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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022015557
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】媒体ケース
(51)【国際特許分類】
   A45C 11/00 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
A45C11/00 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020118481
(22)【出願日】2020-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】510002730
【氏名又は名称】株式会社ケイオー
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】忍田 達平
(72)【発明者】
【氏名】磯和 一郎
【テーマコード(参考)】
3B045
【Fターム(参考)】
3B045BA06
3B045CE08
3B045DA31
3B045DA34
3B045EA02
3B045FC04
3B045FC06
(57)【要約】
【課題】媒体の容易な取出を実現できるようにする。
【解決手段】名刺ケース1は、収納部2の底部13に切込部20を設け、周囲領域22に対して押出領域21の右側部分を上下方向に撓み得るようにし、さらに該収納部2の左側部12Lに爪部14を設けた。このため名刺ケース1は、収納部2の収納空間11内に収納された名刺80をユーザに取り出させる際に、押出領域21の右側部分を上方向に押し上げさせることにより、当該名刺80の右端近傍を右側部12Rよりも上側に飛び出させることができる。これにより名刺ケース1は、名刺80のうち右側部12Rよりも上側に飛び出した部分をユーザに把持させ、当該名刺80を容易に取り出させることができる。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有し、紙葉状の媒体の一面を当該開口部側に向けた姿勢で収納する収納空間を有する収納部と、
前記開口部を開放又は閉塞する蓋部と
を具え、
前記収納部は、
前記収納空間の底面を形成し、前記媒体における前記一面の反対面である他面と対向する収納底部と、
前記収納空間の各側面をそれぞれ形成し、前記媒体の前記収納底部と平行な各方向への移動をそれぞれ規制する複数の収納側部と、
一つ以上の前記収納側部から前記収納空間内へ突出し、前記収納底部との間に前記媒体の厚さよりも大きい間隔を空けて配置された爪部と
を具え、
前記収納底部は、前記底面の一部分である押出領域とその他の部分である周囲領域との境界に、両領域を分離する分離部と連結する連結部と有し、前記周囲領域に対して前記押出領域が弾性変形可能である
ことを特徴とする媒体ケース。
【請求項2】
前記収納底部は、前記押出領域を囲む前記境界のうち、前記爪部側に前記連結部を配置している
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体ケース。
【請求項3】
前記収納底部は、前記押出領域のうち前記連結部から最も離れた押出先端部を、当該収納底部における中心を挟んで前記爪部と反対側に配置している
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体ケース。
【請求項4】
前記収納底部は、前記押出領域と前記周囲領域とを分離する前記分離部のうち、当該押出領域を挟んで前記連結部の反対側に位置する部分が円弧状に湾曲している
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体ケース。
【請求項5】
前記収納側部は、切断された切断箇所を1個以上有し、
前記収納底部は、前記境界の前記分離部と前記切断箇所とを連接させている
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体ケース。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は媒体ケースに関し、例えば名刺や各種カードのような紙葉状の媒体を収納する名刺ケースやカードケースに適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、名刺ケースやカードケースとしては、例えば皮革や布、或いは樹脂や金属等により構成され、名刺やこれと同程度の大きさのカード類を複数枚収納するものが広く普及している。例えば特許文献1には、中空の直方体における一面を開放したような形状の収納体に対し、複数枚のカード類を重ねた状態で収納するカードケースが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-274736号公報(図2等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、このような名刺ケースやカードケースは、可搬性の向上等の観点から、名刺やカード類を収納し得る範囲で、極力小型に構成される場合がある。そうすると、この名刺ケースやカードケースでは、収納されている名刺やカード類の周囲に十分な隙間が形成されないため、これらを取り出すことが必ずしも容易では無い、という問題があった。
