さい幅(クロスプロセス方向において測定される)の印刷媒体が使用されるときに被覆されなくなる可能性が高い領域であるためである。上記のように、印刷システム100などの印刷システムにおいて、印刷媒体の外側縁部OEは、媒体搬送デバイスの外側側部(例えば、
図1GのOB)上に位置する位置合わせ基準線(例えば、
図1GのREG)に位置合わせされ、したがって、より小さい印刷媒体が使用されるとき、内側縁部の内側にある穴は被覆されない。
【0045】
本明細書の説明は、印刷媒体の外側縁部が位置合わせされることを想定しているが、他の位置合わせスキームを使用することもできる。例えば、印刷媒体は、プラテン126の中心を取ることができ、その場合、非被覆領域は、印刷媒体の両端部沿いに現れ得る。内側縁部システムは、理解しやすいように図示及び説明されているが、他の位置合わせスキームが使用される場合、チャネル160の場所は、非被覆領域が潜在的に現れる場所がどこであれ、その場所に整列されるように調整することができ、プラテン126のどの部分が非被覆領域を有するかに関係なく、動作の原理は同じである。
【0046】
チャネルバルブ161は、どのチャネル160がオフにされ、どのチャネル160がオンのままであるかを制御するために、独立して作動する。気流制御システム150は、現在使用されている(例えば、印刷ジョブに選択されるか、又は現在印刷されている)印刷媒体のサイズに基づいて、どのチャネル160をオフにするかを選択し得る。特に、印刷媒体によって被覆されない(又は被覆されないことになる)対応する穴127に流体的に連結された任意のチャネル160はオフにされ、印刷媒体によって被覆される(又は被覆されることになる)対応する穴127に流体的に連結された任意のチャネル160はオンのままである。このように、非被覆領域24内の穴127と流体的に連結されたチャネル160の全てはオフにされ、非被覆領域24内の穴127を通る吸引を防止し、非被覆領域24によって誘発される交差流を排除する。更に、印刷媒体によって被覆される穴127の全てが真空吸引を受けることができるため、印刷媒体に対する吸引保持力は完全な力で維持される。使用される印刷媒体のサイズが変更されると、気流制御システム150は、新しい印刷媒体のサイズに基づいて、どのチャネル160がオフにされるかを変更する。
【0047】
再び
図2を参照すると、制御システム130は、印刷システム100の動作を制御するための処理回路を含む。処理回路は、本明細書に記載の様々な動作を実行するための論理で構成された1つ以上の電子回路を含んでもよい。電子回路は、様々な動作を実行するように構成された専用ハードウェアを含むことによって、様々な動作を実行するための回路で実行可能なソフトウェア命令を含むことによって、又はそれらの任意の組み合わせによって動作を実行するための論理で構成されてもよい。論理がソフトウェア命令を含む例では、処理回路の電子回路は、ソフトウェアを格納するメモリデバイスと、例えば、プロセッサ、プロセッサコア、中央演算処理装置(CPU)、コントローラ、マイクロコントローラ、システムオンチップ(SoC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、グラフィックスプロセッシングユニット(GPU)などの、命令を実行することができる1つ以上の処理デバイスを含むプロセッサと、を含む。処理回路の論理が専用ハードウェアを含む例では、プロセッサに加えて、又はプロセッサの代わりに、専用ハードウェアは、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、コンプレックスプログラマブル論理デバイス(CPLD)ディスクリート論理回路、ハードウェアアクセラレータ、ハードウェアエンコーダなどの、特定の動作を実行するように構成された任意の電子デバイスを含んでもよい。また、処理回路は、専用ハードウェア及び汎用プロセッサとソフトウェアとの任意の組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施形態では、制御システム130の論理は、以下により詳細に記載される、場所追跡システム132に対応する論理及びコントローラ131に対応する論理を含んでもよい。
【0048】
上記のように、コントローラ131は、バルブ151を作動させるときを決定するように構成されている。コントローラ131は、アクチュエータ159に、決定されたタイミングでバルブ151を移動させるように、アクチュエータ159を制御するための信号を生成する。コントローラ131は、制御システム130の一部であってもよく、制御システム130に関連して上述したように、本明細書に記載の動作を実行するための論理を用いて構成された1つ以上の電子回路を含む。制御システム130の一部として示されているが、コントローラ131は、気流制御システム150のいくつかの動作を制御するため、気流制御システム150の一部と見なすこともできる。気流制御システム150によって実行されるものとして本明細書に記載される特定の動作は、コントローラ131によって実行されてもよい。コントローラ131を形成するハードウェアの物理的な場所は限定されない。
【0049】
場所追跡システム132は、印刷媒体がインク堆積アセンブリを通して搬送されるときに、媒体間ゾーン及び/又は印刷媒体の場所を追跡するために使用され得る。本明細書で使用されるとき、媒体間ゾーン又は印刷媒体の場所を追跡することは、システムが、印刷媒体がインク堆積アセンブリ101を通して搬送されるときに、印刷媒体が様々な点でどこに位置するかに関する知識を、直接又は推測にかかわらず有することを指す。媒体間ゾーン又は印刷媒体の場所の直接知識は、例えば、1つ以上のセンサ(例えば、縁部検出センサ)を介して、印刷媒体を直接観察することによって得られた情報を含み得る。媒体間ゾーン又は印刷媒体の場所の推測知識は、例えば、可動支持表面120の既知の速度に基づいて、印刷媒体が予め既知の場所からどれだけ移動しているかを計算することによって、他の既知の情報からの推論によって取得され得る。いくつかの実施形態では、場所追跡システム132は、媒体間ゾーン、印刷媒体の前縁部LE、及び/又は印刷媒体の後縁部TEの場所を明示的に追跡し得る。他の実施形態では、場所追跡システムは、印刷媒体のいずれかの他の部分(複数可)の場所を明示的に追跡し得る。媒体間ゾーンの場所は、印刷媒体の場所及び印刷媒体の(コントローラに既知の)寸法に決定的に左右されるため、印刷媒体のいずれかの任意の部分の場所を追跡することは、媒体間ゾーンの場所を追跡することと機能的に同等である。いくつかの実施形態では、場所追跡システム132は、制御システム130の一部であり得る。
【0050】
ほとんどの既存の印刷システムは、印刷媒体の場所の知識が印刷媒体上の正確な画像形成を確実にするのに役立ち得るため、印刷媒体がインク堆積アセンブリを通して搬送されるときに、印刷媒体の場所を追跡するように既に構成されている。このように、印刷媒体の場所を追跡するための様々なシステムは、当該技術分野において既知である。かかる場所追跡システムは既知であるため、本明細書では詳細に説明しない。本明細書に開示される実施形態では、任意の既知の場所追跡システム(又は任意の新しい場所追跡システム)を使用して、印刷媒体の場所を追跡することができ、コントローラは、この情報を使用して、前縁部LE及び/又は後縁部TEの場所を(まだ知られていない場合)決定することができる。
【0051】
ここで
図3~
図8Cを参照して、印刷システム100として使用され得る印刷システムの特定の実施形態を説明する。以下の図及び以下の説明では、「_1」、「_2」などのインデックスが、いくつかの構成要素の参照番号の末尾に付加されている。これらのインデックスは、複数の同様の構成要素が存在するときに使用され、それらの構成要素の特定の1つを指すことが望ましい。しかしながら、特定のものを区別する必要なしに、構成要素が一般的又は集合的に参照されている場合、インデックスは省略され得る。したがって、一例として、
図4Aにあるように、バルブ351のうちの特定の1つを識別することが望ましい場合、バルブ351は、第1のバルブ351_1とラベル付けされ、そのように称され得るが、複数のバルブ351を区別することが望ましくない他の事例では、単にバルブ351とラベル付けされ、そのように称される場合もある。同様に、いくつかの構成要素について、「u」又は「d」は、対応する印刷ヘッドに対する相対的な上流又は下流の位置を示すために参照番号に付加され、上流及び下流は、上記のようにプロセス方向に対して相対的である。
【0052】
