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特開2022-155532研磨パッド及び研磨加工物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155532
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】研磨パッド及び研磨加工物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/24 20120101AFI20221005BHJP
   B24B 37/013 20120101ALI20221005BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
B24B37/24 A
B24B37/24 C
B24B37/013
H01L21/304 622F
H01L21/304 622S
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047833
(22)【出願日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2021057002
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005359
【氏名又は名称】富士紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】立野 哲平
(72)【発明者】
【氏名】糸山 光紀
(72)【発明者】
【氏名】関谷 仁志
(72)【発明者】
【氏名】小池 堅一
(72)【発明者】
【氏名】栗原 浩
(72)【発明者】
【氏名】山口 さつき
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼見沢 大和
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158AA09
3C158AA19
3C158AC02
3C158CA05
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5F057EB08
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5F057EB30
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5F057GA12
5F057GA13
5F057GB02
5F057GB13
5F057GB20
5F057GB31
(57)【要約】
【課題】平坦性に優れる研磨パッド及びそれを用いた研磨加工物の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】研磨層となるポリウレタンシートと、該ポリウレタンシートの開口に設けられた終点検出窓と、を有し、引張モード、周波数1.0Hz、10~100℃の条件で行う前記終点検出窓の動的粘弾性測定において、90℃における貯蔵弾性率E’W90が、1.0×107Pa以上であり、前記終点検出窓の80℃におけるD硬度(DW80)が、40以上であり、前記終点検出窓の20℃におけるD硬度(DW20)が、40~90である、研磨パッド。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨層となるポリウレタンシートと、該ポリウレタンシートの開口に設けられた終点検出窓と、を有し、
引張モード、周波数1.0Hz、10~100℃の条件で行う前記終点検出窓の動的粘弾性測定において、90℃における貯蔵弾性率E’W90が、1.0×107Pa以上であり、
前記終点検出窓の80℃におけるD硬度(DW80)が、40以上であり、
前記終点検出窓の20℃におけるD硬度(DW20)が、40~90である、
研磨パッド。
【請求項2】
前記終点検出窓が、ポリウレタン樹脂Wを含む、
請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記ポリウレタン樹脂Wが、脂環族イソシアネート及び/又は脂肪族イソシアネートに由来する構成単位を含む、
請求項2に記載の研磨パッド。
【請求項4】
前記ポリウレタン樹脂Wが、水酸基を3つ以上有する化合物に由来する構成単位を含む、
請求項2又は3に記載の研磨パッド。
【請求項5】
前記終点検出窓の動的粘弾性測定において、30℃における貯蔵弾性率E’W30が、60×107~100×107Paである、
請求項1~4のいずれか一項に記載の研磨パッド。
【請求項6】
前記終点検出窓の動的粘弾性測定において、tanδのピーク温度が、70~100℃である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の研磨パッド。
【請求項7】
前記ポリウレタンシートは、ポリウレタン樹脂Pと、該ポリウレタン樹脂P中に分散した中空微粒子とを含む、
請求項1~6のいずれか一項に記載の研磨パッド。
【請求項8】
研磨スラリーの存在下、請求項1~7のいずれか1項に記載の研磨パッドを用いて、被研磨物を研磨し研磨加工物を得る研磨工程と、
該研磨中に光学式終点検出方式で終点検出を行う終点検出工程と、を有する、
研磨加工物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨パッド及びそれを用いた研磨加工物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程においては、絶縁膜成膜後の平坦化や金属配線の形成過程で化学機械研磨(CMP)が使用される。化学機械研磨に要求される重要な技術の一つとして、研磨プロセスが完了したかどうかを検出する研磨終点検出がある。例えば、目標とする研磨終点に対する過研磨や研磨不足は製品不良に直結する。そのため、化学機械研磨では、研磨終点検出により研磨量を厳しく管理する必要がある。