【0005】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、媒体の容易な取出を実現し得る媒体ケースを提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するため本発明の媒体ケースにおいては、開口部を有し、紙葉状の媒体の一面を当該開口部側に向けた姿勢で収納する収納空間を有する収納部と、開口部を開放又は閉塞する蓋部とを設け、収納部には、収納空間の底面を形成し、カードにおける一面の反対面である他面と対向する収納底部と、収納空間の各側面をそれぞれ形成し、カードの収納底部と平行な各方向への移動をそれぞれ規制する複数の収納側部と、一つ以上の収納側部から収納空間内へ突出し、収納底部との間に媒体の厚さよりも大きい間隔を空けて配置された爪部とを設け、収納底部は、底面の一部分である押出領域とその他の部分である周囲領域との境界に、両領域を分離する分離部と連結する連結部と有し、周囲領域に対して押出領域が弾性変形可能であるようにした。
【0007】
本発明は、収納部の収納空間内に媒体を収納した状態で、収納底部の押出領域が収納空間側へ押し出されると、該媒体の一部を該収納空間の外側へ押し出すことにより、該媒体を容易に取り出させることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、媒体の容易な取出を実現し得る媒体ケースを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施の形態による名刺ケースの構成を示す略線的斜視図である。
図2】第1の実施の形態による収納部の構成を示す略線的斜視図である。
図3】第1の実施の形態による収納部の構成を示す略線的平面図である。
図4】第1の実施の形態による蓋部の構成を示す略線的斜視図である。
図5】第1の実施の形態による名刺の取出を示す略線的断面図である。
図6】第2の実施の形態による収納部の構成を示す略線的斜視図である。
図7】第2の実施の形態による名刺の取出を示す略線的断面図である。
図8】第3の実施の形態による収納部の構成を示す略線的斜視図である。
図9】第4の実施の形態による名刺ケースの構成を示す略線斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0011】
[1.第1の実施の形態]
[1-1.名刺ケースの構成]
図1(A)及び(B)に示すように、第1の実施の形態による名刺ケース1は、収納部2及び蓋部3がヒンジ部4を介して連結されており、複数枚の名刺80を集積した状態で収納し得るようになっている。
【0012】
媒体ケースとしての名刺ケース1は、ユーザの操作等に応じて、ヒンジ部4により収納部2に対して蓋部3を約180度回動させることにより、図1(A)に示す閉塞状態と、図1(B)に示す開放状態とに遷移することができる(詳しくは後述する)。
【0013】
名刺ケース1は、閉塞状態(図1(A))において、収納部2の上側に蓋部3を重ねるように位置させ、該収納部2の上面と蓋部3の下面とを互いに対向させている。説明の都合上、以下では、閉塞状態における蓋部3の下面が内側に挟まれた状態になっているため、この下面側を内側とも呼ぶ。また、これと対応して、閉塞状態における蓋部3の上面側を外側とも呼ぶ。また名刺ケース1は、開放状態(図1(B))において、ヒンジ部4を挟んで収納部2のほぼ反対側に蓋部3を位置させ、内側を上方に向けると共に外側を下方に向けている。
【0014】
説明の都合上、以下では、閉塞状態(図1(A))における蓋部3側を上側、収納部2側を下側と定義し、ヒンジ部4側を後側、その反対側を前側と定義し、さらに前側に対峙したユーザから見た場合の左側及び右側をそれぞれ定義する。
【0015】
[1-2.収納部の構成]
収納部2は、図2に示すように、収納体10を中心に構成されている。収納体10は、所定の樹脂材料でなり、全体として左右方向に長く、前後方向に短く、上下方向に薄い直方体状に構成されている。この収納体10は、上面側における外周近傍を除いた中央の広い範囲が下方へ窪むことにより、概ね直方体状の収納空間11が形成されている。収納空間11は、前側部12F、後側部12E、左側部12L及び右側部12R(以下これらをまとめて側部12と呼ぶ)により前後左右から囲まれ、且つ下側が底部13により閉塞される一方、上側が開放されている。
