(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155544
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】調理用着色アルミニウム箔
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20221005BHJP
B05D 7/14 20060101ALI20221005BHJP
B65D 65/00 20060101ALI20221005BHJP
B65D 81/34 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
B32B15/08 F
B05D7/14 101A
B65D65/00 A
B65D81/34 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051606
(22)【出願日】2022-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2021057465
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000222141
【氏名又は名称】東洋アルミエコープロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 雅也
(72)【発明者】
【氏名】山崎 裕史
【テーマコード(参考)】
3E013
3E086
4D075
4F100
【Fターム(参考)】
3E013BA02
3E013BB11
3E013BC06
3E013BD09
3E013BE06
3E013BG11
3E086AB01
3E086BA13
3E086BB37
3E086BB41
3E086BB63
3E086CA01
3E086CA17
3E086DA08
4D075AE19
4D075BB21Z
4D075BB93Z
4D075BB95Z
4D075CA07
4D075CA18
4D075DA04
4D075DB07
4D075DC36
4D075EA37
4D075EB07
4D075EB22
4D075EB38
4D075EB39
4D075EB43
4D075EC13
4F100AA37A
4F100AB10A
4F100AB33A
4F100AJ01C
4F100AJ04C
4F100AJ11C
4F100AK01A
4F100AK25C
4F100AK50A
4F100AK51C
4F100AK52C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100CC00A
4F100CC00C
4F100EH46A
4F100EJ423
4F100GB23
4F100JJ03A
4F100JK14A
4F100JL10A
4F100JL14C
4F100JN21A
4F100JN26A
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】調理用着色アルミニウム箔において、その着色層にオーブントースターにおけるヒーターの休止から再稼働までの時間を積極的に短縮する機能を持たせて、食品の焼き上がりに要する時間を短縮すること。
【解決手段】調理用着色アルミニウム箔10は、アルミニウム箔からなる本体11の片面に、耐熱性樹脂および黒色顔料としてのカーボンブラックを含む着色層12とを備え、この着色層12の表面粗さ(Ra)は、30~65nmに構成されている。着色層12の表面粗さをこの範囲に規定すると、着色層12の本体11からの剥離を防止しつつも、着色層12の表面が構造的に粗くなり、また見かけ上の表面積が増大するため、捕捉される熱量が増加し吸熱の効率が高まる。その結果、オーブントースターの庫内の温度は降下しやすくなり、ヒーターが再稼働するまでの時間が短縮され、単位時間あたりにおけるヒーターの稼働時間を長くすることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を包み又は包装し、オーブントースター等で加熱調理するための調理用着色アルミニウム箔であって、
アルミニウム箔からなる本体と、
前記アルミニウム箔からなる本体の少なくとも片面に積層された、耐熱性樹脂および黒色顔料としてのカーボンブラックを含む着色層とを備え、
前記着色層の表面粗さ(Ra)は、30~65nmである、調理用着色アルミニウム箔。
【請求項2】
前記着色層中、
前記カーボンブラックは、15~70重量%を占める請求項1に記載の調理用着色アルミニウム箔。
【請求項3】
前記着色層中、
前記カーボンブラックの平均粒子径は、10~90nmである請求項1または2に記載の調理用着色アルミニウム箔。
【請求項4】
前記アルミニウム箔からなる本体は、一方の面がツヤ面であり、他方の面がケシ面であり、
前記着色層は、前記本体のケシ面に積層されている請求項1から3のいずれかに記載の調理用着色アルミニウム箔。
【請求項5】
前記着色層は、乾燥後の着色塗膜が0.5~5.0g/m2の塗布量である請求項1から4のいずれかに記載の調理用着色アルミニウム箔。
【請求項6】
前記食品はサツマイモである、
請求項1から5のいずれかに記載の調理用着色アルミニウム箔。
【請求項7】
前記着色層は、前記アルミニウム箔からなる本体の一方の面にのみ積層されており、
前記アルミニウム箔からなる本体の他方の面に積層された離型コート層をさらに備える、請求項1から6のいずれかに記載の調理用着色アルミニウム箔。
