(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155535
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】サイクロン集塵装置
(51)【国際特許分類】
B04C 3/00 20060101AFI20221005BHJP
B04C 3/06 20060101ALI20221005BHJP
B01D 45/12 20060101ALI20221005BHJP
F27D 17/00 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
B04C3/00 A
B04C3/06
B01D45/12
F27D17/00 105A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049827
(22)【出願日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2021058066
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】川島 知之
(72)【発明者】
【氏名】小林 祥大
(72)【発明者】
【氏名】小澤 典子
【テーマコード(参考)】
4D031
4D053
4K056
【Fターム(参考)】
4D031AC01
4D031AC02
4D031BA03
4D031BA06
4D031EA03
4D053AA03
4D053AB01
4D053BA01
4D053BB04
4D053BC03
4D053BD02
4D053CB14
4D053CD01
4D053DA10
4K056AA01
4K056AA05
4K056CA02
4K056DB13
4K056FA08
(57)【要約】
【課題】微小なダストの回収率を向上させる。
【解決手段】サイクロン集塵装置1は、ダストDTを含む被処理ガスTGからダストDTを集塵するものである。サイクロン集塵装置1は、横方向を軸として被処理ガスTGを旋回させ、被処理ガスTGからダストDTを分離するダスト分離部3と、ダスト分離部3の出口側に連結され、ダスト分離部3による被処理ガスTGの旋回によって分離したダストDTを回収するダスト回収部4と、入口側がダスト回収部4内に設置され、ダストDTを分離した被処理ガスTGを回収するガス回収部5と、を備える。ダスト回収部4は、被処理ガスTGの入口側からガス回収部5の入口側に向かって、流路が小さくなるように絞られた形状を有する。ダスト分離部3は、被処理ガスTGの旋回量ηが75[deg/m]以上になるように被処理ガスTGを旋回させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理ガスからダストを集塵するサイクロン集塵装置であって、
横方向を旋回軸として前記被処理ガスを旋回させ、前記被処理ガスからダストを分離するダスト分離部と、
前記ダスト分離部の出口側に連結され、前記ダスト分離部による前記被処理ガスの旋回によって分離した前記ダストを回収するダスト回収部と、
入口側が前記ダスト回収部内に設置され、前記ダストを分離した前記被処理ガスを回収するガス回収部と、
を備え、
前記ダスト回収部は、前記被処理ガスの入口側から前記旋回軸の方向に沿って、流路が小さくなるように絞られた形状を有し、
前記ダスト分離部は、前記被処理ガスの旋回量が75[deg/m]以上になるように前記被処理ガスを旋回させるサイクロン集塵装置。
【請求項2】
前記ダスト回収部は、テーパー角度θ[deg]のテーパー形状を有し、
前記ダスト分離部は、前記被処理ガスの旋回量をη[deg/m]としたとき、η≧15×θ+45になるように前記被処理ガスを旋回させる請求項1に記載のサイクロン集塵装置。
【請求項3】
前記ダスト回収部は、テーパー角度θ[deg]のテーパー形状を有し、
前記ダスト分離部は、前記被処理ガスの旋回量をη[deg/m]としたとき、下記式を満たすように前記被処理ガスを旋回させる請求項1に記載のサイクロン集塵装置。
【数1】
(θ>0[deg])
【請求項4】