【0016】
他の観点から見ると、収納体10は、収納空間11の上側が閉塞されておらず、開放された状態となっている。そこで以下では、収納体10における収納空間11の上面側、すなわち側部12により周囲を囲まれた部分を、開口部10Hとも呼ぶ。また以下では、側部12を収納側部とも呼び、底部13を収納底部とも呼ぶ。
【0017】
収納空間11における左右方向の長さ、すなわち左側部12L及び右側部12Rの間隔は、名刺80における左右方向の長さよりも僅かに長くなっている。また収納空間11における前後方向の長さ、すなわち前側部12F及び後側部12Eの間隔は、名刺80における前後方向の長さよりも僅かに長くなっている。
【0018】
左側部12Lの右側、すなわち該左側部12Lの内側には、前後方向に離れた2箇所に、収納空間11内へ向けて突出した爪部14が設けられている。爪部14は、全体として前後方向に長く、上下方向及び左右方向に短い、微小な直方体状若しくは棒状に形成されている。また爪部14は、左側部12Lの右側面における上寄りに配置されており、底部13との間に、名刺80の厚さよりも十分に大きい隙間を形成している。
【0019】
また、後側部12Eの後側における左右の両端近傍には、後方へ向けて突出した後端部17がそれぞれ設けられている。各後端部17は、何れも前後方向に沿った角柱状に形成されており、左右方向の長さが左側部12L及び右側部12Rとほぼ同等となっている。すなわち各後端部17は、左側部12L及び右側部12Rを後側部12Eよりも後方へそれぞれ延長したような形状となっている。また各後端部17における上下方向のほぼ中央であり、且つ後端からやや前側には、左右方向に貫通する軸孔17Hがそれぞれ穿設されている。
【0020】
一方、収納体10における前端部分には、前側部12Fの前側面における左右方向のほぼ中央に、後方向へ窪むように矩形状に切り欠かれた前切欠部18が形成されている。前切欠部18には、左右方向の中央付近における下寄りに、周囲よりも僅かに前方へ突出した係合突起18Pが形成されている。
【0021】
底部13は、厚さが約2[mm]程度の板状に形成されており、さらに図3に示すように、その一部分が切り込まれることにより切込部20が設けられている。切込部20は、底部13における一部の領域である押出領域21(図中斜線で示す)と、該押出領域21の周囲の領域である周囲領域22と、該押出領域21及び周囲領域22を区切る境界23とにより構成されている。さらに境界23は、該押出領域21及び該周囲領域22を分離する分離部24と、該押出領域21及び該周囲領域22を連結する連結部25とにより構成されている。
【0022】
押出領域21は、底部13のうち前後方向の中央付近における約1/3の範囲であって、且つ左右方向の中央付近からやや右寄りとなり全長の約1/2の範囲となる、左右方向に長い部分を占めている。また押出領域21の右端部分は、半円状に形成されている。
【0023】
境界23のうち分離部24は、2本の直線部24L及び半円部24Rにより構成されている。直線部24Lは、左右方向に沿った直線状に形成されており、押出領域21の上側及び下側にそれぞれ位置している。半円部24Rは、円の右半分のような形状、すなわち円弧状でなり、押出領域21の右側に位置している。また境界23のうち連結部25は、押出領域21の左側に位置しており、概ね上下方向に沿った直線状に形成されている。押出領域21及び周囲領域22を連結することにより、底部13を全体として1枚の平板状に維持している。
【0024】
他の観点から見ると、収納部2では、底部13における左右方向の中心を表す仮想的な底部中心線13Xに対し、爪部14及び連結部25を左側に配置すると共に、押出領域21のうち該連結部25から最も遠方となる押出先端部21Pを右側に配置している。
【0025】
かかる構成により切込部20は、押出領域21のうち主に右側部分に対し、上方向又は下方向に向かう外力が加えられると弾性変形し、この外力が解放されると元の形状に、すなわち平板状に戻る。
【0026】
[1-3.蓋部の構成]
蓋部3は、図4に示すように、蓋体30を中心に構成されている。蓋体30は、収納部2の収納体10(図2及び図3)と同様、所定の樹脂材料でなり、全体として左右方向に長く、前後方向に短く、上下方向に薄い直方体状ないし板状に構成されている。この蓋体30は、下面側における外周近傍部分である蓋下枠部31を除いた長方形状の広い範囲が上方へ窪むことにより、蓋下凹部32が形成されている。この蓋下凹部32には、板状の鏡板51が埋め込まれるように取り付けられる。
【0027】