【0003】
化学機械研磨は複雑なプロセスであり、研磨装置の運転状態や消耗品(スラリー、研磨パッド、ドレッサー等)の品質や研磨過程における経時的な状態のばらつきの影響によって、研磨速度(研磨レート)が変化する。さらに、近年半導体製造工程で求められる残膜厚の精度、面内均一性はますます厳しくなっている。このような事情から、十分な精度の研磨終点検出はより困難となってきている。
【0004】
研磨終点検出の主な方法としては、光学式終点検出方式、トルク終点検出方式、渦電流終点検出方式などが知られており、光学式終点検出方式では、研磨パッド上に設けた透明な窓用部材を通してウエハに光を照射し、反射光をモニタすることで終点検出を行う。
【0005】
このような光学式終点検出方式を用いる研磨パッドとしては、例えば、特許文献1には、窓用部材の溝内にスラリーが溜まるのを抑えて、研磨レートの検出精度を上げることができる研磨パッドを提供することを目的として、パッド本体と該パッド本体の一部に一体に形成された透明な窓用部材とを有する研磨パッドにおいて、窓用部材の表面をパッド本体の表面から凹んだ状態とすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-001647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のような窓を有する研磨パッドの製造方法の一つとして、金型に窓用部材を固定した状態で、樹脂組成物を充填し硬化させたあと、得られた硬化物をスライスしたり、その後ドレス処理をしたりする方法が挙げられる。ここで、窓用部材と樹脂組成物の硬化物は異なる材料からなるものであるためその物性は少なからず相違するが、例えば、スライスをした際に、窓部が凹んだり割れたりする恐れがある。また、ドレス処理を行う際にも、窓部と研磨層の摩耗量の相違によって、窓部が凹んだ状態となる恐れがある。
【0008】
このような凹みなどが生じると、そこにスラリーや研磨屑がたまりやすくなり、スクラッチなどを生じさせて、被研磨物の面品位を低下させる可能性がある。また、窓部の方が摩耗量が少ない場合には、研磨が進むにつれて窓部が研磨層よりも残りやすくなる結果、窓部部分が凸状となることが考えられる。このような凸状の窓部も、スクラッチなどを生じさせて、被研磨物の面品位を低下させる可能性がある
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、スライス処理及びドレス処理時における平坦性に優れる研磨パッド及びそれを用いた研磨加工物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記問題を解決するため鋭意検討した。その結果、終点検出窓が所定の粘弾性及び硬度を有することにより、上記問題点を解決しうることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
研磨層となるポリウレタンシートと、該ポリウレタンシートの開口に設けられた終点検出窓と、を有し、
引張モード、周波数1.0Hz、10~100℃の条件で行う前記終点検出窓の動的粘弾性測定において、90℃における貯蔵弾性率E’W90が、1.0×107Pa以上であり、
前記終点検出窓の80℃におけるD硬度(DW80)が、40以上であり、
前記終点検出窓の20℃におけるD硬度(DW20)が、40~90である、
研磨パッド。
〔2〕
前記終点検出窓が、ポリウレタン樹脂Wを含む、
〔1〕に記載の研磨パッド。
〔3〕
前記ポリウレタン樹脂Wが、脂環族イソシアネート及び/又は脂肪族イソシアネートに由来する構成単位を含む、
〔2〕に記載の研磨パッド。
〔4〕
前記ポリウレタン樹脂Wが、水酸基を3つ以上有する化合物に由来する構成単位を含む、
〔2〕又は〔3〕に記載の研磨パッド。
〔5〕
前記終点検出窓の動的粘弾性測定において、30℃における貯蔵弾性率E’W30が、60×107~100×107Paである、
〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の研磨パッド。
〔6〕
前記終点検出窓の動的粘弾性測定において、tanδのピーク温度が、70~100℃である、
〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の研磨パッド。
〔7〕
前記ポリウレタンシートは、ポリウレタン樹脂Pと、該ポリウレタン樹脂P中に分散した中空微粒子とを含む、
〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の研磨パッド。
〔8〕
研磨スラリーの存在下、〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載の研磨パッドを用いて、被研磨物を研磨し研磨加工物を得る研磨工程と、
該研磨中に光学式終点検出方式で終点検出を行う終点検出工程と、を有する、
研磨加工物の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スライス処理及びドレス処理時における平坦性に優れる研磨パッド及びそれを用いた研磨加工物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の研磨パッドの概略斜視図である。
図2】本実施形態の研磨パッドの終点検出窓部分の概略断面図である。
図3】本実施形態の研磨パッドの終点検出窓部分の他の態様の概略断面図である。
図4】CMPに搭載する膜厚制御システムを示す概略図である。
図5A】スライス後ドレス前における実施例1の研磨パッドの終点検出窓部分の表面状態を示す図である。
図5B】スライス後ドレス前における比較例1の研磨パッドの終点検出窓部分の表面状態を示す図である。