図3~
図5Fは、
図2を参照して上述した印刷システム100と同様に使用され得る印刷システム300を示す。
図3は、側面図からの印刷システム300の一部分の概略図を含む。
図4Aは、印刷ヘッドモジュール302及び媒体搬送デバイス303を見下ろす平面図を含む。
図4Aでは、他の構成要素の下方に位置付けられているため、そうでなければ視認されないいくつかの構成要素が、破線又は点線で示されている。
図5A~
図5Fは、
図4AのDに沿って取られた断面を有する、印刷システム300の断面を含み、
図5A~
図5Fのそれぞれは、印刷媒体305a及び305bが印刷ヘッドモジュール302のうちの1つを越えて搬送されるときの一連の状態を示す。
【0053】
図3に示すように、印刷システム300は、インク堆積アセンブリ301、媒体搬送デバイス303、及び気流制御システム350を含み、これらは、それぞれ
図2のインク堆積アセンブリ101、媒体搬送デバイス103、及び気流制御システム150と同様に使用され得る。印刷システム300はまた、制御システム(例えば、制御システム130)などの
図3~
図5Fに示されていない追加の構成要素を含んでもよい。
【0054】
図3に示す印刷システム300では、インク堆積アセンブリ301は、4つの印刷ヘッドモジュール302を含み、それぞれのモジュール302は、
図4Aに示すように3つの印刷ヘッド310を有する。
図3に示すように、印刷ヘッドモデル302は、印刷媒体305が印刷ヘッドモジュール302のそれぞれの下で順次搬送されるように、媒体搬送デバイス303の上方に、プロセス方向Pに沿って直列に配置される。
図4Aに示されるように、印刷ヘッド310は、対応するキャリアプレート311内のそれぞれ対応する印刷ヘッド開口部319を通して印刷流体(例えば、インク)を吐出するように配置され、印刷ヘッド310の底端部は、印刷ヘッド開口部319の途中まで延在する。この実施形態では、印刷ヘッド310は、印刷ヘッド310のうちの1つが、同じ印刷ヘッドモジュール302の他の2つの印刷ヘッド310より更に上流又は下流にあるオフセットパターンで配置されている。他の実施形態では、印刷ヘッド310及び/又は印刷ヘッドモジュール302の異なる数及び/又は配置が使用され、当業者は、必要に応じて様々なそのような数及び配置を選択することができることを理解している。
【0055】
印刷システム300では、媒体搬送デバイス303は、可動支持表面320を提供する可撓性ベルトを含む。
図3に示すように、可動支持表面320は、ループ状経路に沿って移動するようにローラ329によって駆動され、経路の一部分は、インク堆積アセンブリ301のインク堆積領域323を通過する。更に、この実施形態では、真空プレナム325は、プレナム325の頂壁を形成し、可動支持表面320を支持する真空プラテン326を含む。プラテン326は、プレナム325の内部と可動支持表面320の下側との間の流体連通を可能にするプラテン穴327を含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、プラテン穴327は、その上部側の穴327の開口部の面積を増加させ得る、
図3の拡大された切欠
図3Aに見られるように、その上部側にチャネルを含み得る。具体的には、プラテン穴327は、プラテン326の底部側に開口する底部327aと、プラテン326の上部側に開口する上部327bと、を含み得、上部327bは、底部327aとは異なるサイズ及び/又は形状である。例えば、
図3~
図5Fは、プラテン穴327の実施形態を示し、上部327bは、プロセス方向に細長いチャネルであり、底部327aは、長さがあまりなく、断面積がより小さい貫通穴である(
図3の拡大3A及び
図4Aの破線を参照)。いくつかの実施形態では、複数の穴327は、同じ上部327bを共有し得、言い換えれば、複数の底部327aは、同じ上部327bに連結され得る。
【0057】
可動支持表面320の穴321は、それぞれの穴321が、対応するプラテン穴327の集合体とプロセス方向(y軸)に整列されるように配設される。したがって、可動支持表面320がプラテン326の上を移動する(例えば、横切って摺動する)とき、それぞれの穴321は、対応するプラテン穴327の上を周期的に移動し、その結果、穴321及びプラテン穴327は、一時的に垂直方向に整列される(すなわち、z軸方向に整列される)。穴321が対応するプラテン穴327の上を移動するとき、穴321及び327は、可動支持表面320の上方の環境を真空プレナム325内の低圧状態に流体的に連結し、それにより、穴321及び327を通して真空吸引を生成する開口部を画定する。この吸引は、印刷媒体305が穴321の上に配設されている場合、印刷媒体305に真空保持力を発生させる。
【0058】
図3~
図5Fに示すように、気流制御システム350は、バルブ351と、バルブ351を作動させるための対応するアクチュエータ359と、を含む。バルブ351及びアクチュエータ359は、
図2に関連して上述したバルブ151及びアクチュエータ159と同様に使用され得る。印刷システム300では、
図4A~
図5Fに示されるように、印刷ヘッド310ごとに、印刷ヘッド310の上流側の開口部319の一部分を遮断するための上流バルブ351uと、印刷ヘッド310の下流側の開口部319の一部分を遮断するための下流バルブ351dと、を含む2つのバルブ351が存在する。このように、
図4Aでは、第1の印刷ヘッド310_1は、上流バルブ351u_1及び下流バルブ351d_1を有し、第2の印刷ヘッド310_2は、上流バルブ351u_2及び下流バルブ351d_2を有する、というようになる。
図4Aでは、それぞれのバルブ351は、バルブ351を作動させるためにそれ自体の対応するアクチュエータ359を有する。他の実施形態では、クロスプロセス方向で互いに整列されるバルブ351(例えば、351u_1及び351u_3、並びに351d_1及び351d_3)など、いくつかのバルブ351は同じアクチュエータ359を共有し得、それらのバルブ351は同時に作動され得る。複数のバルブ351が同じアクチュエータ359を共有する実施形態では、アクチュエータ359は、関連するバルブ351のそれぞれにアクチュエータ359の運動を伝達するための連結部を介してバルブ351に連結され得る。
図4Aでは、3つの印刷ヘッド310が存在するため、6つのバルブ351が存在しているが、異なる数の印刷ヘッド310が提供される他の実施形態では、それぞれの印刷ヘッド310が2つの対応するバルブ351を有するように、異なる数のバルブ351が提供されてもよい。
【0059】
上記のように、バルブ351は、閉鎖状態にあるときに開口部319の部分を通る気流を遮断するように位置付けられる。具体的には、それぞれの上流バルブ351uは、印刷ヘッド310の上流側と、その印刷ヘッド310に関連付けられた開口部319のリムとの間の間隙を通る気流を遮断するように位置付けられ、この間隙は、本明細書で上流間隙319uと称される。同様に、それぞれの下流バルブ351dは、印刷ヘッド310の下流側と開口部319のリムとの間の間隙を通る気流を遮断するように位置付けられ、この間隙は、本明細書では下流間隙319dと称される。
図3~
図5Fの実施形態では、閉鎖状態において、バルブ351は、キャリアプレート311の上方に、かつキャリアプレート311の上部にほぼ平行に位置付けられ(
図4B及び
図5Aを参照)、バルブ351が間隙319u又は319dの上方の領域に実質的にまたがり、間隙319u又は319dを通る気流を遮断するように、バルブ351の一方の端部はキャリアプレート311の上部に接し(又は近接し)(以下、バルブ351のキャリアプレート端部と称される)、バルブ351の別の端部は、印刷ヘッド310の側面に接触している(又は近接している)(以下、バルブ351の印刷ヘッド端部と称される)。例えば、閉鎖状態にある
図5Aのバルブ351d_1、351u_2、及び351d_2を参照されたい。
図4B及び
図5Aに最もよく見られるように、バルブ351は、枢動連結部357及びベースプレート356によってキャリアプレート311に枢動可能に連結されている。ベースプレート356は、キャリアプレート311に対して固定され、それぞれの枢動連結部357は、ベースプレート356に、及び対応するバルブ351に回転可能に連結され、それによって、キャリアプレート311に対するバルブ351の回転(枢動)を可能にする。バルブ351の回転は、クロスプロセス方向に平行な回転軸を中心とし得る。
図5A~