蓋下枠部31の後側部分には、左右の両端からやや内側に離れた箇所に、下方へ突出した蓋ヒンジ部33が設けられている。蓋ヒンジ部33は、左右方向から見て上側が長方形状でなり下側が半円状に形成されている。また蓋ヒンジ部33には、円弧の中心に相当する位置に、左右方向に貫通する軸孔33Hが穿設されている。さらに左右の蓋ヒンジ部33は、左右方向に長く前後方向に短い連結部34により連結されている。
【0028】
蓋下枠部31の前側部分には、左右方向に関する中央付近の前端近傍に、下方へ突出した係合部36が設けられている。係合部36は、左右方向に長く、上下方向に短く、前後方向に極めて短い板状に形成されている。因みに係合部36は、左右方向、上下方向及び前後方向の長さが、何れも収納部2(図2)の前切欠部18における左右方向、上下方向及び前後方向の長さよりも僅かに短くなっている。この係合部36における後側面には、左右方向の中央付近における下寄りに、周囲よりも僅かに前方へ窪んだ係合凹部36Dが形成されている。
【0029】
[1-4.ヒンジ部による回動]
次に、名刺ケース1がヒンジ部4により回動する様子について説明する。名刺ケース1は、その製造時に、収納部2及び蓋部3がそれぞれ射出成型等の工法によってそれぞれ製造され、さらに蓋部3に鏡板51が取り付けられた後、該収納部2に該蓋部3が組み合わされる。
【0030】
このとき名刺ケース1では、蓋部3の蓋ヒンジ部33(図4)が収納部2における後端部17の間に入り込んだ状態で、左右それぞれの軸孔17H及び軸孔33Hに対して、円柱状の細長い金属部品である軸体(図示せず)が挿入される。これにより名刺ケース1は、ヒンジ部4が形成され、軸孔17H及び軸孔33Hを通る仮想的な直線を中心として、収納部2に対して蓋部3を回動させ得るようになる。
【0031】
名刺ケース1は、図1(A)に示した閉塞状態において、収納部2の開口部10Hを蓋部3により閉塞しており、また収納部2の前切欠部18に形成された係合突起18Pを、蓋部3の係合部36に形成された係合凹部36Dに入り込ませている。これにより名刺ケース1は、比較的小さい外力が加えられた場合に閉塞状態を維持する。
【0032】
また名刺ケース1は、収納部2から蓋部3を引き離す方向へ比較的大きい力が加えられた場合、係合突起18P及び係合凹部36Dの係合を解除し、さらに該蓋部3が閉塞状態(図1(A))から約180度回動されることにより、開放状態(図1(B))に遷移する。このとき蓋部3は、収納部2の開口部10Hを開放する。
【0033】
[1-5.カードの収納及び取出]
次に、名刺ケース1における名刺80の取出について説明する。図5(A)に模式的な断面図を示すように、名刺ケース1は、収納部2の収納空間11内に、複数枚の名刺80が上下方向に集積された状態で収納される。なお名刺ケース1は、図1(B)に示したように開放状態であるものとする。また、収納された名刺80の上面を一面とも呼び、また下面を他面とも呼ぶ。
【0034】
この状態で名刺ケース1は、ユーザの指Fにより、収納部2の押出領域21における右寄りの部分に対し、下側から上方向へ向かう力が加えられる。そうすると名刺ケース1は、図5(B)に示すように、収納部2において、周囲領域22に対し押出領域21(斜線で示す)の右側を上方向へ撓ませて収納空間11内へ押し込ませ、これに伴って名刺80に対して上方向へ向かう力を作用させる。
【0035】
ここで収納部2は、左側において、爪部14が設けられているため、名刺80の左端近傍に対し、上方向への移動範囲を規制して収納空間11内に留める。その一方で収納部2は、右側において、名刺80の右端近傍に対し、上方向への移動を何ら規制していないため、上方向へ持ち上げる。このとき収納部2は、ユーザの指Fによって押出領域21が十分に上方へ押し上げられることにより、該名刺80のうち少なくとも上側に位置する数枚について、その右端近傍を収納空間11の上方へ、すなわち右側部12Rよりも上側に飛び出た状態とすることができる。
【0036】
これにより名刺ケース1では、ユーザに対し、最も上側に集積されている名刺80の右端近傍を、他方の指(図示せず)等により容易に引っかけさせて上方へ分離させ、或いは右方向へ押し出させる等して、容易に取り出させることができる。
【0037】
[1-6.動作及び効果]
以上の構成において、第1の実施の形態による名刺ケース1は、収納部2(図2及び図3)の底部13に切込部20を設けることにより、周囲領域22に対して押出領域21の右側部分を上下方向に撓み得るようにした。また収納部2の左側部12Lには、収納空間11側の上端近傍に爪部14を設けた。
【0038】
このため名刺ケース1は、収納部2の収納空間11内に収納された名刺80をユーザに取り出させる際に、指F等により押出領域21の右側部分を上方向に押し上げさせることにより、当該名刺80の右端近傍を右側部12Rよりも上側に飛び出させることができる(図5)。これにより名刺ケース1は、名刺80のうち右側部12Rよりも上側に飛び出した部分をユーザに把持させ、或いは指先との摩擦を利用して右方向へスライドさせる等して、当該名刺80を容易に取り出させることができる。