前記ダスト分離部は、横方向へ延びるガス流路を有する本体部と、前記本体部の前記ガス流路内に設置され、前記被処理ガスを前記本体部の内壁に沿って旋回させながら横方向へ流動させる整流部材と、を備えた請求項1乃至3のいずれかに記載のサイクロン集塵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理ガスに含まれるダストを集塵するサイクロン集塵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、高炉などの竪型の鉄溶融炉において、鉄源とコークス等の熱源がそれぞれ交互に層状に投入された状態で、炉下部に設置された羽口から内部に高温の空気が送風される。羽口より送風された空気は、コークス中の炭素と反応し、燃焼熱で鉄源を溶融しながら炉内を上昇する。炉頂付近に到達したガスは、コークスや炉内耐火物から生じた大小様々な固体粒子等からなるダストを含んだ状態で排気される。高炉などからの排気から、固体粒子からなるダストを分離して集塵する必要がある。
【0003】
従来から、被処理ガスからの固体粒子の分離には、様々な手法が用いられており、その1つとしてサイクロン集塵装置が知られている。サイクロン集塵装置は、被処理ガスを旋回させることで、遠心力によって被処理ガス中の固体粒子を分離する。サイクロン集塵装置の種類としては、縦型と横型のものが知られている。このうち、被処理ガスの性状や設置環境などに応じて圧力損失が少ない横型サイクロン集塵装置を用いる場合がある(例えば特許文献1、2参照)。
【0004】
特許文献1には、被処理ガスを内壁部に沿って内部空間の周方向に旋回しつつ軸方向に移動させてダストを分離する横型サイクロン集塵装置が開示されている。被処理ガスが旋回したとき、被処理ガス中の固体粒子が遠心力により内壁部と衝突する。この際、固体粒子が有していた内壁部に沿って旋回する運動成分(旋回運動成分)と軸方向に移動する運動成分(軸方向運動成分)が消失し、被処理ガスから固体粒子が分離される。
【0005】
特許文献2には、内部空間の径方向内方に向かって内壁部から突出し、内壁部の周方向に沿って延在するように形成された突出部を備える横型のサイクロン集塵装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-6315号公報
【特許文献2】特開2011-218250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、2のサイクロン集塵装置の場合、粒子径(質量)の小さいダストを被処理ガスから分離するのが難しくなる。このため、サイクロン集塵装置における微小なダストの回収率が低くなるという課題がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、微小なダストの回収率を向上させることができるサイクロン集塵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1] 被処理ガスからダストを集塵するサイクロン集塵装置であって、
横方向を旋回軸として前記被処理ガスを旋回させ、前記被処理ガスからダストを分離するダスト分離部と、
前記ダスト分離部の出口側に連結され、前記ダスト分離部による前記被処理ガスの旋回によって分離した前記ダストを回収するダスト回収部と、
入口側が前記ダスト回収部内に設置され、前記ダストを分離した前記被処理ガスを回収するガス回収部と、
を備え、
前記ダスト回収部は、前記被処理ガスの入口側から前記旋回軸方向に沿って、流路が小さくなるように絞られた形状を有し、
前記ダスト分離部は、前記被処理ガスの旋回量が75[deg/m]以上になるように前記被処理ガスを旋回させるサイクロン集塵装置。
[2] 前記ダスト回収部は、テーパー角度θ[deg]のテーパー形状を有し、
前記ダスト分離部は、前記被処理ガスの旋回量をη[deg/m]としたとき、η≧15×θ+45になるように前記被処理ガスを旋回させる[1]に記載のサイクロン集塵装置。
[3] 前記ダスト回収部は、テーパー角度θ[deg]のテーパー形状を有し、
前記ダスト分離部は、前記被処理ガスの旋回量をη[deg/m]としたとき、下記式を満たすように前記被処理ガスを旋回させる請求項1に記載のサイクロン集塵装置。
【数1】
(θ>0[deg])