図5Eの実施形態では、枢動部357は、バルブ351が閉鎖状態から開放状態に回転するにつれて、印刷ヘッド310の近くのバルブ351の端部が、キャリアプレート311に向かって印刷ヘッド310から離れる方向に移動し、それによって間隙319u又は319dを開放するように、対応するバルブに取り付けられている。開放状態では、空気がバルブ351を過ぎて間隙319u又は319dを通過することができるように、バルブ351は、キャリアプレート311の上部と非平行になる。例えば、開放状態にある
図5Aのバルブ351u_1を参照されたい。
【0060】
他の実施形態では、バルブ351は、異なる位置付け及び構成であり得る。例えば、閉鎖状態では、バルブ351は、間隙319u又は319dの上方ではなく、間隙319u又は319dの完全に内部に位置付けられてもよい。別の実施形態として、開放状態では、バルブ351の印刷ヘッド端部は、間隙319u又は319dに下方に回転するのではなく、間隙から離れる方向へ上方に回転してもよい。別の実施形態として、枢動部357は、バルブ351のキャリアプレート端部の近くではなく、バルブ351の印刷ヘッド端部の近く又はバルブ351の中央近くでバルブ351に連結されてもよく、その結果、開放状態のバルブ351の場所及び配向は異なるものになる。
【0061】
バルブ351は、例えば、1つ以上の材料の固体プレート様構造を含み、金属、プラスチック、ゴム、ポリマーなどの任意の好適な材料で作製されてもよい。いくつかの実施形態では、バルブ351は、頑丈さ及び耐損耗性を提供する金属を含む。
図4Aでは、バルブ351はほぼ長方形であるが、バルブ351の形状はこれに限定されない。バルブ351は、本明細書に記載されるように、バルブ351が間隙319u又は319dを遮断及び遮断解除し得る限り、任意の所望の形状を有し得る。いくつかの実施形態では、バルブ351は、空気振動バルブを含む。
【0062】
バルブ351は、アクチュエータ359によって開放状態と閉鎖状態との間で回転するように駆動され得る。
図3では、アクチュエータ359は、シャフト358の回転を駆動する回転アクチュエータであり、シャフト358の回転は、バルブ351のうちの対応する1つの回転を駆動する。図示の実施形態では、シャフト357は、枢動部357に直接連結され(又は枢動部357と同じ片の一体部分である)、枢動部357はバルブ351に固定的に取り付けられ、したがってシャフト358の回転が枢動部357の回転を引き起こし、枢動部357の回転がバルブ351の回転を引き起こす。他の実施形態では、アクチュエータ359は、駆動出力に直線的な動きを与える線形アクチュエータであってもよく、駆動出力の直線運動は、線形から回転への変換機構を通してバルブ351の回転を駆動し得る。例えば、線形アクチュエータは、枢動部357と反対側のバルブ351の端部に連結されてもよく、その端部を垂直(すなわち、Z軸方向)に移動させるように構成されてもよく、その場合、枢動部357は、この直線運動をバルブ351の回転に変換するための変換機構として機能し得る。当業者によって理解されるように、バルブ351に回転を与えるために、他の変換機構、連結部、及びアクチュエータを様々な構成で使用することができる。駆動出力の運動(回転又は並進)を発生させることができる任意のデバイスが、電気モータ、油圧回転アクチュエータ、空気圧回転アクチュエータ、ソレノイド、油圧アクチュエータ、空気圧アクチュエータ、電気モータなどのアクチュエータ359として使用されてもよい。
【0063】
形状、サイズ、材料、及び/又は動きを含む多様なバルブ及びアクチュエータが、本開示の範囲内にあることが想定されており、当業者は、本明細書に開示される動作原理に基づいて、印刷ヘッドとキャリアプレートとの間の間隙を通る気流を遮断する状態と、印刷ヘッドとキャリアプレートとの間の間隙を通る気流を可能にする状態との間で移動し得る限り、任意のバルブを所望に応じて選択し得ることを理解している。
【0064】
上述のように、気流制御システム350は、媒体間ゾーン322の位置に基づくタイミングでバルブ351を作動させるように構成されている。バルブ151に関して上記したように、それぞれのバルブ351は、上流トリガ場所及びそれに関連付けられた下流場所を有し、バルブ351は、これらのトリガ場所に対する媒体間ゾーン322の場所に基づいて移動される。バルブ151を作動させるタイミングに関連する上記の説明は、バルブ351に適用可能である。実際には、バルブ351が構成間で移動するのに有限な時間を要し、バルブ351が移動しているこの時間に、媒体間ゾーン322は移動し続ける。したがって、いくつかの実施形態では、媒体間ゾーン322が所望のトリガ場所(「公称トリガ場所」)に達したときにバルブ351が意図された構成にあることを確実にするために、アクチュエータ359は、媒体間ゾーン322が実際に公称トリガ場所に到達する直前にバルブ351を移動させ始めるように制御され得る。言い換えれば、伸長又は後退をトリガするために使用される実際のトリガ場所は、バルブ351が伸長又は後退するのにかかる有限時間を考慮するために、いくらかの固定量だけ公称トリガ場所からオフセットされてもよい。可動支持表面320の既知の速度及びバルブ351の既知の展開時間を使用して、オフセットが決定されてもよい。
【0065】
バルブ351の動作及びバルブ351が交差流を低減する方法は、
図5A~
図5Fを参照して以下でより詳細に説明される。
図5A~
図5Fは、
図4AのDに沿って取られた断面を含み、媒体間ゾーン322の様々な位置及びバルブ351の対応する状態を示す。
図5A~
図5Fでは、上流バルブ351u_1及び下流バルブ351u_2を作動させるタイミングが記載されており、同じタイミングが、バルブ351u3及びバルブ351d_3をそれぞれ作動させるために使用されてもよい。更に、1つの印刷ヘッドモジュール302のみのバルブ351を作動させるタイミングが記載されているが、他の印刷ヘッドモジュール302内に同様に位置するバルブ351を作動させるために同様のタイミングが使用されてもよい。
【0066】
図5Aは、第1の位置にある媒体間ゾーン322を示す。第1の位置は、媒体間ゾーン322の下流縁部(すなわち、印刷媒体305aの後縁部TE)が、第1の上流バルブ351u_1に関連付けられた上流トリガ場所に到達することに対応する。この実施例では、第1の上流バルブ351u_1の上流トリガ場所は、キャリアプレート311の上流面であり、したがって、印刷媒体305aの後縁部TEが、キャリアプレート311の上流縁部にある(すなわち、垂直に整列される)タイミングで又はその前に、コントローラは、対応するアクチュエータ359(図示せず)にバルブ351を開放させる。したがって、この状態では、バルブ351u_1は、上流間隙319u_1を通る気流を許容する。他のバルブ351は閉鎖状態にあり、したがって他のバルブ351は、それらの各間隙319u又は319dを通る気流を遮断する。
【0067】
印刷媒体305aの後縁部TEが、印刷ヘッド310_1の下で下流に移動し続けるとき、
図5Bに示されるように、媒体間ゾーン322が、印刷ヘッド310uの堆積領域312を通って上流に流れる交差流を誘発するリスクがある。しかしながら、第1の上流バルブ351u_1が開放状態にあるため、
図5Bの破線によって示されるように、空気は、上流間隙319u_1を通って媒体間ゾーン322に向かって流下することが可能になる。この気流は、媒体間ゾーン322からの吸引の一部を打ち消し、媒体間ゾーン322の上方の領域内の圧力を上昇させる。これにより、空気が印刷ヘッド310_1の下流から引っ張られる強度が低下し、したがって上流の交差流の強度が低下する。更に、バルブ351d_1は閉鎖状態にあるため、
図1Aに関連して上述したように、そうでなければ下流間隙319d_1を通って発生する交差流が防止され、それにより、上流の交差流は更に低減される。
【0068】
図5Cは、媒体間ゾーン322の下流縁部(すなわち、印刷媒体305aの後縁部TE)が、バルブ351u_1に関連付けられた下流トリガ場所にあるときの媒体間ゾーン322を示す。具体的には、この実施例では、バルブ351u_1に関連付けられた下流トリガ場所は、印刷ヘッド310の下流面である。したがって、印刷媒体305aの後縁部TEがこの場所に到達するタイミング(又はその直前)で、バルブ351u_1は閉鎖される。この構成では、バルブ351u_1は、上流間隙319u_1を通る気流を遮断する。他の実施形態では、バルブ351u_1に関連付けられた下流トリガ場所に到達する後縁部TEに基づいてバルブ351u_1を閉鎖するのではなく、バルブ351u_1は、バルブに関連付けられた上流トリガ場所に到達する前縁部LEに基づいて閉鎖されてもよい。