【請求項8】
前記離型コート層は、ワックス、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エチルセルロース樹脂、鉱物油のうちから選択される一以上からなる請求項7に記載の調理用着色アルミニウム箔。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の調理用着色アルミニウム箔からなる調理用着色アルミニウム箔製包装体。
【請求項10】
請求項1から8のいずれかに記載の調理用着色アルミニウム箔の製造方法であって、
前記本体となるアルミニウム箔を準備する工程と、
前記アルミニウム箔の少なくとも片面に、前記耐熱性樹脂および黒色顔料としてのカーボンブラックを含むインキを塗布する工程と、
前記インキが塗布されたアルミニウム箔を加熱して着色層を形成する工程と、を有し、
前記着色層を形成する工程は、
前記インキが塗布されたアルミニウム箔を第1の温度で加熱するプレヒート工程と、
次いで前記インキが塗布されたアルミニウム箔を前記第1の温度よりも高温の第2の温度で加熱する本加熱工程と、からなる、調理用着色アルミニウム箔の製造方法。
【請求項11】
前記プレヒート工程は、
加熱温度が50~100℃、加熱時間が3~9秒の条件下おこなわれ、
前記本加熱工程は、
加熱温度が180~220℃、加熱時間が0.5~5秒の条件下おこなわれる請求項10に記載の調理用着色アルミニウム箔の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品を加熱調理するための調理用着色アルミニウム箔、その調理用着色アルミニウム箔からなる包装体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サツマイモなどの食品をアルミニウム箔に包み、オーブントースターなどを用いて加熱調理することがよくおこなわれている。
その際に、特許文献1のような、食品を包むアルミニウム箔からなる本体の片面に、カーボンブラックなどの黒色顔料を含む着色層を積層してなる調理用着色アルミニウム箔を使用することも知られている。
このような調理用着色アルミニウム箔では、その着色層がオーブントースターなどの熱を吸収するため、着色されていないアルミニウム箔(プレーン箔)と比較して加熱調理の効率が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般的なオーブントースターでは、火災などを防止するために、庫内の温度が過剰に上がらないよう、サーモスタットが付属しており、庫内の温度が所定以上になると、ヒーターが休止する仕組みになっている。
ヒーターからの熱の供給が断たれることで、庫内の温度は降下し、その温度が所定以下になるとヒーターが再稼働するようになっている。食品を加熱調理する際には、このようなヒーターの稼働と休止が繰り返されることになる。
【0005】
この場合に、ヒーターが休止してから再稼働するまでの時間は、庫内の温度が低いため食品の加熱調理にあまり寄与していない。したがって、いわばロスタイムとなるため、食品の焼き上げまでに時間がかかってしまう問題がある。
【0006】
特許文献1の調理用着色アルミニウム箔では、着色層が吸熱しアルミニウム箔を介して食品に熱が伝わることで、結果的に、オーブントースターの庫内の温度は降下しやすくなり、その降下スピードが速い分、ヒーターが再稼働するまでの時間が一定程度は短縮されているといえる。
【0007】
しかしながら、特許文献1には、オーブントースターにおけるヒーターの休止から再稼働までの時間を積極的に短縮しようという着眼点は存在しなかった。すなわち、アルミニウム箔に着色層を設けることを超えて、ヒーターの休止時間を短縮しようとするような試みは、なんらなされていなかった。
【0008】
そこで本発明の解決すべき課題は、調理用着色アルミニウム箔において、その着色層の色味に由来する吸熱効果以外にも、オーブントースターにおけるヒーターの休止から再稼働までの時間を積極的に短縮する機能を持たせて、食品の焼き上がりに要する時間を短縮することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するため、発明にかかる調理用着色アルミニウム箔を、アルミニウム箔からなる本体と、前記アルミニウム箔からなる本体の少なくとも片面に積層された、耐熱性樹脂および黒色顔料としてのカーボンブラックを含む着色層とを備え、前記着色層の表面粗さ(Ra)は、30~65nmである構成としたのである。
【0010】
発明にかかる調理用着色アルミニウム箔を、以上のように、黒色顔料としてのカーボンブラックを含む着色層における、表面粗さ(平均粗さRa)が、30nm以上となるように構成したので、着色層の表面が構造的に粗くなり、また見かけ上の表面積が増大する。したがって、ヒーターから着色層の表面へと捕捉される熱量が増加する(反射される熱量が減少する)。
このため、調理用着色アルミニウム箔の吸熱の効率が高まり、食品に熱が移行されオーブントースターの庫内の温度は降下しやすくなり、ヒーターが再稼働するまでの時間が短縮され、単位時間あたりにおけるヒーターの稼働時間を長くすることができる。その結果、食品の焼き上がりに要する時間を短縮することができる。
【0011】
また、発明にかかる調理用着色アルミニウム箔を、以上のように、黒色顔料としてのカーボンブラックを含む着色層における、表面粗さが、65nm以下となるように構成したので、着色層の表面が構造的に粗くなりすぎて、アルミニウム箔からなる本体から着色層が剥離等することを防止することができる。