図5C】スライス後ドレス前における比較例2の研磨パッドの終点検出窓部分の表面状態を示す図である。
図5D】スライス後ドレス前における実施例2の研磨パッドの終点検出窓部分の表面状態を示す図である。
図6A】ドレス後における実施例1の研磨パッドの終点検出窓部分の表面状態を示す図である。
図6B】ドレス後における比較例1の研磨パッドの終点検出窓部分の表面状態を示す図である。
図6C】ドレス後における比較例2の研磨パッドの終点検出窓部分の表面状態を示す図である。
図6D】ドレス後における実施例2の研磨パッドの終点検出窓部分の表面状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。又上下左右などの位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0015】
1.研磨パッド
本実施形態の研磨パッドは、研磨層となるポリウレタンシートと、該ポリウレタンシートの開口に設けられた終点検出窓と、を有し、引張モード、周波数1.0Hz、10~100℃の条件で行う終点検出窓の動的粘弾性測定において、90℃における貯蔵弾性率E’W90が、1.0×107Pa以上であり、終点検出窓の80℃におけるD硬度(DW80)が、40以上であり、終点検出窓の20℃におけるD硬度(DW20)が、40~70である。
【0016】
これにより、スライス処理においては凸部が生じにくいという観点から平坦性を向上することができ、ドレス処理時においては終点検出窓が研磨層よりも過研磨されにくいという観点から平坦性を向上することができる。なお、本実施形態においては、これら2種の平坦性をまとめて単に「平坦性」という。
【0017】
図1に、本実施形態の研磨パッドの概略斜視図を示す。図1に示すように、本実施形態の研磨パッド10は、ポリウレタンシートである研磨層11と、終点検出窓12と、を有し、必要に応じて、研磨面11aとは反対側に、クッション層13を有していてもよい。
【0018】
図2~3に、図1における終点検出窓12の周辺の断面図を示す。図2~3に示すように、研磨層11とクッション層13の間には、接着層14が設けられていてもよく、また、クッション層13の表面には、図4のテーブル22と貼り合わせるための接着層15が設けられていてもよい。本実施形態の研磨パッドの研磨面11aは、図2に示すように平坦の場合の他、図3に示すように、溝16が形成された凹凸状であってもよい。溝16は複数の同心円状、格子状、放射状等の様々な形状の溝を単独又は併用して形成してもよい。
【0019】
1.1.終点検出窓
終点検出窓はポリウレタンシートの開口に設けられた透明な部材であり、光学式の終点検出において、膜厚検出センサからの光の透過路となるものである。本実施形態において、終点検出窓は円形であるが、必要に応じて、正方形、長方形、多角形、楕円形等の形状としてもよい。
【0020】
本実施形態においては、研磨パッドを製造する過程において、スライスをした場合に、終点検出窓が研磨層よりも凹んだ状態になったり、割れたりすることや、ドレス処理を行った際に、終点検出窓が研磨層よりも凹んだ状態や突出した状態になったりすることを抑制し、平坦性を向上する観点から、終点検出窓の貯蔵弾性率E’とD硬度を規定する。
【0021】
1.1.1.動的粘弾性
本実施形態における終点検出窓の貯蔵弾性率E’は、引張モード、周波数1.0Hz、10~100℃の条件で行う動的粘弾性測定により求めることができる。後述するようにスライスは対象を加熱した状態で行うことから、本実施形態における終点検出窓の貯蔵弾性率E’としては、90℃における貯蔵弾性率E’W90を規定する。また、本実施形態においては、スライス時において貯蔵弾性率E’(弾性成分)に対して損失弾性率E’’(粘性成分)がより優位となる状態が発現するよう、損失正接tanδのピーク温度位置をさらに調整してもよいし、ドレス時における終点検出窓の特性を表す観点から、30℃における貯蔵弾性率E’W30を規定していてもよい。
【0022】
終点検出窓の90℃における貯蔵弾性率E’W90は、1.0×107Pa以上であり、好ましくは1.25×107~20×107Paであり、より好ましくは1.5×107~10×107Paである。貯蔵弾性率E’W90が1.0×107Pa以上であることにより、スライスをした場合に、終点検出窓が研磨層よりも凹んだ状態や突出した状態になったり、割れたりすることを抑制でき、平坦性をより向上することができる。
【0023】
また、終点検出窓の動的粘弾性測定において、tanδのピーク温度は、好ましくは70~100℃であり、より好ましくは70~95であり、さらに好ましくは75~90である。tanδのピーク温度が上記範囲内であることにより、スライスをした場合に、終点検出窓が研磨層よりも凹んだ状態や突出した状態になったり、割れたりすることを抑制でき、平坦性をより向上することができる。
【0024】
さらに、30℃における貯蔵弾性率E’W30は、好ましくは10×107~80×107Paであり、より好ましくは20×107~70×107Paであり、さらに好ましくは30×107~70×107Paである。貯蔵弾性率E’W30が上記範囲内であることにより、ドレス処理を行った際に、終点検出窓が研磨層よりも凹んだ状態になったりすることを抑制することができ、平坦性をより向上することができる。
【0025】
動的粘弾性測定の測定条件については、特に制限されるものではないが、実施例におい
て記載した条件により測定することができる。
【0026】
1.1.2.D硬度
終点検出窓の80℃におけるD硬度(DW80)は、40以上であり、好ましくは40~60であり、より好ましくは40~50である。D硬度(DW80)が40以上であることにより、スライスをした場合に、終点検出窓が研磨層よりも凹んだ状態や突出した状態になったり、割れたりすることを抑制でき、平坦性をより向上することができる。