【0069】
例示した実施例では、バルブ351d_1及び351u_2に関連付けられた上流トリガ場所は、バルブ351u_1の下流トリガ場所、すなわち、印刷ヘッド310_1の下流面と同じになる。したがって、この実施例では、バルブ351u_1が閉鎖されると同時に、バルブ351d_1及び351d_2が開放される。他の実施形態では、バルブ351d_1及び351u_2に関連付けられた上流トリガ場所は、必ずしもバルブ351u_1の下流トリガ場所と同じではない。
【0070】
図5Cに示されたタイミングの後、印刷媒体305bの前縁部LEは、印刷ヘッド310_1の下で移動し始め、
図5Dに示されるように、その前縁部LEの近くの印刷が始まる。更に、印刷媒体305aの後縁部TEは、印刷ヘッド310_2の下に移動し始める。したがって、
図5Cに示される状態の後は、媒体間ゾーン322が、印刷ヘッド310_1のインク堆積領域312を通る下流交差流と、印刷ヘッド310_2のインク堆積領域312を通る上流交差流との両方を誘発するリスクがある。しかしながら、
図5Dに示されるように、バルブ351d_1及び351u_2は開放状態にあるため、媒体間ゾーン322からの負圧に対抗し、交差流の強度を低減するのに有益な気流が、間隙319d_1及び319u_2を通って流れ得る。更に、両方のバルブ351u_1及び351d_2は閉鎖状態にあるため、そうでなければ間隙319u_1及び319d_2を通って発生し得る交差流が防止され、それにより、交差流は更に低減される。
【0071】
図5Eは、媒体間ゾーン322の下流縁部(すなわち、印刷媒体305aの後縁部TE)がバルブ351d_1に関連付けられた下流トリガ場所、バルブ351u_2に関連付けられた下流トリガ場所、及びバルブ351d_2に関連付けられた上流トリガ場所にあるときの媒体間ゾーン322を示す。具体的には、この例では、前述のトリガ場所は全て同じであり、すなわち、印刷ヘッド310_2の下流面である。したがって、印刷媒体305aの後縁部TEがこの場所に到達するタイミング(又はその直前)で、バルブ351_1d及び351u_2は閉鎖され、バルブ351d_2は開放される。他の実施形態では、それぞれのバルブ351に関連付けられた下流トリガ場所に到達する後縁部TEに基づいてバルブ351d_1及び351u_2を閉鎖するのではなく、バルブ351d_1及び351u_2は、それぞれのバルブ351に関連付けられた上流トリガ場所に到達する前縁部LEに基づいて閉鎖されてもよい。
【0072】
図示した例では、バルブ351d_1及び351u_2に関連付けられた下流トリガ場所は、バルブ351d_2の上流トリガ場所、すなわち、印刷ヘッド310_2の下流面と同じになる。しかしながら、他の実施形態では、これらのトリガ場所は、必ずしも互いに同じではなく、したがって、バルブ351は、必ずしも同時に作動されない。
【0073】
印刷媒体305bの前縁部LEが、印刷ヘッド310_2の下で移動し続けるとき、媒体間ゾーンが、印刷ヘッド310_2のインク堆積領域312を通して交差流を下流に引っ張るリスクがある。しかしながら、
図5Fに示されるように、下流バルブ351d_2が開放状態にあるため、媒体間ゾーン322からの負圧に対抗し、交差流の強度を低減するのに有益な気流が、間隙319d_2を通って流れ得る。更に、両方のバルブ351d_1及び351u_2は閉鎖状態にあるため、そうでなければ間隙319d_1及び319u_2を通って発生し得る交差流が防止され、それにより、交差流は更に低減される。
【0074】
媒体間ゾーン322が印刷ヘッドモジュール302を完全に通過した後は、媒体間ゾーン322は離れすぎて重大な交差流は誘発しない可能性が高くなるため、バルブ351の状態は、交差流を低減する観点からはあまり重要ではなくなる。したがって、媒体間ゾーン322がそれらの対応する印刷ヘッドモジュール302を通過して移動した後は、バルブ351を任意の所望の状態にすることができる。例えば、次の媒体間ゾーン322の出現に対応できるように、バルブ351u_1は開放されてもよく、他のバルブ351は閉鎖されてもよい。
【0075】
バルブ351及びアクチュエータ359を含む気流制御システム350は、印刷システム300の特定の実施形態との関連で上述されているが、印刷システムの他の実施形態は、同じ気流制御システム350又は同様の気流制御システムを利用し得ることを理解されたい。例えば、異なる構成のインク堆積アセンブリ又は異なる構成の媒体搬送デバイスを有する印刷システムの実施形態は、バルブ351と同様のバルブを利用し得る。例えば、印刷システム300とは異なる数の印刷ヘッドモジュール又は印刷ヘッドを有する実施形態では、バルブ351の数が、印刷ヘッドモジュール及び印刷ヘッドの数を考慮して修正され得ることを除き、同じ気流制御システム350が使用され得る。印刷システム300とは異なる印刷ヘッドの配置を有する実施形態では、バルブ351の配置が印刷ヘッドの配置と一致するように変更され得ることを除き、バルブ351と同様のバルブが使用され得る。異なる媒体搬送デバイスを有する実施形態では、一般に、いかなる修正も必要とせずに、同じ気流制御システム350が使用され得る。このように、気流制御システム350又はその類似のバージョンは、上述の特定の印刷システム300のほかに、多様な印刷システムで利用され得る。
【0076】
図6A~
図6Dは、
図2を参照して上述した印刷システム100と同様に使用され得る印刷システム600を示す。
図6A~
図6Dは、プロセス方向に沿って取られた断面を有する、印刷システム600の断面を含み、
図6A~
図6Dのそれぞれは、印刷媒体605a及び605bが印刷ヘッドモジュール602のうちの1つを越えて搬送されるときの一連の状態を示す。
【0077】
印刷システム600は、インク堆積アセンブリ、媒体搬送デバイス603、及び気流制御システム650を含み、これらは、それぞれ
図2のインク堆積アセンブリ101、媒体搬送デバイス103、及び気流制御システム150と同様に使用され得る。印刷システム600はまた、制御システム(例えば、制御システム130)などの追加の構成要素を含んでもよい。
【0078】
インク堆積アセンブリは、それぞれがキャリアプレート611の印刷ヘッド開口部619を通して印刷流体(例えば、インク)を吐出する1つ以上の印刷ヘッド610を有する、1つ以上の印刷ヘッドモジュール602を含む。印刷ヘッドモジュール602、印刷ヘッド610、及びキャリアプレート611は、それぞれ、印刷ヘッドモジュール102、印刷ヘッド110、及びキャリアプレート111と同様に使用され得る。説明を簡素化するために、1つの印刷ヘッドモジュール602のみが示されているが、実際には複数の印刷ヘッドモジュール602が提供されてもよい。特に、インク堆積アセンブリは、上述のインク堆積アセンブリ301と同様に構成されてもよく、したがって、その構成要素の重複説明は省略されている。
【0079】
媒体搬送デバイス603は、穴627を有する真空プラテン626と、穴621を有する可動支持表面620と、を含む。媒体搬送デバイス603は、上述の媒体搬送デバイス303と同様に構成されてもよく、したがって、その構成要素の重複説明は省略されている。
【0080】
図6A~
図6Dの実施形態では、気流制御システム650は、上述のバルブ151と同様に使用され得る閾値バルブ651を含む。アクチュエータ359によって能動的に作動されるバルブ351とは異なり、閾値バルブ651は、圧力差によって受動的に作動される。バルブ651の一方の側(例えば、上部側)の圧力とバルブ651の他方の側(例えば、底部側)の圧力との差が閾値を超えると、バルブ651は自動的に開放状態に移動する。逆に、圧力差が閾値より低い場合、バルブ651は閉鎖状態に移動する。このように、実際には、閾値バルブ651は、比較的弱い気流(閾値より低い圧力差に関連付けられた気流)を遮断する一方で、比較的強い気流(閾値を超える圧力差に関連付けられた気流)を通過させる傾向がある。
【0081】
閾値バルブ651は、バルブ651がそれら自体の重量を支持し、圧力差が閾値を下回っているときにブロック位置に留まることを可能にするのに十分な剛性と、更に、圧力差が閾値を超えているときに、バルブ651が開放位置に移動、変形、及び/又は屈曲し得るのに十分な可撓性と、を有する材料から形成され得る。例えば、バルブは、プラスチック、ゴム、シリコン、様々なポリマー、薄い金属などから形成されてもよい。加えて、閾値バルブ651として使用され得る市販の閾値バルブが存在する。