【0039】
ここで、上述した収納部2から爪部14を省略した仮想的な収納部について検討する。この仮想的な収納部では、ユーザにより押出領域が上方向へ押し上げられた際に、集積されている複数の名刺のうち上側の一部分について、右端近傍から左端近傍までを収納空間の上側に飛び出させる可能性がある。この場合、この仮想的な収納部では、収納空間の上側に飛び出た名刺が極めて不安定な状態となり、容易に落下する恐れがあった。
【0040】
これに対し、本実施の形態による収納部2は、押出領域21が上方へ押し上げられた際に、左側部12Lに設けられた爪部14により、収納空間11内に収納されている名刺80の左端近傍を引っかけさせ、該名刺80の左端近傍を殆ど変位させずに右端近傍を上側へ持ち上げた姿勢とする(図5(B))。
【0041】
これにより名刺ケース1は、名刺80の左端近傍において、前辺及び後辺のうち左端近傍部分を、前側部12F及び後側部12Eにより挟んで前後方向への移動範囲を規制し、且つ爪部14により上方向への移動も規制するため、この左端近傍部分を収納部2の収納空間11内に積極的に保持できる。すなわち名刺ケース1は、ユーザが収納空間11内から名刺80を取り出そうとする際に、当該名刺80を右端側から容易に取り出させると共に、当該名刺80が不用意に落下さすることを効果的に阻止できる。
【0042】
またこのとき収納部2は、押出領域21が上方へ押し上げられた際に、集積された名刺80の左端近傍を概ね保持したまま右端近傍を持ち上げるため、各名刺80を左右方向にずらして僅かな段差を形成し、上側の名刺80が下側の名刺80よりも僅かに右側に飛び出た状態とすることができる(図5(B))。これにより名刺ケース1は、名刺80の右辺に他方の手の指先を当てて上方向へ変位させることにより、最上面の名刺80のみを指先等に引っ掛けさせ、他の名刺80から容易に分離させることができる。
【0043】
さらに収納部2は、樹脂材料により薄板状に形成された底部13に分離部24を形成することにより、周囲領域22に対し押出領域21を上下方向へ弾性変形し得るようにした。このため名刺ケース1は、ユーザが指Fにより押出領域21に上方向へ向かう力を加えて押し上げ、名刺80を取り出した後、この力を解放させるだけで、元の形状に速やかに戻すことができる。
【0044】
以上の構成によれば、第1の実施の形態による名刺ケース1は、収納部2の底部13に切込部20を設け、周囲領域22に対して押出領域21の右側部分を上下方向に撓み得るようにし、さらに該収納部2の左側部12Lに爪部14を設けた。このため名刺ケース1は、収納部2の収納空間11内に収納された名刺80をユーザに取り出させる際に、押出領域21の右側部分を上方向に押し上げさせることにより、当該名刺80の右端近傍を右側部12Rよりも上側に飛び出させることができる。これにより名刺ケース1は、名刺80のうち右側部12Rよりも上側に飛び出した部分をユーザに把持させ、当該名刺80を容易に取り出させることができる。
【0045】
[2.第2の実施の形態]
第2の実施の形態による名刺ケース201(図1)は、第1の実施の形態による名刺ケース1と比較して、収納部2に代わる収納部202を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0046】
図2と対応する図6に示すように、第2の実施の形態による収納部202は、収納体10に代わる収納体210を中心に構成されている。収納体210は、第1の実施の形態による収納体10と比較して、側部12及び底部13に代わる側部212及び底部213を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0047】
側部212は、第1の実施の形態と比較して、右側部12Rに代わる右側部212Rを有する点において相違するものの、前側部12F、後側部12E及び左側部12Lについては同様に構成されている。右側部212Rには、中央のやや後側及び後端近傍の2箇所に、前後方向に分離するような切断箇所212RCが形成されている。以下では、右側部212Rのうち2箇所の切断箇所212RCに挟まれた領域を右側部押出領域212RAと呼ぶ。
【0048】
底部213は、第1の実施の形態と比較して、切込部20に代わる切込部220を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。切込部220は、第1の実施の形態における押出領域21、周囲領域22及び境界23とそれぞれ対応する押出領域221、周囲領域222及び境界223により構成されている。また境界223は、分離部24及び連結部25とそれぞれ対応する分離部224及び連結部225により構成されている。
【0049】