[4] 前記ダスト分離部は、横方向へ延びるガス流路を有する本体部と、前記本体部の前記ガス流路内に設置され、前記被処理ガスを前記本体部の内壁に沿って旋回させながら横方向へ流動させる整流部材と、を備えた[1]乃至[3]のいずれかに記載のサイクロン集塵装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るサイクロン集塵装置によれば、ダスト回収部が、被処理ガスの入口側から旋回軸方向に沿って、流路が小さくなるように絞られた形状を有し、ダスト分離部が、旋回量ηを75[deg/m]以上にすることにより、微小なダストがダスト回収部に滞在するのを抑制し、微小なダストの回収率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のサイクロン集塵装置の好ましい実施形態を示す模式図である。
【
図2】
図1のサイクロン集塵装置におけるダスト分離部の一例を示す模式図である。
【
図3】ダスト回収部の旋回空間部の一部を拡大した模式図である。
【
図4】
図1に示したサイクロン集塵装置において旋回量η[deg/m]と圧力損失との関係を示すグラフである。
【
図5】ダスト回収部に傾斜を設けずテーパー角度θ=0[deg]での旋回量とダストの回収割合との関係を示すグラフである。
【
図6】旋回量η=60[deg/m]のときのテーパー角度θに対する滞在(旋回)するダスト及び捕捉されるダストの割合を示すグラフである。
【
図7】旋回量η=75[deg/m]のときのテーパー角度θに対する滞在(旋回)するダスト及び捕捉されるダストの割合を示すグラフである。
【
図8】旋回量η=90[deg/m]のときのテーパー角度θに対する滞在(旋回)するダスト及び捕捉されるダストの割合を示すグラフである。
【
図9】旋回量η=120[deg/m]のときのテーパー角度θに対する滞在(旋回)するダスト及び捕捉されるダストの割合を示すグラフである。
【
図10】旋回量η=150[deg/m]のときのテーパー角度θに対する滞在(旋回)するダスト及び捕捉されるダストの割合を示すグラフである。
【
図11】テーパー角度θ=0[deg]の場合に対するテーパー角度θ=1[deg]の場合のダストDTの回収量の比を示すグラフである。
【
図12】旋回量ηと、各旋回量ηにおいて回収量が最大になる最大テーパー角度θmaxとの関係を示すグラフである。
【
図13】旋回量ηと、各旋回量ηにおいて回収量が最大になる最大テーパー角度θmaxとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明のサイクロン集塵装置の好ましい実施形態を示す模式図である。
図1のサイクロン集塵装置1は、横方向を軸にした旋回流を発生させ、被処理ガスTGからダストDTを集塵するいわゆる横型サイクロン集塵装置である。サイクロン集塵装置1は、流入管2から流入された被処理ガスTGからダストDTを分離させるダスト分離部3と、ダスト分離部3により分離されたダストDTを回収するダスト回収部4と、ダストDTが分離された被処理ガスTGを回収するガス回収部5とを備える。なお、本実施形態においては、流入管2が例えば高炉もしくは転炉等に接続されており、被処理ガスTGが高炉もしくは転炉等(以下、高炉等とも称する)から排出された排気ガスである場合について例示する。
【0013】
図2は、
図1のサイクロン集塵装置1におけるダスト分離部3の一例を示す模式図である。
図2のダスト分離部3は、横方向を軸として被処理ガスTGを旋回させ、被処理ガスTGからダストDTを分離する。ダスト分離部3は、横方向に沿って延びるガス流路を有する本体部3Aと、本体部3Aのガス流路内に設置され、被処理ガスTGを本体部3Aの内壁に沿って旋回させつつ軸方向に移動させる整流部材3Bとを備える。
【0014】
本体部3Aは、ガス流路となる中空部を有する筒状体である。本体部3Aの形状としては、例えば、円筒形状、円錐台状とすることができる。
図1の本体部3Aは、出口径が入口径より大きい円錐台状になっており、ガス流路は上流側から下流側に向かって径が拡がる拡大流路になっている。整流部材3Bは、本体部3Aの中空部内に配置されている。整流部材3Bは、本体部3Aの入口側から流入した被処理ガスTGを整流して旋回流にする整流板3Cを有する。整流板3Cは、所望の方向の旋回流を発生させるためにらせん状に形成されている。整流板3Cは、本実施形態において、被処理ガスTGの進行方向において時計回りとなるらせん状(下端側が上端側よりも被処理ガスTGの進行方向に位置する)に形成されている。整流板3Cは、旋回流の外周側、すなわち本体部3Aの内壁面に設けられている。したがって、整流部材3Bは、本体部3A内に流入する被処理ガスTGを旋回軸AL周りに旋回する旋回流にする。この際、整流板3Cのピッチ又は傾斜角度等によって被処理ガスTGの旋回量が決まる。被処理ガスTGの旋回量とは、旋回軸AL方向から見たときの進行方向の単位長さたりの旋回軸AL回りの旋回角度[deg/m]を意味する。