【0082】
閾値バルブ651に使用される閾値は、任意の所望の閾値であってもよい。いくつかの実施形態では、閾値は、媒体間ゾーン622が印刷ヘッドモジュールの下にあるがバルブ651から比較的離れているときに、それぞれの閾値バルブ651が閉鎖したままであるように十分に高くてもよく、媒体間ゾーン622がバルブ651の近く(例えば、下)にあるときに、それぞれの閾値バルブ651が開放されるように十分に低くてもよい。より具体的には、いくつかの実施形態では、閾値は、媒体間ゾーン622が印刷ヘッドモジュール102の下にあるがバルブ651自体のすぐ下にないときに、それぞれの閾値バルブ651が閉鎖したままであるように十分に高くてもよく、媒体間ゾーン622がバルブ651自体のすぐ下にあるときに、それぞれの閾値バルブ651が開放されるように十分に低くてもよい。閾値の最適値は、システムの物理的特性及び印刷システム全体の所望の動作に応じて、システムごとに変化し得る。一般に、媒体間ゾーンによって生成される吸引が強いほど、バルブをトリガするために実装され得る閾値は高くなり、媒体間ゾーンによって生成される吸引は、媒体搬送デバイスによって生成される吸引の強度、媒体間ゾーンのサイズ、可動支持表面及び真空プラテンの穴の数及びサイズ、可動支持表面からキャリアプレートへの距離などに基づいて、システムごとに変化し得る。所望の閾値は、例えば、システム内の異なる閾値バルブ651を試験し、許容可能な画像のぼやけなどの所望の結果を取得するものを識別することによって決定されてもよい。
【0083】
バルブ351と同様に、それぞれのバルブ651は、媒体間ゾーン622の位置に基づいて、開放状態と閉鎖状態との間で移行可能である。しかしながら、
図6A~6Dに関連して以下でより詳細に説明されるように、コントローラが媒体間ゾーン622の位置を追跡し、バルブを適切なタイミングで作動させる信号を送信するのではなく、閾値バルブ651は、バルブ651を通過するときに、媒体間ゾーン622の吸引によって受動的かつ自動的に作動される。
【0084】
図6Aは、媒体間ゾーン622がまだ印刷ヘッドモジュール602の下にない状態を示す。したがって、印刷ヘッド610の近くで経験される真空吸引は依然として比較的弱く、閾値バルブ651のそれぞれの間の圧力差は閾値Tより小さい。例えば、上流バルブ651u_1の上の圧力P
2と、上流バルブ651u_1の下の圧力P
1との間の差は、閾値Tより大きいため、バルブ651u_1は閉鎖状態のままである。他のバルブ651にも同じことが当てはまる。
【0085】
媒体間ゾーン622が、印刷ヘッドモジュール602の下で前進するにつれ、媒体間ゾーン622の近く(例えば、すぐ上)にあるキャリアプレート611の下の領域の圧力は降下する。このようにして、
図6Bに示されるように、媒体間ゾーン622が第1の上流バルブ651u_1の下にあるとき、上流間隙619u_1の圧力P
1は、圧力差P
2-P
1が閾値Tより大きくなるように十分に低下する。したがって、バルブ651u_1は開放状態にあり、空気は、間隙619u_1を通って媒体間ゾーン622に向かって流れることが可能になる。この気流は、媒体間ゾーン622からの吸引に対抗するのに役立ち、それにより、空気が印刷ヘッド610の下流から引っ張られる強度を低減し、それにより、交差流の強度を低減する。対照的に、媒体間ゾーン622は、バルブ651d_1に対して十分な近さにないため、圧力差P
4-P
3は閾値Tより小さいままであり、バルブ651d_1は閉鎖状態のままである。バルブ651u_2にも同じことが当てはまる。このようにして、バルブ651d_1及び651d_2は、下流間隙619d_1及び上流間隙619u_2をそれぞれ通る気流を遮断し、交差流の発生及び強度を更に低減する。
【0086】
媒体間ゾーン622が印刷ヘッドモジュール602の下で更に前進すると、媒体間ゾーン622は次に、残りのバルブ651d_1、651u_2、及び651d_2のそれぞれの下に最終的に移動し、媒体間ゾーン622が対応のバルブ651に十分に近づくと、バルブ651間の圧力差は十分に大きくなり、バルブ651のそれぞれが、媒体間ゾーン622からの吸引によって自動的に順番に開放される。更に、媒体間ゾーン622が前進すると、媒体間ゾーン622は次に、バルブ651のそれぞれから離れる方向に最終的に移動し、それによって、媒体間ゾーン622が対応のバルブ651から十分に離れると、バルブ651間の圧力差は十分に小さくなり、バルブ651のそれぞれが自動的に順番に閉鎖する。
【0087】
例えば、
図6Cは、媒体間ゾーン622がバルブ651d_1及び651u_2の下にあり、そのため、これらのバルブ651間の圧力差P
4-P
3は閾値Tより大きく、バルブ651d_1及び651u_2が開放状態にある状態を示す。したがって、有益な気流が間隙619d_1及び610u_2を通って流れることが可能になり、媒体間ゾーン622からの吸引を打ち消し、交差流の強度を低下させる。この同じ時点で、媒体間ゾーン622はバルブ651u_1及び651d_2の下にはないため、これらのバルブ651間の圧力差P
2-P
1及びP
6-P
5はいずれも閾値Tより小さく、バルブ651u_1及び651d_2は閉鎖状態である。このように、間隙619u_1及び619d_2を通る交差流は防止される。
【0088】
図6Dは、媒体間ゾーン622がバルブ651d_2の下にあり、そのため、バルブ651d_2間の圧力差P
6-P
5は閾値Tより大きく、バルブ651d_2が開放状態にある状態を示す。したがって、有益な気流が間隙619d_2を通って流れることが可能になり、媒体間ゾーン622からの吸引を打ち消し、交差流の強度を低下させる。この同じ時点で、媒体間ゾーン622は他のバルブ651のいずれの下にもないため、これらのバルブ651間の圧力差は全て閾値Tより小さく、これらのバルブ651は閉鎖状態である。このように、間隙619d_1及び619u_2を通る交差流は防止される。
【0089】
図7~
図8Cは、
図2を参照して上述した印刷システム100と同様に使用され得る印刷システム700を示す。
図7は、真空プラテン726の下からの平面図を含む。
図8A~
図8Cは、
図7のEに沿って取られた断面を含み、
図8A~
図8Cのそれぞれは、異なるサイズの印刷媒体705が印刷されているところを示す。
【0090】
印刷システム700は、インク堆積アセンブリ701、媒体搬送デバイス703、及び気流制御システム750を含み、これらは、それぞれインク堆積アセンブリ101、媒体搬送デバイス103、及び気流制御システム150と同様に使用され得る。印刷システム700はまた、制御システム(例えば、制御システム130)などの追加の構成要素を含んでもよい。
【0091】
インク堆積アセンブリ701は、それぞれがキャリアプレート711の印刷ヘッド開口部を通して印刷流体(例えば、インク)を吐出する1つ以上の印刷ヘッド710を有する、1つ以上の印刷ヘッドモジュールを含む。印刷ヘッドモジュール、印刷ヘッド710、及びキャリアプレート711は、それぞれ、印刷ヘッドモジュール102、印刷ヘッド110、及びキャリアプレート111と同様に使用され得る。インク堆積アセンブリは、上述のインク堆積アセンブリ301と同様に構成されてもよく、したがって、その構成要素の重複説明は省略されている。
【0092】
媒体搬送デバイス703は、穴727を有する真空プラテン726と、穴721を有する可動支持表面720と、を含む。媒体搬送デバイス703は、上述の媒体搬送デバイス303と同様に構成されてもよく、したがって、その構成要素の重複説明は省略されている。
【0093】
気流制御システム750は、チャネル760及びバルブ761を含む。チャネル760は独立してアドレス可能であり、つまり、チャネル760を独立してオンにするか、又はオフにすることができる。この文脈において、チャネル760が「オン」であることは、チャネル760に関連付けられた穴727を通る気流が許容されることを指し、チャネルが「オフ」であることは、チャネル760に関連付けられた穴727を通る気流は許容されないことを指す。バルブ761は、それぞれのチャネル760がオンであるかオフであるかどうかを制御するため(すなわち、チャネル760及びそれらの関連する穴727を通る気流を制御するため)、チャネル760と連結される。バルブ761が開放されているとき、対応するチャネル760を通る気流は許容され、ゆえに対応する穴727を通る真空吸引は有効になる(すなわち、チャネル760はオンである)。バルブ761が閉鎖されているとき、チャネル760を通る気流は停止され、ゆえに対応する穴727を通る真空吸引は停止される(すなわち、チャネル760はオフである)。