【0027】
また、終点検出窓の20℃におけるD硬度(DW20)は、40~90であり、好ましくは50~85であり、より好ましくは55~80である。D硬度(DW20)が上記範囲内であることにより、ドレス処理を行った際に、終点検出窓が研磨層よりも凹んだ状態や突出した状態になったりすることを抑制することができ、平坦性をより向上することができる。
【0028】
D硬度の測定条件については、特に制限されるものではないが、実施例において記載した条件により測定することができる。
【0029】
1.1.3.構成材料
終点検出窓を構成する材料は、窓として機能し得る透明な部材であれば特に限定されないが、例えば、ポリウレタン樹脂W、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂などが挙げられる。このなかでも、ポリウレタン樹脂Wが好ましい。このような樹脂を用いることにより、上記動的粘弾性特性やD硬度、透明性をより調整しやすく、平坦性をより向上することができる。
【0030】
ポリウレタン樹脂Wは、ポリイソシアネートとポリオールにより合成することができ、ポリイソシアネートに由来する構成単位とポリオールに由来する構成単位とを含む。
【0031】
1.1.3.1.ポリイソシアネートに由来する構成単位
ポリイソシアネートに由来する構成単位は、特に限定されないが、例えば、脂環族イソシアネートに由来する構成単位、脂肪族イソシアネートに由来する構成単位、及び芳香族イソシアネートに由来する構成単位が挙げられる。このなかでも、ポリウレタン樹脂Wは、脂環族イソシアネート及び/又は脂肪族イソシアネートに由来する構成単位を含むことが好ましい。これにより、動的粘弾性特性、D硬度(DW20)、及びD硬度(DW80)を上記範囲内に調整しやすく、透明性がより向上するほか、窓の耐黄変性がより向上する傾向にある。また、平坦性をより向上することができる。
【0032】
脂環族イソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)、シクロヘキシレン-1,2-ジイソシアネート、シクロヘキシレン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0033】
脂肪族イソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、テトラメチレンジイソシアネート、プロピレン-1,2-ジイソシアネート、ブチレン-1,2-ジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0034】
芳香族イソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、フェニレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネー卜(MDI)が挙げられる。
【0035】
1.1.3.2.ポリオールに由来する構成単位
ポリオールに由来する構成単位としては、特に限定されないが、例えば、分子量300未満の低分子ポリオールと、分子量300以上の高分子ポリオールが挙げられる。
【0036】
低分子ポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサングリコール、2,5-ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の水酸基を2つ有する低分子ポリオール;グリセリン、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、イソシアヌル酸、エリスリトール等の水酸基を3つ以上有する低分子ポリオールが挙げられる。低分子ポリオールは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0037】
このなかでも、水酸基を3つ以上有する低分子ポリオールが好ましく、グリセリンがより好ましい。このような低分子ポリオールを用いることにより、動的粘弾性特性やD硬度を上記範囲内に調整しやすく、摩耗量を調整でき、平坦性をより向上することができ、透明性がより向上するほか、窓の耐黄変性がより向上する傾向にある。
【0038】
水酸基を3つ以上有する低分子ポリオールに由来する構成単位の含有量は、ポリイソシアネートに由来する構成単位100部に対して、好ましくは8.0~30部であり、より好ましくは10~25部であり、さらに好ましくは12.5~20部である。水酸基を3つ以上有する低分子ポリオールに由来する構成単位の含有量が上記範囲内であることにより、動的粘弾性特性やD硬度を上記範囲内に調整しやすく、平坦性をより向上することができ、透明性がより向上するほか、窓の耐黄変性がより向上する傾向にある。
【0039】
また、高分子ポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、および、ビニルモノマー変性ポリオールが挙げられる。高分子ポリオールは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0040】
なお、高分子ポリオールの数平均分子量は、好ましくは300~1200であり、より好ましくは400~950であり、さらに好ましくは500~800である。このような高分子ポリオールを用いることにより、動的粘弾性特性やD硬度を上記範囲内に調整しやすい傾向にある。
【0041】
このなかでも、ポリエーテルポリオールが好ましく、ポリテトラメチレンエーテルグリコールがより好ましい。このような高分子ポリオールを用いることにより、動的粘弾性特性やD硬度を上記範囲内に調整しやすく、低温時における硬度を調整しやすく、温度上昇に伴う硬度の低下を抑制することができる。また、平坦性をより向上することができ、透明性がより向上するほか、窓の耐黄変性がより向上する傾向にある。