【0015】
特に、本体部3Aが上流側から下流側に向かって径が拡がる拡大流路を有する場合、被処理ガスTGは、下流側(出口側)に向かうにつれて旋回径が広がる拡大旋回流になる。すると、被処理ガスTGの旋回流は、下流に向かうにつれて整流板3Cから剥がれやすくなり、本体部3Aの内壁に沿って旋回させやすくすることができる。なお、
図1において本体部3Aが拡大管状流路を形成している場合について例示しているが、これに限定されず、要求される性能に応じて、入口径と出口径が同一の円筒形状でもよいし、入口側から出口側へ向かって径が絞られた形状であっても、本体部3Aの内壁に沿って旋回流を発生させることができる。
【0016】
図1のダスト回収部4は、ダスト分離部3の出口側に連結され、ダスト分離部3における被処理ガスTGの旋回によって分離されたダストDTを回収する。ダスト回収部4は、管状、筒状に形成されるもので、例えば一端側がダスト分離部3の出口径と同一の径を有する有底円筒形状に形成されている。ダスト回収部4は、ダスト分離部3の出口とガス回収部5の入口との間に設けられた旋回空間部4Aと、ダスト回収部4の底部に設けられ、ダストDTを回収するダストシューター4Bとを有する。旋回空間部4Aには旋回流になった被処理ガスTGが流入し、ダストDTが旋回空間部4Aの内壁に衝突する領域になっている。そして、ダストシューター4Bは、旋回流から離脱したダストDTを回収する。
【0017】
図3はダスト回収部4の旋回空間部4Aの一部(ダスト分離部3との接続側の上方)を拡大した模式図である。
図1及び
図3に示すように、ダスト回収部4の旋回空間部4Aは、被処理ガスTGの入口側からガス回収部5の入口側に向かって、流路が小さくなるように絞られた形状を有している。すると、被処理ガスTGは、ダスト回収部4によって旋回しながらガス回収部5側へ流れる気流になる。特に、ダスト回収部4の旋回空間部4Aは、被処理ガスTGの進行方向に対して、鋭角となる所定のテーパー角度θを有するテーパー形状に形成されていることが好ましい。
【0018】
図1のガス回収部5は、ダストDTを分離した被処理ガスTGを回収する配管であり、図示しないガス利用側配管に一端側が接続されている。ガス回収部5は、例えばダスト分離部3の出口径及びダスト回収部4よりも小さい径とすることができ、入口側(他端側)がダスト回収部4内に挿入されている。この際、ガス回収部5は、例えばダスト分離部3の中心軸とダスト回収部4の中心軸とガス回収部5の中心軸とが一致するように配置されるとよく、ガス回収部5よりも下側にダストシューター4Bが位置するようにダスト回収部4内に入口側(他端側)が挿入される。
【0019】
図1及び
図2を参照して、サイクロン集塵装置1の動作例について説明する。高炉もしくは転炉等から排出された被処理ガスTGが流入管2を介してダスト分離部3の入口側から流入する。すると、被処理ガスTGは、ダスト分離部3の整流板3Cによって拡大旋回流になり、ダスト回収部4へ流入する。被処理ガスTGに含まれるダストDTは、旋回流によってダスト分離部3における本体部3Aの内壁、又はダスト回収部4の内壁と衝突して運動エネルギーが失われる。すると、ダストDTは、被処理ガスTGの旋回流から離脱してダストシューター4Bに回収される。一方、ダストDTが分離された被処理ガスTGは、ガス回収部5から回収され、図示しない利用側配管へ流入する。
【0020】
ここで、
図1のサイクロン集塵装置1で回収するダストDTには、大小様々な粒径の固体粒子が含まれる。サイクロン集塵装置1での固体粒子の分離捕集限界粒子径dsは下記の式(2)によって求めることができる。
【0021】
【数2】
d
s:分離捕集限界粒子径[m],
μ:流体粘性[Pa・s],
r
1:回転内径[m],
r
2:回転外径[m],
N:回転数[-],
v
i:速度[m/s],
ρ
p:粒子密度[kg/m
3],
ρ
a:流体密度[kg/m
3]
【0022】