【0094】
図7~
図8Cに示されるように、チャネル760は、真空プレナム725の真空吸引が対応する穴727の群に伝達される際の通路を画定する構造を含む。特に、チャネル760はそれぞれ、プラテン726内の少なくとも1列の穴727に対応し、チャネル760及び穴727の列はいずれもプロセス方向(y軸方向)に延在する。チャネル760は、真空プレナム内の真空吸引がチャネル760の内部に伝達される1つ以上の開口部を含み、バルブ761は、チャネル760を真空プレナムに選択的に流体的に連結するために、1つの開口部に位置付けられる。
図7~
図8Cでは、チャネル760は、それぞれに、空気がチャネル760に入る一方の端にバルブ761を有する、細長いボックス様構造(矩形プリズム)として示されているが、チャネル760及びバルブ761の構成はそのように限定されない。チャネル760及びバルブ761は、真空プレナムと対応する穴727の群との間の気流を選択的に許容又は遮断することを可能にする任意の形状及び構成を有し得る。例えば、チャネル760は、プラテン726の底面から延在するのではなく、プラテン726の底面に陥凹し得る。別の例として、バルブ761は、例えば、真空源からのチャネルの出口端を遮断するため、チャネル760の底部側に、又はチャネル760の反対側の端部になど、異なって位置付けられ得る。別の例として、チャネル760の気流インピーダンスを低減するために、チャネル760ごとに複数のバルブ761が提供され得る。更に、気流がチャネル760によって制御される穴727の群は、必ずしもそうである必要はないが、対応する穴727の列の中の全ての穴727を含み得る。いくつかの実施形態では、チャネル760は、インク堆積アセンブリの堆積領域内又はその近くにある、それらの対応する列(複数可)の少なくともそれらの穴727を通る気流を制御する。当業者は、本明細書に開示される動作の範囲及び原理から逸脱することなく、チャネル、穴、及びバルブの様々な配置を想定することができる。
【0095】
図7~
図8Cでは、6つのチャネル760が示されている。しかしながら、実際には、任意の数のチャネル760が提供され得る。いくつかの実施形態では、チャネル760は、プラテン726内の穴727の列ごとに提供され、他の実施形態では、チャネル760は、全ての列より少ない列に提供される。チャネル760が穴727の列の全てより少ない列に提供されるいくつかの実施形態では、チャネル760は、非被覆領域724が現れるプラテン727の側面に最も近いN列の穴727を被覆するように位置付けられ、Nはチャネル760の数である。例えば、
図7~
図8Cでは、非被覆領域724は、プラテン726の内側側部(IB)に現れ、したがって、760_1~760_6の6つのチャネルが、穴727の最も内側の6列に提供される。いくつかの実施形態では、チャネル760は、印刷システムが使用するように構成されている印刷媒体のサイズを考慮して、おそらくは非被覆領域724に位置し得る穴727の列ごとに提供される。例えば、印刷システムが使用するように構成されている最小の印刷媒体で、穴727の最も内側のK列が非被覆のままである場合(Kは任意の整数)、少なくともK個のチャネル760は、少なくともこれらのK列の穴727に提供され得る。
【0096】
図7~
図8Cでは、印刷媒体は、プラテン726の外側側部(
図7~
図8CのOB)に位置する位置合わせ基準線(REG)に位置合わせされ、したがって、より小さい印刷媒体が使用されるとき、非被覆領域724は、印刷媒体の内側側部に現れる。このように、かかるシステムでは、チャネル760は、プラテン726の内側側部の穴727の列に提供される。しかしながら、印刷媒体が異なって位置合わせされる実施形態では、チャネル760は、非被覆領域が現れる場所と整列するように再配置され得る。
【0097】
いくつかの実施形態では、アクチュエータは、バルブ761を開放状態と閉鎖状態との間で移動させるために、バルブ761に動作可能に連結される(又はその一体部分である)。
図7~
図8Cでは、他の部分を不明瞭にすることを避けるために、アクチュエータは図示されていない。アクチュエータは、上述のアクチュエータ169と同様に使用され得る。
【0098】
図8A~
図8Cに示されるように、バルブ761は、現在使用されている(例えば、現在印刷されている又は現在保留中の印刷に選択されている)印刷媒体のサイズに基づいて、チャネル760を個別にオン又はオフにするように、個別に制御され得る。例えば、
図8Aに示すように、システムが使用するように設計されている最大の印刷媒体705aが選択されており、この印刷媒体705aのクロスプロセス方向の幅は、穴727の列の全てを被覆するのに十分である。このように、この実施例では、非被覆領域724は存在せず、したがって、バルブ761の全てを開放状態に移動させることによって全てのチャネル760がオンになる。図中、バルブ761の開放状態は、バルブ761の開放通路を概略的に表す円によって示されている。対照的に、
図7B~
図7Cに示されるように、より小さい印刷媒体705が使用される場合、穴727の列のいくつかは被覆されないため、非被覆領域724が存在する。そのような状態では、非被覆領域724内にあるそれぞれのチャネル760は、対応するバルブ761を閉鎖状態に移動させることによってオフになる。バルブ761の閉鎖状態は、バルブ761の上に重ね合わされたXによって
図8A~
図8Cに概略的に示されている。このように、例えば、
図8Bでは、穴727の最も内側の2列が被覆されないようなサイズの印刷媒体705bが使用されており、したがって、最も内側の2つのチャネル760_1及び760_2がオフになる(すなわち、バルブ761_1及び761_2が移動される)。別の例として、
図7Cでは、印刷システムが使用するように設計されている最小の印刷媒体705cが選択されており、したがって、チャネル760の全てがオフである(すなわち、バルブ761の全ては閉鎖状態にある)。例示した3つの状態は、非限定的であり、動作の原理を実証するために使用され、当業者は、異なる数の穴727の列を被覆する他のサイズの印刷媒体が使用される場合、それに応じて、非被覆領域724内にあるチャネル760はオフになり、非被覆領域724にないチャネル760はオンになるように、異なる数のチャネル760がオン又はオフになり得ることを理解するであろう。このように、非被覆領域724内の穴727を通る吸引は、印刷媒体のサイズに関係なく防止され、したがって、非被覆領域724によって誘発される交差流は排除される。更に、印刷媒体によって被覆される穴727の全てが真空吸引を受け続けることができ、したがって、印刷媒体に対する吸引保持力は完全な力で維持される。
【0099】
気流制御システム350、650、及び750は、印刷システムの特定の実施形態の文脈において例示及び説明されているが、印刷システムの他の実施形態は、当業者には明らかであろう、いくつかのわずかな修正を伴って又は修正なく、上述の気流制御システム350、650、又は750を利用し得ることを理解されたい。例えば、印刷システム300、600、及び700に関連して上述したものとは異なる構成のインク堆積アセンブリ(例えば、異なる数、サイズ、形状、又は配置の印刷ヘッド又は印刷ヘッドモジュール)を有する印刷システムでは、上記の気流制御システム350及び650は、1つ以上の印刷ヘッドが対応する開口部を通って延在し、関連する間隙が、バルブ351又は651が通気を選択的に遮断し得る印刷ヘッドの上流側及び下流側に存在する限り使用され得る。バルブ351又は651の数は、印刷ヘッドの数に基づいて調整され得る。バルブ351又は651の形状及びサイズは、気流を遮断する間隙の形状及びサイズに基づいて調整され得る(間隙の形状及びサイズは、印刷ヘッド及び印刷ヘッドが延在する開口部の形状及びサイズによって異なる)。気流制御システム700は、チャネル760のサイズがインク堆積領域のサイズに応じて変化し得ることを除き、インク堆積アセンブリの構成に関係なく使用され得る。別の実施例として、印刷システム300、600、及び700に関して上述したものとは異なる構成の媒体搬送デバイスを有する印刷システムでは、気流制御システム750は、穴727の形状、数、又は配置に関係なく、及び可動支持表面又は真空プレナムのタイプ又は構成に関係なく、印刷媒体に真空吸引を提供するための穴727が存在する限り使用され得る。チャネル760の数及びサイズは、穴727の配置及びインク堆積領域のサイズに基づいて変化させ得る。上述の気流制御システム350及び650は、媒体搬送デバイスの構成に関係なく、媒体搬送デバイスが印刷媒体を保持するために真空吸引を利用する限り使用され得る。このように、気流制御システム350、650、及び/又は750は、上述の特定の印刷システムを含むがこれらに限定されない様々な印刷システムにおいて、修正あり又は修正なしで利用され得る。加えて、気流制御システム350、650、及び/又は750は、単独で又は組み合わせて使用され得る。