【0042】
ポリエーテルポリオールに由来する構成単位の含有量は、ポリイソシアネートに由来する構成単位100部に対して、好ましくは40~100部であり、好ましくは50~90部であり、より好ましくは60~84部である。ポリエーテルポリオールに由来する構成単位の含有量が上記範囲内であることにより、動的粘弾性特性やD硬度を上記範囲内に調整しやすく、平坦性をより向上することができ、透明性がより向上するほか、窓の耐黄変性がより向上する傾向にある。
【0043】
また、ポリオールとしては、低分子ポリオールと高分子ポリオールとを併用することが好ましく、水酸基を3つ以上有する低分子ポリオールとポリエーテルポリオールとを併用することがより好ましい。これにより、動的粘弾性特性やD硬度を上記範囲内に調整しやすく、低温時における硬度を調整しやすく、温度上昇に伴う硬度の低下を抑制することができる。また、平坦性をより向上することができ、透明性がより向上するほか、窓の耐黄変性がより向上する傾向にある。
【0044】
上記観点から、ポリエーテルポリオールの含有量は、水酸基を3つ以上有する低分子ポリオール1部に対して、好ましくは1.0~9.0部であり、より好ましくは2.0~8.0部であり、さらに好ましくは3.0~7.0部である。
【0045】
1.2.研磨層
本実施形態の研磨層としてはポリウレタンシートを用いる。このポリウレタンシートは終点検出窓が埋設される開口を有する。開口の位置は特に制限されないが、テーブル22に設置された膜厚検出センサ23に対応する半径方向の位置に設けることが好ましい。また、開口の数は特に制限されないが、テーブル22に貼られた研磨パッド10が一回転する際に、窓が膜厚検出センサ23上を複数回通過するように、同様の半径方向の位置に複数個有することが好ましい。
【0046】
ポリウレタンシートの態様としては、特に制限されないが、例えば、発泡ポリウレタンシート、樹脂の無発泡ポリウレタンシート、繊維基材にポリウレタンを含浸したシートなどが挙げられる。
【0047】
ここで、樹脂の発泡成形体とは、繊維基材を有さず、所定の樹脂から構成される発泡体をいう。発泡形状は、特に制限されないが、例えば、球状気泡、略球状気泡、涙型気泡、あるいは、各気泡が部分的に連結した連続気泡などが挙げられる。
【0048】
また、樹脂の無発泡成形体とは、繊維基材を有さず、所定の樹脂から構成される無発泡体をいう。無発泡体とは、上記のような気泡を有しないものをいう。第1実施形態においては、フィルムなどの基材の上に、硬化性組成物を付着させて硬化させたようなものも樹脂の無発泡成形体に含まれる。より具体的には、ラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、スプレー塗布法等により形成された樹脂硬化物も樹脂の無発泡成形体に含まれる。
【0049】
さらに、樹脂含侵基材とは、繊維基材に樹脂を含浸させて得られるものをいう。ここで、繊維基材としては、特に制限されないが、例えば、織布、不織布、編地などが挙げられる。
【0050】
1.2.1.動的粘弾性
ポリウレタンシートは、研磨レートや被研磨物の面品位に加え、スライスやドレスをして得られる研磨パッドにおいて、終点検出窓が研磨層よりも凹んだ状態になったり、割れたりすることを抑制する観点から、所定の動的粘弾性特性を有していることが好ましい。
【0051】
具体的には、引張モード、周波数1.0Hz、10~100℃の条件で行う動的粘弾性測定において、ポリウレタンシートの90℃における貯蔵弾性率E’P90は、好ましくは1.0×107Pa以上であり、好ましくは2.0×107~20×107Paであり、より好ましくは3.0×107Pa~15×107Paである。貯蔵弾性率E’P90が1.0×107Pa以上であることにより、研磨レートや被研磨物の面品位の向上に加え、スライスやドレスをして得られる研磨パッドにおいて、終点検出窓が研磨層よりも凹んだ状態や突出した状態になったり、割れたりすることがより抑制され、平坦性をより向上することができる傾向にある。
【0052】
また、同様の観点から、貯蔵弾性率E’W90と貯蔵弾性率E’P90との差(E’P90-E’W90)は、9.5×107Pa以下であり、好ましくは1.0×107Pa~9.0×107Paであり、より好ましくは2.0×107Pa~9.0×107Paである。差(E’P90-E’W90)が9.5×107Pa以下であることにより、スライス条件下において研磨層と終点検出窓の物性差が小さくなるため、研磨層と終点検出窓が均一にスライスされ、窓の形状が平坦となりやすくなる。そのため、スライスやドレスをして得られる研磨パッドにおいて、終点検出窓が研磨層よりも凹んだ状態や突出した状態になったり、割れたりすることがより抑制され、平坦性をより向上することができる傾向にある。
【0053】
1.2.2.ポリウレタンシート
ポリウレタンシートを構成するポリウレタン樹脂Pとしては、特に制限されないが、例えば、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、及びポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
このようなポリウレタン樹脂Pとしては、ポリイソシアネートとポリオールにより合成することができ、特には、ウレタンプレポリマーと硬化剤との反応物が好ましい。ここで、ウレタンプレポリマーは、ポリイソシアネートとポリオールにより合成することができる。以下、ポリウレタン樹脂Pを構成するポリイソシアネート、ポリオール、及び硬化剤について記載する。
【0055】
1.2.2.1.ポリイソシアネートに由来する構成単位