式(2)によれば、旋回する運動成分(旋回運動成分)を増加させることによってダストの回収量を増加させることができる。微小な固体粒子を回収するために分離捕集粒子径を小さくするには、旋回量を大きくして、ダストDTの回収量を増加させることが考えられる。なお、微小なダストDTとは、密度が1000kg/m
3の粒子で粒子径が100μm以下の固体粒子を意味する。また、以下、
図4~
図12に示すグラフは、微小なダストDTが、粒子径75μm、レイノルズ数Re=約50000、粒子レイノルズ数=100前後である場合のシミュレーション結果に基づくものである。
【0023】
しかしながら、旋回量が増加していくにつれて、圧力損失が大きくなっていく。
図4は
図1に示したサイクロン集塵装置1において旋回量η[deg/m]と圧力損失との関係を示すグラフである。
図4に示すように、旋回量の増加に伴い圧力損失も大きく増加する。前述のとおり、縦型のサイクロン集塵装置に対する横型のサイクロン集塵装置の利点として、圧力損失が小さいことが挙げられる。旋回量を増加させてしまうと圧力損失は大きくなってしまい、横型のサイクロン集塵装置の利点が十分活かすことができない。よって、圧力損失の観点から、旋回量ηは、150[deg/m]以下であることが好ましく、圧力損失を5000[Pa]以下に抑えるのであれば、140[deg/m]以下にすることがさらに好ましい。
【0024】
さらに、上述した圧力損失を考慮した上で被処理ガスTGの旋回量を大きくしても、微小なダストDTの集塵能力が高くならない。
図5は、ダスト回収部4に傾斜を設けずテーパー角度θ=0[deg]での旋回量とダストDTの回収割合との関係を示すグラフである。なお、
図5において、「回収」は、ダストシューター4Bに回収された微小なダストの割合を意味し、「滞在」は、ダスト回収部4内を旋回し続けて滞在する微小なダストの割合を意味し、「非回収」はガス回収部5へ流出したダストの割合を意味する。
【0025】
図5に示すように、ガス回収部5へ流出する非回収の微小なダストDTの割合は旋回量が大きいほど減る。しかしながら、旋回量が大きいほど微小なダスト回収部4内で旋回し続けて滞在する微小なダストDTの量も増え、捕捉される微小なダストDTの量が減少してしまう。旋回し続ける微小なダストDTは、ダスト回収部4内に滞在していることになる。このため、ダスト回収部4内の清掃頻度が多くなり運用コストが掛かるとともに、滞在している微小なダストDTがガス回収部5内に流入してしまうおそれもある。
【0026】
そこで、ダスト回収部4内に滞在し続ける微小なダストDTの回収率を高めるべく、
図1及び
図3に示すように、ダスト回収部4の旋回空間部4Aは、被処理ガスTGの入口からガス回収部5の入口に向かって、流路が小さくなるように絞られた形状を有している。被処理ガスTGは、ガス回収部4によって旋回しながらガス回収部5側へ流れる気流になる。すると、被処理ガスTGに含まれる微小なダストDTも滞在し続けずに、進行方向への運動量を保って横向きの流れに従い移動し、ダストシューター4Bに回収されやすくなる。これにより、ダスト回収部4内に滞在し続ける微小なダストDTが発生するのを抑制し、回収率を向上させることができる。特に、ダスト回収部4は、被処理ガスの入口からガス回収部5の入口に向かって流路が小さくなるように絞られた形状を有していればよいが、当該流路が被処理ガスTGの進行方向に対して所定のテーパー角度θを有するテーパー形状に形成されていることが好ましい。
【0027】
図6~
図10は、テーパー角度θに対する滞在するダスト及び回収されるダストの割合を示すグラフである。なお、
図6は旋回量η=60[deg/m]、
図7は旋回量η=75[deg/m]、
図8は旋回量η=90[deg/m]、
図9は旋回量η=120[deg/m]、
図10は旋回量η=150[deg/m]の場合をそれぞれ示している。
図6~
図10に示すように、テーパー角度を0°から徐々に大きくするに従い、回収される微小なダストDTの割合は増加していくが、一定の角度以上になるとほぼ一定になるような特性になっている。また、旋回量ηが大きいほど回収されるダストの割合が一定になるテーパー角度θは大きくなる。
【0028】
図11は、テーパー角度θ=0[deg]の場合に対するテーパー角度θ=1[deg]の場合のダストDTの回収量の比を示すグラフである。