したがって、ヒーターの休止から再稼働までの時間を積極的に短縮する機能を維持することができ、食品の焼き上がりに要する時間を短縮する機能を維持することができる。
【0012】
発明にかかる調理用着色アルミニウム箔において、前記着色層中、前記カーボンブラックは、15~70重量%を占める構成を採用することが好ましい。
【0013】
着色層におけるカーボンブラックの含有量を以上の範囲とすることで、着色層における表面の表面粗さを上記所定範囲の粗さに調節しやすくなる。
カーボンブラックの含有量が15重量%を下回ると、耐熱性樹脂の割合が過剰になり、着色層の構造が細密になりすぎてその表面粗さを大きくすることが困難になる。
また、カーボンブラックの含有量が70重量%を上回ると、着色層に占めるカーボンブラックを繋ぎとめる役割を有する耐熱性樹脂の割合が小さくなり、着色層の構造が粗くなりすぎて、着色層がアルミニウム箔からなる本体から剥離しやすくなる。
【0014】
発明にかかる調理用着色アルミニウム箔において、前記着色層中、カーボンブラックの平均粒子径は、10~90nmである構成を採用することが好ましい。なお、ここでいう平均粒子径とは、電子顕微鏡で着色層の断面等を観察し、着色層中のカーボンブラック粒子をランダムに100個選び出して求めた算術平均径を意味する。
【0015】
着色層におけるカーボンブラックの平均粒子径を以上の範囲とすることで、着色層における表面の表面粗さを上記所定範囲の粗さに調節しやすくなる。
カーボンブラックの平均粒子径が10nmを下回ると、凝集しやすく顔料として使いにくいうえ、粒子が細かすぎて着色層の構造が細密になり、その表面粗さを大きくすることが困難になる。
また、カーボンブラックの平均粒子径が90nmを上回ると、嵩高になって着色層中のカーボンブラックの含有量を上げにくく、結果として耐熱性樹脂の割合が大きくなり、着色層の表面粗さを大きくすることが困難になる。
【0016】
発明にかかる調理用着色アルミニウム箔において、前記アルミニウム箔からなる本体は、一方の面がツヤ面であり、他方の面がケシ面であり、前記着色層は、前記本体のケシ面に積層されている構成を採用することが好ましい。
【0017】
アルミニウム箔からなる本体の、表面の表面粗さがツヤ面よりも大きなケシ面の側に着色層を積層することで、着色層の本体に対する密着度が向上し、着色層が本体から剥離することが防止される。
また、ケシ面の側に着色層を積層することで、表面粗さの大きなケシ面の表面性状が反映され、着色層の表面粗さも比較的大きくなるため、上記所定範囲の粗さに調節しやすくなる。
【0018】
発明にかかる調理用着色アルミニウム箔において、前記着色層は、乾燥後の着色塗膜が0.5~5.0g/m2の塗布量である構成を採用することが好ましい。
【0019】
着色層における塗布量を以上の範囲とすることで、着色層における表面粗さを上記所定範囲の粗さに調節しやすくなる。
塗布量が0.5g/m2を下回ると、塗膜の形成が困難になり、着色層が本体から剥離しやすくなるうえ、着色層が薄くなりすぎてその吸熱効果も十分に得られないおそれがある。
塗布量が5.0g/m2を上回ると、塗膜の厚みが大きくなり、その表面の平滑さが増して、表面の表面粗さを大きくすることが困難になる。
【0020】
発明にかかる調理用着色アルミニウム箔において、加熱調理する食品はサツマイモであり、焼芋を焼き上げるためのものとするのが好ましい。
【0021】
焼芋の調理用着色アルミニウム箔とすることで、糖度が高く甘みの豊富な焼芋を短時間で焼き上げることが可能となる。
【0022】
発明にかかる調理用着色アルミニウム箔において、前記着色層は、前記アルミニウム箔からなる本体の一方の面にのみ積層されており、前記アルミニウム箔からなる本体の他方の面に積層された離型コート層をさらに備える構成を採用することができる。
【0023】
調理時に、離型コート層が積層されている面に食品が接触するようにして調理用アルミニウム箔を用いると、離型コート層の作用で調理用着色アルミニウム箔への食品の付着を抑制することができる。
【0024】
発明にかかる調理用着色アルミニウム箔において、前記離型コート層は、ワックス、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エチルセルロース樹脂、鉱物油のうちから選択される一以上からなる構成を採用することが好ましい。
【0025】
離型コート層を以上のような構成とすることで、加熱調理時の熱によっても変性しにくく耐熱性の良好なものとすることができる。
【0026】
上記した課題を解決するため、発明にかかる包装体を前記調理用着色アルミニウム箔から構成したのである。
【0027】
包装体を以上のように構成とすることで、食品の焼き上がりに要する時間を短縮することが実現できる。
【0028】
上記した課題を解決するため、発明にかかる調理用着色アルミニウム箔の製造方法を、前記本体となるアルミニウム箔を準備する工程と、前記アルミニウム箔の少なくとも片面に、前記耐熱性樹脂および黒色顔料としてのカーボンブラックを含むインキを塗布する工程と、前記インキが塗布されたアルミニウム箔を加熱して着色層を形成する工程と、を有し、前記着色層を形成する工程は、前記インキが塗布されたアルミニウム箔を第1の温度で加熱するプレヒート工程と、次いで前記インキが塗布されたアルミニウム箔を前記第1の温度よりも高温の第2の温度で加熱する本加熱工程と、からなる構成としたのである。
【0029】