押出領域221は、第1の実施の形態とは異なり、底部213における右端に当接し、且つ後端近傍となる位置に配置されている。また押出領域221は、第1の実施の形態とは異なり、概ね長方形状となっており、右端が前後方向に沿った直線状となっている。すなわち押出領域221は、右端において右側部押出領域212RAと連接されている。なお、押出領域221における左右方向の長さ及び前後方向の長さは、第1の実施の形態における押出領域21と概ね同等となっている。
【0050】
境界223の分離部224は、2本の直線部224Lにより構成されている。直線部224Lは、左右方向に沿った直線状に形成されており、押出領域21の上側及び下側にそれぞれ位置している。また各直線部224Lは、右端において右側部212Rの切断箇所212RCと連接されている。また連結部225は、第1の実施の形態と同様に、押出領域221における左端において、該押出領域221及び周囲領域222とを連結し、これにより底部213を1枚の平板状に維持している。
【0051】
これを換言すれば、収納部202では、直線部224L及び切断箇所212RCにより、押出領域221の上側及び下側に、収納体210の右外側から左方向へ向けて全長の約1/3の範囲に渡る2本の切込が形成されている。
【0052】
かかる構成により切込部220は、第1の実施の形態と同様に、押出領域221のうち主に右側部分に対し、上方向又は下方向に向かう外力が加えられると弾性変形し、この外力が解放されると元の形状に、すなわち平板状に戻る。
【0053】
このような収納部202を有する名刺ケース201は、第1の実施の形態において図5(A)に示した場合と同様に、収納部202の収納空間11内に、複数枚の名刺80が上下方向に集積された状態で収納される。
【0054】
ここで、収納部202において、ユーザの指Fにより押出領域221における右寄りの部分に対し下側から上方向へ向かう力が加えられた場合を想定する。このとき名刺ケース201は、図5(B)と対応する図7に示すように、押出領域221を撓ませながら、該押出領域221及び右側部押出領域212RA(斜線で示す)を、名刺80の右側部分と共に上方向へ変位させる。
【0055】
すなわち名刺ケース201は、第1の実施の形態と同様に、名刺80のうち少なくとも上側に位置する数枚について、その右端近傍を収納空間11の上方へ、すなわち右側部212Rよりも上側に飛び出た状態とする。これにより名刺ケース201では、ユーザに対し、最も上側に集積されている名刺80の右端近傍を、他方の指(図示せず)等により容易に引っかけさせて上方へ分離させ、或いは右方向へ押し出させる等して、容易に取り出させることができる。
【0056】
また収納部202は、ユーザの指Fにより押出領域221の右側部分が上方向へ押し上げられた際、右側部押出領域212RAと一体に名刺80の右側部分を押し上げる(図7)。このため名刺ケース201は、押し上げられた名刺80が仮に右方向へ滑り落ちようとしたとしても、右側部押出領域212RAにより阻止すること、すなわち名刺80が集積された状態を維持することができる。
【0057】
その他の点においても、第2の実施の形態による名刺ケース201は、第1の実施の形態による名刺ケース1と同様の作用効果を奏し得る。
【0058】
[3.第3の実施の形態]
第3の実施の形態による名刺ケース301(図1)は、第1の実施の形態による名刺ケース1と比較して、収納部2に代わる収納部302を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0059】
図2と対応する図8に示すように、第3の実施の形態による収納部302は、収納体10に代わる収納体310を中心に構成されている。収納体310は、第1の実施の形態による収納体10と比較して、底部13に代わる底部313を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0060】
底部313は、第1の実施の形態と比較して、切込部20に代わる孔部320を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。孔部320は、第1の実施の形態における押出領域21、周囲領域22及び境界23とそれぞれ対応する押出領域321、周囲領域322及び境界323により構成されている。
【0061】
押出領域321は、前後方向に関して中央寄りであり、且つ左右方向に関して中央からやや右寄りに位置しており、上下方向に貫通する丸孔となっている。これに伴い境界323は、円形となっている。また境界323の直径は、ユーザの指Fの直径よりもやや大きくなっている。このため収納部302では、押出領域321の下側からユーザが指Fを挿入させると、その先端近傍を収納空間11内に到達させることができる。
【0062】