ポリイソシアネートに由来する構成単位は、特に限定されないが、例えば、脂環族イソシアネートに由来する構成単位、脂肪族イソシアネートに由来する構成単位、及び芳香族イソシアネートに由来する構成単位が挙げられる。このなかでも、芳香族イソシアネートが好ましく、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)がより好ましい。
【0056】
脂環族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、及び芳香族イソシアネートとしては、上記終点検出窓において例示したものと同様ものを例示することができる。
【0057】
1.2.2.2.ポリオールに由来する構成単位
ポリオールに由来する構成単位としては、特に限定されないが、例えば、分子量300未満の低分子ポリオールと、分子量300以上の高分子ポリオールが挙げられる。このなかでも、少なくとも低分子ポリオールを用いることが好ましく、低分子ポリオールと高分子ポリオールとを併用すること好ましい。
【0058】
低分子ポリオール及び高分子ポリオールとしては、上記終点検出窓において例示したものと同様ものを例示することができる。このなかでも、低分子ポリオールとしては、水酸基を2つ有する低分子ポリオールが好ましく、ジエチレングリコールがより好ましい。また、高分子ポリオールとしては、ポリエーテルポリオールが好ましく、ポリテトラメチレンエーテルグリコールがより好ましい。
【0059】
1.2.2.3.硬化剤
硬化剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリアミンとポリオールが挙げられる。硬化剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0060】
ポリアミンとしては、特に限定されないが、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族ポリアミン;、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミンなどの脂環族ポリアミン;3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)、4-メチル-2,6-ビス(メチルチオ)-1,3-ベンゼンジアミン、2-メチル-4,6-ビス(メチルチオ)-1,3-ベンゼンジアミン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパンなどの芳香族ポリアミンなどが挙げられる。
【0061】
このなかでも、芳香族ポリアミンが好ましく、3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)を用いることがより好ましい。
【0062】
ポリオールとしては、上記終点検出窓において例示したポリオールと同様ものを例示することができる。このなかでも、高分子ポリオールが好ましく、ポリエーテルポリオールがより好ましく、ポリプロピレングリコールがさらに好ましい。
【0063】
1.2.2.4.中空微粒子
上記ポリウレタンシートは、ポリウレタン樹脂Pと、該ポリウレタン樹脂P中に分散した中空微粒子とを含む発泡ポリウレタンシートであることが好ましい。このようなポリウレタンシートは中空微粒子に由来する独立気泡を有するものとなり、上記動的粘弾性特性やD硬度を上記範囲内に調整しやすい傾向にある。
【0064】
中空微粒子は、市販のものを使用してもよく、常法により合成することにより得られたものを使用してもよい。中空微粒子の外殻の材質としては、特に制限されないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシエーテルアクリライト、マレイン酸共重合体、ポリエチレンオキシド、ポリウレタン、アクリロニトリル-塩化ビニリデン共重合体、アクリロニトリル-メチルメタクリレート共重合体、塩化ビニル-エチレン共重合体などが挙げられる。
【0065】
中空微粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状及び略球状であってもよい。また、中空微粒子が膨張性バルーンである場合、未膨張の状態で用いても膨張した状態で用いてもよい。
【0066】
ポリウレタンシートに含まれる中空微粒子の平均粒径は、好ましくは5~200μmであり、より好ましくは5~80μmであり、さらに好ましくは5~50μmであり、特に好ましくは5~35μmである。平均粒径が上記範囲内であることにより、動的粘弾性特性やD硬度を上記範囲内に調整しやすい傾向にある。なお、平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えばスペクトリス(株)製、マスターサイザ-2000)等により測定することができる。
【0067】
1.3.その他
本実施形態の研磨パッドは、研磨層の研磨面とは反対側にクッション層を有していてもよく、研磨層とクッション層との間や、クッション層の研磨層側ではない面(研磨機に貼り合わせる面)に、接着層を有していてもよい。この場合、クッション層と接着層には、研磨層の終点検出窓が位置する場所と同様の場所に開口を有するものとする。
【0068】
2.研磨パッドの製造方法
本実施形態の研磨パッドの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、終点検出窓となる窓用部材を固定した金型に、研磨層を構成する樹脂組成物を充填し硬化させることで、窓用部材が埋没した樹脂ブロックを得る工程と、得られた樹脂ブロックをスライスすることで、開口に終点検出窓を有するポリウレタンシートを得る工程と、を有し、必要に応じて、得られたポリウレタンシートの研磨面をドレス処理してもよい。
【0069】
なお、スライスする際の温度は、好ましくは70℃~100℃である。また、ドレス処理における温度は、好ましくは20℃~30℃である。これにより、平坦性がより向上する傾向にある。
【0070】
3.研磨加工物の製造方法