インキが塗布されたアルミニウム箔を加熱して、インキの溶剤を飛ばし、着色層を形成する際に、急に高温で加熱すると急激な溶剤の蒸散で、塗膜に予期しない膜割れが生じるなどして、完成後の着色層の表面粗さを上記の範囲に調整することが困難になる。また、膜割れが生じることで、完成後の着色層が本体から剥離しやすくなる。
加熱をプレヒート工程と本加熱工程の2段階に分け、プレヒート工程で低い温度でおおよその溶剤を飛ばしておき、本加熱工程では高い温度で着色層を焼き上げることで、膜割れが生じにくくなり、着色層の表面粗さを上記の範囲に調整しやすくなり、本体から着色層が剥離することが防止される。
【0030】
発明にかかる調理用着色アルミニウム箔の製造方法において、前記プレヒート工程は、加熱温度が50~100℃、加熱時間が3~9秒の条件下おこなわれ、前記本加熱工程は、加熱温度が180~220℃、加熱時間が0.5~5秒の条件下おこなわれる構成を採用することが好ましい。さらに、前記プレヒート工程は、加熱温度が60~80℃、加熱時間が3~5秒の条件下おこなわれ、前記本加熱工程は、加熱温度が190~210℃、加熱時間が0.5~2.4秒の条件下おこなわれる構成を採用することが好ましい。
【0031】
プレヒート工程を乾燥ゾーン等を構成してその中で低温で比較的長時間おこなうことで、溶剤の大半を膜割れが生じないようにゆっくりと蒸散させることができ、本加熱工程を熱ドラム等を用いてプレヒート工程よりも高温でかつ、プレヒート工程よりも短時間ではあるが耐熱性樹脂の乾燥や硬化に十分な程度の時間おこなうことで着色層が焼き付けられ強固な着色層が形成され、劣化すること等が防止されるため、着色層の表面粗さを上記の範囲に一層調整しやすくなり、本体から着色層が剥離することが一層防止される。なお、本発明の効果を奏するのであれば、本加熱工程の時間をプレヒート工程よりも長時間おこなうことを排除するものではない。
【発明の効果】
【0032】
発明にかかる調理用着色アルミニウム箔を以上のように構成したので、着色層にオーブントースターにおけるヒーターの休止から再稼働までの時間を積極的に短縮する機能を持たせて、食品の焼き上がりに要する時間を短縮することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】実施形態の調理用着色アルミニウム箔の断面図
【
図2】実施形態の調理用着色アルミニウム箔の使用状態を示す斜視図
【
図3】他の実施形態の調理用着色アルミニウム箔の断面図
【
図4】さらに他の実施形態の調理用着色アルミニウム箔製包装体の使用状態を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
図1に示す実施形態の調理用着色アルミニウム箔10は、アルミニウム箔からなる本体11と、本体11の片面の全面に積層された着色層12とからなり、その着色層12の表面粗さ(Ra)を所定範囲に規定したことを特徴とする。
図2のように、着色層12が外側に、本体11が内側(食品と接する側)になるようにしてサツマイモなどの食品Fを包み、オーブントースターOなどで加熱調理するために用いられる。
【0035】
本体11のアルミニウム箔としては、公知のアルミニウム箔を用いることができ、特に限定されないが、たとえば8000系(8011等)のアルミニウム箔を用いることができる。調質も硬質材、半硬質材、軟質材のいずれも使用可能であるが、食品Fの包み易さから、軟質材が好ましい。
【0036】
本体11のアルミニウム箔の厚みも特に限定されないが、10~30μm程度が好ましい。
厚みが10μmを下回ると、薄すぎて、食品Fを包むときに破れるおそれがあり、着色層を形成しにくくなる。また、厚みが30μmを上回ると、厚すぎて食品Fを包みにくく、包んだ際に食品Fとの間に空間が生じ易く、伝熱効率が減少してしまう。
なお、後述するように調理用着色アルミニウム箔10を用いて調理用着色アルミニウム箔製包装体10´とする場合にもアルミニウム箔の厚みは特に限定されないが、30μm以上250μm以下が好ましく、50μm以上150μm以下とするのがより好ましい。
厚みが30μmを下回ると、調理用着色アルミニウム箔から容器等の包装体10´を成形した場合に、包装体10´の強度が低下し、変形したりするおそれがある。また、厚みが250μmを上回ると、容器を成形することが困難になるおそれがある。
【0037】
本体11のアルミニウム箔は、一般に市販されているものと同様、一方の表面がツヤ面(艶麺)、他方の表面がケシ面(艶消し面)となっている。
ケシ面の表面粗さは、ツヤ面の表面粗さよりも大きく、着色層12は、このケシ面の側に形成されている。
ケシ面の表面粗さ(Ra)は、特に限定されないが、0.2μm以上が好ましく、0.25μm以上がより好ましい。表面粗さをこのような範囲にすると、着色層12の本体11に対する密着性が向上し、剥離等が生じにくくなるうえ、後述するような着色層12の表面の表面粗さを所定の範囲に調整しやすくなる。
【0038】
着色層12は、耐熱性樹脂と黒色顔料としてのカーボンブラックを含む。その他、分散剤などが含まれていてもよい。
耐熱性樹脂の種類は特に限定されないが、ポリアミドイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂が例示でき、耐薬品性、耐油性、耐摩擦性などの点で、ポリアミドイミド樹脂が好ましい。着色層12中の耐熱性樹脂の含有量は特に限定されないが、30~85重量%が例示できる。耐熱性樹脂の含有量は、40重量%~80重量%とすることがより好ましい。