【0100】
上述のように、コントローラ(コントローラ131など)は、媒体間ゾーンの場所に基づいてバルブ(バルブ151又は351など)を作動させるタイミングを決定し、コントローラは、媒体間ゾーンの上流縁部又は下流縁部が特定のトリガ場所に到達したときにバルブを作動させる。いくつかの実施形態では、これらのトリガ場所は、予め決められ、コントローラ131にプログラムされている。例えば、トリガ場所は、上記の例示的なトリガ場所のうちの1つに設定され得る。別の実施例として、トリガ場所は、印刷媒体上の試験画像を反復的に印刷し、画像内のぼやけの量を決定し、バルブを作動させるためのトリガ場所を調整し、次いで、所望のレベルの画像のぼやけが得られるまでプロセスを繰り返すことによって、実験的に決定され得る。次いで、その所望のレベルの画像のぼやけを生成したタイミングが選択され、所定のタイミングとしてコントローラにプログラムされ得る。対照的に、いくつかの実施形態では、トリガ場所(ひいては、それに基づく作動タイミング)は、例えば、リアルタイムフィードバックに基づいて、印刷システムの動作中に動的に決定又は調整され得る。上述のように、コントローラ(コントローラ131など)はまた、印刷媒体の幅を決定し、印刷媒体の幅に基づいてバルブ(バルブ161又は761など)を作動させ得る。印刷媒体の幅は、印刷媒体の画像化、縁部検出センサ、又は印刷媒体の現在の既知の用紙サイズに基づいて決定され得る。
【0101】
図9は、バルブを作動させるためのトリガ場所(例えば、バルブ151又は351)を動的に決定することに関連する方法900の実施形態を示す。一実施例では、方法900は、印刷システム100の制御システム130又は印刷システム300の制御システムなど、印刷システムの制御システムによって自動的に実行され得る。いくつかの実施例では、バルブを作動させるためのトリガ場所(ひいては、タイミング)は、印刷システムの使用中に動的に調整され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法900の動作及び/又は他の動作は、1つ以上の非一時的機械可読媒体(例えば、メモリデバイス)に記憶された機械可読命令(コンピュータ可読命令、プロセッサ実行可能命令、コード、ソフトウェア、プログラミングなどとも呼ばれる)で具現化され得、命令は、印刷システムの処理回路によって実行されると、印刷システムに本明細書に記載の動作を実行させるようなものである。方法900はまた、印刷システムのユーザによって、例えば、ユーザが印刷システムを、印刷システムが方法900の動作を実行する動作状態にすることによって実行され得る。
【0102】
ブロック901は、本明細書に記載の様々な実施形態による気流制御システムを含む印刷システムを使用して、画像を印刷することを含む。一実施形態では、画像は、具体的には、バルブ作動タイミングを調整するプロセスのために生成された試験画像であり得る。試験画像は、所定のパターン又は形状(例えば、1つ以上のライン)を含み得る。別の実施形態では、画像は、バルブ作動タイミングを調整するプロセスに特有でない場合がある。例えば、画像は、調整プロセスに関連しない通常の印刷ジョブの一部であり得る。
【0103】
ブロック902は、印刷画像内の縁部のぼやけの量を決定することを含む。これは、例えば、印刷画像をスキャン又は撮影することによって、印刷画像の電子画像を取得することを含み得る。次いで、電子画像を分析して、画像内のぼやけの量が決定され得る。例えば、電子画像の部分の輝度値をサンプリングし、それらの部分の予期される輝度値(画像を印刷するために使用されるマスター画像データから知られる予期される輝度値)と比較することができ、サンプリングされた値と予期される値との間の差の量は、印刷画像内の画像のぼやけの量を表し得る。別の例として、2020年3月13日に出願された米国特許出願第16/818847号に開示されている、ぼやけを測定するための技術を使用して、縁部のぼやけの量を決定することができる。任意の他の既知の画像分析技術を使用して、画像内のぼやけを検出することができる。
【0104】
ブロック903は、決定された縁部のぼやけの量に基づいて、バルブに関連付けられたトリガ場所を調整することを含む。例えば、縁部ぼやけの量は、PID制御ループなどの制御ループ内のフィードバックとして使用されてもよく、トリガ場所は制御変数である。それぞれのバルブは、上述のように上流トリガ場所及び下流トリガ場所など、設定される必要がある複数の関連するトリガ場所を有し得る。いくつかの実施形態では、いくつかのバルブは、複数の異なる下流トリガ場所など、追加のトリガ場所を有し得る。バルブが作動されるタイミングは、媒体間ゾーンの部分(すなわち、媒体間ゾーンを画定する印刷媒体の前縁部又は後縁部)が様々なトリガ場所に到達するときのタイミングに対応するため、トリガ場所のそれぞれは、バルブの1つ以上の作動タイミングに対応することを理解されたい。所与のトリガ場所は、同じバルブの開閉の両方のタイミングと関連付けられてもよい。例えば、媒体間ゾーンの下流縁部が所与のトリガ場所に到達したときに、所与のバルブが開放されてもよく、媒体間ゾーンの上流縁部が同じ所与のトリガ場所に到達したときに、そのバルブが閉鎖されてもよい。異なるバルブは異なるトリガ場所を有し得、異なるタイプの作用(例えば、バルブの開閉)がそれらのトリガ場所に基づいて生じ得る。
【0105】
全てのバルブのトリガ場所は、プロセス900を複数回繰り返すことによって決定され得、反復ごとに、1つ以上のバルブの1つ以上のトリガ場所が変化する。いくつかの実施例では、同様に位置するバルブのトリガ場所は、所与のバルブの学習されたトリガ場所に基づいて設定されてもよく、それによって、同様に位置するバルブの群内のそれぞれのバルブに対してプロセス900を繰り返す必要性を回避する。例えば、互いにクロスプロセス方向に整列されたバルブは全て同じトリガ場所を有し得るため、これらのバルブのうちの1つのバルブのみのトリガ場所(複数可)が学習される必要があり、他はそれに応じて設定され得る。別の実施例として、いくつかの実施形態では、全ての上流バルブは同じ相対トリガ場所を有し得る。例えば、所与の上流バルブの下流トリガ場所が、対応する印刷ヘッドの下流面のXmm下流にあると決定された場合、全ての上流バルブの下流トリガ場所は、それらの対応する印刷ヘッドの下流面のXmm下流に設定され得る。別の実施例として、第1の印刷ヘッドモジュールのバルブのトリガ場所は、プロセス900を1回以上実行することによって決定されてもよく、次いで、他の印刷ヘッドモジュールのバルブは、同じ相対場所にある第1の印刷ヘッドモジュールのそれぞれのバルブのトリガ場所に基づいて設定され得る。
【0106】
プロセス900は、トリガ場所の値を学習するためにトリガ場所を変化させることに関連して上述されているが、トリガ場所及び作動タイミングは本質的にリンクしているため、同じプロセス900は、作動タイミングの値を学習するために作動タイミングを変化させるものとして等価的に説明することができる。
【0107】
本明細書並びに本発明の態様及び実施形態を例示する添付の図面は、限定するものとして解釈されるべきではなく、特許請求の範囲が保護される発明を定義する。本明細書及び特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な機械的、構成的、構造的、電気的、及び動作的変更を行うことができる。場合によっては、本発明を不明瞭にしないために、周知の回路、構造、及び技術は詳細に図示されておらず、説明もされていない。2つ以上の図における同様の番号は、同じ又は同様の要素を表す。
【0108】
本明細書で使用されるとき、開口部のリムと印刷ヘッドの側面との間の間隙をバルブが「遮断する」ことは、バルブが間隙を実質的に被覆するか又はまたがり、間隙を通る気流を防止するためにキャリアプレート及び印刷ヘッドに十分に近接するように、間隙に対してバルブを位置付けることを指す。この文脈において、間隙を通る気流をバルブが「防止する」ことは、バルブが、完全に開いた状態と比較して、間隙を通る気流が著しく低減されるように、間隙を介して比較的高いインピーダンス状態を作り出すことを意味する(例えば、インピーダンスが開放状態の10倍増加される、かつ/又は気流が開放状態の約10%に減少される)。このように、間隙を遮断すること及び気流を防止することは、必ずしも密封封止又は全ての気流の厳密な排除を必要としない。