本実施形態の研磨加工物の製造方法は、研磨スラリーの存在下、上記研磨パッドを用いて、被研磨物を研磨し研磨加工物を得る研磨工程と、該研磨中に光学式終点検出方式で終点検出を行う終点検出工程と、を有する。
【0071】
3.1.研磨工程
研磨工程は、一次ラッピング研磨(粗ラッピング)であってもよく、二次ラッピング(仕上げラッピング)であってもよく、一次ポリッシング(粗ポリッシング)であってもよく、二次ポリッシング(仕上げポリッシング)であってもよく、これら研磨を兼ねるものであってもよい。なお、ここで、「ラッピング」とは粗砥粒を用いて比較的に高いレートで研磨することを言い、「ポリッシング」とは微細砥粒を用いて比較的に低いレートで表面品位を高くするために研磨することを言う。
【0072】
このなかでも、本実施形態の研磨パッドは化学機械研磨(CMP)に用いられることが好ましい。以下、化学機械研磨を例に本実施形態の研磨物の製造方法を説明するが、本実施形態の研磨物の製造方法は以下に限定されない。
【0073】
被研磨物としては、特に限定されないが、例えば、半導体デバイス、電子部品等の材料、特に、Si基板(シリコンウエハ)、SiC(炭化珪素)基板、GaAs(ガリウム砒素)基板、ガラス、ハードディスクやLCD(液晶ディスプレイ)用基板等の薄型基板(被研磨物)が挙げられる。特に、W(タングステン)やCu(銅)などの金属配線を有する半導体デバイスが挙げられる。
【0074】
研磨方法としては、従来公知の方法を用いることができ、特に限定されない。例えば、まず、研磨パッドと対向するように配置された保持定盤に保持させた被研磨物を研磨面側へ押し付けると共に、外部からスラリーを供給しながら、研磨パッド及び/又は保持定盤を回転させる。研磨パッドと保持定盤は、互いに異なる回転速度で同方向に回転しても、異方向に回転してもよい。また、被研磨物は、研磨加工中に、枠部の内側で移動(自転)しながら研磨加工されてもよい。
【0075】
スラリーは、被研磨物や研磨条件等に応じて、水、過酸化水素に代表される酸化剤などの化学成分、添加剤、砥粒(研磨粒子;例えば、SiC、SiO2、Al23、CeO2)等を含んでいてもよい。
【0076】
3.2.終点検出工程
本実施形態の研磨加工物の製造方法は、上記研磨工程において、光学式終点検出方式で終点検出を行う終点検出工程を有する。光学式終点検出方式による終点検出方法としては、具体的には従来公知の方法を用いることができる。
【0077】
図4に、光学式終点検出方式の終点検出方法の模式図を示す。この模式図は、トップリング21で保持したウエハWをテーブル22上に貼られた研磨パッド10上にスラリー24を流しながら押し付けてウエハW表面の凹凸膜を削り平坦化する化学機械研磨プロセスを示す。研磨装置20は平坦化と同時に所定の膜厚を終点検出して精度良くプロセスを終了させるため、膜厚をモニタする膜厚検出センサ23をテーブル22に搭載している。膜厚検出センサ23は、例えば、ウエハWの研磨面に光を照射し、その反射光の分光強度特性を測定・解析することにより、研磨終点を検出することができる。
【0078】
より具体的には、膜厚検出センサ23は終点検出窓12を介して、ウエハW表面に光を入射し、ウエハW上の膜(ウェハ表面)で反射した光と、ウエハW上の膜とウエハの基板との界面において反射した光との位相差により生じる、反射強度の強弱を検出することで、膜厚変化を検出することができる。
【実施例0079】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、「部」は質量部を意味するものとする。
【0080】
〔製造例1:終点検出窓1〕
4,4’メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)100部と、数平均分子量650のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG)78.6部と、及びグリセリン14.8部と、を反応させて、終点検出窓1となる透明な部材を得た。
【0081】
〔製造例2:終点検出窓2〕
4,4’メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)100部と、数平均分子量650のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG)78.6部と、及びグリセリン7.5部と、エチレングリコール7.5部と、を反応させて、終点検出窓2となる透明な部材を得た。
【0082】
〔製造例3:終点検出窓3〕
4,4’メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)100部と、数平均分子量650のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG)78.6部と、及びグリセリン4.5部と、エチレングリコール10.5部と、を反応させて、終点検出窓3となる透明な部材を得た。
【0083】
〔製造例4:終点検出窓4〕
4,4’メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)100部と、数平均分子量1000のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG)103.6部と、及びグリセリン15.9部と、を反応させて、終点検出窓4となる透明な部材を得た。
【0084】
〔実施例1〕