着色層12の形成方法は特に限定されないが、耐熱性樹脂及び黒色顔料としてのカーボンブラックを含有するインキの乾燥塗膜により形成される。
その印刷方法または塗布方法は特に限定されないが、印刷方法としては、グラビア印刷、スクリーン印刷、カレンダー印刷が、塗布方法としては、スプレー塗布、刷毛塗布、ローラー塗布が、例示できる。
これらの手法でインキを印刷または塗布した後、その塗膜を乾燥させることにより着色層12が形成される。
ここでインキの溶媒としては、特に限定されないが、エタノールなどのアルコール系溶媒、ジメチルアセトアミドなどのアルキルアミド溶媒、メチルエチルケトンやシクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、トルエンなどの芳香族炭化水素、N-メチル-2-ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、ジエチルエーテルやテトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒が例示できる。
【0039】
着色層12は、
図1のように、その表面12a、すなわち本体11と接する面とは逆側の面の表面粗さ(Ra)が30~65nmと比較的大きくなるように調整されている(なお、
図1はあくまでも模式図であり、その表面12aの凹凸の大きさ等を正確に描写しているわけではない)。
より好ましくは、着色層12の表面12aの表面粗さ(Ra)は、35~57nmに調整されており、さらに好ましくは、45~57nmに調整されている。
かかる調整は、後述するように、黒色顔料としてのカーボンブラックの含有量、平均粒子径、塗膜の塗布量、塗膜の乾燥工程を適宜調節することにより実現されている。
なお、着色層12は本体11のケシ面の側に積層されているため、表面粗さの大きなケシ面の表面性状が反映され、着色層12の表面粗さも自然に大きくなる。このため、着色層12の表面粗さを、上記所定範囲の粗さに調節しやすくなっている。
着色層12の表面粗さをこのような範囲に調整することで、着色層12の本体11からの剥離を防ぎつつ、着色層12の吸熱効率を高め、食品FをオーブントースターOで加熱調理した際の、ヒーターの休止から再稼働までの時間を短縮し、食品Fの加熱効率を高めている。
【0040】
着色層12中のカーボンブラックの含有量は、特に限定されないが、15~70重量%が好ましく、20~60重量%がより好ましい。
カーボンブラックは、オーブントースターのヒーターからの熱を良好に吸収する。
カーボンブラックの含有量が15重量%を下回ると、耐熱性樹脂の割合が過剰になり、着色層12の構造が細密になりすぎてその表面粗さを大きくすることが困難になる。
また、カーボンブラックの含有量が70重量%を上回ると、着色層12に占めるカーボンブラックを繋ぎとめる役割を有する耐熱性樹脂の割合が小さくなり、着色層12の構造が粗くなりすぎて、着色層12がアルミニウム箔からなる本体から剥離しやすくなる。
【0041】
着色層12中のカーボンブラックの平均粒子径は、特に限定されないが、10~90nmが好ましく、20~50nmがより好ましい。
カーボンブラックの平均粒子径が10nmを下回ると、凝集しやすく顔料として使いにくいうえ、粒子が細かすぎて着色層12の構造が細密になり、その表面粗さを大きくすることが困難になる。
また、カーボンブラックの平均粒子径が90nmを上回ると、嵩高になって着色層12中のカーボンブラックの含有量を上げにくく、結果として耐熱性樹脂の割合が大きくなり、着色層12の表面の表面粗さを大きくすることが困難になる。
【0042】
着色層12の厚みは特に限定されないが、乾燥後の塗膜が0.5~5.0g/m2の塗布量であるのが好ましく、0.7~2.5g/m2の塗布量であるのがより好ましく、0.7~0.9g/m2の塗布量であるのがさらに好ましい。
塗布量が0.5g/m2を下回ると、塗膜の形成が困難になり、着色層12が本体から剥離しやすくなるうえ、着色層12が薄くなりすぎてその吸熱効果も十分に得られないおそれがある。
塗布量が5.0g/m2を上回ると、塗膜の厚みが大きくなり、その表面の平滑さが増して、着色層12の表面粗さを大きくすることが困難になる。
【0043】
着色層12における塗膜の乾燥処理の態様は特に限定されず、加熱乾燥や自然乾燥が例示できるが、2段階の加熱乾燥をおこなうのが好ましい。
すなわち、好ましい加熱乾燥工程は、インキが塗布された本体11を第1の温度T1で加熱するプレヒート工程と、次いでインキが塗布された本体11を第1の温度T1よりも高温の第2の温度T2で加熱する本加熱工程と、からなる。
プレヒート工程は、たとえば乾燥ブースないし乾燥ゾーンでおこなわれ、本加熱工程は、たとえば熱ドラムでおこなわれる。
加熱をプレヒート工程と本加熱工程の2段階に分け、プレヒート工程で低い温度T1でおおよその溶剤を飛ばしておき、本加熱工程では高い温度T2で着色層12を焼き上げることで、膜割れが生じにくくなる。
このため、着色層12の表面粗さを上記の範囲に調整しやすくなり、本体11から着色層12が剥離することが防止される。
【0044】
プレヒート工程および本加熱工程の加熱時間および加熱温度は特に限定されないが、プレヒート工程は、加熱温度T1が50~90℃、加熱時間が3~9秒の条件下おこなわれ、前記本加熱工程は、加熱温度T2が180~220℃、加熱時間が0.5~5秒の条件下おこなわれることが好ましい。