他の観点から見ると、収納部302では、底部313における左右方向の中心を表す仮想的な底部中心線313Xに対し、爪部14を左側に配置すると共に、押出領域321を右側に配置している。
【0063】
このような収納部302を有する名刺ケース301は、第1の実施の形態において図5(A)に示した場合と同様に、収納部302の収納空間11内に、複数枚の名刺80が上下方向に集積された状態で収納される。このとき収納部302では、底部313に形成された押出領域321(すなわち丸孔)を介して、収納空間11内に収納されている名刺80における最下面の一部を露出させた状態となる。
【0064】
ここで、名刺ケース301において、ユーザの指Fが収納部302の押出領域321に対し、下側から上方向へ向かって挿入された場合を想定する。このとき収納部302では、ユーザの指Fにより、名刺80の右側部分における最下面に対して上方向へ向かう力が加えられる。一方、収納部302は、爪部14により、名刺80の左端近傍を収納空間11内に留めようとする。
【0065】
この結果、名刺ケース301では、名刺80の左側部分を収納空間11内に留めたまま、右側部分を上方向へ変位させて該収納空間11の外部へ押し出した状態とする。これにより名刺ケース301では、第1及び第2の実施の形態と同様に、ユーザに対し、最も上側に集積されている名刺80の右端近傍を、他方の指(図示せず)等により容易に引っかけさせて上方へ分離させ、或いは右方向へ押し出させる等して、容易に取り出させることができる。
【0066】
その他の点においても、第2の実施の形態による名刺ケース201は、第1の実施の形態による名刺ケース1と同様の作用効果を奏し得る。
【0067】
[4.第4の実施の形態]
図1(B)と対応する図8に示すように、第4の実施の形態による名刺ケース401は、第1の実施の形態による名刺ケース1と比較して、蓋部3に代わる蓋部403を有する点において相違するものの、収納部2及びヒンジ部4については同様に構成されている。蓋部403は、第1の実施の形態における蓋部3(図4)と比較して、鏡板51が省略される一方、蓋爪部437L及び437R(以下、両者をまとめて蓋爪部437と呼ぶ)が設けられている点において相違するものの、他の部分については同様に構成されている。
【0068】
蓋爪部437Lは、蓋下枠部31のうち左側部分の内側面、すなわち蓋下凹部32側の側面における、前後方向の下端近傍に設けられている。蓋爪部437Lは、収納部2の爪部14(図2)と同様、全体として前後方向に長く、上下方向及び左右方向に短い、微小な直方体状若しくは棒状に形成されている。この蓋爪部437Lは、蓋下凹部32における底面部分との間に、名刺80の厚さよりも十分に大きい隙間を形成している。蓋爪部437Rは、蓋爪部437Lと概ね左右対称に構成されている。
【0069】
かかる構成により、第4の実施の形態による名刺ケース401は、第1の実施の形態による名刺ケース1と同様、収納部2における押出領域21の右側部分を上方向に押し上げさせることにより、収納空間11内に収納された名刺80の右端近傍を右側部12Rよりも上側に飛び出させ、容易に取り出させることができる。
【0070】
これに加えて名刺ケース401は、例えば相手から受け取った名刺81のような紙葉状の媒体を、収納部2内に収納している名刺80と区別した状態で、蓋部403の蓋下凹部32内に収納させ、且つ収納した状態を蓋爪部437により維持することができる。
【0071】
[5.他の実施の形態]
なお上述した第1の実施の形態においては、切込部20の分離部24を、左右方向に沿った2本の直線部24L及び1つの半円部24Rの組み合わせとして構成する場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば矩形状や半楕円状等、種々の形状としても良い。要は、押出領域21に対して指F等により上方向へ向かう力が加えられた際に、該押出領域21を上方向へ撓ませることができれば良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0072】
また上述した第1の実施の形態においては、収納部2の底部13に設ける切込部20(図3)において、押出領域21を囲む境界23のうち左側に、すなわち爪部14に近い側に、連結部25を設ける場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば境界23のうち前側や後側、或いは右側に連結部25を設けても良い。また連結部25は、少なくとも一部が底部中心線13Xよりも右側に位置していても良い。これらの場合、押出領域21は、ユーザの指F等により押出領域21が撓んで押し上げられた際に、名刺80の下面における右側部分、すなわち底部中心線13Xを挟んで爪部14の反対側となる部分に対し、上方向へ向かう力を作用させ得れば良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0073】