2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、数平均分子量650のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG)、数平均分子量1000のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG)及びジエチレングリコール(DEG)を反応させてなるNCO当量455のウレタンプレポリマー100部に、殻部分がアクリロニトリル-塩化ビニリデン共重合体からなり、未膨張の中空微粒子(平均粒径:8.5μm)2.7部を添加混合し、ウレタンプレポリマー混合液を得た。得られたウレタンプレポリマー混合液を第1液タンクに仕込み、60℃で保温した。また、第1液タンクとは別に、硬化剤として3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(メチレンビス-o-クロロアニリン)(MOCA)25.8部を第2液タンクに入れ、120℃で加熱溶融させて混合し、更に減圧脱泡して硬化剤溶融液を得た。
【0085】
次に、第1液タンク、第2液タンクのそれぞれの液体を、注入口を2つ備えた混合機のそれぞれの注入口から注入し、攪拌混合して混合液を得た。
【0086】
そして、上記のようにして得られた終点検出窓1を予め設置した型枠に、得られた混合液を注型して、30分間、80℃にて一次硬化させた。形成されたブロック状の成形物を型枠から抜き出し、オーブンにて120℃で4時間二次硬化し、ウレタン樹脂ブロックを得た。得られたウレタン樹脂ブロックを25℃まで放冷した。
【0087】
その後、再度オーブンにて120℃で5時間加熱してから、スライス処理を施し、スライスした面に対して、必要に応じて研削(バフ)処理を施し、発泡ポリウレタンシートを得た。得られたポリウレタンシートの裏面に両面テープを貼り付け、クッション層を貼り合わせて、さらにクッション層表面に両面テープを貼り付けることで研磨パッドを得た。
【0088】
なお、ドレス処理後の状態の終点検出窓周辺の断面を評価する際に、上記のようにして得られた研磨パッドに対して下記の条件でドレス処理を行った。
(ドレス条件)
使用研磨機:Speedfam社製、商品名「FAM-12BS」
定盤回転数(研磨パッドの回転数):50rpm
流量:100ml/min (20℃の純水を研磨パッドの回転中心から滴下した。)
ドレッサー:3M社製ダイヤモンドドレッサー、型番「A188」
ドレッサー回転数:100rpm
ドレス圧力:0.115kg/cm2
ドレッサーの回転方向:研磨パッドと同一方向に回転
試験時間:60分
【0089】
〔比較例1〕
製造例2の終点検出窓2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、研磨パッドを得た。
【0090】
〔比較例2〕
製造例3の終点検出窓3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、研磨パッドを得た。
【0091】
〔実施例2〕
製造例4の終点検出窓4を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、研磨パッドを得た。
【0092】
〔動的粘弾性測定〕
下記条件に基づき、温度23℃(±2℃)、相対湿度50%(±5%)の恒温恒湿槽中でポリウレタンシートを40時間保持した乾燥状態のポリウレタンシートをサンプルとして用い、通常の大気雰囲気下(乾燥状態)で動的粘弾性測定を行った。なお、終点検出窓のサンプルサイズは、縦5cm×横0.5cm×厚み0.125cmとし、研磨層のサンプルサイズは、縦5cm×横0.5cm×厚み0.13cmとした。
(測定条件)
測定装置 :RSA III(TAインスツルメンツ社製)
試験長 :1cm
試験モード :引張
周波数 :1.0Hz
温度範囲 :10~100℃
昇温速度 :3.0℃/min
歪範囲 :0.10%
初荷重 :300g
測定間隔 :1.5point/℃
【0093】
〔D硬度〕
D硬度の測定はJIS K6253に準じて行った。測定に際して、テクロック社製D硬度計を用い、試料は、比較例及び実施例に記載の終点検出窓(厚さ約0.125cm(1.25mm))を4枚重ねとし、少なくとも総厚さ0.45cm(4.5mm)以上になるように設定した。なお、試料は20℃又は80℃の恒温恒湿槽中で30分間静置したものを用いた。
【0094】
〔断面評価〕
上記のようにして得られた各パッドについて、スライス後であってドレス前の状態の終点検出窓周辺(図2における破線Sで囲った部分)と(評価1)、ドレス後の状態の終点検出窓周辺(図2における破線Sで囲った部分)の断面(評価2)を、レーザーマイクロスコープ(VK-X1000、KEYENCE社製)で終点検出窓の直径部分の表面に対して約14mm×1mmの範囲で200倍に拡大し連結モードにより観察し、得られたレーザー画像をもとに高さ情報のプロファイル計測を行った。
【0095】
その結果を図5A~D,図6A~Dに示す。なお、図5A~D,図6A~Dでは、2点の終点検出窓の断面測定結果であって、それぞれの終点検出窓について、スライス方向とスライス方向と直交する方向で断面測定を行った結果を示している。
【0096】
評価1では、終点検出窓が研磨面から±50μm以内であれば○とし、それ以外を×とした。また、評価2では、断面画像が平坦(端から中央にかけて高さが同等のもの)であれば○とし、凸状(端から中央にかけて高さが高くなっているもの)であれば×とした。
【0097】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の研磨パッドは、半導体ウエハなどを研磨するのに好適に用いられるパッドとして、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0099】
10…研磨パッド、11…研磨層、11a…研磨面、12…終点検出窓、13…クッション層、14,15…接着層、16…溝、20…研磨装置、21…トップリング、22…テーブル、23…膜厚検出センサ、24…スラリー、W…ウエハ
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図6D