プレヒート工程を比較的低温かつ長時間おこなうことで、溶剤の大半を膜割れが生じないようにゆっくりと蒸散させることができ、本加熱工程をプレヒート工程よりも高温でかつ、プレヒート工程よりも短時間ではあるが耐熱性樹脂の乾燥や硬化に十分な程度の時間おこなうことで着色層が焼き付けられ劣化すること等が防止される。
このため、着色層12の表面の表面粗さを上記の範囲に一層調整しやすくなり、本体11から着色層12が剥離することが一層防止される。なお、本発明の効果を奏するのであれば、本加熱工程の時間をプレヒート工程よりも長時間おこなうことを排除するものではない。
【0045】
図3に調理用着色アルミニウム箔10の他の実施形態を示す。
この実施形態では、アルミニウム箔からなる本体11の一方の面に着色層12を備え、他方の面には離型コート層13が積層されている。
使用の際には、離型コート層13が積層されている面に食品Fが接触するようにして加熱調理をおこなう。
調理後に、調理用着色アルミニウム箔10を食品Fから取り除く際には、離型コート層13の作用で、調理用着色アルミニウム箔10への食品Fの付着を抑制することができる。
これにより調理後の食品の見栄えが保たれる。また、いわゆるフードロスも低減することができる。
【0046】
離型コート層13は、離型性を備えていれば特に限定されないが、加熱調理時の熱によっても変性しにくく耐熱性のあるものが好ましい。
例えば、ワックス(植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、石油系ワックス、合成ワックスなど)、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エチルセルロース樹脂、鉱物油およびこれらの組み合わせが挙げられる。
離型コート層13の形成方法は特に限定されず、塗工や押出などの方法により本体11の着色層12とは反対の面に形成することができる。
離型コート層13のコート量は特に限定されないが、0.01g/m2~2.5g/m2が好ましく、0.02g/m2~1.0g/m2がより好ましい。コート量が0.01g/m2を下回ると、離型コート層13を安定して形成することが困難となり、2.5g/m2を上回ると膜厚が厚くなりすぎてコスト高となるからである。
【0047】
図4に
図3の実施形態の調理用着色アルミニウム箔からなる包装体10´を示す。
調理用着色アルミニウム箔製包装体10´においては、その種類については食品Fを収容可能な限りにおいて、特に限定されない。
すなわち、
図4(a)のように、食品Fを載置可能または
図4(b)のように、袋状に食品Fを包み込むことが可能なシート体であってもよいし、
図4(c)のように、食品Fを収容可能な容器形状に成形したものであってもよい。なお、本実施形態では、本体11の一方の面に着色層12を備え、他方の面には離型コート層13が積層されている。
【0048】
なお、
図4(a)および(b)のように、調理用着色アルミニウム箔製包装体10´において、単にシート状のものを使用する場合には、
図4(a)のように、シート状に拡げた状態で離型コート層13側に食品Fを載置してそのまま使用してもよいし(本明細書にいう「包装」には、載置も含まれるものとする)、
図4(b)のように、シート状のもののその中央部に離型コート層13側が内方側となるようにして食品Fを収容して袋状に包み込むようにして使用してもよい。食品Fを袋状に包み込む場合には、調理用着色アルミニウム箔製包装体10´は、それが可能な程度の大きさであればよい。
【0049】
また
図4(c)のように、調理用着色アルミニウム箔製包装体10´において、容器形状である場合には、あらかじめ調理用着色アルミニウム箔10の必要な箇所に着色層12を形成した後にプレス成形により容器形状に成形して準備してもよいし、着色層12を形成されていない無垢の金属箔をプレス成形により容器形状に成形した後に必要な箇所に着色層12を形成することのいずれによってもよい。
ここで、
図4(c)に示すような、調理用着色アルミニウム箔製包装体10´としての容器の形状は特に限定されず、袋状、上面視で三角形、正方形、長方形などの四角形、多角形などの角型形状、円形状(楕円形状を含む)などが挙げられる。
ただし、
図4(c)のように、少なくとも底壁14と、底壁14から立ち上がる周壁15とを有し、場合によりフランジ16を有するのが好ましい。
また、必要に応じて、容器の底壁14や周壁15に凹凸部、リブ、縁巻等を形成してもよい。
【実施例0050】
以下、本発明の実施例および比較例を挙げて本発明の内容を一層明確にする。
【0051】
まず、実施例1~15を準備した。各実施例において、調理用着色アルミニウム箔の本体としては、アルミニウム箔(8011材、厚み12μm)を用い、そのケシ面にインキを塗布し、加熱乾燥して着色層を形成した。
【0052】
ここでインキは、耐熱性樹脂としてのポリアミドイミド樹脂を固形分として15重量%およびN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を85重量%含むポリアミドイミド樹脂溶液(東洋紡株式会社製 バイロマックス なおバイロマックスは登録商標)と黒色顔料としてのカーボンブラック(CB)を含み、塗工時の粘度調整のためのインキ希釈材としては、テトラヒドロフラン(THF)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、シクロヘキサノンを用いた。
着色層の塗工量は、0.7~0.9g/m2であった。