【0109】
更に、空間的用語及び関係用語など、本発明の態様を説明するために本明細書で使用される用語は、読者が本発明の実施形態を理解することを支援するように選択されているが、本発明を限定することを意図するものではない。例えば、「上流」、「下流」、「真下」、「下方」、「下部」、「上方」、「上部」、「内側」、「外側」、「上」、「下」などの空間的な用語は、本明細書では、図に示されるように、別の要素又は特徴に対する方向又は1つの要素若しくは特徴の空間的関係を説明するために使用され得る。これらの空間的用語は、図に示されるポーズに対して使用され、現実世界における特定の基準フレームに限定されない。このように、例えば、図中の方向「上」は、必ずしも世界基準フレームの「上」(例えば、地球の表面から離れる方向)に対応する必要はない。更に、図に示されるものとは異なる基準フレームが考慮される場合、本明細書で使用される空間的用語は、その異なる基準フレームでは異なって解釈される必要があり得る。例えば、図のうちの1つに関して「上」と称される方向は、その図の基準フレームから180度回転した異なる基準フレームに関して「下」と呼ばれる方向に対応し得る。別の例として、図に示されている様子と比較して、デバイスが世界基準フレーム内で180度ひっくり返ると、図に関連する第2のアイテムの「上方に」又は「上に」あるものとして本明細書に記載されるアイテムは、世界基準フレームに関して第2のアイテムの「下方に」又は「下に」あることになる。このように、どの基準フレームが考慮されているかに応じて、異なる空間的用語を使用して、同じ空間的関係又は方向が説明され得る。更に、図に示されるアイテムのポーズは、例示及び説明の便宜のために選択されているが、実際の実装態様において、アイテムのポーズは異なり得る。
【0110】
「プロセス方向」という用語は、印刷媒体がインク堆積アセンブリの堆積領域を通って搬送される際に移動する軸と平行であり、同じ方向に向けられた方向を指す。このように、プロセス方向は、図中のy軸に平行であり、正のy軸方向に向けられた方向である。
【0111】
「クロスプロセス方向」という用語は、プロセス方向に垂直、かつ可動支持表面に平行な方向を指す。任意の所与の点で、反対方向、すなわち「内側」クロスプロセス方向及び「外側」クロスプロセス方向に向けられた2つのクロスプロセス方向が存在する。このように、図に示される基準フレームを考慮すると、クロスプロセス方向は、x軸沿いの正方向又は負方向に向けられた方向を含む、x軸に平行な任意の方向である。本明細書における「クロスプロセス方向」への言及は、文脈によって別途記載のない限り、一般に、1つの特定のクロスプロセス方向ではなく、クロスプロセス方向のいずれかを指すものとして理解されるべきである。このように、例えば、「バルブはクロスプロセス方向に移動可能である」という記述は、バルブが内側方向、外側方向、又は両方向に移動し得ることを意味する。
【0112】
「上流」及び「下流」という用語は、プロセス方向に平行な方向を指し得、「下流」は、プロセス方向と同じ方向(すなわち、印刷媒体がインク堆積アセンブリを通って搬送される方向)に向けられた方向を指し、「上流」は、プロセス方向の反対側に向けられた方向を指す。図中、「上流」は負のy軸方向に対応し、「下流」は正のy軸方向に対応する。「上流」及び「下流」という用語はまた、要素の相対的な場所を指すために使用されてもよく、「上流」要素は、基準点に対して上流方向に変位され、「下流」要素は、基準点に対して下流方向に変位される。言い換えれば、「上流」要素は、他の基準要素より、印刷媒体がインク堆積アセンブリを通して搬送されるときに取る経路の始まり(例えば、印刷媒体が可動支持表面に接合する場所)に近い。逆に、「下流」要素は、他の基準要素より、その経路の終わり(例えば、印刷媒体が支持表面を離れる場所)に近い。「上流」又は「下流」要素が比較される他の要素の基準点は、明示的に述べられている場合もあり(例えば、「印刷ヘッドの上流側」)、文脈から推測される場合もある。
【0113】
「内側」及び「外側」という用語は、クロスプロセス方向を指し、「内側」は、クロスプロセス方向への方向を指し、「外側」は、「内側」と反対のクロスプロセス方向を指す。図中、「内側」は正のx軸方向に対応し、「外側」は負のx軸方向に対応する。「内側」及び「外側」という用語はまた、相対的な場所を指し、「内側」要素は、基準点に対して内側方向に変位され、「外側」要素は、基準点に対して外側方向に変位される。基準点は、明示的に述べられている場合もあり(例えば、「印刷ヘッドの内側側部」)、文脈から推測される場合もある。
【0114】
「垂直」という用語は、堆積領域内の可動支持表面に垂直な方向を指す。任意の所与の点で、反対方向、すなわち「上向き」方向及び「下向き」方向に向けられた2つの垂直方向が存在する。このように、図に示される基準フレームを考慮すると、垂直方向は、正のz軸方向(「上」)又は負のz軸方向(「下」)に向けられた方向を含む、z軸に平行な任意の方向である。
【0115】
「水平」という用語は、堆積領域内の可動支持表面に平行な(又は可動支持表面が堆積領域において平坦ではない場合、堆積領域内の可動支持表面に接する)方向を指す。水平方向は、プロセス方向及びクロスプロセス方向を含む。
【0116】
「真空」という用語は、物質の全くない空間という厳密な意味から、比較的低い圧力状態というより一般的な意味まで、様々な文脈で様々な意味を有する。本明細書では、「真空」という用語は、一般的な意味で使用され、空気圧が周囲圧力又は大気圧などの基準圧力より低い状態又は環境を広く指すものとして理解されるべきである。真空環境の圧力が「真空」と見なされるために基準圧力の圧力より低くあるべき量は限定されず、小さい量であってもよく、大きい量であってもよい。このように、本明細書で使用されるとき、「真空」は、用語のより厳密な意味での「真空」と見なされ得る状態を含むが、これに限定されない。
【0117】
「空気」という用語は、地球の大気(又はその組成が地球の大気の組成と同様であるガスの混合物)という厳密な意味から、任意のガス又はガス混合物というより一般的な意味まで、様々な文脈で様々な意味を有する。本明細書では、「空気」という用語は、一般的な意味で使用され、任意のガス又はガスの混合物を広く指すものとして理解されるべきである。これには、地球の大気、貴ガス(例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴンなど)のうちの1つなどの不活性ガス、窒素(N2)ガス、又は任意の他の所望のガス若しくはガス混合物が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0118】
加えて、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上別途記載のない限り、複数形も含むことが意図される。また、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」などの用語は、記載された特徴、工程、動作、要素、及び/又は構成要素の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、工程、動作、要素、構成要素、及び/若しくはグループの存在又は追加を排除するものではない。特に別途記載のない限り、連結されるものとして記載される構成要素は、電気的又は機械的に直接連結されている場合もあり、1つ以上の中間構成要素を介して間接的に連結されている場合もある。数学的及び幾何学的用語は、当業者であれば、例えば、その用語が厳密な定義も有している場合であっても、実質的に同様の方法で機能する実質的に同様の要素が説明的用語の範囲内に容易に収まり得ることを理解しているため、説明の文脈上別途記載のない限り、必ずしもそれらの厳密な定義に従って使用されることを意図するものではない。
【0119】
一実施形態を参照して詳細に説明される要素及びそれらの関連する態様は、実用的である場合は常に、それらが具体的に図示又は説明されていない他の実施形態に含まれ得る。例えば、ある要素が一実施形態を参照して詳細に説明されており、第2の実施形態を参照して説明されていない場合、それにもかかわらず、その要素は、第2の実施形態に含まれるものとして特許請求され得る。