図11に示すように、ダスト回収部4の旋回空間部4Aがテーパー角度θ=1[deg]のテーパー形状にしただけで、回収率が改善していることがわかる。また、
図11のように、旋回量ηが75[deg/m]未満であると、テーパー形状にしたことによる微小なダストDTの回収効果が薄れている。このため、旋回量ηが75[deg/m]以上であることが必要になる。
【0029】
図12は、
図6~10において示した旋回量ηと、各旋回量ηにおいてダストDTの回収量が最大になる最大テーパー角度θmaxとの関係を示す。
図12に示すように、旋回量η=75~120[deg/m]では、旋回量ηと回収量が最大になる最大テーパー角度θmaxとの間には比例関係が成立する。テーパー角度θは、旋回量ηに応じて最大テーパー角度θmaxになるように設定することが好ましい。但し、ダスト回収部4を作製する際、製造誤差等によりテーパー角度θが最大テーパー角度θmaxからずれる場合がある。この場合であっても、旋回量η≧15×θ+45(θ>0[deg])の範囲内であれば、圧力損失を抑えつつ高い回収率を維持することができる。一方、旋回量ηが大きくなりすぎると、回収されずに旋回し続けて滞在するダストDTが増える。このため、ダストDTの滞在量を低減させることを考慮すると、旋回量η≦15×θ+90(θ>0[deg])の範囲に抑えることが好ましい。例えば、旋回量η=120[deg/m]のとき、2[deg]≦テーパー角度θであることが好ましく、またテーパー角度θ≦5[deg]であることが好ましい。
【0030】
また、ダスト回収部4を作製する際、製造誤差等によりテーパー角度θが最大テーパー角度θmaxからずれる場合がある。
図13は、
図6~10における旋回量ηと、各旋回量ηにおいて回収量が最大になる最大テーパー角度θmaxとの関係を示す。
図13に示すように、旋回量η=75~150[deg/m]では、旋回量ηの増加に伴って、回収量が最大になる最大テーパー角度θmaxも増加する傾向がある。
【0031】
この場合であっても、下記の式(1)を満たす範囲内、すなわち
図13の実線で示される範囲であれば、被処理ガスTGの圧力損失を抑えつつ、高いダストDTの回収率を維持することができる。一方、旋回量ηが大きくなりすぎると、回収されずに旋回し続けて滞在するダストDTが増える。このため、ダストDTの滞在量を低減させることを考慮すると、旋回量ηを下記の式(1)の範囲に抑えることが好ましい。例えば、旋回量η=120[deg/m]のとき、約2[deg]≦テーパー角度θであることが好ましく、またテーパー角度θ≦10[deg]であることが好ましい。
【0032】
【0033】
上記実施の形態によれば、ダスト回収部4が、被処理ガスTGの入口側からガス回収部5の入口側に向かって、流路が小さくなるように絞られた形状を有し、旋回量η≧75[deg/m]にすることにより、ダスト回収部4内に滞在する微小なダストDTの量を低減して回収率を向上させることができる。このとき、ダスト回収部4が、テーパー角度θ[deg]のテーパー形状を有し、旋回量η≧15×θ+45又は、上記式(1)を満たすように被処理ガスTGを旋回させるものであるとき、さらに回収率を向上させることができる。
【0034】
本発明の実施の形態は、上記実施形態に限定されず、種々の変更を行うことができる。本実施形態においては、被処理ガスTGが高炉もしくは転炉等からの排気ガスである場合について例示しているが、処理対象の被処理ガスTGに含まれるダストDTを分離するものであればその用途は問わない。また、
図2のダスト分離部3が本体部3A内の中心に整流板3Cを有する整流部材3Bを備えた場合について例示しているが、旋回流を発生させるものであればよく、整流部材3Bが例えば本体部3Aの内壁面に取り付けられた整流板からなっていてもよい。
【0035】
また、ダスト回収部4が、テーパー形状である場合について例示しているが、流路が小さくなるように絞られた形状を有していればよく、例えば底面側は傾斜しておらず上面側が傾斜している等の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 サイクロン集塵装置
2 流入管
3 ダスト分離部
3A 本体部
3B 整流部材
3C 整流板
4 ダスト回収部
4A 旋回空間部
4B ダストシューター
5 ガス回収部
DT ダスト
TG 被処理ガス
θ テーパー角度
η 旋回量