また、加熱乾燥は、乾燥ゾーンにおいて加熱温度60~80℃、加熱時間3.6秒でおこなうプレヒート工程と、熱ドラムにおいて加熱温度200℃、加熱時間0.9秒でおこなう本加熱工程の2段階に分けて実施した。
ここで各実施例における着色層中のカーボンブラックの平均粒子径、含有量、表面粗さは次表1のとおりであった。なお、平均粒子径は、電子顕微鏡で着色層の断面等を観察し、着色層中のカーボンブラック粒子をランダムに100個選び出して求めた算術平均径をいい、表面粗さはオックスフォード・インスツルメンツ社製、MFP-3D-SA原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)および深針にはAC160TS (バネ定数 3N/m相当品)を用い、タッピングモード測定で5μ角を測定面積とし、測定雰囲気を大気雰囲気下とし、測定温度を室温(25℃)とした条件にて測定することにより得られた平均粗さ(Ra)をいう。また、乾燥後の着色層はカーボンブラックを除いてはほぼ全てポリアミドイミド樹脂にて構成された。
【0053】
【0054】
また、比較例1として、実施例と同様のアルミニウム箔(8011材、厚み12μm)に着色層を設けないものを準備した。
さらに、比較例2~5として、実施例と同様のアルミニウム箔(8011材、厚み12μm)を用い、そのケシ面にインキを塗布し、加熱乾燥して着色層を形成した。
ここでインキは、耐熱性樹脂としてのポリアミドイミド樹脂を固形分として15重量%およびN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を85重量%含むポリアミドイミド樹脂溶液(東洋紡株式会社製 バイロマックス なおバイロマックスは登録商標)と黒色顔料としてのカーボンブラックを含み、塗工時の粘度調整のためのインキ希釈材としては、テトラヒドロフラン(THF)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、シクロヘキサノンを用いた。
着色層の塗工量は、0.7~0.9g/m2であった。
加熱乾燥は、熱ドラムにおいて加熱温度180℃、加熱時間30秒で実施した。
ここで比較例2~5における着色層中のカーボンブラックの平均粒子径、含有量、表面粗さは次表2のとおりであった(平均粒子径および表面粗さの意義は実施例と同様)。また、乾燥後の着色層はカーボンブラックを除いてはほぼ全てポリアミドイミド樹脂にて構成された。
【0055】
【0056】
これら実施例および比較例の検体を用いて、オーブントースターを用いたサツマイモの焼き上げ実験をおこなった。
オーブントースターとしては、象印マホービン株式会社製のET-UB22を、サツマイモとしては、長さ約15cm、断面直径約4cm、重さ約90gのものを、概ね寸法と重さが揃うように複数準備した。
オーブントースターは、火力を1000Wに設定し、立ち上がりの差異を無視し、常に稼働させるため、ダイヤルが切れないよう回し続けた。
ヒーターのON/OFのサイクルが4サイクル後に安定したため、実施例および比較例の検体でサツマイモを隙間があまり生じないように紡錘形に包み、ヒーターが切れたタイミングで庫内の加熱網中央に設置し、ヒーターのON/OFFのサイクルを7回繰り返す時間だけ、サツマイモを加熱調理し、出来上がった焼き芋の焼き上がりの状態を観察した。
その結果を、次表3に示す。
なお、表3において、〇は竹串を焼き芋に刺すとスムーズに刺さることを、△は竹串を焼き芋に刺すと少し抵抗があるが喫食しても問題はないことを、×は竹串を焼き芋に刺すと抵抗が大きく焼き上がりが不十分であることを意味し、〇および△が合格基準を満たすものとする。
表3から、いずれの実施例の検体においても、少なくとも喫食には問題ない程度に焼き芋が焼きあがっていることが確認された。
【0057】
【0058】
次に、これら実施例および比較例の検体を用いて、着色層の摩擦堅牢度試験をおこなった。
摩擦堅牢度試験は、JIS L 0849 摩擦に対する染色堅牢度試験方法に準拠し、摩擦試験機II型を用いて、各検体の着色層側の表面を100回往復摩擦し、その着色層が剥がれ、アルミニウム箔の表面が見えるかどうかを確認した。
ここで摩擦体は、綿製の乾燥した白布であり、摩擦の偏りを防ぐため、この綿白布を二重に重ねて試験機に固定し、その上に検体を取り付けた。
その結果を、次表4に示す。
なお、表4中、〇は着色層の剥がれがなくアルミニウム箔の表面が見えないことを、△は着色層に表面積の10%以下のわずかな剥がれがあること、×は着色層に表面積の10%を超える剥がれがあること、を意味し、〇または△が合格基準を満たすものとする。
表4のように、いずれの実施例の検体においても、着色層に使用の支障となるような剥がれが生じないことが確認された。
【0059】
【0060】
表3および表4からわかるように、比較例のいずれの検体も、焼き上がり確認試験か摩擦堅牢度試験の少なくとも一つの試験の結果が×となっているのに対して、実施例のいずれの検体も、焼き上がり確認試験と摩擦堅牢度試験の試験結果が〇か△となっており、着色層の剥がれ防止と焼き上がり時間の短縮とが両立されていることが確認された。
なお、実施例のうち、焼き上がり確認試験と摩擦堅牢度試験の試験結果がいずれも〇であるのは、実施例3~5、実施例8および9、実施例11および12であった。
【0061】
次に、実施例1および5ならびに比較例1の検体を用いて、オーブントースターに付属するヒーターのON/OFFサイクルの検証実験をおこなった。
上記サツマイモの焼き上げ実験と同様のオーブントースターおよびサツマイモを用い、