さらに上述した第1の実施の形態においては、収納部2において、左側部12Lに2個の爪部14を設ける場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば1個や3個以上の爪部14を設けても良い。また、例えば前側部12Fの左端近傍や後側部12Eの左端近傍に爪部14を設けても良い。要は、押出領域21が上方向へ押し上げられた際に、名刺80の左端近傍を収納空間11内に留めることができ、且つ該名刺80の出し入れをできるだけ阻害しなければ良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0074】
さらに上述した第2の実施の形態においては、底部213における後ろ寄りに切込部220を設ける場合について述べた(図6)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば中央付近や前寄り等、他の種々の箇所に切込部220を設けても良い。また、境界223の分離部224については、左右方向に沿った直線状に限らず、例えば曲線状や折れ線状等、種々の形状としても良い。
【0075】
さらに上述した第3の実施の形態においては、孔部320を丸孔とする場合、すなわち境界323を円形とする場合について述べた(図8)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば境界323を正方形や六角形、或いは楕円等、種々の形状としても良い。また、孔部320の位置については、前後方向の中央付近に限らず、前寄りや後ろ寄り等、種々の箇所に設けても良い。さらには、孔部320の個数に関し、1個に限らず、2個以上としても良い。
【0076】
さらに上述した第1の実施の形態においては、収納部2及び蓋部3の後側にヒンジ部4を設ける場合、すなわち収納される名刺80の長辺に沿った仮想的な軸を中心に該蓋部3を回動させる場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば収納部2及び蓋部3の左側にヒンジ部4を設け、収納される名刺80の短辺に沿った仮想的な軸を中心に該蓋部3を回動させるようにしてもよい。第2の実施の形態についても同様である。
【0077】
さらに上述した第1の実施の形態においては、収納部2を樹脂材料により構成する場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば金属材料など、種々の材料により構成しても良い。要は、切込部20において押出領域21に力が加えられた際に弾性変形できれば良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0078】
さらに上述した第1の実施の形態においては、名刺80を収納する名刺ケース1に本発明を適用する場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えばクレジットカードや診察券、或いは回数券等、種々の紙葉状の媒体を収納するカードケースに適用しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0079】
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
【0080】
さらに上述した第1の実施の形態においては、収納部としての収納部2と、蓋部としての蓋部3とによって媒体ケースとしての名刺ケース1を構成し、当該収納部を、収納底部としての底部13と、収納側部としての側部12と、爪部としての爪部14とによって構成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる収納部と、蓋体部とによって媒体ケースを構成し、当該収納部を、種々の構成でなる収納底部と、収納側部と、爪部とにより構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、例えば名刺を収納する名刺ケースで利用できる。
【符号の説明】
【0082】
1、201、301、401……名刺ケース、2、202、302……収納部、3、403……蓋部、4……ヒンジ部、10、210、310……収納体、10H……開口部、11……収納空間、12、212……側部、12L……左側部、212R……右側部、212RA……右側部押出領域、13、213、313……下側板、14……爪部、20、220……切込部、21、221、321……押出領域、22、222、322……周囲領域、23、223、323……境界、24、224……分離部、25、225……連結部、30……蓋体、80……名刺、320……孔部。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9