火力を1000Wに設定し、ヒーターのON/OFのサイクルが安定する4サイクル後に、実施例1および5ならびに比較例1の検体でサツマイモを隙間があまり生じないように包み、ヒーターが切れたタイミングで庫内の加熱網中央に設置した。
ヒーターのON/OFFサイクルをその後7回にわたって継続し、ヒーターの休止時間および稼働時間を測定し、ON/OFFサイクルの2回目から7回目の平均値を算出した。
結果を表5から7に示す。なお、表5が実施例1の、表6が実施例5の、表7が比較例1の結果をそれぞれ示す。
各表からわかるように、実施例の検体では、比較例の検体に比べて、ヒーターの休止時間が短くなっており、その結果、ヒーターの休止から再稼働までの時間が短縮されていることが確認された。
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
さらに、実施例1、実施例3、実施例9の検体の、着色層が形成されていない側の面(ツヤ面)に、シリコーン樹脂(付加反応型シリコーン(商品名:SD7333、東レ・ダウコーニング社製)と触媒(商品名:SRX212、東レ・ダウコーニング社製)を混合したもの)をそれぞれ塗工量0.05g/m2)を塗工して乾燥させることで離型コート層を形成し、それぞれ順に実施例16、実施例17、実施例18を準備した。
同様に、比較例2および比較例3の検体の、着色層が形成されていない側の面(ツヤ面)に、シリコーン樹脂(付加反応型シリコーン(商品名:SD7333、東レ・ダウコーニング社製)と触媒(商品名:SRX212、東レ・ダウコーニング社製)を混合したもの)をそれぞれ塗工量0.05g/m2)を塗工して乾燥させることで離型コート層を形成し、順に比較例7および8を準備した。
また、比較例6として、比較例1と同様の検体、すなわち着色層が形成されていない側の面に、離型コート層が形成されていないものを準備し、参考例として、実施例3と同様の検体、すなわち着色層が形成されていない側の面(ツヤ面)に、離型コート層が形成されていないものを準備した。
【0066】
これら実施例、比較例および参考例の検体を用いて、オーブントースターを用いた餅の焼き上げ実験をおこなった。
オーブントースターとしては、象印マホービン株式会社製のET-UB22を、餅としては、サトウ食品株式会社製 商品名「パリッとスリット」の角形切り餅1個(50g)を準備した。
オーブントースターの庫内に入る程度の大きさに実施例16~18、比較例6~8および参考例の検体をカットした上で、各検体をシート状に拡げた状態で着色層が形成されていない側の面(ツヤ面)が上向きとなるようにオーブントースター付属のトレーの上に敷いた後に、その面の上に餅を載置し、オーブントースターの火力を1000Wに設定し、3分加熱した。そして、加熱後の餅の焼き上がりの外観と餅を半分に割ったときの状態を観察した。
その結果を、次表8に示す。
なお、表8において、◎は、餅の大半の部分に焼き色が付いていて、餅の中が柔らかく喫食できる状態を、〇は、餅の半分未満の部分に焼き色が付いていて、餅の中が柔らかく喫食できる状態を、×は、餅に焼き色が付いておらず、餅の中も硬く喫食できない状態をそれぞれ意味する。
【0067】
同様に、これら実施例、比較例および参考例の検体を用いて、餅の剥離性試験をおこなった。
上記のようにして加熱した後の餅を、菜箸で掴んで引き上げ、餅と検体との剥離性を観察した。
その結果を、次表8に示す。
なお、表8において、〇は、餅が検体から剥離した状態を、×は餅が検体から剥離せず検体が引っ付いてきた状態を意味する。
【0068】
さらに、これら実施例、比較例および参考例の検体を用いて、実施例1から実施例15および比較例1から比較例5と同様の方法で、加熱前の検体について摩擦堅牢度試験を行って同様に評価した。
その結果を、次表8に示す。
【0069】
【0070】
表8からわかるように、比較例のいずれの検体も、焼き上がり確認試験、剥離性試験、摩擦堅牢度試験の少なくとも一つの試験の結果が×となっているのに対して、実施例のいずれの検体も、焼き上がり確認試験、剥離性試験、摩擦堅牢度試験の試験結果が◎又は〇となっており、着色層の剥がれ防止、剥離性の向上、焼き上がり時間の短縮がいずれも満たされていることが確認された。
【0071】
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲内およびこれと均等の意味でのすべての修正と変形を含む。
【0072】
たとえば、実施形態および実施例では、調理用着色アルミニウム箔10の本体11の片面にのみ着色層12を形成しているが、本体11の両面に着色層12を形成することもできる。
また、実施形態および実施例では、本体11のケシ面に着色層12を形成しているが、ツヤ面に着色層12を形成することもできる。
実施形態および実施例では、調理用着色アルミニウム箔10の本体11の片面の全面に着色層12を形成しているが、着色層12は、商標表示や模様の表示等、面積比で数%程度の非着色領域があってもよい。
実施形態および実施例では、調理用着色アルミニウム箔10に包んで加熱調理する食品Fの例としてサツマイモを挙げたが、食品Fの種類はこれに限定されない。
実施形態および実施例では、食品Fを加熱調理する機器としてオーブントースターOを例示したが、これに限定されず、オーブンレンジなどでもよい。
実施形態および実施例では、着色層12における塗膜の乾燥処理工程を2段階の加熱乾燥によりおこなっているが、着色層12の表面粗さを30~65nmに調整可能である限りにおいて、単一の加熱乾燥工程としたり、3段階以上の多段階加熱乾燥工程としたりすることも可能である。